説明

スプラウト栽培方法及び装置

【課題】
ゲルマニウム成分を含むスプラウトを栽培しようとする。
【解決手段】
スプラウトの種子に、ゲルマニウム成分を含む栽培液を散布しながら種子を発芽・生育させるようにしたことにより、ゲルマニウム成分を含有し、またゲルマニウムと結合したアミノ酸を、種類及び量を増大させた食品成分として含有するスプラウトを簡便に得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプラウト栽培方法及び装置に関し、特にゲルマニウム成分を野菜から摂取できるようにしようとするものである。
【背景技術】
【0002】
「もやし」や、「芽もの」(「かいわれ大根」や、さしみのつまとなる「芽じそ」や、「芽たで」など)は、それ自身の貯蔵栄養素で育成するもので、その栽培方法は、スプラウト栽培方法として知られている(特許文献1、2及び3参照)。
【0003】
このスプラウト栽培方法は、発芽直後の成長著しい時期の野菜を食用に供するもので、種子そのものや成熟した野菜とは異なる食物として注目されている。
【特許文献1】特開2000−60306
【特許文献2】特開2003−9671
【特許文献3】特開2004−154094
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
「もやし」はいわゆる「芽もの」と同様に発芽直後の成長著しい時期を食用に供することから、栄養素を摂取する食物として有用であり、栄養素の中でもミネラルの一種であるゲルマニウムを人体が吸収し易い食品成分として手軽に育成させることができれば、栄養補給元としてさらに一段と有用性を増進できると考えられる。
【0005】
因に、ゲルマニウムは、体内細胞や遺伝子等を傷つけたり、動脈硬化、糖尿病などの生活習慣病を引き起こす原因となると考えられている活性酸素を、体内で取り除く働きがあると考えられており、ゲルマニウム濃度が実用上十分に大きい「もやし」や「芽もの」を栽培できるようにすることが望ましい。
【0006】
本発明は以上の点を考慮してなされたもので、実用上十分な濃度のゲルマニウムを蓄積したスプラウトを栽培できるようにしたスプラウト栽培方法及び装置を提案しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するため本発明においては、栽培容器部3に播種された栽培すべきスプラウトの種子に、栽培液供給部2に保有されているゲルマニウム成分を含む栽培液2Eを散布手段2D、6によって散布することによって、ゲルマニウム成分を含有するスプラウトを種子から発芽・生育させるようにする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スプラウトの種子に、ゲルマニウム成分を含む栽培液を散布しながら種子を発芽・生育させるようにしたことにより、ゲルマニウム成分を含有し、またゲルマニウムと結合したアミノ酸を、種類及び量を増大させた食品成分として含有するスプラウトを簡便に得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下図面について、本発明の一実施の形態を詳述する。
【0010】
(1)栽培装置の構成
図1において、1は栽培装置を示し、栽培装置1は栽培液供給部2、栽培容器部3、下側トレー4、上側トレー5、スプリンクラ部6及び蓋部7を順次積み重ねて行く構成を有する。
【0011】
栽培液供給部2は、図1(A)に示すように、円形基台部2A上に皿状の栽培液保持部2Bを形成した構成を有する。
【0012】
基台部2Aには、スプリンクラ駆動用モータ(図示せず)が設けられており、その出力軸が栽培液保持部2Bの底板部2Cの中心位置から上方に突出するように設けられているスプリンクラ揚液管2Dに結合されている。
【0013】
かくして栽培液供給部2は、栽培液保持部2Bの底板部2C上に栽培液2Eが注液された状態でスプリンクラ揚液管2Dが回転駆動されたとき、栽培液2Eをスプリンクラ揚液管2Dによってその内部を通って上方端から溢れさせるように揚液するようになされている。
【0014】
栽培容器部3は、図1(B)に示すように、円形皿型形状を有し、底板部3Aに多数の液通過孔が設けられると共に、底板部3Aの中央位置にスプリンクラ揚液管2Dを挿通する挿通孔3Bが設けられている。
【0015】
