説明

スピーカ及びその製造方法

【課題】スピーカの磁気回路周辺の構成部品の結合安定化、結合強度の向上が可能なスピーカ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】磁気ギャップ2aを有する磁気回路を備えたフレーム1と、上記磁気ギャップ2aの上部に近接配置されるボイスコイル5を結合し、外周が上記フレーム1に結合された振動板6からなるスピーカにおいて、上記磁気回路は、底部と壁部を有するヨーク2の底部中央にマグネット3を配設し、このヨーク2の内壁とマグネット3の周面間に形成される空隙部に設けられた樹脂4によりマグネット3とヨーク2を結合した構成により、マグネット3とヨーク2の結合に接着剤を用いないために構成部品の結合安定化と結合強度を向上することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は各種音響機器、電子機器や携帯電話等に使用されるスピーカ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、小型の電子機器や携帯電話に関しては、更なる小型化が進む一方で、高音質化をも求められるようになってきており、このような機器に搭載されるスピーカも同様に薄型化、スリム化及び高音質化が求められている。
【0003】
図8はこの種の従来のスリム型のスピーカの構成を示した断面図、図9は同スピーカに使用されるボイスコイルを示した平面図であり、本出願人がスリム型のスピーカとして提案したものである。
【0004】
図8、図9において、30は第1のマグネット、31はこの第1のマグネット30を中心に結合した第1のヨークであり、これにより第1の磁気ギャップ30aを設けた第1の磁気回路32が構成されている。33は上記第1のヨーク31を中心に結合した第1のフレーム、33aはこの第1のフレーム33に設けられた空気孔である。34は振動板、34aはこの振動板34に設けられたエッジであり、この振動板34の周縁は上記第1のフレーム33の周縁に結合されている。35は上記振動板34に結合されたボイスコイルであり、このボイスコイル35は上記第1の磁気ギャップ30aと対応する形状に複数ターン巻回されたものである。
【0005】
36は上記振動板34を挟むようにして第1の磁気回路32と対称に配設された第2の磁気回路であり、第1の磁気回路32と同様に、第2のヨーク37の中心に第2のマグネット38を結合することにより第2の磁気ギャップ38aを設け、この第2の磁気回路36を第2のフレーム39の中心に結合して構成されているものである。39aは第2のフレーム39に設けられた空気孔である。
【0006】
35aは上記ボイスコイル35の始終端に夫々接続された外部引き出し用のリード線であり、このリード線35aの一端を第1(または第2)のフレーム33に結合された図示しない端子に半田付けによって接続するように構成されているものである。
【0007】
このように構成された従来のスピーカは、上記第1のマグネット30と第2のマグネット38は厚み方向に、かつ夫々が反発する方向に着磁され、第1の磁気ギャップ30aと第2の磁気ギャップ38aから夫々発生する漏れ磁界を最大に活用できる位置にボイスコイル35を配置することにより、ボイスコイル35に音声信号を入力することによってボイスコイル35が上下に振幅し、これによってボイスコイル35を結合した振動板34が振幅して音響再生を行うように構成されたものであった。
【0008】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1が知られている。
【特許文献1】特開2004−88739号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら上記従来のスピーカでは、第1(及び第2)の磁気回路32は第1(及び第2)のマグネット30と第1(及び第2)のヨーク31を接着剤を用いて結合した構成であるため、接着剤の塗布量不足や塗布量ばらつき、塗布位置ばらつきにより安定した接着結合を実施できず、接着はずれを発生する可能性があるという大きな課題を有したものであった。
【0010】
なお、このような同様の課題を解決する手段として、特開2002−16998号公報において、図10に示すように複数のガイドピン40aを設けたガイドリング40を磁気ギャップ41内に配設して組み立てを行う方法も提案されているが、この内容は外磁型スピーカに関するものであり、磁気ギャップ41が必要以上に狭くなるために各部品の寸法精度や組み立て作業が難しくなるという課題を有したものであった。
【0011】
