説明

スピーカ装置

【課題】駆動部材の発生する振動を振動板全体に効果的に伝達することができ、奥行き寸法を小さくし、幅が狭くて細長い前面形状を採用しても、広い周波数帯域において音圧をコントロールすることができ、切れのよい低音及びクリアな中高音を再現することができ、音の再現性が良好で、音質が高くなるようにする。
【解決手段】平板状の振動板と、振動板を振動させるドライバユニットとを有するスピーカ装置であって、振動板は、幅が狭くて細長い平面形状を備え、ドライバユニットは、振動を発生する駆動部材と、駆動部材の振動を振動板に伝達する振動伝達部材と、振動伝達部材に付加された振動伝達補助部材とを備え、振動伝達部材は振動板の後面に当接し、振動伝達補助部材は、動板の長手方向に関して振動伝達部材よりも広い範囲に亘って振動板の後面に当接する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョン受信装置等に装着されて音を発生させるために平板状の振動板を有するスピーカ装置が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。このようなスピーカ装置は、ダイナミック型のスピーカユニットを有し、該スピーカユニットが備える平板状の振動板を振動させて音を発生する。
【0003】
図7は従来のスピーカ装置の構造を示す断面図である。
【0004】
図において、831はスピーカ装置のフレームであり、スピーカユニットを支持するとともに、周囲に形成された図示されない取付部材がボルト等によって固定されることにより、テレビジョン受信装置等の音響機器に取付けられる。
【0005】
そして、前記フレーム831の後方(図における下方)には、スピーカ装置のドライバユニットとして機能するマグネット841、ボトムプレート842a、トッププレート842b、センターポル842c、ボイスコイル843等が配設されている。なお、該ボイスコイル843は、円筒状のボビン844に巻付けられている。
【0006】
また、前記フレーム831の前面(図における上面)には、平板状の振動板846が配設されている。該振動板846は、その外周が振動板エッジ部847及びガスケット837を介して、フレーム831の前端に結合されている。また、前記振動板846の後面は、ドライブコーン851を介してボビン844に結合されている。なお、該ボビン844の外周には、ダンパ848の内周が結合され、ダンパ848の外周はフレーム831に結合されている。
【0007】
これにより、ボイスコイル843の振動がボビン844及びドライブコーン851を介して振動板846に伝達され、所望の音を再生することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭61−113399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、前記従来のスピーカ装置においては、振動板846が長方形のように細長い平板状の形状を備える場合、ボイスコイル843の振動を振動板846全体に忠実に伝達することができず、音質が低下してしまう。
【0010】
近年では、テレビジョン受信装置等の音響機器の小型化及び薄型化が進み、特に、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を使用する薄型テレビジョン受信装置等の音響機器においては、その内部にスピーカ装置を取付ける奥行きのあるスペースを見出すことが困難である。また、ディスプレイの周囲の枠部分に幅の広いスペースを見出すことも困難である。
【0011】
そこで、薄型テレビジョン受信装置等の薄くて小型の音響機器に取付けるためには、スピーカ装置の奥行き寸法を小さくし、かつ、幅が狭くて細長い前面形状を採用する必要があるが、スピーカ装置の奥行き寸法を小さくするとボイスコイル843と振動板846との間隔が短くなり、幅が狭くて細長い前面形状を採用すると振動板846の幅が狭くて細長くなるので、ボイスコイル843の振動を振動板846全体に伝達することが困難となり、音質が低下してしまう。
【0012】
本発明は、前記従来のスピーカ装置の問題点を解決して、駆動部材の発生する振動を平板状の振動板に伝達する振動伝達部材に、振動伝達補助部材を付加することによって、駆動部材の発生する振動を振動板全体に効果的に伝達することができ、奥行き寸法を小さくし、幅が狭くて細長い前面形状を採用しても、広い周波数帯域において音圧をコントロールすることができ、切れのよい低音及びクリアな中高音を再現することができ、音の再現性が良好で、音質が高いスピーカ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
