説明

スプリンクラー装置及びスプリンクラー装置の固定方法

【課題】天井面に過剰に開口を形成することなく、既設の点検口を利用して設置可能としたスプリンクラー装置を提供すること。
【解決手段】天井パネルの下側からの作業によって当該天井パネルに設置されるスプリンクラー装置であって、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、このスプリンクラーヘッドに連通する配管部と、前記天井パネルに形成された点検口と、前記点検口を形成するための点検口枠に開閉自在に連結され、前記点検口を開閉する蓋体と、この蓋体に設けられ、前記スプリンクラーヘッドを臨ませるための開口と、前記点検口枠に保持され、前記スプリンクラーヘッドを取り付けた固定部材と、を具備することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリンクラー装置及びスプリンクラー装置の固定方法に関し、詳しくは、天井に設けられた点検口を利用して容易に設置されるスプリンクラー装置及びスプリンクラー装置の固定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、天井に設置されて、火災を検出すると自動的に散水するスプリンクラー装置が知られている。かかるスプリンクラー装置の一例として、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、スプリンクラーヘッドに水を供給するための配管部とを備えたものがある。かかるスプリンクラー装置を設置する場合、通常、配管部とスプリンクラーヘッドとを天井躯体から吊り具等によって吊り下げた後、天井パネルを取り付けていた。
【0003】
但し、これは新築の場合であって、既存の建築物に設置する場合は天井パネルをあらためて引き剥がす必要が生じるため、手間がかかりコストも増大してしまう。そこで、既存の建築物の天井パネルに開口を設けてスプリンクラー配管を行い、スプリンクラーヘッドを、天井パネルを支える野縁に固定する固定装置を用いたスプリンクラー装置の固定構造が提案された(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第4225367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、通常、天井裏に敷設した配管や配線のメンテナンスなどのために、天井には点検口が設けられており、スプリンクラー装置を設置する現場によっては点検口の設置が義務付けられていることもある。したがって、点検口の他にスプリンクラー装置を設置するための開口部をさらに形成するとなると、二重に開口を設けることになって作業性が悪くなるばかりではく、天井面の美観を損なうことも考えられる。
【0006】
本発明は、上記課題を解決し、天井面に過剰に開口を形成することなく、既設の点検口を利用して設置可能としたスプリンクラー装置及びスプリンクラー装置の固定方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明では、天井パネルの下側からの作業によって当該天井パネルに設置可能なスプリンクラー装置であって、水を噴射するスプリンクラーヘッドと、このスプリンクラーヘッドと配水管とを接続する接続部と、前記天井パネルに形成された点検口と、前記点検口を形成するための点検口枠に開閉自在に連結され、前記点検口を開閉する蓋体と、この蓋体に設けられ、前記スプリンクラーヘッドを臨ませるための開口と、前記点検口枠に保持され、前記接続部を取り付けた固定部材と、を具備することとした。
【0008】
したがって、かかる構成によれば、スプリンクラー装置を点検口の点検口枠を利用して設置することができ、スプリンクラー装置を設置するための開口を天井パネルに別途設ける必要がないため、作業が簡略化できる。また、天井に過剰に開口を形成して見栄えを損なうことがない。
【0009】
(2)また、本発明は、上記(1)のスプリンクラー装置において、前記固定部材は、少なくとも略板状の固定部材本体を備え、当該固定部材本体は、前記蓋体の前記開口の上方に配置されていることを特徴とする。
【0010】
したがって、かかる構成によれば、固定部材を点検口枠に取り付けた後は、固定部材本体にスプリンクラーヘッドや接続部などを簡単に取り付けることができ、その取り付け状態も極めて安定した状態とすることができる。
