説明

スプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物およびスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法

【課題】発泡剤としてHFC−245fa、HFC−365mfaなどのHFC化合物と水を併用し、低温下でのフォームの脆さ(フライアビリティ)及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、および上記ポリオール組成物を用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供する。
【解決手段】ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、前記発泡剤が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、および水を含むものであり、前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とするスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬質ポリウレタンフォームを形成するスプレー発泡の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、ならびにそのポリオール組成物を使用した硬質ポリウレタンフォームの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
硬質ポリウレタンフォームは、断熱材、軽量構造材等として周知の材料である。かかる硬質ポリウレタンフォームは、ポリオール化合物、発泡剤を必須成分として含有するポリオール組成物とポリイソシアネート成分とを混合し、発泡、硬化させることにより形成される。発泡剤としては、古くはCFC−11等のフロン化合物が使用されていたが、CFC化合物がオゾン層の破壊を引き起こすことから禁止され、現状において大別して3種の発泡剤を使用した硬質ポリウレタンフォームが製造、使用されている。
【0003】
第1の発泡剤は水であり、水とイソシアネート基の反応により発生する炭酸ガスによりフォームが形成される。水発泡により得られた硬質ポリウレタンフォームは、製造直後は気泡内に炭酸ガスを含有するものであるが、時間経過と共に炭酸ガスが大気中に拡散し、気泡内には逆に窒素などが存在するようになる。その結果、水発泡の硬質ポリウレタンフォームの熱伝導率を他の発泡剤ほどに低下させることが難しく、高い断熱性を要求される用途には使用することが困難となる。また、発泡剤として水を単独使用すると、密度の増大を抑制することができるが、その反面、フォームの脆さ(フライアビリティ)を抑制することが困難となる。
【0004】
第2の発泡剤はシクロペンタンやiso−ペンタンなどのペンタン類であり、かかるペンタン類を使用したフォームは、断熱性に優れたものではあるが、ペンタン類は可燃性が高いために、製造においては火災防止のための設備が必要であり、従来の硬質ポリウレタンフォームの製造装置がそのまま使用できず、改造や新設には多大の費用がかかるという問題を有する。特にスプレー発泡においては、発泡剤としてペンタンを使用するとスプレー作業中に揮散するため、その使用は困難である。
【0005】
第3の発泡剤としてオゾン層破壊係数がゼロであるHFC化合物が公知であり、沸点が15℃のHFC−245faを使用した場合のポリオール組成物における発泡剤の揮散を防止し、特に夏場における該ポリオール組成物を収容するドラム缶や石油缶等の容器の膨れ防止のためにε−カプロラクトン等の相溶化剤を添加する技術が公知である(たとえば特許文献1)。
【0006】
しかし、HFC−245faなどのHFC化合物を単独使用した場合、塩素や臭素を含まないため、フォームの難燃性向上の作用を有さず、特許文献1に記載の技術は、HFC化合物を発泡剤として含むポリオール組成物における発泡剤のポリオール化合物への相溶性を改善し、蒸気圧を低下するものであって、難燃性の配慮はなされていない。このため、特に建築用等においては、かかるポリオール組成物により得られた硬質ポリウレタンフォームの難燃性の改善が求められている。
【0007】
HFC化合物を発泡剤として使用した硬質ポリウレタンフォームの難燃性を高める手段としては、原料のポリオール組成物を構成するポリオール化合物として芳香族エステルポリオールを使用し、かつその配合量を多くすると同時にイソシアネート成分の配合量を多くしてイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)を高くし、フォームの構成樹脂中のイソシアヌレート環濃度を高くすることが考えられる。
【0008】
しかし、上記のように芳香族エステルポリオールの配合量を多くすると同時にNCOインデックスを高くしてスプレー発泡法により硬質ポリウレタンフォームを製造すると面材や基材との接着性が低下することが判明した。
【0009】
また、硬質ポリウレタンフォームの製造にあたり、触媒添加することにより硬質ポリウレタンフォームの横伸びが大きく発生する場合があり、かかる場合には端部の剥離、接着性能、作業性(施工性)が低下してしまうといった問題がある。
【0010】
【特許文献1】特開2004−107439号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
