説明

スピーカ装置

【課題】薄型化、軽量化、高耐入力化、高音質化が可能なスピーカ装置を提供する。
【解決手段】開示されるスピーカ装置は、外磁型反発磁気回路1と、フレーム2と、振動体3とを備えている。外磁型反発磁気回路1は、略環形状に構成されたプレート11を、略環形状に構成され、同極同士が対向するように配置された磁石12及び13で挟持して構成されている。振動体3は、振動板21、ボイスコイル24及びボイスコイルボビン23を有している。フレーム2は、振動体3と外磁型反発磁気回路1とを支持している。このスピーカ装置では、ボイスコイルボビン23は、略筒状に構成されている。また、ボイスコイルボビン23の内部には、放熱体4が遊挿されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料からなる1つのプレートを同極同士が対向するように配置された2つの磁石で挟持して構成した反発磁気回路を備えたスピーカ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の反発磁気回路を備えたスピーカ装置には、磁石及びセンタープレートが略環状を呈するとともに、センタープレートの内周と外周に生じるそれぞれの反発磁界内に内外のボイスコイルを配置して同期駆動されるように構成されたものがある。磁石及びセンタープレートにより構成される反発磁気回路は、非磁性材料からなるホルダー(ヨーク)上に設置され、このホルダーのポール部が反発磁気回路の中心孔に遊挿されていて、磁石及びセンタープレートの内周面とポール部との間に空隙が形成されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3195516号公報(請求項1,[0009]〜[0013]、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来のスピーカ装置では、ホルダー(ヨーク)の略中央部にポール部が形成されており、このポール部が反発磁気回路の中心孔に遊挿されている。したがって、ホルダー(ヨーク)の厚みの分だけスピーカ装置全体の厚みが厚いため、スピーカ装置の薄型化、軽量化を図ることが難しいという問題があった。また、上記した従来のスピーカ装置では、ボイスコイルとポール部及び磁石とのクリアランスに余裕がないため、ボイスコイルが巻き回されるボイスコイルボビンの厚みに制限があり、高耐入力化及び高音質化を図ることが難しいという問題があった。さらに、上記した従来のスピーカ装置では、スピーカ装置の背面側(音響放射方向に対し反対側)がホルダー(ヨーク)で密閉されているため、ボイスコイルボビン内で熱せられた空気が動きにくく、機構上抵抗の少なく効率の良いスピーカ装置を設計することが困難であるとともに、放熱効率が低く、より高耐入力化を図ることが困難であるという問題があった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、上述のような問題を解決することを課題の一例とするものであり、これらの課題を解決することができるスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明に係るスピーカ装置は、振動板、ボイスコイルボビン及び前記ボイスコイルボビンに巻き回されたボイスコイルを有する振動体と、前記ボイスコイルボビンを囲むように略環形状に構成されたプレートを、略環形状に構成され、同極同士が対向するように配置された磁石で挟持して構成した外磁型反発磁気回路と、前記振動体と前記外磁型反発磁気回路とを支持するフレームとを備え、前記ボイスコイルボビンは、略筒状に構成され、前記ボイスコイルボビンの内部には、放熱体が遊挿されていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図、図2は図1に示すスピーカ装置の防塵ネット14を取り除いた状態における背面図である。このスピーカ装置は、磁気回路1と、フレーム2と、振動体3と、放熱体4とを有している。磁気回路1は、プレート11を同極同士が対向するように配置された2つの磁石12及び13で挟持して構成した反発型であって、外磁型である。プレート11は、例えば、鉄(例えば、ローカーボンスチール)等の軟質磁性材料からなる。プレート11は、略円環状を呈している。
【0008】
磁石12及び13は、例えば、ネオジム系、サマリウム・コバルト系、アルニコ系、フェライト系磁石等の永久磁石等からなる。磁石12及び13は、同一の略円環状を呈しており、かつ、同一寸法である。磁石12及び13のそれぞれの外径は、プレート11の外径よりわずかに小さい。プレートと磁石12及び13とは、互いの厚み方向の中心軸が重なるように、例えば、接着剤等により固着されている。
