説明

スプリングヤーン

【課題】高次加工して、衣服などに使用する際、フラットな表面感、ストレッチ性に優れた布帛を得られるスプリングヤーンを提供する。
【解決手段】同一方向に下ヨリを施されたポリエステル系複合繊維が複数本引き揃えられ、下ヨリと反対方向に合撚された構造を持つ糸条形態を有し、前記ポリエステル系複合繊維は、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるスプリングヤーンとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、同一方向に下ヨリを施されたポリエステル系複合繊維が複数本引き揃えられ、下ヨリと反対方向に合撚された構造を持つ糸条形態を有するスプリングヤーンに関し、ストレッチ性に優れた布帛の作製に好適なスプリングヤーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、優れた伸縮性を有するポリエステル繊維として、ポリトリメチレンテレフタレートが注目され、ストレッチを要する布帛に好んで使用されるようになってきている。ポリトリメチレンテレフタレートが有する伸縮性をさらに増幅させるため、仮ヨリや複合紡糸などに関する提案も多々されている(特許文献1、2参照)。さらには、ポリトリメチレンテレフタレートを含む複合繊維に弛緩熱処理を施し、ヘリカルクリンプを顕在化させ、フラットな表面感、優れたストレッチを有する布帛を得られる顕在捲縮糸に関する提案もある(特許文献3参照)。しかし、これら提案による糸では、一応のストレッチ性を得ることができるが、消費者の高まる要求に十分に答えることができなくなってきた。
【特許文献1】特開平11−93026号公報
【特許文献2】特開2001−055634号公報
【特許文献3】特開2006−052493号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、ストレッチ性に優れた布帛を作製するのに好適なスプリングヤーンを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明のスプリングヤーンは、次のいずれかの構成を有する。
(1)同一方向に下ヨリを施されたポリエステル系複合繊維が複数本引き揃えられ、下ヨリと反対方向に合撚された構造を持つ糸条形態を有し、前記ポリエステル系複合繊維は、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であることを特徴とするスプリングヤーン。
(2)仮ヨリ捲縮を有することを特徴とする、前記(1)に記載のスプリングヤーン。
(3)合撚数/下ヨリ数が0.6以上、0.9以下であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のスプリングヤーン。
(4)前記ポリエステル系複合繊維の下ヨリ数が下記式を満たすことを特徴とする、前記(1)〜(3)のいずれかに記載のスプリングヤーン。
【0005】
3000/√D ≦ T1 ≦ 15000/√D
D:該ポリエステル系繊維の総繊度(デシテックス)
T1:下ヨリ数(回/m)
【発明の効果】
【0006】
本発明のスプリングヤーンによれば、ストレッチ性に優れた布帛を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明のスプリングヤーンは、同一方向に下ヨリを施されたポリエステル系複合繊維が複数本引き揃えられ、下ヨリと反対方向に合撚された構造を持つ糸条形態を有している。
【0008】
ポリエステル系複合繊維に実ヨリを付与することにより、糸のストレッチ性を増幅させることができるが、本発明においては、各ポリエステル系複合繊維に施された小径の下ヨリとそれらが複数本引き揃えられてから施された大径の合撚が組み合わされることにより、さらにストレッチを増幅することができるのである。
【0009】
本発明で言うスプリングヤーンとは、複数糸条が合撚され、スプリング状に収束した捲縮を持った糸条である。スプリング状に収束した捲縮を得る必要条件は、下ヨリ糸に対して二重ヨリに似たヨリぐせをつけることにある。スプリング状に収束した捲縮を有することで、布帛に用いた場合には非常に優れたストレッチ性を発現するものとなる。
【0010】
本発明のスプリングヤーンにおいて、ストレッチとしては、具体的には伸縮伸長率で90%以上であることが好ましく、150%以上であることがさらに好ましい。
【0011】
本発明で用いるポリエステル系複合繊維は、構成成分の一方がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であるポリエステル系複合繊維である。
【0012】
適度なキックバック性、ストレッチ性を得るためには、それぞれの成分の極限粘度が異なり、低粘度側のポリエステルの極限粘度[ηb]と高粘度側のポリエステル極限粘度[ηa]の極限粘度比([ηb]/[ηa])が0.3〜0.8であることが好ましい。
【0013】
