説明

スプリンクラーヘッドカバー

【課題】 スプリンクラーヘッドカバーにおいて天井下方へ突出した覆い(カバープレート)との接合部がスプリンクラーヘッドの散水を遮らないスプリンクラーヘッドカバーを提供する。
【解決手段】 筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッド1が収容されており、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレート4が配置され、筒状部材とカバープレート4は低融点合金19によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の下端に天井下面と接するフランジ15を設置し、該フランジ15と低融点合金19によって接合される接合部16をカバープレート4の外縁部に設置した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常はスプリンクラーヘッドがカバーで覆われており、火災時に該カバーが落下するスプリンクラーヘッドカバーに関するものである。

【背景技術】
【0002】
スプリンクラーヘッドカバーは、天井またはスプリンクラーヘッドに設置されており、常時はカバープレートによってスプリンクラーヘッドを覆い隠し、火災時にはカバープレートが落下して内部のスプリンクラーヘッドが露出され、スプリンクラーヘッドを作動可能な状態にする。
【0003】
従来のスプリンクラーヘッドカバーの一例として図7に示すものがある(例えば、特許文献1参照)。図7のスプリンクラーヘッドカバー51は、スプリンクラーヘッドSに接続される筒状のカバー本体53の下端に、覆い52との接合部56を有している。覆い52は低融点合金58によって接合部56と接続される。
【0004】
接合部56の近傍にはフランジ形状の係止部55が設けられており、該係止部55が天井Cの下面に当接して設置される。従って接合部56は天井Cよりやや下方に位置する。
【0005】
火災が発生すると火災の熱によって低融点合金58が溶融して覆い52が落下する。続いてカバー本体53の内部に収容されているスプリンクラーヘッドSが作動して散水を開始する。スプリンクラーヘッドSから散水された水によって火災の消火が行われる。

【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実用新案登録第3016985号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のスプリンクラーヘッドカバー51は接合部56が天井Cの下面から下方へ突出しているので、スプリンクラーヘッドSが作動して散水を行う際に、接合部56と係止部55の間の垂下部56AがスプリンクラーヘッドSからの散水を遮り、垂下部56Aの方向への散水量が、垂下部56A以外の部分と比較して少なくなるという問題があった。
【0008】
さらに、スプリンクラーヘッドSおよびスプリンクラーヘッドカバー51を小型化するとその傾向が顕著になり、小型化を困難にする要因の一つとなっていた。具体的に説明すると、図6(a)に示す従来のスプリンクラーヘッドのデフレクターDおよびスプリンクラーヘッドカバー51の垂下部56Aにおいて、垂下部56Aによって角度αの領域の散水量が周囲よりも不足する。これに対して同図(b)では(a)と比較して垂下部56AがデフレクターDに近い位置に配置されており、垂下部56Aによって散水が遮られる領域、つまり角度βの領域が、αの領域よりも大きくなり、散水量が不足する領域が(a)よりも大きくなることから、散水性能を満足させることが困難となっている。
【0009】
小型化に伴い、接合部56や垂下部56Aを小さくできればよいが、接合強度を確保するためには所定以上の接合面積が必要であり、接合部56を小さくすることは困難である。
【0010】
そこで本発明では、上記問題に鑑み、スプリンクラーヘッドカバーにおいて天井下方へ突出した覆いとの接合部がスプリンクラーヘッドの散水を遮らないスプリンクラーヘッドカバーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明は以下のスプリンクラーヘッドカバーを提供する。
筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッドが収容されており、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレートが配置され、筒状部材とカバープレートは低融点合金によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の下端に天井下面と接するフランジ部を設置し、該フランジ部と低融点合金によって接合される接合部をカバープレートの外縁部に設置したことを特徴とするスプリンクラーヘッドカバーである。
これによれば、接合部をカバープレートの外縁部に設置したことで、前述の従来品のように筒状部材の天井下方へ突出した接合部が無くなるのでスプリンクラーヘッドからの散水を遮るものが無いのでスプリンクラーヘッドカバーがスプリンクラーヘッドの散水を遮ることが無くなる。
また、接合部をカバープレート側に設置したことで、火災時には接合部がカバープレートごと落下することから、接合部の面積を任意に設定することができる。つまりスプリンクラーヘッドカバーを小型化しても、接合部の面積は変更しないので従来品と同等の接合強度を確保することができる。さらに、接合部の数を増やすことも可能であり、これに加えて接合部の位置についても任意の位置に設定することができる。
また、カバープレートの外縁部に接合部を設置したことで、接合部の状態が目視によって確認しやすくなり、接合作業や検査が容易になり生産性を向上することができる。
【0012】
前記本発明については、接合部に凹部を形成することで構成可能である。
これによれば、低融点合金によってフランジ部と接合部を接合する場合に、凹部に固形状の低融点合金を収容しておき、加熱することで低融点合金が溶けて凹部内に充填されるので、低融点合金が接合部からはみ出すことを防止できる。
【0013】
前記本発明については、接合部とフランジ部の間に隙間を形成するためのスペーサーを設置することができる。
これによれば、スペーサーによって低融点合金の厚さをコントロールすることが可能となり、低融点合金の接合強度が最大になる厚さで接合部とフランジ部を接合することができ、カバープレートと筒状部材の接合強度を均一にできる。
【0014】
前記本発明については、フランジ部に対して接合部が傾いて設置することで構成可能である。
これによれば、フランジ部と接合部の間の間隔が狭い部分と広い部分ができ、広い部分の隙間には低融点合金によるフィレットが形成され、フランジ部と接合部が立体的に接合されて強度を増加することができる。強度が増加したことにより従来品より接合部の面積を減らしても従来品の強度と同等の強度を得ることができるので、接合部の面積縮小によりスプリンクラーヘッドカバーを小型化することができる。

