説明

スピーカ用ヨーク及びこのスピーカ用ヨークを備えたスピーカ

【課題】組み立てにかかる工数などを削減して、同軸スピーカのコストの高騰を抑制できるスピーカ用ヨーク及びこのスピーカ用ヨークを備えたスピーカを提供する。
【解決手段】同軸スピーカは互いに同軸に設けられた大型スピーカと小型スピーカを備えている。大型スピーカはヨーク7を備えている。ヨーク7は導電性と磁性との双方を有する材料で構成された一対のヨーク本体10と一対のヨーク本体10間に設けられた絶縁部材11とを備えている。ヨーク本体10には小型スピーカのボイスコイルに接続される接続用コードが取り付けられるねじ孔15が設けられている。一対のヨーク本体10が同形状に形成されている。絶縁部材11は一対のヨーク本体10同士を連結し一対のヨーク本体10を互いに電気的に絶縁している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、音声電流が供給されることで振動板を振動させて音を発生するスピーカのスピーカ用ヨーク及びこのスピーカ用ヨークを備えたスピーカに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、オーディオ装置には、スピーカとして、低音用の大型スピーカと高音用の小型スピーカとを同軸に設けた同軸スピーカが用いられることがある。この種の同軸スピーカは、大型スピーカのヨークのセンターポールの端面上に小型スピーカを重ねて配置する。小型スピーカのボイスコイルには、ヨークのセンターポールに孔内に通された接続用のコードを接続することで、当該ボイスコイルに音声電流を供給してきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述した従来の同軸スピーカは、接続用のコードを通すための孔をヨークのセンターポールに設けるために組み立てに係る工数が増加するとともに、接続用のコードをセンターポールに設けた孔内に通す必要があるなどの問題があって、コストが高騰する傾向であった。
【0004】
したがって、本発明の目的は、例えば、組み立てにかかる工数などを削減して、同軸スピーカのコストの高騰を抑制できるスピーカ用ヨーク及びこのスピーカ用ヨークを備えたスピーカを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明のスピーカ用ヨークは、スピーカの磁気回路部を構成するスピーカ用ヨークにおいて、導電性と磁性との双方を有する材料で構成された一対のヨーク本体と、前記一対のヨーク本体間に設けられ、かつ前記一対のヨーク本体同士を連結するとともに、前記一対のヨーク本体を互いに電気的に絶縁する絶縁部材と、を備えたことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】本発明の一実施例にかかる同軸スピーカの断面図である。
【図2】図1に示された同軸スピーカの要部の断面図である。
【図3】図1に示された同軸スピーカのスピーカ用ヨークの斜視図である。
【図4】図2に示された同軸スピーカの変形例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の一実施形態を説明する。本発明の一実施形態にかかるスピーカ用ヨークは、導電性と磁性との双方を有するヨーク本体を一対設け、これら一対のヨーク本体間に絶縁部材を設けているので、ヨーク本体を介して、当該ヨーク本体上に重ねられる小型スピーカのボイスコイルに音声電流を供給することができる。このために、ヨーク本体などに小型スピーカのボイスコイルに接続する接続用のコードを通すための孔を設ける必要がない。よって、孔を設けるための工数を必要としないとともに、接続用のコードを孔内に通す必要がない。したがって、本実施形態のスピーカ用ヨークは、同軸スピーカのコストの高騰を抑制することができる。
【0008】
また、ヨーク本体に接続線が取り付けられる取付部を設けてもよい。この場合、ヨーク本体を介して容易に小型スピーカのボイスコイルに音声電流を供給することができる。
【0009】
さらに、一対のヨーク本体を同形状に形成してもよい。この場合、一対のヨーク本体のインピーダンスを一致させることができる。
【0010】
