説明

スピードスプレーヤの噴霧遮断装置

【課題】 全体の小型コンパクト化を図るとともに、機構部分の無用な露出等による外観性(形状性)の低下を回避する。
【解決手段】 遮断カバー3を遮断位置Xs又は開放位置Xrに選択的に移動可能なカバー移動手段4を備えるスピードスプレーヤMの噴霧遮断装置1であって、直進方向に変位する変位出力部5eを有するリニアアクチュエータ部5と、一端部6dを回動支持部11を介して車体10側に取付け、かつ他端部6uを遮断カバー3に対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12を介して係合させるとともに、中間部6mにリニアアクチュエータ部5の変位出力部5eが回動結合部13を介して結合するリンクレバー部6と、遮断カバー3を前後方向へ変位自在に支持する支持機構部7と、リニアアクチュエータ部5を駆動制御する制御部8とを有するカバー移動手段4を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、右方,左方及び上方を含む放射方向の所定範囲に薬液を噴霧する薬液噴霧機構に付設するスピードスプレーヤの噴霧遮断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、放射方向の所定範囲に薬液を噴霧する薬液噴霧機構を備えたスピードスプレーヤとしては、既に本出願人が提案した特許文献1で開示されるスピードスプレーヤが知られている。同文献1に開示されるスピードスプレーヤは、整流部の開口縁に沿った車両本体の左右の両側面に各々薬液を供給する主管を配置し、主管に連通する複数の可動枝管を、軸線を車両本体の前後方向に向けかつ主管の流路中心から偏位させて、主管方向に所定間隔で配し、可動枝管の各々に、主管に連通するノズルを設け、各々の可動枝管の端部にリンクアームの一端側を固定し、隣接する可動枝管のリンクアームの他端側間をリンクロッドによりリンク結合し、リンクロッドを押動してリンクアームを揺動させることにより軸線を回動中心として可動枝管を回動させる駆動機構を設けたものであり、これにより、片側にのみ果樹がある圃場の端,果樹の成育状態(高さ状態)或いは傾斜地など、噴霧場所の状態に応じて薬液の噴射方向を可変することができる。
【0003】
しかし、このスピードスプレーヤ(薬液噴霧機構)は、薬液の噴射方向を変更できても、薬液散布を回避したい方向への薬液飛散を確実に防止することができず、民家や無農薬栽培畑等に対する薬液飛散を十分に回避できない課題が存在した。このため、既に本出願人はこの課題を解決するスピードスプレーヤの薬液噴霧装置を特許文献2により提案した。同文献2に開示される薬液噴霧装置は、右方,左方及び上方を含む放射方向の所定範囲に薬液を噴霧可能な薬液噴霧機構と、前記所定範囲における一部範囲を遮断して薬液の噴霧を規制する遮断カバーと、この遮断カバーを、前記一部範囲を遮断する遮断位置又はこの遮断を解除する開放位置に選択的に移動可能なカバー移動手段を設けたものであり、これにより、所定範囲における一部範囲を遮断部材により遮断して薬液の噴霧を規制することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−004760号公報
【特許文献2】特開2008−100170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したスピードスプレーヤに備える従来の薬液噴霧装置は、次のような解決すべき課題も存在した。
【0006】
第一に、薬液噴霧範囲の一部範囲を遮断する遮断位置又はこの遮断を解除する開放位置に遮断カバーを移動させるカバー移動手段を備えるため、このカバー移動手段を構成するに際しては、遮断カバーを遮断位置と開放位置に移動させるストローク範囲を確保する必要がある。したがって、動力としてリニアタイプのアクチュエータを用いた場合、カバー移動手段の、特に限られた配設エリア内における前後方向の占有スペースが広くなり、カバー移動手段全体の大型化、更には機構部分の露出等による外観性(形状性)低下を招いてしまう。
【0007】