【0011】
(3)また、本発明は、上記(2)のスプリンクラー装置において、前記点検口枠は四角形状であって、前記固定部材は固定部材本体から成り、当該固定部材本体は、前記点検口枠の互いに直行する2辺に跨って取り付けられることを特徴とする。
【0012】
すなわち、かかる構成によれば、点検口の角部を使って固定部材本体のみを用いてスプリンクラーヘッドや接続部などを設置することができるため、より簡単に、点検口を利用したスプリンクラー装置の設置が可能となる。
【0013】
(4)また、本発明は、上記(3)のスプリンクラー装置において、前記固定部材本体は、前記点検口枠の直行する2辺それぞれの辺の中心よりも、当該2辺が直行する側に取り付けられていることを特徴とする。
【0014】
かかる構成によれば、固定部材本体を点検口の隅部に設置することができる。したがって、点検口を本来の目的で使用する際の邪魔にならないようにすることができる。
【0015】
(5)また、本発明は、上記(2)のスプリンクラー装置において、前記点検口枠は四角形状であって、前記固定部材は、前記点検口枠の対向する2辺に取り付けられるレール部を備え、前記固定部材本体は、当該レール部と、前記点検口枠の2辺と直行する他の辺に取り付けられることを特徴とする。
【0016】
したがって、かかる構成によれば、点検口枠の3辺を利用して固定することになり、点検口を利用して、より簡単に、かつ安定した状態でスプリンクラー装置を設置することができる。
【0017】
(6)また、本発明は、上記(5)のスプリンクラー装置において、前記レール部は、前記点検口枠の対向する2長辺に取り付けられ、前記他の辺は、前記点検口枠の一側短辺であり、前記レール部は、前記2長辺それぞれの辺の中心よりも、前記一側短辺側に取り付けられていることを特徴とする。
【0018】
したがって、かかる構成によれば、点検口内において一短辺側に偏った位置に固定部材を設置させることができ、点検口の作業有効空間を可及的に維持することができるため、点検口を本来の目的で使用する際の邪魔にならないようにすることができる。
【0019】
(7)また、本発明は、上記(5)又は(6)のスプリンクラー装置において、前記固定部材本体は、前記レール部と前記点検口枠の辺に沿って摺動して位置調節可能であることを特徴とする。
【0020】
したがって、かかる構成によれば、スプリンクラー装置の散水範囲を考慮して、固定部材本体を摺動させることによって、対向する点検口枠の2辺間の最適な位置から散水させることができる。
【0021】
(8)また、本発明は、上記(2)のスプリンクラー装置において、前記点検口枠は四角形状であって、前記固定部材は、前記点検口枠の対向する2辺の間に、当該2辺に沿って摺動して位置調節可能に取り付けられる一対のレール部を備え、前記固定部材本体は、前記一対のレール部の間に、当該レール部に沿って摺動して位置調節可能に架設されていることを特徴とする。
【0022】
したがって、かかる構成によっても、スプリンクラー装置の散水範囲を考慮して、固定部材本体を摺動させることによって、対向する点検口枠の2辺間の最適な位置から散水させることができる。
【0023】
(9)また、本発明は、天井パネルの下側からの作業によって当該天井パネルに設置可能なスプリンクラー装置の固定方法であって、前記天井パネルに形成されている点検口の下方から、接続部を前記天井パネルの裏側に差し入れ、前記接続部を配水管に接続する工程と、前記点検口の下方から、固定部材を前記天井パネルの裏側に差し入れ、前記固定部材を前記点検口を形成する点検口枠に固定する工程と、前記接続部を、前記固定部材に固定する工程と、前記点検口枠に開閉自在に連結され、前記点検口を開閉する蓋体に、水を噴射するスプリンクラーヘッドを臨ませるための開口を穿孔する工程と、前記スプリンクラーヘッドを前記接続部に接続する工程と、を有することを特徴とする。
【0024】
したがって、かかる方法によれば、スプリンクラー装置を点検口の点検口枠を利用して設置することができ、スプリンクラー装置を設置するための開口を天井パネルに別途設ける必要がないため、簡略な作業で、スプリンクラー装置を設置することができる。また、天井に過剰に開口を形成して見栄えを損なうことがない。
【発明の効果】
