説明

スプリンクラヘッド

【課題】椀形状の感熱板を複数用いることで、限られたスペースで広い表面積が得られ、受熱効率を更に向上させたスプリンクラヘッドを提供する。
【解決手段】スプリンクラヘッド100は、筒状のシリンダー50と、シリンダー50内に設けられた半田99と、半田99を押圧する第1のピストン54と、半田99に直接又は間接的に接するように椀状に形成された第1感熱板63と、第1感熱板63を内部に収容するように椀状に形成された第2感熱板61と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のスプリンクラヘッドには、お椀形状の感熱板を用いることで、限られたスペースで広い表面積が得られ、受熱効率を向上させるようにしたものがある。そのようなものとして、「保持体18の外周下部には牡ネジ24が螺刻されており、該牡ネジ24には気流遮断部材として椀状のカバー26が螺合されている。該カバー26は、感熱作動部5を覆い隠す効果と、火災による熱気流の上昇を阻止する効果を有する。」というものがある(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−27929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のスプリンクラヘッドにおいては、マクロ的な気流の流れを考慮すると、ヘッドに当たった気流の一部がヘッド下方へ逃げてしまっており、受熱効率が低下していた。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、最下の感熱板に、他の感熱板よりも径の大きいものを用いることで、限られたスペースで広い表面積が得られ、受熱効率を更に向上させたスプリンクラヘッドを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るスプリンクラヘッドは、筒状のシリンダーと、シリンダー内に設けられた半田と、シリンダー内に設けられ、半田を押圧するピストンと、半田に直接的又は間接的に接するように椀状に形成された第1感熱板と、シリンダーに接続され、第1感熱板の少なくとも一部を内部に収容するように椀状に形成された第2感熱板と、を有するものである。
【0007】
本発明に係るスプリンクラヘッドは、下端にフランジが形成されたピストンと、ピストンのフランジ上に設けられた半田と、半田に直接的又は間接的に接するように半田の上部に取り付けられ、椀状に形成された第1感熱板と、半田の上部に取り付けられ、半田を収容するシリンダーを構成し、第1感熱板の少なくとも一部を内部に収容するように椀状に形成された第2感熱板と、を有するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るスプリンクラヘッドによれば、第1感熱板の下方へ逃げる気流の熱量を第2感熱板により受熱でき、高感度化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの断面構成の一例を示す縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの分解斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドのリンク機構の分解斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの動作を説明する概略図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッドの第2感熱板及び第1感熱板のいくつかの形状を示す概略図である。
【図6】本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッドの断面構成図である。
【図7】本発明の実施の形態3に係るスプリンクラヘッドの断面構成の一例を示す縦断面図である。