第二に、アクチュエータのストローク範囲をできるだけ短くするため、アクチュエータの変位出力部の変位を増幅して遮断カバーに伝達するリンク機構を用いているが、リンク機構には回動変位するリンク部材(レバー部材)を備えることから、例えば、薬液の散布される樹木等が当たった場合、その樹木等がリンク機構に巻き込まれやすく、樹木等を傷付けたり、カバー移動手段の故障原因にもなりやすい。
【0008】
本発明は、このような背景技術に存在する課題を解決したスピードスプレーヤの噴霧遮断装置の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上述した課題を解決するため、右方,左方及び上方を含む放射方向の所定範囲に薬液を噴霧可能な薬液噴霧機構2に付設し、所定範囲における一部範囲Anを遮断して薬液の噴霧を規制する遮断カバー3と、この遮断カバー3を、一部範囲Anを遮断する遮断位置Xs又はこの遮断を解除する開放位置Xrに選択的に移動可能なカバー移動手段4を備えるスピードスプレーヤMの噴霧遮断装置1を構成するに際して、直進方向に変位する変位出力部5eを有するリニアアクチュエータ部5と、一端部6dを回動支持部11を介して車体10側に取付け、かつ他端部6uを遮断カバー3に対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12を介して係合させるとともに、中間部6mにリニアアクチュエータ部5の変位出力部5eが回動結合部13を介して結合するリンクレバー部6と、遮断カバー3を前後方向へ変位自在に支持する支持機構部7と、リニアアクチュエータ部5を駆動制御する制御部8とを有するカバー移動手段4を備えることを特徴とする。
【0010】
この場合、発明の好適な態様により、レバー係合部12は、リンクレバー部6の他端部6uに回動自在に設けたローラ部21と、遮断カバー3に設け、かつ係合するローラ部21を上下方向にガイドするレール部22により構成できる。なお、レール部22を設けるに際しては、別途のレール部材22pを遮断カバー3に取付けてもよいし、或いは遮断カバー3に一体形成してもよい。また、リンクレバー部6は、円弧形に湾曲形成することが望ましい。一方、回動結合部13は、リンクレバー部6の中央位置よりも回動支持部11側に配することができるとともに、レバー係合部12は、遮断カバー3の上下方向の中間位置に配することができる。他方、噴霧遮断装置1には、遮断カバー3が遮断位置Xs側へ移動した際に一部範囲Anに噴霧する薬液の供給を停止し、かつ遮断カバー3が開放位置Xr側へ移動した際に供給の停止を解除する薬液供給連動手段23を設けることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
このような構成を有する本発明に係るスピードスプレーヤMの噴霧遮断装置1によれば、次のような顕著な効果を奏する。
【0012】
(1) カバー移動手段4に、一端部6dを回動支持部11により車体10側に取付け、かつ他端部6uを遮断カバー3に対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12により係合させるとともに、中間部6mにリニアアクチュエータ部5の変位出力部5eが回動結合部13により結合するリンクレバー部6を備えるため、リニアアクチュエータ部5を用いた場合であっても、カバー移動手段4の、特に限られた配設エリア内における前後方向の占有スペースを有効に縮小でき、カバー移動手段4の全体の小型コンパクト化、更には機構部分の無用な露出等による外観性(形状性)の低下を回避できる。
【0013】
(2) 好適な態様により、レバー係合部12を、リンクレバー部6の他端部6uに回動自在に設けたローラ部21と、遮断カバー3に設け、かつ係合するローラ部21を上下方向にガイドするレール部22により構成すれば、リンクレバー部6の他端部6uに生じる上下方向の相対変位を円滑に許容し、確実な係合機能及び動作を確保できる。
【0014】
(3) 好適な態様により、レール部22を、別途のレール部材22pを遮断カバー3に取付けて構成すれば、遮断カバー3の形状的(デザイン的)な設計自由度を高めることができる。
【0015】