そのために、本発明のスピーカ装置においては、平板状の振動板と、該振動板を振動させるドライバユニットとを有するスピーカ装置であって、前記振動板は、幅が狭くて細長い平面形状を備え、前記ドライバユニットは、振動を発生する駆動部材と、該駆動部材の振動を前記振動板に伝達する振動伝達部材と、該振動伝達部材に付加された振動伝達補助部材とを備え、前記振動伝達部材は前記振動板の後面に当接し、前記振動伝達補助部材は、前記振動板の長手方向に関して前記振動伝達部材よりも広い範囲に亘(わた)って前記振動板の後面に当接する。
【0014】
本発明の他のスピーカ装置においては、さらに、前記振動板は後方に向って突出する後方凸部を備え、前記振動伝達部材の前端縁及び前記振動伝達補助部材の前端縁は、前記後方凸部の後面に当接する。
【0015】
本発明の更に他のスピーカ装置においては、さらに、前記振動伝達部材は、前記駆動部材の前端から前方に向けて延出する円筒状の部材であり、前記振動伝達補助部材は、前記振動伝達部材の前端部に取付けられた閉じた形状の断面を備える部材である。
【0016】
本発明の更に他のスピーカ装置においては、さらに、前記振動伝達補助部材は、互いに平行な直線的に延在する平面状のストレート部と該ストレート部の両端をそれぞれ接続するコーナ部とを含む筒状の部材であり、前記後方凸部は一対の直線状部分を含み、前記ストレート部の全体の前端縁が、前記直線状部分の後面に当接する。
【0017】
本発明の更に他のスピーカ装置においては、さらに、前記振動伝達補助部材の長手方向の寸法は、前記振動板の長手方向の寸法の1/3〜1/2である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、スピーカ装置は、駆動部材の発生する振動を平板状の振動板に伝達する振動伝達部材に、振動伝達補助部材を付加するようになっている。これにより、駆動部材の発生する振動を振動板全体に効果的に伝達することができるので、奥行き寸法を小さくし、幅が狭くて細長い前面形状を採用しても、広い周波数帯域において音圧をコントロールすることができ、切れのよい低音及びクリアな中高音を再現することができ、音の再現性が良好となり、音質を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の分解図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の斜視図であり、(a)は斜め前方から観た図、(b)は斜め後方から観た図である。
【図3】本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の内部構造を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図である。
【図4】本発明の実施の形態における振動板の斜視図であり、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図である。
【図5】本発明の実施の形態における振動板の構造を説明する図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図、(d)は(a)のC−C矢視断面図である。
【図6】本発明の実施の形態におけるボビン及びサブボビンの結合構造を説明する図であり、(a)はボビンとサブボビンとを結合した図、(b)はボビンとサブボビンとを分離した図である。
【図7】従来のスピーカ装置の構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0021】
図1は本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の分解図、図2は本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の斜視図である。なお。図2において、(a)は斜め前方から観た図、(b)は斜め後方から観た図である。
【0022】