【図8】本発明の実施の形態3に係るスプリンクラヘッドの動作を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100の断面構成の一例を示す縦断面図である。図2は、スプリンクラヘッド100の分解斜視図である。図3は、リンク機構40の分解斜視図である。図4は、スプリンクラヘッド100の動作を説明する概略図である。図1〜図4に基づいて、スプリンクラヘッド100の構成及び動作について説明する。なお、図1を含め、以下の図面においては、各構成部材同士の大きさの関係を限定するものではなく、実際のものとは異なる場合がある。また、図2では、第2感熱板61及び第1感熱板63の図示を省略している。
【0011】
[スプリンクラヘッド100の構成]
図1に示すように、スプリンクラヘッド100は、ヘッド本体1、フレーム10、弁体20、アームガイド30、バランサー35、リンク機構40、第2感熱板61、及び、第1感熱板63を備えている。
【0012】
(ヘッド本体1)
ヘッド本体1は、外周に設けられたねじ部と、ねじ部の下端部に設けられたフランジ部3と、フランジ部3の下端側外周にフランジ部3と一体に形成されたねじ部と、からなり、中心部にはこれらねじ部、フランジ部3を貫通して放水口5が設けられている。そして、放水口5の下部は、拡径されて後述の弁体20が収容される凹部6が形成されており、放水口5と凹部6との間には弁座7が設けられている。
【0013】
(フレーム10)
フレーム10は、有底円筒状であり、内壁の上部にはヘッド本体1のねじ部に螺合されるねじ部が設けられており、ねじ部の下方(高さ方向の中央部よりやや下方)には係止段部12が形成されている。フレーム10の係止段部12の下方には、散水口15が形成されている。
【0014】
(弁体20)
弁体20は、ヘッド本体1の放水口5を開閉するものである。
【0015】
(リンク機構40)
リンク機構40は、図3に示すように、一対のアーム41、アーム支持板46、シリンダー50、第1のピストン54、リンク押え板55、第2のピストン59等からなる。
【0016】
アーム41は、図3に示すように、ほぼ逆J字状に形成されており、脚部43には第1の係止穴44と第2の係止穴45が設けられている。
【0017】
また、アーム41の脚部43に設けた第1の係止穴44の下面は、外側から内側に向って下り斜面に形成されており、また、頭部42の幅は、バランサー35の側壁の間に遊嵌しうる幅に、バランサー35の脚部の幅は、アームガイド30のガイド片の間に遊嵌しうる幅に形成されている。
【0018】
アーム支持板46は、アーム41の間に配設されて係止片49がアーム41の第1の係止穴44に係止される。
【0019】
シリンダー50は、図3に示すように、つば部51が当接するまでアーム支持板46の貫通穴48に挿入され、その位置でアーム支持板46と一体に固定される。このシリンダー50の内部には、たとえばコンプレッション半田からなる半田99が収容されている。第1のピストン54は、半田99を押圧するようにシリンダー50内に摺動可能に収容されている。
【0020】
リンク押え板55は、図3に示すように、中心部にねじ穴57を有しアーム支持板46の本体47の幅より若干狭い幅の四角形の本体56と、その両側に突設された嵌合片58からなり、両アーム41の間に配設されて嵌合片58が両アーム41の第2の係止穴45に遊嵌する。第2のピストン59は、一端に設けたねじ部60がリンク押え板55のねじ穴57に螺入され、他端が第1のピストン54に当接する。
【0021】
(第2感熱板61)
第2感熱板61は、フレーム10とほぼ同径で、第1感熱板63を内部に収容するように椀状に形成され、受熱板を兼ね、シリンダー50に接続され、リンク機構40等を下側から覆うものである。この第2感熱板61は、中心部に突出しているねじ部52(雌ねじ)を有する。シリンダー50のねじ部52に、ねじ部52より径の大きい開口部を有する第1感熱板63を通し、シリンダー50のねじ部52と第2感熱板61を螺合させる。つまり、第1感熱板63を、シリンダー50と第2感熱板61で挟むように固定する。これにより、第2感熱板61は、フレーム10やリンク機構40の下面を覆って固定される。第2感熱板61の側壁の少なくとも一部には、開口部の一例であるスリット61aが設けられている。
【0022】
このスリット61aは、後述する第1感熱板63に熱気流があたるようにするための空気の流出入口として機能する。なお、第2感熱板61は、その上端部がフレーム10の散水口15を覆う高さまで延伸させてもよい。また、第2感熱板61の中心部には、ねじ部52が螺合するねじ部62が設けられている。さらに、スリット61aの形状や大きさ、個数、形成方法などを特に限定するものではない。空気の流れは図1に矢印で示している(矢印A、矢印B)。なお、開口部の一例としてスリット61aを挙げて説明したが、開口部の形状をスリット形状に限定するものではない。