かくして栽培容器部3は、挿通孔3Bを栽培液供給部2のスプリンクラ揚液管2Dを挿通させながら栽培液供給部2上に重ねることにより、栽培液供給部2に入れられた栽培液2Eの表面から離間した上方位置に底板部3Aを位置決めした状態で、栽培液供給部2上に装着される。
【0016】
下側トレー4及び上側トレー5は、図1(C)及び(D)に示すように、円環状枠体4A及び5A内に網目板部4B及び5Bを張り詰めた構成を有すると共に、網目板部4B及び5Bの中心位置にスプリンクラ揚液管2Dを挿通する挿通孔4C及び5Cが設けられている。
【0017】
かくして下側トレー4及び上側トレー5を、栽培容器部3の底板部3A上に底板部3Aの挿通孔3Bを挿通して上方に突出するスプリンクラ揚液管2Dに挿通孔4C及び5Cを順次挿通させるように栽培容器部3上に重ね合わせることにより、下側トレー4及び上側トレー5間に「もやし」の種子を保持した状態で栽培容器部3内に装着される。
【0018】
実際上、下側トレー4及び上側トレー5を栽培容器部3に装着する際には、まず下側トレー4を栽培容器部3の底板部3A上に位置決めした状態で、網目板部4B上に「もやし」の種子をほぼ均一の厚さに播種し、その後上側トレー5を当該種子上に被せるように栽培容器部3に設定する。
【0019】
スプリンクラ部6は、図1(E)に示すように、上下方向に延長する円管状の取付管部6Aを有し、その上端部にほぼ180〔°〕の角間隔を保つように外方に延長する2枚の散液部6B及び6Cを有する。
【0020】
かくしてスプリンクラ部6は栽培容器部3内に設定された上側トレー5の挿通孔5Cから上方に突出するスプリンクラ揚液管2Dに取付管部6Aを嵌め込むことにより、スプリンクラ揚液管2Dを通って溢れ出す栽培液を散液部6B及び6Cの下面に設けられている散液孔から下方に放液する。
【0021】
実際上スプリンクラ揚液管2Dは基台部2A内の駆動モータによって回転されていることにより、スプリンクラ部6もこれと一体に回転し、これにより栽培液を上側トレー上に一様に散液する。
【0022】
その結果、上側トレー5及び下側トレー4間に保持されている「もやし」の種子層に常時ほぼ均一に栽培液を散布する。
【0023】
かくして下側トレー4、上側トレー5及びスプリンクラ部6を内部に設定してなる栽培容器部3が栽培液供給部2上に装着された状態において、栽培容器部3の上周縁部に、図1(F)に示すように、円形皿型の蓋部7が被せられ、これにより栽培装置1が組立てられた状態になる。
【0024】
以上の構成において栽培装置1は、栽培液供給部2に注液された栽培液2Eを、スプリンクラ揚液管2Dを介して循環させながらスプリンクラ部6の散液部6B及び6Cによって、ほぼ均一になるように上側トレー5上に散布する。
【0025】
このとき下側トレー4及び上側トレー5間に播種されている「もやし」の種子に栽培液2Eが常時散布されることにより、「もやし」の種子が栽培容器部3内において発芽すると共に、上側トレー5の網目板部5Bを通って「もやし」として上方に生育して行く。
【0026】
生育し終った「もやし」(すなわち成育したスプラウト製品)は、蓋部7及びスプリンクラ部6を取り除いた後、栽培容器部3を栽培液供給部2から取り外すと共に、栽培容器部3から下側トレー4及び上側トレー5を外部に取り出して上側トレー5から上方に成育した「もやし」部分を切り取ることによりスプラウト製品として収穫される。
【0027】
(2)栽培手順
図2は「もやし」の栽培手順RT1を示すもので、先ずステップSP1において「もやし」の種子130〔g〕を取り分けて洗浄し、次にステップSP2において当該取り分けた種子を100〔°C〕の温湯で3秒間温湯消毒した後、冷却する。
【0028】
ここで「もやし」の種子として、「ブラックマッペ」(ミャンマ産)を使用する。
【0029】
続いてステップSP3に移って、栽培装置1の下側トレー4及び上側トレー5間に種子を播種すると共に、栽培液供給部2にイオン交換水2.0〔l〕を注水して1日生育させる。
【0030】
1日の育成が終った時点(これをD+1と表す)で、次のステップSP4において栽培液供給部2のイオン交換水を2.0〔l〕の栽培液2Eに交換する。
【0031】
ここで、栽培液2Eは、水1〔l〕当たりゲルマニウム成分を0.1〜1.0〔g〕(0.01〜0.1〔%〕)加えたものを用いる。
【0032】
この場合、ゲルマニウム成分としては、有機ゲルマニウム(Bis−β−Ethylcarbonic Acid、Ge132、(GeCHCHCOOH)203、ジャパンアルジェ株式会社製)純度100〔%〕を使用する。
