説明

スプライス領域アンチセンス組成物および方法

【課題】選択されるタンパク質(5’末端の1〜25塩基対下流のプレプロセシングされたmRNA内の正常スプライスアクセプター連結点)に関する配列に対して標的化されたアンチセンス組成物を提供すること本発明の課題とする。このアンチセンス化合物は、RNase不活性であり、そして好ましくは、ホスホロチオネート結合モルホリンオリゴヌクレオチドである。このような標的化は、天然のRNAスプライスプロセシングの阻害に効果的であり、スプライス改変体mRNAを生じ、そしてタンパク質の正常 な発現を阻害する。
【解決手段】上記課題は、無電荷のモルホリノ骨格を有するアンチセンス化合物を提供することによって、解決された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、細胞内の全長タンパク質の発現を阻害するための治療学的組成物および方法に関し、そして特に、プロセシング前のmRNA内の正常スプライスアクセプター連結点の5’末端の1〜約25塩基下流を有するmRNA配列に対して標的化されたアンチセンス組成物に関する。このような標的化は、天然のmRNAスプライスプロセシングを阻害し、そしてスプライス改変体mRNAを産生するのに有効である。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
タンパク質をコードするDNAまたはRNAのアンチセンス標的化によるタンパク質発現の阻害は、広範な研究の対象である。多くの報告された手順は、ホスホロチオネート結合オリゴヌクレオチドを使用する。このホスホロチオネート結合オリゴヌクレオチドは、荷電した、ネイティブDNAのヌクレアーゼ耐性アナログである。関連するアンチセンス機構は、RNaseの活性に基づく。RNaseは、オリゴマーに結合した標的核酸を切断する。これらの化合物は、高い活性を示すが、これらはまた、高いレベルの副作用(すなわち、非標的RNAの切断によってか、または非アンチセンス機構(例えば、タンパク質への非特異的な結合)によって)を示す傾向にある。
【0003】
別のクラスのアンチセンスオリゴマー(RNase不活性(RNase−inactive)と称される)は、結合したRNAの切断を促進せず、そして標的配列を翻訳、プロセシングまたは転写から分子機構を立体的にブロックすることによって作用すると考えられる。これらの化合物は、ホスホロチオネートオリゴマーよりも少ない副作用(例えば、非選択的切断)を生じる傾向にあるが、これは、一般に首尾良い阻害のためにRNAの標的特異的領域(例えば、AUG開始コドン)に必要である。
【0004】
さらに最近、RNase不活性オリゴマーによる核(非スプライス)RNAのスプライスアクセプター連結点の標的化が報告されている。KoleおよびDominski(米国特許第5,665,593号)は、このような異常なスプライシングから生じるβ−サラセミアの改変体と戦うために、β−グロビンRNAのミススプライシングの抑制を報告した。この場合、異常なスプライス連結点は、正常部位の後ろに直接スプライシングするように標的化した。RV Gilesら,Antisense&Nucleic Acid Drug Dev.9:213〜220(1999)c−myc mRNAのミススプライシングを誘導するためのスプライス結合の標的化。各々のこれらの場合において、標的化された領域また、アンチセンスオリゴマーが、プレmRNAのイントロン/エキソンスプライス連結点にわたる点においていくらか制限される。無電荷の、RNase不活性オリゴヌクレオチドの使用によって認められる利点に起因して、標的化におけるさらなる可撓性の実証は、非常に有用である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
(発明の要旨)
1つの局面において、本発明は、アンチセンス化合物およびこのようなアンチセンス化合物と細胞と接触させることによって、真核細胞におけるプロセシング前のRNAの正常なスプライシングを阻害する、対応する方法を提供する。化合物を、以下によって特徴付ける:
(a1):無電荷のモルホリン骨格;
(a2):12ヌクレオチド塩基長と25ヌクレオチド塩基長の間の塩基配列;および
(a3):選択されるタンパク質をコードする選択されるプロセシング前のmRNAの標的領域に相補的な塩基配列、ここで、標的領域の5’末端は、プロセシング前のmRNAにおける正常スプライスアクセプター部位の1〜25塩基下流であり、
そして、以下の性質:
(b1):真核細胞によって取り込まれる化合物;
(b2):このような細胞中でプロセシング前のmRNAの標的領域にハイブリダイズする化合物;および
(b3):標的プレmRNAにハイブリダイズして、正常アクセプタースプライス部位においてスプライシングを防止し、その結果、スプライス機構は、プロセシング前のmRNAにおける下流スプライスアクセプター部位において進行し、短縮型コード配列を有するmRNAをプロセスされたスプライス改変体を生じる化合物。
【0006】
さらに特定の実施形態において、標的領域の5’末端は、正常スプライスアクセプター部位の下流の、2〜20塩基または2〜15塩基である。標的化合物の長さは、好ましくは、約15ヌクレオチド長〜約20ヌクレオチド長である。
【0007】
1つの実施形態において、この化合物は、図2AA〜2EEに示される構造からなる群から選択されるサブユニット間結合を有する。好ましい実施形態において、この結合は、図2B−Bに示されるようなホスホロジアミド結合から選択され、ここでX=NH、NHRまたはNRR’、Y=OおよびZ=Oならびに図2B−Bに表されるような代替のホスホロジアミド結合であり、ここで、X=OR、Y=NHまたはNR、およびZ=Oである。R=R’は、標的結合と相互作用しない基である。好ましくは、RおよびR’は、アルキルおよびポリアルキレンオキシ(例えば、PEG;(CHCHO))またはそれらの混合物から独立して選択される。アルキル/ポリアルキレンオキシ鎖は、好ましくは、遠位の末端で、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルカンチオール、ハロゲン、オキシ、カルボン酸、カルボン酸エステルおよび無機エステル(例えば、ホスホフェートまたはスルホネート)から選択される基によって置換され得る。好ましくは、鎖(置換基とは無関係)は、1〜12原子長であり、そしてさらに好ましくは、1〜6原子長である。選択される実施形態において、RおよびR’は、独立して、メチルまたはエチルである。1つの実施形態において、X=N(CH、Y=OおよびZ=Oである。
【0008】
NRR’はまた、窒素、炭素、酸素および硫黄から選択される5〜7環原子を有し、そして少なくとも非炭素環原子程多くの炭素環原子を有する窒素ヘテロ環を示し得る。例としては、モルホリン、ピロリジン、ピペリジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、ピラゾール、ピロール、イソピロール、イミダゾール、オキサソール、イミダゾール、イソキサゾールなどが挙げられる。
【0009】
下流スプライスアクセプター部位が、複数の正常スプライスアクセプター部位の3塩基の全体である場合、スプライス改変体mRNAは、平常にスプライスされた際に、プロセスされたmRNAの配列を有するフレーム内のコード配列を有する。
【0010】
タンパク質は、好ましくは、myc、myb、rel、fos、jun、abl、bcl、p53、インテグリン、カセドリン、テロメラーゼ、hCG、レセプタータンパク質、サイトカイン、キナーゼ、HIV rev、ヒト乳頭腫ウイルスおよびヒトパルボウイルスB19からなる群より選択される。選択される実施形態において、このタンパク質は、myc、myb、abl、p53、hCG−βサブユニット、アンドロゲンレセプタータンパク質およびHIV−1 revから選択される。
【0011】
さらなる選択される実施形態において、選択されるタンパク質は、複数の別個の結合領域(多くの転写因子の場合のように)を有し、そして短縮形態コード配列が、このような結合領域が無力である改変体タンパク質をコードする。好ましくは、改変体タンパク質は、ドミナントネガティブなタンパク質である。1つの例は、ヒトc−mycであり、ここで、改変体タンパク質は、N末端短縮型c−mycである。この実施形態において、使用されるアンチセンス化合物は、本明細書中の配列番号16〜配列番号32からなる群から選択される塩基配列を有する。改変体タンパク質はまた、C末端改変c−mycであり、この場合、使用されるアンチセンス化合物は、配列番号34から選択される連続配列である塩基配列(例えば、配列番号33)を有する18マーから20マーであり得る。
【0012】
さらなる例示的な実施形態において、選択されるタンパク質およびそのプレmRNAを標的化する対応するアンチセンス塩基配列は、以下の群から選択される:
(a) ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット:配列番号15から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列(例えば、配列番号14);
(b) ヒトアンドロゲンレセプター:配列番号9または配列番号13から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列(例えば、それぞれ、配列番号8または12);
(c) ヒトp53:配列番号36から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列(例えば、配列番号35);
(d) ヒトabl:配列番号38から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列(例えば、配列番号37);および
(e) HIV rev:配列番号41から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列(例えば、配列番号40)。
【0013】
本発明のこれらの目的および他の目的ならびに特徴は、本発明の以下の詳細な説明を、添付の図面と合わせて読む場合、さらに完全に明かになる。
例えば、本願発明は、以下を提供する。
(項目1) アンチセンス化合物であって、該アンチセンス化合物は、無電荷のモルホリン骨格および12ヌクレオチド塩基長と25ヌクレオチド塩基長の間の塩基配列を有し、該塩基配列は、myc、myb、rel、fos、jun、abl、bcl、p53、インテグリン、カセドリン、テロメラーゼ、サイトカイン、キナーゼ、レセプタータンパク質、hCG、HIV rev、ヒト乳頭腫ウイルスおよびヒトパルボウイルスB19からなる群から選択されるタンパク質をコードする、選択される、プロセシング前のmRNAの標的領域に相補的であり、
ここで、該標的領域の5’末端が、該プロセシング前のmRNAにおける正常スプライスアクセプター部位の1〜25塩基下流である、アンチセンス化合物。
(項目2) 項目1に記載の化合物であって、サブユニット間の結合が図2AA〜2EEに示される構造からなる群から選択される、化合物。
(項目3) 前記結合が、図2B−Bに示されるホスホロジアミデート結合であり、ここで、X=NH、NHRまたはNRR’、Y=O、および、Z=Oであるか、あるいは、、X=OR、Y=NHまたはNR’、およびZ=Oであり、そして、RおよびR’は、標的結合を妨害しない基である、項目2に記載の化合物。
(項目4) 前記RおよびR’が、アルキルおよびポリアルキレンオキシまたはそれらの組合わせから独立して選択される部分であり、そして、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルカンチオール、ハロゲン、オキソ、カルボン酸、カルボン酸エステル、および、無機エステルから選択される1つ以上の基によって置換され得る、項目3に記載の化合物。
(項目5) 前記RおよびR’の各々が、置換と無関係で1〜6原子長である、項目4に記載の化合物。
(項目6) 前記NRR’が、窒素、炭素、酸素、およびイオウから選択される5〜7個の環原子を有し、かつ非炭素環原子と少なくとも同数の炭素環原子を有する、窒素複素環を示す、項目3に記載の化合物。
(項目7) 前記標的領域の5’末端が、正常スプライスアクセプター部位の10〜15塩基下流である、項目6に記載の化合物。
(項目8) 前選択されるタンパク質が、ヒトc−mycである、項目1に記載の化合物。
(項目9) 前記塩基配列が、配列番号16〜配列番号32からなる群から選択される、項目8に記載の化合物。
(項目10) 前記塩基配列が、配列番号25である、項目9に記載の化合物。
(項目11) 前記塩基配列が、配列番号34から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目8に記載の化合物。
(項目12) 前記塩基配列が、配列番号33である、項目11に記載の化合物。
(項目13) 前記選択されるタンパク質が、ヒトアンドロゲンレセプターであり、そして前記塩基配列が、配列番号9または配列番号13から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目1に記載の化合物。
(項目14) 前記塩基配列が、配列番号8または配列番号12である、項目13に記載の化合物。
(項目15) 前記選択されるタンパク質が、HCG−βサブユニットであり、そして前記塩基配列が、配列番号15から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目1に記載の化合物。
