説明

スピーカ装置

【課題】 車両の天井部の内装板に取り付けた時に、内装板からエキサイタまでの高さを低減できる内装板を振動板としたスピーカ装置を提供する。
【解決手段】 車両の車室に面する表皮の裏面側に形成された、発泡部材からなる内装板1と、筒状体の外側の表面にねじが形成されたねじ部32と、この筒状体の一方の端部に設けられたフランジ部31とを備えたブラケット3と、このブラケット3のねじ部32に連結されるカプラ部材46を備えたエキサイタ10とから構成され、カプラ部材46は
エキサイタ10の振動発生部に接続する振動入力部46Bと、ブラケット3のねじ部32に取り付けられる振動出力部46C、及び振動入力部46Bと前記振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、このカプラ部材46により、エキサイタ10の直下の内装板1とは離れた位置の内装板1を振動させる内装板を振動板としたスピーカ装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスピーカ装置に関し、特に、車両の天井部分の内装板である天井基材を振動板として、これに振動板駆動ユニットを取り付けて構成される車両の内装板を振動板としたスピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スピーカは、振動板とこの振動板を駆動する振動板駆動ユニット(以後この振動板駆動ユニットをエキサイタと称する)とから構成されており、エキサイタに入力される電気信号でエキサイタが振動板を駆動させ、電気信号を音に変換するものである。通常の動電型のエキサイタは、電気信号が入力されるボイスコイル、及びボイスコイルの周囲に磁界を発生させる永久磁石とヨークからなる磁気回路を備えている。そして、最も一般的なコーン型のスピーカは、コーン状の振動板の大径部がエッジによって支持され、その反対側にある小径部がエキサイタで駆動されるので、エッジ(スピーカの取付面)から磁気回路の背面まである程度の厚さが必要であった。
【0003】
このような構造のスピーカは、屋外や家庭内で音楽聴取用にスピーカボックス内に収納されて設置される他、車両、例えば、乗用車の車室内に設置され、ラジオやカーステレオ装置から出力される音楽や音声の音響再生を行うために使用されている。
【0004】
ところが、コーン型スピーカを乗用車の車室内に設置する場合は、振動板のエッジからエキサイタの背面の間に所定の距離が必要であるために、スピーカの設置場所に所定の厚さが必要であった。例えば、スピーカをドア内や天井部に設置する場合は、ドアや天井部の厚さが厚くなったり、また、ドアや天井部の厚さをそのままにした場合は、スピーカの設置部に車室内側に突出する膨らみが生じてしまうという問題点があった。
【0005】
この問題点を解消するために、振動板の形状をコーン状から円板状にしてスピーカの厚さを小さくした薄型スピーカが特許文献1に記載されている。しかしながら、この薄型スピーカにしても、振動板を金属製フレームに取り付けて使用しているために、スピーカの薄型化に対しては不十分であった。
【0006】
そこで、乗用車の車室内に設置するスピーカとして、コーン状の振動板を省き、車室内の内装板を振動板として使用する構造の、エキサイタを使用した薄型スピーカが提案されている。
【0007】
図1は、従来のエキサイタ10の構造を示すものであり、(a)には自動車の内装板1に接着剤で固着されたエキサイタ10の側面を、その中心から半分が縦断面にて示してあり、(b)には(a)のエキサイタ10を裏面側から見た状態を示してある。
【0008】
図1(a)に示すように、エキサイタ10は、側壁部と底部とが連続して形成された凹部を有する丸い皿形状の外側ヨーク11と、この外側ヨーク11の底部の上に取り付けられた円板形状の永久磁石12と、この永久磁石12の上に載置され、直径が永久磁石12の直径より若干大きい円板形状の内側ヨーク13とから成る磁気回路部を備えている。
【0009】
