説明

スプリンクラ消火設備

【課題】スプリンクラ消火設備の配管内の充水状態を維持しながら凍結を防止できる様にする。
【解決手段】スプリンクラヘッド5と同じ防護区域Dに設置された温度センサ18と、主配管3の末端に設けられた常時閉の開閉弁22と、前記温度センサにより検知された温度が設定温度以下になるとき、前記開閉弁を開放させ、前記主配管内にある水を循環させる消火水循環制御手段24と、前記主配管3から分岐した枝管7の末端に設けられたアキュムレータ40と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スプリンクラ消火設備に関するものであり、特に、寒冷地に設置される湿式のスプリンクラ消火設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常の湿式スプリンクラ消火設備の配管内には、水が充填されている。このため、寒冷地においては、凍結により配管の破損事故が発生する恐れがあるので、該配管内の水が凍結しないように、凍結を防止する手段を講じる必要がある。
そこで、この対策として、一般的には、寒冷地においては、配管内を充水しない乾式のスプリンクラ消火設備を使用することが多い(第1の従来例)。
【0003】
また、それ以外にも、次の様なスプリンクラ消火設備が採用されている(例えば、特許文献1、参照)。即ち、
スプリンクラヘッドの近傍に温度センサを配置し、温度が凍結防止設定温度、例えば、−5℃以下になったら、排水弁を開放して、配管内に充填されている水を排出して、湿式状態から乾式状態にするスプリンクラ消火設備(第2の従来例)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−224238号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記第1の従来例では、火災検出後に配管内への給水が開始されるので、該配管の枝管に設けられているスプリンクラヘッドに消火水が到達するまでに時間がかかる。そのため、前記スプリンクラヘッドから放水が開始されるまでに時間がかかってしまい、それを防ぐために、流水検知装置の台数を増やし、一系統当たりの管内容積を減らさなければならない。
【0006】
又、第2の従来例においては、配管内にある水を排出して乾式状態にするので、この乾式状態の時に、火災が生じると、スプリンクラヘッドから水をすぐに放出することができなくなってしまう。そのため、火災初期の段階で迅速に消火を行うことは困難となる。
【0007】
又、温度が設定値である−5℃近辺を上下動する場合には、頻繁に、水を配管から排出したり充填したりする制御を行なわなければならなくなる。
【0008】
この発明は、上記事情に鑑み、配管内の充水状態を維持しながら凍結を防止できる様にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、流水検知装置の二次側に設けられた主配管と、該主配管から分岐して設けられ、スプリンクラヘッドが取り付けられた枝管と、前記流水検知装置の一次側に設けられた加圧送水装置とを有し、前記主配管および枝管内が充水されたスプリンクラ消火設備において、前記スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置された温度センサと、前記主配管の末端に設けられた常時閉の開閉弁と、前記温度センサにより検知された温度が設定温度以下になるとき、前記開閉弁を開放させ、前記主配管内にある水を循環させる消火水循環制御手段と、を備えていることを特徴とする。
【0010】
この発明の前記消火水循環制御手段は、前記主配管に基端部に接続された充填配管と、前記主配管の前記開閉弁の二次側に設けられた排出配管と、前記充填配管に水を供給し、かつ、前記排出配管から排出された水を蓄える循環用水源と、を有することを特徴とする。
【0011】
この発明は、前記循環用水源内の水を温める加熱手段を設けたことを特徴とする。この発明は、前記枝管の末端に、気体が封入されたアキュムレータを設けたことを特徴とする
【発明の効果】
【0012】
この発明は、前記スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置された温度センサと、前記主配管の末端に設けられた常時閉の開閉弁と、前記温度センサにより検知された温度が設定温度以下になると、前記開閉弁を開放させ、前記主配管内にある水を循環させる消火水循環制御手段と、を備えているので、前記温度センサにより検知された温度が設定温度以下になるとき、前記開閉弁を開放させ、前記主配管内にある水を循環させる。そのため、主配管内に流水が発生するので、該配管内の水の凍結を防止することができる。
【0013】
又、前記主配管及び枝管内には、常時充水されているので、スプリンクラヘッドが開放すると、すぐに放水を開始することができる。
【0014】
この発明の前記消火水循環制御手段は、前記主配管に基端部に接続された、充填配管と、前記主配管の前記開閉弁の二次側に設けられた排出配管と、前記充填配管に水を供給し、かつ、前記排出管から排出された水を蓄える循環用水源と、を備えているので、消火水を有効に利用することができる。