このように極限粘度の異なる二つの重合体が貼り合わされることによって、紡糸・延伸時に高粘度側に応力が集中し、二成分間で内部歪みが異なることになる。そのため、延伸後の弾性回復率差により高粘度側が大きく収縮し、単繊維内で歪みが生じて3次元コイル状のヘリカルクリンプが発現する。このヘリカルクリンプの径および各ポリエステル系複合繊維の捲縮数は、高収縮成分と低収縮成分との収縮差(弾性回復率差を含む)によって決まるといってもよく、収縮差が大きいほどヘリカルクリンプの径が小さく、各ポリエステル系複合繊維の捲縮数が多くなる。
【0014】
本発明のスプリングヤーンをストレッチ素材の布帛へ適用する場合、コイル捲縮は、ヘリカルクリンプの径が小さいこと、各ポリエステル系複合繊維の捲縮数が多いこと(すなわち、伸長特性に優れ、見映えがよいこと)、ヘリカルクリンプの耐へたり性がよいこと(伸縮回数に応じたヘリカルクリンプのへたり量が小さく、ストレッチ保持性に優れること)が好ましい。さらに、ヘリカルクリンプの伸縮特性は、低収縮成分を支点とした高収縮成分の伸縮特性が支配的となるため、高収縮成分に用いる重合体には高い伸長性と回復性を有するものが好ましい。したがって、本発明においては、低収縮成分としてポリエチレンテレフタレート、高収縮成分としてポリトリメチレンテレフタレートを配すると良い。
【0015】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリエチレンテレフタレートとしては、エチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、エチレングリコールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物としては、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロパンジオール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ハイドロキノン、ビスフェノールAなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0016】
ポリエステル系複合繊維に用いられるポリトリメチレンテレフタレートとしては、トリメチレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とする重合体成分からなるものである。すなわち、テレフタル酸を主たる酸成分とし、1,3−プロパンジオールを主たるグリコ−ル成分として得られるポリエステルが好ましい。他のエステル結合を形成可能な共重合成分が20モル%以下の割合で含まれていてもよく、好ましくは10モル%以下の割合で含まれる。共重合可能な化合物として、イソフタル酸、コハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、ダイマ酸、セバシン酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸などのジカルボン酸類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのジオール類を用いることができる。また、必要に応じて、艶消し剤となる二酸化チタン、滑剤としてのシリカやアルミナの微粒子、抗酸化剤としてヒンダードフェノール誘導体、着色顔料などを添加してもよい。
【0017】
ポリトリメチレンテレフタレートは、代表的なポリエステル長繊維であるポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレートと同等の力学的特性や化学的特性を有しつつ、伸長回復性がきわめて優れている。これは、ポリトリメチレンテレフタレートの結晶構造においてアルキレングリコール部のメチレン鎖がゴーシュ−ゴーシュ構造(分子鎖が90度に屈曲)であること、さらにはベンゼン環同士の相互作用(スタッキング、並列)による拘束点密度が低く、フレキシビリティーが高いことから、メチレン基の回転により分子鎖が容易に伸長・回復するためと考えている。
【0018】
本発明において、糸条にコイル状捲縮を発現させ、編織物を形成した際に所望の伸縮性を得る観点から、ポリトリメチレンテレフタレートの極限粘度は1.0以上であるのが好ましく、1.2以上であるのがより好ましい。
【0019】
本発明で使用されるポリエステル系複合繊維の単繊維断面形状はサイドバイサイド型または偏心芯鞘型とするものである。断面形状がサイドバイサイド型または偏心芯鞘型でないと、糸条に熱が付与された際に、コイル状のヘリカルクリンプが発現せず、糸条に伸縮性を付与することができない。
【0020】
また、ポリエステル系複合繊維におけるポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率は、製糸性および繊維長さ方向のコイルの寸法均質性の観点から30/70以上70/30以下の範囲である。好ましくは35/65以上65/35以下、より好ましくは40/60以上60/40以下の範囲である。
【0021】
