説明

スピーカの振動板用の光拡散シート、スピーカの振動板及びスピーカ

【課題】光拡散シートを振動板としているスピーカにおいて、光拡散性を向上すること。
【解決手段】 振動板18の光拡散パターンが、中実の微小な三角錐26a、26bを互い違い状に隣合わせに配置した光拡散パターンであることから、振動板18の裏面の多色LED17から発せられ振動板18に入射し、これを透過して三角錐26a、26bの各側面から放射される際に、光拡散パターン(角錐26a、26b)のレンズ作用で十分に拡散されるのみならず、三角錐26a、26bの各側面から放射された光が隣接の三角錐26a、26bに入射し、そこで反射され或いは屈折されるので、最終的に放射される光の進路がきわめてランダムになり、光の拡散性が高まるという効果を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカの技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
透光性の合成樹脂製で片面に光拡散パターンが設けられた振動板と、この振動板の背後に配置されたLEDとを備えたスピーカが知られている(例えば特開2007−259244号公報)。
【特許文献1】特開2007−259244号公報
【特許文献2】特開2005−252424号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示されているスピーカの振動板に設けられた光拡散パターンは、凸条又は凹条を平行に配置、格子状に配置、同心円状に配置する等によって形成されていた。
また、特許文献2には、中空の微小な角錐を連続的に繋げて配置した光拡散パターンが開示されている。
【0004】
本発明は光拡散性をさらに良好にしたスピーカの振動板用の光拡散シート、これを用いたスピーカの振動板及びこの振動板を用いたスピーカを提案するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載のスピーカの振動板用の光拡散シートは、光を透過させる合成樹脂製であり、底面から頂部へと前記底面から離れるに従って前記底面に平行な断面の面積が小さくなる形状の微小立体を互いに隣合わせに配置した光拡散パターンがシートの片面に設けてあることを特徴とする。
【0006】
請求項2記載のスピーカの振動板用の光拡散シートは、 前記微小立体は、角錐、円錐、角錐台、円錐台のいずれかであることを特徴とする請求項1記載のスピーカの振動板用の光拡散シートである。
【0007】
請求項3記載のスピーカの振動板は、請求項1又は2に記載の光拡散シートを成形してなるスピーカの振動板である。
請求項4記載のスピーカは、請求項3に記載の振動板と、該振動板の背後に配されたLEDとを備えることを特徴とするスピーカである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
次に、本発明の実施例等により発明の実施の形態を説明する。なお、本発明は下記の実施例等に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でさまざまに実施できることは言うまでもない。
[実施例]
(光拡散シート)
図1に示すように、本実施例の光拡散シート25には、微小立体である三角錐26a、26bを互い違い状に隣合わせに配置した光拡散パターンが設けてある。
【0009】
詳細を図2に示すが、光拡散シート25の片面25aは平坦面であり、三角錐26a、26bによる凹凸構造は他方の面に設けられている。
三角錐26a、26bと光拡散シート25の基板部25bとに境界は無いのであるが、三角錐26a、26bの底面に相当する面を境界面として想定すれば、光拡散シート25は、平板なシート(基板部25b)の上面に多数の三角錐26a、26bを載せ置いた構造をしている。
【0010】
言うまでもないが、三角錐26a、26bは中実であり、2等辺三角形である底面から頂部へと底面から離れるに従って底面に平行な断面の面積が小さくなる形状をしている。
微小立体としては、底面が2等辺三角形以外の(例えば正三角形の)三角錐、4角錐、6角錐などの角錐、これらの角錐台、円錐、円錐台等が例示される。或いは半円、縦断面の輪郭が放物線となる立体等であってもよい。
【0011】
微小立体の高さ(基板部25bからの立ち上がり)は0.25mm以下(好ましくは0.1mm以下)、底面の寸法は、角錐又は角錐台の場合には1辺が0.1mm以上1.0mm以下(好ましくは0.13mm以上0.5mm以下)、円錐又は円錐台の場合には直径が0.1mm以上1.0mm以下(好ましくは0.13mm以上0.5mm以下)が推奨される。
【0012】
光拡散シート25の素材、すなわち光を透過させる合成樹脂としては、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル等が例示される。これらの中ではポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、アクリルが本発明に適している。
【0013】
なお、光拡散パターンは、上に例示した合成樹脂製シートにプレス加工して設けることができるが、他の加工方法を用いてもよい。
(スピーカ)
図3に示すように、本実施例のスピーカ1は、骨格となるフレーム3にて各部を支持する構成である。また、フレーム3の前端部は正方形のフランジ4とされており、フランジ4に設けられた穴5を使用してスピーカ1を固定できる。本実施例のスピーカ1は例えば遊技機の前枠等に取り付けて使用されるが、用途はこれに限るわけではなく、汎用できる。
【0014】
