説明

スピーカの実装構造

【課題】 簡単な構造で、薄型化を図ると共に、スピーカで発生した音を確実に且つ良好にケースの外部に放音することができるスピーカの実装構造を提供する。
【解決手段】 上部ケース8内に設けられた回路基板10上に配置された接点シート13に、回路基板10の上下に開放されてスピーカ16が圧入により嵌着するスピーカ嵌着部17を一体に形成した。従って、接点シート13のスピーカ嵌着部17にスピーカ16を圧入によって嵌め込むだけで、スピーカ16の音が漏れないように、簡単にスピーカ16を取り付けることができる。このため、スピーカ部6の構造が簡単で、部品点数も少なく、スピーカ部6の厚みを薄くすることができるほか、スピーカ16の発音時にビビリ音の発生を防いで、スピーカ16の音をスピーカ嵌着部17から確実に且つ良好に上部ケース8の外部に放音させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子辞書、携帯電話機、携帯情報端末機(PDA:パーソナル・デジタル・アシスタント)などの電子機器に用いられるスピーカの実装構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、携帯電話機におけるスピーカの実装構造においては、特許文献1に記載されているように、機器ケース内に設けられた回路基板にスピーカユニットを設けると共に、この回路基板上に複数の接点部を有する接点シートを設け、この接点シート上に複数のキートップを有するキーシートを設け、このキーシートの各キートップを機器ケースの表面から露出させた構成のものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−236894号公報
【0004】
このようなスピーカの実装構造では、スピーカユニットで発生した音を機器ケースの表面側に放音するために、スピーカユニットに対応する箇所のキーシートのキートップに放音孔を設けると共に、スピーカユニットに対応する箇所の接点シートの接点部にも放音孔を設けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような従来のスピーカの実装構造では、回路基板にスピーカユニットを設け、このスピーカユニットの上側に複数の接点部を有する接点シートおよび複数のキートップを有するキーシートを配置した構成であるから、キートップの表面からスピーカユニットの下面までの厚みが厚くなり、薄型化を図ることができないという問題がある。
【0006】
また、このような従来のスピーカの実装構造では、放音孔が設けられたキーシートのキートップとスピーカユニットとの間に、放音孔が設けられた接点シートの接点部が配置されているため、この接点シートによってスピーカユニットで発生した音を良好に且つ十分に機器ケースの表面から外部に放音することができないという問題もある。
【0007】
なお、スピーカユニットとキーシートとの間に位置する箇所の接点シートをスピーカユニットの下側に配置し、スピーカユニットをキーシートのキートップに接近させた構成のものも開発されているが、スピーカユニットで発生した音がスピーカユニットの周囲に漏れてしまい、スピーカユニットで発生した音を確実に且つ良好にキートップの放音孔のみから機器ケースの外部に放音することができないという問題がある。
【0008】
このように、従来のスピーカの実装構造では、スピーカユニットを回路基板に設けた構成であるから、スピーカユニットの上側または下側に接点シートを設けなければならないため、全体の厚みを十分に薄くすることができないばかりか、スピーカで発生した音を機器ケースの外部に確実に且つ良好に放音することができないという問題を解消することができない。
【0009】
この発明が解決しようとする課題は、簡単な構造で、薄型化を図ることができると共に、スピーカで発生した音を確実に且つ良好にケースの外部に放音することができるスピーカの実装構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記課題を解決するために、次のような構成要素を備えている。
請求項1に記載の発明は、回路基板を内蔵し、所定箇所に開口部が内外に貫通して設けられたケースと、前記回路基板上に配置された弾性を有する接点シートと、前記回路基板に電気的に接続されるスピーカと、を備え、前記接点シートには、前記回路基板の上下に開放されて前記スピーカが圧入により嵌着するスピーカ嵌着部が、前記ケースの前記開口部に対応した状態で、一体に形成されていることを特徴とするスピーカの実装構造。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記スピーカ嵌着部が、前記接点シートの下面から前記回路基板の挿入孔を通して前記回路基板の下側に突出する筒状部と、この筒状部の上部からその内部に向けて突出したストッパー部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカの実装構造である。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記スピーカの外周部に、係合部が設けられており、前記スピーカ嵌着部には、前記スピーカの前記係合部が係合する位置決め用の係止部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカの実装構造である。