【0009】
この磁気回路1において、スピーカ装置の背面側(音響放射方向に対し反対側)の磁石12背面には、図1に示すように、防塵ネット14が、例えば、接着剤等により固着されている。防塵ネット14は、断面形状が略台形状を呈しており、表面が目の細かいメッシュ状に加工されている。防塵ネット14の周縁には、略円環状を呈するフランジ(外輪部)14bが本体14aと一体に形成されて構成されている。そして、このフランジ14b上面が磁石12の背面に、例えば、接着剤等により固着されている。
【0010】
防塵ネット14は、例えば、鉄系金属、非鉄金属又はそれらの合金、合成樹脂などから構成されている。鉄系金属としては、例えば、純鉄、無酸素鋼又はケイ素鋼等がある。非鉄金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛等がある。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系、ABS(アクリロニトリル・ブダジエン・スチレン)、ポリエチレンテレフタレート系などの熱可塑性樹脂に、補強用フィラーとしてガラス繊維又はフィブリル化したサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂を添加してなるものなどがある。防塵ネット14は、例えば、鉄系金属を絞り成形したり、非鉄金属又はそれらの合金をダイキャスト成形したり、合成樹脂を射出成形したりして形成されている。
【0011】
防塵ネット14は、外部から塵埃等の異物がスピーカ装置内部へ流入することを防止するためのものである。すなわち、スピーカ装置の内部と外部との間で気圧に大きな差がある場合には、振動体3の振動特性が著しく劣化してしまう。そこで、通常、スピーカ装置の背面側が開放されていたり、ヨーク等の略中央部に空気を出入りさせるため貫通孔が設けられたりしている。しかし、スピーカ装置の背面側又は貫通孔を通って異物が流入してしまうと幅狭な磁気ギャップ(磁気間隙)Gに悪影響が及ぶ虞がある。したがって、そのような異物の流入を防塵ネット14によって未然に防止して信頼性を高めているのである。
【0012】
一方、磁気回路1において、スピーカ装置の前面側(音響放射方向)の磁石13前面には、フレーム2が、例えば、接着剤等により固着されている。フレーム2は、例えば、鉄系金属、非鉄金属又はそれらの合金、合成樹脂などから構成されている。鉄系金属としては、例えば、純鉄、無酸素鋼又はケイ素鋼等がある。非鉄金属としては、例えば、アルミニウム、マグネシウム又は亜鉛等がある。合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレンなどのオレフィン系、ABS(アクリロニトリル・ブダジエン・スチレン)、ポリエチレンテレフタレート系などの熱可塑性樹脂に、補強用フィラーとしてガラス繊維又はフィブリル化したサーモトロピック液晶ポリエステル樹脂を添加してなるものなどがある。フレーム2は、例えば、鉄系金属を絞り成形したり、非鉄金属又はそれらの合金をダイキャスト成形したり、合成樹脂を射出成形したりして形成されている。
【0013】
フレーム2は、第1層2a、第2層2b及び第3層2cの3層からなる。第1層2aと第2層2bとは、段部2dを介して接続されている。すなわち、フレーム2は、第1層2a、段部2d、第2層2b及び第3層2cが一体に形成されて構成されている。第1層2a及び第2層2bは、それぞれ断面形状が略台形状を呈している。一方、第3層2cは、略円筒形状を呈している。第1層2aの外径よりも第2層2bの外径が大きく、第2層2bの外径よりも第3層2cの外径が大きい。
【0014】
第1層2aの略中央には、略円形状を呈する貫通孔(図示略)が穿設されている。この貫通孔の周縁に、磁気回路1を構成する磁石13前面が、例えば、接着剤等により固着されている。これにより、フレーム2は、上記磁気回路1を支持している。第2層2bの側面には、平面形状が略扇状を呈する複数の開口部2baがそれぞれ穿設されている。図2の例では、4個の開口部2baが示されている。フレーム2は、図示しないが、第3層2cにおいて上方に開口している。フレーム2は、第3層2cの内底部2ca及び段部2dにおいて後述する振動体3を支持している。
【0015】
振動体3は、振動板21と、エッジ22と、ボイスコイルボビン23と、ボイスコイル24と、ダンパー25と、センターキャップ26とを有している。振動板21は、平面形状が略円環状を呈している。振動板21の縦断面形状は、略円錐形(コーン状)を呈している。