そこで、本発明の目的は、従来の硬質ポリウレタンフォームにおける問題点を解消すべく、発泡剤としてHFC−245fa、HFC−365mfaなどのHFC化合物と水を併用し、低温下でのフォームの脆さ(フライアビリティ)及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れる硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物、および上記ポリオール組成物を用いた硬質ポリウレタンフォームの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下に示すスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物により上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
すなわち、本発明のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とする。
【0014】
また、本発明のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とをスプレー装置により混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤がHFC−245fa、HFC−365mfc、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とする。
【0015】
本発明によると、実施例の結果に示すように、硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物として上述の構成を有するポリオール化合物を用いることにより、得られた硬質ポリウレタンフォームが、低温下でのフライアビリティ及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れたものとなる。
【0016】
上記硬質ポリウレタンフォームがかかる効果を奏する理由の詳細は明らかではないが、ポリオール化合物の組成比、ならびに特定の発泡剤および触媒の組み合わせることにより、硬質ポリウレタンフォームの反応性が適切に制御されるとともに横伸びが抑制され、このため接着性能および作業性(施工性)の向上とともに、難燃性もバランスよく発揮するものとなると推測される。なお、横伸びとは、スプレー装置などを用いた自由発泡の際に、吹付け面を超えて横に広がりながら発泡することをいい、その発泡部分は吹付け面に比べて接着力が弱くなる傾向にある。従って、横伸びが小さいことが好ましい。
【0017】
さらには、上記ポリオール組成物を用いることにより、得られる硬質ポリウレタンフォームの仕上がり密度の増加を抑制することができ、ポリオール組成物などの原液の使用量が従来の処方(HCFC−141bやHFC化合物を用いた処方)に比べて低減が可能となる。かかる効果を奏する理由の詳細は明らかではないが、反応性をバランスよく適度に制御できたため、発泡剤として作用するガスのロスが減少した結果、仕上がり密度の向上を抑制したものと推測される。
【0018】
上記ポリオール組成物において、ポリオール化合物100重量部中、上記アジピン酸エステルポリオールが10〜60重量部含まれることが好ましい。上記アジピン酸エステルポリオールを用いることにより、接着性が向上する。
【0019】
一方、本発明の製造方法は、上記いずれかの構成を有する硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を用いることを特徴とするものである。かかる製造方法を用いることにより、低温下でのフライアビリティ及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れた硬質ポリウレタンフォームをスプレー法により製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0021】
本発明のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物は、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とする。
【0022】
本発明のポリオール化合物としては、アジピン酸エステルポリオールを含むものが用いられる。上記アジピン酸エステルポリオールを用いることにより、接着性が向上することが出来る。
【0023】
アジピン酸エステルポリオールとしては、官能基数が2〜4、水酸基価が150〜350mgKOH/gのものを使用することが好ましく、より好ましくは、官能基数が2〜3、水酸基価が200〜300mgKOH/gのものを使用する。
【0024】
上記ポリオール組成物において、ポリオール化合物100重量部中、上記アジピン酸エステルポリオールが10〜60重量部含まれることが好ましく、15〜55重量部含まれることがより好ましく、20〜50重量部含まれることがさらに好ましい。
【0025】
本発明のポリオール化合物としては、アジピン酸エステルポリオールと併せてマンニッヒポリオールを含むものが好ましい。上記マンニッヒポリオールを使用することにより、接着性が向上する。
【0026】
マンニッヒポリオールとは、フェノールおよび/またはそのアルキル置換誘導体、ホルムアルデヒドおよびアルカノールアミンのマンニッヒ反応により得られた活性水素化合物またはこの化合物にエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加重合させることによって得られる水酸基価250〜550mgKOH/g、官能基数が2〜4のポリオール化合物である。かかるポリオール化合物の市販品としては、たとえばDK−3810(第一工業製薬社製)があり、使用可能である。