【0013】
請求項4に記載の発明は、前記スピーカ嵌着部に、その上方に延出されて上部が開放された弾性変形可能なスカート部が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のスピーカの実装構造である。
【0014】
請求項5に記載の発明は、前記接点シートに、前記スピーカ嵌着部の外周に沿って配列された複数の接点部が設けられており、前記スピーカ嵌着部の上部には、放音孔を有して前記ケースの前記開口部から外部に露出するキートップが、前記複数の接点部の各上部に亘って配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスピーカの実装構造である。
【0015】
請求項6に記載の発明は、前記ケースの内部に、前記スピーカ嵌着部の下側に音響空間を形成するための音響壁部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスピーカの実装構造である。
【0016】
請求項7に記載の発明は、前記接点シートの外周縁に、前記回路基板の外周縁を挟み込む挟持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載にスピーカの実装構造である。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、ケース内の回路基板上に配置された接点シートに回路基板の上下に開放されて一体に形成されたスピーカ嵌着部に、スピーカを嵌め込むだけで、スピーカの音が漏れないように、簡単にスピーカを取り付けることができる。また、スピーカで音を発生した際に、ビビリ音の発生を防いで、スピーカの音をスピーカ嵌着部からケースの開口部を通して外部に放音させることができる。このため、構造が簡単で、部品点数が少なく、薄型化を図ることができると共に、スピーカで発生した音をケースの外部に確実に且つ良好に放音させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明を電子辞書に適用した一実施形態を示した図である。
【図2】図1に示された電子辞書のスピーカ部を示した拡大平面図である。
【図3】図2に示されたスピーカ部のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図3に示された回路基板を示し、(a)はその回路基板の上基板を示した拡大平面図、(b)はその回路基板の下基板を示した拡大平面図である。
【図5】図3に示された接点シートを示した拡大平面図である。
【図6】図5に示された接点シートの挟持部を回路基板の外周縁に挟み込んで、接点シートを回路基板の上面に取り付けた状態で、回路基板を下側から見て示した拡大裏面図である。
【図7】図6のB−B矢視における拡大断面図である。
【図8】図6に示されたスピーカを示した拡大平面図である。
【図9】図8に示されたスピーカが嵌着する接点シートのスピーカ嵌着部を示した要部の拡大裏面図である。
【図10】図3に示された上部ケースの要部を示した拡大平面図である。
【図11】図5に示されたスピーカ部における接点シートの要部を示した拡大斜視図である。
【図12】図2に示されたキートップを示した拡大裏面図である。
【図13】図3に示された下部ケースの要部を示した拡大斜視図である。
【図14】図3に示されたスピーカ部においてスピーカを接点シートのスピーカ嵌着部に下側から挿入する状態を示した要部の拡大断面図である。
【図15】図14に示されたスピーカがスピーカ嵌着部に嵌着して位置規制された状態を示した要部の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1〜図15を参照して、この発明を電子辞書に適用した一実施形態について説明する。
この電子辞書は、図1に示すように、第1ケース1と第2ケース2とをヒンジ部3によって開閉可能に連結し、ヒンジ部3を中心に第1、第2の各ケース1、2を回転させて閉じた際に、第1、第2の各ケース1、2が互いに重なり合い、またヒンジ部3を中心に第1、第2の各ケース1、2を回転させて開いた際に、第1、第2の各ケース1、2が互いに開いて展開するように構成されている。
【0020】
