説明

スプレイ装置と、その操作方法

【課題】金型等の所定位置に正確に離型剤等を噴霧することができるスプレイ装置を提供する。
【解決手段】スプレイ装置はロボット31を有している。ロボット31は、ティーチングされた位置にアーム36を移動させることができる。アーム36には、離型剤を噴霧するためのノズルユニット40が設けられている。ロボット31のティーチング時に、ノズルユニット40のスプレイノズルに代わって、ダミーノズル60が取付けられる。ダミーノズル60は、アーム36に設けられるケーシング61と、ケーシング61に収容されたレーザ指示器(レーザポインタ)62とを有している。レーザ指示器62の光軸X2は、スプレイノズルの軸線(噴霧中心)と同じ方向に延びている。ティーチングの際に、レーザ指示器62から金型の内面に向けてレーザ光を出力し、レーザ光の照射位置を目視しながらティーチングのための入力操作が行なわれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばダイキャスト成形機や射出成形機等の成形機において、金型に離型剤等の塗布を行なうスプレイ装置と、その操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイキャスト成形機等の成形機では、成形された製品が金型の内面に固着することを防ぐために、適宜のタイミングで金型の内面に離型剤が塗布されている。手作業による離型剤の塗布は作業に熟練を要するだけでなく非能率であり安全性の点でも問題であるため、離型剤の塗布をスプレイ装置によって自動化することが望まれている。
【0003】
例えば下記の特許文献1に開示されているように、金型スプレイロボットを用いたスプレイ方法および装置を用いることにより、金型の内面に離型剤を塗布することが知られている。また特許文献2に開示されているような静電型塗油装置も知られている。
【0004】
ロボット等の作業用位置決め機構のアームにスプレイノズルを設け、このスプレイノズルによって離型剤を塗布する場合、スプレイノズルを金型内面の所定位置まで移動させるために、事前にティーチング(ロボットティーチング)が実施される。従来のダイキャスト成形機におけるスプレイ装置のティーチングでは、金型に対するスプレイノズルの位置を目視によって確認しながら、ティーチングの入力操作を行なっている。あるいは、スプレイノズルから離型剤を噴霧させ、噴霧状態を目視しながらティーチングの入力操作が行なわれることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−52013号公報
【特許文献2】特開2006−297310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のようにスプレイノズルの位置を目視によって確認しながらティーチングの入力操作を行なう場合、ノズルを見る角度によってはノズルの位置が正確に反映されないことがある。また、スプレイノズルから離型剤を噴霧しながらティーチングを行なう場合には、ティーチングの際に余分な離型剤が金型に付着してしまうため、離型剤が無駄に使用され、しかもスプレイノズルの噴霧中心を正確に把握することが難しいなどの問題がある。
【0007】
従って本発明の目的は、ティーチングを正確に行なうことができるスプレイ装置と、その操作方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ティーチングされた位置にアームを移動させる作業用位置決め機構と、前記アームに取付けるスプレイノズルと、前記スプレイノズルに代わって前記アームに取付けることが可能なダミーノズルとを有している。前記ダミーノズルは、前記アームに設けられる着脱可能なケーシングと、前記ケーシングに収容されたレーザ指示器とを具備している。このレーザ指示器は、前記スプレイノズルの噴霧中心と同じ方向に延びる光軸に沿ってレーザ光を照射する。
【0009】
前記スプレイノズルの一例は、ダイキャスト成形機等の成形機の金型に離型剤を噴霧するためのものであり、前記ダミーノズルが前記アームに取付けられた状態で前記成形機が作動することを防ぐための防護手段(例えば警告表示ランプや警報器、あるいは成形機の作動を禁止するインターロック)を備えているとよい。
【0010】
前記レーザ指示器は、点状に集光されたレーザ光を照射するモード以外に、前記スプレイノズルが平吹きタイプか丸吹きタイプかに応じて、サークル状の照射パターンのレーザ光を出力することができるように切換え手段を備えていてもよい。また、前記ダミーノズルの形態によっては、ダミーノズルの向きを前記スプレイノズルの向きと一致させるための位置決め手段(例えば凸部と凹部との嵌合構造)を備えていてもよい。
【0011】