【0027】
マンニッヒポリオールとしては、水酸基価250〜550mgKOH/gのマンニッヒポリオールを用いることが好ましく、より好ましくは、水酸基価が300〜400mgKOH/gのものを用いることが好ましい。
【0028】
また、アジピン酸エステルポリオール/マンニッヒポリオール=15/10〜55/25(重量比)となるように含有することが好ましく、より好ましくは20/15〜50/20である。かかる構成によって、より難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。マンニッヒポリオールの割合が多すぎると難燃性が低下する。なお、アジピン酸エステルポリオールは、100であってもよい。
【0029】
本発明のポリオール化合物は、さらに脂肪族アミンポリオール、芳香族アミンポリオールから選択される少なくとも1種の水酸基価200〜500mgKOH/gのポリオール化合物(アミンポリオール)を含むものであってもよい。
【0030】
脂肪族アミンポリオールとしては、アルキレンジアミン系ポリオールや、アルカノールアミン系ポリオールが例示される。これらのポリオール化合物は、アルキレンジアミンやアルカノールアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリオール化合物である。
【0031】
アルキレンジアミンとしては、公知の化合物が限定なく使用できる。具体的には、たとえば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ネオペンチルジアミン等の炭素数が2〜8のアルキレンジアミンの使用が好適である。これらのなかでも、炭素数の小さなアルキレンジアミンの使用がより好ましく、特にエチレンジアミン、プロピレンジアミンを開始剤としたポリオール化合物の使用が好ましい。
【0032】
アルキレンジアミン系ポリオールにおいては、開始剤であるアルキレンジアミンは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。アルキレンジアミンを開始剤としたポリオール化合物の官能基数は4である。
【0033】
アルカノールアミンとしては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンが例示される。アルカノールアミンを開始剤としたポリオール化合物の官能基数は3である。
【0034】
芳香族アミン系ポリオールは、芳香族ジアミンを開始剤としてエチレンオキサイド、プロピレンオキサイドの少なくとも1種を開環付加させた末端水酸基の多官能ポリエーテルポリオール化合物である。
【0035】
開始剤としては、公知の芳香族ジアミンを限定なく使用することができる。具体的には、たとえば、2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、p−フェニレンジアミン、o−フェニレンジアミン、ナフタレンジアミン等が例示される。これらのなかでも得られる硬質ポリウレタンフォームの断熱性と強度などの特性が優れている点でトルエンジアミン(2,4−トルエンジアミン、2,6−トルエンジアミンまたはこれらの混合物)の使用が特に好ましい。
【0036】
アミンポリオールを併用する場合、(アジピン酸エステルポリオール+マンニッヒポリオール)/アミンポリオール重量比は、100/0〜35/65であることが好ましく、75/25〜35/65であることがより好ましい。アミンポリオールの使用量が多すぎると得られるフォームの難燃性が低下する。なかでも、ポリオール化合物100重量部中、アジピン酸エステルポリオール10〜60重量部、マンニッヒポリオール10〜25重量部、アミンポリオール15〜80重量部含まれることが好ましく、ポリオール化合物100重量部中、エステルポリオール20〜50重量部、マンニッヒポリオール15〜20重量部、アミンポリオール30〜65重量部含まれることがより好ましい。
【0037】
またポリオール化合物として、芳香族ジカルボン酸グリコールエステルと炭素数8〜22の脂肪酸化合物とを含むものであることが好ましい。ポリオール化合物として炭素数8〜22の脂肪酸化合物を使用することにより、ポリオール組成物として発泡剤であるHFC化合物の相溶性が改善される。
【0038】
芳香族ジカルボン酸グリコールエステルとしては、テレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸等とエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、平均分子量が300〜500のポリオキシエチレングリコール等のグリコールとの、グリコールに基づく水酸基末端を有するエステルポリオールが例示される。これらのなかでも、特に難燃性に優れた硬質ポリウレタンフォームを形成することができることから、テレフタル酸のエステルポリオールの使用が好ましい。
【0039】
炭素数8〜22の脂肪酸化合物としては、炭素数8〜22の脂肪酸ないし該脂肪酸を含む油脂とグリコールの反応生成物が使用可能である。炭素数8〜22の脂肪酸としては、天然から得られる脂肪酸として、カプリル酸、カプリン酸、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、リシノール酸、トール油脂肪酸等が例示される。
【0040】