この場合、第1ケース1は、図1に示すように、キー入力部4、タッチ入力部5、およびスピーカ部6を備えており、第2ケース2は、表示部7を備えている。この第2ケース2の表示部7は、液晶表示パネルやEL(エレクトロルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示パネルからなり、辞書機能に必要な各種の情報を電気光学的に表示するように構成されている。
【0021】
第1ケース1のキー入力部4は、図1に示すように、文字キー4a、ファンクションキー4b、カーソルキー4cなどの辞書機能に必要な各種のキーを備えている。この場合、カーソルキー4cの中心部には、決定キー4dが設けられており、このカーソルキー4cの外周部には、2つの補助キー4eが設けられている。
【0022】
また、第1ケース1のタッチ入力部5は、透明なタッチパネルの下面に表示パネル(いずれも図示せず)を重ね合わせたものであり、透明なタッチパネルをタッチ操作すると、そのタッチ操作に応じた手書き情報がその下側の表示パネルに表示され、この表示された情報が入力されるように構成されている。スピーカ部6は、第2ケース2の表示部7に表示された情報を音声で発音するためのものであり、後述するスイッチ機能をも備えている。
【0023】
この場合、第1ケース1は、図3に示すように、上部ケース8と下部ケース9とからなっている。この上部ケース8と下部ケース9との内部には、回路基板10がほぼ全域に亘って配置されている。この回路基板10は、図3および図4に示すように、上基板10aと下基板10bとを重ね合わせた2層構造になっている。この上基板10aの上面には、図4(a)に示すように、キー入力部4の各キー4a〜4eのうち、カーソルキー4cを除いて、複数の固定接点11aがキー入力部4の各キー4a〜4eにそれぞれ対応して設けられている。
【0024】
また、下基板10bの上面には、図4(b)に示すように、キー入力部4のカーソルキー4cに対応する固定接点11bが、図4(a)に示す上基板10aの接点挿入孔10cに対応して設けられている。また、この回路基板10の下面、つまり下基板10bの下面には、図6に示すように、辞書機能に必要な各種の電子部品12が搭載されている。
【0025】
この回路基板10の上面、つまり上基板10aの上面には、図3に示すように、ゴムやエラストマーなどの弾性材料からなる接点シート13が配置されている。この接点シート13には、図5に示すように、複数の接点部14がキー入力部4の各キー4a〜4eにそれぞれ対応して一体に設けられている。この場合、上部ケース8には、図10に示すように、キー入力部4の各キー4a〜4eにそれぞれ対応する各接点部14の上部がそれぞれ挿入するキー挿入孔8aが設けられている。
【0026】
この接点シート13の外周縁には、図5〜図7に示すように、回路基板10の外周縁を挟み付ける挟持部15が設けられている。この挟持部15は、図7に示すように、回路基板10の外周縁における上面から側面を経て下面に延びる溝形状に形成されている。これにより、挟持部15は、接点シート13を回路基板10上に配置した状態で、挟持部15の内部に回路基板10の外周縁を嵌め込むことにより、図6および図7に示すように、接点シート13を回路基板10に取り付けるように構成されている。
【0027】
ところで、スピーカ部6は、図2および図3に示すように、第1ケース1の内部に配置された回路基板10と、この回路基板10にリード線16aによって電気的に接続される円盤状のスピーカ16と、回路基板10上に配置されてスピーカ16が嵌着するスピーカ嵌着部17が一体に形成された接点シート13と、この接点シート13のスピーカ嵌着部17上に配置されたキートップ18とを備えている。
【0028】
この場合、回路基板10には、図3、図4および図6に示すように、接点シート13のスピーカ嵌着部17が挿入する挿入孔19が上下に貫通して設けられている。接点シート13のスピーカ嵌着部17は、図3に示すように、接点シート13の下面から回路基板10の挿入孔19を通して回路基板10の下側に突出する筒状部20と、この筒状部20の上部からその内部に向けて鍔状に突出したストッパー部21とを備えている。
【0029】
このスピーカ嵌着部17の筒状部20は、図3、図9および図14に示すように、上下に開放された円筒部である。この筒状部20は、その内径がスピーカ16の外径よりも少し小さく形成されていると共に、その高さがスピーカ16の厚みとほぼ同じ高さに形成されている。これにより、筒状部20は、その内部にスピーカ16が下側から圧入によって嵌め込まれるように構成されている。
【0030】
すなわち、この筒状部20は、図3および図15に示すように、その内部にスピーカ16が嵌め込まれた際に、スピーカ16の音が漏れる隙間が生じることなく、スピーカ16が取り付けられるように構成されている。また、ストッパー部21は、スピーカ16が筒状部20内に下側から嵌め込まれた際に、スピーカ16の外周部の上面が当接することにより、スピーカ16の上限位置を規制して、スピーカ16を筒状部20内に動くことなく固定するように構成されている。
