説明

スプロケット

歯形状(15)を有するリム(12)を有する鋳造ホイール(10)と、リムの歯形状と略一致する歯形状(21)及び厚さを有するリング(20)とを備え、リングはリムに圧入され、リングは鋳造ホイールの硬度よりも高い硬度を有する金属材料を備えるスプロケット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスプロケット、すなわち耐摩耗金属被覆を有する鋳造スプロケットに関する。
【背景技術】
【0002】
スプロケットは、歯付きベルトと共に動力伝達システムに用いられる。最も一般的なアプリケーションの一つは、自動二輪車の駆動システムである。自動二輪車における後輪駆動のためのスプロケットは、通常、直径25.4から38.1センチメートル(10インチから15インチ)の範囲である。これらのスプロケットは、動力を伝達し、摩耗に耐え、腐食に耐え、そして自動二輪車の露出部に取り付けられたとき美感的に許容され得なければならない。
【0003】
これらのスプロケットは、(摩耗に耐えるために)強化クロームメッキされた溝を有する鋳造アルミニウムの、又は成型され塗装された鋼板のスプロケットである。アルミニウムスプロケット上のクロームメッキ層は、相対的に短命である。クロームメッキ層は、通常、摩耗又は欠損する。クロームメッキが失われた後、下層のアルミニウムは非常に急激に摩耗する。
【0004】
要求される厳しい許容誤差に歯と溝の正確な寸法を保つため、クロームメッキは非常に正確に適用されなければならない。許容誤差のいずれかの不足は、ベルト及びスプロケットの摩耗、すなわち望ましくない結果に拍車をかける。また、クロームメッキは非常に高価な処理である。
【0005】
鋼板スプロケットは、鋳造部品の美的特徴を有し得ないため、自動二輪車の駆動スプロケットとして一般に用いられない。これは、鋳造品が三次元デザインを有するのに対し、鋼板スプロケットは表面が平らだからである。また、鋼板を環境にさらしながら歯領域にある塗料をベルトが摩耗させると、それらは錆びる。
【0006】
従来技術は、プラスチック母材に配された不連続繊維のような第1の複合材料から成るリム部を有し、かつ繊維性材料及びエラストマ母材及び母材に埋め込まれた繊維を有する第2の複合材料の全周層でリム部の歯が覆われる歯付きスプロケットを開示するレッドモンド(1992)に付与された米国特許第5,098,346号明細書である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
必要とされるものは、耐摩耗金属被覆を有する鋳造スプロケットである。本発明はこの目的に合致する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の側面は、耐摩耗金属被覆を有する鋳造スプロケットを提供することである。
【0009】
本発明の他の側面は、本発明に対する以下の記述及び付随する図面により指摘され、あるいは明らかにされる。
【0010】
本発明は、歯形状を有するリムを有する鋳造ホイールと、リムの歯形状と略一致する歯形状及び厚さを有するリングとを備え、リングはリムに圧入され、リングは鋳造ホイールの硬度よりも高い硬度を有する金属材料を備えるスプロケットを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
この明細書に含まれ、そして一部を形成する付随する図面は、この明細書と共に本発明の好ましい実施形態を表し、本発明の原理を説明するために役立つ。
【0012】
本発明は被覆されたスプロケットを備える。
スプロケットは、ホイールリムに取り付けられた外側リング状被覆を有する内側ホイールを備える。鋳造アルミニウム、鋳造マグネシウム、フェノール樹脂、ウレタン、又は動作上のトルク負荷に耐えうる他の任意の適切な材料といった相対的に高価でなく、かつ軟質の材料をホイールが備える。本発明によるスプロケットに用いられ得るダイカストアルミニウム合金は380、すなわちASTM(American Society for Testing and Materials、米国材料試験協会)designation SC84Aである。また適するものは、384及び390合金である。鋳造の硬度は、約25ロックウェルBスケールから55ロックウェルBスケールの範囲にある。
【0013】