炭素数8〜22の合成脂肪酸としては、イソカプリル酸、2−エチルヘキサン酸、イソノナン酸、イソカプリン酸、イソラウリン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等が例示される。
【0041】
上記脂肪酸を含む油脂としては、トウモロコシ油、綿実油、オリーブ油、落花生油、ナタネ油、サフラワー油、ゴマ油、大豆油、ヤシ油、パーム油、アマニ油、トール油等の植物油脂や、牛脂、豚脂、鯨油等の動物油脂が例示される。
【0042】
本発明のポリオール化合物としては、上記脂肪酸やそのメチルエステルなどのアルキルエステル、上記脂肪酸を主成分とする油脂をポリオール化合物の製造時に芳香族ジカルボン酸と共存させてグリコールと反応させてもよく、脂肪酸とグリコールを予め反応させ、得られた脂肪酸化合物を芳香族ジカルボン酸とグリコールからなる芳香族エステルポリオールに添加してもよい。上記天然由来の脂肪酸や合成脂肪酸は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0043】
脂肪酸化合物を含むポリオール化合物は、公知の方法で製造することができる。たとえばテレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸と炭素数8〜22の脂肪酸ないし該脂肪酸の油脂を所定量にて混合し、グリコールを添加して錫化合物、チタン化合物などの公知のエステル化反応触媒の存在下に窒素気流中、200℃〜230℃に加熱することにより製造することができる。
【0044】
ポリオール化合物中の脂肪酸化合物の含有量は、1〜20重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。1重量%未満の場合には、HFC化合物の相溶性改善効果が小さく、多すぎると得られるフォームの難燃性が低下する。
【0045】
本発明の硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を構成する成分として架橋剤を使用してもよい。架橋剤としてはポリウレタンの技術分野において使用される低分子量多価アルコールが使用可能である。具体的には、たとえば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリエタノールアミン等が例示される。
【0046】
本発明のポリオール組成物および硬質ポリウレタンフォームの製造方法において使用する発泡剤は、HFC−245faとHFC−365mfcとを水を含有する。かかる発泡剤の使用により、優れた断熱性を有する硬質ポリウレタンフォームを得ることができる。
【0047】
HFC−245fa/HFC−365mfcの比率は、95/5〜60/40であることが好ましい。HFC化合物の添加量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して、20〜50重量部であることが好ましく、25〜40重量部であることがより好ましい。
【0048】
また、HFC化合物/水の比率は、99.5/0.5〜95/5であることが好ましい。また、水の添加量は、ポリオール化合物合計100重量部に対して、0.5〜5重量部であることが好ましく、より好ましくは1〜2重量部である。水の添加により、ポリオール組成物の発泡剤の蒸気圧を低下させることができる。
【0049】
本発明のポリオール組成物においては、触媒として、アミン触媒および4級アンモニウム塩触媒が併用して用いられる。
【0050】
アミン触媒としては、たとえば、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミンやN,N,N’,N’−テトラメチルヘキサメチレンジアミン(カオライザーNo.1)、N,N,N’,N’,N”−ペンタメチルジエチレントリアミン(カオライザーNo.3)等のN−アルキルポリアルキレンポリアミン類、N,N−ジメチルシクロヘキシルアミン(ポリキャット−8)、トリエチレンジアミン、N−メチルモルホリン等の第3級アミン類などをあげることができる。これらのアミン触媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0051】
本発明においては、上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記アミン触媒が5〜15重量部含まれることが好ましく、7〜13重量部含まれることがより好ましく、8〜12重量部含まれることがより好ましい。
【0052】
第4級アンモニウム塩触媒としては、たとえば、N−(2−ヒドロキシプロピル)−N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N−ジメチルアンモニウム・オクチル酸塩、N−ヒドロキシアルキル−N,N,N−トリアルキルアンモニウム塩の他、特開平9−104734号公報に開示された第4級アンモニウム塩触媒等をあげることができる。なかでも、ヒドロキシアルキルアンモニウムを使用することが好ましい。また、市販品としては、たとえば、カオライザー420(花王社製)などが使用可能である。これらの第4級アンモニウム塩触媒は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
本発明においては、上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記4級アンモニウム塩触媒が0.5〜2.5重量部含まれることが好ましく、1.0〜2.0重量部含まれることがより好ましく、1.2〜1.8重量部含まれることが更に好ましい。
【0054】