本発明は、前述したスピーカ用ヨークを備えたスピーカとしてもよい。この場合、コストの高騰を確実に抑制することができる。
【実施例】
【0011】
本発明の一実施例を、図1ないし図3に基づいて説明する。本発明の一実施例に係るスピーカとしての同軸スピーカ1は、図1及び図2に示すように、大型スピーカ2と、小型スピーカ3とを備えている。
【0012】
大型スピーカ2は、比較的低音領域の音声を出力するために用いられる。大型スピーカ2は、図1及び図2に示すように、磁気回路部4と、スピーカフレーム5と、振動部6と、を備えている。
【0013】
磁気回路部4は、図1及び図2などに示すように、スピーカ用ヨーク(以下、単にヨークと呼ぶ)7と、磁石8と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたプレート9と、を備えている。
【0014】
ヨーク7は、図2及び図3に示すように、一対のヨーク本体10と、一つの絶縁部材11と、絶縁シート12とを備えている。ヨーク本体10は、導電性を有する磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されている。即ち、ヨーク本体10は、導電性と磁性との双方を有する材料で構成されている。ヨーク本体10は、半円盤状の円盤部13と、外径が円盤部13の外径よりも小さな半円柱状のセンターポール部14と、を一体に備えている。センターポール部14は、円盤部13の平坦な外側面13aの中央から立設している。センターポール部14の平坦な外側面14aと円盤部13の平坦な外側面13aとが同一平面上に位置するように、センターポール部14と円盤部13とが一体に連なっている。また、一対のヨーク本体10は、前述したセンターポール部14と円盤部13とを一体に備えて、互いに同形状に形成されている。
【0015】
なお、ヨーク本体10の円盤部13などには、外部から小型スピーカ3用の音声電流が供給される図示しない端子がそれぞれ設けられている。また、ヨーク本体10のセンターポール部14の円盤部13から離れた側の先端面14bには、小型スピーカ3の後述するボイスコイル45に接続する接続線としての接続用のコード52の端末に取り付けられたボルト51がねじ込まれるねじ孔15(特許請求の範囲に記載された取付部に相当する)が設けられている。このように、ねじ孔15には、ボルト51がねじ込まれることで接続用のコード52が取り付けられる。ヨーク本体10は、導電性を有する材料で構成されていることで、前述した端子を介して供給された小型スピーカ3の音声電流を、ねじ孔15を介して当該小型スピーカ3のボイスコイル45に供給する。
【0016】
絶縁部材11は、絶縁性の合成樹脂で構成され、ヨーク本体10の外側面13a,14a間に位置して、これらの外側面13a,14aに密着している。絶縁部材11は、厚みが一定の平盤状に形成されている。図示例では、絶縁部材11は、所謂、アウトサート成型により一対のヨーク本体10と一体に成型されているものとするが、他の方法により成型されるものでもよい。絶縁部材11は、一対のヨーク本体10間に設けられて、これら一対のヨーク本体10同士を電気的に絶縁している。
【0017】
絶縁シート12は、絶縁性の合成樹脂で構成され、ヨーク本体10のセンターポール部14が立設した側の円盤部13の表面の全体に貼り付けられている。絶縁シート12は、ヨーク本体10と磁石8とを電気的に絶縁している。
【0018】
前述した構成のヨーク7は、センターポール部14と円盤部13とを一体に備えたヨーク本体10を一対備え、これら一対のヨーク本体10間に絶縁部材11を設けることにより、絶縁部材11により恰も一体となった円柱状のセンターポール部14と円盤状の円盤部13とが同軸に設けられている。
【0019】
磁石8は、内径がヨーク7のセンターポール部14の外径よりも大きくかつ外径がヨーク7の円盤部13の外径よりも大きな厚手の円環状に形成されている。磁石8は、内側にセンターポール部14を通しかつ円盤部13の表面上の絶縁シート12に重ねられて、当該ヨーク7に取り付けられている。磁石8は、ヨーク7と同軸に配置されている。前述した磁石8は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0020】