(4) 好適な態様により、レール部22を、遮断カバー3に一体形成して構成すれば、別途のレール部材が不要になり、部品点数及び組付工数の削減による低コスト化に寄与できる。
【0016】
(5) 好適な態様により、リンクレバー部6を、円弧形に湾曲形成すれば、リンクレバー部6の全て又はほとんどを遮断カバー3の内側に収容可能となる。これにより、薬液が散布される樹木等が当たった場合であっても、リンクレバー部6により樹木等が巻き込まれる虞れがなくなるため、樹木を傷付けたり或いはカバー移動手段4における故障等の発生を回避できる。また、遮断カバー3の遮蔽によりリンクレバー部6や回動結合部13等の機構部分を保護できるため、遮断カバー3を保護カバーとしても機能させることができる。
【0017】
(6) 好適な態様により、回動結合部13を、リンクレバー部6の中央位置よりも回動支持部11側に配するとともに、レバー係合部12を、遮断カバー3の上下方向の中間位置に配すれば、カバー移動手段4に対して小型コンパクト化を実現する観点及び円滑な動作を確保する観点から、より大きなパフォーマンスを得ることができる。
【0018】
(7) 好適な態様により、噴霧遮断装置1に、遮断カバー3が遮断位置Xs側へ移動した際に一部範囲Anに噴霧する薬液の供給を停止し、かつ遮断カバー3が開放位置Xr側へ移動した際に供給の停止を解除する薬液供給連動手段23を設ければ、民家や無農薬栽培畑等の薬液散布を回避したい方向への薬液飛散を確実に防止できることに加え、一部範囲Anに対して噴霧を停止(又は停止解除)する際の操作の単純化、更には作業能率の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の好適実施形態に係る噴霧遮断装置における一部を破断した遮断カバーが遮断位置にあるスピードスプレーヤの一部を示す右側面構成図、
【図2】同噴霧遮断装置の要部を抽出して示す動作説明図、
【図3】同噴霧遮断装置における遮断カバーの外観斜視図、
【図4】同噴霧遮断装置における遮断カバーが開放位置にあるスピードスプレーヤの一部を示す右側面構成図、
【図5】同噴霧遮断装置を備えるスピードスプレーヤの背面構成図、
【図6】同噴霧遮断装置における遮断カバーの断面を含む要部の平面構成図、
【図7】同噴霧遮断装置におけるレバー係合部の変更例を示す遮断カバーの断面を含む要部の平面構成図、
【図8】同噴霧遮断装置を備えるスピードスプレーヤの右側面全体構成図、
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明に係る好適実施形態を挙げ、図面に基づき詳細に説明する。
【0021】
まず、本発明の理解を容易にするため、本実施形態に係る噴霧遮断装置1を備えるスピードスプレーヤMの概略構成について、図8を参照して説明する。
【0022】
スピードスプレーヤMにおいて、30はシャーシであり、このシャーシ30の前側に、左右一対の前輪31…を備えるとともに、後側に、左右一対の後輪32…を備え、搭載するエンジンにより自走する。また、シャーシ30上のボディ33には、前部に運転席34を備えるとともに、運転席34の前方におけるフロントパネル35には、ヘッドライト等の灯火器やバックミラー等の必要な車両設備を備える。さらに、運転席34の後方には、薬液タンク36及びエンジンルーム等の機械室を搭載するとともに、この後方に本実施形態に係る噴霧遮断装置1を付設する薬液噴霧機構2を備える。
【0023】
薬液噴霧機構2は、風洞41に覆われた送風機42(図5)を有する送風部43を備え、この送風部43と薬液タンク36の間には噴射空間Sを設ける。なお、風洞41は車体10の一部を構成する。また、噴射空間Sには、整流筒44及びこの整流筒44に沿って配した多数の噴射ノズルN…を配設する。この場合、各噴射ノズルN…は、図5に示すように、三方へ噴霧するためのノズルユニット45p,45m,45qから分岐して設けられており、各噴射ノズルN…から噴射される薬液は、送風部43からの送風によって噴射空間Sから放射方向の所定範囲に噴霧される。この際、右側に配したノズルユニット45pの噴射ノズルN…からは当該所定範囲の一部範囲Anとなる右方に噴霧される。同様に、左側に配したノズルユニット45qの噴射ノズルN…からは当該所定範囲の一部範囲となる左方に噴霧されるとともに、上側に配したノズルユニット45mの噴射ノズルN…からは当該所定範囲の一部範囲となる上方に噴霧される。なお、例示する上側のノズルユニット45mは、更に二つのノズルユニットが組合わされている。