さらに、本発明において、上記ポリオール組成物において、上記アミン触媒と4級アンモニウム塩触媒が15/1〜5/1の重量比で含まれることが好ましく、12/1〜7/1の重量比で含まれることがより好ましい。上記の重量比で使用することにより、反応バランスを最適なものとすることができる。
【0055】
更に、ポリウレタン分子の構造において難燃性向上に寄与するイソシアヌレート結合を形成する触媒の使用も好ましく、たとえば、オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム、酢酸カリウム等が例示できる。上述の第3級アミン触媒の中にもイソシアヌレート環形成反応をも促進するものがある。イソシアヌレート結合生成を促進する触媒とウレタン結合生成を促進する触媒を併用してもかまわない。
【0056】
本発明においては、上記ポリオール化合物100重量部に対して、上記オクチル酸鉛、オクチル酸カリウム等は、2.5〜6.5重量部含まれることが好ましく、3.5〜6.0重量部含まれることがより好ましく、4.0〜5.0重量部含まれることがより好ましい。
【0057】
本発明の硬質ポリウレタンフォームの製造に際しては、上記成分の他に、当業者に周知の他の触媒、難燃剤、低粘度化剤、着色剤、酸化防止剤等が使用可能である。
【0058】
整泡剤としては、硬質ポリウレタンフォームの技術分野において使用される公知の整泡剤が限定なく使用可能である。具体的には、たとえば、B−8465(ゴールドシュミット社製)、SH−192、SH−193(東レダウコーニングシリコン社製)、S−824−02、SZ−1704、SZ−1923(日本ユニカー社製)等の整泡剤を使用することができる。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0059】
本発明においては、さらに難燃剤を添加することも好ましい態様であり、好適な難燃剤としては、たとえば、ハロゲン含有化合物、有機リン酸エステル類、三酸化アンチモン、水酸化アルミニウム等の金属化合物が例示される。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0060】
また、有機リン酸エステル類は、可塑剤としても作用する。したがって、硬質ポリウレタンフォームの脆性改良の効果も奏することから、好適な添加剤である。またポリオール組成物の粘度低下効果も有する。かかる有機リン酸エステル類としては、リン酸のハロゲン化アルキルエステル、アルキルリン酸エステルやアリールリン酸エステル、ホスホン酸エステル等が使用可能であり、具体的には、たとえば、トリス(β−クロロエチル)ホスフェート(CLP、大八化学社製)、トリス(β−クロロプロピル)ホスフェート(TMCPP、大八化学社製)、トリブトキシエチルホスフェート(TBXP、大八化学社製)、トリブチルホスフェート、トリエチルホスフェート、クレジルフェニルホスフェート、ジメチルメチルホスホネート等が例示でき、これらの1種以上が使用可能である。有機リン酸エステル類の添加量はポリオール化合物の合計100重量部に対して40重量部以下が好ましく、5〜40重量部であることがより好ましい。この範囲を越えると可塑化効果、難燃効果が十分に得ることができなかったり、フォームの機械的特性が低下するなどの問題が生じる場合が発生する。
【0061】
本発明においては、さらに低粘度化剤を添加することも好ましい態様であり、好適な低粘度化剤としては、難燃剤としてもトリスクロロエチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェートなどが例示される。これらの化合物は単独で使用してもよく、また2種以上を混合して使用してもよい。
【0062】
本発明のポリオール組成物の粘度は、スプレー法による硬質ポリウレタンフォームの製造が容易に行える観点より、1000mPa・s(20℃)以下であることが好ましく、800mPa・s(20℃)以下であることがより好ましい。
【0063】
ポリオール組成物と混合、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリイソシアネート化合物としては、取扱いの容易性、反応の速さ、得られる硬質ポリウレタンフォームの物理特性が優れていること、低コストであることなどから、液状MDIを使用することが好ましい。液状MDIとしては、クルードMDI(c−MDI)(スミジュール44V−10、スミジュール44V−20等(住化バイエルウレタン社製)、ミリオネートMR−200(日本ポリウレタン工業))、ウレトンイミン含有MDI(ミリオネートMTL;日本ポリウレタン工業社製)等が使用される。液状MDIに加えて、他のポリイソシアネート化合物を併用してもよい。併用するポリイソシアネート化合物としては、ポリウレタンの技術分野において公知のポリイソシアネート化合物は限定なく使用可能である。
【0064】
上述の硬質ポリウレタンフォームの製造方法においては、上記ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)が1.7〜2.2より好ましくは1.8〜2.1であり、さらに好ましくは1.8〜2.0である。NCOインデックスを上記等量比に調節でき、触媒が三量化触媒を含有するものとすることがより好ましい。かかる構成により、硬質ポリウレタンフォームを構成する樹脂中にイソシアヌレート結合が多く形成され、難燃性がより一層向上した硬質ポリウレタンフォームを製造することができる。
【0065】
本発明により製造される硬質ポリウレタンフォームの密度は、25kg/m〜50kg/mであることが好ましく、30kg/m〜40kg/mであることがより好ましい。
