説明

スプリンクラーヘッド

【課題】震災等により天井板や崩落する部材がスプリンクラーヘッドに接触して円筒状部材の開口する端部に当たった場合でも、当該開口部分が変形するのを防止することにより、火災が発生したときには即座に消火が可能なスプリンクラーヘッドを提供できるようにする。
【解決手段】温度ヒューズの収納部の筒状の開口端部、若しくはその近傍に当該温度ヒューズの収納部の変形を防止するプラグプレートを設けることにより、震災等で天井板や崩落する部材がスプリンクラーヘッドに接触して温度ヒューズの収納部の開口する筒状の端部に当たった場合でも、当該開口部分が変形するのを防止し、通常の火災での消火は勿論のこと、震災で火災が発生したときにも、即座に消火することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高層ビルなどの各フロアの天井部分に設置される自動消火設備であるスプリンクラー消火設備において、各階に敷設されたスプリンクラー配管の末端に接続されるスプリンクラーヘッドの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、この種のスプリンクラーヘッドは、消火配水管に接続されるスプリンクラーヘッド本体内に吐水口を水圧乃至開口付勢手段の開弁力に抗して閉止するバルブと、所定の高温を検出したときに前記吐水口を開くように前記バルブを操作させる感熱作動部とを備えている。
上記感熱作動部は、スプリンクラーヘッド本体に固定され下方が開口する筒状部材と、当該筒状部材内を昇降可能に設けられた弁体と、当該弁体と筒状部材との間に設けられた温度ヒューズと、当該温度ヒューズが一定の体積にあるときはバルブが吐水口を閉止した状態に保ち、温度ヒューズが火災の熱により溶出し、体積が減少若しくは無くなった時に吐水口が開口するようにバルブを一気に開くトリガー機構を備えて形成されている。
【0003】
そして、感熱作動部は下方が開口する円筒状部材に温度ヒューズが溶け出る僅かな隙間を持たせた状態で弁体が収納されている。
したがって、こうしたものでは、例えば震災等で天井部分が揺れる。この天井部分が揺れて天井板や崩落する部材がスプリンクラーヘッドに接触して円筒状部材の開口する端部に当たり当該部分を変形させてしまうと、その後に火災が発生して温度ヒューズが溶け出しても弁体が作動せず、スプリンクラーが機能しなくなってしまうという問題があった。
【特許文献1】特開2006−426号公報
【特許文献2】特開2005−304887号公報
【特許文献3】特開2004−243032号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記問題点に鑑みて提案されたもので、震災等により天井板や崩落する部材がスプリンクラーヘッドに接触して円筒状部材の開口する端部に当たった場合でも、当該開口部分が変形するのを防止することにより、火災が発生したときには即座に消火が可能なスプリンクラーヘッドを提供できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明にかかるスプリンクラーヘッドは、消火配水管に接続されるスプリンクラーヘッド本体と、該スプリンクラーヘッド本体内の吐水口を水圧乃至開口付勢手段の開弁力に抗して閉止するバルブと、所定の高温を検出したときに前記吐水口を開くように前記バルブを操作させる感熱作動部とを備え、スプリンクラーヘッド本体に固定され下方が開口する筒状部材と、当該筒状部材内を昇降可能に設けられた弁体と、収納部に収納され所定の高温を検出すると溶け出す温度ヒューズと、当該温度ヒューズが一定の体積にあるときはバルブが吐水口を閉止した状態に保ち、温度ヒューズが溶出して体積が減少した時に吐水口が開口するようにバルブを操作するトリガー機構を備えて感熱作動部を形成してなるスプリンクラーヘッドであって、温度ヒューズの収納部の筒状の開口端部、若しくはその近傍に当該温度ヒューズの収納部の変形を防止するプラグプレートを設けたことを最も主要な特徴とするものである。
【0006】
また、本発明にかかるスプリンクラーヘッドは、温度ヒューズの収納部が円筒状であって、プラグプレートが円板状に形成されていることや、プラグプレートが孔開き円板状乃至リング状に形成されていることも特徴とするものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のスプリンクラーヘッドによれば、温度ヒューズの収納部の筒状の開口端部、若しくはその近傍に当該温度ヒューズの収納部の変形を防止するプラグプレートを設けることにより、震災等で天井板や崩落する部材がスプリンクラーヘッドに接触して温度ヒューズの収納部の開口する筒状の端部に当たった場合でも、当該開口部分が変形するのを防止することができる。