【0024】
次に、本実施形態に係る噴霧遮断装置1の構成について、図1〜図7を参照して具体的に説明する。
【0025】
噴霧遮断装置1は、噴射空間Sに付設することにより、薬液が噴霧される所定範囲における一部範囲Anを遮断して薬液の噴霧を規制する遮断カバー3を備える。例示の遮断カバー3は、一部範囲Anとして、スピードスプレーヤMの右方への噴霧を規制するため、この一部範囲Anに対して規制できる形状に形成する。即ち、一枚の短冊状をなすパネル材を噴射空間Sの周りに沿わせ、かつ当該周りを遮蔽可能な形状に一体形成する。図3に遮断カバー3の全体形状を示す。この場合、噴射空間Sから放射方向に向かう風圧は、かなりの大きさに及ぶため、スピードスプレーヤMの側面に対して平行となるカバー本体部3mには、この風圧に十分に耐えるように、デザイン形状を兼ねる凹凸による複数のリブ部3s…を膨出形成して剛性を高めている。また、前方(運転席34側)への漏れ噴霧を防止するため、カバー本体部3mの前端から内方に向けて前遮蔽部3fを一体形成する。このような遮断カバー3はプラスチック素材や金属素材等により容易に製作できるとともに、低コストに実施できる。
【0026】
さらに、噴霧遮断装置1には、この遮断カバー3を、一部範囲Anを遮断する遮断位置Xs又はこの遮断を解除する開放位置Xrに選択的に移動可能なカバー移動手段4を備える。カバー移動手段4は、直進方向に変位する変位出力部5eを有するリニアアクチュエータ部5と、一端部6dを回動支持部11を介して車体10側に取付け、かつ他端部6uを遮断カバー3に対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12を介して係合させるとともに、中間部6mにリニアアクチュエータ部5の変位出力部5eが回動結合部13を介して結合するリンクレバー部6と、遮断カバー3を前後方向へ変位自在に支持する支持機構部7と、リニアアクチュエータ部5を駆動制御する制御部8とを備える。
【0027】
この場合、図1及び図5に示すように、風洞41の外側面には支持板51を取付ける。図1に示すように、支持板51は全体を矩形状に形成し、上端辺には上側のガイドレール部52uを設けるとともに、下端辺には下側のガイドレール部52dを設ける。各ガイドレール部52uと52dは平行となり、このガイドレール部52u,52dに、遮断カバー3の内面における上位置及び下位置にそれぞれ設けたスライダ部53u,53dをスライド自在に装填する。ガイドレール部52u,52d及びスライダ部53u,53dはリニアベアリングにより構成することができ、支持板51,ガイドレール部52u,52d及びスライダ部53u,53dは、遮断カバー3を前後方向へ変位自在に支持する支持機構部7を構成する。これにより、遮断カバー3を、前方向へ移動させた際には、上述した一部範囲Anを遮断する遮断位置Xsに位置させることができるとともに、後方向へ移動させた際には、この遮断を解除する開放位置Xrに位置させることができる。
【0028】
一方、支持板51にはリニアアクチュエータ部5及びリンクレバー部6を配設する。この場合、リニアアクチュエータ部5には電気駆動タイプを使用する。リニアアクチュエータ部5は、アクチュエータ本体5m及びこのアクチュエータ本体5mの先端から突出する駆動ロッド(アーマチュア)5dを有する。したがって、この駆動ロッド5dの前端部は直進方向に変位する変位出力部5eとなる。そして、アクチュエータ本体5mの後端部は、支持板51の上下方向中間位置における後端付近に、回動取付部56を介して回動自在に取付ける。
【0029】