図において、10は本実施の形態におけるスピーカ装置であり、テレビジョン受信装置、ラジオ受信装置、パーソナルコンピュータ、CDプレーヤ、DVDプレーヤ、ゲーム機等の各種の音響機器に装着されて使用され、電気信号である音声信号によって駆動され、音声信号を再生する音声発生器である。本実施の形態におけるスピーカ装置10は、小型化することが可能であり、そのため、典型的には、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ等を使用する薄型テレビジョン受信装置、携帯用パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)、携帯用ゲーム機等の薄型又は小型の電気機器、電子機器等に装着されて使用されるが、いかなる種類の、いかなる大きさの電気機器、電子機器等のいかなる部位に装着されて使用されてもよい。
【0023】
なお、本実施の形態において、スピーカ装置10の各部の構成及び動作を説明するために使用される上、下、左、右、前、後等の方向を示す表現は、絶対的なものでなく相対的なものであり、スピーカ装置10又はその部品が図に示される姿勢である場合に適切であるが、スピーカ装置10又はその部品の姿勢が変化した場合には、姿勢の変化に応じて変更して解釈されるべきものである。
【0024】
そして、前記スピーカ装置10は、音声信号を再生して音を発生するドライバユニット40と、該ドライバユニット40、振動板ユニット46等の各部材を保持する保持部材としてのフレーム31と、該フレーム31の後方を覆うようにフレーム31に取付けられ、該フレーム31とともに筐(きょう)体を形成するハウジング11とを有する。なお、前記振動板ユニット46の後面には、ボビン44、サブボビン51等の部材が配設されるが、これら部材の詳細については、後述する。前記フレーム31は、典型的には、合成樹脂等の樹脂から成る一体的に形成された部材であるが、アルミニウム、鋼、銅等の金属から成るものであってもよいし、樹脂、カーボン、金属等を複合した複合材から成るものであってもよい。そして、前記フレーム31は、前壁部32と、側壁部33と、端壁部35とを有し、該前壁部32を底とし、側壁部33及び端壁部35の後端が開放された有底容器状の部材であり、さらに、ドライバユニット収容部34を有する。
【0025】
前記前壁部32は、平坦(たん)な板状の部材であって、図に示される例において、平面に対するその投影面の外形は、細長い長方形のような形状となっているが、長軸と短軸とを備える楕(だ)円、小判形等の形状であってもよい。また、スピーカ装置10全体も、平面に対するその投影面の外形は、細長い長方形のような形状となっているが、長軸と短軸とを備える楕円、小判形等の形状であってもよい。換言すると、スピーカ装置10及び前壁部32は、長手方向(長軸方向)の寸法に対して幅方向(短軸方向)の寸法が短くなっている。
【0026】
そして、前壁部32には、該前壁部32を板厚方向に貫通する開口としての振動板収容開口32aが形成されている。該振動板収容開口32aは、その内周縁の寸法が、振動板ユニット46の外周縁の寸法よりわずかに小さく、平板状の振動板ユニット46の外周縁の近傍を後面から支持するようになっている。図に示される例において、振動板ユニット46の外周縁の形状は、細長い長方形の四隅を斜めに切落としたような形状であり、振動板収容開口32aの内周縁の形状は、長軸と短軸とを備える楕円又は小判形のような形状である。
【0027】
また、前記側壁部33は、前壁部32の長手方向に延在する細長い長方形の板部材であり、前壁部32の一対の長辺の各々に、前壁部32に対して直交するように接続されている。さらに、前記端壁部35は、前壁部32及び側壁部33の長手方向端部の各々に、前壁部32及び側壁部33に対して直交するように接続されている。前壁部32と、一対の側壁部33と、一対の端壁部35とによって、細長い直方体状の後方に開いた箱状の空間が画定される。
【0028】
さらに、前記ドライバユニット収容部34は、略円環状又は円筒状の部材であり、その中心軸が前壁部32に対して直交するとともに、該前壁部32の長手方向のほぼ中央、かつ、振動板収容開口32aの長手方向のほぼ中央に位置するように配設される。なお、略円環状又は円筒状の部材であるドライバユニット収容部34は、その外径がフレーム31及び前壁部32の幅方向の寸法とほぼ等しく、フレーム31の幅方向両端に位置する部分が、一対の側壁部33の長手方向のほぼ中央に位置する部分と一体化するように形成されている。そして、ドライバユニット収容部34は、後述されるマグネット41等を含むドライバユニット40を収容するケーシングとして機能する。
【0029】
