説明

スプリンクラーヘッドカバー

【課題】 スプリンクラーヘッドを収容する筒状部材の側面に穴が穿設されているスプリンクラーヘッドカバーであり、穴に作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかからないスプリンクラーヘッドカバーを提供する。
【解決手段】 筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッド1が収容されており、筒状部材の側面には気流通過用の穴17が穿設され、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレート4が配置されており、筒状部材とカバープレート4は低融点合金19によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の側面の穴17をライン状に形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常はスプリンクラーヘッドがカバーで覆われており、火災時に該カバーが落下するスプリンクラーヘッドカバーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドカバーは、天井またはスプリンクラーヘッドに設置されており、常時はカバープレートによってスプリンクラーヘッドを覆い隠し、火災時にはカバープレートが落下して内部のスプリンクラーヘッドが露出され、スプリンクラーヘッドを作動可能な状態にする(例えば、特許文献1および特許文献2参照。)。
【0003】
従来のスプリンクラーヘッドカバーの一例として図10に示すものがある。図10のスプリンクラーヘッドカバーは、スプリンクラーヘッドに接続される筒状の本体50の下端にフランジ51を有している。スプリンクラーヘッドを覆い隠すカバー52は低融点合金53、係止材54を介してフランジ51に接続される。
【0004】
本体50の側面には複数の開口55が形成されており、火災の熱でカバー52が落下した後に天井下面に漂う熱気流を本体50内に取り込み、開口55から排出可能に構成している。これにより、本体50の内部に配置されたスプリンクラーヘッドの作動を促進させている。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−245371号公報
【特許文献2】実用新案登録第3129431号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1および特許文献2のスプリンクラーヘッドカバーには、スプリンクラーヘッドを収容する筒状部材の側面に穴が穿設されている。火災時において、火災の熱によってカバープレートが落下した後に筒状部材内のスプリンクラーヘッドが作動した際、スプリンクラーヘッドから脱落する部品が前述の穴に引っかかる可能性があり、穴に引っかかった部品が散水の妨げとなるおそれがある。
【0007】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドを収容する筒状部材の側面に穴が穿設されているスプリンクラーヘッドカバーであり、穴に作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかからないスプリンクラーヘッドカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドカバーを提供する。

筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッドが収容されており、筒状部材の側面には気流通過用の穴が穿設され、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレートが配置されており、筒状部材とカバープレートは低融点合金によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の側面の穴をライン状に形成したことを特徴とするスプリンクラーヘッドカバーである。
これによれば、筒状部材の側面の穴をライン状に形成したことで、作動したスプリンクラーヘッドの部品が穴に入り込めないようにした。具体的には、ライン状の穴の幅を部品が穴に入り込めない程度の概ね1〜5mmとした。また幅を小さくした分、長さを大きくしたことで穴の開口面積を確保し、気流が滞りなく通過できるようにした。
【0009】
前記本発明については、ライン状の穴を筒状部材の周方向に延伸させて構成可能である。
これによれば、ライン状の穴の長さ寸法をより長く形成することが可能となり穴の開口面積を大きくすることができる。また、穴を複数設ける場合において、穴と穴の間の桟の数を少なくできる。すなわち桟に対向して気流を受けた場合には、桟が気流の妨げとなり気流の通過に損失が生じるが、桟の数を少なくして気流を阻害するものを減らすことで気流を滞りなく通過させることができる。
【0010】
前記本発明については、ライン状の穴は高さ位置が異なる複数の層に分かれて構成可能である。
これによれば、複数の層状にライン状の穴を形成することで、穴の開口面積を大きくすることができ、気流の通過量を増やすことができる。
【0011】
前記本発明については、ライン状の穴の位置は隣の層と位置をずらして配置することで構成可能である。
これによれば、隣の層との穴位置をずらすことで筒状部材の全周で気流の通過が可能となる。
【0012】
前記本発明については、最下層の穴は筒状部材の下端まで切欠いて構成可能である。
これによれば、最下層の穴を筒状部材の下端まで切欠きにしたことで、作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかからないように構成した。また穴を切欠き形状としたことで穴の開口面積も大きくすることができる。
【0013】
前記本発明については、最下層の穴は筒状部材の下端に切欠かれた部分に向かって傾斜させて構成可能である。
これによれば、穴の形を切欠き部に向かって傾斜させたことで穴に部品がひっかかっても傾斜に沿って滑り、切欠きから部品が落ちるようにすることができる。