【0023】
(第1感熱板63)
第1感熱板63は、第2感熱板61内に設けられ、シリンダー50を介して半田99と間接的に接しており、第2感熱板61よりも小径の椀状に形成されている。第1感熱板63はシリンダー50を介さず、直接半田99と接しても良い。この第1感熱板63は、第2感熱板61のスリット61aの下部とほぼ同じ高さの水平部63aと、第2感熱板61のスリット61aの高さとほぼ同じ長さの垂直部63bと、を有している。こうすることで、スリット61aから流入した空気(矢印A)の熱量を第1感熱板63の垂直部63bで受熱しつつ、スプリンクラヘッド100の下方へ逃げようとする空気(矢印B)の熱量を第2感熱板61の底面及び第1感熱板63の水平部63aの下面の双方で受熱でき、スプリンクラヘッド100が高感度化を実現している。
【0024】
なお、図1では、第2感熱板61及び第1感熱板63が取り付けられた状態において、第1感熱板63の上部が第2感熱板61の上部よりも低い位置となる場合を例に示しているが、第2感熱板61及び第1感熱板63の形状を図1に示すものに限定するものではない。第2感熱板61及び第1感熱板63の形状のバリエーションについては、図5で詳細に説明するものとする。
【0025】
[スプリンクラヘッド100の動作]
火災が発生して第2感熱板61及び第1感熱板63が加熱され、その熱及び周辺からの熱気流により半田99が加熱されると、半田99が溶融し始め、溶融した半田99の一部はシリンダー50と第1のピストン54との間に形成された間隙から流出する。そのため、シリンダー50及びこれに固定されたアーム支持板46等、リンク機構40は分解する。これにより、第2感熱板61及び第1感熱板63を含むリンク機構40及びバランサー35は、外部に落下する。
【0026】
同時に、弁体20と一体化されたアームガイド30は、自重と消火水の圧力によりフレーム10の開口部の両側縁に沿って下降し、弁体20のフランジ部がフレーム10の底部に着座してフレーム10の開口部を閉塞する。これにより、放水口5が開口され、消火水は、フレーム10内を通って散水口15からほぼ均一に散水される。
【0027】
図5は、第2感熱板61及び第1感熱板63のいくつかの形状を示す概略図である。図5に基づいて、第2感熱板61及び第1感熱板63の形状のバリエーションについて説明する。なお、図5では、第2感熱板61及び第1感熱板63の形状を(a)〜(d)に分けて説明するが、これらのうちから第2感熱板61、第1感熱板63をそれぞれ適宜選択して組み合わせてもよい。また、図5に示す内容は、実施の形態2でも同様に適用することができる。
【0028】
図5(a)では、第2感熱板61及び第1感熱板63が取り付けられた状態において、第1感熱板63の上部が第2感熱板61の上部(端部の位置)よりも高い位置となる場合を例に示している。このような位置関係の場合、第1感熱板63の上部が突出している分、スリット61aを通り抜けてきた熱気流が当たるので、スプリンクラヘッド100の高感度化が図れる。
【0029】
図5(b)では、第2感熱板61のスリット61aの高さを大きくした場合を例に示している。このようにすれば、第1感熱板63の内部に流れ込む空気の量を増やすことが可能になる。よって、スプリンクラヘッド100の高感度化を更に向上させることができる。
【0030】
図5(c)では、第1感熱板63の水平部63a側に別の感熱部材64aを設けた状態を示している。この感熱部材64aは、断面視した状態において外周壁が上方に向かって拡径するようなテーパー形状になっている。このようにすれば、第1感熱板63の内部に流れ込んだ空気の熱量を受熱する表面積を増やすことが可能になる。よって、スプリンクラヘッド100の高感度化を更に向上させることができる。なお、感熱部材64aの形状を図5(c)に示す形状に限定するものではない。たとえば、感熱部材64aを平たい椀状に構成してもよい。また、感熱部材64aの角部を湾曲部に変更してもよい。
【0031】