また、リンクレバー部6は円弧形に湾曲形成し、リニアアクチュエータ部5の前方に配する。リンクレバー部6は上下方向に長く、中間部が前方に位置するように湾曲形成する。そして、リンクレバー部6の下端部(一端部)6dは、支持板51の前寄り位置における下端付近に、回動支持部11を介して回動自在に取付ける。一方、リンクレバー部6の上端部(他端部)6uは、遮断カバー3の内面に対して、上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12を介して係合させる。この際、レバー係合部12の位置は、遮断カバー3の上下方向における中間位置を選定する。レバー係合部12は、リンクレバー部6の他端部6uに回動自在に設けたローラ部21と、遮断カバー3の内面に設けたレール部22により構成する。この場合、レール部22は、図6にように、別途形成した断面コの字形となるチャンネル状のレール部材22pを用意し、このレール部材22pをネジ止め等により遮断カバー3の内面に取付けて構成する。これにより、ローラ部21はレール部22に係合して上下方向にガイドされる。このように、レバー係合部12を、他端部6uに設けたローラ部21と遮断カバー3に設けたレール部22により構成すれば、リンクレバー部6の他端部6uに生じる上下方向の相対変位を円滑に許容し、確実な係合機能及び動作を確保できるとともに、特に、レール部22を、別途のレール部材22pを遮断カバー3に取付けて構成すれば、遮断カバー3の形状的(デザイン的)な設計自由度を高めることができる利点がある。
【0030】
さらに、リンクレバー部6の中間部6mには、リニアアクチュエータ部5における変位出力部5eを、回動結合部13を介して回動自在に結合する。この場合、回動結合部13は、リンクレバー部6の中央位置よりも回動支持部11側の位置を選定する。このように、回動結合部13を、リンクレバー部6の中央位置よりも回動支持部11側に配するとともに、上述したレバー係合部12を、遮断カバー3の上下方向の中央位置に配すれば、カバー移動手段4に対して小型コンパクト化を実現する観点及び円滑な動作を確保する観点から、より大きなパフォーマンスを得ることができる。しかも、リンクレバー部6は円弧形に湾曲形成したため、リンクレバー部6の全て又はほとんどを遮断カバー3の内側に収容可能となる。したがって、薬液が散布される樹木等が当たった場合であっても、リンクレバー部6により樹木等が巻き込まれる虞れがなくなるため、樹木を傷付けたり或いはカバー移動手段4における故障等の発生を回避できる。また、遮断カバー3の遮蔽によりリンクレバー部6や回動結合部13等の機構部分を保護できるため、遮断カバー3を保護カバーとしても機能させることができる。
【0031】
一方、支持板51の上部における後端付近にはカバー位置検出部61を配設する。カバー位置検出部61には、例えば、磁気的な検出を行うことができる非接触型検出スイッチ(非接触型検出部)を使用することができる。したがって、遮断カバー3の所定位置には、この検出スイッチにより検出される被検出子を配設する。これにより、遮断カバー3が開放位置Xrに移動すれば、カバー位置検出部61がOFFするとともに、遮断カバー3が開放位置Xrから離れれば、カバー位置検出部61がONする。なお、このような非接触型検出スイッチを用いれば、悪条件に晒される場所にカバー位置検出部61を配設する場合であっても接触不良などによる検出不良を回避し、長期使用においても確実な検出を維持できる利点がある。
【0032】
そして、図1に示すように、カバー位置検出部61及びリニアアクチュエータ部5は制御部8の主要部を構成する車載コントローラ62に接続する。また、車載コントローラ62にはカバースイッチ63を接続する。このカバースイッチ63は、運転者(作業者)が容易に操作できるように運転席34のダッシュボード34d(図8)に配設する。なお、64は車載コントローラ62に接続したバッテリを示す。これにより、運転席34にあるカバースイッチ63を操作するのみで遮断カバー3を自動で移動させることができる。
【0033】
他方、噴霧遮断装置1には、遮断カバー3が遮断位置Xs側へ移動した際に一部範囲Anに噴霧する薬液の供給を停止し、かつ遮断カバー3が開放位置Xr側へ移動した際に供給の停止を解除する薬液供給連動手段23を設ける。この薬液供給連動手段23は、遮断カバー3が開放位置Xrにあることを検出する上述したカバー位置検出部61及び車載コントローラ62に加え、一部範囲Anに噴霧する薬液の供給配管71に接続した開閉バルブ(電磁バルブ)65により構成できる。したがって、開閉バルブ65も車載コントローラ62に接続する。なお、供給配管71の一端側は、一部範囲Anに薬液を噴霧する噴射ノズルN…を有するノズルユニット45pに接続するとともに、他端側は不図示の薬液ポンプ側に接続する。