これにより、通常の火災での消火は勿論のこと、震災で火災が発生したときにも、即座に消火することができる高品質のスプリンクラーヘッドを提供することができる。
【0008】
また、温度ヒューズの収納部が円筒状であって、プラグプレートを円板状に形成したものでは、変形に対する強度を高くすることができ、スプリンクラーヘッドの耐久性を高めることができる利点がある。
【0009】
更に、温度ヒューズの収納部材が円筒状であって、プラグプレートを孔開き円板状乃至リング状に形成したものでは、当該中央の孔部分から弁体等の点検並びに調整を行うことができ、組み付け等の作業性を向上させることができる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図示した実施の最良の形態を図面に基づいて詳述する。
図1は、本発明に係るスプリンクラーヘッドの使用状態の概略図、図2は本発明のスプリンクラーヘッド1の縦断面図であって、図中符号1はスプリンクラーヘッドを全体的に示す。
このスプリンクラーヘッド1は、天井内に敷設された消火配水管2から分岐された枝管3の末端に取り付けられ、後述するように、スプリンクラーヘッド本体4の吐水口5部分に前記消火配水管2からの圧力水が供給されるように接続されている。
【0011】
また、このスプリンクラーヘッド1は、外周に接続用のねじ部6と六角形のレンチ係合部7が設けられた略円筒形に形成されたスプリンクラーヘッド本体4と、このスプリンクラーヘッド本体4内にあって、正常時にはスプリンクラーヘッド本体4内に形成された吐水口5の内周面に圧接して通水を阻止するバルブ(弁体)8と、このバルブ8の閉止状態を維持するようにその下側に設けられたトリガー機構9を備えた感熱作動部10と、この感熱作動部10のトリガー機構9部分を覆うようにスプリンクラーヘッド本体4の下側に取り付けられた略円筒形のフレーム11と、このフレーム11内に火災の発生でトリガー機構9が作動した時に下降して吊り下げ支持されるように収納された散水用のデフレクター12とからなる。
【0012】
上記感熱作動部10は、バルブ8の下面中心に設けられた保持用ねじ孔13に先端(図2においては上端)を螺合させたバルブピン14と、このバルブピン14の下面に当接するように配設された支持ピン15と、この支持ピン15に上方移動が不可に取り付けられた円盤状のスライダー16と、このスライダー16と向き合う上記支持ピン15に摺動可能に取り付けられたバランサー用プレート17と、これらを下方に脱落する方向、つまりに吐水口5を開口する方向に付勢した円錐コイルばね(開口付勢手段)18と、前記スライダー16とこれに対面するバランサー用プレート17およびフレーム11の下端内周部分に形成された段部19との間でせり合って平時にはこれらが脱落しないように保持する複数のボールからなる係止部材20と、支持ピン15の下端に取り付けられた鍔付き円筒形の保持部材(温度ヒューズ収納部)21と、この保持部材21の鍔部22上に載置された溶融金属からなるリング状の温度ヒューズ23と、温度ヒューズ23を介して支持ピン15に支持されるとともに保持部材21に摺動可能に取り付けられた感熱部材24とを備えて構成されている。
因みに、吐水口5に供給される消火配水管2からの圧力水の圧力も、バルブ8を開口する方向に付勢する開口付勢手段としても作用する。
【0013】
そして、上記スライダー16、バランサー用プレート17、円錐コイルばね18、フレーム11の下端内周部分に形成された段部19、係止部材20とで上記トリガー機構9が形成される。
上記バルブ8は、周囲にOリング25が装着された厚肉の円板状のものであり、スプリンクラーヘッド本体4の吐水口5に設けられた広径段部26内に嵌入することにより吐水口5を水密状に塞ぐようになっている。
また、感熱部材24は円板状の感熱部材27と筒状部28とをプレス等により一体に成形され、温度ヒューズ23上に位置する感熱部材27の筒状部28は、小径に絞られた上面が断熱部材29を介してバランサー用プレート17の下端と接している。
前記保持部材21は、上部の小径に絞られた部分に雌ねじ30が形成され、この雌ねじ30部分を支持ピン15の下端に螺合させた上でアクリル系の接着剤を用いて一体的に結合してある。
【0014】