【0025】
本発明のスプリンクラー装置は、既設の建造物などに後付けする場合、既に形成されている点検口を利用しているため、スプリンクラー装置を設置するための開口を天井パネルに別途設ける必要がなく、特に、作業が簡略化できる。また、本発明のスプリンクラー装置の固定方法は、スプリンクラー装置を点検口の点検口枠を利用して設置することができ、スプリンクラー装置を設置するための開口を天井パネルに別途設ける必要がないため、簡略な作業で、スプリンクラー装置を設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】住宅用のスプリンクラー装置を示す概略図である。
【図2】スプリンクラー装置の正面図である。
【図3】同スプリンクラー装置の側面図である。
【図4】同スプリンクラー装置の分解斜視図である。
【図5】同スプリンクラー装置の斜視図である。
【図6】他の実施形態に係るスプリンクラー装置の斜視図である。
【図7】他の実施形態に係るスプリンクラー装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照して、本実施形態に係るスプリンクラー装置について具体的に説明する。
【0028】
図1(a)は既設の住宅に配設されたスプリンクラー装置とその配管を示している。図示するように、住宅11に既に取付けられている既設のスプリンクラー装置1Aは、主に天井パネル2の裏側に配設された配水管3に連通連結しており、配水管3は、可撓性を有する樹脂製ホースからなり、水道管12からの分岐管13に連通連結してトイレタンク14まで延びている。そして、この配水管3の中途に、接続部4を介してスプリンクラーヘッド5が連結されている。図中、符号15で示したものはスプリンクラー取付用開口であり、野縁16、16の間を利用して形成されている。なお、野縁16は、互いに平行に天井パネル2に沿って延びる棒状部材であって必要数が配設されているが、図1においてはスプリンクラー取付用開口15に隣接したものを除き省略している。
【0029】
こうして、例えばトイレの使用のたびに配水管3の中を水が流れ、スプリンクラー装置1Aが火災を感知したときには、スプリンクラーヘッド5から自動的に散水されるようになっている。
【0030】
また、図1において、符号6で示したものは、天井裏に敷設した上記配水管3やその他の配管、あるいは電気配線などのメンテナンスのために設けられている点検口である。点検口6には、住宅11の新築時に設けられたもののほかに、必要に応じて後から増設したものが含まれる場合もある。
【0031】
本実施形態に係るスプリンクラー装置1は、天井パネル2の下側からの作業によって当該天井パネル2に設置することができるように構成されており、例えば、図1(a)で示したような既設の住宅11に後付けする場合に極めて優れている。なお、スプリンクラー装置1は、その基本構成及び機能などは上記既設のスプリンクラー装置1Aと全く同じであり、同一構成要素については同一の符号を付して説明していく。
【0032】
すなわち、図1(b)に示すように、スプリンクラー装置1は、別途、スプリンクラー装置用の開口を設けることなく、既設の住宅11に既に備えられていた点検口6を利用して後付けされている。したがって、天井パネル2に余分な開口を形成して見栄えを損なうことがなく、しかも、すでに点検口6内部に作業空間が形成されているため、設置作業が極めて容易に行える。
【0033】
点検口6は、図2〜図4に示すように、天井パネル2に形成した四角(矩形)形状の開口周縁に点検口枠61を嵌着して構成されている。この点検口枠61は、固定具62により保持された外枠61aと、当該外枠61aに一端が枢支連結され、蓋体7の枠部となる内枠61bとから構成されている。符号63で示すものは、外枠61aに連接されて固定具62を嵌装したブラケットである。
【0034】
なお、天井パネル2は、例えば、石膏ボード、コンパネなどで作られた厚さが約9〜25mmの板材であり、野縁16などの支持材に木ネジ、ビス等によって固定されている。また、本実施形態では、蓋体7の内枠61bを除く板体72についても、天井パネル2と同一の板材を使用している。なお、図4において、符号73で示すものは、板体72を内枠61bに連結するためのアングル状に形成された連結金具である。
【0035】