この磁気回路部の外側ヨーク11の側壁部内面と、内側ヨーク13の外周面との間には間隙が設けられており、この間隙部に円筒状のボビン14の周囲に巻き付けられたボイスコイル15が位置している。ボビン14は自動車の内装板1に取り付けられるカプラ部材16に固着されており、このカプラ部材16の外周部には磁気回路部側に突出するレッグ部16aが設けられている。カプラ部材16はボビン14と反対側の面が、接着剤によって自動車の内装板1に固着される。また、レッグ部16aの数は、この例では図1(b)に示すように3個であり、カプラ部材16の外周部に等間隔に設けられている。そして、レッグ部16aは板ばね17を介して外側ヨーク11の外周部に接続されている。
【0010】
板ばね17は、図1(b)に示すように環状のベース部17bと、このベース部17bからベース部17bに同心円状に延出されたアーム部17aを備えている。そして、このアーム部17aの先端部がねじ18によってレッグ部16aに取り付けられている。この例では3個のアーム部17aの長さは皆同じである。
【0011】
以上のように構成されたエキサイタ10のボイスコイル15に交流駆動信号が供給されると、磁気回路部の作用によって交流駆動信号の周波数に応じてボビン14が振動する。この振動がカプラ部材16を介して内装板1に伝達される。そして、この内装板1自体が振動板の役割を果たし、内装板1の振動によって車室内側に音が放射される。
【0012】
このように、内装板1を振動板とすることによって、車室内に良好な音場形成が可能になると共に、振動板を使用しない分だけエキサイタ10の厚さを薄くすることができ、厚さを薄くしたスピーカを実現することができる。ところが、この構造では、エキサイタ10が自動車の内装板1に接着剤で固着されているために、エキサイタ10に異常が生じても、エキサイタ10を内装板1から取り外すことができないという問題がある。
【0013】
そこで、図2(a),(b)に示すように、内装板1に固着したブラケット3にエキサイタ10を螺合させることにより、内装板1から取り外すことができる構成の車両の内装板を振動板としたスピーカが提案されている。この構造のスピーカでは、エキサイタ10のカプラ部材16の内装板1側の中央に孔部20が設けられており、この孔部20の内周面に内ねじ部(雌ねじ)19が設けられている。エキサイタ10のその他の構成は図1(a)で説明したエキサイタ10と同じであるので、同じ構成部材には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0014】
一方、ブラケット3は、一方の面が内装板1に接着剤等で固定されるフランジ部31とこのフランジ部31の他方の面に突設されたねじ部32とから構成される。ねじ部32は、カプラ部材16の内ねじ部19に螺合する。ねじ部32の中央には貫通孔34が設けられている。更に、フランジ部31のねじ部32の周囲の面には、リング状のクッションラバー33が固着されている。
【0015】
図3はブラケット3によってエキサイタ10が天井基材である内装板1に取り付けられた状態を示すものである。エキサイタ10は、内装板1と金属板である屋根板8との間の空間に、ブラケット3を介して取り付けられる。4は内装板1の車室側に貼り付けられている表皮である。
【0016】
【特許文献1】特開平9−130892号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、以上のように構成された従来のエキサイタ10は、内装板1の上に固着されたブラケット3の上に取り付けられているので、エキサイタ10を直接内装板1に接着剤で固着した場合に比べて、ブラケット3のフランジ部31の高さと、クッションラバー33の高さを合計した高さHだけ高い。このため、エキサイタ10を車両の中央部の内装板1の上に取り付ける場合は問題がないが、エキサイタ10を車両の左右位置に取り付ける場合は、内装板1と屋根板8との間隔が二点鎖線で示すように小さいので、エキサイタ10の頂面が屋根板8に当接することになり、取り付けることができないという問題が生じていた。また、この位置に無理にエキサイタ10を設置する場合は、内装板1を車室内側に突出させる必要があり、ヘッドクリアランスの減少を招くという問題が生じる。また、エキサイタを振動板に取り付けるタイプのスピーカ装置においても、エキサイタとエキサイタによって振動する振動板の場所を離したいという要望があった。
【0018】
