説明

スプリンクラー用巻き出し管

【課題】配管作業の容易なスプリンクラー用巻き出し管を安価に製造する。
【解決手段】薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成するとともに、前記薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成して、スプリンクラー用巻き出し管1を構成する。また、前記薄肉金属管2の外側のポリエチレン層4は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンとすることが好ましい。さらに、前記薄肉金属管2の外側のポリエチレン層4の外表面に耐火塗料を塗布することも可能である。このように、スプリンクラー用巻き出し管1を三層構造としたことで、配管の際に必要な可撓性が得られるとともに、湾曲させた際に座屈することなく配管が可能となる。また、従来のフレキシブル管に比べて、フレキシブル部分を成形する工程が不要となった分、コストダウンが可能となるとともに、通水時の圧力損失も少なくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー用巻き出し管に関し、詳しくはヘッダーからスプリンクラーヘッドまでの配管の作業性を容易にすることのできるスプリンクラー用巻き出し管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、スプリンクラーの設置に際しては、設置対象とする区画まで配管された主管にヘッダーを設置し、そのヘッダーから複数のスプリンクラーヘッドまでを巻き出し管により分岐配管していた。従来、その巻き出し管には、配管を容易にするため、ステンレスや銅からなる金属製フレキシブル管が使用されていた。
その一例として、特許文献1に記載の「スプリンクラー巻き出し配管」があった。
これは、スプリンクラー巻き出し配管に用いる軟質銅管の施工時の末端の微調節のしやすさの改善と応力集中を緩和することを目的として、スプリンクラー給水用の枝管6とスプリンクラーヘッド9(取付管7を含む)との間を軟質銅管11でつなぐ巻き出し配管であって、前記軟質銅管の少なくとも一方の端部に蛇腹状の波付部分12,(13)を形成したスプリンクラー巻き出し配管である。
【0003】
【特許文献1】特開平08−257159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように金属製のフレキシブル管の場合は、製造工程において、蛇腹状のフレキシブル部分を成形する工程が必要であり、コストアップとなる問題があった。
また、フレキシブル管は通水時の圧力損失が大きいため、その分、送水用のポンプを大型化する必要があった。
そこで、本発明は、フレキシブル部分を有することなく配管に必要な可撓性を備えるとともに通水時の圧力損失が小さく、かつ配管時の作業性の良いスプリンクラー用巻き出し管を提案することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のスプリンクラー用巻き出し管は、薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成するとともに、前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成したことを特徴とする。
また、前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンとすることが好ましい。
さらに、前記薄肉金属管の外側ポリエチレン層の外表面に耐火塗料を塗布することも可能である。
【発明の効果】
【0006】
以上述べたように本発明によれば、薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成し、前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成した三層構造としたことで、配管の際に必要な可撓性が得られるとともに、湾曲させた際に座屈することなく配管が可能となり施工性が向上する。
また、従来のフレキシブル管に比べて、フレキシブル部分を成形する工程が不要となった分、コストダウンが可能となる。さらに、フレキシブル管に比較して通水時の圧力損失が小さいため、その分、送水用のポンプの小型化が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1は、スプリンクラー用巻き出し管の構造を示す部分断面図である。スプリンクラー用巻き出し管(以下、巻き出し管)1は、薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成し、薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成した構造をしている。これらの製造は押し出し成形により行われる。薄肉金属管2の材質はアルミニウム、銅、ステンレス、鋼およびそれらの合金を用いることが可能である。図示例の巻き出し管1は、外径20±1mm、肉厚2.25±0.5mmとした。
【0008】