本実施形態に係るスプリンクラー装置1は、図2〜図5に示すように、先端にノズル部51を有し、水を噴射するスプリンクラーヘッド5と、このスプリンクラーヘッド5と配水管3とを接続するT字状に形成された接続部4と、天井パネル2に形成された前述の点検口6と、この点検口6を形成するための矩形形状の点検口枠61に開閉自在に連結され、前記点検口6を開閉する蓋体7と、この蓋体7に設けられ、ノズル部51を嵌装してスプリンクラーヘッド5を臨ませるための開口71と、点検口枠61に保持され、接続部4を取り付けた固定部材8とを具備している。
【0036】
すなわち、スプリンクラー装置1は、水を噴射するスプリンクラーヘッド5を備え、天井パネル2の下側からの作業によって当該天井パネル2に設置可能に構成されており、天井パネル2に予め設けられた点検口6の蓋体7に所定の開口71を設けるとともに、蓋体7を開閉自在に連結した点検口枠61に所定の固定部材8を取付け、前記開口71からスプリンクラーヘッド5を臨ませた状態で、固定部材8に接続部4を取り付けている。
【0037】
固定部材8は、少なくとも略板状の固定部材本体81を備えており、当該固定部材本体81は、点検口6の蓋体7に形成した開口71の上方に配置されている。また、本実施形態では、固定部材8として、さらに、点検口枠61の対向する2辺に取り付けられるレール部82を備えている。そして、固定部材本体81を、当該レール部82と、点検口枠61の前記2辺と直行する他の辺に取り付けている。なお、固定部材8の材料としては、例えば、アルミニウム又はステンレスを好適に用いることができる。
【0038】
すなわち、図示するように、固定部材8は、点検口枠61の外枠61aのうち、配水管3に直行する側の2辺間に、矩形断面の棒状部材であるレール部82を架設している。なお、レール部82は中実体でもよいが、本実施形態では、これを矩形パイプ状にして軽量化を図っている。
【0039】
そして、このレール部82の両端部を、図4に示す取付ブラケット83を介して外枠61aに連結固定している。取付ブラケット83は、先端にレール部82を左右から抱持するように立設した係合爪83a,83aを形成するとともに、基端部に下方へ折曲した外枠係止片83bを形成し、これにビス84を螺合可能としている。さらに、先端部と基端部とを連結した水平板部83cには、外枠係止片83bと協働して外枠61aを挟持するように下方への切り起こし片83d(図2参照)が形成されている。こうして、外枠61aにビス84で連結固定した取付ブラケット83を介してレール部82が点検口枠61に保持されることになる。
【0040】
また、板状の固定部材本体81は、水平部86の略中央に円孔86aを形成して接続部4を取り付けており(図4参照)、水平部86の一側縁の中央部に点検口枠61をそれぞれ下方へ折曲して形成し、内側係止部81aと左右外側係止片81b,81bにより外枠61aの1辺を挟持するように係合させている。そして、左右外側係止片81b,81bにビス85を取り付け、このビス85で外枠61aにしっかりと連結するようにしている。
【0041】
他方、固定部材本体81の他側縁には下方からレール部82を支持するように屈曲形成した中央係止片81cと、これを挟む左右位置に、レール部82を上方から押さえるように屈曲形成した左右係止片81d、81dを設けている。こうして、中央係止片81cと左右係止片81d、81dとにより、レール部82を上下からしっかりと抱持するようにしている。
【0042】
また、固定部材本体81の水平部86の幅としては、少なくとも円孔86aが形成できるとともに、不必要な撓みが生じない程度であればよい。そこで、水平部86の幅を可及的に狭幅とすれば、レール部82を一側に寄せて取付けることができる。かかる構成とすることにより、点検口6を本来の目的で使用する際の邪魔にならないようにすることができる。
【0043】
ところで、本実施形態では、点検口6を略正方形としているが、長辺と短辺からなる矩形形状の点検口6を利用する場合もある。
【0044】
その場合、レール部82は、点検口枠61の対向する2長辺に取り付け、この2長辺に直行する他の辺としては、点検口枠61の一側短辺とすることができる。こうすれば、レール部82は、2長辺それぞれの辺の中心よりも、前記一側短辺側に取り付けられることになり、点検口6内において一短辺側に偏った位置にスプリンクラー本体を設置することになる。したがって、点検口6の作業有効空間を可及的に維持することができるため、点検口6を本来の目的で使用する際の邪魔にならないようにすることができる。