そこで、本発明は、スピーカ装置、特に車両の内装板を振動板としたスピーカを構成するために、エキサイタを車両の天井部に設けられている天井基材のような内装板の上に取り付ける場合に、天井部の内装板からエキサイタの頂面までの高さをできるだけ抑えることにより、車両の側面側の天井部分の内装板の上にも取り付けが可能なスピーカ装置を提供することを目的としている。また、エキサイタを振動板に取り付けるタイプのスピーカ装置においても、エキサイタとエキサイタによって振動する振動板の場所を離すことができるスピーカ装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記目的を達成する本発明の車両のスピーカ装置は、以下の第1から第9の形態をとることができる。
【0020】
第1の形態は、電気信号の入力によって振動を発生するエキサイタと、エキサイタの振動を振動板に伝達するカプラ部材とから構成され、カプラ部材は、エキサイタの振動発生部に接続する振動入力部と、振動を振動板に伝達する振動出力部と、振動入力部と振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、エキサイタに電気信号を入力することにより、エキサイタの振動出力部から離れた位置の前記振動板を振動させることを特徴とするスピーカ装置である。
【0021】
第2の形態は、車両の車室に形成された内装板と、内装板に設けられたブラケットと、ブラケットに連結されるカプラ部材を備えたエキサイタとから構成され、カプラ部材は、電気信号の入力によって振動を発生するエキサイタの振動発生部に接続する振動入力部と、ブラケットに取り付けられる振動出力部、及び振動入力部と振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、エキサイタに電気信号を入力することにより、エキサイタの直下の内装板とは離れた位置の内装板を振動させることを特徴とするスピーカ装置である。
【0022】
第3の形態は、第2の形態におけるカプラ部材の振動入力部が、ダンパによって内装板の上に支持されているスピーカ装置である。
【0023】
第4の形態は、車両の車室に形成された内装板と、内装板よりも薄い板厚と所定面積を備え、一方の面上にブラケットが取り付けられる振動板と、ブラケットに連結されるカプラ部材を備えたエキサイタとから構成され、内装板は、ブラケットからの振動伝達部位が、少なくとも車両の車室に面する表皮を残して振動板を受入可能な大きさに切り取られ、切り取られた部位に振動板が挿入されて固着され、エキサイタに電気信号を入力することにより、振動板を振動させることを特徴とするスピーカ装置である。
【0024】
第5の形態は、第1から第4の何れかの形態のエキサイタが、永久磁石とヨークプレートとからなる磁気回路と、カプラ部材を磁気回路に対して支持するばね部材と、電気信号を入力することによりカプラ部材を振動させるボイスコイルとからなる動電型エキサイタであるスピーカ装置である。
【0025】
第6の形態は、第1から第4の何れかの形態のエキサイタが、圧電素子と、電気信号を入力することにより圧電素子を振動させるリード線と、圧電素子に取り付けられたカプラ部材とからなる圧電型エキサイタであるスピーカ装置である。
【0026】
第7の形態は、第1から第4の何れかの形態のエキサイタが、ヨークプレートと、このヨークプレートの上に、隣接する永久磁石と極性が互いに反対になるように並べられた複数個の永久磁石と、ヨークプレートに対向する位置に、永久磁石の頂面とは所定距離を隔てて配置され、ヨークプレートと反対側の面に振動板を取り付け可能なカプラ部材と、ヨークプレートの周囲に設けられ、カプラ部材を弾性支持する弾性体、及びカプラ部材の、永久磁石の各個に対応する位置にそれぞれ設けられ、永久磁石間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、一平面内で巻回されたコイルとを備え、各コイルは、隣接するコイルの辺同士に同じ向きの電流が流れるように接続されている構成のエキサイタであるスピーカ装置である。
【0027】