図5(d)では、第1感熱板63の水平部63a側に別の感熱板64bを設けた状態を示している。この感熱板64bは、第1感熱板63の水平部63aから外側に向かって延設するように設けられている。このようにすれば、第1感熱板63の内部に流れ込んだ空気の熱量を受熱する表面積を増やすことが可能になる。よって、スプリンクラヘッド100の高感度化を更に向上させることができる。なお、感熱板64bの形状を図5(d)に示す形状に限定するものではない。たとえば、感熱板64bを波状の平板で構成したり、所定の角度で何度か折り曲げて構成したりしてもよい。
【0032】
このように、第1感熱板63の水平部63aは、スリット61aに対向する位置にあればよい。また、第1感熱板63と第2感熱板61の上部(端部)の位置は同じ高さでも良いが、高さが異なると、より高感度化が図れる。第1感熱板63の上部が第2感熱板61の上部より高い位置にある場合、第1感熱板63の上部が突出している分、スリット61aを通り抜けてきた熱気流が当たるので、スプリンクラヘッド100の高感度化が図れる。一方、第1感熱板63の上部が第2感熱板61の上部より低い位置にある場合、第1感熱板63の上部の位置を低くすると、第1感熱板63の体積が減るので、第1感熱板63の熱容量も減少し、第1感熱板63は暖まりやすくなる。よって高感度化が可能となる。第1感熱板63の上部を第2感熱板61の上部より低い位置に設ける場合、スリット61aを通った熱気流はスリット61aより上の第1感熱板63には当たりづらいので、スリット61aと対向する位置に第1感熱板63の上部を設けると、スリット61aを通った熱気流を効率よく受けることができる。
【0033】
[実施の形態1の有する効果]
実施の形態1に係るスプリンクラヘッド100によれば、第2感熱板61の内部に第1感熱板63を設置したので、スプリンクラヘッド100の下方へ逃げてしまっていた空気の熱量を第2感熱板61及び第1感熱板63の双方で受熱でき、高感度化を実現できる。
【0034】
実施の形態2.
図6は、本発明の実施の形態2に係るスプリンクラヘッド100の断面構成図である。なお、実施の形態2では、上述の実施の形態1との相違点について詳細に説明するものとし、実施の形態1に対応している部材については同じ符号をつけて説明を省略する。
【0035】
(第2感熱板61)
第2感熱板61はフレーム10の径とほぼ同じであり、第1感熱板63の外径より大きい円板状に形成され、感熱板の最下に水平に設けられる。第2感熱板61は、受熱板を兼ね、シリンダー50に接続されるものである。第2感熱板61は、中心部に突出しているねじ部52(雌ねじ)を有する。シリンダー50のねじ部52に、ねじ部52より径の大きい開口部を有する第1感熱板63を通し、シリンダー50のねじ部52と第2感熱板61を螺合させる。つまり第1感熱板63を、シリンダー50と第2感熱板61で挟むように固定する。これにより、第2感熱板61は、また、第2感熱板61の中心部には、ねじ部52が螺合するねじ部62が設けられている。また、空気の流れは図6に矢印で示している(矢印A、矢印B)。
【0036】
(第1感熱板63)
第1感熱板63は、第2感熱板61の上部に設けられ、シリンダー50を介して半田99と間接的に接しており、第2感熱板61よりも小径の椀状に形成されている。第1感熱板63はシリンダー50を介さず、直接半田99と接しても良い。この第1感熱板63は、水平に設けられる第2感熱板61より高い位置にある水平部63aと、水平部63aの周縁から上方に立設する垂直部63bと、を有している。こうすることで、スプリンクラヘッド100に対して横方向から当たる熱気流(矢印A)の熱量を第1感熱板63の垂直部63bで受熱しつつ、スプリンクラヘッド100の下方へ逃げようとする空気(矢印B)の熱量を第2感熱板61の底面及び第1感熱板63の水平部63aの下面の双方で受熱でき、スプリンクラヘッド100が高感度化を実現している。
【0037】
[実施の形態2の有する効果]
実施の形態2に係るスプリンクラヘッド100によれば、平板状で、第1感熱板63より径の大きな第2感熱板61を第1感熱板63の下の位置に設置したので、第1感熱板63に当たってスプリンクラヘッド100の下方へ逃げてしまっていた熱気流を第2感熱板61及び第1感熱板63の双方で受熱でき、高感度化を実現できる。
【0038】
実施の形態3.