【0033】
これに加えて栽培液2Eには、成育した「もやし」に含有する苦味成分を軽減するため、バイオを1〜4〔ml〕を加えた。
【0034】
バイオとして、商品名「ニュースーパーバイオ」、未来環境製、成分:天然乳酸菌群、有益善玉菌群(放菌菌、白色不朽菌、酵母菌、光合成細菌、糸状菌)、産生物混合液、植物抽出液のものを使用する。
【0035】
かくしてステップSP4で、培養液2Eに交換した後に、ステップSP5に移って「もやし」を4日間生育させた後(D+4の時点で)、収穫をし、ステップSP6において当該栽培手順RT1を終了する。
【0036】
(3)第1実施例
栽培手順RT1によって栽培した第1実施例として、ゲルマニウム濃度0.01〔%〕、0.05〔%〕及び0.1〔%〕の栽培液2Eを用いて栽培したところ、ゲルマニウム濃度と成育したスプラウト製品のゲルマニウム含有量との関係について、図3に示すような結果が得られた。
【0037】
この第1実施例は、栽培液2Eのゲルマニウム濃度が0.01〔%〕〜0.1〔%〕の範囲において、製品中のゲルマニウム濃度との間に、y=1873.8x+4.0656の近似直線(xは栽培液中のゲルマニウム濃度〔%〕、yは製品のゲルマニウム含有量〔ppm〕)の関係があることを示している。
【0038】
このことは、栽培液2Eのゲルマニウム濃度を0.01〔%〕増加させると、製品のゲルマニウム濃度が約18〔ppm〕増加することを示している。
【0039】
この第1実施例の結果から、栽培液2Eのゲルマニウム濃度を選択すれば、これに対応してゲルマニウム含有量が決まるスプラウト製品を育成できることが分り、かくして実用上十分に適度に有機ゲルマニウムを含んだ食品として有用なスプラウト製品である「もやし」を得ることができる。
【0040】
次に、栽培に使用した「もやし」である「ブラックマッペ」(ミャンマ産)の苦味成分の1つであるサポニンを対象にして、その製品の含有率を減少させる目的で、栽培液に対するバイオ添加量を増加させたところ、図4に示すような苦味検証結果が得られた。
【0041】
図4の場合、栽培液2Eの有機ゲルマニウム量は、水2〔l〕に有機ゲルマニウム5〔g〕(0.025〔%〕)を加えたもの(これを「Ge0.5」と表す)を用いた。
【0042】
これに対して、当該有機ゲルマニウムを添加した栽培液2Eに対してバイオを1〔ml〕〜4〔ml〕を添加した(これを「Ge0.5+バイオ1」〜「Ge0.5+バイオ4」と表す)。
【0043】
この結果、バイオを添加しない場合(「Ge0.5」で表す)、サポニンが0.2〔g〕/100〔g〕であったのに対して、バイオを添加した場合のサポニン含有量は0.06〜0.09〔g〕/100〔g〕程度に約35〔%〕低下した。
【0044】
この結果、バイオを添加することにより、栽培した製品の苦味量を有効に低減できた。
【0045】
これに対して、バイオを添加した結果、製品のゲルマニウム含有量は添加しない場合と比較して、図5に示すように、約30〔%〕程度増加した。
【0046】
かくしてバイオを添加すれば、製品の苦味量の低減と同時にゲルマニウム含有量の増加が得られることが分かった。
【0047】
さらに、第1実施例の場合、栽培したスプラウト製品の主な食品成分を「日本食品標準成分表(5訂版)」と比較すれば、図6に示すように、水分含有量が5訂食品成分量では95.0〔g/100g〕であるのに対して、第1実施例の栽培製品においては、88.8〔g/100g〕のように約7〔%〕減少した。
【0048】
このように水分含有量が減少したことに基因して、熱量が約3倍、タンパク質が約1.5倍、炭水化物が約2.7倍、植物繊維が約3倍になったと考えられるような結果が得られた。
【0049】
このことは、ゲルマニウム含有量が増加したのは、もやしの生育過程において、ゲルマニウム成分がアミノ酸と結合して成育した製品に、人体に吸収し易い食品成分として残ったことを表している。
【0050】
(4)第2実施例
第2実施例は、成育した製品に含まれる主な食品成分含有量に着目して求めた実施例で、栽培条件として、「もやし」(「ブラックマッペ」(ミャンマ産))播種量を130〔g〕とし、栽培液2Eとしてミネラル水2〔l〕に有機ゲルマニウム0.5〔g〕を溶解すると共に、これにバイオを1〜4〔ml〕添加したものを用い、栽培温度を26〜29〔°〕に設定した。
【0051】