歯状面と係合するベルトによって生じる摩耗に耐えるに十分な硬度を持つ金属材料を外側リングが備える。外側リングは、ホイールの硬度よりも高い、すなわち約55ロックウェルBスケールよりも高い硬度を有する。
【0014】
本発明のスプロケットは、少しだけ例を挙げると、自動二輪車のベルトドライブ、ゴルフカート、及びATVドライブを含む様々なアプリケーションで用いられ得る。本発明によるスプロケットは、長動作寿命のために耐摩耗ベルト耐久面を有し、加えられたトルク負荷に耐える適切な強度の軽量かつ高価でない材料を必要とする任意のサービスで用いられてもよい。
【0015】
図1は、本発明によるスプロケットの右側面図である。スプロケット100はホイール10を備える。ホイール10は、ハブ11及びリム12を備える。リム12は歯15を備える。リム12は、公知の平面、又はリブ形状を含む、好ましい任意の形状を備えてもよい。歯15は、限定する目的で示されるものではない。歯15の形状は、参照としてその全体がここに援用される米国特許第4,605,389号明細書において開示されるものを含む、任意の公知技術を備えてもよい。リング20はリム12と係合する。被覆として特徴付けられるリング20は、リム12上の歯15と略一致する歯形状を形成するために、歯21を備える。リング20はまた、ベルト係合面22を備える。リング20は、摩耗に抵抗するために、ホイール10の硬度よりも高い硬度を有する。
【0016】
スプロケット100は、動力伝達システムにおける歯付きベルトBのような無端ベルト部材と係合する。そのような動力伝達システムは、変速機スプロケットと車輪スプロケットとを備える自動二輪車の二次駆動装置(図示しない)を有しうるが、これに限定されない。リング20の面22はベルトBと係合する。
【0017】
図2は、本発明によるスプロケットの左側面図である。ホイール10は、リング20の半径よりも大きい半径まで延びるフランジ13を備える。これは、側面方向の動きを調節することによって、リング20と適切に係合するベルト(図示しない)をフランジ13が保持することを可能にする。本発明によるスプロケットは、2つのそのようなフランジをリム12の両側に備えてもよい。
【0018】
リング20は、スプロケット歯15と略同形状を有する正確に成形されたステンレススチール被覆を備える。リング20は、約0.5mmから3mm厚の範囲にある。
【0019】
ホイール10は、シャフト(図示しない)にスプロケットを取り付けるためのハブ11を備える。穴14は、シャフト、又は自動二輪車の車輪ハブ(図示しない)にハブ11を取り付けるためのボルト(図示しない)といったファスナを受容する。
【0020】
以下は、スプロケットを製造する2つの例示的な方法であり、限定ではなく、一例として示される。
【0021】
第1の製造処理:
【0022】
a.ホイール10は、公知の手段を用いてダイカストアルミニウムにより製造される。リング20がホイール10の所定位置にあるときに、面22まで測定された最終製品直径D1よりも約0.5mmから3mm短い、完成リム外側面150寸法をホイール10が有する。最終製品直径に対する許容誤差は、ベルトがスプロケットと係合する面、すなわち面22におけるスプロケットの直径を含むシステム設計パラメータを調整する意図である。もちろん、最終製品直径が制限されないのであれば、ホイールを製造する間にリング20の厚さを補正する必要がない。アルミニウムホイールの硬度範囲は、約25から55のロックウェルBスケール(当量)である。他の実施形態において、ビレット材を機械加工することによりホイール10が形成されてもよい。
【0023】
b.ホイール10は、一定の大きさにされ、すなわち公知の手段によるアイロニング金型内でアイロニングされる。図4は、アイロニング金型工具の断面図である。アイロニング金型100は、非常に正確な寸法にホイール10の外側面150を製作するために用いられる。アイロニング金型は、他の頂面に積み重ねられる、例えば5部品である1以上の部品101、を備えてもよい。ホイール10は、第1のアイロニング金型と略適合する寸法である歯15及び溝16を有する前述の第1のダイカストである。連続する金型部品において、ホイールにおける外側歯領域の金属は、各処理が前の処理よりも約0.25mm(0.001インチ)小さくなるように、非常に正確に寸法取りされたアイロニング金型部品を通り方向Mに向けてラム102により押し出される。図5は、アイロニング金型の平面図である。アイロニング金型101は、ホイール10に歯形状をアイロニングする形状103を備える。最終結果は、完成ホイール10のための、寸法的に正確な外側面150及び歯形状である。アイロニング処理は、鋳物ホイールの寸法におけるいかなる寸法的な不正確さをも著しく削減又は排除するために実行される。ホイール10は、図1に示されるように、正確な外側歯形状を有することとなる。