また、前記ドライバユニット収容部34の側方には、単数又は複数の棒状の連結部材36が配設されている。該連結部材36は、両端が側壁部33の各々に接続され、フレーム31の強度を向上させる役割を果たしている。なお、前壁部32の後面には、幅方向に延在する単数又は複数のリブ部36aが一体的に形成されている。該リブ部36aは、両端が側壁部33の各々に接続され、前壁部32の強度だけでなく、フレーム31の強度も向上させる役割を果たしている。なお、連結部材36及びリブ部36aは、その形状、大きさ及び数を任意に設定することができ、また、必要に応じて省略することもできる。
【0030】
前記端壁部35は、取付部35a及び係合部35dを有する。該係合部35dは、ハウジング11の端壁部15の係合部15aと係合する部分であり、端壁部35に形成された凹部である。また、前記取付部35aは、前記前壁部32と平行で、前記端壁部35からフレーム31の長手方向外方へ延出する固定板部35bと、該固定板部35bに形成された取付開口部35cとを備える。前記固定板部35bは、スピーカ装置10が装着される電気機器、電子機器等が備える図示されないスピーカ固定用部材に当接する部分である。さらに、前記取付開口部35cは、ボルト、ビス等の固着部材が挿通される部分である。なお、前記取付部35aの形状及び寸法は、電気機器、電子機器等の筐体におけるスピーカ装置10が装着される部位の形状及び寸法に応じて適宜変更される。例えば、前記取付開口部35cの径は、ボルト、ビス等の固着部材の外径に応じて変更される。さらに、取付部35aの前後方向の寸法は、前記電気機器、電子機器等が備えるスピーカ固定用部材の位置に応じて変更される。
【0031】
また、前記ハウジング11は、典型的には、合成樹脂等の樹脂から成る一体的に形成された部材であるが、アルミニウム、鋼、銅等の金属から成るものであってもよいし、樹脂、カーボン、金属等を複合した複合材から成るものであってもよい。そして、前記ハウジング11は、側壁部12と後壁部13と端壁部15とを有し、該後壁部13を底とし、側壁部12及び端壁部15の前端が開放された有底容器状の部材であり、さらに、前記後壁部13に形成されたドライバユニット対応開口部13aを有する。
【0032】
前記後壁部13は、平坦な板状の部材であるが、平面に対するその投影面の外形の形状及び寸法は、前記フレーム31の前壁部32とほぼ同様であり、細長い長方形のような形状、又は、長軸と短軸とを備える楕円、小判形等の形状となっている。
【0033】
このように、フレーム31及び前壁部32の形状並びに長手方向及び幅方向の寸法と同様に、ハウジング11の形状並びに長手方向及び幅方向の寸法を設定することが望ましい。これにより、電気機器、電子機器等の内部におけるスピーカ装置10を装着するスペースが狭く、フレーム31の縦及び横方向の寸法以上の余裕がない場合であっても、フレーム31にハウジング11を取付けて使用することが可能となる。
【0034】
さらに、前記ドライバユニット対応開口部13aは、断面形状がほぼ円形の開口であり、その中心軸が後壁部13に対して直交するとともに、該後壁部13の長手方向のほぼ中央に位置するように配設される。なおドライバユニット対応開口部13aは、その内径がドライバユニット40の外径とほぼ等しく、該ドライバユニット40の後端面を外部に露出させて外気に触れさせる通気口として機能する。
【0035】
また、前記側壁部12は、後壁部13の長手方向に延在する細長い長方形の板部材であり、後壁部13の一対の長辺の各々に、後壁部13に対して直交するように接続されている。なお、前記側壁部12における前後方向の寸法は、前記フレーム31の側壁部33における前後方向の寸法よりも小さく設定されている。さらに、前記端壁部15は、後壁部13及び側壁部12の長手方向端部の各々に、後壁部13及び側壁部12に対して直交するように接続されている。後壁部13と、一対の側壁部12と、一対の端壁部15とによって、細長い直方体状の前方に開いた浅い箱状の空間が画定される。
【0036】
前記端壁部15は、係合部15a及び音質調整孔(こう)15bを有する。前記係合部15aは、フレーム31の端壁部35の係合部35dと係合する部分であり、端壁部15に形成された凸部である。また、前記音質調整孔15bは、端壁部15に開いた開口であって、後述される連通路15cに連結されている。
【0037】