第8の形態は、第1から第4の何れかの形態のエキサイタが、ヨークプレートと、このヨークプレート上に極性を揃えて並べられた複数個の永久磁石、及びこの永久磁石を囲むようにヨークプレートの永久磁石の周囲の部分に、永久磁石と同程度の高さまで膨出された膨出部とを備えた磁気回路と、ヨークプレートに対向する位置に、永久磁石の頂面とは所定距離を隔てて配置され、ヨークプレートと反対側の面に振動板を取り付け可能なカプラ部材と、ヨークプレートの周囲に設けられ、カプラ部材を弾性支持する弾性体、及びカプラ部材の、永久磁石の各個に対応する位置にそれぞれ設けられ、永久磁石間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、一平面内で巻回されたコイルとを備え、各コイルは、隣接するコイルの辺同士に異なる向きの電流が流れるように接続されている構成のエキサイタであるスピーカ装置である。
【0028】
第9の形態は、第2から第4の何れかの形態の内装板が発泡部材から構成されるスピーカ装置である。
【発明の効果】
【0029】
第1の形態のスピーカ装置によれば、カプラ部材の形状によりエキサイタの振動をエキサイタから離れた部位に伝えることができるので、エキサイタの配置の制限を緩和することができる。また、第2と第3の形態のスピーカ装置によれば、カプラ部材の形状により、エキサイタの振動をエキサイタの直下に位置する内装板の部位から離れた部位に伝えることができるので、スピーカとしての内装板の駆動ポイントは最適のまま、エキサイタの設置位置を空間に余裕のある部位に移動できるので、車両の内装板におけるスピーカの配置の制限を緩和することができる。
【0030】
第4の形態のスピーカ装置によれば、スピーカの薄型化を図ることができると共に、振動板の選択により、車室内にスピーカから放射する音の音質を向上させることができる。
【0031】
また、第5から第8の形態に示すように、本発明のスピーカ装置によれば、種々の形態のエキサイタを採用することができる。更に、第9の形態に示すように、内装板は発泡部材から形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
次に、本発明のスピーカ装置に係る実施の形態について、添付図面に示す具体的な実施例を参照しながら説明する。なお、この実施の形態では、車両の内装板を振動板としたスピーカ装置の構成について説明し、内装板としては、自動車の天井部に設けられる内装板1を例にとって説明する。
【0033】
図4(a)は本発明の自動車の内装板1を振動板とするスピーカ装置の一実施例を示すものである。図3で説明した従来のスピーカ装置では、カプラ部材16によりエキサイタ10の振動が直下の内装板1に伝達されていたが、この実施例のカプラ部材46は、エキサイタ10の振動発生部に接続する振動入力部46Bと、ブラケット3のねじ部32に取り付けられる振動出力部46C、及び振動入力部46Bと振動出力部46Cとを結ぶ所定の長さを備えたアーム部46Aとから構成されている。振動出力部46Cには取付孔46Hが形成されている。カプラ部材46をブラケット3に取り付ける場合は、カプラ部材46の振動出力部46Cに設けられた取付孔46Hをブラケット3のねじ部32に挿通し、取付ねじ7で固定する。取付ねじ7は、フランジ部71と筒状対の内周面にねじが形成されたねじ部72とを備えており、ねじ部72の外周がカプラ部材46の取付孔46Hに摺動可能に嵌め込まれるようになっている。なお、この図には図2(b)に示したクッションラバー33の図示は省略してある。
【0034】
図4(b)は図4(a)に示したカプラ部材46と取付ねじ7を用いて、エキサイタ10を車両の内装板1の上に設置した状態を示すものである。この図に示されるように、エキサイタ10に入力された電気信号によってエキサイタ10が振動すると、この振動がカプラ部材46によってエキサイタ10の直下の内装板1とは離れた位置の内装板1に伝えられる。ブラケット3とカプラ部材46の振動出力部46Cと取付ねじ7の高さを合わせたものは、エキサイタ10の高さよりも小さいので、この実施例では、エキサイタ10によって振動する内装板1の部位を、内装板1と屋根板8との距離が短い自動車の側面に近い部位とすることが可能となる。
【0035】
図5(a)は図4(a),(b)に示したカプラ部材46の変形例を示す天井部分の断面図である。この実施例のカプラ部材46は、振動入力部46Bと振動出力部46Cとを結ぶアーム部46Aが斜めに形成されている点が図4(a)、(b)に示したカプラ部材46と異なる。このようにアーム部46を斜めに形成すると、振動入力部46Bと内装板1との間にスペースが生じるので、エキサイタ10の設置位置に自由度が増す。また、この実施例では、ブラケット3のフランジ部31を内装板1に埋め込むことも可能である。