本発明のスプリングヤーンは、仮ヨリ捲縮を有することが好ましい。仮ヨリ捲縮は各ポリエステル系複合繊維のヘリカルクリンプのコイル周期を糸長手方向に分散化させる効果があり、さらに、仮ヨリ捲縮が加わることでスプリングヤーンのストレッチ性がさらに高められる。仮ヨリは、いかなる段階で施しても良いが、合撚後に施すことが好ましく、合撚と反対のヨリ方向に仮ヨリすることがさらに好ましい。
【0022】
本発明のスプリングヤーンは、合撚数/下ヨリ数の比が0.6以上、0.9以下であることが好ましい。合撚数/下ヨリ数の比が0.6未満であれば下ヨリのトルクにより、0.9より大きければ合撚のトルクにより、糸にビリが発生しやすくなり、後工程での糸切れや、布帛を形成したときの斜行や表面のシボなどの問題を発生する。上記範囲を満足することで、本発明のスプリングヤーンを布帛に用いた際には、ストレッチ性とともにフラットな表面感を出すことができる。
【0023】
特に、合撚上がりの糸を仮ヨリ機に供給する場合、合撚糸は下ヨリとのヨリバランスが良く、トルクがほとんどない状態が好ましい。
【0024】
本発明のスプリングヤーンにおいて、各ポリエステル系複合繊維の下ヨリ数は下記式を満たすことが望ましい。
【0025】
3000/√D ≦ T1 ≦ 15000/√D
D:各ポリエステル系繊維の総繊度(デシテックス)
T1:下ヨリ数(回/m)
下ヨリ数が、3000/√Dより少ないと、そもそも十分なストレッチ性を発現することが難しく、一方、15000/√Dより大きくなると、2重ヨリを発生する危険があり、後工程でのハンドリングで悪影響をもたらすおそれがある。上記関係を満足することで、ストレッチ性を発現しつつトルクバランスに優れた糸となり、布帛に用いた際にはストレッチ性とともにフラットな表面感を出すことができる。
【実施例】
【0026】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明する。ただし、本発明がこれら実施例により限定されるものではない。
【0027】
なお、実施例中の極限粘度[η]、伸縮伸長率(%)は次の方法で求めた。
【0028】
<極限粘度[η]>
オルソクロロフェノール10mlに対し試料0.10gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて測定した。
【0029】
<伸縮伸長率(%)>
1.8×10-3cN/デシテックス荷重下で周長1mの手回し検尺器にて10回巻のカセを作り、これに1.8×10-3cN/デシテックスの荷重をかけた状態で90℃、20分間の熱水処理をする。次いで、荷重を外し、1昼夜風乾する。その後、再度1.8×10-3cN/デシテックス荷重を加え、その状態で試料の長さを測定する(L0)。続いて、荷重を88.3×10-3cN/デシテックスに変更し、2分後に試料の長さを測定する(L1)。そして下記式にて伸縮伸長率を算出する。なお、試験回数は20回とし、その平均値を求めた。
伸縮伸長率(%)=[(L1−L0)/L0]×100
[実施例1]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で24孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス24フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を得た。
【0030】
得られたポリエステル系複合繊維に対して下記条件にて下ヨリ、合撚、仮ヨリを施し、スプリングヤーンを得た。
[下ヨリ条件]
市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に1000T/mの撚糸を施し、下ヨリ糸を得た。
[合撚条件]
石川製作所製合撚機DTEを使用し、得られた下ヨリ糸2本を引き揃え、Z方向に750T/mの撚糸を施し、合撚糸を得た。
[仮ヨリ条件]
愛機製作所製ピン仮ヨリ機TH−312を用いて、下記条件にて合撚糸を仮ヨリ加工して捲縮を発現させ、スプリングヤーンを得た。
【0031】
スピンドル回転数:400000rpm
仮ヨリ数 :S4000T/m
仮ヨリ温度:180℃
延伸倍率 :1.02
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が192%で非常にストレッチ性に優れた糸となった。永田精機製の4口靴下編み機KT−C4で、このスプリングヤーンを4本用いて、タイツのレッグ部、パンツ部を製編した。得られた生地を常法通りポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ、型板セットを実施してタイツを得た。
【0032】
得られたタイツは、フラットな美しい表面感を有し、ストレッチ性に優れたものであった。
【0033】
[実施例2]
極限粘度が1.31のポリトリメチレンテレフタレートと極限粘度が0.52のポリエチレンテレフタレートをそれぞれ別々に溶融し、紡糸温度260℃で48孔の複合紡糸口金よりポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレートの重量比率が50/50となるように吐出し、紡糸速度1400m/分で引き取り、165デシテックス48フィラメントの未延伸糸を得た。さらに、ホットロール−熱板系延伸機を用い、ホットロール温度70℃、熱板温度145℃、延伸倍率3.0で延伸して、56デシテックス48フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を得た。