【0015】
この発明は、前記循環用水源内の水を温める加熱手段を備えているので、主配管内を水が循環する際、分岐された枝管内にある水が温められる。そのため、前記枝管及び枝管内の水が凍結するのを、確実に、抑えることができる。
【0016】
この発明は、前記枝管の末端に、気体が封入されたアキュムレータを備えているので、消火水循環制御手段を停止させると、該アキュムレータ内に入った水が圧縮された気体により枝管内に押し出される。そのため、該枝管内には、配管の中央で接続された主配管側へ流れる流水が発生するので、主配管内の水だけでなく、枝管内の水も凍結するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態を正面図である。
【図2】フローを示す図である。
【図3】本発明の第2の実施形態を正面図である。
【図4】フローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の第1の実施形態を図1、図2により説明する。
ビルなどの火災から保護されるべき区域、即ち、防護区域Dには、湿式のスプリンクラ消火設備Sが設けられている。このスプリンクラ消火設備Sは、流水検知装置1の二次側に設けられた主配管3と、該主配管3の分岐部3aから分岐して設けられ、スプリンクラヘッド5が取り付けられた枝管7と、前記流水検知装置1の一次側に設けられた加圧送水装置10と、を備えている。
【0019】
前記流水検知装置1は、流水検知装置を通って主配管3へ給水が開始されると、流水を検知し流水信号を発する。
前記スプリンクラヘッド5は、閉鎖型スプリンクラヘッドであり、常時閉の状態が維持され、火災時に開放されて放水を行う。このスプリンクラヘッド5は、各枝管7に間隔をおいて複数個配設されている。
【0020】
前記枝管7は、前記主配管3に間隔をおいて複数本並列に配設されている。前記加圧送水装置10は、消火水を貯留する主水槽14と、該主水槽14内の水Wを主配管3に圧送する主ポンプ16と、を備えている。
【0021】
前記スプリンクラヘッド5と同じ防護区域Dには、温度センサ18が設けられている。この温度センサ18は、主配管3及び枝管7近傍の温度を検出するもので、配置位置、設置個数、温度センサの種類等は、必要に応じて適宜選択される。前記温度センサ18の検出出力は、制御盤20に入力される。
【0022】
前記主配管3の末端には、常時閉の開閉弁22が設けられているが、この開閉弁22として、例えば、モータMにより駆動する電動弁が用いられる。
【0023】
この消火設備Sには、前記温度センサ18により検出された温度が、水が凍結する温度である、第1の設定温度、例えば、−5℃、以下になるとき、前記開閉弁2を開放させ、前記主配管3内にある水を循環させる消火水循環制御手段24が設けられている。
【0024】
この制御手段24は、前記主配管3の基端側に接続された充填配管26と、該主配管3の前記開閉弁22の二次側に設けられた排出配管28と、前記充填配管26に消火水を供給し、かつ、前記排出配管28から排出された水W1を蓄える循環用水源30と、を備えている。
【0025】
前記充填配管26には、圧力センサ32が設けられ、この圧力センサ32の検出出力は、前記制御盤20に入力される。この充填配管26の下端は、補助ポンプ33を介して循環用水源である補助水槽30に連通している。前記補助ポンプ33は、前記制御盤20に接続されている。前記補助水槽30の側部には、加熱手段であるヒータ31が設けられ、又、その底部は、接続管30aを介して主水槽14の底部に連通している。なお、前記補助水槽30に対する給水は、前記主水槽14から行う代わりに、該主水槽14とは別系列の水源から行ってもよい。
【0026】
次に、本実施形態の作動を図2に基いて説明する。
温度センサ18は、防護区域Dの温度を検出し、制御盤20に出力している。前記温度センサ18が第1の設定温度、例えば、−5℃、以下を検知すると(S1)、前記制御盤20は、モータMを駆動させ開閉弁22を開放させると共に、補助ポンプ33を始動させる(S2)。
【0027】
これにより、補助水槽30内の水W1は、充填配管26を経由して主配管3へ供給されるとともに、該主配管3内にある水は、末端の開閉弁22から排出され、排出配管28を経由して補助水槽30に戻される。そのため、前記主配管3内の水W1が循環するようになるので、主配管3内の水は、凍結することがない。
【0028】
前記制御盤20は、前記温度センサ18が、前記第1の温度より高い、第2の設定温度、例えば、−3℃、以上を検知すると(S3)、開閉弁(電動弁)22を閉止させる(S4)。更に、前記制御盤20は、圧力センサ32が監視圧力設定値、例えば、0.5MPaになると(S5)、制御盤20は、補助ポンプ33を停止させる(S6)。
【0029】
なお、補助水槽30にはヒータ31が設けられているが、このヒータ31は、補助ポンプ33の始動と同時に駆動され、該水槽30内の水W1は温められる。そのため、主配管3内を水W1が循環する際、分岐された枝管7内にある水が温められることになるので、前記枝管7内の水が凍結するのを抑えることができる。
【0030】