【0045】
また、スプリンクラー本体ともなる接続部4とスプリンクラーヘッド5とについて説明すると、接続部4は、好ましくは、停滞水を防止できる継手から構成されており、上下に延びる立管部41と、この立管部41の上部から側方に延びる2つの側方管部42とから略T字状に形成されている。なお、本実施形態では、接続部4はT字状に形成されているが、Y字状の接続部を用いても、何ら問題はない。
【0046】
立管部41は、固定部材本体81の水平部86と当接する段付部41aの下方に、さらに延長部41bが伸延しており、この延長部41bに、ノズル部51を備えて散水機構を有するスプリンクラーヘッド5がねじ込まれている。
【0047】
ここで、既存の点検口6を利用したスプリンクラー装置1の実際の設置方法について簡単に説明する。
【0048】
天井パネル2に形成されている点検口6の下方から、天井パネル2の裏側にレール部82を差し入れ、点検口枠61の対向する一方の辺から他方の辺に延びるように架け渡して仮固定する。
【0049】
次いで、スプリンクラー装置1の本体部を構成する接続部4を、スプリンクラー装置1の散水範囲を考慮しながら天井パネル2の裏側で樹脂製ホースからなる配水管3に接続する。このとき、配水管3は、ある程度の可撓性を有し、また、点検口6の内部空間にはレール部82が配置されているだけなので、接続部4の接続作業は容易に行える。
【0050】
次に、固定部材本体81を天井パネル2の裏側に差し入れ、点検口枠61の外枠61aとレール部82との間に橋渡し状態に仮固定する。すなわち、このとき、固定部材本体81は、レール部82と点検口枠61の外枠61aの一辺に沿って摺動可能であるため、位置調節が行えるようになっている。
【0051】
さらに、接続部4を、固定部材本体81の水平部86に形成された円孔86aに挿通して仮固定する。すなわち、接続部4の延長部41bを、位置調整して適宜位置に配置した固定部材本体81の円孔86aに通し、ナットなどの緊締具を用いて固定部材本体81に軽く連結して仮止めするのである。したがって、この状態では、接続部4は固定部材本体81に対して回転可能となっている。
【0052】
すなわち、配水管3は、ある程度の可撓性があるが、長さが決まっているため、接続部4の位置が変化すると配水管3のホースに作用する力が変化する。本実施形態では、その際にホースにはたらく力が釣り合うように、仮止め状態では接続部4が固定部材本体81に対して回転するため、配水管3に不釣合いな力がはたらいた状態で接続部4を固定部材本体81に固定することが防止される。
【0053】
次に、レール部82及び固定部材本体81の位置を最終的に調整し、ビス84,85により固定するとともに、接続部4についても固定部材本体81に固定する。そして、スプリンクラーヘッド5を接続部4に形成されている雌ネジ部にねじ込み固定する。
【0054】
これにより、スプリンクラーヘッド5の位置が決まるので、その位置に合わせ、当該スプリンクラーヘッド5を臨ませる開口71を所定の工具を用いて蓋体7に穿孔する。
【0055】
このように、本実施形態では、固定部材本体81は、レール部82と点検口枠61の辺に沿って摺動して位置調節することができるため、スプリンクラー装置1の散水範囲を考慮して、固定部材本体81を摺動させることによって、対向する点検口枠の2辺間の最適な位置にスプリンクラーヘッド5を配置でき、それに合わせて蓋体7に開口71を形成することにより、点検口6の最適な位置から散水させることができる。
【0056】
また、必要に応じて、蓋体7の開口71を覆うようにメッシュ状のカバー9を取付けることができる(図2を参照)。かかるカバー9を設けることにより、室内などからスプリンクラーヘッド5が見苦しく剥き出し状態にならず、見栄えを損なうことがない。
【0057】