プレート9は、内径がヨーク7のセンターポール部14の外径よりも大きくかつ磁石8の内径よりも小さく形成されているとともに、外径がヨーク7の円盤部13の外径と略等しい厚手の円環状に形成されている。プレート9は、内側にセンターポール部14を通して磁石8に重ねられて、当該磁石8に取り付けられている。プレート9は、磁石8やヨーク7と同軸に配置されている。このプレート9は、磁石8に重ねられることで、勿論、磁石8から生じた磁力線が通過する。
【0021】
前述したヨーク7と、磁石8と、プレート9は、その中心がほぼ同じになるように、略同軸に配置されている。このため、ヨーク7のヨーク本体10のセンターポール部14の外周面と、プレート9の内周面とは、互いに間隔(磁気ギャップG1)をあけて、対向している。前述した構成により、磁気回路部4は、ヨーク7のヨーク本体10のセンターポール部14の外周面と、プレート9の内周面との間に、比較的大きい磁束密度を有する磁気ギャップG1を形成している。この磁気ギャップG1即ちヨーク7のヨーク本体10のセンターポール部14とプレート9との間には、後述のボイスコイル18が配置される。
【0022】
スピーカフレーム5は、ABS樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂や鉄板等の金属で構成されている。スピーカフレーム5は、図1及び図2に示すように、円環状の円環部16と、この円環部16の外縁から立設して内外径が段階的に拡大する拡大筒部17とを一体に備えている。円環部16は、内径がプレート9の内径よりも大きくかつ外径がプレート9の外径よりも小さな円環状に形成されている。スピーカフレーム5は、円環部16がプレート9に重ねられ、かつ、磁気回路部4と同軸に配置されて、当該プレート9に取り付けられる。拡大筒部17は、軸芯方向の中央部に平坦部17aが設けられかつ円環部16から離れた側の縁に外縁平坦部17bが設けられている。
【0023】
前述したスピーカフレーム5は、振動部6を当該振動部6の軸芯P(図1及び図2に一点鎖線で示す)に沿って振動自在に支持する。
【0024】
振動部6は、スピーカフレーム5に支持されている。振動部6は、ボイスコイル18と、ボイスコイルボビン19と、振動板20と、エッジ21と、ダンパ22とを備えている。
【0025】
ボイスコイル18は、本実施例では、一つ設けられており、一本の導線が環状に巻き回されて形成されている。また、このボイスコイル18は、振動板20を駆動させる前は、図1及び図2に示すように、磁気回路部4の前述した磁気ギャップG1内に配置されている。ボイスコイル18には、図示しない錦糸線を介して、音声電流が供給される。
【0026】
ボイスコイルボビン19は、内径がセンターポール部14の外径よりも大きくかつ外径がプレート9の内径よりも小さな円筒状に形成されている。ボイスコイルボビン19は、磁気回路部4と同軸に配置され、かつ一端部が磁気ギャップG1内に位置付けられている。ボイスコイルボビン19の一端部の外周面には、前述したボイスコイル18が設けられている。
【0027】
振動板20は、外観が接頭円錐状の円環状に形成されている。振動板20は、樹脂や紙で構成されている。また、大型スピーカ2を軽量化する上で、アルミニウム等の金属材料、セラミックなどの公知の材料を用いても構わない。また、例えば、プレス成形等により振動板20を一体形成することができる。
【0028】
振動板20を構成する材料として、具体的には、例えば、紙、繊維を用いた織布、繊維を用いた編み物、不織布、繊維を用いた織布にシリコーン樹脂等からなる結合樹脂を含浸させたもの、金属材料、合成樹脂、アクリル発泡体、合成樹脂と金属とからなるハイブリッド材などがある。合成樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ポリサルホン、ウレタン結合を有するポリウレタン、ゴム等などがある。また、金属材料として、例えば、アルミニウムやチタン、ジュラルミン、ベリリウム、マグネシウム、あるいはこれらの合金等がある。また、発泡樹脂であるアクリル発泡体は、例えば、メタアクリル酸メチルと、メタアクリル酸と、スチレンと、無水マレイン酸と、メタアクリルアミドとを原料として形成され、公知の発泡樹脂も振動板20に用いることができる。ハイブリット材は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂とタングステン等の金属とからなる。