この発明の第2の実施形態を図3、図4により説明するが、図1、図2と同一図面符号は、その名称も機能も同一である。
この実施形態と第1の実施形態との相違点は、枝管7にアキュムレータ40を設けたことである。
【0031】
前記アキュムレータ40は、枝管7の末端に配設されている。前記アキュムレータ40の本体内は、図示しないブラダにより液体室と気体室とに仕切られ、前記気体室は、不活性ガスなどの気体により所定圧となっており、又、前記液体室は、前記枝管7に連通している。アキュムレータ40は、通常時の監視圧力では、気体室に余裕があり、圧力が高まると、気体室内が圧縮され、その分、液体室に水が入るのである。
【0032】
次に、本実施形態の作動を図4に基いて説明する。
温度センサ18は、防護区域Dの温度を検出し、制御盤20に出力している。前記温度センサ18が第1の設定温度、例えば、−5℃、以下を検知すると(S1)、補助ポンプ33を始動させる(S2)。
【0033】
これにより、補助水槽30内の水は、充填配管26を経由して主配管3へと供給されるとともに、該主配管3内にある水は、分岐部3aから枝管7の末端側に流れ、アキュムレータ40内に流入してブラダを押圧するので、気体室内のガスが圧縮される。そのため、該気体室の体積は、小さくなるが、前記液体室の体積は大きくなるので、水W1を溜めることができる。
【0034】
通常時の配管内の監視圧力(0.5MPa)が上昇して、圧力センサ32が第1の設定値、例えば、0.7MPa、以上を検出すると(S3)、制御盤20は、補助ポンプ33を停止させ(S4)、モータMを駆動させて開放弁22を開放させる(S5)。
【0035】
そうすると、前記主配管3内の水は、前記開閉弁22から排出され、排出配管28を経由して補助水槽30に戻され、前記主配管3内の水が循環するようになる。この時、アキュムレータ40内に蓄積されていた水が、圧縮された気体室内のガスにより、吐き出されて枝管7内に流れ込み、分岐部3aに向って流れる。なお、充水配管26には、逆止弁があるので、該充水配管26側には、水は流れない。
【0036】
そのため、アキュムレータ40に蓄圧する際には、分岐部3aからアキュムレータ40に向う水流が発生し、又、排圧の際には、アキュムレータ40から分岐部3aに向う水流が発生するため、前記枝管7内の水は往復して流れて十分に動くので、確実に枝管7の水Wの凍結を防止することができる。
【0037】
圧力監視をしている圧力スイッチ32が、第2の設定値、例えば、0.5MPaまで低下したことを検知すると(S6)、制御盤20は、開閉弁22を閉止させ(S7)、主配管3内を設定監視圧力に戻す。
【0038】
前記制御盤20は、温度センサ18の検出温度が第2の設定温度、例えば、−3℃以上、に到達したか否かを判断し、それに到達している場合(Y)には、終了するが、まだ到達していない場合(N)には、前記最初のステップ(S1)に戻り、循環制御の動作を繰り返す。
【符号の説明】
【0039】
1 流水検知装置
3 主配管
5 閉鎖型スプリンクラヘッド
7 枝管
10 加圧送水装置
14 主水槽
18 温度センサ
20 制御盤
22 開閉弁
24 流水循環制御手段
26 充填配管
28 排出配管
30 補助水槽
31 ヒータ
40 アキュムレータ
D 防護区域
S スプリンクラ消火設備

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流水検知装置の二次側に設けられた主配管と、該主配管から分岐して設けられ、スプリンクラヘッドが取り付けられた枝管と、前記流水検知装置の一次側に設けられた加圧送水装置とを有し、前記主配管および前記枝管内が充水されたスプリンクラ消火設備において、
前記スプリンクラヘッドと同じ防護区域に設置された温度センサと、
前記主配管の末端に設けられた常時閉の開閉弁と、
前記温度センサにより検知された温度が設定温度以下になるとき、前記開閉弁を開放させ、前記主配管内にある水を循環させる消火水循環制御手段と、
を備えていることを特徴とするスプリンクラ消火設備。
【請求項2】
前記消火水循環制御手段は、前記主配管の基端部に接続された充填配管と、
前記主配管の前記開閉弁の二次側に設けられた排出配管と、
前記充填配管に水を供給し、かつ、前記排出配管から排出された水を蓄える循環用水源と、
を有することを特徴とする請求項1記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項3】
前記循環用水源内の水を温める加熱手段を設けたことを特徴とする請求項2記載のスプリンクラ消火設備。
【請求項4】
前記枝管の末端に、気体が封入されたアキュムレータを設けたことを特徴とする請求項1、2、又は、3記載のスプリンクラ消火設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−158286(P2010−158286A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−773(P2009−773)
【出願日】平成21年1月6日(2009.1.6)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】