【0036】
なお、図5(a)に示した実施例の構成では、振動入力部46Bと内装板1との間にスペースが生じるので、図5(b)に示すように、カプラ部材46の振動入力部46Bの下部をダンパ9で支持することが可能である。このように、カプラ部材46の振動入力部46Bの下部をダンパ9で支持することにより、アーム部46Aの長さを長くすることが可能である。
【0037】
図6(a)は本発明の自動車の内装板1を振動板とするスピーカ装置の別の実施例を示すものである。この実施例では、内装板1の厚さよりも薄い板厚と所定面積を備えた振動板30を用意し、この振動板30の一方の面上にブラケット3のフランジ部31を取り付け、このブラケット3のねじ部32に、エキサイタ10を取り付けている。この実施例に使用する振動板30は、エキサイタ10の振動を忠実に再現することができる最適振動板とすることができる。
【0038】
一方、この実施例では内装板1のエキサイタ10を取り付ける位置を図示のように、表皮4を残して切り取り、切り取り部29を形成する。この切り取り部29の面積は振動板30と同等以上の大きさである。そして、この切り取り部29に、エキサイタ10が取り付けられた振動板30を図6(b)に示すように挿入して固着する。この構成では、電気信号の入力によりエキサイタ10が振動すると、その振動が振動板30を通じて車室内に放射されるので、車室内で聞く音の音質が向上する。また、振動板30の厚さを内装板1より薄くしたことにより、エキサイタ10の自動車の天井部における設置位置の自由度が増す。
【0039】
なお、この実施例では、切り取り部29を、表皮4のみを残して内装板1を全て切り取っているが、内装板1は多少残して切り取っても良い。
【0040】
図7は、図4から図6で説明した実施例における動電型のエキサイタ10を、圧電素子40で構成する例を示すものである。圧電素子40は、これに接続する2本のリード線42に電気信号を印加することにより、電気信号に応じて振動するように構成されている。この実施例ではこの圧電素子40の一方の面に、中央部にねじ部51が設けられたカプラ部材50を取り付け、このカプラ部材50を前述のブラケット3のねじ部32に取り付ければ良い。ねじ部51には、ブラケット3のねじ部32に螺合するねじが内周部に形成されている。
【0041】
図8は、図4から図6で説明した実施例における動電型のエキサイタ10を、本発明者らが既に提案した薄型のエキサイタ41で構成する例を示すものである。図8はこのエキサイタ41を分解してその構造を示す組立図である。この実施例のエキサイタ41は、平板状のヨークプレート21、このヨークプレート21の上に配置された複数個の永久磁石22、ヨークプレート21の周囲に設けられた弾性体である板ばね23、及び、この板ばね23に弾性支持される平板状のカプラ部材24とから構成される。
【0042】
ヨークプレート21は磁性体で矩形状(この実施例では正方形)をしており、その上に複数個の永久磁石22が所定の同じ間隔を隔てて、且つ隣接する永久磁石22と極性が互いに反対になるように並べられている。即ち、この実施例の1つの永久磁石22は、頂面側がN極でヨークプレート側がS極であり、これに隣接する永久磁石は頂面側がS極でヨークプレート側がN極である。この永久磁石22は、その磁化の向きに垂直な方向の断面が矩形、この実施例では正方形をしており、隣接する永久磁石22の側面同士は平行である。このため、永久磁石のN極から出た磁力線は、隣接する永久磁石22のS極に向かうので、2つの永久磁石22の間には平行磁界が発生している。この実施例の永久磁石22は縦方向に3個、横方向に3個規則正しく並べられているが、永久磁石22の個数は特に限定されるものではなく、必要に応じて個数を増減させることができる。
【0043】
ヨークプレート21の周囲の二点鎖線で示す位置に取り付けられる板ばね23は、ヨークプレート21に固着される枠状の基部23bと、この基部23bからヨークプレート21の周囲に沿って延伸されたアーム部23aとから構成される。この実施例では、アーム部23aは基部23bの四隅から基部23bに略平行に隣接する四隅の方向に延ばされている。そして、アーム部23aの先端部にはねじ孔23cが設けられている。
【0044】