図7は、本発明の実施の形態3に係るスプリンクラヘッド100Aの断面構成の一例を示す縦断面図である。図8は、スプリンクラヘッド100Aの動作を説明する概略図である。図7及び図8に基づいて、スプリンクラヘッド100Aの構成及び動作について説明する。なお、この実施の形態3では上述した実施の形態1との相違点を中心に説明するものとし、実施の形態1と同一の箇所については説明を割愛するものとする。また、実施の形態1に対応している部材については符号の末尾に「A」を付記している。
【0039】
[スプリンクラヘッド100Aの構成]
このスプリンクラヘッド100Aは、ヘッド本体1A、フレーム10A、弁体20A、散水部110及び弁体支持機構120を備えている。
【0040】
(ヘッド本体1A)
ヘッド本体1Aは、中心部が開口されている。この開口は、後述の放水筒19とともに放水口5Aを形成する。ヘッド本体1Aの外周部にはフランジ部3Aが形成されており、フランジ部3Aの上側のヘッド本体1Aの外周部には給水管(図示省略)に接続されるねじ部が形成されており、また、フランジ部3Aの下側の内周部には、後述するフレーム10Aが取り付けられるためのねじ部が形成されている。ヘッド本体1Aの内側には円筒状の放水筒19が下方に突出して形成されている。また、放水筒19の下端部には、たとえば平らに形成された弁座7Aが形成されており、弁座7Aに皿ばね32の上面側が当接するように配置されている。なお、ヘッド本体1Aは、フランジ部3Aの下側の内周部と放水筒19との間に略穴状または略リング状の空間18が形成されており、この空間18には後述のガイドロッド112が収納される。
【0041】
(フレーム10A)
フレーム10Aは、円筒状に形成されている。フレーム10Aの上部の外周部にはねじ部が形成され、ヘッド本体1Aの下部側に形成されたねじ部に取付けられる。フレーム10Aの下部には、内側に突出した係止段部12Aが設けられ、係止段部12Aには後述のボール131が係止される。
【0042】
(弁体20A)
弁体20Aは、フランジ部20bAを有し、このフランジ部20bAの上側には皿ばね32が配置されており、この皿ばね32とともにヘッド本体1Aの放水筒19を塞いでいる。なお、皿ばね32にはテフロン(登録商標)シートが設けられるか、テフロン(登録商標)コーティングが施される。弁体20Aの下部には後述のセットスクリュー65の頭部が当接されている。弁体20Aは、後述する弁体支持機構120によって支えられている。
【0043】
(散水部110)
散水部110は、デフレクタ111、ガイドロッド112、ストッパリング113(及び弁体20A)を備えている。デフレクタ111は、中央に開口部を有する円板によって構成されており、その開口部に弁体20Aの下部が挿入された状態で、弁体20Aのフランジ部20bA下面に取り付けられている(固定されている)。また、デフレクタ111には、ガイドロッド112(例えば3本)が挿入される挿入穴(例えば3個)が設けられており、ガイドロッド112の下端は、その挿入穴から突出した状態でデフレクタ111に固着されている。したがって、これらの弁体20A、デフレクタ111及びガイドロッド112は一体的に構成されている。
【0044】
通常時は、ストッパリング113は、図7に示される位置にあるが、放水動作時には、デフレクタ111、ガイドロッド112及びストッパリング113が下降する。ストッパリング113の外径は、フレーム10Aの係止段部12Aの内径よりも大きく形成され、放水動作時に、弁体支持機構120が落下すると、ストッパリング113はフレーム10Aの係止段部12Aまで下降する。
【0045】
ストッパリング113の中央に設けられた穴の内径は、放水筒19の外径よりわずかに大きく形成されており、そして、その穴の周囲の縁に下方に突起したガイド部を設けておくとよい。ストッパリング113は降下する際には、このガイド部により、ヘッド本体1Aの下部に形成された放水筒19の外周にガイドされる。
【0046】
(弁体支持機構120)
弁体支持機構120は、感熱部121、ボール保持機構130及びセットスクリュー65を備えている。
【0047】