(項目16) 前記塩基配列が、配列番号14である、項目15に記載の化合物。
(項目17) 前記選択されるタンパク質が、ヒトp53であり、そして前記塩基配列が、配列番号36から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目1に記載の化合物。
(項目18) 前記塩基配列が、配列番号35である、項目17に記載の化合物。
(項目19) 前記選択されるタンパク質が、ヒトablあり、そして前記塩基配列が、配列番号38から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目1に記載の化合物。
(項目20) 前記塩基配列が、配列番号37である、項目19に記載の化合物。
(項目21) 前記選択されるタンパク質が、HIV−1 revあり、そして前記塩基配列が、配列番号41から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列である、項目1に記載の化合物。
(項目22) 前記塩基配列が、配列番号40である、項目21に記載の化合物。
(項目23) 真核生物細胞におけるmRNAの正常なスプライシングを阻害する方法であって、
アンチセンス化合物であって、無電荷のモルホリン骨格および12ヌクレオチド塩基長と25ヌクレオチド塩基長の間の塩基配列を有し、該塩基配列は、選択されるタンパク質をコードする選択される、プロセシング前のmRNAの標的領域に相補的であり:ここで該標的領域の5’末端は、該プロセシング前のmRNAにおける正常スプライスアクセプター部位の1〜25塩基下流であるアンチセンス化合物を、該細胞と接触させる工程、
を包含し、
ここで、該化合物は、該細胞によって取り込まれ、該細胞内で該プロセシング前のmRNAの該標的領域にハイブリダイズし、そのハイブリダイズされた該化合物が、該正常アクセプタースプライス部位でのスプライシングを防止し、その結果、該スプライス機構は、mRNAにおける下流スプライスアクセプター配列に進行し、短縮型コード配列を有するプロセスされたスプライス改変体mRNAを産生する、方法。
(項目24) 項目23に記載の方法であって、前記タンパク質が、myc、myb、rel、fos、jun、abl、bcl、p53、インテグリン、カセドリン、テロメラーゼ、hCG、レセプタータンパク質、サイトカイン、キナーゼ、HIV rev、ヒト乳頭腫ウイルスおよびヒトパルボウイルスB19からなる群より選択される、方法。
(項目25) 項目24に記載の方法であって、前記化合物が、図2AA〜2EEに示される構造からなる群から選択されるサブユニット間の結合を有する、方法。
(項目26) 前記結合が、図2B−Bに示されるとりであり、ここで、X=NH、NHRまたはNRR’、Y=O、および、Z=O、あるいは、、X=OR、Y=NHまたはNR’、およびZ=Oであり、RおよびR’は、標的結合を妨害しない基である、項目25に記載の方法。
(項目27) 前記RおよびR’が、アルキルおよびポリアルキレンオキシまたはそれらの混合物から独立して選択され、そして、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルカンチオール、ハロゲン、オキソ、カルボン酸、カルボン酸エステル、および、無機エステルから選択される1つ以上の基によって置換され得る、項目26に記載の方法。
(項目28) 前記RおよびR’が、置換と無関係で1〜12原子長である、項目27に記載の方法。
(項目29) 前記NRR’が、窒素、炭素、酸素、およびイオウから選択される5〜7個の環原子を有し、かつ非炭素環原子と少なくとも同数の炭素環原子を有する、窒素複素環を示す、項目26に記載の方法。
(項目30) 前記標的領域の5’末端が、正常スプライスアクセプター部位の10〜15塩基下流である、項目23に記載の方法。
(項目31) 項目23に記載の方法であって、前記下流スプライスアクセプター部位が、複数の正常スプライスアクセプター部位の3塩基下流の全体であり、その結果該スプライス改変体mRNAは、正常にスプライスされた場合、プロセスされたmRNAの配列を有するフレーム内にコード配列を有する、方法
(項目32) 項目23に記載の方法であって、前記選択されるタンパク質が、複数の別個の結合領域を有し、そして前記短縮形態コード配列が、結合領域が無力である改変体タンパク質をコードする、方法。
(項目33) 前記改変体タンパク質は、ドミナントネガティブなタンパク質である、項目32に記載の方法。
(項目34) 前記選択されるタンパク質が、ヒトc−mycであり、そして該改変体タンパク質が、N末端短縮型cーmycタンパク質である、項目33に記載の方法。
(項目35) 前記アンチセンス化合物が、配列番号17〜配列番号32からなる群から選択される塩基配列である、項目34に記載の方法。
(項目36) 前記アンチセンス化合物が、塩基配列配列番号25を有する、項目35に記載の方法。
(項目37) 項目23に記載の方法であって、前記選択されるタンパク質および対応するアンチセンス塩基配列は、以下:
(a) ヒト絨毛性ゴナドトロピンβサブユニット:配列番号15から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列;
(b) ヒトアンドロゲンレセプター:配列番号9または配列番号13から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列;
(c) ヒトc−myc:配列番号34から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列;
(d) ヒトp53:配列番号36から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列;
(e) ヒトabl:配列番号38から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列;および
(f) HIV rev:配列番号41から選択される連続18ヌクレオチド配列〜連続20ヌクレオチド配列、
からなる群から選択される、使用。
(項目38) 項目37に記載の方法であって、ここで、前記選択されたタンパク質および対応するアンチセンス塩基配列が、以下:
(a)ヒト ヒト絨毛性ゴナドトロピン、βサブユニット:配列番号14;
(b)ヒト アンドロゲンレセプター:配列番号12;
(c)ヒト c−myc:配列番号33;
(d)ヒト p53:配列番号35;
(e)ヒト abl:配列番号37;および
(f)HIV−1 rev:配列番号40
からなる群から選択される、方法。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、ポリマーを形成するための適切な基に結合する5原子(A)、6原子(B)および7原子(C−E)を有する幾つかの好ましいサブユニットを示す。
【図2】図2A−Aから図2E−Eは、それぞれ、図1のサブユニットA−Eを使用して構築され、A−A〜E−Eと命名された、例示的なモルホリンオリゴヌクレオチドの繰り返しサブユニットセグメントを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
(I.定義)
本明細書中に使用される場合、以下の用語は、他の方法で示されない限り、以下の意味を有する:
「アンチセンス」は、アンチセンスオリゴマーがワトソン−クリック塩基対形成によってRNA中の標的配列にハイブリダイズして、標的配列内でRNA:オリゴマーのヘテロ二重鎖(代表的にはmRNAと共に)を形成することを可能にする、ヌクレオチド塩基の配列およびサブユニット間(subunit−to−subunit)骨格を有するオリゴマーをいう。このオリゴマーは、標的配列に対して正確な配列相補性を有し得るか、または近い相補性を有し得る。これらのアンチセンスオリゴマーは、mRNAの翻訳をブロックもしくは阻害し得、そして/またはmRNAのプロセシングを改変してmRNAのスプライス改変体を生成し得る。
【0016】
本明細書中に使用される場合、用語「化合物」、「因子」、「オリゴマー」および「オリゴヌクレオチド」は、本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドに関して交換可能に使用され得る。
【0017】
本発明に使用される場合、「モルホリノオリゴマー」は、典型的なポリヌクレオチドに水素結合し得る塩基を支持する骨格を有するポリマー分子をいい、ここで、このポリマーは、ペントース糖骨格部分(そしてより詳細には、代表的なヌクレオチドおよびヌクレオシドである、ホスホジエステル結合によって連結されるリボース骨格)を欠くが、環窒素を介してカップリングする環窒素を代わりに含む。本発明における使用のためのアンチセンスオリゴヌクレオチドについての例示的な構造としては、図1A〜Eに示されるモルホリノサブユニット型、図2A−A〜2E−Eに示される連結が挙げられる。このような構造は、例えば、Hudziakら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.6,267−272(1996)ならびにSummertonおよびWeller,Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7,187−195(1997)に記載される。
【0018】
図1中のサブユニットAは、1原子リン含有連結を含み、この連結は、図2中のA−Aに示される5原子反復単位骨格を形成し、ここで、このモルホリノ環は、1原子ホスホアミド連結によって連結される。
【0019】
好ましいモルホリノオリゴヌクレオチドは、図2B−Bに示される形態のモルホリノサブユニット構造で構成され、ここでこの構造は、互いにホスホロジアミデート連結によって共に連結され、1つ目のサブユニットのモルホリノ窒素から隣接するサブユニットの5’環外炭素に連結し、そしてPおよびPは、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基へ結合するのに効果的な、プリン塩基対形成部分またはピリミジン塩基対形成部分である。好ましい実施形態において、この連結は、図2B−Bに示されるホスホロジアミデート連結(ここで、X=NH、NHR、またはNRR’、Y=O、およびZ=O)、および図2B−Bに示される代替のホスホロジアミデート連結(ここで、X=OR、Y=NHまたはNR、およびZ=O)から選択される。RおよびR’は、標的結合を妨害しない基である。好ましくは、RおよびR’は、アルキルおよびポリアルキレンオキシ(例えば、PEG;(CHCHO))、またはその組合わせから独立して選択される。(このような組合わせの例は、−(CH(CHCHO)−である)。アルキル/ポリアルキレンオキシ鎖は、好ましくは遠位末端(すなわち、オリゴマー骨格に接続しない末端)において、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルカンチオール、ハロゲン、オキソ、カルボン酸、カルボン酸エステル(carboxylic ester)、および無機エステル(例えば、ホスフェートまたはスルホネート)から選択される基によって置換され得る。好ましくは、鎖(置換と無関係で)は、1〜12原子長であり、そしてより好ましくは1〜6原子長である。選択された実施形態において、RおよびR’は、独立してメチルまたはエチルである。1つの実施形態において、X=N(CH、Y=O、およびZ=Oである。NRR’はまた、窒素、炭素、酸素、およびイオウから選択される5〜7個の環原子を有し、かつ非炭素環原子と少なくとも同数の炭素環原子を有する、窒素複素環を示し得る。例としては、モルホリン、ピロリジン、リペラジン、およびピリジンが挙げられる。
【0020】
図1中のサブユニットC〜Eは、図2中のC−C〜E−Eについて示されるように7原子単位長骨格のために設計されている。構造Cにおいて、X部分は、構造B中のものと同じであり、そしてY部分は、メチレン、イオウ、または好ましくは酸素であり得る。構造Dにおいて、X部分およびY部分は、構造B中のものと同じである。構造Eにおいて、Xは、構造B中のものと同じであり、そしてYは、O、SまたはNRである。図1A〜Eに示される全てのサブユニットにおいて、ZはOまたはSであり、そしてPまたはPは、アデニン、シトシン、グアニンまたはウラシルである。
【0021】
「ヌクレアーゼ耐性」オリゴマー分子(オリゴマー)は、その骨格がヌクレアーゼ切断を受けにくい分子である。
【0022】
本明細書中に使用される場合、オリゴマーが生理学的条件下で、実質的に37℃より高い(好ましくは、少なくとも50℃、そして代表的には60℃〜80℃、またはそれより高い)Tmにおいて、標的にハイブリダイズする場合、オリゴヌクレオチドまたはアンチセンスオリゴマーは、標的ポリヌクレオチドに「特異的にハイブリダイズする」。このようなハイブリダイゼーションは、好ましくは、規定されたイオン強度およびpHにおいて、特異的配列についての熱融点(T[m])よりも約10℃、および好ましくは約50℃低くあるように選択されたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件に対応する。所定のイオン強度およびpHにおいて、T[m]は、標的配列の50%が相補ポリヌクレオチドにハイブリダイズする温度である。
【0023】
ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが2つの一本鎖ポリヌクレオチド間で逆平行配置で生じる場合、互いに「相補的」と記載される。二本鎖ポリヌクレオチドは、ハイブリダイゼーションが第1ポリヌクレオチドの鎖のうちの1つと第2ポリヌクレオチドの鎖のうちの1つとの間で生じ得る場合、別のポリヌクレオチドに対して「相補的」であり得る。相補性(一方のポリヌクレオチドが他方のポリヌクレオチドと相補的である程度)は、一般的に是認された塩基対形成規則に従って、互いに水素結合を形成することが予想される対抗する鎖における塩基の割合に関して定量化可能である。
【0024】
「RNase不活性」または「RNase不適格(RNase−incompetent)」であるオリゴヌクレオチドまたはオリゴヌクレオチドアナログは、RNase活性オリゴヌクレオチド(例えば、ホスホロチオエート)と異なり、RNase独立の機構を介して作用するものである。これらは、標的RNA形成、核−細胞質輸送または翻訳を立体的にブロックすることによって機能すると考えられ、従って、「立体的ブロッカー(steric blocker)」とも呼ばれる。この型としては、例えば、メチルホスホネート、本明細書中に記載されるようなモルホリノオリゴヌクレオチド、ペプチド核酸(PNA)、および2’−O−アリル修飾されたオリゴヌクレオチドまたは2’−O−アルキル修飾されたオリゴヌクレオチドが挙げられる。
【0025】
「ペプチド核酸」において、オリゴヌクレオチド骨格のデオキシリボースリン酸単位は、ポリアミド連結で置換される。適切な骨格間隔は、2−アミノエチルグリシン単位の使用によって達成され、ヌクレオチド塩基は、メチレンカルボニル基を介して各2−アミノ基に結合する。
【0026】
「2’−O−アリル(またはアルキル)修飾されたオリゴヌクレオチド」は、2’ヒドロキシルが、アリルまたはアルキルエーテルに変換されているオリゴリボヌクレオチドである。アルキルエーテルは、代表的にメチルエーテルである。
【0027】
「アルキル」は、炭素および水素を含む完全に飽和された非環式の一価の基をいい、これは、分枝鎖であっても、直鎖であってもよい。アルキル基の例は、メチル、エチル、n−ブチル、t−ブチル、n−ヘプチル、およびイソプロピルである。「低級アルキル」は、1〜6炭素原子、好ましくは1〜4炭素原子のアルキル基をいい、メチル、エチル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、およびt−ブチルによって例示される。
【0028】
「短縮」タンパク質またはコード配列は、一方の末端もしくは両末端から、内部領域から、または上記を組合わせた所から、正常なタンパク質または配列のいくらかの部分が取り除かれている。
【0029】
アミノ短縮(N短縮)タンパク質またはカルボキシ短縮(C短縮)タンパク質は、それぞれ、スプライス改変体mRNAの翻訳から生じる、異常もしくは欠失したアミノ末端または異常もしくは欠失したカルボキシ末端を有するタンパク質である。
【0030】
(II.アンチセンス化合物)
本発明に従って、12〜25ヌクレオチドを有するアンチセンス化合物(選択されたタンパク質をコードする選択されたプロセシング前mRNAの標的領域に相補的である標的化塩基配列を含み、ここで、この標的領域の5’末端は、プロセシング前mRNA中の正常なスプライス受容部位の1〜25塩基下流、好ましくは2〜20塩基下流、より好ましくは2〜15塩基下流である)が、正常なスプライス受容部位においてスプライシングを阻害し、故にスプライス改変体mRNAを生成するのに有効であり、翻訳の際に選択されたタンパク質の短縮バージョンまたは他の方法により異常であるバージョンを引き起こすことが発見された。この戦略の利点を、以下に示す。
【0031】
本発明に利用したアンチセンス化合物は、RNase Hを活性化しない化合物である。RNase−H活性オリゴマー(ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドが最も顕著な例である)は、標的mRNAが切断される機構によって主に作用する。一方、RNase不適格オリゴマーは、立体的ブロッキング機構によって作用すると考えられる。このような化合物としては、モルホリノオリゴマー、PNA(ペプチド核酸)、メチルホスホネート、および2’−O−アルキル修飾オリゴヌクレオチドまたは2’−O−アリル修飾オリゴヌクレオチド(これらの全ては、当該分野で公知である)が挙げられる。本発明の好ましいアンチセンスオリゴマー(化合物)は、モルホリノオリゴマーであり、これは、米国特許第5,698,685号、同第5,217,866号、同第5,142,047号、同第5,034,506号、同第5,166,315号、同第5,521,063号、および同第5,506,337号(これらの全ては、本明細書中に参考として援用される)に示される形態のモルホリノサブユニットの化合物である。モルホリノオリゴマーの合成、構造、および結合特徴は、これらの特許に詳述される。モルホリノオリゴマーにおいて、(i)モルホリノ基は、非荷電リン含有連結によって一緒に連結され、1〜3原子長であり、1つ目のサブユニットのモルホリノ窒素を隣接するサブユニットの5’環外炭素に連結し、そして(ii)モルホリノ基に結合した塩基は、塩基特異的水素結合によってポリヌクレオチド中の塩基へ結合するのに効果的な、プリン塩基対形成部分またはピリミジン塩基対形成部分である。プリン塩基対形成部分またはピリミジン塩基対形成部分は、代表的に、アデニン、シトシン、グアニン、ウラシル、またはチミンである。このようなオリゴマーの調製は、米国特許第5,185,444(SummertonおよびWeller,1993)(これらは、その全体が本明細書によって参考として援用される)に詳細に記載される。参考文献に示されるように、非イオン性連結のいくつかの型が、モルホリノ骨格を構築するために使用され得る。
【0032】
このようなモルホリノオリゴマーは、RNA標的に対する高い結合親和性が示され、そして荷電されていない骨格は、荷電された類似物(例えば、ホスホロチオエート)に対して、細胞への取り込みを支持し、そして非特異的結合相互作用を減少する。これらは、ホスホロチオエートオリゴヌクレオチドと比較して、標的配列の翻訳を阻害する際に有意に改善された活性および選択性を提供することが示されている。例えば、Summertonら,Antisense & Nucleic Acid Drug Dev.7(2):63−70,Apr 1997を参照のこと。モルホリノオリゴマーは、非常に高いヌクレアーゼ耐性および良好な水溶性を有し、これによってインビボ使用のための良好な候補物である。インビボにおける細胞による効果的な取り込みが、共有に係り、かつ係属中の出願09/493,427および対応するPCT公開WO 00/44897において実証されている。それらの中に記載されるように、ホスホラミデート連結を有するモルホリノオリゴヌクレオチドは、標的RNAとヘテロ二重鎖を形成し、これは、この二重鎖状態中でヌクレアーゼ分解から保護されている。このような二重鎖は、細胞から排出され、そして標的RNAは、被験体由来の体液サンプルから後で検出され得る。これらの結果は、モルホリノオリゴマーが、(i)体内の細胞に移動し、そしてそこへ侵入すること、および(ii)ワトソン−クリック塩基対形成を介して、標的核酸領域に高い親和性で結合することを実証する。
【0033】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドの例示的な骨格構造としては、上記のように、図1A−Eに示されるβ−モルホリノサブユニット型が挙げられる。ポリヌクレオチドが1つより多くの連結型を有し得ることが、認識される。
【0034】
好ましいモルホリノオリゴヌクレオチドは、図2B−Bに示される形態のモルホリノサブユニット構造で構成され、ここでこの構造は、ホスホロジアミデート連結によって一緒に連結され、一方のサブユニットのモルホリノ窒素は隣接するサブユニットの5’環外炭素に連結し、PおよびPは、塩基特異的水素結合によるポリヌクレオチド中の塩基へ結合するのに効果的な、プリン塩基対形成部分またはピリミジン塩基対形成部分である。好ましい実施形態において、この連結は、図2B−Bに示されるホスホロジアミデート連結(ここで、X=NH、NHR、またはNRR’、Y=O、およびZ=O)、および図2B−Bに示される代替のホスホロジアミデート連結(ここで、X=OR、Y=NHまたはNR、およびZ=O)から選択される。RおよびR’は、標的結合を妨害しない基である。好ましくは、RおよびR’は、アルキルおよびポリアルキレンオキシ(例えば、PEG;(CHCHO))、またはその組合わせから独立して選択される。。アルキル/ポリアルキレンオキシ鎖は、好ましくは遠位末端において、ヒドロキシ、アルコキシ、アミノ、アルキルアミノ、チオール、アルカンチオール、ハロゲン、オキソ、カルボン酸、カルボン酸エステル、および無機エステル(例えば、ホスフェートまたはスルホネート)から選択される基によって置換され得る。好ましくは、鎖(置換と無関係で)は、1〜12原子長であり、そしてより好ましくは1〜6原子長である。選択された実施形態において、RおよびR’は、独立してメチルまたはエチルである。1つの実施形態において、X=N(CH、Y=O、およびZ=Oである。NRR’はまた、窒素、炭素、酸素、およびイオウから選択される5〜7個の環原子を有し、かつ非炭素環原子と少なくとも同数の炭素環原子を有する、窒素複素環を示し得る。例としては、モルホリン、ピロリジン、ピペラジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、トリアジン、トリアゾール、ピラゾール、ピロール、イソピロール、イミダゾール、オキサゾール、イミダゾール、イソキサゾールなどが挙げられる。
【0035】
アンチセンス化合物の溶解度、および溶液での保存における沈澱に抵抗する化合物の能力は、可溶化部分を用いてオリゴマーを誘導体化する(例えば、親水性オリゴマー、または荷電部分(例えば、荷電アミノ酸または荷電有機酸))ことによってさらに増強され得る。この部分は、アンチセンス化合物に結合し得、かつ化合物が標的配列に結合することを妨害しない、任意の生体適合性親水性部分または荷電部分であり得る。この部分は、周知の誘導体化方法を用いて、アンチセンス化合物に(例えば、5’末端に)化学的に結合され得る。1つの好ましい部分は、規定された長さのオリゴエチレングリコール部分(例えば、トリエチレングリコール)であり、トリエチレングルコールとのカルバメート連結を形成するピペラジン連結基を介して、カーボネート連結を通してアンチセンス化合物の5’末端に共有結合し、ここで、第2のピペラジン窒素は、アンチセンスの5’末端ホスホロジアミデート連結に結合する。あるいは、またはさらに、化合物は、1または少数の荷電骨格連結(例えば、ホスホジエステル連結)を、好ましくは化合物の末端の一方の付近に含むように設計され得る。付加された部分は、好ましくは、水性媒体中で、化合物の溶解度を少なくとも約30mg/ml、好ましくは少なくとも50mg/mlまで増強するのに効果的である。
【0036】
この化合物は、実質的に37℃よりも高いT(例えば、少なくとも50℃そして好ましくは60℃〜80℃)を有する生理学的な条件下で標的配列にハイブリダイズするように設計される。この化合物は、標的配列に100%相補的である必要はないが、これは、この標的配列の発現が調節されるように標的配列に安定かつ特異的に結合するために効果的である。良好な特異性と相まって、安定で効果的な結合を可能にするためのオリゴマーの適切な長さは、約8〜40ヌクレオチド塩基単位、そして好ましくは約12〜25塩基単位である。ミスマッチは、存在する場合、ハイブリッド二重鎖の中央領域よりも、ハイブリッド二重鎖の末端領域に向かって不安定性が低くなる。この標的との塩基対特異性が維持されると仮定すると、標的塩基との変性塩基対形成を可能にするオリゴマー塩基もまた意図される。
【0037】
(III.標的配列の選択)
(A.RNAスプライシング:背景)
転写の後の核RNAのプロセシングは、実質的に全ての生存細胞において観察される。哺乳動物ゲノムは、7〜8のエキソンを含む約16,000塩基長の転写物を作製する遺伝子を含む。スプライシングのプロセスは、mRNAの長さを平均2,200塩基まで減少させる。最初の転写物は、ヘテロ核RNA(hnRNA)または前mRNAと呼ばれる。hnRNAのプロセシングは、約20のタンパク質の凝集体を含み、これは集合的にスプライソソームと呼ばれ、これはスプライシングおよび核からのmRNAの輸送を実行する。スプライソソームは、全ての転写物について共通の方向からスキャンするわけではないようである;イントロンは再現可能な順で除去され得るが、しかし指向された順で除去されない。例えば、イントロン3およびイントロン4が最初に除去され得、続いてイントロン2が除去され得、続いてイントロン1およびイントロン6が除去され得る。イントロン除去の順番には、予想できる先験的な観察はない。プロセシングのための配列の認識は小さく、これは誤差または多数のプロセシング部位が予測され得ると示唆され、そして実際、より多くの遺伝子が研究されるにつれて、hnRNAのプロセシングにおけるより多くのバリエーションが観察されてい「る。
【0038】