【0066】
また、本発明のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法は、ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とをスプレー装置により混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤がHFC−245fa、HFC−365mfc、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とする。かかる製造方法を用いることにより、低温下でのフォームの脆さ(フライアビリティ)及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れた硬質ポリウレタンフォームをスプレー法により製造することができる。
【0067】
本発明の製造方法において、一般的に周知のポリウレタン用スプレー発泡・成形装置を適宜用い、用途に応じた形状に成形される。
【0068】
本発明の硬質ポリウレタンフォームは、一般には硬化後の硬質ポリウレタンフォームの厚さが10〜150mmになるようにスプレー発泡されるものであるが、本発明においては、10〜100mmになるようにスプレー発泡される用途に用いられることが可能であり、なかでも10〜80mmになるようにスプレー発泡される用途に用いられることが好ましい。
【0069】
本発明により得られる硬質ポリウレタンフォームは、上記の構成を有することにより低温下でのフォームの脆さ(フライアビリティ)及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性(施工性)に優れたたものとなるため、結露防止及び定温倉庫等の断熱成形体(または断熱ボードなど)に適したものとなる。
【実施例】
【0070】
以下、本発明の構成と効果を具体的に示す実施例等について説明する。なお、実施例等における物性等の評価方法は次の通りである。
【0071】
〔ポリウレタン組成物の原料〕
表1の上段に記載した組成にてポリオール組成物を調製した。ポリウレタンフォームの製造に使用したポリウレタン組成物の内容や製造会社等は以下のとおりである。
・ポリオールA:芳香族ジカルボン酸エステルポリオール、水酸基価250(オキシド社製)
・ポリオールB:アジピン酸エステルポリオール、水酸基価250(日立化成社製)
・ポリオールC:マンニッヒポリオール、水酸基価350(第一工業社製)
・ポリオールD:エチレンジアミン系ポリオール、水酸基価760、官能基数4(旭硝子社製)
・ポリオールE:エチレンジアミン系ポリオール、水酸基価500、官能基数4(旭硝子社製)
・ポリオールF:ビスフェノールA、水酸基価315(旭硝子社製)
・ポリオールG:エチレンジアミン系ポリオール、水酸基価815、官能基数4(三井ポリウレタン社製)
・架橋剤:アルキレングリコール、水酸基価555(花王社製)
・難燃剤:トリス(β−クロロピル)ホスフェート
・整泡剤:SH−193(東レ社製)
・アミン触媒:トリエチレンジアミン
・4級アンモニウム塩触媒:カオライザー 420(花王社製)
・オクチル酸カリウム:巴工業社製
・オクチル酸鉛:大日本インキ社製
【0072】
〔硬質ポリウレタンフォームの作製条件〕
実施例、比較例は表1上欄に記載した配合により、ポリオール組成物を調製した。なお、ポリオール化合物の全量を100重量部として、難燃剤20重量部、整泡剤(東レ社製、SH−193)3重量部、発泡剤はHFC−245fa/HFC−365mfc=80/20(重量比)に調製して使用した。
【0073】
また、硬質ポリウレタンフォームの製造においては、ポリオール組成物とポリイソシアネート成分との混合におけるイソシアネート基/活性水素基当量比(NCOインデックス)を表1に記載した比率となるように吹付け発泡機にて混合し、面材である600mm×900mmの合板に吹付け発泡して、製造した。以下に記載の評価を行い、結果を表1下段及び表2に示した。
【0074】
〔硬質ポリウレタンフォームの評価〕
実施例等で作製した硬質ポリウレタンフォームの各種特性について、以下に述べるように評価した。
【0075】
(横伸びの評価)
実施例等で作製したポリオール組成物とポリイソシアネート成分を混合した液を平面に、吹付け発泡させた際の吹付け厚みと、フォーム伸びの比(フォーム伸び/吹付け厚み)を測定し、横伸びの評価を行い、その結果を表1下段及び表2に示した。なお、評価基準として以下の基準を用いた。
◎:伸び率が1.1未満の場合
○:伸び率が1.1〜1.3未満の場合
△:伸び率が1.3〜1.4未満の場合
×:伸び率が1.4以上の場合
【0076】
(施工性の評価)
低温(雰囲気温度:−5〜−2℃、吹付け面温度(スレート):−2〜0℃)時における吹付け直後のフォームの液だれを観察し、その結果を表1に示した。なお、評価基準として以下の基準を用いた。
◎:液だれが認められない場合
○:液だれは認められるが、施工上問題が生じない場合
△:液だれが認められ、施工上問題が生じる場合
×:液だれにより、ほとんど吹付け面にフォームが残存しない場合
【0077】
(フライアビリティの評価)
実施例等で作製した硬質ポリウレタンフォームを用いて、フライアビリティの評価(薄吹き箇所のフォーム粉感官能評価)を行い、これらの結果を表1に示した。フライアビリティの程度はフォームの感触によって評価した。なお、評価基準として以下の基準を用いた。また、硬質ポリウレタンフォームの吹付け25、30、35分後について、更に評価し、結果を表2に示した。