【0031】
この場合、スピーカ16の外周部には、図8に示すように、位置決め用の係合突起22が設けられている。また、スピーカ嵌着部17の筒状部20には、図9に示すように、スピーカ16の係合突起22が係合する位置決め用の係止溝部23が、筒状部20の下端部に開放されて設けられている。これにより、スピーカ16は、筒状部20に下側から嵌め込まれる際に、スピーカ16の係合突起22を筒状部20の係止溝部23に係合させることにより、スピーカ16の面方向における回転位置が規制されるように構成されている。
【0032】
また、スピーカ嵌着部17におけるストパー部21の内周部上には、図3および図11に示すように、接点シート13の上方に弾性変形可能に延出されたスカート部24が一体に形成されている。このスカート部24は、スピーカ16の上側の周囲を囲うためのものであり、その上部が開放され、この開放された上部の周縁上にキートップ18が配置されるように構成されている。これにより、スカート部24は、キートップ18を弾力的に押し上げた状態で保持すると共に、スピーカ16の上側の周囲を囲んで、スピーカ16の音が周囲に漏れないにように構成されている。
【0033】
この場合、接点シート13には、図3、図5および図11に示すように、スピーカ嵌着部17の外周に沿って配列された複数の接点部25が一体に設けられている。この複数の接点部25は、スピーカ嵌着部17の外周における12時、3時、6時、9時の各位置にそれぞれ設けられている。
【0034】
この接点部25は、図3に示すように、それぞれスピーカ嵌着部17のスカート部24よりも少し高く形成されたドーム状の膨出部25aと、この膨出部25aの内部に設けられた可動接点25bと、回路基板10の上基板10a上に設けられて可動接点26が接離可能に接触する固定接点25cとを備えている。
【0035】
これにより、複数の接点部25は、それぞれキースイッチを形成している。例えば、12時位置の接点部25は、ヒストリー(履歴)モードに切り替えるキースイッチ、3時位置の接点部25は、表示のレイアウトを設定するキースイッチ、6時位置の接点部25は、ジャンプモードを設定するキースイッチ、9時位置の接点部25は、文字サイズを選択指定するキースイッチである。
【0036】
また、スピーカ嵌着部17の上部には、図3に示すように、キートップ18が複数の接点部25の各上部に亘って配置されている。このキートップ18は、図3に示すように、環状に配列された複数の接点部25の外形とほぼ同じ大きさの円板状に形成され、図10に示すように、上部ケース8に設けられた円形孔8b内に配置されて、図2に示すように、上部ケース8の上側に露出するように構成されている。
【0037】
このキートップ18は、図11および図12に示すように、スピーカ嵌着部17のスカート部24における上部の外周縁と、複数の接点部25の各上面とに、接着剤26によって接着されている。また、このキートップ18におけるスピーカ嵌着部17に対応する中央部には、図2および図3に示すように、複数の放音孔18aが上下に貫通して設けられている。これにより、キートップ18とスピーカ16との間には、図3および図15に示すように、スピーカ嵌着部17のスカート部24によって、スピーカ16の音がキートップ18の放音孔18a以外に漏れないように密閉する密閉空間が形成されている。
【0038】
また、スピーカ16の下側には、図3に示すように、第1ケース1の下部ケース9に設けられた音響壁部27によって音響空間28が形成されている。すなわち、音響壁部27は、図13に示すように、下部ケース9の底部に起立して設けられてスピーカ嵌着部17の下部外周に密接する半円弧状の壁部27aと、下部ケース9の底部にそれぞれ起立して設けられてスピーカ嵌着部17の下端面に当接する複数の支持柱27bとからなっている。これにより、音響壁部27は、スピーカ16の下側に放音された音を下部ケース9内の全体で共鳴させる音響空間28を形成するように構成されている。
【0039】
なお、キートップ18の外周部に位置する箇所、例えば1時と2時との間に位置する箇所と、4時と5時との間に位置する箇所には、図2に示すように、2つの補助キー部30、31がそれぞれ設けられている。この2つの補助キー部30、31は、図5および図11に示すように、接点シート13に設けられた2つの接点部32a、33aが、図10に示す上部ケース8に設けられて上部ケース8の円形孔8bに連続する2つの半円形孔8c内に下側から挿入して上側に露出するように構成されている。
【0040】
この2つの補助キー部30、31の各接点部32、33は、接点シート13に設けられた2つの膨出部内に可動接点(図示せず)がそれぞれ設けられ、この可動接点が図4(b)に示す回路基板10の下基板10b上に設けられた固定接点32a、33aに、図4(a)に示す上基板10aの接点挿入孔10dを通してそれぞれ接離可能に対向し、この状態で接点部32、33が押されて弾性変形した際に、可動接点がそれぞれ固定接点32a、33aに接触することにより、スイッチ動作するように構成されている。