前プロセシングされたmRNAにおいて、エキソン/イントロン連結部での2塩基の配列モチーフは不変である。上流(5’)スプライス供与体(SD)連結部は、エキソン−/GT−イントロンの形態であり、一方下流(3’)スプライス供与体(SA)連結部は、イントロン−AG/エキソンの形態である。隣接する塩基は不変ではない;しかし、スプライス受容体AG配列のすぐ上流の塩基は、約80%の場合、Cである。
【0039】
イントロン配列認識の現在の理解は以下のようである:
【0040】
【化1】

括弧の中の数字は、部位における塩基の近似(<100%の場合)の割合の利用を示す。イントロン部位の中央における太字のは、スプライス供与体由来のGが、ラリアットと呼ばれる分枝した2’−5’−構造を形成する部位(ブランチ点)である。(TACTAC)で示される配列は、酵母において観察されるコンセンサスである。哺乳動物細胞におけるコンセンサス配列は、PyNPy(80)Py(87)Pu(75)APy(75)であり、ここでPyはピリミジン(U/TまたはC)を示し、そしてPuはプリン(AまたはG)を示す。ブランチ点におけるAは不変であり、そして代表的に、AG部位の約12〜50塩基上流に見出される。ピリミジンリッチな領域(上記に示されていない)はまた、一般にイントロンの3’末付近(AG部位の約10〜15塩基上流)に見出される。
【0041】
一旦このスプライソソームがラリアットを形成すると、2つのエステル交換反応が起こる:
1)イントロン中のブランチ点の2’−OHからSDイントロンGの5’リン酸、および
2)SDエキソンGの3’−OHからSAエキソンの最初の塩基の5’リン酸。この除去されたイントロンは、多くの場合素早く分解され、そして連結されたエキソンが今や成熟mRNAと呼ばれ、これはリボソームによるタンパク質へ翻訳のために核の外に輸送される。
【0042】
(B.標的化ストラテジー)
種々のアプローチが、アンチセンスオリゴマーによってmRNAのプロセシング(スプライシング)の標的化に使われ得る。以下の部位が標的化され得る:
1.SDエキソンのエキソンのみの部分(SD部位の上流)(SDプロセシングを阻害するため)。
2.SDエキソン/イントロン連結部(SDプロセシングを阻害するため)。
3.イントロン中のラリアット形成部位(SAエキソンの上流のスプライソソームの認識をブロックするため)。
4.SAイントロン/エキソン連結部(SAプロセシングを阻害するため)。
5.SAエキソンのエキソンのみの部分(SA部位の下流)(SAプロセシングを阻害するため)。
【0043】
先行技術の方法は、ストラテジー2またはストラテジー4(SD連結部またはSA連結部の標的化)を利用してきた。例えば、RV Gilesら、前出(c−myc遺伝子におけるスプライス受容体部位にわたるモルホリノアンチセンスオリゴマーが記載される)を参照のこと。
【0044】
本発明を支持する実験によって、上記の標的化ストラテジー4および標的化ストラテジー5(スプライス受容体を指向する)は、ストラテジー1およびストラテジー2(スプライス供与体を指向する)よりもより確実に効果的であったことが見出された。
【0045】
例えば、インビボ(動物全体)で標的化されるラットCYP3A2前mRNAを用いた研究が行なわれた。動物を、リン酸緩衝化生理食塩水中の100μgのPMO(図2B−Bを参照のこと。ここでYおよびZは、酸素であり、そしてXはN(CHである)で腹腔内に注射した。エリスロマイシンO−デメチラーゼのミクロソーム代謝の減少した速度がモニターされ、アンチセンス阻害によって引き起こされる予期した表現型を反映した。示されるように、スプライス供与体(SD)標的化は、スプライス受容体(SA)ストラテジーよりも効率的ではなかった。
【0046】
【表1】

c−myc mRNAに対するオリゴマーアンチセンスを用いる実験を、培養されたラットNRK細胞において実行し、トリチウム化されたチミジンの取り込みをモニターすることによって細胞DNA合成の阻害を評価した。配列は、Genebank登録番号Y00396(ラット)およびJ00120(ヒト)に由来し、これはエキソン2の先頭におけるスプライス受容体領域を標的化した(配列番号1は除く。これはスプライス供与体を標的化する)。示されるこのラットおよびヒトの配列は、この領域において高い相同性である。以下の表1において列挙されるオリゴマーを、いくつかの増殖アッセイを使用して、抗増殖効果についてスクリーニングした。2つの種(ラットおよびヒト、それぞれNRKおよびWI−38)由来の初代線維芽細胞を、スクリーニングのために使用した。表1に示されるデータは、NRK細胞を使用した。
【0047】
20μMのPMO(図2B−Bにおいて示され、ここでYおよびZは、酸素であり、そしてXは、N(CH)である)を使用する[H]チミジン組込みアッセイからのデータを、表1に示す。割合は、ビヒクル(HO)コントロールと比較した[H]チミジン組込みをいう。従って、数が少なくなるほど、抗増殖効果は大きくなる。試験した全てのオリゴマーが、少なくともいくつかの抗増殖活性を示すことが見出され得る。阻害活性の程度を、32%のコントロールで、抗増殖薬物であるタキソール(パクリタキセル、Bristol−Myers Squibb、Princeton、NJ)と都合よく比較した。10%〜20%の細胞がこすり落とし負荷手順によって影響されず、従って残余の[H]チミジン組込み活性に寄与するので、最も効果的なオリゴマーを含むほとんどまたは全ての細胞は、増殖阻害されたようであった。
【0048】
【表2】

2つの関係のない配列のオリゴマー(ラットBCL−2、配列番号49およびラットPCNA−1、配列番号50)は、アッセイした最も高い濃度(20μM)でNRK細胞を阻害しない。配列番号25のミスマッチ配列およびスクランブル配列(それぞれ配列番号48および配列番号47)は、20μMでWI−38(ヒト)線維芽細胞の増殖に対していずれの効果もない。
【0049】
配列番号45(ヒトmyc前mRNAの第1イントロンの3’スプライス受容体部位にわたる)は、Gilesら(1999)によって、myc前mRNAのミススプライシングを引き起こすことが示された。潜在性(cryptic)または潜伏した(latent)スプライス受容体(通常のスプライス受容体位置に対して44bp遠位である)を使用して、44bpの欠失を有する異常にスプライシングされたmRNAを生成した。このミススプライシングされたmRNAは、開始AUGを欠失し、そして正常なmycタンパク質を生成しなかった。
【0050】
配列番号25は、イントロン1〜エキソン2の境界に広がっておらず、第1の可能性のある相補的な塩基対は、3’スプライス受容体から10番目のヌクレオチドである。同様に、配列番号3は、ラットc−myc mRNA配列におけるスプライス受容体下流の5’末端の11塩基を有する。データに示されるように、両方の配列は細胞増殖の阻害において効果的であった。配列番号45について示されたように、これらのオリゴマーが正常なスプライシングを阻害するか否かを決定することは関心深いものであった。従って、RNAを、陽性コントロールオリゴマー(配列番号45)および陰性コントロールオリゴマー(配列番号50)ならびに配列番号25で処理されたヒト細胞から調製した。次いでこのRNAの構造を、逆転写酵素を使用してDNAコピーを作製し、次いで隣接のDNAプライマーを用いるPCRを実行することによって分析した(以下の材料および方法を参照のこと)。このRT−PCR手順の産物を、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0051】
未処理の細胞または無関係なオリゴマーで処理した細胞において、使用したプライマーおよびc−mycヌクレオチド配列から304bpのバンドが予測され、そしてこのバンドが観察された。配列番号25で処理した細胞については、2つのDNAバンドが観察された。上のバンド(これは、未処理の細胞またはネガティブコントロール細胞からのフラグメントと共に移動した)は、使用した取り込み手順によってスクレイプロード(scrape load)されなかった10%〜20%の細胞からのmRNAおよび処理細胞中の正しくスプライシングされたmRNA画分を表した。より重たく、より低いバンド(heavier lower band)は、ミススプライシングされた44bp欠失mRNAを表した。
【0052】
配列番号25をロードした細胞はまた、RT−PCR手順から2つのバンドを生成した。このうちの1つは、正常にスプライシングされたmRNAのサイズであり、そして1つはそれより小さいサイズである。それゆえに、配列番号25は、スプライスアクセプター部位と直接的に重なっていないにもかかわらず、ミススプライシングを生じ得ると結論され得る。無関係なPMO(配列番号50)は、未処理の細胞のmRNA構造パターンと同一であるmRNA構造パターンを提供し、ミススプライシングは配列特異的であることが実証された。
【0053】
配列番号25を用いた用量応答研究は、3μMのIC50を与えた。この阻害効果は、10μMにおいてプラトーに達し始め、そして10μMから20μMではさらなる変化はほとんど存在しなかった。
【0054】
Mycタンパク質は、細胞周期のG/G期からS期への移行について関係があり重要であると推定される(MK Mateyakら,Cell Growth Differ.8:1039−48,1997)。従って、mycタンパク質レベルが低下した場合、この細胞はGで停止すると予測される。この効果を、Telfordらの方法(Cytometry 13:137−43,1993)を使用して、GおよびGにある細胞数を決定することによって調べた(材料および方法を参照のこと)。RNAを加水分解によって欠失した後、DNA特異的な蛍光色素である、ヨウ化プロピジウム(propidium iodide)によって細胞を染色した。次いで、細胞毎のDNA含有量分布をFACS分析によって決定した。FACS強度プロフィールは、2NのDNA含有量(G)および4NのDNA含有量(G)に対応する、2つのピークを示す。配列番号25を有するPMOで処理した細胞は、Gにある細胞の割合(21%のビヒクルコントロールと比較して9%)と比較して、Gにある細胞の割合の増加(66%のビヒクルコントロールと比較して79%である)を示した。増殖因子の枯渇によって得た静止細胞のポジティブコントロールによって、80%の細胞がGにあり、そして8%の細胞がGにあることが示めされた。
【0055】
抗c−mycオリゴマー(配列番号25)が、アンチセンス機構によってc−mycのmRNA発現を阻害するさらなる証拠を得るために、レポーター遺伝子モデル系を構築して、1つの遺伝子(ルシフェラーゼ)およびその活性(発光)を直接調べ。myc−ルシフェラーゼレポータープラスミドは、昆虫ルシフェラーゼcDNAに融合した、全体として2.2−kbである、ヒトc−myc 5’領域およびmycタンパク質の最初の6アミノ酸のコドンを含んでいた(Hudziakら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.10:163−76(2000)を参照のこと)。これをHeLa細胞へトランスフェクトし、そしてルシフェラーゼ産生クローンを選択し、クローンL6と命名した。この細胞株に、指定された濃度のPMOをスクレイプロードし、そして再度プレーティングした。24〜30時間後、この細胞を溶解し、そしてルシフェラーゼ活性を測定した(材料および方法を参照のこと)。
【0056】
この結果は、IC50が300nMである、ルシフェラーゼ産生の強い阻害を示した。いくつかのコントロール実験を実施して、ルシフェラーゼ合成の観察された阻害がPMOによる配列特異的阻害であるか否かを決定した。配列番号25および上記の2つの配列の置換物を(配列番号47および48)を比較した。乱雑化(scrambled)したバーションのオリゴマーも、3塩基誤対合のオリゴマーのいずれもが、ルシフェラーゼ産生において効果を持たなかった。他のコントロール実験によって、配列番号25が、ルシフェラーゼアッセイの30時間のインキュベーション時間の間、配列相補性薬剤が70%阻害を与える条件下において、HeLa増殖に対して影響を持たず、そして関係のない標的レポーター系(ウサギα−グロビン;J Summertonら、Antisense & Nucleic Acid Drug Dev.7:63〜70,1997)対して影響を持たなかったことが示しめされた。3〜4連続したグアニン(G)塩基を含む他の配列を、上記のNRK細胞増殖アッセイにおいて試験し、そしてこれは、20μMまでの濃度で細胞増殖の有意な阻害を与えなかった。
【0057】
ラットc−mycのスプライスアクセプター(SA)領域に関するPMOアンチセンスの「機能フットプリンティング」の評価において、スプライシングの妨害が、SAの−44位上流からSAの+36位下流(標的領域の3’末端)までの領域を標的化するPMOを用いて観測された。標的配列が下流に移動するにつれて、より低分子量のタンパク質の割合が、正常なc−mycと比較して増加することが観測された。
【0058】
スプライスアクセプター部位の接合部の下流(すなわちエキソン内)を標的化することは、以下に議論した理由によって一般に好ましい。
【0059】
(IV.SA部位での妨害の結果)
結合オリゴマーが、SAでの正常なmRNAスプライシングを妨害した場合、スプライセオソームは、この領域内のブロックされていない次の最も良好な候補部位に進む。この部位は、10〜15塩基上流の短い一続きのピリミジンおよびさらに上流の適切な分岐点を伴った[C]AG配列である傾向がある。
【0060】