【0024】
c.リング20は、ステンレススチール(又は、低炭素鋼、高炭素鋼、又は合金鋼といった他のスチール、及び非鉄金属)から成る。リング20は、約0.5mmから3mm厚のストリップから形成され、その端部はリングを形成するために互いに溶接される。溶接部17が図3に示される。ストリップは、リム12の幅と略同じ幅を有する。リム12は、スプロケット上に用いられるベルトと協働的に適合するための幅、例えば約20mmかた25mm幅を有するが、この寸法は用いられるベルトの幅に応じて変更されうる。リング20は、ホイール歯15に略一致するための形状を有する。被覆20は、ローリング、スピニング、液圧成型、又はプレス成形を含むが、限定されない公知の手段により成型されうる。被覆は、金属コイルを波形形状にロール成型し、その後所望の幅にそのストリップを切断することにより製作され、リングの製造、及びリングの端部との溶接が後に続く。プレス成形は、一般的に最も安価であり、好ましい選択対象である。ステンレススチールリングの硬度範囲は、約90のロックウェルBスケール(9ロックウェルCスケールと等しい)以上である。もし必要であれば、例えば、高ダスト又は異物付着といった厳しい動作状況に対し、リング20は、約62ロックウェルCスケールまで硬化される容器となりうる。
【0025】
d.リング20は、径方向外側へのリングの動きを制限、すなわちホイール10がリング20内に圧入されるときにリング20が拡張することを防止する、リング20と一致する形状を有する工具の中に置かれる。工具は、完成されたスプロケットの最終形状と寸法的に適合する形状を有する。ホイール10はリング20に圧入される。
【0026】
e.いかなる側面方向、円周方向、又は径方向にリングがホイール上で動くことを防止するために、複数の機械的ロッキング手段が用いられ得る。これは、タブ、溝、フランジ、杭、槍、ピーニング、加えて任意の他のこれらの適切な均等物であってもよいが、これらに限定されない。例えば、フランジ13はリング20の側面方向の動きを妨げる。ピーニング又は杭穴30が図1に示される。
【0027】
第2の製造処理:
【0028】
この処理において、リング20は前述のように製作される。その後、リング20は、アルミニウムダイカスティングオーバーモールド内に置かれ、これによりホイール10、そして要求されるのであればフランジ13が、リング20にオーバーモールドされる。この手段は、第1よりも少ないステップを有し、ホイール10とリング20との間でより良好な接合状態を形成する。1又は複数のフランジが歯状リングの周囲に同時に鋳造されてもよい。オーバーモールドのために選択されるアルミニウム合金は、液体から固体相までわずか又は全く収縮してはならない。そのような合金は公知であり、本明細書に前述されているものを含む。オーバーモールディングに対する標準的なダイカスト処理に加え、アルミニウムの半固体高圧モールディングもまた公知であり、用いられ得る。
【0029】
しかしながら、固化の間にアルミニウム合金は約7%収縮するため、標準的なオーバーモールディングは最適でないが、なぜならこれがステンレススチールリング20と比較してアルミニウムコアに対し大きな収縮をもたらすためである。従って、オーバーモールの選択肢に対して、コアホイール10は、収縮を補償するために容易に加圧され又は鍛造され得るような手段でアルミニウムのために設計される。例えば、固体化後に内側に、すなわち半円球を平らにするような軸方向に押され、これにより鋳造収縮を補正するためリム部12を外側に押しやるハブ11に、わずかな半円球形状が形成されうる。
【0030】
他の実施形態は、オーバーモールドホイール10のコアに対し、グラスファイバ及び無機充填フェノール樹脂といった非収縮材料を用いる。そのような材料は、アプリケーション負荷を取り扱うための十分な強度があり、欠損又は収縮しない。グラスファイバはフェノール樹脂に強度と欠損耐性を与え、無機充填剤はそれらに寸法安定性を与える。ホイール10に対する他の代替的な材料のいくつかは、他の熱硬化性樹脂、マグネシウム、及び熱可塑性樹脂である。
【0031】