【発明の効果】
【0015】
以上説明したように本発明によれば、スプリンクラーヘッドカバーではスプリンクラーヘッドの散水を遮ることがないので四方への散水量が均一になり、スプリンクラーヘッドの散水性能を十分に発揮できるスプリンクラーヘッドカバーを構成することができる。

【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】スプリンクラーヘッドカバーが設置されたスプリンクラーヘッドの断面図
【図2】図1のX−X断面図
【図3】スプリンクラーヘッドカバーの分解断面図
【図4】変形例の要部拡大図
【図5】図1のスプリンクラーヘッドが作動した状態の断面図
【図6】スプリンクラーヘッドカバーの接合部によって散水が遮られる事例の説明図
【図7】従来のスプリンクラーヘッドカバーの断面図
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本実施形態のスプリンクラーヘッドカバーAは、スプリンクラーヘッド1に設置され、サポートカップ2、リテーナー3、カバープレート4から構成される。
【0018】
スプリンクラーヘッド1は、天井面や壁面に設置され、天井裏の配管(図1において二点鎖線で示す)と接続されている。スプリンクラーヘッド1は、内部に感熱分解部5を有しており該感熱分解部5によってノズル6の末端に設置された弁体7をノズル6側に保持している。感熱分解部5内には内部に低融点合金8が充填されているシリンダー9を備えており、火災の熱でシリンダー9内の低融点合金8が溶融することで感熱分解部5が分解作動して、感熱分解部5にて保持していた弁体7が解放されることでノズル6から水が放出される。スプリンクラーヘッド1および感熱分解部5の詳細な構造については特開平7−284545号公報に記載されているので詳細な説明は省略する。
【0019】
ノズル6の外方は前述の配管と接続するための牡ネジ10が螺刻されている。牡ネジ10の根元部分11にはサポートカップ2が固定設置されている。
【0020】
サポートカップ2は筒状であり後述のリテーナー3と組み合わせて筒状部材を構成する。サポートカップ2の上端側には端面12を有しており、端面12には穴12Aが穿設されている。穴12Aにはスプリンクラーヘッド1の牡ネジ10が挿通され、端面12の外部に突出している。穴12Aの周囲には気流出口12Bが複数形成されている。気流出口12Bの開口部面積が大きい程、サポートカップ2およびリテーナー3内の気体の排出効果が向上する。
【0021】
サポートカップ2の側面には、リテーナー3と着脱可能に接続できる螺旋溝13が刻設されている。
【0022】
リテーナー3は筒状であり、前述のサポートカップ2の螺旋溝13と螺合可能な係合部14が側面に形成されている。係合部14は螺旋溝13側の斜め下方へ突出して切り起こされた形状をしており、サポートカップ2にリテーナー3を取付ける際にはリテーナー3をサポートカップ2側に挿通させると係合部14の折り曲げ部側が先に螺旋溝13に当たるので係合部14の先端側は弾性により変形して螺旋溝13を乗り越えて通過可能である。反対にサポートカップ2からリテーナー3を取外す際には、リテーナー3を下方に引張っても係合部14の先端が螺旋溝13に係合されて引き抜くことができないのでリテーナー3を回転させて螺旋溝13に沿って係合部14を回転させて取外す。
【0023】
リテーナー3の下端には外方へ拡張して形成したフランジ15が設置されている。フランジ15とカバープレート4の間には隙間20が設けられており、該隙間20から天井Tの下面を漂う気流をリテーナー3内に導入することができる。
【0024】
カバープレート4は薄板を円盤状に形成したものであり、外周縁はリテーナー3側に屈曲されている。カバープレート4の外周縁には低融点合金19によってフランジ15と接合される接合部16が形成されている。具体的には外周縁からカバープレート4の中心側へ向かって接合部16を形成した。接合部16のフランジ15と接する面には凹部16Aが設置されている。凹部16Aによりフランジ15と接合部16を低融点合金19により接合する場合に、凹部16Aに固形状の低融点合金19を収容しておき、加熱することで低融点合金19が溶けて凹部16A内に充填されるので、低融点合金19が接合部16の外部に流れ出ることを防止できる。低融点合金19はスプリンクラーヘッド1に使用されている低融点合金8よりも融点が低いものを用いる。
【0025】
