説明

スピーカグリル

【課題】目隠しシートの取付けをカシメ加工を施すことなく簡単に行う。
【解決手段】3つの差込み片31がパネル本体17の裏面と隙間をあけ、かつ先端を放音部25の外側方に向けて放音部25を囲むようにパネル本体17の裏面に突設されている。切込み部s2が目隠しシートSに差込み片31に対応して形成されている。目隠しシートSは、放音部25の裏面に対応配置された状態で、差込み片31を切込み部s2に差し込むことでパパネル本体17の裏面に取り付けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、多数の貫通孔が集合した放音部を裏面側から目隠しシートで覆うようにしたスピーカグリルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、スピーカグリルを備えた車両用ドアトリムが開示されている。上記スピーカグリルの放音部には、格子状リブが一体に形成され、該格子状リブの適数箇所には、突起が一体に突設されている。上記放音部は、裏面側から目隠しシートで覆われるようになっている。該目隠しシートには、スリットが上記突起に対応するように形成されていて、目隠しシートを放音部の裏面に重ねて上記突起を上記スリットから突出させ、当該突起をカシメ加工することで、目隠しシートが放音部から外れないようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−292438号公報(段落0018欄、段落0022欄、図2〜図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の特許文献1のスピーカグリルは、目隠しシートの取付けにカシメ加工が必要であるため、手間が掛かる。
【0005】
この発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、目隠しシートの取付けをカシメ加工を施すことなく簡単に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、この発明は、目隠しシートを引っ掛けることで簡単に取り付けるようにしたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、この発明は、多数の貫通孔が集合した放音部を有するパネル本体と、該パネル本体の裏面に上記放音部を覆うように取り付けられた目隠しシートとを備えたスピーカグリルを対象とし、次のような解決手段を講じた。
【0008】
すなわち、第1の発明は、上記パネル本体の裏面には、少なくとも3つの差込み片が上記パネル本体の裏面と隙間をあけ、かつ先端を上記放音部の外側方に向けて該放音部を囲むように突設され、上記目隠しシートには、切込み部が上記差込み片に対応して形成され、上記目隠しシートは、上記放音部の裏面に対応配置された状態で、上記差込み片を上記切込み部に差し込むことで上記パネル本体の裏面に取り付けられていることを特徴とする。
【0009】
第2の発明は、第1の発明において、上記差込み片の少なくとも1つの差込み片の突出端には、突片がパネル本体の裏面側に向かって突設されていることを特徴とする。
【0010】
第3の発明は、第1又は第2の発明において、上記パネル本体の裏面には、環状リブが上記放音部を環状に取り囲むように突設され、上記差込み片は、上記環状リブの側壁外面のリブ突出端寄りに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1の発明によれば、パネル本体の裏面に形成された差込み片を目隠しシートの切込み部に差し込むだけで、目隠しシートが放音部を覆うようにパネル本体の裏面に簡単に取り付けられる。
【0012】
第2の発明によれば、差込み片の突出端に形成された突片が目隠しシートの切込み部周辺をパネル本体の裏面側に押すことで、目隠しシートがパネル本体から外れ難くなる。
【0013】
第3の発明によれば、目隠しシートがパネル本体の裏面に取り付けられた状態で、目隠しシートの外周部分が環状リブのリブ突出端に当接してパネル本体の裏面側に引っ張られることで、目隠しシートが放音部に緊張状態で取り付けらてパネル本体からの外れ防止が確実になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るスピーカグリル、スピーカ及びインストルメントパネル本体の組付け前の斜視図である。
【図2】実施形態に係るスピーカグリルを裏面側から見た分解斜視図である。
【図3】実施形態に係るスピーカグリルの裏面図である。
【図4】(a)は目隠しシート取付け終了直前の図3のA−A線に対応する断面図、(b)は図3のA−A線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は車両用インストルメントパネルの主体をなす樹脂製インストルメントパネル本体1を示す。