感熱部121は、ピストン72、第2感熱板61A、第1感熱板63A及び断熱材74を備えている。ピストン72は、円筒状に形成され、下部にフランジ72aが形成されている。ピストン72の内部には、雌ねじ72bが形成され、セットスクリュー65の脚部にある雄ねじがねじ込まれ両者は結合している。ピストン72の上部からドーナツ状の半田99が挿入され、ピストン72のフランジ72a上に載っている。この半田99の上部に、円板状であって、断面クランク型であってシリンダーを構成する第2感熱板61Aが設けられている。すなわち、この第2感熱板61Aは、ピストン72のフランジ72aに設けられた半田99Aを覆う突部(垂直部)73aと、この突部73aに連続し、ヘッド本体1Aの軸芯に対して直交する方向に延びた円板部73bとを備えている。
【0048】
第2感熱板61Aは、椀状に形成され、受熱板を兼ね、シリンダーを構成するものである。この第2感熱板61Aは、中心部に突出しているねじ部52に第1感熱板63Aの中心部に螺合することにより、フレーム10A等の下面を覆って固定される。第2感熱板61Aの側壁の少なくとも一部には、開口部の一例であるスリット61aAが設けられている。このスリット61aAは、空気の流出入口として機能する。なお、第2感熱板61Aは、その上端部がフレーム10Aの下部を覆う高さまで延伸させてもよい。さらに、スリット61aAの形状や大きさ、個数、形成方法などを特に限定するものではない。なお、開口部の一例としてスリット61aAを挙げて説明したが、開口部の形状をスリット形状に限定するものではない。
【0049】
そして、第2感熱板61Aには、後述するボール保持機構130によって半田99Aを圧縮するように力がかかっている。また、ピストン72のフランジ72aの外周面と第2感熱板61A(突部73a)の内周面との間には半田99Aが流出するための間隙が形成される。
【0050】
第1感熱板63Aは、第2感熱板61A内に設けられ、シリンダーを構成する第2感熱板61Aを介して半田99と間接的に接しており、第2感熱板61Aよりも小径の椀状に形成されている。第1感熱板63Aはシリンダーを構成する第2感熱板61Aを介さず、直接半田99と接しても良い。この第1感熱板63Aは、第2感熱板61Aのスリット61aAの下部とほぼ同じ高さの水平部63aAと、第2感熱板61Aのスリット61aAの高さとほぼ同じ長さの垂直部63bAと、を有している。こうすることで、スリット61aAから流入した空気の熱量を第1感熱板63Aの垂直部63bで受熱しつつ、スプリンクラヘッド100Aの下方へ逃げようとする空気の熱量を第2感熱板61Aの底面及び第1感熱板63Aの水平部63aAの下面の双方で受熱でき、スプリンクラヘッド100Aが高感度化を実現している。
【0051】
なお、図7では、第2感熱板61A及び第1感熱板63Aが取り付けられた状態において、第1感熱板63Aの上部が第2感熱板61Aの上部よりも低い位置となる場合を例に示しているが、第2感熱板61A及び第1感熱板63Aの形状を図7に示すものに限定するものではない。第2感熱板61A及び第1感熱板63Aの形状のバリエーションについては、図5で説明した通り種々のものが考えられる。
【0052】
第1感熱板63Aの上部には、ドーナツ状の断熱材74が設けられ、第1感熱板63Aで受熱した熱が後述するバランサー133側に逃げないようにしてある。
【0053】
ボール保持機構130は、ボール131、スライダー132及びバランサー133を備えている。なお、バランサー133は半田99Aを押圧する機能を有することからピストンに相当する機能を果たす。
【0054】
ボール131の外周下部は、フレーム10Aの係止段部12Aに係止されている。この状態で、ボール131を上から押さえるのがスライダー132であり、スライダー132からボール131に力がかかることで、ボール131には内側に入り込む方向に力が作用する。バランサー133は、ボール131の内側に設けられ、この内側に入りこもうとするボール131の動きを規制する。スライダー132及びバランサー133ともに円板状に形成され、中央には貫通穴があり、バランサー133の貫通穴にはセットスクリュー65が貫通している。バランサー133の貫通穴はセットスクリュー65の外径よりも僅かに大きく、両者は結合していない。
【0055】
バランサー133は、貫通穴を有する筒部と、その筒部の上方に設けられた円板部とを組み合わせた形状となっている。バランサー133の外周下部には段部が形成されている。この外周下部の段部は、フレーム10Aの係止段部12Aの内周下部にある段部に、当接するように構成されており、バランサー133の下側から外力がかかった場合には、この部分で衝撃を吸収する。また、バランサー133の筒部の下部であって中央の貫通穴の周りには、断熱材74がはまる段部133aが突出し、バランサー133の円板部の上部には、ボール131があたる傾斜部133bが突出して形成されている。