得られるプロセシングされたmRNAは、一般に、正常なスプライスアクセプター部位と選択的(すなわち「クリプティック(cryptic)」)スプライスアクセプター部位との間の配列が欠失された、スプライス改変体mRNAである。得られた改変体タンパク質は、欠失された配列に依存して異なった形態を取る。例えば、この欠失された配列が、複数の3塩基対の全体を含む(つまり、下流のスプライスアクセプター部位は、正常なスプライスアクセプター部位の下流の複数の3塩基の全体を含む)場合、続く配列は、正常な配列とフレームが一致しており、そしてネイティブなタンパク質の短縮化形態が得られる。これは、例えば、以下の実施例Cにおいて記載されるようにドミナントネガティブタンパク質の形成を可能にする。しかし、クリプティック部位が正常な部位とのフレームがずれている場合、関連のない「ナンセンス」タンパク質が生成される。非リーディングフレーム配列中の終止コドンの頻繁な発生(20コドン当たり約1コドン)に起因して、このようなスプライス改変体のmRNAは、代表的には翻訳の初期終止に至る。
【0061】
この欠失された配列がAUG開始部位を含むならば、翻訳は、さらに下流で見出される選択的なAUG部位で生じ得る。さらに、この選択的部位が通常のAUG部位のフレームと一致している場合、得られたタンパク質は、ネイティブなタンパク質から幾つかのアミノ酸が欠失されている。この選択的部位がフレームとずれている場合、「ナンセンス」タンパク質(代表的には翻訳の初期で短縮される)を生じる。
【0062】
1つの実施形態において、以下の実施例Aおよび実施例Bで例示されるように、カルボキシ末端短縮化タンパク質を生成する。別の実施形態において、実施例Cおよび実施例Dで例示されるように、異常アミノ末端を有するかまたはアミノ末端が欠失されたタンパク質が生成される。後者は、AUG翻訳開始部位がmRNAのエキソン2またはそれ以降のエキソンにある場合に、達成され得る。
【0063】
従って、所望のタンパク質についてのプレmRNA配列が既知である場合、アンチセンス標的が設計され、このタンパク質の所望の領域を改変し得る。好ましくは、このタンパク質の結合ドメインはまた既知であり、この結果、このタンパク質の選択された機能を改変し得る。
【0064】
以下の工程を使用して、本発明に従って、複数のエキソンを有する遺伝子を標的化し得る:
工程1。問題としているタンパク質の機能ドメインを同定する。科学文献は、これらの情報のほとんどを提供し得る。1つの優れた供給源は、Robin Hesketh(Academic Press,London,1995)による「The Oncogene FactsBook」である。この中において、癌に関連するタンパク質が概説されており、そしてこれらの機能ドメインがマップされている。同様に、「Cytokine FactsBook」(RE CallardおよびAJH Gearing, Academic Press)は、サイトカインの機能ドメインを記載する。同じシリーズの他の出版物としては、「The Protein Kinase Factsbook」、「The G−Protein Linked Receptor Factsbook」、および「The Extracellular Matrix Factsbook」が挙げられる。
工程2。GenBankまたは類似の核酸データベースを、エキソン/イントロン配列および接合部を含むこの遺伝子配列について検索する。
工程3。好ましいアンチセンス標的は、スプライスアクセプター部位の約35〜40下流の塩基の内にある。好ましくは、この標的領域は、SA接合部から、1〜25塩基下流の位置、より好ましくは2〜20塩基下流の位置に、最も好ましくは2〜15塩基下流の位置に5’末端を有する(配列)(1塩基下流の配列は[C]AGスプライスアクセプター部位に直接隣接しているが、これと重なっておらず、そして正常なエキソンの第1番目の塩基を含むことを留意すること)。工程4。阻害結果を予測するために、SAの下流にあるエキソンを、クリプティックスプライスアクセプター(すなわち、真のSAの下流にある[C]AG配列)について検索する。一旦、このような候補部位が位置付けられると、クリプティックSAの12〜50塩基上流のラリアット形成のための
【0065】
【化2】

(または類似の)部位を検索する(上で与えられたコンセンサス配列に従って、分岐点Aのみが保存されなければならず、従って、この配列においては多くの融通があることに留意すること)。好ましくは、また、クリプティックSA部位の10〜15塩基上流に短いピリミジンリッチ領域も存在すべきである。
工程5。一旦、可能性があるクリプティックSAが同定されると、この使用が真の部位とクリプティック部位との間の塩基数を3で割ることによって「フレームが一致したリーディング」をもたらすか否かを決定する。この商が整数である場合、生じるタンパク質は「フレームが一致して」おり、そしてドミナントネガティブタンパク質である(以下を参照のこと)。
【0066】
従って、1つの好ましい実施形態において、アンチセンス標的は、スプライシングがクリプティック部位(この使用はフレームが一致したリーディングをもたらす)に指向されるようであるように、選択される。
【実施例】
【0067】
(V.標的タンパク質および選択された実施例)
適切な標的タンパク質としては、例えば、転写因子、特に癌遺伝子タンパク質また癌原遺伝子タンパク質(例えば、myc、myb、rel、fos、jun、abl、bcl、およびp53);マトリックスタンパク質(例えば、インテグリンおよびカテドリン(cathedrins));他の腫瘍発現タンパク質(例えば、hCG);テロメアーゼ;レセプタータンパク質;サイトカイン;キナーゼ;およびウイルスタンパク質(例えば、HIV rev、ヒトパピローマウイルス、およびヒトパルボウイルスB19)が挙げられる。このようなタンパク質の阻害が数多くの治療的な応用を有することが、理解される。これらとしては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:(例えば、細胞分裂および細胞周期の様々な局面で関与するタンパク質(例えば、転写因子)を標的化することによる)抗腫瘍治療;(感染性因子の複製またはその他のウイルス機能にとって必須のタンパク質を標的化することによる)抗ウイルス治療または抗細菌治療;ならびに(その部位での細胞増殖を支持するタンパク質を阻害することによる)再狭窄または他の増殖性疾患の阻害。
【0068】
転写因子は、代表的には、DNA結合領域およびタンパク質−タンパク質結合領域を有する、複数ドメインタンパク質である。これらの領域のうちの1つを妨害することによって、ドミナントネガティブタンパク質を産生し得る。このドミナントネガティブタンパク質は、1つの活性(例えば、タンパク質結合)を保存し、一方で、このタンパク質の適切な機能にとって重要な別の活性(例えば、DNA結合)を阻害する(または逆もしかり)ことによってネイティブなタンパク質の活性に対抗する。以下に記載のc−mycの例を参照のこと。
【0069】
上で言及したように、上で言及した多くの標的タンパク質の機能ドメインは、広範囲研究されており、そして文献において報告されている。イントロン、エキソン、およびAUG開始コドンの位置を含む、プレmRNAの配列は、GenBank配列データベースまたは当業者にとって容易に利用可能な他の公開された情報源において見出され得る。
【0070】
以下は、スプライス改変体mRNAを産生するために選択されたタンパク質におけるスプライスアクセプタドメインの下流を標的化したアンチセンスの例である。このmRNAは、翻訳の際に、特定の変更を有するタンパク質を産生する。
【0071】
実施例Aおよび実施例Bに例示された1つの実施形態において、カルボキシ末端で断ち切られたタンパク質が作製される。実施例Cおよび実施例Dに例示した別の実施形態において、異常アミノ末端を有するかまたはアミノ末端が欠失されたタンパク質を生成される。
【0072】
(A.ヒトアンドロゲンレセプター(GenBank M35845、M35846))
前立腺癌の分子生物学を概観することによって、アンドロゲンの除去が現在の技術水準であることが示されている。本発明に従って、これはアンドロゲンレセプターの不活化によって達成され得る。エキソン2において、この遺伝子の中心を標的化することにより、様々な選択肢が、機能アンドロゲンレセプターの発現を阻害するために利用可能である。エキソン2(配列番号8;GenBank M35845)またはエキソン3(配列番号11;GenBank M35846)におけるスプライスアクセプターの提案される標的化を示す。
【0073】
【化3】

このオリゴマー(配列番号8)は、正常なスプライスアクセプター部位の4塩基下流である、塩基48で始まる配列を標的化する。次の可能なクリプティックスプライス部位は塩基100に存在する(97〜99位のCAG;80位のプランチポイント;87〜92位の上流のピリミジン領域)。この部位は、正常な部位とは有するフレームがずれており、従って、このタンパク質の初期での終止を生じる。
【0074】
スプライスアクセプターの1〜約18塩基下流の5’末端を有する配列を標的化する類似の長さのオリゴマーが使用され得る。これは、以下の配列から選択される約18連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む:5’−TCA ATG GGC AAA ACA TGG TCC CTG GCA GTC TCC AAA−3’(配列番号9;Genbank登録番号M35845で与えられる配列の塩基の45〜80位に相補的である)。
【0075】
【化4】

このオリゴマー(配列番号12)は、正常なスプライスアクセプター部位の6塩基下流の、塩基49で始まる配列を標的化する。可能なクリプティックスプライス部位は、塩基145(143〜145位のCAG;114位の分岐点A;123〜127位のピリジン領域)に存在する。この部位は、正常なスプライス部位とフレームが一致しており、従ってネイティブなタンパク質のC末端短縮バーションを生じるはずである。
【0076】
スプライスアクセプターの1〜約18塩基下流の5’末端を有する配列を標的化する類似の長さのオリゴマーが使用され得る。これは、例えば以下の配列から選択される約18〜20の連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む:5’−AAT CAT TTC TGC TGG CGC ACA GGT
ACT TCT GTT TCC−3’(配列番号13;Genbank登録番号M35846で与えられる配列の塩基の44〜79位に相補的である)。
【0077】
(B.ヒト絨毛性ゴナドトロピン(βサブユニット)(GenBank X00266))
hCGのサブユニットは、hCGにおいては延長されているCOOH端を除いて黄体化ホルモン(LH)とほとんど同一である。この延長は、この遺伝子のエキソン3の中にある。エキソン3のSA部位を妨害することによって、hCGは、(両タンパク質で高度に保存されている)AUG翻訳開始部位の標的化とは違って、LHを標的化せずに短縮化され得る。
【0078】
以下の配列を有するオリゴマーは、SA(1318〜1320位のCAG)の近傍の(直接隣接している)エキソン3に結合し、塩基1321〜1338位の配列を標的化し、そしてこの部位でスプライシングを妨害する:5’−CCC CTG CAG CAC GCG GGT−3’(配列番号14)。
【0079】
スプライスアクセプターの1322位、1323位などから約1340位の塩基の5’末端を有する配列を標的化する類似の長さのオリゴマーが使用され得る。これは、例えば、以下の配列から選択される約18〜20の連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む:
5’−GAG GCA GGG CCG GCA GGA CCC CCT GCA GCA CGC GGG T−3’
(配列番号15;Genbank登録番号X00266で与えられる配列の塩基の1321〜1357位に相補的である)。
【0080】
可能性のあるクリプティックSA部位は、塩基1393(1391〜2のAG;1370位または1373位の分岐点A;フレームが一致)および塩基1458(1455〜1457のCAG;1427位の分岐点A;フレームがずれる)に存在する。いずれかの部位でのスプライシングは、少なくとも24のアミノ酸をこのタンパク質から欠失させるが、そして、フレームがずれる部位が使用された場合はおそらくより多く欠失させる。hCGは腫瘍細胞においてのみ発現されるので、これは、より少ないタンパク質が発現され、そしてこのタンパク質はより短い生物学的半減期を有するという点で治療的に有益である。さらに、短縮化タンパク質は、異常なアミノ酸をCOOH末端において有し得、そしておそらく、hCGに対する免疫応答(ワクチン接種ストラテジーにおいて有用である)を生じる。
【0081】
(C.ヒトc−myc(GenBank J00120))
c−mycは、細胞の増殖および分化を制御し、そして血管再造形、平滑筋細胞増殖、細胞外マトリックス合成、およびアポトーシスのプロセスに関連する、癌原遺伝子である。c−mycの異常発現は、ヒトの癌において頻繁に観察される。c−mycの異常発現、構成的発現または過剰発現は、肺癌、結腸直腸癌、乳癌、膀胱癌、白血病、肺癌などを含む多くのヒトの癌に関連する。c−mycの阻害が、再狭窄の発生率および重篤度を減少させることもまた実証されてきた。
【0082】