なお、スプリンクラー装置1の設置は、必ずしも上述してきた手順には限定されず、適宜、手順を前後させても構わない。いかなる手順で設置するにしても、先端にノズル部51を有し、水を噴射するスプリンクラーヘッド5と、このスプリンクラーヘッド5と配水管3とを接続するT字状に形成された接続部4と、天井パネル2に形成された前述の点検口6と、この点検口6を形成するための矩形形状の点検口枠61に開閉自在に連結され、前記点検口6を開閉する蓋体7と、この蓋体7に設けられ、ノズル部51を嵌装してスプリンクラーヘッド5を臨ませるための開口71と、点検口枠61に保持され、接続部4を取り付けた固定部材8とを具備したスプリンクラー装置1を、天井パネル2の下側からの作業によって、点検口枠61に固定部材8を取付け、蓋体7の開口71からスプリンクラーヘッド5を臨ませた状態で、固定部材8にスプリンクラーヘッド5を取り付けて天井パネル2に設置できればよく、そして、その結果、所望する散水が得られればよいのである。
【0058】
すなわち、本実施形態に係るスプリンクラー装置の固定方法としては、天井パネル2に形成されている点検口6の下方から、接続部4を天井パネル2の裏側に差し入れ、接続部4を配水管3に接続する工程と、点検口6の下方から、固定部材8を天井パネル2の裏側に差し入れ、点検口6を形成する点検口枠61に固定する工程と、接続部4を、固定部材8に固定する工程と、点検口枠61に開閉自在に連結され、点検口6を開閉する蓋体7に、水を噴射するスプリンクラーヘッド5を臨ませるための開口71を穿孔する工程と、スプリンクラーヘッド5を接続部4に接続する工程とを有する固定方法であればよい。
【0059】
次に、図6及び図7を参照して、他の実施形態に係るスプリンクラー装置1B,1Cについて説明する。なお、上述してきた実施形態と同一の構成要素については同一の符号を付して、その説明は省略する。
【0060】
他の実施形態に係るスプリンクラー装置1B,1Cは、いずれも先の実施形態に係るスプリンクラー装置1に対し、固定部材8の構成を異にしている。
【0061】
すなわち、図6に示すスプリンクラー装置1Bは、固定部材8が平面視略三角形状としたコーナ用固定部材本体81Aのみから形成されている。そして、このコーナ用固定部材本体81Aは、点検口枠61の互いに直行する2辺に跨って取り付けられている。
【0062】
コーナ用固定部材本体81Aは、略直角二等辺三角形の形状をしており、同長さとした二辺に、点検口枠61の外枠61aを挟持するようにして当該外枠61aに係合する係合部81eが形成されている。実質的には、先の実施形態における内側係止部81aと左右外側係止片81b,81b(図3〜図5を参照)と同様な構成として、これもビス85により外枠61に連結固定するようにしている。
【0063】
このように、本実施形態によれば、レール部82などを用いることなく、点検口枠61の外枠61aのうち、互いに直行して角部を形成する箇所に配設したコーナ用固定部材本体81Aのみで接続部4やスプリンクラーヘッド5を保持することができる。したがって、点検口6を利用したスプリンクラー装置1Bの設置がより簡単に行える。
【0064】
また、コーナ用固定部材本体81Aは、点検口枠61の直行する2辺それぞれの辺の中心よりも、当該2辺が直行する側に取り付けられている。したがって、コーナ用固定部材本体81Aが確実に点検口6の隅部に設置されることとなり、点検口6を本来の目的で使用する際に、コーナ用固定部材本体81Aやこれに取り付けられる接続部4やスプリンクラーヘッド5が邪魔になることを可及的に防止することができる。
【0065】
また、図7に示すスプリンクラー装置1Cは、固定部材8が、点検口枠61の対向する2辺の間に、当該2辺に沿って摺動して位置調節可能に取り付けられる一対のレール部82,82を備えており、接続部4やスプリンクラーヘッド5を取り付ける固定部材本体81Bは、前記一対のレール部82,82の間に、当該レール部82.82に沿って摺動して位置調節可能に架設されている。
【0066】
すなわち、図2〜図5を用いて説明した先の実施形態におけるレール部82を2本用いており、その2本のレール部82,82間に固定部材本体81Bを取り付けている。
【0067】
かかる構成によっても、スプリンクラー装置1Cの散水範囲を考慮して、固定部材本体81Bを摺動させることによって、対向する点検口枠61の2辺間の最適な位置から散水することができる。
【0068】
本実施形態に係る固定部材本体81Bは、図2〜図5を用いて説明した先の実施形態における固定部材本体81とは異なり、点検口枠61には係合することなく、2本のレール部82,82に係合して取り付けられるため、図7に示すように、レール部82を上下方向から抱持するように折曲形成された下側左右係止片81f,81fと上側係止片81gとが設けられており、上側係止片81gにビス87を挿通して固定部材本体81Bとレール部82とを連結固定している。