【0034】
このような薬液供給連動手段23、即ち、遮断カバー3が少なくとも開放位置Xrにあることを検出するカバー位置検出部61と、一部範囲Anに噴霧する薬液の供給配管71に接続した開閉バルブ65と、カバー位置検出部61による開放位置Xrの検出時に開閉バルブ65を開側に切換え、かつ開放位置Xrの非検出時に開閉バルブ65を閉側に切換える薬液供給連動手段23を用ければ、遮断カバー3が開き終わった時点で薬液が供給されるとともに、遮断カバー3が閉じ始める時点で薬液の供給が停止するため、遮断カバー3が開く途中或いは閉じる途中で薬液が飛散する不具合を確実に回避できる利点がある。また、民家や無農薬栽培畑等の薬液散布を回避したい方向への薬液飛散を確実に防止できることに加え、一部範囲Anに対して噴霧を停止(又は停止解除)する際の操作の単純化、更には作業能率の向上を図ることができる。
【0035】
次に、本実施形態に係る噴霧遮断装置1及びこの噴霧遮断装置1を付設した薬液噴霧機構2の動作について、図1〜図6を参照して説明する。
【0036】
まず、遮断カバー3の開閉、即ち、遮断位置Xs又は開放位置Xrへの移動は、運転席34にあるカバースイッチ63の操作により行うことができる。今、運転者(作業者)がカバースイッチ63を閉側(遮断位置Xs側)に操作した場合を想定する。なお、カバースイッチ63を閉側に操作する前は、遮断カバー3は開側(開放位置Xr側)にあるとともに、開閉バルブ65は開側にあり、通常の散布ができる状態、即ち、図4に示す状態にある。
【0037】
運転者(作業者)がカバースイッチ63を閉側(遮断位置Xs側)に操作すれば、車載コントローラ62は駆動ロッド5dを突出させる方向にリニアアクチュエータ部5を制御する。これにより、変位出力部5eは突出方向に変位するとともに、この変位によりリンクレバー部6は回動支持部11を支点に時計方向へ旋回変位し、リンクレバー部6の上端部6uは、前方(遮断位置Xs側)に変位する。したがって、リンクレバー部6の上端部6uにレバー係合部12を介して係合する遮断カバー3も遮断位置Xsに向かって移動する。そして、駆動ロッド5dが突出端に達し、遮断カバー3が遮断位置Xsに達すれば、所定の検出手段により検出され、車載コントローラ62はリニアアクチュエータ部5を停止制御する。一方、遮断カバー3が開放位置Xrから遮断位置Xsへ移動を開始することにより、カバー位置検出部61がOFFからONに切換わる。これにより、車載コントローラ62は開閉バルブ65を閉側に切換える。即ち、遮断カバー3が遮断位置Xsに移動することに連動して開閉バルブ65も自動で閉側に切換えられる。
【0038】
これにより、遮断カバー3は図1に示す遮断位置Xsにセットされるとともに、開閉バルブ65が閉側に切換えられ、薬液の供給が停止する。これにより、薬液を噴霧してもスピードスプレーヤMの右方が遮断カバー3により遮断され、一部範囲Anに対する薬液の噴霧が規制される。したがって、例えば、民家や無農薬栽培畑等の薬液の散布を回避したい方向への薬液飛散を確実に防止できる。この際、散布途中でカバースイッチ63を操作すれば、遮断カバー3が開放位置Xrから移動を開始した直後、即ち、遮断カバー3が閉じ始める時点で検出スイッチ61がONに切換わるため、速やかに薬液の噴霧を停止することができるとともに、遮断カバー3が閉じる途中で薬液が飛散する不具合を確実に回避することができる。
【0039】