前記スプレイ装置の操作方法は、前記アームに前記ダミーノズルを取付けること、前記レーザ指示器によってレーザ光を金型に照射すること、前記レーザ光が金型のティーチングすべき位置を照らしたときにティーチングのための入力操作を行なうこと、前記ティーチング終了後に前記アームから前記ダミーノズルを取外し、該アームに前記スプレイノズルを取付けること、前記ティーチングによって得られた位置情報に基いて前記スプレイノズルにより前記金型に離型剤を噴霧することなどを具備している。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ロボット等の作業用位置決め機構に設けられたスプレイノズルに関する位置情報をティーチングの際に正確に入力することができるため、離型剤等を金型の所定の位置に正確に噴霧することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】成形機の一例を模式的に示す断面図。
【図2】本発明の第1の実施形態に係るスプレイ装置を備えた成形機を模式的に示す側面図。
【図3】図2に示されたスプレイ装置の一部の側面図。
【図4】図2に示されたスプレイ装置のアームの一部とダミーノズルを分解して示す断面図。
【図5】図4に示されたダミーノズルをアームに取付けた状態の側面図。
【図6】本発明の第2の実施形態に係るダミーノズルをアームから取外した状態を一部断面で示す側面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の第1の実施形態について、図1から図5を参照して説明する。
図1は、成形機の一例であるダイキャスト成形機10を模式的に示している。ダイキャスト成形機10は、固定ダイプレート11と、移動ダイプレート12と、互いに平行に延びる4本のタイバー13,14(2本のみ示す)と、ダイプレート駆動機構15などを含んでいる。ダイプレート駆動機構15は、移動ダイプレート12をタイバー13,14に沿って水平方向に移動させる機能を有している。この成形機10は、操作パネル16を有するコントローラ17によって操作される。
【0015】
固定ダイプレート11に固定側金型20が取付けられている。移動ダイプレート12に移動側金型21が取付けられている。これら金型20,21間に、成形品のためのキャビティ22が形成されている。キャビティ22は、溶湯通路23を介して溶湯供給機構(図示せず)に連通している。成形工程において、成形品の材料である溶融金属が、加圧された状態でキャビティ22に供給されることにより、ダイキャスト製品が成形される。
【0016】
前記成形工程が行なわれる前と、成形工程が複数回繰返されたのちに、図2に示すスプレイ装置30によって、金型20,21の内面20a,21aに離型剤が塗布される。スプレイ装置30は、作業用位置決め機構の一例である多関節ロボット31を含んでいる。ロボット31のアーム35の先端に、補助アーム36を介してノズルユニット40が設けられている。
【0017】
図3にノズルユニット40が示されている。本実施形態のノズルユニット40は、L形のノズルベース41と、ノズルベース41の先端に設けられたスプレイノズル42と、スプレイノズル42をノズルベース41に固定するためのリングナット43などを含んでいる。リングナット43は、スプレイノズル42に対して軸線X1回りに手で回転させることができる。軸線X1はスプレイノズル42の噴霧中心である。
【0018】
ノズルベース41に雄ねじ部41a(図4に示す)が設けられている。前記リングナット43をこの雄ねじ部41aにねじ込んで締付けることにより、スプレイノズル42をノズルベース41に固定することができる。逆に、リングナット43を雄ねじ部41aから外す方向に回転させれば、スプレイノズル42をノズルベース41から取外すこともできる。すなわちこのスプレイノズル42はノズルベース41に対して着脱可能である。
【0019】
本実施形態の場合、静電型のノズルユニット40が採用されている。このためこのスプレイ装置30は、直流高電圧を発生させるための電源装置50と、例えば油性の離型剤を供給するための離型剤供給源51とを備えている。電源装置50は、電源コード52を介してノズルユニット40に接続されている。離型剤供給源51は、離型剤供給管53を介してノズルユニット40に接続されている。
【0020】
電源装置50によって発生した負電位をノズルユニット40に与えるとともに、金型20,21を正電位側に接地させることにより、離型剤供給源51から供給される離型剤がマイナスの電荷を帯びてスプレイノズル42から噴霧されるようになっている。なお、静電型のノズルユニット40に代わって、圧縮空気等のガスを用いるスプレイ装置が採用されてもよい。
【0021】
前記ロボット31は、コントローラ17によって制御される。コントローラ17は、ロボット31の動きをつかさどる制御用コンピュータプログラムと、制御に使用するデータ等が格納されたメモリなどを有し、予めティーチングされた位置情報に基いてアーム35を移動させながら、ノズルユニット40から噴霧する離型剤を金型20,21の内面20a,21aに塗布するようになっている。このためコントローラ17には、金型20,21の内面20a,21aに対するスプレイノズル42の位置情報が予めティーチングによって入力されている。