本発明はこのような従来の課題を解決し、構成部品の結合強度を向上することができ、品質及び信頼性の高いスピーカ及びその製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために本発明は、マグネットとヨークを結合することにより構成された磁気ギャップを有する磁気回路と、この磁気回路を結合したフレームと、上記磁気ギャップの上部に磁気ギャップと非接触状態で近接配置されるボイスコイルを結合し、外周部が上記フレームに結合された振動板からなるスピーカにおいて、上記磁気回路は、底部と壁部を有するヨークの底部中央にマグネットを配設し、このヨークの内壁とマグネットの周面との間に形成される空隙部の少なくとも一部に設けられた樹脂によりマグネットとヨークを結合して磁気ギャップを形成した構成にしたものである。
【発明の効果】
【0013】
以上のように本発明によるスピーカは、ヨークの内壁とマグネットの周面との間に形成される空隙部の少なくとも一部に樹脂を設けることによりマグネットとヨークを結合して磁気ギャップを形成した磁気回路を構成するようにしたことにより、マグネットとヨークの結合に接着剤を用いずに結合構成することで、構成部品の結合強度を向上することができるようになるという格別の効果が得られるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
以下、実施の形態1を用いて、本発明の特に請求項1、5〜7に記載の発明について説明する。
【0015】
図1は本発明の実施の形態1によるスピーカの構成を示した断面図、図2は同スピーカの磁気回路を示した断面図であり、図1と図2において、1は樹脂製の第1のフレーム、2はこの第1のフレーム1の中心にインサート成形された金属磁性材料からなる第1のヨーク、3はこの第1のヨーク2の中心に配設された第1のマグネット、4はこの第1のマグネット3の外周と上記第1のヨーク2の内壁との間に形成される第1の磁気ギャップ2a内に充填された樹脂であり、この樹脂4により第1のヨーク2の所定の位置に第1のマグネット3を結合して第1の磁気回路を構成しているものである。
【0016】
5はボイスコイルであり、このボイスコイル5はポリイミド製の基材の表裏面に銅めっきにより所望のパターンのボイスコイルが巻回状態で形成され、この巻回されたボイスコイルは上記磁気ギャップ2aと略同形状に形成されているものである。6は樹脂製の振動板であり、周縁にエッジ部6aが一体で形成されているものである。
【0017】
7は樹脂製の第2のフレーム、8はこの第2のフレーム7の中心にインサート成形された金属磁性材料からなる第2のヨーク、9はこの第2のヨーク8の中心に配設された第2のマグネット、10はこの第2のマグネット9の外周と上記第2のヨーク8の内壁との間に形成される第2の磁気ギャップ8a内に充填された樹脂であり、この樹脂10により第2のヨーク8の所定の位置に第2のマグネット9を結合して第2の磁気回路を構成しているものである。
【0018】
また、上記第2の磁気回路は上記振動板6を介して対向して配設されることにより、振動板6の周縁の貼り付け部を第1のフレーム1の周縁と第2のフレーム7の周縁で挟み込むように結合すると共に、振動板6に結合されたボイスコイル5が第1の磁気ギャップ2aと第2の磁気ギャップ8a(樹脂4、10)の略中間位置に配設されるように構成されたものである。
【0019】
このように構成された本実施の形態によるスピーカは、ヨークとマグネットにより構成される磁気回路に形成される磁気ギャップ内に樹脂を充填することにより結合して磁気回路を組み立てる構成にしたことにより、磁気回路の組み立てに接着剤を使用しなくても良いために作業を簡素化することができるばかりでなく、接着剤の塗布量不足や塗布量ばらつき、塗布位置ばらつきによる接着結合の不安定要因をなくすことができる。よって安定した結合により品質および信頼性の向上を図ることができる。さらに、上記充填した樹脂を加熱等の手段によって除去することにより磁気回路を分解することができるため、磁気回路部品の再利用あるいは分別廃棄を極めて容易に行うことができるようになり、地球環境保護の観点から地球に優しいスピーカを提供することができるようになるものである。
【0020】
なお、上記磁気ギャップ内に充填する樹脂は非磁性材料により構成されているために、磁気回路に形成される磁気ギャップから発生する磁界には何ら影響を与えることはなく、しかも本実施の形態によるスピーカは磁気ギャップから発生する磁界の中で漏れ磁界を利用する構成のものであるために、磁気ギャップ内に隙間無く樹脂を充填して高い結合力を得ることができるものである。
【0021】