一方、平板状のカプラ部材24は樹脂プレートから構成される。そして、このアーム部23aのねじ孔23cに対応するカプラ部材24の四隅の部分にはねじ孔24cが設けられている。よって、カプラ部材24は、アーム部23aのねじ孔23cにヨークプレート21側から挿通されるねじ25と、このねじ25を挿通する中空のスリーブ26を介して板ばね23に取り付けられる。また、カプラ部材24にはその中央部に取付穴24Hを備えた取付突起24Tが設けられており、この取付穴24Hの内周部にはブラケット3のねじ部32に螺合する雌ねじが設けられている。この取付穴24Hは貫通孔ではない。
【0045】
カプラ部材24の裏面側には、図9(a)に示すように、各永久磁石22に対向する位置にコイルが配置されている。各コイル27は、内側の捲線開始点が他のコイル27の、外側の捲線終了点に接続されるように直列に接続される。そして、最初のコイル27sの捲線開始点は、端子板28の+端子に接続され、最後のコイル27eの捲線終了点は、端子板28の−端子に接続される。このようにすると、最初のコイル27sの捲線開始点から最後のコイル27eの捲線終了点に向けて電流が流れた時に、隣接するコイル27の辺同士には同じ向きの電流が流れるようになる。図9のコイル27の接続は一例であり、コイル27同士の接続はこの例に限定されるものではない。また、端子板28は一般にヨークプレート21の底面側に設けられており、錦糸線を用いてカプラ部材24のコイル27の両端部に接続されている。
【0046】
図9(b)は、図8のように構成されたヨークプレート21の上に板ばね23を介してカプラ部材24が取り付けられた状態を示すものである。この状態では、中空のスリーブ26により、カプラ部材24と永久磁石22の頂面との間には所定距離が設けられている。永久磁石22が隣接する永久磁石22の極性が逆になるようにヨークプレート21の上に配置されると、頂面側がN極の磁石22から頂面側がS極の磁石22に対して横方向に磁界が発生する。コイル27はこの横方向の磁界の中に、磁界に垂直な方向に配置される。
【0047】
カプラ部材24の裏面に、永久磁石22の各個に対応する位置にそれぞれ設けられたコイル27は、永久磁石22の間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、矩形の渦巻き状をしている。そして、隣接するコイルの隣接する辺には、同じ方向の電流が流れるようになっているので、コイル27に電気信号が流れると、隣接するコイル27には同じ方向の力が発生し、カプラ部材24が振動する。
【0048】
図10(a)は図8に示されるヨークプレート21と永久磁石22の別の構成を示すものであり、図10(b)は図10(a)のヨークプレート21を用いたエキサイタ44の組立後の部分断面図である。この実施例のエキサイタ44が図8,図9(a),(b)に示した実施例のエキサイタ41と異なる点はヨークプレート21の構造とカプラ部材24の裏面に配置されるコイルの接続のみである。従って、この実施例のエキサイタ44における、前述の実施例のエキサイタ41と同じ構成部材には同じ符号を付して説明する。
【0049】
この実施例のエキサイタ44では、ヨークプレート21の上の永久磁石22が全て同じ方向、この実施例では全ての永久磁石22のS極がヨークプレート方向、に向けて配置されている。そして、永久磁石22の周囲の部分が、永久磁石22と略同じ高さだけ永久磁石22側に膨出されて膨出部21aが形成されている。この膨出部21aは格子状であり、各永久磁石22は、膨出部21aで囲まれている。
【0050】
この実施例のエキサイタ44では、磁力線は永久磁石22から永久磁石22に流れるのではなく、永久磁石22からヨークプレート21の膨出部21aに向かって流れる。コイル27はこの横方向の磁界の中に、磁界に垂直な方向に配置される。この実施例でもコイル27は、カプラ部材24の、永久磁石22の各個に対応する位置にそれぞれ設けられ、永久磁石22の間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、矩形の渦巻き状をしている。そして、隣接するコイル27の隣接する辺には、異なる方向の電流が流れるようになっている。
【0051】