【0022】
ティーチングを行なう際に、図4と図5に示すダミーノズル60が使用される。すなわち前記スプレイノズル42をノズルベース41から取外し、ダミーノズル60をノズルベース41に取付けるようにしている。図4は、ダミーノズル60をノズルベース41から取外した状態を示し、図5はダミーノズル60をノズルベース41に取付けた状態を示している。
【0023】
前記ダミーノズル60は、スプレイノズル42と類似した円筒形のケーシング61と、ケーシング61に収容されたレーザ指示器62(いわゆるレーザポインタ)と、ケーシング61をノズルベース41に固定するためのリングナット63などを含んでいる。リングナット63は、ノズルベース41の前記雄ねじ部41aにねじ込むことができる。またリングナット63を雄ねじ部41aから外す方向に回転させれば、ダミーノズル60をノズルベース41から取外すことができる。すなわちこのダミーノズル60は、ノズルベース41に対して着脱自在である。
【0024】
レーザ指示器62をケーシング61に収納し、ノズルベース41に取付けた状態において、レーザ指示器62の光軸X2(図5に示す)は、ノズルベース41にスプレイノズル42を取付けたときのスプレイノズル42の前記軸線X1(図3に示す)と合致するように、レーザ指示器62が配置されている。
【0025】
レーザ指示器62には、レーザ光を発生させるレーザモジュールと、電源としての小形乾電池(図示せず)などが収容され、レーザ照射スイッチ65を操作したときに、レーザ光がレーザ出射部66から光軸X2に沿って出力されるようになっている。
【0026】
レーザ指示器62の一例では、レーザ光の照射パターンを切換えるための切換え手段として、例えばロータリ式の操作部67を操作することにより、光軸X2(図5に示す)に沿って集光された点状の照射パターンP1を出力するモードと、円形に拡散するサークル形照射パターンP2を出力するモードと、楕円形に拡散するサークル形照射パターンP3を出力するモードとを選択可能としている。
【0027】
スプレイノズル42の種類に関わらず点状の照射パターンP1で照射させてもよいが、例えばスプレイノズル42が丸吹きタイプの場合に、円形に拡散する照射パターンP2を選択してもよい。あるいは、スプレイノズル42が平吹きタイプの場合に、楕円形に拡散する照射パターンP3を選択してもよい。
【0028】
ロボット31のティーチングを行なう際に、前記レーザ指示器62を備えたダミーノズル60をノズルベース41に取付けることにより、補助アーム36を介してダミーノズル60をロボット31のアーム35に取付ける。そしてレーザ指示器62から出力したレーザ光を金型の内面に照射する。このレーザ光が照射されている金型内面の位置を目視によって確認しながら、レーザ光がティーチングすべき位置を照らしたときに、ティーチングのための入力操作を行うことにより、その位置情報をコントローラ17のメモリに記憶する。
【0029】
本実施形態のダミーノズル60を用いたティーチングでは、レーザ指示器62から照射された明瞭なレーザ光の投射位置を目視によって容易に確認することができるため、金型内面に対するダミーノズル60の位置情報すなわちスプレイノズル42の位置情報をコントローラ17に正確に入力することができる。
【0030】
前記ティーチング終了後、ダミーノズル60をノズルベース41から取外す。そしてスプレイノズル42をノズルベース41に取付ける。そののち操作パネル16のスタートスイッチを操作することにより、成形機10による成形工程が開始される。
【0031】
操作パネル16には、ダミーノズル60が取付けられたまま成形機10が作動してしまうことを防ぐために、防護手段が設けられている。防護手段としては、例えば、ダミーノズル60が取付けられていることを操作パネル16のディスプレイ部に表示するランプでもよいし、あるいは、ダミーノズル60が取付けられたまま成形機10のスタートスイッチが操作されたときに警報音を出すものでもよい。また、この防護手段が作動したときに成形機10の作動を禁止するためのインターロック機構が備えられているとよい。
【0032】
前記成形工程においては、成形品の材料である溶融金属が、加圧された状態でキャビティ22に供給されることにより、ダイキャスト製品が成形される。そして成形工程毎に離型剤塗布工程が行なわれる。離型剤塗布工程では、図2に示すように金型20,21を開け、ロボット31によって金型20,21間にノズルユニット40を挿入し、スプレイノズル42から離型剤を金型20,21の内面20a,21aに噴霧する。
【0033】