さらに組立て精度についても、磁気ギャップ内に樹脂を充填するための設備や金型等を用いて生産しているため、従来の接着剤による方法と比較して高精度に実施することができ、性能の安定化を図ることができる。
【0022】
また、磁気回路を構成するマグネットに樹脂マグネットを用いた構成にすることにより、公知の2色成形技術を応用して、さらに製造工程の削減と寸法制度の向上を図ることが可能になるものである。
【0023】
また、本実施の形態においては、振動板6を介して2つの磁気回路を対向して配設した構成のものを例にして説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、磁気回路が1つの構成のものであっても同様の効果が得られるものである。
【0024】
(実施の形態2)
以下、実施の形態2を用いて、本発明の特に請求項2に記載の発明について説明する。
【0025】
図3は本発明の実施の形態2によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図であり、図3において、11は樹脂製のフレーム、12はこのフレーム11の中心にインサート成形された金属磁性材料からなるヨーク、13はこのヨーク12の中心に配設されたマグネットである。
【0026】
また、このマグネット13は上記フレーム11を成形する際にヨーク12と共にインサート成形された構成のものであり、これにより、マグネット13の外周とヨーク12の内壁との間に形成される磁気ギャップ12a内にもフレーム11を構成する樹脂が充填され、この磁気ギャップ12a内に充填された樹脂によりヨーク12の所定の位置にマグネット13を結合して磁気回路を構成しているものである。
【0027】
このように構成された本実施の形態によるスピーカは、樹脂製のフレーム11を成形する際に磁気回路をインサート成形した構成により、部品点数ならびに組み立て工数の削減を図ってコスト低減を図ることができるばかりでなく、一体化による寸法精度の向上が可能となり、性能と品質を同時にレベルアップすることが可能になるものである。
【0028】
(実施の形態3)
以下、実施の形態3を用いて、本発明の特に請求項3に記載の発明について説明する。
【0029】
図4は本発明の実施の形態3によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図であり、図4において、14は樹脂製のフレーム、15はこのフレーム14の中心にインサート成形された金属磁性材料からなるヨーク、15aはこのヨーク15の壁部に設けた貫通孔、16はヨーク15の中心に配設されたマグネット、17はこのマグネット16の外周と上記ヨーク15の内壁との間に形成される磁気ギャップ15b内に充填された樹脂であり、この樹脂17によりヨーク15の所定の位置にマグネット16を結合して磁気回路を構成しているものである。
【0030】
このように構成された本実施の形態によるスピーカは、上記ヨーク15の壁部に貫通孔15aを設けた構成にしたことにより、この貫通孔15a内にも樹脂が充填されるようになるために、ヨーク15とマグネット16からなる磁気回路の結合強度がさらに高まり、信頼性の向上を図ることができるものである。
【0031】
(実施の形態4)
以下、実施の形態4を用いて、本発明の特に請求項4に記載の発明について説明する。
【0032】
図5〜図7は本発明の実施の形態4によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図であり、図5において、18は樹脂製のフレーム、19はこのフレーム18の中心にインサート成形された金属磁性材料からなるヨーク、20はこのヨーク19の中心に配設されたマグネット、21はこのマグネット20の上面に配設されたプレート、22はこのプレート21とマグネット20の外周と上記ヨーク19の内壁との間に形成される磁気ギャップ19a内に充填された樹脂であり、この樹脂22によりヨーク19の所定の位置にマグネット20とプレート21を結合して磁気回路を構成しているものである。
【0033】
このように構成された本実施の形態によるスピーカは、マグネットの上面にプレートを配設して用いる構成のスピーカにおいても、上記実施の形態1によるスピーカと同様の効果が得られるものである。
【0034】
また、図6は本実施の形態によるスピーカの磁気回路の他の構成を示した断面図であり、上記図5によるスピーカと同様に、マグネットの上面にプレートを配設して用いる構成の磁気回路をフレーム11の成形時にインサート成形したものであり、これにより上記実施の形態2によるスピーカと同様の効果が得られるものである。
【0035】