その結果、バランサー用プレート17は、スライダー16との間に係止部材20、フレーム11の下端内周部分に形成された段部19を挟持した状態で断熱部材29、筒状部28、温度ヒューズ23及び保持部材21を介して支持ピン15に固定され、スライダー16で押圧された係止部材20は、段部19を乗り越えることができず、これにより感熱作動部10は、フレーム11内に保持されることから、最終的に鍔部22で下方への移動が不可能な状態に支持される。
そして、感熱部材24の筒状部28の中央部分の筒状開口部分31にはプラグプレート32が取り付けられている。
【0015】
このプラグプレート32は、中央に孔33が形成されたドーナツ状の円板に形成されており、このプラグプレート32は上記筒状開口部分31に圧入により嵌着してある。
プラグプレート32の中央に形成された孔33は、上記したように、保持部材21の雌ねじ30部分を支持ピン15の下端に螺合させた後、アクリル系の接着剤を塗布するときに使用することができ、至便なものとなる。
尚、図2上、プラグプレート32は保持部材21の鍔部22の下面との間に隙間を設けた状態で筒状開口部分31に嵌着するようにしてあるが、これを例えば図3に示すようにプラグプレート32と保持部材21の鍔部22の下面との間に隙間を設けない状態で筒状開口部分31に嵌着することもできる。
【0016】
上記のように構成された本発明のスプリンクラーヘッド1は、図1に示すように天井内に敷設された消火配水管2から分岐された枝管3の末端に取り付けられる。
そして、火災の発生時、本発明のスプリンクラーヘッドは従来のスプリンクラーヘッドと同様に消火作動するので、この消火作動を含めて地震等の震災が発生したときを例に説明する。
地震が発生すると、先ず、建物が大きく揺れる。
この揺れにより天井の構造物がずれたり、崩落したりして、感熱部24の感熱部材27や筒状部28に衝突して当該部分を変形させようとする。
こうして天井の構造物等が感熱部24の感熱部材27や筒状部28に衝突した時、筒状部28はその筒状開口部分31に嵌着されたプラグプレート32がその変形を防止する。
【0017】
次に、地震によりガスが漏れ、この漏れたガスに垂れ下がった電線のショートや金属同士の衝突等で発生する火花で引火し、火災発生する。
斯くして火災が発生し、感熱部材27が火災からの熱を受けると、この熱は、感熱部材27及びの中央部分に設けられた筒状部28へと伝わり、この筒状部28内に収納された温度ヒューズ23が熱せられる。
この時、感熱部材27が受けた熱は、直接あるいは温度ヒューズ23を介して保持部材21に伝わり、この保持部材21から支持ピン15へと伝わるが、質量の大きなバランサー用プレート17には断熱部材29によりその熱伝導(放熱)が阻止されるので、その熱伝導は最小限に抑えられることとなる。
【0018】
これにより、温度ヒューズ23は即座に溶融温度にまで昇温し、図4に示すように溶け出す。
溶け出した温度ヒューズ23は感熱部材24の筒状部28と保持部材21の鍔部22との間の隙間から漏れ出てプラグプレート32の中央の孔33から可能に滴下し、次第にその体積が減少する。
そして、この体積の減少に伴って、温度ヒューズ23で支持されていた感熱部24が次第に下降する。
【0019】
こうした温度ヒューズ23が溶解するとき、例えば図3に示すプラグプレート32と保持部材21の鍔部22の下面との間に隙間を設けない状態で筒状開口部分31に嵌着したものでは、感熱部材24の下降により鍔部22の下方に空間が生じるのでこの生じた空間に溶解した温度ヒューズ23が漏れ出た後、上述したようにプラグプレート32の中央の孔33から可能に滴下し、次第にその体積が減少するので、この場合も感熱部材24の下降が阻害されることはない。
この感熱部材24の下降に伴って、その上側に設けられていたバランサー用プレート17もその支持を失い、次第に下方へと移動する。
これにより、内側下方の支持を失ったトリガー機構9の係止部材20は、図5に示すように円錐コイルバネ18で付勢されたスライダー16の押圧力を受け、フレーム11の下端内周に設けられた段部19を乗り越える。
【0020】
係止部材20がフレーム11の下端内周に設けられた段部19を乗り越えると、これまでフレーム11内に保持されていた感熱作動部10は、図6に示すようにバネ5の弾性力及び吐水口5に供給される消火配水管2からの圧力水の圧力により一気にフレーム2から下方に押し出される。