また接合部16と接するフランジ15側には、接合部16側に突出した凸部15Aが形成されている。凸部15Aはスペーサーの作用をするものであり、フランジ15と接合部16の間の間隔をコントロールするために設置されている。これにより低融点合金19の接合強度が最適となる間隔を形成可能となり、フランジ15と接合部16の接合強度を均一にすることができる。
【0026】
接合部16の変形例として、図4(a)に示すようにフランジ15に対して接合部16が傾いて構成することもできる。これにより、フランジ15と接合部16の間隔が狭い部分と広い部分ができ、広い部分の隙間には低融点合金19によるフィレットFが形成され、フランジ15と接合部16が立体的に接合されて強度を増加することができる。
【0027】
さらに同図(b)においては、フランジ15側に穴15Bを穿設して構成した。これにより、穴15Bを貫いて低融点合金19が接合しており、フランジ15と接合部16を立体的に接合して強度を増加することができる。また前述の(a)と(b)の構成を組み合わせた形状とすることも可能である。
【0028】
続いて、本実施形態のスプリンクラーヘッドカバーおよびスプリンクラーヘッドの作動について説明する。
【0029】
スプリンクラーヘッドカバーAは、図1に示すように天井裏の配管に接続されたスプリンクラーヘッド1に設置され、リテーナー3のフランジ15の上面が天井Tの下面に接した状態で設置されている。フランジ15の下面とカバープレート4の縁の間には隙間20が設けられており、隙間20から気流がリテーナー3の内部に流入可能な構成となっている。
【0030】
火災が発生すると、火災による熱気流が上昇して天井Tの下面に滞留する。熱気流は隙間20からリテーナー3内に流入してサポートカップ2の気流出口12Bより排出され、リテーナー3の下端側からサポートカップ2の上端側へ向かう気流が生じる。天井下面の熱気流が隙間20を通過してリテーナー3内へ流入し、気流出口12Bから滞りなく排出されることで熱気流からシリンダー9内の低融点合金8へ熱が伝播される。
【0031】
リテーナー3とカバープレート4を接合している低融点合金19は低融点合金8よりも融点が低いので低融点合金8よりも早い段階で溶融してカバープレート4が落下する。カバープレート4が落下したことでスプリンクラーヘッド1が露出され、天井Tの下面の熱気流から熱を吸収しやすい状態になり、シリンダー9内の低融点合金8が溶融してスプリンクラーヘッド1内の感熱分解部5が分解作動する。
【0032】
分解作動した感熱分解部5の部品はスプリンクラーヘッド1から放出される。感熱分解部5の作動によりノズル6が開放されて水が放出され、放出された水はデフレクターDに衝突して四方へ飛散する。その際、従来品のようにフランジから下方へ垂下したカバープレートとの接合部が無いので散水を阻むものが無く四方に均一に水が散布される。これにより火災の鎮圧がなされる(図5)。

【符号の説明】
【0033】
1 スプリンクラーヘッド
2 サポートカップ
3 リテーナー
4 カバープレート
12 端面
13 螺旋溝
14 係合部
15 フランジ
16 接合部
19 低融点合金
20 隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部材の内部にはスプリンクラーヘッドが収容されており、筒状部材の下方にはスプリンクラーヘッドを覆い隠すカバープレートが配置され、筒状部材とカバープレートは低融点合金によって接合されているスプリンクラーヘッドカバーにおいて、筒状部材の下端に天井下面と接するフランジ部を設置し、該フランジ部と低融点合金によって接合される接合部をカバープレートの外縁部に設置したことを特徴とするスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項2】
接合部に凹部を形成する請求項1記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項3】
接合部とフランジ部の間に隙間を形成するためのスペーサーを設置する請求項1または請求項2記載のスプリンクラーヘッドカバー。

【請求項4】
フランジ部に対して接合部が傾いて設置される請求項1から請求項3記載の何れか1項記載のスプリンクラーヘッドカバー。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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