【0069】
以上、実施形態を通して本発明を説明してきたが、本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。特に、固定部材本体81などの形状などは、適宜設計可能である。
【符号の説明】
【0070】
1 スプリンクラー装置
2 天井パネル
3 配水管
4 接続部
5 スプリンクラーヘッド
6 点検口
7 蓋体
8 固定部材
71 開口
81 固定部材本体
82 レール部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井パネルの下側からの作業によって当該天井パネルに設置可能なスプリンクラー装置であって、
水を噴射するスプリンクラーヘッドと、
このスプリンクラーヘッドと配水管とを接続する接続部と、
前記天井パネルに形成された点検口と、
前記点検口を形成するための点検口枠に開閉自在に連結され、前記点検口を開閉する蓋体と、
この蓋体に設けられ、前記スプリンクラーヘッドを臨ませるための開口と、
前記点検口枠に保持され、前記接続部を取り付けた固定部材と、
を具備することを特徴とするスプリンクラー装置。
【請求項2】
前記固定部材は、少なくとも略板状の固定部材本体を備え、当該固定部材本体は、前記蓋体の前記開口の上方に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のスプリンクラー装置。
【請求項3】
前記点検口枠は四角形状であって、
前記固定部材は固定部材本体から成り、当該固定部材本体は、前記点検口枠の互いに直行する2辺に跨って取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラー装置。
【請求項4】
前記固定部材本体は、
前記点検口枠の直行する2辺それぞれの辺の中心よりも、当該2辺が直行する側に取り付けられていることを特徴とする請求項3に記載のスプリンクラー装置。
【請求項5】
前記点検口枠は四角形状であって、
前記固定部材は、
前記点検口枠の対向する2辺に取り付けられるレール部を備え、
前記固定部材本体は、当該レール部と、前記点検口枠の2辺と直行する他の辺に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラー装置。
【請求項6】
前記レール部は、前記点検口枠の対向する2長辺に取り付けられ、
前記他の辺は、前記点検口枠の一側短辺であり、
前記レール部は、前記2長辺それぞれの辺の中心よりも、前記一側短辺側に取り付けられていることを特徴とする請求項5に記載のスプリンクラー装置。
【請求項7】
前記固定部材本体は、前記レール部と前記点検口枠の辺に沿って摺動して位置調節可能としたことを特徴とする請求項5又は6に記載のスプリンクラー装置。
【請求項8】
前記点検口枠は四角形状であって、
前記固定部材は、
前記点検口枠の対向する2辺の間に、当該2辺に沿って摺動して位置調節可能に取り付けられる一対のレール部を備え、前記固定部材本体は、前記一対のレール部の間に、当該レール部に沿って摺動して位置調節可能に架設されていることを特徴とする請求項2に記載のスプリンクラー装置。
【請求項9】
天井パネルの下側からの作業によって当該天井パネルに設置可能なスプリンクラー装置の固定方法であって、
前記天井パネルに形成されている点検口の下方から、接続部を前記天井パネルの裏側に差し入れ、前記接続部を配水管に接続する工程と、
前記点検口の下方から、固定部材を前記天井パネルの裏側に差し入れ、前記固定部材を前記点検口を形成する点検口枠に固定する工程と、
前記接続部を、前記固定部材に固定する工程と、
前記点検口枠に開閉自在に連結され、前記点検口を開閉する蓋体に、水を噴射するスプリンクラーヘッドを臨ませるための開口を穿孔する工程と、
前記スプリンクラーヘッドを前記接続部に接続する工程と、
を有することを特徴とするスプリンクラー装置の固定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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