このため、各コイル27は、図11に示すように、内側の捲線開始点が他のコイル27の外側の捲線終了点に、巻き方向が同じになるように接続されて直列に接続される。そして、最初のコイル27sの捲線開始点は、端子板28の+端子に接続され、最後のコイル27eの捲線終了点は、端子板28の+端子に接続される。このようにすると、最初のコイル27sの捲線開始点から最後のコイル27eの捲線終了点に向けて電流が流れた時に、隣接するコイル27の辺同士には異なる向きの電流が流れるようになる。図11のコイル27の接続は一例であり、コイル27同士の接続はこの例に限定されるものではない。
【0052】
このように、ヨークプレート21に永久磁石22を囲む膨出部21aを設けてその頂面21bを永久磁石22の高さと同じ程度に形成することにより、この実施例のエキサイタ44は永久磁石22によって発生する磁束密度を有効に利用することができるので、図8,図9に示した実施例のエキサイタ41に比べて、カプラ部材24の駆動力を増大することができる。又、本発明の車両の内装板を振動板としたスピーカ装置は、車両の天井部のみならず、車両の他の部位、例えばドアの内装板等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】振動板に直に固着する従来のエキサイタの構造を示すものであり、(a)は振動板に取り付けたエキサイタの一部断面を含む側面図、(b)は(a)のエキサイタを裏面側から見た底面図である。
【図2】振動板にブラケットを介して着脱可能に固着する従来のエキサイタの構造を示すものであり、(a)は振動板に取り付けたエキサイタの一部断面を含む側面図、(b)は(a)のエキサイタとブラケットの斜視図である。
【図3】図2に示した従来のエキサイタの問題点を説明する図である。
【図4】(a)は本発明の自動車の天井基材を振動板とするスピーカ装置の別の実施例を示す斜視図、(b)は(a)に示したブラケットによりエキサイタが天井基材に固定された状態を示す断面図である。
【図5】(a)は図4(a),(b)に示したカプラ部材の変形例を示す天井部分の断面図、(b)は(a)のカプラ部材をダンパで支持した実施例を示す天井部分の断面図である。
【図6】(a)は本発明のエキサイタを天井基材に取り付ける別の実施例を示すものであり、(b)は(a)に示したエキサイタが天井基材に取り付けられた状態を示す断面図である。
【図7】本発明のエキサイタが圧電素子で構成された例を示す組立斜視図である。
【図8】本発明のエキサイタの別の構成を示す組立斜視図である。
【図9】(a)は図8に示されるカプラ部材の裏面に配置されるコイルの接続を示す配線図、(b)は図8に示されるエキサイタの組立後の部分断面図である。
【図10】(a)は図8に示されるヨークプレートと磁石の別の構成を示す斜視図、(b)は(a)のヨークプレートを用いたエキサイタの組立後の部分断面図である。
【図11】永久磁石の配置が図10(a),(b)に示される状態である場合の、カプラ部材の裏面に配置されるコイルの接続を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1 内装板
3 ブラケット
4 表皮
5,6 金型
7 取付ねじ
8 屋根板
9 ダンパ
10 エキサイタ
11 外側ヨーク
12 永久磁石
16 カプラ部材
17 板ばね
18 ねじ
19 内ねじ部
20 孔部
21 ヨークプレート
22 永久磁石
23 板ばね
24 カプラ部材
27 コイル
31 フランジ部
32 ねじ部
40 圧電素子
41,44 本発明のエキサイタ
46,50 カプラ部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号の入力によって振動を発生するエキサイタと、
前記エキサイタの振動を振動板に伝達するカプラ部材とから構成され、
前記カプラ部材は、前記エキサイタの振動発生部に接続する振動入力部と、前記振動を前記振動板に伝達する振動出力部と、前記振動入力部と前記振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、
前記エキサイタに電気信号を入力することにより、前記エキサイタの振動出力部から離れた位置の前記振動板を振動させることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
車両の車室に形成された内装板と、
前記内装板に設けられたブラケットと、
前記ブラケットに連結されるカプラ部材を備えたエキサイタとから構成され、