【0016】
振動板21の材料としては、例えば、紙、繊維を用いた織布、繊維を用いた編み物、不織布、繊維を用いた織布にシリコーン樹脂等からなる結合樹脂を含浸させたもの、金属材料、合成樹脂、アクリル発泡体、合成樹脂と金属とからなるハイブリッド材などがある。金属材料には、例えば、アルミニウムやチタニウム、ジュラルミン、ベリリウム、マグネシウム、あるいはこれらの合金等がある。合成樹脂には、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリメチルメタアクリレート、ポリカーボネイト、エポキシ樹脂等などがある。また、アクリル発泡体は、例えば、メタアクリル酸メチルと、メタアクリル酸と、スチレンと、無水マレイン酸と、メタアクリルアミドとを原料とする。
【0017】
振動板21の内周縁21aには、平面形状が略円形状を呈する貫通孔21aaが形成されている。貫通孔21aaには、略円筒形状を呈するボイスコイルボビン23の上端近傍外周面が接着剤等により固着されている。ボイスコイルボビン23の材料としては、例えば、有機繊維、無機繊維又は金属材料を採用することができる。具体的には、例えば、フェノール樹脂含浸ガラス繊維、ポリイミド樹脂含浸ガラス繊維等の樹脂材料を含浸した繊維や、アルミニウム(Al)、ジュラルミン等の金属箔、ポリイミド等の樹脂フィルム等をボイスコイルボビン23の材料として採用することができる。
【0018】
ボイスコイルボビン23の下端近傍外周面には、図1に示すように、ボイスコイル24が巻き回されている。ボイスコイル24の両端は、それぞれボイスコイルボビン23及び振動板21に沿って引き出され、例えば振動板21の内周縁近傍において図示せぬ一対のリード線とそれぞれ電気的に接続されている。プレート11、磁石12及び13からなる磁気回路1と、ボイスコイル24が巻き回されたボイスコイルボビン23との間には、磁気ギャップGが形成されている。図示せぬ一対のリード線は、例えば、複数の細い電線を撚り合せて形成された屈曲に強い錦糸線からなる。
【0019】
センターキャップ26は、例えば、磁石12及び13の内径に略等しい外径を有する球面板によって形成されている。振動板21の内周縁21a近傍には、ボイスコイルボビン23の上方をふさぐとともに、スピーカ装置の前面側(音響放射方向)が凸状となるように、センターキャップ26が接着剤等により固着されている。このように、センターキャップ26は、振動板21(又は、ボイスコイルボビン23及び振動板21)に連結されることにより、振動板21及びボイスコイルボビン23の構造強度を補強し、振動板21及びボイスコイルボビン23の分割振動を極力抑えている。
【0020】
また、センターキャップ26は、振動板21と一体に振動するので、音響エネルギーの一部(主として高音域)の放射を担うとともに、振動板21の形状に起因した音波の干渉を位相補正してスピーカ装置の音響特性を調整する役割を有している。これにより、センターキャップ26は、振動板21の内周縁21aに形成された貫通孔21aaに起因した音響特性の影響を必要に応じて補正している。
【0021】
一方、振動板21の外周縁には、エッジ22が振動板21と一体に形成されている。エッジ22は、適度なコンプライアンスと剛性を兼ね備えている。エッジ22は、平面形状が略円環形状を呈するとともに、縦断面形状がスピーカ装置の前面側(音響放射方向)に突き出た略ロール形状を呈している。エッジ22の外周縁は、フレーム2を構成する第3層2cの内底部2caに接着剤等により固着されている。以上により、振動板21は、エッジ22を介してフレーム2に連結されている。すなわち、エッジ22は、振動板21をフレーム2に対し、弾性的に支持している。
【0022】
ダンパー25は、平面形状が略円環形状を呈している。ダンパー25は、適度なコンプライアンスと剛性を兼ね備えている。ダンパー25には、振動板21の内周縁21aと同心円形状にコルゲーションが形成されている。すなわち、ダンパー25の断面形状は、複数の凸部及び凹部とを有している。ダンパー25は、例えば、布にフェノール系樹脂等又はフェノール系樹脂と有機溶媒とからなる溶液などを含浸し、加熱成形により形成されている。ダンパー25の外周縁は、フレーム2を構成する段部2dに接着剤等により固着されている。一方、ダンパー25の内周縁は、ボイスコイルボビン23の上端近傍外周面であって、振動板21の内周縁21aの固着箇所より下部に、接着剤等により固着されている。以上により、振動板21は、ダンパー25を介してフレーム2に連結されている。すなわち、ダンパー25は、振動板21をフレーム2に対し、弾性的に支持している。