【発明の効果】
【0014】
以上、説明したように本発明によれば、スプリンクラーヘッドを収容する筒状部材の側面に穿設されている穴に、作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかかるのを防止可能であり、引っかかった部品が散水の妨げとなることを防止可能である。

【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のスプリンクラーヘッドカバーが設置されたスプリンクラーヘッドの断面図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】図1の平面図
【図4】スプリンクラーヘッドカバーの分解断面図
【図5】図1のカバープレートが落下した状態の断面図
【図6】図1のスプリンクラーヘッドが作動した状態の断面図
【図7】第2実施形態のリテーナーの断面図
【図8】第3実施形態のリテーナーの断面図
【図9】第4実施形態のリテーナーの断面図
【図10】従来のスプリンクラーヘッドカバーの分解断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
第1実施形態(図1〜図6)

第1実施形態のスプリンクラーヘッドカバーCは、スプリンクラーヘッド1に設置され、サポートカップ2、リテーナー3、カバープレート4から構成される。
【0017】
スプリンクラーヘッド1は、天井面や壁面に設置され、天井裏の配管(図1において二点鎖線で示す)と接続されている。スプリンクラーヘッド1は、内部に感熱分解部5を有しており該感熱分解部5によってノズル6の末端に設置された弁体7をノズル6側に保持している。感熱分解部5内には内部に低融点合金8が充填されているシリンダー9を備えており、火災の熱でシリンダー9内の低融点合金8が溶融することで感熱分解部5が分解作動して、感熱分解部5にて保持していた弁体7が解放されることでノズル6から水が放出される。スプリンクラーヘッド1および感熱分解部5の詳細な構造については特開平7−284545号公報に記載されているので詳細な説明は省略する。
【0018】
ノズル6の外方は前述の配管と接続するための牡ネジ10が螺刻されている。牡ネジ10の根元部分11にはサポートカップ2が固定設置されている。
【0019】
サポートカップ2は筒状であり後述のリテーナー3と組み合わせて筒状部材を構成する。サポートカップ2の上端側には端面12を有しており、端面12には穴12Aが穿設されている。穴12Aにはスプリンクラーヘッド1の牡ネジ10が挿通され、端面12の外部に突出している。穴12Aの周囲には気流出口12Bが複数形成されている。気流出口12Bの開口部面積が大きい程、サポートカップ2およびリテーナー3内の気体の排出効果が向上する。
【0020】
サポートカップ2の側面には、リテーナー3と着脱可能に接続できる螺旋溝13が刻設されている。
【0021】
リテーナー3は筒状であり、前述のサポートカップ2の螺旋溝13と螺合可能な係合部14が側面に形成されている。係合部14は螺旋溝13側の斜め下方へ突出して切り起こされた形状をしており、サポートカップ2にリテーナー3を取付ける際にはリテーナー3をサポートカップ2側に挿通させると係合部14の折り曲げ部側が先に螺旋溝13に当たるので係合部14の先端側は弾性により変形して螺旋溝13を乗り越えて通過可能である。反対にサポートカップ2からリテーナー3を取外す際には、リテーナー3を下方に引張っても係合部14の先端が螺旋溝13に係合されて引き抜くことができないのでリテーナー3を回転させて螺旋溝13に沿って係合部14を回転させて取外す。
【0022】
リテーナー3の下端には外方へ拡張して形成したフランジ15が設置されている。フランジ15とカバープレート4の間には隙間20が設けられており、該隙間20から天井Tの下面を漂う気流をリテーナー3内に導入することができる。またフランジ15には穴15Aが複数穿設されており、隙間20に流入してきた気流を穴15Aを通過させて後述するライン状の穴17側に導入させることができる。
【0023】
フランジ15から垂下してカバープレート接合部16が形成されている。フランジ15と係合部14の間にはライン状の穴17が形成されており、リテーナー3の側面に複数設けられている。ライン状の穴17により、スプリンクラーヘッド1が作動して感熱分解部5の部品がライン状の穴17に向かって放出されても穴17の幅Wが小さいことから感熱分解部5の部品が引っかかることができずに脱落させることができる。穴17の幅Wの寸法は1〜5mm程度が望ましい。またライン状の穴17をリテーナー3の周方向に延伸させたことで、穴17の開口面積を確保することができる。