【0056】
スライダー132の外周側下部には凹部132aが形成され、その凹部132aのボール131が接する面は、下方に向かって内側に傾斜するようにテーパー状(傾斜部)に形成されている。
【0057】
ボール131には、皿ばね32のバネ力が、弁体20A、セットスクリュー65をスライダー132を介して伝達され、常に内側に移動するように力がかかり、その結果、また、バランサー133を下方に移動させるように力が作用する。したがって、半田99Aが溶融して流出すれば、バランサー133が下方に移動し、それに伴って、ボール131が内側に入り込み、フレーム10Aの係止段部12Aとの係止状態が解除されるので、ボール保持機構130は感熱部121と共に落下する。ボール保持機構130が落下すれば、それに伴って、散水部110を構成する弁体20A、ストッパリング113等が落下して、放水が行われることになる。
【0058】
セットスクリュー65は、頭部と脚部とからなるボルトであって、その脚部の下部がピストン72の上部と結合することで、ボール保持機構130としてのバランサー133、スライダー132及び感熱部121を一体化している。
【0059】
上記のようなスプリンクラヘッド100Aには、図7の状態においては、放水口5Aの消火水の水圧や部品の組立荷重がボール131に作用し、ボール131は内側(中心側)に移動しようとするが、ボール131は、バランサー133によってその移動が阻止されており、ボール保持機構130はボール131を保持している。そして、この状態においては、弁体20A及び皿ばね32がヘッド本体1Aの放水口5Aを封止している。このため、スプリンクラヘッド100Aには、加圧された消火水が供給されるが、消火水は漏れない。また、散水部110は、弁体20Aにデフレクタ111が固定され、デフレクタ111にガイドロッド112が固定されており、弁体20Aが放水口5Aを封止している状態では、ガイドロッド112がヘッド本体1Aの空間18に収納された状態になっている。
【0060】
[スプリンクラヘッド100Aの動作]
図7に示すように、スプリンクラヘッド100Aの監視状態においては、ヘッド本体1Aの放水口5Aには加圧された消火水が供給されており、弁体20Aには消火水の圧力が加えられている。火災が発生し、その熱気流が第2感熱板61A、第1感熱板63Aに当たるとこれらが加熱され、第2感熱板61A、第1感熱板63Aの熱は半田99Aへ伝播する。そして、半田99Aが周囲から加熱されて溶融し始めると、溶融した半田99Aはピストン72と第2感熱板61A(突部73a)との間に形成された間隙から流出してその体積が減少する。
【0061】
このときバランサー133によって上方から押されたボール131が内側に移動することになるが、ボール131が移動しても皿ばね32は弁座7Aに圧接されて、弁体20A及び皿ばね32は放水口5Aを塞いだ状態を維持する。
【0062】
図8(a)に示すように、半田99Aが溶融して外部に流出すると、第2感熱板61A、第1感熱板63Aは半田99Aの流出量に対応して降下する。第2感熱板61A、第1感熱板63Aが降下すると、第2感熱板61A、第1感熱板63Aの上に取り付けられている断熱材74及びバランサー133が降下する。
【0063】
図8(b)に示すように、バランサー133が降下すると、バランサー133とスライダー132との間の間隙が広がり、内側に付勢されているボール131がバランサー133の傾斜部133bを越えて内側に移動し、フレーム10Aの係止段部12Aとボール131との係合が解かれる。それによって、弁体20A及び弁体支持機構120は降下する。
【0064】
図8(c)に示すように、弁体20Aの下に配置されている皿ばね32を含む弁体支持機構120は落下すると、弁体20Aが降下する。また、弁体20Aの降下に伴って、弁体20Aに取り付けられているデフレクタ111、デフレクタ111に取り付けられているガイドロッド112、及びストッパリング113が降下する。ガイドロッド112が降下すると、ストッパリング113はフレーム10Aの係止段部12Aに係止され、弁体20A及びデフレクタ111がガイドロッド112によりフレーム10Aから吊り下げられた状態になる。