【0034】
得られたポリエステル系複合繊維を実施例1と同条件にて、下ヨリ、合撚、仮ヨリを施しスプリングヤーンを得た。
【0035】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が198%で非常にストレッチ性に優れた糸となった。
【0036】
このスプリングヤーンを28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、フラットな外観で、ソフトな風合いを併せ持ちストレッチ性に優れていた。
【0037】
[実施例3]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を仮ヨリ機上でホットピンに1回転巻き付け、走行させ、下記条件にて緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。
【0038】
[緊張熱処理条件]
糸加工速度 :200m/min
ホットピンの温度:100℃
延伸倍率 :1.02
得られた顕在捲縮糸を用いて、実施例1と同条件にて、下ヨリ、合撚を施しスプリングヤーンを得た。
【0039】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が146%であった。
【0040】
[実施例4]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、実施例1と同条件にて、下ヨリ、合撚を施しスプリングヤーンを得た。
【0041】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が106%であった。
【0042】
[実施例5]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、愛機製作所製ピン仮ヨリ機TH−312で、下記条件にて仮ヨリ加工し、仮ヨリ糸を得た。
【0043】
スピンドル回転数:400000rpm
仮ヨリ数 :Z4200T/m
仮ヨリ温度:180℃
延伸倍率 :1.02
得られた仮ヨリ糸を用いて実施例1と同条件にて、下ヨリ、合撚を施し、スプリングヤーンを得た。
【0044】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が155%であった。
【0045】
[実施例6]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて下ヨリ糸を施した。
[下ヨリ条件]
市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に800T/mの撚糸を施し、下ヨリ糸を得た。
【0046】
得られた下ヨリ糸を実施例1と同条件にて合撚、仮ヨリを施し、スプリングヤーンを得た。
【0047】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が165%であった。このスプリングヤーンを28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、ストレッチ性に優れていたが生地表面に凹凸状のシボが発生した。
【0048】
[実施例7]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて下ヨリ、合撚、仮ヨリを施し、スプリングヤーンを得た。
[下ヨリ条件]
実施例1と同様に市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に380T/mの撚糸を施し、下ヨリ糸を得た。
[合撚条件]
石川製作所製合撚機DTEを使用し、得られた下ヨリ糸2本を引き揃え、Z方向に300T/mの撚糸を施し、合撚糸を得た。
[仮ヨリ条件]
愛機製作所製ピン仮ヨリ機TH−312を用いて、下記条件にて合撚糸を仮ヨリ加工して捲縮を発現させ、スプリングヤーンを得た。
【0049】
スピンドル回転数:400000rpm
仮ヨリ数 :S4000T/m
仮ヨリ温度:180℃
延伸倍率 :1.02
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が129%となった。このスプリングヤーンを28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、フラットな表面感を有するものであった。
【0050】
[実施例8]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて下ヨリ糸を施した。
[下ヨリ条件]
市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に1280T/mの撚糸を施し、下ヨリ糸を得た。
【0051】
得られた下ヨリ糸を実施例1と同条件にて合撚、仮ヨリを施し、スプリングヤーンを得た。
【0052】