【0029】
また、振動板20は、複数の層で構成された積層構造を有していても構わなく、例えば、ポリエチレンナフタレートで構成される樹脂フィルムの層上にポリアリレートで構成される樹脂フィルムの層を積み重ねて形成しても構わない。
【0030】
振動板20は、図1及び図2に示すように、内縁がボイスコイルボビン19の他端部の外周面に取り付けられている。振動板20は、外縁に向かうにしたがって徐々に磁気回路部4から離れる方向に傾斜している。
【0031】
エッジ21は、その断面が湾曲した円環状に形成されている。エッジ21は、内縁部が振動板20の外縁に取り付けられ、外縁部がスピーカフレーム5の外縁平坦部17bに取り付けられている。エッジ21は、その断面において、内縁部と外縁部との間の中央部が磁気回路部4から離れる方向(大型スピーカ2の音響放射方向)に凸に湾曲している。エッジ21の外縁部がスピーカフレーム5の外縁平坦部17bに取り付けられることで、振動部6がスピーカフレーム5に対して振動自在に支持される。
【0032】
ダンパ22は、その断面において、内縁から外縁に向かうにしたがって波状に湾曲した円環状に形成されている。即ち、ダンパ22は、その断面において、内縁から外縁に向かうにしたがって磁気回路部4から離れる方向に凸に湾曲した部分と磁気回路部4に近づく方向の凸に湾曲した部分とが交互に設けられている。ダンパ22は、その内縁がボイスコイルボビン19の他端部に取り付けられ、外縁がスピーカフレーム5の平坦部17aに取り付けられている。ダンパ22は、振動板20が振動する際に、当該振動板20が取り付けられたボイスコイルボビン19の振動を徐々に減衰させることで、当該振動板20の振動を減衰させる。
【0033】
前述した構成の大型スピーカ2は、振動板20がボイスコイル18及び磁気回路部4によって、ボイスコイル18、磁気回路部4及び振動板20の軸芯P(即ち大型スピーカ2の軸芯)に沿って振動し、音波を発生する。即ち、振動板20は、磁気回路部4によりボイスコイル18に作用する駆動力(電磁気力)によって、振動する。軸芯Pは、振動板20の振動方向をなしている。
【0034】
小型スピーカ3は、大型スピーカ2と同軸に設けられ、かつ大型スピーカ2よりも比較的高音領域の音声を出力するために用いられる。小型スピーカ3は、図1及び図2に示すように、樹脂ケース30と、磁気回路部31と、スピーカフレーム32と、振動部33と、配線部34とを備えている。
【0035】
樹脂ケース30は、合成樹脂で構成され、外径がセンターポール部14の外径と略等しい円板状の底板部35と、当該底板部35の外縁から立設した円筒状の筒状部36とを一体に備えている。樹脂ケース30は、底板部35がセンターポール部14の先端面14bに重ねられる。底板部35には、ねじ孔15と連通するボルト通し孔37が貫通している。樹脂ケース30は、底板部35がセンターポール部14の先端面14bに重ねられて、ボルト通し孔37を通ったボルト51がねじ孔15にねじ込まれることで、大型スピーカ2のヨーク7のセンターポール部14の先端面14bに取り付けられる。
【0036】
磁気回路部31は、図1及び図2などに示すように、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたヨーク38と、磁石39と、磁性体(所謂、常磁性体又は強磁性体)等で構成されたプレート40と、を備えている。
【0037】
ヨーク38は、図1及び図2に示すように、外径が樹脂ケース30の底板部35の外径よりも十分に小さな円板状の円盤部41と、この円盤部41の中央から立設しかつ外径が円盤部41の外径よりも十分に小さな円柱状のセンターポール42とを一体に備えている。
【0038】
磁石39は、内径がヨーク38のセンターポール42の外径よりも大きく、かつ外径がヨーク38の円盤部41の外径よりも大きいとともに樹脂ケース30の筒状部36の内径よりも小さな厚手の円環状に形成されている。磁石39は、内側にセンターポール42を通しかつ円盤部41に重ねられて、当該ヨーク38に取り付けられている。磁石39は、ヨーク38と同軸に配置されている。前述した磁石39は、永久磁石又は直流電源により励磁されるものでも良い。