【0065】
実施の形態3では、放水動作時において、デフレクタ111は、ガイドロッド112と共に下降するので、デフレクタ111の下降動作が円滑に行われる。
【0066】
以上のようにして、弁体20Aが降下すると放水口5Aは開放され、加圧された消火水がデフレクタ111から散水されて火災を消火する。
【0067】
[スプリンクラヘッド100Aの有する効果]
実施の形態3に係るスプリンクラヘッド100Aによれば、第2感熱板61Aの内部に第1感熱板63Aを設置したので、スプリンクラヘッド100Aの下方へ逃げてしまっていた空気の熱量を第2感熱板61A及び第1感熱板63Aの双方で受熱でき、高感度化を実現できる。
【符号の説明】
【0068】
1 ヘッド本体、1A ヘッド本体、3 フランジ部、3A フランジ部、5 放水口、5A 放水口、6 凹部、7 弁座、7A 弁座、10 フレーム、10A フレーム、12 係止段部、12A 係止段部、15 散水口、18 空間、19 放水筒、20 弁体、20A 弁体、20a 弁本体、20b フランジ部、20bA フランジ部、20c かしめ片、21 突起部、23 上面、23a パッキン、30 アームガイド、32 皿ばね、35 バランサー、40 リンク機構、41 アーム、42 頭部、43 脚部、44 第1の係止穴、45 第2の係止穴、46 アーム支持板、47 本体、48 貫通穴、49 係止片、50 シリンダー、51 つば部、52 ねじ部、54 第1のピストン、55 リンク押え板、56 本体、57 ねじ穴、58 嵌合片、59 第2のピストン、60 ねじ部、61 第2感熱板、61A 第2感熱板、61a スリット、61aA スリット、62 ねじ部、63 第1感熱板、63A 第1感熱板、63a 水平部、63aA 水平部、63b 垂直部、63bA 垂直部、64a 感熱部材、64b 感熱板、65 セットスクリュー、72 ピストン、72a フランジ、72b 雌ねじ、73a 突部、73b 円板部、74 断熱材、99 半田、99A 半田、100 スプリンクラヘッド、100A スプリンクラヘッド、110 散水部、111 デフレクタ、112 ガイドロッド、113 ストッパリング、120 弁体支持機構、121 感熱部、130 ボール保持機構、131 ボール、132 スライダー、132a 凹部、133 バランサー、133a 段部、133b 傾斜部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状のシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられた半田と、
前記シリンダー内に設けられ、前記半田を押圧するピストンと、
前記半田に直接的又は間接的に接するように椀状に形成された第1感熱板と、
前記シリンダーに接続され、前記第1感熱板の少なくとも一部を内部に収容するように椀状に形成された第2感熱板と、
を有することを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項2】
下端にフランジが形成されたピストンと、
前記ピストンのフランジ上に設けられた半田と、
前記半田に直接的又は間接的に接するように前記半田の上部に取り付けられ、椀状に形成された第1感熱板と、
前記半田の上部に取り付けられ、前記半田を収容するシリンダーを構成し、前記第1感熱板の少なくとも一部を内部に収容するように椀状に形成された第2感熱板と、
を有することを特徴とするスプリンクラヘッド。
【請求項3】
前記第2感熱板の側壁の少なくとも一部に開口部を設け、
前記第1感熱板は、
前記開口部の下部とほぼ同じ高さの水平部と、
前記開口部の高さとほぼ同じ長さの垂直部と、
を有することを特徴とする請求項1又は2に記載のスプリンクラヘッド。
【請求項4】
筒状のシリンダーと、
前記シリンダー内に設けられた半田と、
前記シリンダー内に設けられ、前記半田を押圧するピストンと、
前記半田に直接的又は間接的に接するように椀状に形成された第1感熱板と、
前記シリンダーに接続され、前記第1感熱板の外径よりも大きく板状に形成された第2感熱板と、
を有することを特徴とするスプリンクラヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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