そして、前記ハウジング11は、その側壁部12及び端壁部15の前端を、フレーム31の側壁部33及び端壁部35の後端と当接させるようにして、図2に示されるように、フレーム31と結合される。これにより、内部にドライバユニット40が収容された閉じた空間を備える筐体が形成される。前記空間は、前記音質調整孔15b及び連通路15cを介して外気と連通するので、前記音質調整孔15b及び連通路15cの長さ、断面形状、断面の大きさ等を調整することによって種々の周波数帯での音圧をコントロールすることができる。なお、ドライバユニット40の後端面は、ドライバユニット対応開口部13aを介して、外部に露出する。
【0038】
次に、前記スピーカ装置10の内部構造について説明する。
【0039】
図3は本発明の実施の形態におけるスピーカ装置の内部構造を説明する図、図4は本発明の実施の形態における振動板の斜視図、図5は本発明の実施の形態における振動板の構造を説明する図、図6は本発明の実施の形態におけるボビン及びサブボビンの結合構造を説明する図である。なお、図3において、(a)は上面図、(b)は(a)のA−A矢視断面図、(c)は(a)のB−B矢視断面図であり、図4において、(a)は斜め後方から観た図、(b)は斜め前方から観た図であり、図5において、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図、(d)は(a)のC−C矢視断面図であり、図6において、(a)はボビンとサブボビンとを結合した図、(b)はボビンとサブボビンとを分離した図である。
【0040】
図に示されるように、ドライバユニット40は、有底円筒状のユニットケース40aを有するとともに、該ユニットケース40a内に収容された磁石としてのマグネット41、プレート42、ボイスコイルとしてのコイル43、振動伝達部材としてのボビン44、振動伝達補助部材としてのサブボビン51、電線としてのコード52等を有する。
【0041】
前記マグネット41は、保磁力の高い材質から成る永久磁石であり、略円柱状の形状を備える部材である。そして、前記マグネット41の後面は、ユニットケース40aの底板の内面、すなわち、前面に当接している。なお、前記ユニットケース40aは、マグネット41を収容するケーシングとして機能するとともに、ドライバユニット40の熱を発散する放熱部材としても機能し、さらに、前記マグネット41とともに磁路を形成するヨークとしても機能する。そのため、ユニットケース40aは、例えば、軟鉄等の熱伝導率が高く、かつ、透磁率の高い材質から成るものであることが望ましい。
【0042】
また、前記プレート42は、磁路を形成するヨークとして機能する部材であり、例えば、軟鉄等の透磁率の高い材質から成る。そして、前記プレート42は、円盤状の形状を備える板部材であり、その後面はマグネット41の前面に当接している。
【0043】
さらに、前記コイル43は、例えば、銅等の導電性の高い材質から成る導線を、前後方向に延在する円筒状のボビン44の後端部の外周面に巻付けて形成された部材であって、駆動部材として機能する。そして、前記コイル43は、全体として肉薄の円筒状の形状を備え、ユニットケース40aの筒部の内側面と、プレート42の外側面との間の間隙(げき)、すなわち、ギャップ内に、前後方向に移動可能に配設されている。
【0044】
また、前記ボビン44は、前記コイル43の前端から前方に向けて延出し、その前端部には、サブボビン51が取付けられている。そして、前記ボビン44の前端縁及びサブボビン51の前端縁は、振動板ユニット46の振動板45の後面に当接し、例えば、接着剤等によって固着されている。なお、コード52は、電気信号である音声信号をコイル43に伝達する電線であり、図示されない一端がコード52に接続され、他端は、図示されないアンプ等の音声信号発生機器に他のコードを介して接続される。図3(b)に示されるように、コード52は、中間の部分がフレーム31の連結部材36等によって保持されることが望ましい。
【0045】
本実施の形態において、振動板ユニット46は、全体として平板状の部材であって、細長い長方形の四隅を斜めに切落としたような形状を備える。また、前記振動板ユニット46は、全体として平板状の振動板45と、該振動板45の外周に接続された振動板エッジ部47とを有する。なお、図に示される例において、前記振動板45の外周縁の形状は長軸と短軸とを備える楕円又は小判形のような形状であり、前記振動板エッジ部47の内周縁の形状は前記振動板45の外周縁の形状と同一であり、前記振動板エッジ部47の外周縁の形状は細長い長方形の四隅を斜めに切落としたような形状である。
【0046】