c−mycタンパク質は、この配列のアミン末端部分にDNA結合ドメインを有し、そしてカルボキシ末端部分にタンパク質−タンパク質相互作用ドメインを有している。c−mycは、カルボキシドメインでMaxと結合し、E−Boxとして既知であるDNA配列(5’−CACGTG−3’)に結合し得るヘテロダイマーを形成することが公知である。myc:maxがこの様式で結合した場合、この表現型は増殖刺激であり、そしてアポトーシスに至り得る。
【0083】
myc濃度が低いならば、maxは、トランス活性化しないホモダイマーを形成する。このmadタンパク質が誘導されるならば、maxはmadに結合して、mad:maxへテロダイマーを形成し、これは分化を誘導する傾向にあり、そして抗アポトーシス性(anti−apoptotic)である。
【0084】
従って、mycを単純に阻害することは、抗アポトーシス性であるmad:max表現型を生じる傾向がある。しかし、タンパク質−タンパク質結合(カルボキシ末端)ドメインをインタクトなままにしながらc−mycのDNA結合(アミン末端)ドメインを阻害した場合は、その結果は、max結合が可能だが、トランス活性化は可能でないドミナントネガティブタンパク質である。好ましい表現型は、増殖刺激作用の欠損であるが、mad:maxの代償的な抗アポトーシス作用は優勢とならない。これは、maxタンパク質が依然としてmycのCOOHドメインに結合して得るからである。
【0085】
アミン末端ドメインの阻害は、スプライシングの変更を指向するアンチセンス化合物の適切な設計によって達成される。下流に見出されるクリプティック(選択的)SA部位は以下を含む:
4547 可能な候補;4554位の次のAUGは、フレームの外であり、従って、無関係な(「ナンセンス」)タンパク質を産生する(配列番号13よりさらに下流に標的化されたオリゴによって遮断され得る)
4578 上流にピリミジンがほとんどないことによって、良好ではないSA候補。
4617 良好なSA候補;次の下流にある隣のAUGは4821に存在し、このAUGが4521で正常なAUGのフレームと一致する。
【0086】
上記のように、4504〜4505のスプライスアクセプター部位AGの10塩基下流のヒトc−myc mRNA配列(Genbank登録番号J00120)の塩基4515〜4534(配列番号25、5’−ACG TTG AGG
GGC ATC GTC GC−3’)に相補的な配列を有するモルホリノオリゴマー(PMO)は、この部位における適切なスプライシングおよび正常な4521位のAUG翻訳開始部位の使用を妨害したことが見出された。産生されたmRNAの分析は、上で示された4617部位の使用を示した。正常なAUGの300塩基下流にある、4821位のAUGにおける翻訳開始は、N末端で100アミノ酸が欠失したタンパク質を生成する(Gilesらによって報告されたとおり)。mycのCOOH末端に対する抗体の使用は、アンチセンスオリゴマーで処理した細胞由来のこのタンパク質、および実質的にこれより小さいタンパク質を明らかにした。これらのN末端短縮化タンパク質はmaxに結合するが、しかしDNAには結合しないと予測される。
【0087】
これらの結果は、プライマー増幅mRNAの調査と合せて、4617位のクリプティックスプライス部位の使用、ならびにさらに下流の他のクリプティックスプライス部位の使用を実証した。
【0088】
上記のように、SAの−44上流からSAの+36下流(ds)の領域に標的化されたPMOオリゴマーは、ラットc−mycにおけるスプライシングの妨害の証拠を示した。約20塩基のオリゴマー長を想定して、以下のアンチセンス配列をヒトc−mycの標的化のためにこのように利用し得た:
(表2)
【0089】
【表3】

mycのタンパク質−タンパク質結合(カルボキシ末端)ドメインはまた、以下のように変更され得る。アンチセンス配列5’−TCC TCA TCT TCT TGT TCC TC−3’(配列番号33)を有するオリゴマーは、塩基6654〜6655にあるスプライスアクセプターの下流の、塩基6656を標的化する。同様に、下流のクリプティックSA部位は、塩基6704、6710および6729で存在する(6702〜6703位のAG;6707〜6709位のCAG;6726〜6728位のCAG;6684位の分岐点A;6690位から始まるピリミジンリッチ領域)。これらのうちで、最初の2つは、フレーム外であり、そして3番目のものはフレーム内である。3番目の部位の使用は、mRNAからの75塩基対の欠失を生じ、mycタンパク質のタンパク質−タンパク質結合ドメインにおける25アミノ酸の欠失を生じると期待される。このタンパク質は、逆のドミナントネガティブである。なぜならば、DNA結合は可能であり得るが、myc:maxトランス活性化は、起きないようである。mycの機能は喪失するが、mad:maxヘテロダイマーは優位であり、その結果、分化および抗アポトーシスの表現型が観察される。
【0090】
上記のように、配列番号33と比較して徐々にさらに下流へと標的化されたオリゴマーはまた、使用され得る。これは、例えば、以下の配列から選択される約18〜20の連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含み得る:
5’−AAC AAC ATC GAT TTC TTC CTC ATC TTC TTG TTC CTC−3’(配列番号34;Genbank登録番号J00120で与えられた配列の6656−91位の塩基に相補的である)。本発明に従って、上記における初めの2つのクリプティック部位でのスプライシングを阻害するために、十分に下流の遠くへ標的化したオリゴマーは、上記の3番目のクリプティック部位におけるスプライシングを促進するのに有効であり得る。
【0091】
(D.ヒトp53(GenBank X54156))
c−mycのように、p53は非コードエキソン1、大きなイントロン1およびエキソン2のSA部位近傍のAUG開始コドンを有する。例えば、SA部位の3塩基下流の塩基11691においてその5’末端を有する領域を標的化したオリゴマー(5’−CCC GGA AGG CAG TCT GGC−3’;配列番号35)は、AUG開始部位での翻訳およびエキソン2の通常のスプライシングを妨害することが期待される。c−mycについて上で記載されたように、他の適切なオリゴマーは、SA部位の1塩基もしくは2塩基下流を標的化されたオリゴマーまたは徐々にさらに下流を標的化されたオリゴマーを含む(例えば、11691位、11692位などの塩基で開始し、そして塩基11689(通常のエキソン2の第1の塩基)と塩基約11725との間の領域の幾つかの部分を標的化する。これは、例えば、以下の配列から選択される約18〜20連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む:5’−TCC TCC ATG
GCA GTG ACC CGG AAG GCA GTC TGG CTG−3’(配列番号36;Genbank登録番号X54156で与えられた配列の塩基11689〜11724に相補的である)。
【0092】
クリプティックSA部位は、塩基11761(11759〜60のAG)および塩基11765(11762〜11764のCAG)で利用可能である(11736の分岐点A;11750〜11757の一連のピリジン)。11782位の塩基の次のAUGは、フレームからずれており、これはナンセンスタンパク質を生じる。あるいは、開始はエキソン3からはじまり、p53のアミノ末端を有さない短縮化p53型タンパク質を生成し得る。
【0093】
以下は、スプライスアクセプターの標的化が、本質的に有益である例である。
【0094】
(E.ヒトAbl (GenBank AJ131466))
慢性骨髄性白血病において、bcr遺伝子が切れてablに融合し、bcr−abl融合タンパク質を形成することから、この遺伝子はアンチセンス阻害の標的である。ablに関して、融合が様々な位置(すなわち、ablのエキソン2に融合するbcrの、エキソン1、エキソン2およびエキソン3の後に切断が存在する)で起こり得る。しかし、ablのスプライスアクセプターを標的化することにより、唯1つのオリゴマーだけが、全てのCML患者の処置のために必要である。
【0095】
bcr−abl融合点は、塩基373−374の接合部に存在する。それゆえに、ablスプライトアクセプターは、この接合部の3塩基下流の以下の配列によって標的化され得る:5’−CTA CTG GCC GCT GAA GGG C−3’(配列番号37)。
【0096】
再び、スプライス接合部とこのスプライス接合部の約35〜40塩基下流との間の領域を標的化する他のオリゴマーはまた、使用され得る。これは、例えば、以下の配列から選択された約18〜20連続したヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む:
5’−GCT CAA AGT CAG ATG CTA CTG GCC GCT GAA GGG CTT−3’(配列番号38;Genbank登録番号AJ131466において与えられる配列の塩基374〜409に対して相補的である。可能なクリプティックスプライス部位(両方ともフレームがずれている)は、453〜459位の上流のピリミジン領域、ならびに421および516〜518の分岐点Aを伴い、507〜510の上流のピリミジン領域および485のA分岐点を伴った、468〜470のCAGモチーフを含む。
【0097】
(F.HIV−1(GenBank L39106))
本実施例は、本発明の方法が特別な利点を提供する状況を例示する;すなわち、標的ウイルスおよび宿主(ヒト)の両方が同じmRNA配列を有する遺伝子を発現する場合である。このタンパク質産物は、ウイルスおよび宿主の両方の機能に重要だが、異なる機能をもたらす。
【0098】
HIV−1 revのmRNA配列(これは、ウイルスの複製に重要なタンパク質をコードする)(例えば、H Mitsuyaら、Science 249:1533−1543、1990を参照のこと)は、宿主でまた生じ、この配列がアンチセンスによって阻害された場合に毒性作用をもたらすることが見出された。具体的には、配列5’−TCG TCG GTC TCT CCG CTT
CTT CTT GCC−3’(配列番号39)を有するホスホロチオエートオリゴマーを使用して、HIV−1 revを阻害した(Matsukuraら、PNAS USA 86:4244−4248、1989)。revのこの領域は、HIVにおいて高度に保存されている;従って、広範な種々のウイルス単離体が阻害され得るように標的化された。
【0099】
しかし、この27merの臨床前開発を、連続的な注入によって処置した日和見感染であるように見えた3匹のアカゲザルのうち2匹が、死亡した場合に終了した。過剰の内毒素負荷が疑われたため、内毒素の除去に注意を払って実験を反復した。しかし、2匹のカニクイザル(cynamologous monkey)がまた、反復研究における連続注入の8日目および9日目に死亡した。内毒素が効果的に考慮から除かれた場合に、免疫抑制が原因として示唆される。3匹のアカゲザルの白血球(WBC)数は、HIV−revに対するアンチセンスホスホロチオエートを用いた注入の前に9.5±0.7であり、注入の間に6.9±0.6に低下した。RBCまたはヘマトクリットにおいては、関連する変化は存在しなかった。さらに、免疫応答に関連する細胞についての表面マーカー研究が影響を受けた;CD2は、88から76に低下し、CD8は45から36に落ち、そしてCD20は14から18に上昇した。
【0100】
ヒトおよびサルのゲノムにおいて観察されるHIV−revに相同な領域は、これらの毒性作用にを説明するJ.Virology 66:2170−2179(1992)に報告された。
【0101】
本発明の方法に従って、宿主のプロセスを妨害する可能性の低い代替の配列を選択し得た。本発明によって、HIV−revを以下のように抑制し得た。
【0102】
このタンパク質は、2つのエキソンによってコードされる:エキソン1、5439..5568、76塩基;およびエキソン2、7885..8180、296塩基;合計124アミノ酸(GenBank L39106)。スプライス連結部(すなわち、正常なエキソン2の最初の塩基)とこのスプライス連結部の約35〜40塩基下流との間の領域に標的化されたアンチセンス、RNAseH−インコンピテントオリゴマーは、プレ−mRNAのスプライシングを妨害すると予想される。上記のようにスプライスされる場合、標的領域の5’末端は、好ましくはスプライス連結部の1〜約25塩基下流である。このようなオリゴマーの一例は、配列5’−CTC TGG TGG TGG GTA AGG GT−3’(配列番号40)を有する、塩基対7885〜7904に標的化されたPMOである。他の候補は、配列5’−CGG GTC TGT CGG GTT CCC TCT GGT GGT GGG TAA GGG T−3’(配列番号41:GenBank登録番号L39106に与えられる配列の7885〜7921塩基に相補的)から選択された約18〜20の連続ヌクレオチドの長さを有するオリゴマーを含む。
【0103】
潜在的なスプライスアクセプターについで最も可能性の高い部位は、塩基7975であり、ここでAG配列は、AGから約10塩基を超えて上流の複数のピリミジンに先行される。この潜在的スプライスアクセプターを使用する場合、90塩基または30アミノ酸の欠失が生じる。この欠失は、有効なウイルスrev遺伝子機能を妨害する。
【0104】
(VI.スプライスアクセプター標的化の効果の分析)