他方、この状態から遮断カバー3を開放位置Xrに移動させ、通常の散布を行う状態に戻す場合を想定する。この場合、運転者(作業者)は、カバースイッチ63を開側(開放位置Xr側)に操作すれば、車載コントローラ62は駆動ロッド5dを引込む方向にリニアアクチュエータ部5を制御する。これにより、駆動ロッド5dは引込方向に変位するとともに、この変位によりリンクレバー部6は回動支持部11を支点に反時計方向へ旋回変位し、リンクレバー部6の上端部6uは、後方(開放位置Xr側)に変位する。したがって、リンクレバー部6の上端部6uにレバー係合部12を介して係合する遮断カバー3も開放位置Xrに向かって移動する。そして、駆動ロッド5dが引込端に達し、遮断カバー3が開放位置Xrに達すれば、所定の検出手段により検出され、車載コントローラ62はリニアアクチュエータ部5を停止制御する。一方、遮断カバー3が遮断位置Xsに達すれば、カバー位置検出部61はONからOFFに切換わる。これにより、車載コントローラ62は開閉バルブ65を開側に切換える。即ち、遮断カバー3が開放位置Xrに達することに連動して開閉バルブ65も自動で開側に切換えられる。
【0040】
これにより、遮断カバー3は図4に示す開放位置Xrにセットされるため、遮断カバー3には規制されない通常の薬液散布を行うことができる。即ち、噴射空間Sは、遮断カバー3に遮断されることなく、所定範囲となる全範囲が開放され、通常の薬液散布が行われる。この際、散布途中でカバースイッチ63を操作すれば、遮断カバー3が開放位置Xrにほぼ完全に開き切った状態で検出スイッチ61がOFFに切換わるため、遮断カバー3が開く途中で薬液が飛散する不具合を確実に回避することができる。
【0041】
よって、このような本実施形態に係る噴霧遮断装置1によれば、カバー移動手段4に、一端部6dを回動支持部11により車体10側に取付け、かつ他端部6uを遮断カバー3に対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部12により係合させるとともに、中間部6mにリニアアクチュエータ部5の変位出力部5eが回動結合部13により結合するリンクレバー部6を用いたため、動力としてリニアアクチュエータ部5を用いた場合であっても、カバー移動手段4の、特に限られた配設エリア内における前後方向の占有スペースを有効に縮小でき、カバー移動手段4の全体の小型コンパクト化、更には機構部分の無用な露出等による外観性(形状性)の低下を回避できる。
【0042】
以上、好適実施形態について詳細に説明したが、本発明は、このような実施形態に限定されるものではなく、細部の構成,形状,素材,数量,手法等において、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、任意に変更,追加,削除することができる。
【0043】
例えば、レバー係合部12を構成するレール部22は、別途のレール部材22pを遮断カバー3に取付けて構成した場合を例示したが、レバー係合部12の変更例としては、図7に示すように、レール部22を遮断カバー3に一体形成することもできる。このように、遮断カバー3にレール部22を一体形成すれば、別途のレール部材が不要となるため、部品点数及び組付工数の削減による低コスト化に寄与できる利点がある。また、実施形態では、リンクレバー部6の一端部6dと支持板51を回動支持部11により結合し、リンクレバー部6の他端部6uと遮断カバー3をレバー係合部12により係合させた場合を示したが、リンクレバー部6の他端部6uと遮断カバー3を回動支持部11により結合し、リンクレバー部6の一端部6dと支持板51をレバー係合部12により係合させてもよく、このような変更例も本願発明の範疇に含まれる。同様に、実施形態では、リニアアクチュエータ部5の後端を回動取付部56により回動自在に取付け、かつ変位出力部5eを回動結合部13によりリンクレバー部6に結合した場合を示したが、リニアアクチュエータ部5の位置を完全に固定し、回動結合部13における変位出力部5eの結合位置を一定の範囲で相対変位できるように結合してもよい。さらに、リニアアクチュエータ部5は電気駆動タイプを例示したが、エア駆動タイプや油圧駆動タイプ等の他の動力を利用したアクチュエータであってもよい。一方、遮断カバー3は、スピードスプレーヤMの右側に付設して、右方における一部範囲Anを遮断する場合を示したが、スピードスプレーヤMの左側に付設して、左方における一部範囲を遮断するようにしてもよく、この場合の構成は、左右対称となる点を除き、基本的には右側と同様に実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明に係る噴霧遮断装置は、放射方向の所定範囲に薬液を噴霧する薬液噴霧機構を備える各種スピードスプレーヤに利用できる。なお、本発明におけるスピードスプレーヤとは、薬液を散布する各種車両が含まれ、例えば、薬液散布装置を荷台に搭載した四輪トラックやトラクタ等も含まれる。