そして、前記振動板45は、全体としては平板状であるが、剛性を高めるために凹凸が付与されている。図に示される例においては、前方に向って突出する凸部45aが形成されている。該凸部45aの平面形状は、振動板45の外周縁の形状に適合するように、長軸と短軸とを備える楕円又は小判形の環のような形状となっている。また、前記凸部45aに隣接する部分は、相対的に凹入した凹部45bとなっている。なお、該凹部45bは、凸部45aによって該凸部45aの内側及び外側に位置する第1凹部45b1及び第2凹部45b2に分割されている。
【0047】
図に示される例において、凸部45aは、単数であるが、複数であってもよい。例えば、二重乃至三重以上の多重の環を描くように形成することもできる。この場合、凹部45bは、複数の凸部45aによって、更に多数に分割されることとなる。なお、後方から観た場合には、凹部45bが後方に向って突出する部分、すなわち、後方凸部となり、凸部45aが相対的に凹入した部分、すなわち、後方凹部となる。
【0048】
また、振動板エッジ部47も、全体としては平板状であるが、柔軟性を高めるに、変形容易な薄肉の湾曲部47aが形成されている。図に示される例において、湾曲部47aは、前方に向って突出するように形成されているが、凹入するように、すなわち、後方に向って突出するように形成されていてもよい。前記湾曲部47aの平面形状は、振動板エッジ部47の内周縁の形状に適合するように、長軸と短軸とを備える楕円又は小判形の環のような形状となっている。また、図に示される例において、湾曲部47aは、単数であるが、複数であってもよい。例えば、二重乃至三重以上の多重の環を描くように形成することもできる。
【0049】
前記振動板エッジ部47における湾曲部47aの外周には、取付部としてのガスケット部47bが接続されている。該ガスケット部47bは、内周縁の形状が湾曲部47aの外周縁の形状と同一の楕円又は小判形の形状であるが、外周縁の形状は細長い長方形の四隅を斜めに切落としたような形状である。そして、前記ガスケット部47bは、例えば、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂)等の柔軟性を備える材質から成り、その後面がフレーム31の前壁部32に形成された振動板収容開口32aの内周縁の周囲に接着剤等によって固着されて取付けられる。これにより、振動板45は、振動を妨害されることなく、フレーム31の前壁部32によって保持される。
【0050】
本実施の形態において、サブボビン51は、図に示されるように、断面形状が長軸と短軸とを備える楕円又は小判形の環のような形状の筒状部材であり、互いに平行な直線的に延在する平面状のストレート部51aと、該ストレート部51aの両端をそれぞれ接続するコーナ部51bとを備える。前記サブボビン51は、例えば、細長い帯板状部材を環となるように曲げて両端を互いに接続することによって形成することができる。
【0051】
また、ボビン44の前端部には、図6(b)に示されるように、切込み44aが複数(例えば、4つ)形成され、該切込み44aにサブボビン51のストレート部51aが差込まれる。前記ボビン44の前端縁からの切込み44aの深さは、サブボビン51の前後方向の寸法とほぼ一致する。これにより、サブボビン51をボビン44に取付けた状態で、該ボビン44の前端縁とサブボビン51の前端縁とが面一となる。なお、ボビン44とサブボビン51とは、接着剤等によって互いに固着される。
【0052】
このように組立てられたボビン44の前端縁及びサブボビン51の前端縁が振動板ユニット46の振動板45の後面に当接して固着されているので、コイル43の振動がボビン44及びサブボビン51を介して、振動板45に伝達される。具体的には、後方に向って突出する部分である凹部45bの後面に、ボビン44の前端縁及びサブボビン51の前端縁が当接し、接着剤等によって固着される。なお、ボビン44の前端縁及びサブボビン51の前端縁における凸部45aの後面に対応する部分は、振動板45に当接しておらず、また、固着されてもいない。
【0053】
また、前記サブボビン51の幅方向の寸法、すなわち、対向する一対のストレート部51aの間隔は、長軸と短軸とを備える楕円又は小判形の環のような形状の第2凹部45b2における対向する一対の直線状部分の間隔とほぼ等しくなるように設定されている。これにより、前記サブボビン51のストレート部51aの全体の前端縁は、第2凹部45b2の直線状部分の後面に当接して固着される。したがって、振動板45の広い範囲に亘ってサブボビン51が振動板45に当接して固着されることとなり、振動が振動板45の広い範囲に伝達される。