フレーム3の後壁7は壁孔9を有する円盤状であり、その背面7aにはマグネット10が取り付けられている。マグネット10の中心孔11は壁孔9と同軸で、図示するとおり一連になっている。
【0015】
その壁孔9及び中心孔11を貫通してボビン13が配されている。ボビン13の外周には、マグネット10の中心孔11と対面状にボイスコイル12が巻回されている。
また、ボビン13の外周にはダンパ14の内周部が連結され、ダンパ14の外周部は後壁7の前面7bに固定されている。すなわち、ボビン13はダンパ14を介してフレーム3(後壁7)に支持されており、壁孔9及び中心孔11と同軸、且つこれらとは非接触で、その軸方向に変位可能である。
【0016】
また、後壁7の前面7bには、ダンパ14の外周に沿った環状のプリント基板15が取り付けられている。このプリント基板15には、複数(本実施例では12個)の多色LED17が等間隔で実装されている。
【0017】
ボビン13の前端には振動板18の後端部が連結されている。振動板18は上述した光拡散シート25をコーン状に成形したもので、振動板18はエッジ19の外周部がリング21にてフレーム3に固定されている。また、振動板18の内側には、ボビン13の開口を覆うためのセンターキャップ22が取り付けられている。
【0018】
こうした構造であるから、ボイスコイル12に信号電流を流せば、ボイスコイル12が巻かれたボビン13を介して振動板18を振動させて、音声を発生させることができる。
また、振動板18には図1、図2に示す光拡散パターンが設けられている。 このため、多色LED17を点灯すると、それらから発せられた光は振動板18に設けられた光拡散パターンによって拡散させられて放射される。従って、振動板18のほぼ全域を発光による装飾効果のために利用できる。
【0019】
また、振動板18は光拡散パターンが設けられた光拡散シート25をコーン形状に成形したものであるから、その成形に伴って光拡散パターンにひずみが生じている。このひずみがあるために、例えば振動板18の中心部(ボビン13側)と外周部(エッジ19側)とで輝度が変化する等、光拡散パターンが設けられた平坦なシートに光を照射したときに比べて、拡散のパターンが変化に富んだものになっている。
【0020】
多色LED17から出た光が振動板18を透過する際に拡散されるので、振動板18の発光面積に対して多色LED17の数が少なくても、振動板18の全面を光らせることができる。
【0021】
振動板18の光拡散パターンが、中実の微小な三角錐26a、26bを互い違い状に隣合わせに配置した光拡散パターンであることから、振動板18の裏面の多色LED17から発せられ振動板18に入射し、これを透過して三角錐26a、26bの各側面から放射される際に、光拡散パターン(角錐26a、26b)のレンズ作用で十分に拡散されるのみならず、三角錐26a、26bの各側面から放射された光が隣接の三角錐26a、26bに入射し、そこで反射され或いは屈折されるので、最終的に放射される光の進路がきわめてランダムになり、光の拡散性が高まるという効果を奏する。
【0022】
一方、特許文献2のように、中空の微小な角錐の底部を振動板上に開口させて設けている構成であると、中空の角錐の内面から放射された光が開口から出てしまうので、最終的に放射される光の進路のランダム性において本発明に劣る。
【0023】
また、特許文献1のように、凸条又は凹条にて光拡散パターンを形成するのも、最終的に放射される光の進路のランダム性において本発明に劣る。
多色LED17が、ボイスコイル12を支持するダンパ14の外周に沿って配置されているが、後壁7の前面7b内でプリント基板が占める部分(ダンパ14の外側になる部分)は従来のスピーカにおいては使用されていなかった部分であるから、多色LED17(プリント基板15)をスピーカ1に装備するために新規なスペースを創出する必要がなく、スピーカ1は大型化しない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例の光拡散シートの平面図。
【図2】実施例の光拡散シートの一部を拡大した平面図(a)、A−A断面図(b)、B−B断面図(c)、単位三角錐の平面図(d)、光路の説明図(e)。
【図3】実施例のスピーカの正面図(a)、縦断面図(b)、側面図(c)及び背面図(d)。
【符号の説明】
【0025】
1・・・スピーカ、
3・・・フレーム、
7・・・後壁、
10・・・マグネット、
12・・・ボイスコイル、
13・・・ボビン、
14・・・ダンパ、
15・・・プリント基板、
17・・・多色LED、
18・・・振動板、
22・・・センターキャップ、
25・・・光拡散シート、
26a、26b・・・三角錐(微小立体)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を透過させる合成樹脂製であり、
底面から頂部へと前記底面から離れるに従って前記底面に平行な断面の面積が小さくなる形状の微小立体を互いに隣合わせに配置した光拡散パターンがシートの片面に設けてある
ことを特徴とする
スピーカの振動板用の光拡散シート。
【請求項2】
前記微小立体は、角錐、円錐、角錐台、円錐台のいずれかである
ことを特徴とする請求項1記載のスピーカの振動板用の光拡散シート。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の光拡散シートを成形してなるスピーカの振動板。
【請求項4】
請求項3に記載の振動板と、
該振動板の背後に配されたLEDと
を備えることを特徴とするスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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