【0023】
これにより、ダンパー25は、スピーカ装置の静止状態(スピーカ装置が駆動されない状態)において、エッジ22とともに、振動板21、センターキャップ26、ボイスコイルボビン23及びボイスコイル24をそれぞれスピーカ装置の所定位置において弾性的に支持している。また、ダンパー25は、ボイスコイル24及びボイスコイルボビン23をプレート11、磁石12及び13等の磁気回路1を構成する部分に接触させない所定位置で弾性的に保持している。
【0024】
また、ダンパー25は、スピーカ装置の駆動状態においては、センターキャップ26、振動板21、ボイスコイルボビン23及びボイスコイル24を振動方向に沿って弾性的に支持する役目も担っている。
【0025】
以上説明した振動体3を構成するボイスコイルボビン23の内部には、放熱体4が遊挿されている。放熱体4は、略円筒形状を呈している。放熱体4の外径は、例えば、ボイスコイルボビン23の内径よりわずかに小さい。また、放熱体4の長さは、ボイスコイルボビン23の長さと略等しい又はボイスコイルボビン23の長さより短い。図1の例では、放熱体4の長さは、ボイスコイルボビン23の長さの約3分の2である。放熱体4の下端は、防塵ネット14の本体14aの前面に、例えば、接着剤等により固着されている。
【0026】
放熱体4は、磁気回路1を構成する磁性体(プレート11、磁石12及び13)よりも熱伝導率の高い素材により構成されている。放熱体4の材料としては、例えば、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などがある。それぞれの熱伝導率(0℃)は、アルミニウム(Al)が237W/m・K、無酸素銅(Cu)が391W/m・K、タフピッチ銅(Cu)が389.3W/m・K、亜鉛(Zn)が117W/m・K、タングステン(W)が174W/m・K、モリブデン(Mo)が139W/m・Kである。一方、プレート11、磁石12及び13の素材の1つである鉄(Fe)の熱伝導率(0℃)は、83.5W/m・Kである。
【0027】
上記構成を有するスピーカ装置は、音声信号(音声電流)が供給されると、音声電流が図示せぬ一対のリード線を介してボイスコイル24に供給される。一方、磁気回路1を構成する磁石12に基づく磁束と、磁石13に基づく磁束とは、それぞれプレート11の厚み方向の略中央に向かった後、合成されてプレート11のラジアル方向の内周縁に向かい、ボイスコイルボビン23及びボイスコイル24の中心軸方向に直交する方向へボイスコイルボビン23及びボイスコイル24を透過する。
【0028】
したがって、上記した磁石12及び13に基づく合成磁束とボイスコイル24に流された音声電流との間の電磁気力(ローレンツ力)に基づいてスピーカ装置の中心軸方向の駆動力がボイスコイル24に誘起される。この駆動力は、ボイスコイルボビン23を介して振動板21に伝達される。振動板21は、この駆動力の作用を受けて、エッジ22及びダンパ25に弾性支持されつつ、振動し、音声電流に応じた音波を前面(音響放射方向)にある空間に向けて放射する。
【0029】
上記したように、音声信号(音声電流)が供給されると、ボイスコイル24が発熱するので、その熱がボイスコイルボビン23に伝達され、さらに、ボイスコイルボビン23内の空気が熱せられる。このボイスコイルボビン23内で熱せられた空気は、熱伝導率の高い放熱体4の表面に触れ、冷却される。本発明の実施の形態1では、放熱体4が略円筒形状を呈しているので、ブロック状を呈している場合に比べて、空気に触れる表面積が大きく、放熱効率が良好であるとともに、軽量である。
【0030】
このように、本発明の実施の形態1によれば、従来のスピーカ装置のように、スピーカ装置の背面側(音響放射方向に対し反対側)にヨークを設ける必要がないため、その分、スピーカ装置全体の厚みを薄く設計することができるとともに、スピーカ装置全体の軽量化を図ることもできる。また、本発明の実施の形態1によれば、ボイスコイルボビン23の厚みをより厚くできるため、高耐入力化及び高音質化が可能となる。
【0031】
さらに、本発明の実施の形態1によれば、ボイスコイルボビン23内に放熱体4を遊挿している。したがって、ボイスコイルボビン23内で熱せられた空気は、放熱体4により冷却されるとともに、動きやすく、機構上抵抗の少なく効率の良いスピーカ装置を設計することができるとともに、従来に比べて放熱効率が高まり、より高耐入力化を図ることができる。
【0032】
実施の形態2.