スプライス改変体mRNAの生成における、特定のアンチセンス配列の効果を、公知の分析方法によって決定し得る。例えば、コードされた全長タンパク質および短縮タンパク質または他の改変体タンパク質の存在または非存在を、ELISAまたはウェスタンブロットのような標準的な技術によってモニターし得る。このタンパク質の特定の領域(すなわち、カルボキシ末端およびアミノ末端)を標的化した抗体もまた使用し得る。
【0105】
mRNA構造を、ミススプライシングを誘導したアンチセンスオリゴマーを評価するために分析し得る。核RNAの回収は、核がイントロン除去部位である場合に、イントロンを含むhnRNAを観察するために必要である。核RNAの調製は、「Molecular Cloning,A Laboratory Manual」(T.Maniatis、E.F.FritschおよびJ.Sambrook編、Cold Sprig Harbor Press)または「Current Protocols in Molecular Biology」(F.M.Ausubelら編、John Wiley&Sons,Inc.)のような本に記載される。hnRNAの分析を、ノーザンブロットまたはS1マッピングのいずれかによって最良に行う。特定のスプライス改変体成熟mRNAの存在を、特定のスプライス改変体(または正常)プロセスmRNAに生じることが予測される配列を有する選択されたプライマー対を使用するPCR増幅を実行することによって決定し得る。1つのプライマーは、スプライス部位の上流のSD(スプライスドナー)エキソン内に位置し、そして第二のプライマーは、スプライス部位の下流のSA(スプライスアクセプター)エキソン内に位置する。このオリゴマーは、SA部位を妨害することから、下流のプライマーは、SAスプライス部位から50塩基を超えて下流であるべきである。エチジウムブロミドで染色したアガロースゲルでのPCR反応物の分析は、オリゴマーによるSA部位のブロックの証拠としての、未処理のコントロール細胞から観察されるバンドよりも小さいサイズの増幅されたバンドを明らかにする。
【0106】
(VII.本方法の利点)
本発明は、タンパク質発現の阻害または変更が、非RNAseコンピテントオリゴマーを使用して、プレ−mRNAのコード領域において、スプライスアクセプターの下流領域のアンチセンス標的化によって達成され得ることを実証する。本発明の組成物および方法は、アンチセンス阻害の先行技術の方法を超えるいくつかの利点を有する。ここで、この標的化アンチセンス化合物は、スプライスアクセプター配列にわたり、そしてこの配列にハイブリダイズする(例えば、Giles、上記で引用;KoleおよびDominski、米国特許第5,665,593号)。
【0107】
1つのこのような利点は、エキソン配列がイントロン配列よりも種の間ではるかに高度に保存されている傾向があることである。これは、動物モデルでこのような方法を試験する際に、より大きな予測性を可能にする。
【0108】
さらに、オリゴマーは、正確な部位(例えば、スプライスアクセプター連結部またはAUG開始コドン)に実際に結合するために必要でないため、、標的化のための配列を選択する際に、より大きな自由度が可能になる。従って、本発明は、アンチセンス適用において首尾よく標的化され得る配列の範囲を増大させる。このような自由度は、所望されない副作用(例えば、被験体における非標的タンパク質の不慮の標的化によって引き起こされる副作用)を回避する際に、または感染性因子(例えば、ウイルスまたは細菌)を攻撃する場合に宿主タンパク質を標的化する際に有利であり得る。これを、上記の実施例Fにおいて実証する。
【0109】
本発明の戦略において、スプライス連結部を直接標的化する方法とは対照的に、SA部位の下流のエキソンの種々の領域をブロックし得る。これは、正常なSAの下流の異なる潜在的なスプライス部位に直接スプライシングすることによって、異なる改変体タンパク質を生成する可能性を広げる。上記のように、特定の改変体タンパク質(例えば、ドミナントネガティブなタンパク質)は、独自の利点を有し得る。従って、アンチセンスを、他のタンパク質を超えて所望の改変体タンパク質を生じる、特定の潜在的なスプライス部位でのスプライシングを促進するために設計し得る。例えば、正常なSA部位に近いより所望されない潜在的スプライス部位は、より下流の部位を好んで妨害し得る。
【0110】
設計の自由度のさらなる利点としては、合成の簡便性または増強された結合親和性が挙げられ得る。さらに、エキソン内の完全な標的化の本発明の戦略を使用して、標的RNAを、核または細胞質のいずれかにおいてアンチセンスオリゴマーによって同定し得、これは分析の目的のために有利であり得る。
【0111】
(VIII.処置方法)
関連する局面において、本発明は、標的タンパク質の発現を阻害または変更することによって疾患状態を処置または予防する方法を含む。このような疾患状態としては、ウイルス感染、細菌感染または真菌感染、癌性腫瘍および細胞増殖によって特徴付けられる他の状態(例えば、再狭窄、過剰増殖性皮膚障害または炎症)が挙げられる。上記のように標的化されたタンパク質は、多くの癌遺伝子、レセプタータンパク質、マトリックスタンパク質、およびウイルスタンパク質を含む転写因子を含む。このようなタンパク質の阻害は、一般に、細胞周期、ウイルス複製、または他の重要な機能の破壊を生じる。
【0112】
この方法を、12〜25ヌクレオチド長かつ以下を有するアンチセンスオリゴマーを被験体に投与することによって実行する:(i)標的タンパク質をコードする、選択された予めプロセスされたmRNAの標的領域に相補的な塩基配列であって、ここで、この標的領域の5’末端は、予めプロセスされたmRNAの正常なスプライスアクセプター部位の1〜25塩基下流、そして好ましくは、2〜15塩基下流である、塩基配列、ならびに(ii)非荷電モルホリノ骨格、好ましくは、図2B−Bに示すようなホスホロジアミデート骨格であって、ここで、X、YおよびZは、上記で定義された通りである、骨格。好ましくは、この化合物はまた、化合物の溶解度を、好ましくは水性媒体中での25〜50mg/mlの間またはこれより高い溶解度まで増強する部分を含む。一例は、ポリエチレングリコール(PEG)鎖である。
【0113】
一般に、この方法は、適切な薬学的キャリア中の、正常なスプライスアクセプター部位でのスプライシングを妨害するために有効な一定量のアンチセンス因子を被験体に投与し、従って、タンパク質の正常な発現を抑制する工程を包含する。好ましい実施形態において、この方法は、タンパク質のドミナントネガティブな改変体の発現を生じる。この方法の1つの局面において、この被験体はヒト被験体である。
【0114】
標的mRNAへのアンチセンスオリゴマーの効果的な送達は、本方法の重要な局面である。PMOは、細胞に効果的に侵入することが示されている(例えば、J Summertonら、Antisense Nucleic Acid Drug Dev.7:63〜70、1997および同時係属中かつ共有に係る米国仮出願番号60/117,846を参照のこと)。抗ウイルス処置における使用のために、送達の種々の全身的経路(経口および非経口経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内および筋内))ならびに吸入、経皮および局所的な送達を使用し得る。
【0115】
代表的には、アンチセンスオリゴマーの1以上の用量を、一般には約1〜2週間の期間の規則的な間隔で投与する。経口投与のための好ましい用量は、約1mgオリゴマー/患者〜約25mgオリゴマー/患者(体重70kgに基づく)である。いくつかの場合において、25mgオリゴマー/患者より多い投与を必要とし得る。IV投与について、好ましい用量は、約0.5mgオリゴマー/患者〜約10mgオリゴマー/患者(成人体重70kgに基づく)である。投薬量は、患者の年齢、健康、性別、サイズおよび体重、投与経路ならびに特定の疾患状態に関するオリゴヌクレオチド因子の効力のような要因によって異なる。感染性因子の処置のために、好ましい投薬量は、代表的には、約0.01〜1μM、そしてより好ましくは約200〜400nMのアンチセンスオリゴマーの血中濃度を達成するために必要な投薬量である。この濃度は、種々の方法によって達成し得る;連続的なIV注入による、約0.05と約0.2mg/kg/時間の間の用量が、受容可能であることが見出された。より多いかまたは少ない量のオリゴヌクレオチドを、必要に応じて投与し得る。
【0116】
過剰増殖性皮膚障害の処置のために、局所的投与を示す。再狭窄の処置において、罹患した細胞(すなわち、動脈損傷の部位)へのアンチセンスオリゴマーの送達を、推奨する。当該分野で公知の送達方法(例えば、共有に係り、かつ同時係属中の米国仮出願番号09/493,427に記載される方法)を使用して、患者の血管形成部位にオリゴマーを送達し得る。好ましくは、このオリゴマーを、血管形成手順と同時に送達する。成人について、推奨される投薬量は、1〜25μmol、好ましくは2〜15μmolのアンチセンスオリゴマーの範囲である。処置されるべき組織の表面積に関して、有効用量は、代表的には1cmの血管壁当たり30〜3000μgのオリゴマー、そしてより好ましくは約300〜1500μg/cmの範囲である。患者にまた、再狭窄をさらに阻害するために十分な投薬量レベルで、血管形成後に周期的にこの組成物を与え得る。
【0117】
本発明のアンチセンスオリゴヌクレオチドを使用する有効なインビボ処置レジメンは、投与の頻度および経路、ならびに処置下の被験体の状態によって変化する。所与の経路のために最適な投薬量は、当該分野で公知の方法に従う慣用的な実験によって決定し得る。このようなインビボ治療を、一般に、処置される病気の特定の型に適切な試験によってモニターし、そして用量または処置レジメンにおける対応する調節を、最適な治療結果を達成するためになし得る。
【0118】
モルホリノオリゴマーの細胞への侵入およびその標的RNA配列への結合を、同時係属中かつ共有に係る米国仮出願番号60/117,846(これは、本明細書中で参考として援用される)に示される技術によって確認し得る。インビボで投与する場合、本明細書中に開示する型のモルホリノアンチセンス化合物を、アンチセンス化合物およびそのRNA相補体からなるヘテロ二重鎖形態で、受容する被験体の尿において検出し得る。これは、アンチセンス化合物が標的組織によって取り込まれ、そして医師が処置方法の有効性(例えば、尿中のヘテロ二重鎖の最大または最大に近いレベルを与える種々の様式の投与および投薬量の有効性)をモニターすることを可能にすることを検証する。
【0119】
(IX.処方物)
モルホリノアンチセンスオリゴヌクレオチド組成物を、任意の好都合な生理学的に受容可能なビヒクル中で投与し得る。標準的な薬学的に受容可能なキャリアの例としては、生理食塩水、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、水、水性エタノール、エマルジョン(例えば、油/水エマルジョン、トリグリセリドエマルジョン)、湿潤剤、錠剤およびカプセルが挙げられる。適切な生理学的に受容可能なキャリアの選択は、選択された投与の様式に依存して変化することが理解される。
【0120】
一般に、活性な化合物に加えて、本発明の薬学的組成物は、薬学的に使用され得る調製物への活性な化合物の処理を容易にする、適切な賦形剤および補助剤を含み得る。適切な賦形剤としては、充填剤(例えば、糖(例えば、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトール)、セルロース調製物、リン酸カルシウム、ならびに結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよび/またはポリビニルピロリドン)が挙げられる。所望の場合、崩壊剤(例えば、上記のデンプンおよびカルボキシメチルデンプン、架橋ポリビニルピロリドン、寒天、アルギン酸またはその塩)を添加し得る。補助剤としては、流量調整剤ならびに潤滑剤(例えば、シリカ、タルク、ステアリン酸またはその塩、および/あるいはポリエチレングリコール)が挙げられる。
【0121】
経口投与のために、糖衣核に、胃液に対して耐性の適切な被覆を提供し得る。胃液に対して耐性な被覆を生成するために、適切なセルロース調製物(例えば、フタル酸アセチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルフタル酸セルロース)の溶液を使用する。濃縮糖溶液を使用し得、これは、必要に応じてアラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、および/もしくは二酸化チタン、ラッカー溶液、ならびに適切な有機溶媒または溶媒混合物を含み得る。
【0122】
経口的に使用され得る他の薬学的調製物としては、ゼラチンからなるプッシュフィット(push−fit)カプセル、およびゼラチンからなる軟質密封カプセル、ならびにグリセロールまたはソルビトールのような可塑剤が挙げられる。このプッシュフィットカプセルは、顆粒形態で活性な化合物を含み得、この活性な化合物を、充填剤(例えば、ラクトース)、結合剤(例えば、デンプン)および/または潤滑剤(例えば、タルクもしくはステアリン酸マグネシウム)ならびに必要に応じて安定化剤と混合し得る。軟質カプセルにおいて、活性な化合物を、好ましくは適切な液体(例えば、脂肪油、流動パラフィンまたは液体ポリエチレングリコール)中に溶解させるかまたは懸濁する。さらに、安定化剤を添加し得る。
【0123】