前記カプラ部材は、電気信号の入力によって振動を発生する前記エキサイタの振動発生部に接続する振動入力部と、前記ブラケットに取り付けられる振動出力部、及び前記振動入力部と前記振動出力部とを結ぶアーム部とから構成され、
前記エキサイタに電気信号を入力することにより、前記エキサイタの直下の前記内装板とは離れた位置の前記内装板を振動させることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項3】
前記カプラ部材の振動入力部が、ダンパによって前記内装板の上に支持されていることを特徴とする請求項2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
車両の車室に形成された内装板と、
前記内装板よりも薄い板厚と所定面積を備え、一方の面上にブラケットが取り付けられる振動板と、
前記ブラケットに連結されるカプラ部材を備えたエキサイタと、から構成され、
前記内装板は、前記ブラケットからの振動伝達部位が、少なくとも車両の車室に面する表皮を残して前記振動板を受入可能な大きさに切り取られ、切り取られた部位に前記振動板が挿入されて固着され、
前記エキサイタに電気信号を入力することにより、前記振動板を振動させることを特徴とするスピーカ装置。
【請求項5】
前記エキサイタが、永久磁石とヨークプレートとからなる磁気回路と、前記カプラ部材を前記磁気回路に対して支持するばね部材と、前記電気信号を入力することにより前記カプラ部材を振動させるボイスコイルとからなる動電型エキサイタであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項6】
前記エキサイタが、圧電素子と、前記電気信号を入力することにより前記圧電素子を振動させるリード線と、前記圧電素子に取り付けられたカプラ部材とからなる圧電型エキサイタであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項7】
前記エキサイタが、ヨークプレートと、このヨークプレートの上に、隣接する永久磁石と極性が互いに反対になるように並べられた複数個の永久磁石と、前記ヨークプレートに対向する位置に、前記永久磁石の頂面とは所定距離を隔てて配置され、前記ヨークプレートと反対側の面に振動板を取り付け可能なカプラ部材と、前記ヨークプレートの周囲に設けられ、前記カプラ部材を弾性支持する弾性体、及び、前記カプラ部材の、前記永久磁石の各個に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記永久磁石間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、一平面内で巻回されたコイルとを備え、前記各コイルは、隣接するコイルの辺同士に同じ向きの電流が流れるように接続されている構成のエキサイタであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項8】
前記エキサイタが、ヨークプレートと、このヨークプレート上に極性を揃えて並べられた複数個の永久磁石、及びこの永久磁石を囲むように前記ヨークプレートの前記永久磁石の周囲の部分に、前記永久磁石と同程度の高さまで膨出された膨出部とを備えた磁気回路と、前記ヨークプレートに対向する位置に、前記永久磁石の頂面とは所定距離を隔てて配置され、前記ヨークプレートと反対側の面に振動板を取り付け可能なカプラ部材と、前記ヨークプレートの周囲に設けられ、前記カプラ部材を弾性支持する弾性体、及び、前記カプラ部材の、前記永久磁石の各個に対応する位置にそれぞれ設けられ、前記永久磁石間の磁力線に垂直な方向の辺を持つように、一平面内で巻回されたコイルとを備え、前記各コイルは、隣接するコイルの辺同士に異なる向きの電流が流れるように接続されている構成のエキサイタであることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のスピーカ装置。
【請求項9】
前記内装板が発泡部材から構成されることを特徴とする請求項2から8の何れか1項に記載の内装板を振動板としたスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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