【0039】
プレート40は、内径がヨーク38のセンターポール42の外径よりも大きくかつ磁石39の内径よりも小さく形成されているとともに、外径がヨーク38の円盤部41の外径と略等しい厚手の円環状に形成されている。プレート40は、内側にセンターポール42を通して磁石39に重ねられて、当該磁石39に取り付けられている。プレート40は、磁石39やヨーク38と同軸に配置されている。このプレート40は、磁石39に重ねられることで、勿論、磁石39から生じた磁力線が通過する。
【0040】
前述したヨーク38と、磁石39と、プレート40は、その中心がほぼ同じになるように、略同軸に配置されている。このため、ヨーク38のセンターポール42の外周面と、プレート40の内周面とは、互いに間隔(磁気ギャップG2)をあけて、対向している。前述した構成により、磁気回路部31は、ヨーク38のセンターポール42の外周面と、プレート40の内周面との間に、比較的大きい磁束密度を有する磁気ギャップG2を形成している。この磁気ギャップG2即ちヨーク38のセンターポール42とプレート40との間には、後述のボイスコイル45が配置される。
【0041】
スピーカフレーム32は、ABS樹脂、ポリカーボネート等の合成樹脂や鉄板等の金属で構成されている。スピーカフレーム32は、図1及び図2に示すように、円環状の円環部43と、この円環部43の外縁から立設して内外径が段階的に拡大する拡大筒部44とを一体に備えている。円環部43は、内径がプレート40の内径よりも大きくかつ外径がプレート40の外径よりも小さな円環状に形成されている。スピーカフレーム32は、円環部43がプレート40に重ねられ、かつ、磁気回路部31と同軸に配置されて、当該プレート40に取り付けられる。拡大筒部44は、軸芯方向の中央部に平坦部44aが設けられかつ円環部43から離れた側の縁に外縁平坦部44bが設けられている。
【0042】
前述したスピーカフレーム32は、振動部33を当該振動部33の軸芯P(図1及び図2に一点鎖線で示す)に沿って振動自在に支持する。
【0043】
振動部33は、スピーカフレーム32に支持されている。振動部33は、ボイスコイル45と、ボイスコイルボビン46と、振動板47と、エッジ48と、ダンパ49と、センタキャップ50とを備えている。
【0044】
ボイスコイル45は、本実施例では、一つ設けられており、一本の導線が環状に巻き回されて形成されている。また、このボイスコイル45は、振動板47を駆動させる前は、図1及び図2に示すように、磁気回路部31の前述した磁気ギャップG2内に配置されている。ボイスコイル45には、後述する接続用のコード52を介して、音声電流が供給される。
【0045】
ボイスコイルボビン46は、内径がセンターポール42の外径よりも大きくかつ外径がプレート40の内径よりも小さな円筒状に形成されている。ボイスコイルボビン46は、磁気回路部31と同軸に配置され、かつ一端部が磁気ギャップG2内に位置付けられている。ボイスコイルボビン46の一端部の外周面には、前述したボイスコイル45が設けられている。
【0046】
振動板47は、外観が接頭円錐状の円環状に形成されている。振動板47は、樹脂で構成されている。また、小型スピーカ3を軽量化する上で、アルミニウム等の金属材料、セラミックなどの公知の材料を用いても構わない。また、例えば、プレス成形等により振動板47を一体形成することができる。
【0047】
振動板47を構成する材料として、具体的には、例えば、紙、繊維を用いた織布、繊維を用いた編み物、不織布、繊維を用いた織布にシリコーン樹脂等からなる結合樹脂を含浸させたもの、金属材料、合成樹脂、アクリル発泡体、合成樹脂と金属とからなるハイブリッド材などがある。合成樹脂として、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネート、ポリアリレート、エポキシ樹脂、ポリサルホン、ウレタン結合を有するポリウレタン、ゴム等などがある。また、金属材料として、例えば、アルミニウムやチタン、ジュラルミン、ベリリウム、マグネシウム、あるいはこれらの合金等がある。また、発泡樹脂であるアクリル発泡体は、例えば、メタアクリル酸メチルと、メタアクリル酸と、スチレンと、無水マレイン酸と、メタアクリルアミドとを原料として形成され、公知の発泡樹脂も振動板47に用いることができる。ハイブリット材は、例えば、ポリプロピレン等の合成樹脂とタングステン等の金属とからなる。