巻き出し管1は、薄肉金属管2の内側に架橋ポリエチレン層3を形成し、薄肉金属管2の外側にポリエチレン層4を形成したことで、強度、耐蝕性等が増大する。特に、巻き出し管1を配管の際に湾曲させたときに、架橋ポリエチレン層3が薄肉金属管2をその内側から構造的に支えることで、薄肉金属管2が座屈することを効果的に防止する働きをする。
さらに、巻き出し管1は、従来使用されていたフレキシブル管に比較して通水時の圧力損失が小さいため、その分、送水用のポンプの小型化が可能となる。
【0009】
薄肉金属管2の外側のポリエチレン層4は、一般的なポリエチレンであってもよいが、難燃性、耐火性を向上させるため、フィラーを混入することが好ましい。フィラーとしては、難燃性、耐火性を増大するものとして、ガラス繊維、ガラスビーズ、タルクその他の無機フィラー、または有機フィラーを用いることが可能である。
【0010】
また、図示しないが、ポリエチレン層4の外表面に耐火塗料を塗布することが好ましい。
具体的には、例えば、主成分としてポリ燐酸アンモニウムを含む塗料を塗布することが可能である。ポリ燐酸アンモニウムを含む塗料を塗布した場合、火災発生の際、雰囲気温度が200〜300度になると発泡を開始し、最終的には25〜50倍程度に発泡し、良好な断熱効果を発揮する。
【0011】
さらに、巻き出し管1の内側が架橋ポリエチレン層3であり、また外側がポリエチレン層4であるため巻き出し管1の弾性が増し、その端部でメカニカル継手に接続する際、従来の金属管の場合に必要であったシール部品を省くことも可能となり、部品点数の削減、接続作業の工数の削減が可能となる。
通常、巻き出し管1の端部は、メカニカル継手に接続されるが、その接続部分はOリング、固定リング等の部材を用いて接続される。
【0012】
次に、上述した巻き出し管1の使用形態について説明する。
図2はスプリンクラーヘッドまわりの配管を示し、図3は図2の右側面図である。
図2において、上述した巻き出し管1は、図面左方の図示しないヘッダーに接続されており、その途中を、天井のスラブ11に植設されたアンカープラグ12に螺着された長ねじ13および支持金具14により吊り下げ支持されている。巻き出し管1の右端は、メカニカル継手15に接続され、メカニカル継手15の右端の雄ねじ部が、設置用金具16を挟圧してエルボウ17に螺合されている。設置用金具16は、スラブ11に植設されたアンカーボルト18にナット19により螺着されたL型の金具21の下端に、ボルト22とナット23により高さ調節自在に螺着されている。
【0013】
エルボウ17は両端に雌ねじが刻設されており、その下側端の雌ねじには、スプリンクラーヘッド24が螺合されている。スプリンクラーヘッド24の下端は、天井板25よりも下位に位置し、その周囲をヘッドカバー26により覆われている。
図示された実施形態では、巻き出し管1を使用したことで、スラブ11と天井板25の間の空間において、巻き出し管1を湾曲させながら所定の位置のスプリンクラーヘッド24までを容易に配管することが可能となり、施工性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係るスプリンクラー用巻き出し管の構造を示す部分断面図である。
【図2】スプリンクラーヘッドまわりの配管を示す外観図である。
【図3】図2の右側面図である。
【符号の説明】
【0015】
1 スプリンクラー用巻き出し管
2 薄肉金属管
3 架橋ポリエチレン層
4 ポリエチレン層
11 スラブ
12 アンカープラグ
13 長ねじ
14 支持金具
15 メカニカル継手
16 設置用金具
17 エルボウ
18 アンカーボルト
19 ナット
21 金具
22 ボルト
23 ナット
24 スプリンクラーヘッド
25 天井板
26 ヘッドカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄肉金属管の内側に架橋ポリエチレン層を形成するとともに、前記薄肉金属管の外側にポリエチレン層を形成したことを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。
【請求項2】
請求項1に記載のスプリンクラー用巻き出し管において、
前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層は難燃性を増大するフィラーを混入したポリエチレンよりなることを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。
【請求項3】
請求項1または2に記載のスプリンクラー用巻き出し管において、
前記薄肉金属管の外側のポリエチレン層の外表面に耐火塗料を塗布したことを特徴とするスプリンクラー用巻き出し管。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−262(P2010−262A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−162697(P2008−162697)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(592049863)株式会社防災企画 (4)
【Fターム(参考)】