【0054】
さらに、前記サブボビン51のコーナ部51bが第1凹部45b1の後面に当接して固着される部位は、ボビン44が第1凹部45b1の後面に当接して固着される部位よりも、振動板45の長手方向中央から離れている。したがって、振動板45の広い範囲に亘ってサブボビン51が振動板45に当接して固着されることとなり、振動が振動板45の広い範囲に伝達される。
【0055】
図5(c)に示されるように、円筒状の部材であるボビン44の直径をDとし、細長い部材であるサブボビン51の長手方向の寸法をlとし、細長い板状部材である振動板45の長手方向の寸法をLとすると、lの値は、典型的には、l≒2D、かつ、L/3≦l≦L/2である。
【0056】
仮に、サブボビン51を使用することなく、細長い板状部材である振動板45の広い範囲に振動を伝達しようとすると、各々がボビン44を備えるドライバユニット40を、振動板45の長手方向に2つ並べて配設することが考えられる。この場合、各ボビン44又はドライバユニット40は、振動板45の長手方向に等分するような位置に配設されると考えられる。つまり、2つ並んだボビン44の中心同士の距離はL/3程度であり、2つ並んだボビン44の遠位端同士の距離はL/3+D程度である。
【0057】
そのため、L/3≦l≦L/2とすると、サブボビン51によって、該サブボビン51を備えていないドライバユニット40を2つ並べて配設した場合と同等の範囲に亘って、振動を振動板45に伝達することができる、と言える。
【0058】
さらに、前記サブボビン51は、前述のように断面形状が楕円又は小判形の環のような形状の筒状部材、すなわち、閉じた形状の断面を備える部材である。そのため、サブボビン51全体の剛性が高いので、振動が振動板45の広い範囲に忠実に伝達される。
【0059】
また、図3(b)に示されるように、ハウジング11の後壁部13には、該後壁部13の長手方向に延在する一対の連通路15cが形成されている。該連通路15cは、その一端が端壁部15の音質調整孔15bに連結され、その他端がハウジング11とフレーム31との間に形成された閉じた空間に連通している。そのため、前記音質調整孔15b及び連通路15cの長さ、断面形状、断面の大きさ等を調整することによって種々の周波数帯での音圧をコントロールすることができる。これにより、密閉型のエンクロージャとしてのハウジング11とフレーム31との間の空間、つまり、音響空間として機能する空間の容積が小さくても、所望の周波数帯域でスピーカ装置10の性能を十分に発揮させることができる。
【0060】
さらに、ユニットケース40aの後端面が、ドライバユニット対応開口部13aを介して、外部に露出している。したがって、ドライバユニット40が発生する熱をユニットケース40aの後端面から効率よく放出することができるので、スピーカ装置10、特にドライバユニット40の過熱を防止することができる。
【0061】
このように、本実施の形態において、スピーカ装置10は、平板状の振動板45と、振動板45を振動させるドライバユニット40とを有し、振動板45は、幅が狭くて細長い平面形状を備え、ドライバユニット40は、振動を発生するコイル43と、コイル43の振動を振動板45に伝達するボビン44と、ボビン44に付加されたサブボビン51とを備え、ボビン44は振動板45の後面に当接し、サブボビン51は、振動板45の長手方向に関してボビン44よりも広い範囲に亘って振動板45の後面に当接する。
【0062】
これにより、コイル43の発生する振動を振動板45全体に効果的に伝達することができるので、スピーカ装置10の奥行き寸法を小さくし、幅が狭くて細長い前面形状を採用しても、幅方向のローリングを抑制することができ、広い周波数帯域において音圧をコントロールすることができ、切れのよい低音及びクリアな中高音を再現することができ、音の再現性が良好で、音質が高いスピーカ装置10を提供することができる。
【0063】
また、振動板45は後方に向って突出する凹部45bを備え、ボビン44の前端縁及びサブボビン51の前端縁は、凹部45bの後面に当接する。これにより、コイル43の振動がボビン44及びサブボビン51を介して、振動板45に忠実に伝達される。
【0064】
さらに、ボビン44は、コイル43の前端から前方に向けて延出する円筒状の部材であり、サブボビン51は、ボビン44の前端部に取付けられた閉じた形状の断面を備える部材である。これにより、ボビン44及びサブボビン51の剛性が高くなり、コイル43の振動が振動板45に忠実に伝達される。また、ボビン44及びコイル43のローリングを防止することができる。