【0048】
また、振動板47は、複数の層で構成された積層構造を有していても構わなく、例えば、ポリエチレンナフタレートで構成される樹脂フィルムの層上にポリアリレートで構成される樹脂フィルムの層を積み重ねて形成しても構わない。
【0049】
振動板47は、図1及び図2に示すように、内縁がボイスコイルボビン46の他端部の外周面に取り付けられている。振動板47は、外縁に向かうにしたがって徐々に磁気回路部31から離れる方向に傾斜している。
【0050】
エッジ48は、その断面が湾曲した円環状に形成されている。エッジ48は、内縁部が振動板47の外縁に取り付けられ、外縁部がスピーカフレーム32の外縁平坦部44bに取り付けられている。エッジ48は、その断面において、内縁部と外縁部との間の中央部が磁気回路部31から離れる方向(小型スピーカ3の音響放射方向)に凸に湾曲している。エッジ48の外縁部がスピーカフレーム32の外縁平坦部44bに取り付けられることで、振動部33がスピーカフレーム32に対して振動自在に支持される。
【0051】
ダンパ49は、その断面において、内縁から外縁に向かうにしたがって波状に湾曲した円環状に形成されている。即ち、ダンパ49は、その断面において、内縁から外縁に向かうにしたがって磁気回路部31から離れる方向に凸に湾曲した部分と磁気回路部31に近づく方向の凸に湾曲した部分とが交互に設けられている。ダンパ49は、その内縁がボイスコイルボビン46の他端部に取り付けられ、外縁がスピーカフレーム32の平坦部44aに取り付けられている。ダンパ49は、振動板47が振動する際に、当該振動板47が取り付けられたボイスコイルボビン46の振動を徐々に減衰させることで、当該振動板47の振動を減衰させる。
【0052】
センタキャップ50は、絶縁性の合成樹脂で構成され、かつボイスコイルボビン46の他端部を塞いだ格好で、当該ボイスコイルボビン46に取り付けられる。センタキャップ50は、その中央部が磁気回路部31から離れる方向に凸に湾曲している。
【0053】
配線部34は、前記ボルト51と、このボルト51に端末が取り付けられた接続線としての接続用のコード52とを備えている。ボルト51は、導電性の金属で構成され、ボルト通し孔37に通されてねじ孔15にねじ込まれる。接続用のコード52は、一端がボルト51の頭に取り付けられているとともに、他端がスピーカフレーム32を貫通してボイスコイル45に接続している。配線部34は、大型スピーカ2のヨーク7のヨーク本体10に供給された音声電流を小型スピーカ3のボイスコイル45に供給する。
【0054】
前述した構成の小型スピーカ3は、振動板47がボイスコイル45及び磁気回路部31によって、ボイスコイル45、磁気回路部31及び振動板47の軸芯P(即ち小型スピーカ3の軸芯)に沿って振動し、音波を発生する。即ち、振動板47は、磁気回路部31によりボイスコイル45に作用する駆動力(電磁気力)によって、振動する。軸芯Pは、振動板47の振動方向をなしている。
【0055】
こうして、前述した同軸スピーカ1は、大型スピーカ2が低音領域の音声を出力し、小型スピーカ3が高音領域の音声を出力する。なお、本実施例では、大型スピーカ2と小型スピーカ3は、共に外磁型の磁気回路部4,31を備えている。
【0056】
本実施例のヨーク7は、導電性と磁性との双方を有するヨーク本体10を一対設け、これら一対のヨーク本体10間に絶縁部材11を設けているので、ヨーク本体10を介して、当該ヨーク本体10上に重ねられる小型スピーカ3のボイスコイル45に音声電流を供給することができる。このために、ヨーク本体10などに小型スピーカ3のボイスコイル45に接続する接続用のコード52を通すための孔を設ける必要がない。よって、孔を設けるための工数を必要としないとともに、接続用のコード52を孔内に通す必要がない。したがって、ヨーク7は、同軸スピーカ1のコストの高騰を抑制することができる。
【0057】