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が175%であった。このスプリングヤーンを28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、ストレッチ性に優れていたが、斜行し、生地表面に凹凸状のシボが発生した。
【0053】
[実施例9]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて下ヨリ、合撚、仮ヨリを施し、スプリングヤーンを得た。
[下ヨリ条件]
実施例1と同様に市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に2200T/mの撚糸を施し、下ヨリ糸を得た。
[合撚条件]
石川製作所製合撚機DTEを使用し、得られた下ヨリ糸2本を引き揃え、Z方向に1700T/mの撚糸を施し、合撚糸を得た。
[仮ヨリ条件]
愛機製作所製ピン仮ヨリ機TH−312を用いて、下記条件にて合撚糸を仮ヨリ加工して捲縮を発現させ、スプリングヤーンを得た。
【0054】
スピンドル回転数:400000rpm
仮ヨリ数 :S4800T/m
仮ヨリ温度:180℃
延伸倍率 :1.02
得られたスプリングヤーンは伸縮伸長率が137%となった。このスプリングヤーンを28ゲージ、1口編機で編成し、常法によりポリエステル用分散染料にて130℃で60分、染色し、仕上げ加工した。得られた編地は、清涼感のあるドライな風合い、フラットな表面感を有するものであった。
【0055】
[比較例1]
実施例1と同様にして、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を得た。得られたサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維の伸縮伸長率は61%であった。
【0056】
この複合繊維を用いて、実施例1と同様にタイツを得た。得られたタイツは、表面に凹凸状のシボが発生し、ストレッチ性に乏しいものであった。
【0057】
[比較例2]
実施例3と同様にして、56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維に緊張熱処理を施し、顕在捲縮糸を得た。得られた顕在捲縮糸の伸縮伸長率は118%であった。
【0058】
[比較例3]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて撚糸を施した。
[合撚条件]
石川製作所製合撚機DTEを使用し、得られた下ヨリ糸2本を引き揃え、Z方向に750T/mの撚糸を施し、合撚糸を得た。
【0059】
得られた合撚糸の伸縮伸長率は73%であった。
【0060】
[比較例4]
実施例1で得られた56デシテックス24フィラメントのサイドバイサイド型ポリエステル系複合繊維を用いて、下記条件にて撚糸を施した。
[撚糸条件]
市販のダブルツイスターを使用し、得られたポリエステル系複合繊維にS方向に800T/mの実ヨリを施し、撚糸を得た。
【0061】
得られた撚糸の伸縮伸長率は76%であった。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のスプリングヤーンは、衣服などに使用する際、ストレッチ性に優れた布帛を得られることができるので、衣料用として、特に、インナー、スポーツウェア、ストッキングなどのストレッチ素材を提供することができるが、その応用範囲はこれらに限られるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同一方向に下ヨリを施されたポリエステル系複合繊維が複数本引き揃えられ、下ヨリと反対方向に合撚された構造を持つ糸条形態を有し、前記ポリエステル系複合繊維は、一方の構成成分がポリエチレンテレフタレートを主成分とし、他方の構成成分がポリトリメチレンテレフタレートを主成分とするサイドバイサイド型または偏心芯鞘型であることを特徴とするスプリングヤーン。
【請求項2】
仮ヨリ捲縮を有することを特徴とする請求項1に記載のスプリングヤーン。
【請求項3】
合撚数/下ヨリ数が0.6以上、0.9以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のスプリングヤーン。
【請求項4】
前記ポリエステル系複合繊維の下ヨリ数が下記式を満たすことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスプリングヤーン。
3000/√D ≦ T1 ≦ 15000/√D
D:該ポリエステル系繊維の総繊度(デシテックス)
T1:下ヨリ数(回/m)

【公開番号】特開2009−209476(P2009−209476A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52952(P2008−52952)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(502179282)オペロンテックス株式会社 (100)
【Fターム(参考)】