当該第2実施例についても、成育した製品に含まれる食品成分について、アミノ酸にゲルマニウムが結合して人体に吸収し易い食品成分として残ることによりゲルマニウム含有量が増加するのに加えて、食品成分として熱量、タンパク質、脂質、ナトリウム、食物繊維、水分、炭水化物、ゲルマニウム、グルタミン酸、アスパラギン酸、サポニン及びショ糖の13成分が増大していることから、各食品成分の種類及び量が増大したことにより、アミノ酸の種類が増加すると共に、全体としてアミノ酸量が増加することが確認できた。
【0052】
当該第2実施例においても、苦味成分の1つサポニン量がバイオの添加によって著しく減少したのに対して、ゲルマニウム濃度が若干高くなる傾向を示した。
【0053】
これは、バイオの作用によってゲルマニウム成分の吸収又は蓄積が促進したものと推測できる。
【0054】
(5)他の実施の形態
上述の実施の形態においては、「もやし」として、「ブラックマッペ」(ミャンマ産)を栽培した場合について述べたが、その他の種類の「もやし」を用いても良く、さらには、「もやし」以外のいわゆる「芽もの」(「かいわれ大根」や、「芽じそ」や、「芽たで」など)のようなスプラウトについても、上述の場合と同様に本発明を適用し得る。
【産業上の利用可能性】
【0055】
スプラウト製品の栽培に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の実施の形態による栽培装置を示す分解斜視図である。
【図2】栽培手順を示すフローチャートである。
【図3】栽培液のゲルマニウム濃度と栽培製品のゲルマニウム含有量との関係を示す特性曲線図である。
【図4】栽培液のバイオ量と栽培製品の苦味量との関係を示す図表である。
【図5】栽培液のバイオ量と栽培製品のゲルマニウム含有量との関係を示す図表である。
【図6】栽培製品の食品成分と、「日本食品標準成分表(5訂版)」の食品成分との関係を示す図表である。
【図7】栽培製品の食品成分の分析結果を示す図表である。
【符号の説明】
【0057】
1……栽培装置、2……栽培液供給部、2A……基台部、2B……栽培液保持部、2C……底板部、2D……スプリンクラ揚液管、2E……栽培液、3……栽培容器部、3A……底板部、3B……挿通孔、4……下側トレー、4A……枠体、4B……網目板部、4C……挿通孔、5……上側トレー、5A……枠体、5B……網目板部、5C……挿通孔、6……スプリンクラ部、6A……取付管部、6B、6C……散液部、7……蓋部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲルマニウム成分を含む栽培液を保有する栽培液供給部と、
栽培すべきスプラウトの種子を栽培する栽培容器部と、
上記栽培容器部に播種された上記種子に上記栽培液供給部のゲルマニウム成分を含む上記栽培液を散布する散布手段と
を具えることを特徴とするスプラウト栽培装置。
【請求項2】
栽培容器部に播種された栽培すべきスプラウトの種子に、栽培液供給部に保有されているゲルマニウム成分を含む栽培液を散布手段によって散布することによって、上記ゲルマニウム成分を含有するスプラウトを上記種子から発芽・生育させる
ことを特徴とするスプラウト栽培方法。
【請求項3】
栽培容器部に播種された栽培すべきスプラウトの種子に、栽培液供給部に保有されているゲルマニウム成分を含む栽培液を散布手段によって散布することによって、上記ゲルマニウム成分を含有するスプラウトを上記種子から発芽・生育させることにより、食品成分として、ゲルマニウムと結合したアミノ酸を含有する上記スプラウトを栽培する
ことを特徴とするスプラウト栽培方法。
【請求項4】
栽培容器部に播種された栽培すべきスプラウトの種子に、栽培液供給部に保有されているゲルマニウム成分を含む栽培液を散布手段によって散布することによって、上記ゲルマニウム成分を含有するスプラウトを上記種子から発芽・育成させることにより、ゲルマニウムと結合したアミノ酸の種類及び量が増大した食品成分を含有する上記スプラウトを栽培する
ことを特徴とするスプラウト栽培方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−262843(P2006−262843A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−88843(P2005−88843)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(500319583)株式会社ブランドゥ (2)
【Fターム(参考)】