【0024】
具体的に説明すると図4に示すように、ライン状の穴17は上下2つの層により構成され、上層の穴17A、下層の穴17Bがそれぞれ3箇所均等に穿設されている。穴17Aと穴17Bは互い違いに穿設されており、穴17A、17Aの間の桟17Cは穴17Bの上部に配置され、同様に穴17B、17Bの間の桟17Dは穴17Aの下部に配置される。
【0025】
ライン状の穴17の長さLをリテーナー3の周方向に延伸させて、さらに複数の層から構成したことで穴17の開口部面積を大きくとることができ、穴17の開口面積が大きい程、サポートカップ2およびリテーナー3内への気体の導入効果が向上する。本実施形態においては、穴17を上層と下層の2層によって構成したが、これに限らず3層以上で構成することも可能である。
【0026】
さらに桟17C、17Dはリテーナー3の側面を通過する気流の流れの妨げとなるが、穴17Aと穴17Bの位置を互い違いに配置させたことで、リテーナー3の全周方向から気流を通過可能な構成とした。
【0027】
また、ライン状の穴17はフランジに15に近い位置に設置することでライン状の穴17と気流出口12Bの高低差が大きくなり、サポートカップ2およびリテーナー3の内部において上方(端面12側)へ向かう気流が形成しやすい。
【0028】
ライン状の穴17の近傍にはストッパー18が形成され、サポートカップ2の端が係止可能となっており、ライン状の穴17がサポートカップ2によって塞がれることを防止している。本実施形態ではストッパー18が桟17Cの位置に設けられているが、これに限らず例えばサポートカップ2側に設置することも可能である。具体的にはサポートカップ2の内部に、リテーナー3の上端が係止され端面12側への移動を規制する突起を形成することで構成可能である。
【0029】
カバープレート4は薄板を円盤状に形成したものであり、外周縁はリテーナー3側に屈曲されている。カバープレート4の内側には前述のカバープレート接合部16が配置され、低融点合金19によって接合されている。低融点合金19はスプリンクラーヘッド1に使用されている低融点合金8よりも融点が低いものを用いる。
【0030】
続いて、第1実施形態の作動について説明する。
【0031】
スプリンクラーヘッドカバーCは、図1に示すように天井裏の配管に接続されたスプリンクラーヘッド1に設置され、リテーナー3のフランジ15の上面が天井Tの下面に接した状態で設置されている。フランジ15の下面とカバープレート4の縁の間には隙間20が設けられており、隙間20から気流がリテーナー3の内部に流入可能な構成となっている。
【0032】
火災が発生すると、火災による熱気流が上昇して天井Tの下面に滞留する。熱気流は隙間20からリテーナー3内に流入してサポートカップ2の気流出口12Bより排出され、リテーナー3の下端側からサポートカップ2の上端側へ向かう気流が生じる。その気流に誘導され、リテーナー3の側面に設けたライン状の穴17からリテーナー3内へ流れる気流が生じ、リテーナー3内の気流の流動量が増える。気流の流動量が増えたことでリテーナー3内に気流が停滞することがなく、天井下面の熱気流が隙間20を通過してリテーナー3内へ流入し、気流出口12Bから滞りなく排出されることで熱気流からシリンダー9内の低融点合金8へ熱が伝播される。
【0033】
リテーナー3とカバープレート4を接合している低融点合金19は低融点合金8よりも融点が低いので低融点合金8よりも早い段階で溶融してカバープレート4が落下する(図5)。カバープレート4が落下したことでスプリンクラーヘッド1が露出され、天井Tの下面の熱気流から熱を吸収しやすい状態になり、シリンダー9内の低融点合金8が溶融してスプリンクラーヘッド1内の感熱分解部5が分解作動する。
【0034】
分解作動した感熱分解部5の部品はスプリンクラーヘッド1から放出される。その際、部品がリテーナー3のライン状の穴17の方向へ放出されてもライン状の穴17の幅Wが狭いので部品はライン状の穴17に引っかかることができずにリテーナー3の外へ放出される。
【0035】
感熱分解部5の作動によりノズル6が開放されて水が放出され、放出された水はデフレクターDに衝突して四方へ飛散する。これにより火災の鎮圧がなされる(図6)。
【0036】
第2実施形態(図7)
第2実施形態のスプリンクラーヘッドカバーは、第1実施形態のスプリンクラーヘッドカバーのライン状の穴17Bの形状を変形させたものである。尚、第1実施形態と構成が同じ部分には同符号を付して説明は省略する。