【0041】
次に、このようなスピーカ部6において、スピーカ16を第1ケース1内に組み込む場合について説明する。
まず、回路基板10の上面に接点シート13を取り付ける。このときには、回路基板10の上面に設けられた各固定接点11aに接点シート13の各接点部14を対応させると共に、回路基板10の挿入孔19に接点シート13のスピーカ嵌着部17を対応させる。
【0042】
この状態で、接点シート13のスピーカ嵌着部17を回路基板10の挿入孔19に挿入させて回路基板10の下側に突出させる。これにより、接点シート13が回路基板10の上面に配置される。この状態で、接点シート13の外周縁に設けられた挟持部15の内部に回路基板10の外周縁を嵌め込んで、接点シート13を回路基板10に取り付ける。
【0043】
次いで、接点シート13が取り付けられた回路基板を第1ケース1の上部ケース8内に配置する。このときには、回路基板10の周囲に位置する接点シート13の挟持部15を掴むことにより、回路基板10に触れずに、回路基板10を上部ケース8に組み付けることができる。このため、回路基板10が静電気などの影響を受けことがないので、回路基板10の品質が維持される。
【0044】
このように回路基板10を上部ケース8に組み付ける際には、上部ケース8に設けられた各キー挿入孔8aに、キー入力部4の各キー4a〜4eにそれぞれ対応する接点シート13の各接点部14の上部を挿入させると共に、上部ケース8に設けられた円形孔8bに接点シート13に設けられたスピーカ嵌着部17のスカート部24およびその外周に位置する複数の接点部25を挿入させる。
【0045】
そして、上部ケース8の円形孔8bに挿入された接点シート13のスカート部24およびその外周に位置する複数の接点部25の上部にキートップ18を取り付ける。このときには、図11および図12に示すように、スピーカ嵌着部17のスカート部24の上部外周縁と、複数の接点部25の各上面とに、接着剤26を塗布し、この接着剤26によってキートップ18を接着する。
【0046】
これにより、図14に示すように、キートップ18に設けられた複数の放音孔18aがスピーカ嵌着部17のスカート部24における上部の開放された部分に対応した状態で、キートップ18がスピーカ嵌着部17のスカート部24における上部の外周縁および各接点部25の各上面に取り付けられ、このキートップ18が上部ケース8の円形孔8b内に配置されて、上部ケース8の上側に露出する。
【0047】
次いで、図14に示すように、スピーカ16をスピーカ嵌着部17内に下側から挿入する。このときには、図8および図9に示すように、スピーカ16の外周部に設けられた係合突起22を、スピーカ嵌着部17の筒状部20に設けられた係止溝部23に対応させて係合させる。これにより、スピーカ16は筒状部20に対する面方向における回転位置が規制される。このため、スピーカ16における音の方向性が決定されるので、音圧のバラツキが防げる。
【0048】
この状態で、スピーカ16をスピーカ嵌着部17の筒状部20内に下側から圧入させて嵌め込み、スピーカ16の外周部の上面をスピーカ嵌着部17のストッパー部21に当接させる。これにより、スピーカ16は、図15に示すように、スピーカ嵌着部17の筒状部20内における上限位置が規制されると共に、スピーカ16の音が周囲に漏れるような隙間が生じることがなく、筒状部20内に嵌着される。
【0049】
この状態では、スピーカ16の上面がキートップ18に設けられた複数の放音孔18aに対応して、スピーカ16の上側が、スピーカ嵌着部17のスカート部24によって周囲を囲まれた状態であることにより、スピーカ16の上側が、複数の放音孔18a以外からスピーカ16の音が漏れないように密閉される。
【0050】
この後、図6に示すように、スピーカ16をリード線16aによって回路基板10と電気的に接続する。このときには、スピーカ16がスピーカ嵌着部17に固定されているので、リード線16aをテープなどの固定部材によって回路基板10に固定する必要がない。このため、リード線16aによるスピーカ16と回路基板10との接続作業が簡素化し、その接続作業性の向上が図れる。
【0051】
そして、図3に示すように、上部ケース8の下に下部ケース9を取り付ける。このときには、下部ケース9に設けられた音響壁部27をスピーカ嵌着部17の筒状部20の下端面に対応させる。これにより、スピーカ16の下側には、音響壁部27によって下部ケース9の内部に広がる音響空間28が形成される。
【0052】
次に、このようなスピーカ16の実装構造における作用について説明する。