また、ヨーク本体10に接続用のコード52が取り付けられるねじ孔15を設けている。このために、ヨーク本体10を介して容易に小型スピーカ3のボイスコイル18に音声電流を供給することができる。
【0058】
さらに、一対のヨーク本体10を同形状に形成している。このために、一対のヨーク本体10のインピーダンスを一致させることができる。
【0059】
前述した実施例の同軸スピーカ1は、前述したスピーカ用ヨーク7を備えているので、コストの高騰を確実に抑制することができる。
【0060】
前述した実施例では、いわゆる外磁型の磁気回路部4,31を備えた同軸スピーカ1を示している。しかしながら、本発明では、図4に示すように、小型スピーカ3の磁気回路部31を所謂内磁型としてもよい。なお、図4において、前述した実施例と同一部分には、同一符号を付して説明を省略する。
【0061】
なお、前述した実施例は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施例に限定されるものではない。即ち、本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0062】
前述した実施例によれば、以下のヨークが得られる。
【0063】
(付記) 同軸スピーカ1の磁気回路部4を構成するヨーク7において、
導電性と磁性との双方を有する材料で構成された一対のヨーク本体10と、
前記一対のヨーク本体10間に設けられ、かつ前記一対のヨーク本体10同士を連結するとともに、前記一対のヨーク本体10を互いに電気的に絶縁する絶縁部材11と、
を備えたことを特徴とするヨーク7。
【0064】
付記に記載のヨーク7によれば、導電性と磁性との双方を有するヨーク本体10を一対設け、これら一対のヨーク本体10間に絶縁部材11を設けているので、ヨーク本体10を介して、当該ヨーク本体10上に重ねられる小型スピーカ3のボイスコイル45に音声電流を供給することができる。このために、ヨーク本体10などに小型スピーカ3のボイスコイル45に接続する接続用のコード52を通すための孔を設ける必要がない。よって、孔を設けるための工数を必要としないとともに、接続用のコード52を孔内に通す必要がない。したがって、ヨーク7は、同軸スピーカ1のコストの高騰を抑制することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 同軸スピーカ(スピーカ)
3 小型スピーカ
4 磁気回路部
7 ヨーク(スピーカ用ヨーク)
10 ヨーク本体
11 絶縁部材
15 ねじ孔(取付部)
20 振動板
52 接続用のコード(接続線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカの磁気回路部を構成するスピーカ用ヨークにおいて、
導電性と磁性との双方を有する材料で構成された一対のヨーク本体と、
前記一対のヨーク本体間に設けられ、かつ前記一対のヨーク本体同士を連結するとともに、前記一対のヨーク本体を互いに電気的に絶縁する絶縁部材と、
を備えたことを特徴とするスピーカ用ヨーク。
【請求項2】
前記一対のヨーク本体に重ねられる小型スピーカのボイスコイルに接続される接続線が取り付けられる取付部が、前記一対のヨーク本体それぞれに設けられていることを特徴とする請求項1記載のスピーカ用ヨーク。
【請求項3】
前記一対のヨーク本体が同形状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のスピーカ用ヨーク。
【請求項4】
振動板を振動させる磁気回路部を備えたスピーカにおいて、
前記磁気回路部のスピーカ用ヨークとして、請求項1乃至請求項3のうちいずれか一項に記載のスピーカ用ヨークを備えたことを特徴とするスピーカ。
【請求項5】
前記スピーカ用ヨークに重ねられた小型スピーカを備えたことを特徴とする請求項4記載のスピーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−182773(P2012−182773A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46112(P2011−46112)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】