【0037】
図7(a)は、ライン状の穴17Bがフランジ15まで切欠かれており、下層の穴17Bに作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかかれないように構成されている。また同図(b)(c)は下層の穴17Bの一部をフランジ15まで切欠き、排出部32を形成した。穴17Bのフランジ15側の縁は排出部32に向かった傾斜33となっており、穴17Bに作動したスプリンクラーヘッド1の部品が引っかかっても傾斜33に沿って滑り、排出部32から外部へ放出可能としたものである。
【0038】
第3実施形態(図8)
第3実施形態のスプリンクラーヘッドカバーは、ライン状の穴17をフランジ15に対して傾斜させて穿設したものである。尚、第1実施形態と構成が同じ部分には同符号を付して説明は省略する。
【0039】
図8(a)は、ライン状の穴34がフランジ15に対して傾斜させて穿設したものである。また同図(b)は前述の排出部32を設置してライン状の穴34に作動したスプリンクラーヘッド1の部品が引っかかってもライン状の穴34の傾斜に沿って滑り、排出部32から外部へ放出可能としたものである。
【0040】
第4実施形態(図9)
第4実施形態のスプリンクラーヘッドカバーは、第1実施形態のスプリンクラーヘッドカバーのライン状の穴17をフランジ15に対して垂直に延伸して穿設したものである。尚、第1実施形態と構成が同じ部分には同符号を付して説明は省略する。
【0041】
図9(a)は、ライン状の穴35がリテーナー3の中心軸Zと平行に延伸して穿設されている。また同図(b)では上下2層に穴が形成されており、上層には穴35A、下層には穴35Bが穿設されている。さらに同図(c)は、同図(b)と同様に上下2層の穴が穿設されているが、下層の穴35Bはフランジ15まで穴が切りかかれ、下層の穴35Bに作動したスプリンクラーヘッドの部品が引っかかれないように構成されている。


【符号の説明】
【0042】
1 スプリンクラーヘッド
2 サポートカップ
3 リテーナー
4 カバープレート
12 端面
12A 穴
12B 気流出口
13 螺旋溝
14 係合部
15 フランジ
16 カバープレート接合部
17、34、35 ライン状の穴
18 ストッパー
19 低融点合金
20 隙間



【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッドが収容されており、筒状部材の側面には気流通過用の穴が穿設され、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレートが配置されており、筒状部材とカバープレートは低融点合金によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の側面の穴をライン状に形成したことを特徴とするスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項2】
ライン状の穴を筒状部材の周方向に延伸させた請求項1記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項3】
ライン状の穴は高さ位置が異なる複数の層に分かれている請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項4】
ライン状の穴の位置は隣の層と位置をずらして配置する請求項1から請求項3の何れか1項記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項5】
最下層の穴は筒状部材の下端まで切欠かいてある請求項1から請求項4の何れか1項記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項6】
最下層の穴は筒状部材の下端に切欠かれた部分に向かって傾斜している請求項1から請求項5の何れか1項記載のスプリンクラーヘッドカバー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−17659(P2013−17659A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153430(P2011−153430)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【Fターム(参考)】