このスピーカ16が音を発生すると、スピーカ16の上面側から発生した音がキートップ18に設けられた複数の放音孔18aから上部ケース8の外部に放音される。このときには、スピーカ16が接点シート13に設けられたスピーカ嵌着部17の筒状部20内に圧入により嵌着されているので、スピーカ16の音が周囲に漏れることがなく、またスピーカ16の発音時にビビリ音が発生することはない。
【0053】
また、このときには、スピーカ16の上側における周囲がスピーカ嵌着部17のスカート部24によって、スピーカ16の上側の周囲に音が漏れないように密閉されているので、スピーカ16の上面側の音を確実に且つ良好にキートップ18の放音孔18aから上部ケース8の外部に放音することができる。
【0054】
一方、スピーカ16の下面側から放音された音は、音響空間28によって共鳴される。すなわち、スピーカ16の下側には、音響壁部27によって下部ケース9の内部に広がる音響空間28が形成されているので、スピーカ16の下面側から放音された音を音響空間28によって共鳴させることができる。
【0055】
また、キートップ18をキー操作する場合には、キートップ18の12時、3時、6時、9時の各位置に対応する箇所のいずれかを押圧操作すれば良い。すると、キートップ18によって接点シート13に設けられた複数の接点部25のいずれかが押し下げられて弾性変形し、この弾性変形した接点部25の膨出部25a内の可動接点25bが回路基板10上の固定接点25cに接触してオン動作する。
【0056】
このときには、弾性変形した接点部25に隣接する箇所に位置するスピーカ嵌着部17のスカート部24の一部も、接点部25の弾性変形に伴って弾性変形する。このため、スピーカ嵌着部17の外周に位置する複数の接点部25のキーストロークをスピーカ嵌着部17のスカート部24によって十分に確保することができ、これによりキー操作性の向上が図る。
【0057】
この場合、スカート部24は大きく弾性変形することがないので、スピーカ16の上側に形成されている周囲の密閉空間の容積が、少し小さくなるだけで、ほとんど変化しない。このため、スピーカ16が音を発生している際にキー操作したとしても、キートップ18のキー操作による影響をほとんど受けずに、スピーカ16の上面側の音を確実に且つ良好にキートップ18の放音孔18aから上部ケース8の外部に放音することができる。
【0058】
このように、スピーカ16が音を発生している際に、キートップ18をキー操作しても、キートップ18の放音孔18aが使用者の指によって塞がれることがないため、スピーカ16で発生した上面側の音は、スピーカ嵌着部17のスカート部24によって周囲に漏れることがなく、キートップ18の放音孔18aを通して上部ケース8の外部に確実に且つ良好に放音される。
【0059】
このように、このスピーカ16の実装構造によれば、上部ケース8内に設けられた回路基板10上に配置された弾性を有する接点シート13に、回路基板10の上下に開放されてスピーカ16が圧入により嵌着するスピーカ嵌着部17を一体に形成した構成であるから、接点シート13のスピーカ嵌着部17内にスピーカ16を圧入によって嵌め込むだけで、簡単にスピーカ16を取り付けることができる。
【0060】
このため、スピーカ16の実装構造が簡単で、部品点数も少なく、実装構造全体の厚みを薄くすることができ、これにより第1ケース1全体の薄型化を図ることができると共に、スピーカ16が接点シート13のスピーカ嵌着部17に嵌め込まれているので、スピーカ16の音が周囲に漏れるような隙間が生じることなく、またスピーカ16が音を発生する際におけるビビリ音の発生をも防ぐことができる。これにより、スピーカ16で発生した音をスピーカ嵌着部17から上部ケース8の外部に確実に且つ良好に放音させることができる。
【0061】
この場合、スピーカ嵌着部17は、接点シート13の下面から回路基板10の挿入孔19を通して回路基板10の下側に突出する筒状部20と、この筒状部20の上部からその内部に向けて鍔状に突出したストッパー部21とを備えていることにより、スピーカ16を筒状部20内に音が周囲に漏れないように嵌め込むことができる。また、スピーカ16が筒状部20内に圧入によって押し込まれた際に、スピーカ16の外周部の上面がストッパー部21に当接することにより、スピーカ16の上限位置を規制することができる。
【0062】
これにより、スピーカ16を筒状部20内の所定位置に動かないように固定することができるので、スピーカ16をリード線16aによって回路基板10と電気的に接続する際に、リード線16aをテープなどの固定部材によって回路基板10に固定する必要がない。このため、リード線16aによるスピーカ16と回路基板10との接続作業を簡素化し、その接続作業性の向上を図ることができる。
【0063】