本発明による利点は、軽量かつ耐摩耗性のあるスプロケットである。本発明によるスプロケットは、従来技術よりも製造するための費用がかからない。フランジは、かなりの追加コスト無くスプロケットに付加されうる。本発明によるスプロケットは、非常に正確で、強く、耐摩耗性のある歯及び溝領域を生成する一方で、任意の所望の表面設計がホイールに容易に鋳造されることを可能にする。最後に、本発明によるスプロケットは耐腐食性があり、塗装又は他の耐腐食仕上げを必要としない。
【0032】
図3は、図1の詳細である。リム12上の歯15は外側面150を備える。外側面150は、リング20上の面220と係合する。溝16は、歯15に近接して設けられる。溶接部17でリング20の端部が溶接される。
【0033】
ここに本発明の複数の実施形態が説明されたが、記載された発明の範囲と精神から逸脱することなく、変形が各部の構造と関係に施されることは、当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明によるスプロケットの右側面図である。
【図2】本発明によるスプロケットの左側面図である。
【図3】図1の詳細である。
【図4】アイロニング金型工具及びホイールの断面図である。
【図5】アイロニング金型の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無端駆動部材と係合するためのスプロケットであって、
歯形状を有するリムを備える鋳造ホイールと、
前記リムの歯形状と略一致する歯形状及び厚さを有し、前記リムに圧入されるリングとを備え、
前記リングは前記鋳造ホイールの硬度よりも高い硬度を有する金属材料を備え、
前記リングは前記無端駆動部材と係合するための面を有するスプロケット。
【請求項2】
前記鋳造ホイールはアルミニウムを備える請求項1に記載のスプロケット。
【請求項3】
前記リングはスチールを備える請求項1に記載のスプロケット。
【請求項4】
前記鋳造ホイールは、前記ホイールをシャフトに取り付けるためのハブを備える請求項1に記載のスプロケット。
【請求項5】
前記リングは、互いに接合される端部を有するストリップを備える請求項1に記載のスプロケット。
【請求項6】
前記厚さが約0.5mmから約3mmの範囲である請求項1に記載のスプロケット。
【請求項7】
歯形状を有するホイールを鋳造し、
前記歯形状の寸法を調節するために前記ホイールをアイロニングし、
歯形状を有する金属リングを形成し、
前記金属リングが外側に拡張することを防ぐために前記金属リングを拘束し、
前記金属リングに前記ホイールを圧入するスプロケットを製造する方法。
【請求項8】
前記金属リングの形成は、前記金属リングを形成するためにスチールストリップの端部を互いに溶接することを備える請求項7に記載の方法。
【請求項9】
約0.5mmから約3.0mmの範囲の厚さを有する材料を用いて前記金属リングを形成することをさらに備え、
前記金属リングは前記ホイールの硬度よりも高い硬度を有する請求項7に記載の方法。
【請求項10】
歯形状を有するホイールを鋳造することは、プレス成形を備える請求項7に記載の方法。
【請求項11】
歯形状を有する金属リングを形成し、
ダイカストモールドに前記リングを配置し、
前記リングの中にホイールを鋳造する
スプロケットを製造する方法。
【請求項12】
歯形状を有する金属リングを形成することは、リングを形成するためにステンレススチールのストリップの端部を互いに溶接することをさらに備える請求項11に記載の方法。
【請求項13】
約0.5mmから約3.0mmの範囲の厚さを有する材料を用いて前記金属リングを形成することをさらに備え、
前記金属リングは前記ホイールの硬度よりも高い硬度を有する請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2008−545925(P2008−545925A)
【公表日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−512283(P2008−512283)
【出願日】平成18年4月14日(2006.4.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/014016
【国際公開番号】WO2006/127170
【国際公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】