【0065】
さらに、サブボビン51は、互いに平行な直線的に延在する平面状のストレート部51aとストレート部51aの両端をそれぞれ接続するコーナ部51bとを含む筒状の部材であり、凹部45bは一対の直線状部分を含み、ストレート部51aの全体の前端縁が、直線状部分の後面に当接する。したがって、振動板45の広い範囲に亘ってサブボビン51が振動板45に当接して固着されることとなり、振動が振動板45の広い範囲に伝達される。
【0066】
さらに、サブボビン51の長手方向の寸法は、振動板45の長手方向の寸法の1/3〜1/2である。これにより、サブボビン51を備えていないドライバユニット40を2つ並べて配設した場合と同等の範囲に亘って、振動を振動板45に伝達することができる。
【0067】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明は、スピーカ装置に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 スピーカ装置
11 ハウジング
12、33 側壁部
13 後壁部
13a ドライバユニット対応開口部
15、35 端壁部
15a、35d 係合部
15b 音質調整孔
15c 連通路
31、831 フレーム
32 前壁部
32a 振動板収容開口
34 ドライバユニット収容部
35a 取付部
35b 固定板部
35c 取付開口部
36 連結部材
36a リブ部
40 ドライバユニット
40a ユニットケース
41、841 マグネット
42 プレート
43 コイル
44、844 ボビン
44a 切込み
45、846 振動板
45a 凸部
45b 凹部
45b1 第1凹部
45b2 第2凹部
46 振動板ユニット
47、847 振動板エッジ部
47a 湾曲部
47b ガスケット部
51 サブボビン
51a ストレート部
51b コーナ部
52 コード
837 ガスケット
842a ボトムプレート
842b トッププレート
842c センターポル
843 ボイスコイル
848 ダンパ
851 ドライブコーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)平板状の振動板と、該振動板を振動させるドライバユニットとを有するスピーカ装置であって、
(b)前記振動板は、幅が狭くて細長い平面形状を備え、
(c)前記ドライバユニットは、振動を発生する駆動部材と、該駆動部材の振動を前記振動板に伝達する振動伝達部材と、該振動伝達部材に付加された振動伝達補助部材とを備え、
(d)前記振動伝達部材は前記振動板の後面に当接し、前記振動伝達補助部材は、前記振動板の長手方向に関して前記振動伝達部材よりも広い範囲に亘って前記振動板の後面に当接することを特徴とするスピーカ装置。
【請求項2】
前記振動板は後方に向って突出する後方凸部を備え、前記振動伝達部材の前端縁及び前記振動伝達補助部材の前端縁は、前記後方凸部の後面に当接する請求項1に記載のスピーカ装置。
【請求項3】
前記振動伝達部材は、前記駆動部材の前端から前方に向けて延出する円筒状の部材であり、前記振動伝達補助部材は、前記振動伝達部材の前端部に取付けられた閉じた形状の断面を備える部材である請求項1又は2に記載のスピーカ装置。
【請求項4】
前記振動伝達補助部材は、互いに平行な直線的に延在する平面状のストレート部と該ストレート部の両端をそれぞれ接続するコーナ部とを含む筒状の部材であり、
前記後方凸部は一対の直線状部分を含み、
前記ストレート部の全体の前端縁が、前記直線状部分の後面に当接する請求項3に記載のスピーカ装置。
【請求項5】
前記振動伝達補助部材の長手方向の寸法は、前記振動板の長手方向の寸法の1/3〜1/2である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスピーカ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−253603(P2012−253603A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125296(P2011−125296)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(591043064)モレックス インコーポレイテド (441)
【氏名又は名称原語表記】MOLEX INCORPORATED
【Fターム(参考)】