このように感熱作動部10が押し出されると、吐水口5を塞いでいたバルブ8は、消火配水管内の圧力水の圧力で、下方に押し出されるので、図7に示すように、吐水口5が開放され、消火配水管内の圧力水が吐水口5から勢い良く下方に放射状に噴出して放水される。
【0021】
この放水時、バルブ8は、フレーム2内に収納されているデフレクター12の下端に引っ掛かり、このデフレクター12を下方に引き出すように作用する。
デフレクター12はバルブ8と共に、フレーム11内を滑落し、その上端がフレーム11の段部19に引っ掛かることにより、フレーム11から吊り下げられた状態で停止する。
こうしてし、フレーム11から吊り下げられた状態で停止したデフレクター12に保持されたバルブ8の上面に、吐出口5から噴出した圧力水流が勢い良く衝突することにより、この圧力水流を周囲に飛散させて放水し、消火が行われる。
【0022】
上述のように震災等、天井の構造物等が感熱部24の感熱部材27や筒状部28に衝突した時でも、筒状部28がその筒状開口部分31に嵌着されたプラグプレート32によりその変形を防止されるので、火災が発生しても即座に消火でき、大火になるのを防止することができる。このことは一般の火災発生や類焼時も同様に作用することはいうまでもないことである。
【0023】
尚、上記実施の形態では、プラグプレート32を、中央に孔33が形成されたドーナツ状の円板に形成し、このプラグプレート32を筒状開口部分31に圧入により嵌着するようにしてあるが、このプラグプレート32を図8に示すように、中央に孔のない円板状にすることも可能である。
こうした場合には、溶けて漏れ出た温度ヒューズ23の下方への落下乃至飛散を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は本発明のスプリンクラーヘッドの使用状態を示す概略図である。
【図2】は本発明のスプリンクラーヘッドの縦断面図である。
【図3】は本発明のスプリンクラーヘッドのプラグプレート及び温度ヒューズ部分の半縦断面図である。
【図4】は本発明のスプリンクラーヘッドの作動を説明する半縦断面図である。
【図5】は本発明のスプリンクラーヘッドの作動を説明する半縦断面図である。
【図6】は本発明のスプリンクラーヘッドの作動を説明する半縦断面図である。
【図7】は本発明のスプリンクラーヘッドの作動を説明する半縦断面図である。
【図8】は本発明のスプリンクラーヘッドのプラグプレートの変形例を示す半縦断面図である。
【符号の説明】
【0025】
1・・・スプリンクラーヘッド
4・・・スプリンクラーヘッド本体
5・・・吐水口
8・・・弁体
9・・・トリガー機構
10・・・感熱作動部
18・・・開口付勢手段(円錐コイルばね)
23・・・温度ヒューズ
28・・・筒状部
21・・・温度ヒューズの収納部(保持部材)
31・・・筒状開口部分(開口端部)
32・・・プラグプレート
33・・・孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
消火配水管に接続されるスプリンクラーヘッド本体と、該スプリンクラーヘッド本体内の吐水口を水圧乃至開口付勢手段の開弁力に抗して閉止するバルブと、所定の高温を検出したときに前記吐水口を開くように前記バルブを操作させる感熱作動部とを備え、スプリンクラーヘッド本体に固定され下方が開口する筒状部材と、当該筒状部材内を昇降可能に設けられた弁体と、収納部に収納され所定の高温を検出すると溶け出す温度ヒューズと、当該温度ヒューズが一定の体積にあるときはバルブが吐水口を閉止した状態に保ち、温度ヒューズが溶出して体積が減少した時に吐水口が開口するようにバルブを操作するトリガー機構を備えて感熱作動部を形成してなるスプリンクラーヘッドであって、温度ヒューズの収納部の筒状の開口端部、若しくはその近傍に当該温度ヒューズの収納部の変形を防止するプラグプレートを設けたことを特徴とするスプリンクラーヘッド。
【請求項2】
温度ヒューズの収納部が円筒状であって、プラグプレートが円板状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。
【請求項3】
温度ヒューズの収納部が円筒状であって、プラグプレートが孔開き円板状乃至リング状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラーヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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