図3は本発明の実施の形態2に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図、図4は図3に示すスピーカ装置の概略構成を示す背面図である。図3及び図4において、図1及び図2の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図3及び図4に示すスピーカ装置が図1及び図2に示すスピーカ装置と異なる点は、防塵ネット14が取り除かれている点と、ボイスコイルボビン23及び放熱体4に換えて、ボイスコイルボビン31及び放熱体32が新たに設けられている点とである。
【0033】
ボイスコイルボビン31がボイスコイルボビン23と異なる点は、ボイスコイルボビン31の下端外周面に放熱フィン31aがボイスコイルボビン31と一体に又は別体に形成されている点である。放熱フィン31aは、平面形状が略円環状を呈するものであって、磁石12方向に向けて水平に延出するフランジ(外輪部)を有するものである。ボイスコイルボビン31は、上記したボイスコイルボビン23と同一素材により構成されている。
【0034】
放熱体32は、平面形状が略円形状を呈しているとともに、断面形状が略逆T字状を呈している。すなわち、放熱体32は、略円盤形状を呈する基部(張出部)32aと、略円柱状を呈し、基部32aの略中央に立設した柱部32bとが一体に形成されて構成されている。基部31aの外径は、例えば、磁石12及び13の外径よりわずかに小さい。一方、柱部31bの外径は、ボイスコイルボビン31の内径よりわずかに小さい。放熱体32は、上記した放熱体4と同一素材により構成されている。放熱体32を構成する基部32aの外周縁上面は、磁石12の背面に、例えば、接着剤等により固着されている。
【0035】
上記構成を有するスピーカ装置は、音声信号(音声電流)が供給されると、ボイスコイル24が発熱するので、その熱がボイスコイルボビン31に伝達され、さらに、ボイスコイルボビン31内の空気が熱せられる。このボイスコイルボビン31内で熱せられた空気は、熱伝導率の高い放熱体32の表面に触れ、冷却される。このとき、ボイスコイル24で発生した熱の一部が磁石12及び13に伝達される。このうち、磁石12に伝達された熱は、磁石12の背面に固着された放熱体32を構成する基部32aに伝達され、冷却される。
【0036】
同時に、ボイスコイル24に誘起された駆動力によりボイスコイルボビン31が上下動するので、ボイスコイルボビン31の下端外周面に形成された放熱フィン31aも同時に上下動する。これにより、ボイスコイルボビン31内で熱せられた空気は、放熱フィン31aによって攪拌されて強制的に流れが形成される。攪拌された空気は、磁気回路1の外に排出される。同時に、磁気回路1の外部の新鮮な空気も磁気回路1内に吸引され、内部の空気とともに循環されるので、冷却が効率的に行われる。
【0037】
このように、本発明の実施の形態2によれば、従来のスピーカ装置のように、スピーカ装置の背面側(音響放射方向に対し反対側)にヨークを設ける必要がないため、当該箇所に、ボイスコイルボビン31内に遊挿された柱部32bと、磁石12の背面に固着された基部32aとから構成される放熱体32を設けることができる。これにより、ボイスコイルボビン31内で熱せられた空気が柱部32bにより冷却されるとともに、磁石12に伝達された熱が基部32aを介して放熱される。この結果、従来に比べて放熱効率が高まり、より高耐入力化を図ることができる。
【0038】
また、本発明の実施の形態2によれば、ボイスコイルボビン31の下端外周面に放熱フィン31aを形成しているので、ボイスコイルボビン31内で熱せられた空気は、放熱フィン31aによって攪拌され、磁気回路1の外に排出される。この結果、放熱体32と放熱フィン31aとの相乗効果により、放熱効率を高めることができる。さらに、本発明の実施の形態2によれば、ボイスコイルボビン31の厚みをより厚くできるため、高耐入力化及び高音質化が可能となる。
【0039】
実施の形態3.