◎:時間経過後の十分に樹脂の硬化が進んでおり、粉が認められない場合
○:時間経過後のほぼ樹脂の硬化が進んでおり、粉がほぼ認められない場合
△:時間経過後の樹脂の硬化が不十分であり、粉が認められる場合
×:時間経過後の樹脂の硬化が進んでおらず、粉が認められる場合
【0078】
(接着性の評価)
実施例等で作製した硬質ポリウレタンフォームを用いて、オートグラフでの垂直引張り(JIS A 9526、自己接着強さの測定手法)にて接着性を評価し、表1に示した。なお、評価基準として以下の基準を用いた。
○:フォームが破断した場合
×:界面が破断した場合
【0079】
(接着強度)
硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物をスプレー後、端部に幅50mm×長さ10mmの切れ目を入れ、引張治具を硬質ポリウレタンフォームの伸びた部分にかけ、オートグラフでの垂直引張り(JIS A 9526、自己接着強さの測定手法)にて接着強度を評価した。接着強度の測定は180、240、300、360、480、600秒後について測定し、その結果を表2に示した。
【0080】
(難燃性の評価)
実施例等で作製した硬質ポリウレタンフォームを用いて、JIS 1321の燃焼試験に準拠して試験をおこない、難燃性の評価を行った。その結果を表1に示した。
○:適合
×:不適合
【0081】
(実施例、比較例)
得られた硬質ポリウレタンフォームの評価結果を表1下欄及び表2に示した。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

注)吹付け方法
(1):一発吹き付けにより、硬質ポリウレタンフォームが25mm厚になるように調製した。
(2):下吹きして30秒後、硬質ポリウレタンフォームが25mm厚になるように調製した。
(3):下吹きして180秒後、硬質ポリウレタンフォームが25mm厚になるように調製した。
【0084】
これらの結果から、本発明の構成を有する実施例1〜3のいずれにおいても、低温下でのフライアビリティ及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、断熱性、および作業性(施工性)に優れる硬質ポリウレタンフォームが得られることが分かった。
【0085】
一方、本発明の構成を有さない比較例1〜5は、得られた硬質ポリウレタンフォームのうち、比較例1、3〜5においては、低温下でのフライアビリティを抑制することができず、接着性についても、非常に劣る結果となった。また、比較例1〜3では、横伸びを抑制することができず、面材との接着性、および作業性の全ての特性を満足できるものではなかった。
【0086】
以上より、本発明のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物を用いることにより、低温下でのフライアビリティ及び横伸びを抑制し、面材との接着性、難燃性、および作業性に優れる高断熱性の硬質ポリウレタンフォームが得られることが確認できた。



【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含み、スプレー装置によりポリイソシアネート成分と混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームを形成するポリオール組成物であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤が1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロパン(HFC−245fa)、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン(HFC−365mfc)、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とするスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項2】
前記ポリオール化合物100重量部中、前記アジピン酸エステルポリオールが10〜60重量部含まれることを特徴とする請求項1に記載のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォーム用ポリオール組成物。
【請求項3】
ポリオール化合物、発泡剤、整泡剤および触媒を含むポリオール組成物とポリイソシアネート成分とをスプレー装置により混合し、反応させて硬質ポリウレタンフォームとする硬質ポリウレタンフォームの製造方法であって、
前記ポリオール化合物がアジピン酸エステルポリオールを含むものであり、
前記発泡剤がHFC−245fa、HFC−365mfc、および水を含むものであり、
前記触媒がアミン触媒及び4級アンモニウム塩触媒を含むことを特徴とするスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法。
【請求項4】
前記ポリオール化合物100重量部中、前記アジピン酸エステルポリオールが10〜60重量部含まれることを特徴とする請求項3に記載のスプレー発泡硬質ポリウレタンフォームの製造方法。


【公開番号】特開2010−24347(P2010−24347A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187159(P2008−187159)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】