本実施形態によれば、ロボット31のティーチングを行なう際に、ダミーノズル60のレーザ指示器62を利用して正確な位置情報が入力されるため、離型剤塗布工程において離型剤を噴霧するスプレイノズル42の位置を正確に再現することができ、離型剤を金型内面の適正な位置に塗布することができる。
【0034】
以上説明したように本実施形態のスプレイ装置30の操作方法は、少なくとも下記の工程を具備している。
(1)レーザ指示器62を備えたダミーノズル60をロボット31のアーム35に取付けること、
(2)レーザ指示器62によってレーザ光を金型に照射すること、
(3)レーザ光が金型のティーチングすべき位置を照らしたときにティーチングのための入力操作を行なうこと、
(4)ティーチング終了後にアーム35からダミーノズル60を取外し、アーム35にスプレイノズル42を取付けること、
(5)前記ティーチングによって得られた位置情報に基いてスプレイノズル42により前記金型に離型剤を噴霧すること。
【0035】
図6は本発明の第2の実施形態に係るダミーノズル70を示している。このダミーノズル70は、L型のケーシング71の先端部分にレーザ指示器62を収容している。リングナット72を補助アーム36の雄ねじ部36aにねじ込むことにより、ダミーノズル70のケーシング71を補助アーム36に固定することができる。すなわちこのダミーノズル70は、補助アーム36を介してロボット31のアーム35に着脱可能となっている。補助アーム36はアームの一部をなしている。
【0036】
またダミーノズル70がスプレイノズルと同じ方向を向くことができるように、補助アーム36とダミーノズル70のいずれか一方に、位置決め手段として機能する位置決めピン等の凸部75を設け、他方に凸部75が嵌合する凹部76を形成している。それ以外の構成と作用等については前記第1の実施形態のダミーノズル60と同様であるため、説明を省略する。
【0037】
なお本発明を実施するに当たって、スプレイノズルやダミーノズル、ケーシング、レーザ指示器等の具体的な形状や配置等を適宜に変更して実施できることは言うまでもない。また作業用位置決め機構として、多関節ロボット以外に、例えば3軸(XYZ軸)に沿って移動可能な汎用型位置決め機構が採用されてもよい。
【符号の説明】
【0038】
10…ダイキャスト成形機
20,21…金型
30…スプレイ装置
31…ロボット(作業用位置決め機構)
35…アーム
40…ノズルユニット
42…スプレイノズル
60,70…ダミーノズル
61,71…ケーシング
62…レーザ指示器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ティーチングされた位置にアームを移動させる作業用位置決め機構と、
前記アームに取付けるスプレイノズルと、
前記スプレイノズルに代わって前記アームに取付けることが可能なダミーノズルとを有し、
前記ダミーノズルは、
前記アームに設けられる着脱可能なケーシングと、
前記ケーシングに収容され、前記スプレイノズルの噴霧中心と同じ方向に延びる光軸に沿ってレーザ光を照射するレーザ指示器と、
を具備したことを特徴とするスプレイ装置。
【請求項2】
前記スプレイノズルは成形機の金型に離型剤を噴霧するためのものであり、
前記ダミーノズルが前記アームに取付けられた状態で前記成形機が作動することを防ぐための防護手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスプレイ装置。
【請求項3】
前記レーザ指示器は、前記スプレイノズルが平吹きタイプまたは丸吹きタイプの場合にサークル状の照射パターンのレーザ光を出力することを特徴とする請求項1に記載のスプレイ装置。
【請求項4】
前記ダミーノズルの向きを前記スプレイノズルの向きと一致させるための位置決め手段を備えていることを特徴とする請求項1に記載のスプレイ装置。
【請求項5】
ティーチングされた位置にアームを移動させる作業用位置決め機構を備えたスプレイ装置の操作方法であって、
レーザ指示器を備えたダミーノズルを前記アームに取付けること、
前記レーザ指示器によってレーザ光を金型に照射すること、
前記レーザ光が前記金型のティーチングすべき位置を照らしたときにティーチングのための入力操作を行なうこと、
前記ティーチング終了後に前記アームから前記ダミーノズルを取外し、該アームにスプレイノズルを取付けること、
前記ティーチングによって得られた位置情報に基いて前記スプレイノズルにより前記金型に離型剤を噴霧すること、
を具備したことを特徴とするスプレイ装置の操作方法。
【請求項6】
前記スプレイノズルが平吹きタイプまたは丸吹きタイプの場合に、サークル状の照射パターンのレーザ光を前記金型に向けて出力することを特徴とする請求項5に記載のスプレイ装置の操作方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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