図5は本発明の実施の形態3に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図、図6は図5に示すスピーカ装置の概略構成を示す背面図である。また、図7は、図5に示すスピーカ装置を構成するボイスコイルボビン41の概略構成を示す拡大断面図である。図5及び図6において、図3及び図4の各部に対応する部分には同一の符号を付け、その説明を省略する。図5及び図6に示すスピーカ装置が図3及び図4に示すスピーカ装置と異なる点は、ボイスコイルボビン31及び放熱体32に換えて、ボイスコイルボビン41及び放熱体42が新たに設けられている点である。
【0040】
ボイスコイルボビン41がボイスコイルボビン31と異なる点は、放熱フィン31aに換えて、ボイスコイルボビン41の内周面下端近傍から略中央にかけて、図5及び図7に示すように、所定間隔を隔てて複数の放熱フィン41aがボイスコイルボビン41と一体に又は別体に形成されている点である。各放熱フィン41aは、平面形状が略円環状を呈するものであって、ボイスコイルボビン41の中心軸に向けて水平に延出するフランジ(外輪部)を有するものである。図7の例では、4個の放熱フィン41aが形成されている。ボイスコイルボビン41は、上記したボイスコイルボビン23及び31と同一素材により構成されている。
【0041】
放熱体42は、上記した放熱体4及び放熱体32と同一素材で構成されている。また、放熱体42は、放熱体32と同一外形、すなわち、基部32aと同様に略円盤形状を呈する基部42aと、柱部32bと同様に略円柱状を呈し、基部42aの略中央に立設した柱部42bとが一体に形成されて構成されている。さらに、放熱体42は、放熱体32と同一寸法である。しかし、放熱体42は、基部42aの略中央から柱部42bの上端まで達する複数の通気孔42cが穿設されている。各通気孔42cは、いずれも略円柱状を呈している。図7の例では、4つの通気孔42cが穿設されている。
【0042】
上記構成を有するスピーカ装置は、音声信号(音声電流)が供給されると、ボイスコイル24が発熱するので、その熱がボイスコイルボビン41に伝達され、さらに、ボイスコイルボビン41内の空気が熱せられる。このボイスコイルボビン41内で熱せられた空気は、熱伝導率の高い放熱体42の表面に触れ、冷却される。この場合、放熱体42の基部42aには、略中央から柱部42bの上端まで達する複数の通気孔42cが穿設されている。したがって、放熱体42全体の表面積が複数の通気孔42cの内周面の分だけ増加するため、冷却効果が増加する。
【0043】
同時に、ボイスコイル24に誘起された駆動力によりボイスコイルボビン41が上下動するので、ボイスコイルボビン41の下端内周面に形成された放熱フィン41aも同時に上下動する。これにより、ボイスコイルボビン41内で熱せられた空気は、放熱フィン41aによって攪拌されて強制的に流れが形成される。攪拌された空気は、磁気回路1の外に排出される。同時に、磁気回路1の外部の新鮮な空気も磁気回路1内に吸引され、内部の空気とともに循環されるので、冷却が効率的に行われる。
【0044】
このように、本発明の実施の形態3によれば、従来のスピーカ装置のように、スピーカ装置の背面側(音響放射方向に対し反対側)にヨークを設ける必要がないため、当該箇所に、ボイスコイルボビン41内に遊挿された柱部42bと、磁石12の背面に固着された基部42aとから構成される放熱体42を設けることができる。これにより、ボイスコイルボビン41内で熱せられた空気が柱部42bにより冷却されるとともに、磁石12に伝達された熱が基部42aを介して放熱される。この結果、従来に比べて放熱効率が高まり、より高耐入力化を図ることができる。
【0045】
また、本発明の実施の形態3によれば、ボイスコイルボビン41の内周面下端近傍から略中央にかけて複数の放熱フィン41aを形成しているので、ボイスコイルボビン41内で熱せられた空気は、放熱フィン41aによって攪拌され、磁気回路1の外に排出される。この結果、放熱体42と放熱フィン41aとの相乗効果により、放熱効率を高めることができる。さらに、本発明の実施の形態3によれば、ボイスコイルボビン41の厚みをより厚くできるため、高耐入力化及び高音質化が可能となる。
【0046】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
例えば、上述の実施の形態3では、ボイスコイルボビン41の内周面下端近傍から略中央にかけて複数の放熱フィン23aをボイスコイルボビン41と一体又は別体に形成する例を示したが、これに限定されない。例えば、放熱フィンは、ボイスコイル24の下部巻き部との間に若干の間隔を設けても良いし、ボイスコイル24の下部巻き部に接するように設けても良い。さらに、放熱フィンのフランジ面は、フラット又は羽状を呈していても良いし、中心部を上方又は下方に膨出させても良いし、中心部を上方又は下方に膨出させるとともに、この膨出部に直交させて所要間隔で膨出部を形成したりしても良い。なお、放熱フィンの構造の詳細については、例えば、特開2006−5819号公報を参照されたい。
【0047】
また、上述の実施の形態3では、放熱体42には、いずれも略円柱状を呈する4つの通気孔42cを穿設する例を示したが、これに限定されず、通気孔42cの数は1つ、2つ、3つ又は5つ以上でも良く、通気孔42cの形状は略三角柱状、略四角柱状、5角以上の多角柱状でも良く、各通気孔42cの形状が異なっていても良い。