直腸的に使用し得る薬学的調製物としては、例えば、坐剤が挙げられ、これは、坐剤基材と活性な化合物との組み合わせからなる。適切な坐剤基材としては、天然もしくは合成のトリグリセリド、パラフィン炭化水素、ポリエチレングリコール、または高級アルカノールが挙げられる。さらに、活性な化合物と基材との組み合わせからなるゼラチン結腸カプセルを使用することが可能である。可能性のある基材材料としては、液体トリグリセリド、ポリエチレングリコール、またはパラフィン炭化水素が挙げられる。
【0124】
非経口投与のための適切な液体処方物としては、水溶性形態または水分散性形態での活性な化合物の水溶液が挙げられる。さらに、適切な油性注射懸濁液としての活性な化合物の懸濁液を投与し得る。適切な親油性溶媒またはビヒクルとしては、脂肪油(例えば、ゴマ油)または合成脂肪酸エステル(例えば、オレイン酸エチルもしくはトリグリセリド)が挙げられる。水性注射懸濁液は、懸濁液の粘性を増大させる物質(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトールおよび/またはデキストラン)を含み得る。この懸濁液はまた、安定化剤を含み得る。
【0125】
慣用的なキャリアとの投与に加えて、活性成分を、種々の特殊な送達技術によって投与し得る。例えば、本発明の化合物を、リポソーム中にカプセル化して投与し得る。(例えば、Williams,S.A.、Leukemia 10(12):1980−1989、1996;Lappalainenら、Antiviral Res.23:119、1994;Chemical Reviews、第90巻、No.4、554−584頁、1990中のUhlmannら、「Antisense Oligonucleotides:A New Therapeutic Principle」;Drug Carriers in Biology and Medicine、287−341頁、Academic Press、1979中のGregoriadis,G.、第14章、「Liposomes」を参照のこと)。この活性成分は、その溶解度に依存して、水相および脂質層の両方に存在し得るか、または一般にリポソーム懸濁液と呼ばれるものに存在し得る。この脂質層は一般に、リン脂質(例えば、レシチンもしくはスフィンゴミエリン)、ステロイド(例えば、コレステロール)、イオン性界面活性剤(例えば、ジアセチルホスフェート、ステアリルアミン、もしくはホスファチジン酸)、および/または他の親水性材料を含む。リポソームの直径は、一般には約15nm〜約5ミクロンの範囲である。
【0126】
ヒドロゲルをまた、アンチセンスオリゴマー投与のためのビヒクルとして、例えば、WO93/01286に記載のように使用し得る。あるいは、ミクロスフェアまたは微粒子にてオリゴヌクレオチドを投与し得る。(例えば、Wu GYおよびWu CH、J.Biol.Chem.262:4429−4432、このようなビヒクルは、局所的な投与のために、または再狭窄の処置において特に適切である。1987を参照のこと)。
【0127】
アンチセンスオリゴマーの経皮的送達を、局所的投与のために適合した薬学的に受容可能なキャリアの使用によって達成し得る。モルホリノオリゴマー送達の一例は、PCT特許出願WO97/40854に記載される。他の徐放性組成物がまた、本出願の範囲内に意図される。これらは、成形物品(例えば、フィルムまたはマイクロカプセル)の形態で半透性ポリマー材料を含み得る。
【0128】
このような剤形を調製するための方法は公知であるかまたは当業者に明らかである;例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版、Williams&Wilkins、1995)を参照のこと。この薬学的調製物を、当業者に公知の手順に従って製造する。例えば、この薬学的調製物を、慣用的な混合、顆粒化、糖衣作製、可溶化または凍結乾燥手順によって作製し得る。使用されるプロセスは、最終的には、使用される活性成分の物理的特性に依存する。
【0129】
(材料および方法)
(オリゴマー)
PMOを、例えば、SummertonおよびWeller、Antisense&Nucleic Acid Drug Dev.7:187−95、1993;米国特許第5,185,444号(1997)に記載された方法によって、AVI BioPharmaで合成した。オリゴマーをイオン交換クロマトグラフィーによって精製し、そして高速液体クロマトグラフィー(HPLC)および質量分析法によって純度を分析した。全長産物の量は、一般に>90%であった。使用前に、これらを、蒸留水を用いて濃縮ストック溶液として調製し、4℃で貯蔵した。
【0130】
(細胞培養)
細胞を、American Type Culture Collection(ATCC、Rockville、MD)から得るか、または本研究室で誘導した。これらの細胞を、グルタミン(2mM)、ストレプトマイシン(100μg/ml)およびペニシリン(100U/ml)を補充した、ダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)およびハム栄養混合物F−12の1:1の混合物中で培養した。透析したウシ胎仔血清(FBS)を、Sigma(St.Louis、MO)またはHyclone(Ogden、UT)のいずれかから購入した。WI−38細胞およびHeLa細胞を10%血清中で培養し、そしてNRK細胞を4%血清中で培養した。
【0131】
(組換えプラスミドおよび細胞株)
ヒトmycゲノムクローンpHSR−1は、M.BishopからATCCへの寄託物であった。2.2キロベース(kb)の5’末端を、プライマー中に組み込まれた適切な制限部位を使用するPCRによってルシフェラーゼベクターにクローニングするために適合させた(Scharf、1990)。このルシフェラーゼベクターを、Clontech Inc.(Palo Alto、CA)によって供給されたベクターから、昆虫ルシフェラーゼとのN末端融合タンパク質を可能にするために適合させた。プラスミドを、LipofectinプロトコールおよびLife Science Technologies(Gaithersburg、MD)からの試薬を使用して、ネオマイシン遺伝子/Geneticin選択手順(F Colbere−Garapinら、J.Mol Biol.150:1−14、1981)を使用してHeL細胞に導入した。ウサギα−グロビン−ルシフェラーゼ構物を含む細胞株が記載される(M Partridgeら、Antisense&Nucleic Acid Drug Dev.6:169−75、1996)。
【0132】
([H]チミジン取り込みアッセイ)
細胞をトリプシン処理し、計数し、そして6ウェルの皿に、400,000細胞/2ml/ウェルでプレートした。2日目に、PMOアンチセンス因子を、所望の濃度まで添加し、そして細胞を、穏やかなかき集め動作を使用してラバーポリスマンに取り出してロードした(PL McNeilら、J.Cell.Biol.98:1556−64、1984;Partridgeら、上記で引用)。細胞懸濁液を、形成された任意の塊を部分的に分解するために1回ピペッティングし、そして1mlを、さらなる1ml/ウェルの新鮮な培地を含む24ウェルの皿に移した。NRK細胞について、4日目に1μCiの[H]チミジン(DuPont、NEN、Wilmington、DE)(NET−027)を各ウェルに添加して、そして6時間後、細胞をリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で2回洗浄し、5%トリクロロ酢酸で沈殿させ、PBSでさらに2回洗浄し、0.2N NaOH/0.1% SDSで可溶化し、そしてDNAに取り込まれた放射能の量をシンチレーションカウンターにおいて定量した。定量化手順は、取り込みのためのインキュベーション期間が15時間であった点を除いて、WI−38と同一であった。一般に、各因子または濃度を、二連でアッセイし、そして値を平均した。この二連は、通常は互いに10%以内であった。
【0133】
(ルシフェラーゼアッセイ)
myc−ルシフェラーゼHeLa細胞を、以下の変化を伴って、正常な繊維芽細胞に対するのと類似の様式で取り出してロードした。百万個の細胞を、6ウェルの皿にプレートし、そして2日目に2mlの全容積を別の6ウェルの皿に移した。30時間後、細胞を収集し、そして記載されるように(Partridgeら;1996;Summertonら、1997;上記で引用)ルシフェラーゼ光生成についてアッセイした。
【0134】
(細胞周期分析)
細胞を、フローサイトメトリーによって、細胞周期の段階について分析した。細胞を、記載のように取り出してロードし、そして2つのウェルを合わせて蛍光活性化細胞識別(FACS)による分析のために十分な細胞を得るために、10cmの皿に再プレートした。2日後、細胞をトリプシン処理し、PBSで洗浄し、そして少なくとも2時間、冷80%エタノール中に再懸濁した。固定工程の後、細胞を遠心分離によって収集し、そしてDNA蛍光色素ヨウ化プロピジウム(Telfordら、上記で引用)で染色した。エタノール処理したペレットを、1mlの1mM EDTA、50μl/ml ヨウ化プロピジウム、1μg/ml Triton X−100、および10μg/ml RNase A中に再懸濁した。周囲温度での少なくとも1時間の後、細胞懸濁液を、488nmの励起波長を用いて、Coulter Epic XL−MCLフローサイトメーター(Coulter Electronics、Hialeah、FL)を使用して分析した。データを、Phoenix Systems(San Jose、CA)マルチサイクルプログラムソフトウェアを使用して分析した。
【0135】
(mRNA逆転写酵素−ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)分析)
mycRNAスプライシングに対するモルホリノオリゴマーの効果を試験するために、HeLa細胞を、6ウェルの皿に、百万細胞/ウェルでプレートした。次の日、20μMの最終濃度でオリゴマーを培地に添加して、上記で詳述したように細胞中に取り出してロードした。24時間後、ロードした細胞をトリプシン処理によって回収し、そしてRNAを調製した。各サンプルのために2つのウェルを合わせた。細胞質(成熟)RNAを、Qiagen Rneasy Mini Kit(Chartsworth、CA)使用して、「isolation
of RNA from the cytoplasm of animal
cells」のための指示に従って、Triton X−100溶解手順によって細胞ペレットから抽出した。RNAを、30μlの水で溶出して、約10〜20μgの収量を得た。
【0136】
6μlのRNA(2〜3μg)を、1×PCR緩衝液(10mM Tris、pH8.3、50mM KCl、1.5mM MgCl)(Perkin−Elmer、Norwalk、CT)、各1mMのデオキシヌクレオチド三リン酸、0.75μg 9−merのランダムプライマーおよび250Uのモロニーマウス白血病ウイルス(MmuLV)RT(New England BioLabs、Beverly、MA)を含む最終20μlの反応混合物中で逆転写した。酵素の添加後、反応物を25℃で10分間、次に42℃で30分間インキュベートし、そして94℃で4分間ポリメラーゼを変性させた。
【0137】
エキソン1−エキソン2PCRを、2工程のネスティド(nested)PCR手順を使用して実行した。工程1のプライマーは、配列5’−CGG GCA
CTT TGC ACT GAA ACT TAC AAC AAC(配列番号51)および5’−GGT CGC AGA TGA AAC TCT GGT T(配列番号52)を有した。1μgの各プライマーを20μlのRT反応物に添加し、そして容積を1×PCR緩衝液で100μlに調節した。4単位のAmplitaq(Perkin−Elmer)Taqポリメラーゼを添加し、そして、94℃で30秒、62℃で30秒、および72℃で40秒の工程を30サイクル行った。工程2は、プライマー配列5’−CTC CTT GCA GCT GCT TAG ACG CTG G(配列番号53)および5’−GAA GGG TGT GAC CGC AAC GTA GGA G(配列番号54)を使用した。工程1の反応混合物(4μl)を、200nMの各三リン酸および1μgの各プライマーと共に、96μlの1×PCR緩衝液に添加した。工程2のPCR条件は、94℃で30秒、68℃で40秒、および74℃で30秒の30サイクルであった。次いで、アリコートを、アガロースゲル電気泳動によって分析した。
【0138】
【表4】


ネイティブ配列、非アンチセンス
他に示さない限り、アンチセンス標的は、スプライスアクセプター(SA)連結部の下流(ds)である;SD=スプライスドナー連結部

(配列表)































【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−172597(P2011−172597A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−131668(P2011−131668)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【分割の表示】特願2001−580347(P2001−580347)の分割
【原出願日】平成13年5月4日(2001.5.4)
【出願人】(501237039)エイブイアイ バイオファーマ, インコーポレイテッド (9)
【Fターム(参考)】