【0017】
該インストルメントパネル本体1の車体前端側には、車幅方向に延びる細長いフロントデフロスターエア吹出口3が形成されている。上記フロントデフロスターエア吹出口3よりも車体後方側で車幅方向両端側には、円形のサイドベントエア吹出口5が、車幅方向中程には、矩形のスピーカ取付部7がそれぞれ形成されている。
【0018】
該スピーカ取付部7は、中央に円形の装着孔9を有し、該装着孔9にスピーカ11が装着されて、スピーカグリル13で施蓋されるようになっている。上記スピーカ取付部7の装着孔9周りには、4つの係止孔15が形成されている。
【0019】
上記スピーカグリル13は、上記スピーカ取付部7と同形状の矩形板状の樹脂製パネル本体17と、目隠しシートSとを備え、上記パネル本体17の裏面四隅には、図2に示すように、係止手段19が上記係止孔15に対応するように1つずつ設けられている。
【0020】
該係止手段19は、パネル本体17の裏面に一体に突設された略H字状の取付座21に樹脂製係止爪23を取り付けて構成されている。
【0021】
具体的には、上記取付座21の突出方向中程には取付孔21aが形成され、一方、上記係止爪23は、先端から二股に分岐した一対の係止片部23aと、該係止片部23aの内側に一体に形成された一対の爪部23bとからなり、該爪部23bを上記取付孔21aに両側から係止させることで、係止爪23が取付座21に取り付けられて上記係止手段19が構成されている。
【0022】
そして、上記係止爪23を上記スピーカ取付部7の係止孔15に挿入してその周縁に上記係止片部23aを係止させることで、スピーカグリル13がスピーカ取付部7から脱落しないようになっている。なお、図2では、係止爪23は1つしか表していないが、個々の取付座21にそれぞれ取り付けられている。
【0023】
上記パネル本体17の外周部分を除く領域には、円形の放音部25が上記4つの係止手段19で囲まれるように設けられ、該放音部25は、パネル本体17を表裏に貫通する多数の貫通孔25aが集合して構成されている。図2では、貫通孔25aを部分的にしか表していない。
【0024】
上記パネル本体17の裏面には、円形の環状リブ27が上記放音部25を環状に取り囲むように一体に突設され、上記放音部25の裏面には、4つの補強リブ29が十文字状に一体に突設され、これら補強リブ29は、放音部25の中心から放射状に延びて上記環状リブ27の側壁内面に一体に連結され、放音部25を四等分している。そして、上記貫通孔25aは、上記放音部25の補強リブ29を除く領域に形成され、当該補強リブ29に対応する箇所には、貫通孔25aはなく凹部25bが形成されている(図4参照)。
【0025】
上記パネル本体17の裏面、詳しくは、上記環状リブ27の側壁外面のリブ突出端寄りには、図4にも示すように、3つの矩形枠状の差込み片31が上記パネル本体17の裏面と隙間をあけ、かつ先端を上記放音部25の外側方に向けて該放音部25を囲むように一体に突設されている。上記3つの差込み片31のうち1つの差込み片31の突出端には、突片31aがパネル本体17の裏面側に向かって一体に突設されている。また、上記各差込み片31には、開口部31bがパネル本体17の表裏方向に貫通形成されている。この開口部31bは、3つの差込み片31全てに形成されているが、上記突片31aを有する差込み片31にのみ形成されていればよい。つまり、成形時に突片31aがアンダーカットを構成するため、突片31aの背面形状をスライド型で形成する必要があるからである。
【0026】
一方、上記目隠しシートSは、図3に示すように、上記パネル本体17の裏面に上記放音部25を覆うように取り付けられている。この目隠しシートSは、図2にも示すように、上記環状リブ27(放音部25)よりも若干大きく形成され、外周部には3つの膨出部s1が円周を三等分するように形成され、各々の膨出部s1の基端には、切込み部s2が上記差込み片31に対応して形成されている。この目隠しシートSは、引っ張ったら伸びる素材で構成されている。例えば、不織布、織布、編布、ウレタンシート等である。そして、上記目隠しシートSは、上記放音部25の裏面に対応配置された状態で、上記差込み片31を上記切込み部s2に差し込むことで上記パネル本体17の裏面に取り付けられている。
【0027】