また、上述の各実施の形態では、振動板21は、縦断面形状がコーン状を呈する例を示したが、これに限定されず、縦断面形状が前面側(音波の放射側)に突き出た略ドーム形状を呈していても良い。
【0048】
また、上述の各実施の形態において、磁気回路1と、ボイスコイルボビン23,31,41又はボイスコイル24との間に磁性流体を設けても良い。このように磁性流体を設ければ、ボイスコイル24に作用する電磁気力を大きくすること、ボイスコイル24で生じる熱(ジュール熱)をプレート11に伝達させて放熱すること、等が可能となる。
また、上述の各実施の形態では、スピーカ装置の平面形状が略円形状を呈している例を示したが、これに限定されず、スピーカ装置の平面形状は略矩形状、略楕円状、あるいは、多角形状を呈していても良い。さらに、上述の各実施の形態では、スピーカ装置の平面形状が略円形状を呈しているため、プレート11、磁石12及び13は、略円環形状を呈している例を示したが、これに限定されない。例えば、スピーカ装置の平面形状が略矩形状を呈している場合には、プレート11、磁石12及び13は、略角環形状を呈していても良い。
【0049】
また、上述の各実施の形態では、磁気回路1は、1個の略環形状を呈しているプレート11と、それぞれ略環形状を呈している2個の磁石12及び13とにより構成されている例を示したが、これに限定されない。プレート11、磁石12及び13のいずれか又はすべては、略円弧状又は略矩形状を呈している複数個のプレート用素材又は複数個の磁石で構成しても良い。
また、上述の各実施の形態では、ダンパー25は、振動板21の内周縁21aと同心円形状にコルゲーションが形成されている例を示したが、これに限定されず、ダンパー25にはコルゲーションを形成しなくても良い。
また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図である。
【図2】図1に示すスピーカ装置の防塵ネットを取り除いた状態における背面図である。
【図3】本発明の実施の形態2に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】図3に示すスピーカ装置の概略構成を示す背面図である。
【図5】本発明の実施の形態3に係るスピーカ装置の概略構成を示す断面図である。
【図6】図5に示すスピーカ装置の概略構成を示す背面図である。
【図7】図5に示すスピーカ装置を構成するボイスコイルボビンの概略構成を示す拡大断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1…磁気回路、2…フレーム、2a…第1層、2b…第2層、2ba…開口部、2c…第3層、2ca…内底部、2d…段部、3…振動体、4,32,42…放熱体、11…プレート、12,13…磁石、14…防塵ネット、21…振動板、21a…内周縁、21aa…貫通孔、22…エッジ、23,31,41…ボイスコイルボビン、24…ボイスコイル、25…ダンパー、26…センターキャップ、31a,41a…放熱フィン、32a,42a…基部、32b,42b…柱部、42c…通気孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動板、ボイスコイルボビン及び前記ボイスコイルボビンに巻き回されたボイスコイルを有する振動体と、
前記ボイスコイルボビンを囲むように略環形状に構成されたプレートを、略環形状に構成され、同極同士が対向するように配置された磁石で挟持して構成した外磁型反発磁気回路と、
前記振動体と前記外磁型反発磁気回路とを支持するフレームとを備え、
前記ボイスコイルボビンは、略筒状に構成され、
前記ボイスコイルボビンの内部には、放熱体が遊挿されている
ことを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記放熱体は、通気孔が穿設されている
ことを特徴とする請求項1に記載されているスピーカ装置。
【請求項3】
前記放熱体は、略筒状に構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載されているスピーカ装置。
【請求項4】
前記放熱体は、下端部に前記磁石と接触するための張出部を有している
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されているスピーカ装置。
【請求項5】
前記ボイスコイルボビンには、音響放射方向とは反対側の端部外側に放熱フィンが形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されているスピーカ装置。
【請求項6】
前記ボイスコイルボビンの内側には、放熱フィンが形成されている
ことを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載されているスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−147414(P2009−147414A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−319483(P2007−319483)
【出願日】平成19年12月11日(2007.12.11)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(000221926)東北パイオニア株式会社 (474)
【Fターム(参考)】