また、図7は本実施の形態によるスピーカの磁気回路の他の例を示した断面図であり、上記図5によるスピーカと同様に、マグネットの上面にプレートを配設して用いる構成の磁気回路のヨークの壁部に貫通孔を設けた構成のものであり、これにより上記実施の形態3によるスピーカと同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によるスピーカは、磁気回路の組み立てに接着剤を使用しなくても良いために作業を簡素化することができるばかりでなく、構成部品の結合を安定させ、結合強度を向上できるスピーカを要望される分野等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の実施の形態1によるスピーカの構成を示した断面図
【図2】同スピーカの磁気回路を示した断面図
【図3】本発明の実施の形態2によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図
【図4】本発明の実施の形態3によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図
【図5】本発明の実施の形態4によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図
【図6】本発明の実施の形態4によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図
【図7】本発明の実施の形態4によるスピーカの磁気回路の構成を示した断面図
【図8】従来のスリム型のスピーカの構成を示した断面図
【図9】同スピーカに使用されるボイスコイルを示した平面図
【図10】従来のスピーカの他の例を示した半断面図
【符号の説明】
【0038】
1 第1のフレーム
2 第1のヨーク
2a 第1の磁気ギャップ
3 第1のマグネット
4、10、17、22 樹脂
5 ボイスコイル
6 振動板
6a エッジ部
7 第2のフレーム
8 第2のヨーク
8a 第2の磁気ギャップ
9 第2のマグネット
11、14、18 フレーム
12、15、19 ヨーク
13、16、20 マグネット
15a 貫通孔
15b、19a 磁気ギャップ
21 プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マグネットとヨークを結合することにより構成された磁気ギャップを有する磁気回路と、この磁気回路を結合したフレームと、上記磁気ギャップの上部に磁気ギャップと非接触状態で近接配置されるボイスコイルを結合し、外周部が上記フレームに結合された振動板からなるスピーカにおいて、上記磁気回路は、底部と壁部を有するヨークの底部中央にマグネットを配設し、このヨークの内壁とマグネットの周面との間に形成される空隙部の少なくとも一部に設けられた樹脂によりマグネットとヨークを結合して磁気ギャップを形成したものであるスピーカ。
【請求項2】
フレームを樹脂により形成し、このフレームを成形する際に磁気回路をインサート成形することにより、ヨークの内壁とマグネットの周面との間に形成される空隙部に樹脂が充填されるようにした請求項1に記載のスピーカ。
【請求項3】
磁気回路を構成するヨークの壁部に貫通孔を設け、この貫通孔の内部に樹脂が充填されるようにした請求項2に記載のスピーカ。
【請求項4】
磁気回路を構成するマグネットの上面にプレートを配設し、マグネットとプレートとヨークを樹脂により結合して磁気ギャップを有する磁気回路を構成した請求項1に記載のスピーカ。
【請求項5】
磁気回路を構成するマグネットに樹脂マグネットを用いた請求項1に記載のスピーカ。
【請求項6】
磁気ギャップを有する磁気回路を結合したフレームを振動板を介して対称に対向配置した請求項1に記載のスピーカ。
【請求項7】
ヨークの底部中央にマグネットを配設し、このヨークの内壁とマグネットの周面との間に形成される空隙部に樹脂が充填されるようにしてフレームを成形することにより、磁気ギャップを有した磁気回路がインサートされたフレームを作製する工程と、上記磁気ギャップの上部に磁気ギャップと非接触状態で近接配置されるボイスコイルを結合した振動板の外周部を上記フレームの周縁に結合する工程とを有したスピーカの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−94269(P2006−94269A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−279059(P2004−279059)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】