また、スピーカ16の外周部には、係合突起22が設けられており、スピーカ嵌着部17の筒状部20には、スピーカ16の係合突起22が係合する位置決め用の係止溝部23が設けられているので、スピーカ16を筒状部20内に下側から嵌め込む際に、スピーカ16の係合突起22を筒状部20の係止溝部23に係合させることにより、スピーカ16の面方向における回転位置を規制することができる。このため、スピーカ嵌着部17に対してスピーカ16を正確な向きに取り付けることができ、スピーカ16の音の方向性を決定することができるので、音圧のバラツキを防ぐことができる。
【0064】
また、スピーカ嵌着部17におけるストパー部21の内周部には、その上方に延出されて上部が開放された弾性変形可能なスカート部24が設けられているので、このスカート部24によってスピーカ16の上側の周囲を囲んで、その周囲に音が漏れないように、スピーカ16の上側における周囲を密閉することができ、これによりスピーカ16の音をスカート部24の上部から良好に放音させることができる。
【0065】
さらに、このスピーカ16の実装構造によれば、接点シート13に、スピーカ嵌着部17の外周に沿って配列された複数の接点部25が設けられており、スピーカ嵌着部17の上部には、放音孔18aを有するキートップ18が、複数の接点部25の各上部に亘って配置されているので、複数の接点部25に対応する箇所のキートップ18が押圧されると、いずれかの接点部25を弾性変形させてスイッチ動作させることができる。
【0066】
このため、スピーカ嵌着部17の外周に位置するスペースを、複数の接点部25による複数のスイッチ部として、有効に利用することができるので、複数のスイッチ部である複数の接点部25およびスピーカ16を高密度で実装することができ、これにより機器全体の小型化をも図ることができる。
【0067】
この場合、スピーカ嵌着部17の上部には、その上方に延出されて上部が開放された弾性変形可能なスカート部24が設けられているので、このスカート部24によってキートップ18を弾力的に押し上げた状態で保持することができる。このため、キートップ18を押圧して接点部25を弾性変形させた際に、この弾性変形した接点部25に隣接する箇所に位置するスカート部24の一部も、接点部25の弾性変形に伴って弾性変形するので、複数の接点部25に対応する箇所におけるキートップ18のキーストロークを十分に確保することができ、これによりキートップ18によるキー操作性の向上を図ることができる。
【0068】
このようにスピーカ嵌着部17の上部にキートップ18を配置しても、キートップ18に設けられた複数の放音孔18aを通してスピーカ16の音を確実に且つ良好に放音させることができる。この場合、スピーカ嵌着部17の上部には、スピーカ16の上部の周囲を囲うスカート部24が設けられており、このスカート部24上にキートップ18が設けられているので、スカート部24によってスピーカ16の上側の音を周囲に漏らさず、キートップ18の複数の放音孔18aのみから上部ケース8の外部に確実に且つ良好に放音させることができる。
【0069】
また、このように、スピーカ16が音を発生している際に、キートップ18をキー操作しても、キートップ18の放音孔18aが使用者の指によって塞がれることがないため、スピーカ16で発生した上面側の音を、スカート部24によって周囲に漏らすことなく、キートップ18の放音孔18aから上部ケース8の外部に確実に且つ良好に放音させることができる。
【0070】
また、第1ケース1の下部ケース9内には、スピーカ嵌着部17の下側に音響空間28を形成する音響壁部27が設けられているので、スピーカ16の下面側から放音された音を音響空間28によって共鳴させることができ、これによってもスピーカ16で発生した音を良好に放音させることができる。
【0071】
さらに、このスピーカ16の実装構造では、接点シート13の外周縁に、回路基板10の外周縁を挟み込む挟持部15が設けられているので、接点シート13の挟持部15の内部に回路基板10の外周縁を嵌め込むだけで、接点シート13を回路基板10に簡単に且つ容易に取り付けることができる。このため、回路基板10に接点シート13を取り付けた状態で、1つの部品として管理することができるので、部品管理を容易にできる。
【0072】
また、回路基板10の外周縁に接点シート13の挟持部15が設けられていることにより、保管中に回路基板10が静電気による影響を軽減できると共に、回路基板10を接点シート13と共に上部ケース8に組み付ける際に、回路基板10の外周縁に位置する接点シート13の挟持部15を掴むことにより、回路基板10に触れずに、回路基板10を組み付けることができるので、これによっても回路基板10が静電気などの影響を受けることがない。このため、回路基板10の品質を維持することができるほか、接点シート13の挟持部15によって防水効果をも高めることができる。
【0073】
なお、上述した実施形態では、スピーカ16の外周部に係合突起22を設け、接点シート13のスピーカ嵌着部17の筒状部20に係合突起22が係合する位置決め用の係止溝部23を設けた場合について述べたが、これに限らず、接点シート13のスピーカ嵌着部17の筒状部20に係合突起22を設け、スピーカ16の外周部に係合突起22が係合する位置決め用の係止溝部23を設けた構成であっても良い。