【符号の説明】
【0045】
1:噴霧遮断装置,2:薬液噴霧機構,3:遮断カバー,4:カバー移動手段,5:リニアアクチュエータ部,5e:変位出力部,6d:リンクレバー部の一端部,6m:リンクレバー部の中間部,6u:リンクレバー部の他端部,7:支持機構部,8:制御部,10:車体,11:回動支持部,12:レバー係合部,13:回動結合部,21:ローラ部,22:レール部,22p:レール部材,23:薬液供給連動手段,An:所定範囲における一部範囲,Xs:遮断位置,Xr:開放位置,M:スピードスプレーヤ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
右方,左方及び上方を含む放射方向の所定範囲に薬液を噴霧可能な薬液噴霧機構に付設し、前記所定範囲における一部範囲を遮断して薬液の噴霧を規制する遮断カバーと、この遮断カバーを、前記一部範囲を遮断する遮断位置又はこの遮断を解除する開放位置に選択的に移動可能なカバー移動手段を備えるスピードスプレーヤの噴霧遮断装置において、直進方向に変位する変位出力部を有するリニアアクチュエータ部と、一端部を回動支持部を介して車体側に取付け、かつ他端部を前記遮断カバーに対して上下方向の変位のみ許容可能なレバー係合部を介して係合させるとともに、中間部に前記リニアアクチュエータ部の変位出力部が回動結合部を介して結合するリンクレバー部と、前記遮断カバーを前後方向へ変位自在に支持する支持機構部と、前記リニアアクチュエータ部を駆動制御する制御部とを有してなるカバー移動手段を備えることを特徴とするスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。
【請求項2】
前記レバー係合部は、前記リンクレバー部の他端部に回動自在に設けたローラ部と、前記遮断カバーに設け、かつ係合する前記ローラ部を上下方向にガイドするレール部を備えることを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。
【請求項3】
前記レール部は、別途のレール部材を前記遮断カバーに取付けて、又は前記遮断カバーに一体形成して、設けることを特徴とする請求項2記載のスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。
【請求項4】
前記リンクレバー部は、円弧形に湾曲形成することを特徴とする請求項1記載のスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。
【請求項5】
前記回動結合部は、前記リンクレバー部の中央位置よりも前記回動支持部側に配するとともに、前記レバー係合部は、前記遮断カバーの上下方向の中間位置に配することを特徴とする請求項1又は4記載のスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。
【請求項6】
前記遮断カバーが前記遮断位置側へ移動した際に前記一部範囲に噴霧する薬液の供給を停止し、かつ前記遮断カバーが前記開放位置側へ移動した際に前記供給の停止を解除する薬液供給連動手段を備えることを特徴する請求項1記載のスピードスプレーヤの噴霧遮断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−499(P2011−499A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−143260(P2009−143260)
【出願日】平成21年6月16日(2009.6.16)
【特許番号】特許第4436433号(P4436433)
【特許公報発行日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000186784)株式会社ショーシン (13)
【Fターム(参考)】