具体的には、パネル本体17を裏向きにして、目隠しシートSを放音部25の裏面に対応配置し、この状態で、まず、図4(a)に仮想線で示すように、突片31aのない隣り合う2つの差込み片31に目隠しシートSの隣り合う2つの切込み部s2を対応させて、各々の差込み片31を各切込み部s2に差し込み、残りの切込み部s2側の膨出部s1を指Fで引っ張りながら押し下げて、突片31aのある差込み片31を当該切込み部s2に差し込む(図4(a)実線参照)。その後、指Fを膨出部s1から離すと、引張力から解放された当該膨出部s1が縮み、図4(b)に示すように、突片31aが膨出部s1の切込み部s2を押し広げるようにして膨出部s1の切込み部s2周辺に食い込んだ状態となる。これにより、図3及び図4(b)に示すように、差込み片31の突片31aで目隠しシートSの切込み部s2周辺をパネル本体17の裏面側に押し、目隠しシートSが緊張状態でパネル本体17の裏面(環状リブ27)に膨出部s1を覆うように取り付けられる。
【0028】
このように、実施形態に係るスピーカグリル13では、パネル本体17の裏面に形成された3つの差込み片31を目隠しシートSの3つの切込み部s2にそれぞれ差し込むことで、目隠しシートSをパネル本体17の裏面に取り付けて放音部25を覆うようにしているので、目隠しシートSの取付作業を簡単に行うことができる。
【0029】
また、目隠しシートSをパネル本体17の裏面に取り付けた状態で、差込み片31の突出端に形成された突片31aで目隠しシートSの切込み部s2周辺をパネル本体17の裏面側に押すようにしているので、目隠しシートSがパネル本体17から外れ難くすることができる。
【0030】
さらに、目隠しシートSをパネル本体17の裏面に取り付けた状態で、目隠しシートSの外周部分を環状リブ27のリブ突出端に当接させてパネル本体17の裏面側に引っ張るようにしているので、目隠しシートSを放音部25に緊張状態で取り付けてパネル本体17からの離脱を確実に防止することができる。
【0031】
なお、上記の実施形態では、パネル本体17の裏面に3つの差込み片31を突設したが、差込み片31の数は4つ以上であってもよい。
【0032】
また、上記の実施形態では、差込み片31を環状リブ27の側壁外面に突設したが、環状リブ27をなくして、逆L字状の突起を放音部25周りに先端が放音部25の外側方に向くように突設して当該突起の先端で差込み片31を構成してもよい。
【0033】
さらに、上記の実施形態では、3つの差込み片31のうち1つの差込み片31にのみ突片31aを突設したが、2つの差込み片31に突片31aを突設してもよく、あるいは全ての差込み片31に突片31aを突設してもよい。差込み片31を4つ以上設けた場合でも、全ての差込み片31に突片31aを突設してもよく、一部の差込み片31を除いて突片31aを突設してもよい。
【0034】
さらにまた、上記の実施形態では、スピーカグリル13を車両のインストルメントパネル本体1に適用した場合を示したが、ドアトリム等にも適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
この発明は、多数の貫通孔が集合した放音部を裏面側から目隠しシートで覆うようにしたスピーカグリルについて有用である。
【符号の説明】
【0036】
13 スピーカグリル
17 パネル本体
25 放音部
25a 貫通孔
27 環状リブ
31 差込み片
31a 突片
S 目隠しシート
s2 切込み部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の貫通孔(25a)が集合した放音部(25)を有するパネル本体(17)と、
該パネル本体(17)の裏面に上記放音部(25)を覆うように取り付けられた目隠しシート(S)とを備えたスピーカグリルであって、
上記パネル本体(17)の裏面には、少なくとも3つの差込み片(31)が上記パネル本体(17)の裏面と隙間をあけ、かつ先端を上記放音部(25)の外側方に向けて該放音部(25)を囲むように突設され、
上記目隠しシート(S)には、切込み部(s2)が上記差込み片(31)に対応して形成され、
上記目隠しシート(S)は、上記放音部(25)の裏面に対応配置された状態で、上記差込み片(31)を上記切込み部(s2)に差し込むことで上記パネル本体(17)の裏面に取り付けられていることを特徴とするスピーカグリル。
【請求項2】
請求項1に記載のスピーカグリルにおいて、
上記差込み片(31)の少なくとも1つの差込み片(31)の突出端には、突片(31a)がパネル本体(17)の裏面側に向かって突設されていることを特徴とするスピーカグリル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスピーカグリルにおいて、
上記パネル本体(17)の裏面には、環状リブ(27)が上記放音部(25)を環状に取り囲むように突設され、
上記差込み片(31)は、上記環状リブ(27)の側壁外面のリブ突出端寄りに形成されていることを特徴とするスピーカグリル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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