【0074】
また、上述した実施形態では、接点シート13のスピーカ嵌着部17におけるストッパー部21の内周部上にスカート部24を形成した場合について述べたが、必ずしもストッパー部21の内周部上にスカート部24を形成する必要はなく、スピーカ嵌着部17における円筒部20の上部にスカート部24を形成した構成であっても良い。
【0075】
また、上述した実施形態では、スピーカ嵌着部17の外周に位置する箇所の接点シート13に複数の接点部25を環状に配列させて設け、この複数の接点部25を、ヒストリー(履歴)モードに切り替えるキースイッチ、表示のレイアウトを設定するキースイッチ、ジャンプモードを設定するキースイッチ、文字サイズを選択指定するキースイッチとして機能するように構成した場合について述べたが、これに限らず、第2ケース2の表示部7に表示されたカーソルを上下および左右方向に移動させるカーソルキーとして機能するように構成しても良い。
【0076】
さらに、上述した実施形態では、この発明のスピーカ16の実装構造を電子辞書に適用した場合について述べたが、必ずしも電子辞書に適用する必要はなく、例えば携帯電話機、携帯情報端末機(PDA:パーソナル・デジタル・アシスタント)などの各種の電子機器に広く適用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1 第1ケース
6 スピーカ部
8 上部ケース
8b 円形孔
9 下部ケース
10 回路基板
13 接点シート
15 挟持部
16 スピーカ
17 スピーカ嵌着部
18 キートップ
18a キートップの放音孔
19 回路基板の挿入孔
20 スピーカ嵌着部の筒状部
21 スピーカ嵌着部のストッパー部
22 スピーカの係合突起
23 スピーカ嵌着部の係止溝部
24 スピーカ嵌着部のスカート部
25 接点シートの接点部
26 接着剤
27 音響壁部
28 音響空間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を内蔵し、所定箇所に開口部が内外に貫通して設けられたケースと、前記回路基板上に配置された弾性を有する接点シートと、前記回路基板に電気的に接続されるスピーカと、を備え、
前記接点シートには、前記回路基板の上下に開放されて前記スピーカが圧入により嵌着するスピーカ嵌着部が、前記ケースの前記開口部に対応した状態で、一体に形成されていることを特徴とするスピーカの実装構造。
【請求項2】
前記スピーカ嵌着部は、前記接点シートの下面から前記回路基板の挿入孔を通して前記回路基板の下側に突出する筒状部と、この筒状部の上部からその内部に向けて突出したストッパー部とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のスピーカの実装構造。
【請求項3】
前記スピーカの外周部には、係合部が設けられており、前記スピーカ嵌着部には、前記スピーカの前記係合部が係合する位置決め用の係止部が設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のスピーカの実装構造。
【請求項4】
前記スピーカ嵌着部には、その上方に延出されて上部が開放された弾性変形可能なスカート部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスピーカの実装構造。
【請求項5】
前記接点シートには、前記スピーカ嵌着部の外周に沿って配列された複数の接点部が設けられており、前記スピーカ嵌着部の上部には、放音孔を有して前記ケースの前記開口部から外部に露出するキートップが、前記複数の接点部の各上部に亘って配置されていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスピーカの実装構造。
【請求項6】
前記ケースの内部には、前記スピーカ嵌着部の下側に音響空間を形成するための音響壁部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスピーカの実装構造。
【請求項7】
前記接点シートの外周縁には、前記回路基板の外周縁を挟み込む挟持部が設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載にスピーカの実装構造。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−113922(P2012−113922A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261018(P2010−261018)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】