説明

スペクトル触媒

【課題】この発明で使用されるスペクトル触媒は、物理的触媒により反応系に通常与えられるエネルギーに取って代わり、及び/またはそれを増補することができる。スペクトル触媒は、また反応速度を増加させるための正触媒、または反応速度を低減するための負触媒、の両方として作用し得る。
【解決手段】物理的触媒の電磁スペクトルパターンを複製し、そして反応系に応用された時にはその反応系を抑制及び/または促進するために電磁エネルギーの形態でエネルギーの量子を伝えるスペクトル触媒により、多様な反応が、有利に影響を受けそして導かれ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反応系を、物理的触媒のスペクトルパターンに匹敵する電磁エネルギーの振動数(単数または複数)に曝すことにより化学反応を抑制及び/または導く新規な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
化学反応は、反応媒体に対して熱及び電磁エネルギーの形でエネルギーを加えることにより、または物理的触媒を介してエネルギーを伝達することにより、活性化され、または促進され得る。これらの方法は、エネルギー効率的でなく、所望されない副生物、必要遷移状態の分解、または好ましい製品の不十分な品質を生じ得る。
【0003】
一般的に、化学反応が反応する分子同士の衝突の結果として起こることは真実である。化学動力学の衝突理論に関して、反応の速度が1秒当たりの分子衝突の数、または分子衝突の頻度に正比例することが予期される:
速度 ∝ 衝突の数/秒
【0004】
この簡単な関係は、反応速度の濃度への従属を明らかにする。さらには、殆ど例外なく、反応速度は、増加する衝突の故に温度の上昇に伴って増大する。
【0005】
反応の速度定数κの従属は、アーレニウス式として知られる下記の式によって表される:
κ=Ae-Ea/RT
ここに、Eaは化学反応を開始するのに必要とされる最小エネルギー量であり、Rは気体定数、Tは絶対温度、そしてeは自然対数尺度の底である。量Aは、衝突頻度を表し、そして速度定数がAに、従って衝突頻度に正比例することを示す。さらには、指数Ea/RTに付いている負の記号の故に、速度定数は、活性化エネルギーの増加に伴い減少し、そして温度の上昇に伴って増加する。
【0006】
通常、衝突する分子の内のわずかなもののみ、最も速く移動しているものが、活性化エネルギーを超えるのに充分な運動エネルギーを持っているので、速度定数κは、今や温度上昇によって説明付けられる。より高エネルギーの分子が、より高い温度で存在するので、生成物の生成速度は、そのより高い温度においてまた大きくなる。しかし温度の上昇に伴って、反応系に導入される多数の問題がある。熱励起によって、結合の開列裂のような他の競合プロセスが、所望のエネルギー状態に到達し得る前に、起こり得る。また、極めて反応性の断片をしばしば生じさせる多数の分解生成物があるが、好ましい反応が低下されうるそれら分解生成物の熱力学的不安定性の故に、それらは短時間の寿命である。
【0007】
輻射または光エネルギーは、熱エネルギーの負の副効果なしで、反応媒質に加えられ得る別の形のエネルギーである。系への輻射の添加は、化学反応を受け得る電子的に励起された分子を生じさせる。
【0008】
全ての電子が安定な軌道にある分子は、基底電子状態にあると言われる。これらの軌道は、結合性または非結合性であり得る。適正なエネルギーの光子が分子と衝突すると、すなわち光子が吸収されると、電子の一つがより高エネルギーの未占拠軌道へと推し進められ得る。電子的励起は、原子価電子の空間再分布をもたらし、結果としての核内形状の変化をもたらす。化学反応は、これらの因子によって大きく制御されるので、電子的励起分子は、基底状態の同一物のものとは明確に異なり得る化学反応を受ける。
【0009】
光子のエネルギーは、その振動数または波長に関して定義される、
E=hν=hc/λ
ここで、Eはエネルギーであり;hはプランクの定数、6.6×10-34 J・秒-1であり;νは輻射の振動数、秒-1であり;cは光の速度であり;そしてλは輻射の波長である。光子が吸収された時に、その全てのエネルギーは吸収している物質種に対して賦与される。吸収に続く主要な作用は、入射光の波長に依存する。エネルギーが電磁スペクトルの紫外領域(100−4000Å)及び可視領域(4000−7000Å)内にある光子が、光化学で研究されている。そのような光子は、主として、電子的に励起された分子を生じさせる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
分子は、光の吸収の時に電子エネルギーを取り込むので、反応が熱的に励起された系で遭遇するものとは全く異なるポテンシャルエネルギー表面から生じる。しかしながら、公知の光化学の技術の使用のいくつかの欠点、すなわち、広い帯域の振動数を用いて、それにより望ましくない副反応、過度な実験、及び劣った量子収量をもたらすことが、ある。
【0011】
触媒は、最終生成物中に現れることなく、化学反応の反応速度を変える物質である。ある種の反応は、自身では反応終了後に変化なしのままでいる物質の存在によって、速度を上げられ、または抑制されることが知られている。所望しない反応に相対して所望の反応の速度を増加することにより、所望の生成物の形成が不所望の副生物と比較して最大化される。反応を加速するのにしばしば痕跡の触媒が必要とされるに過ぎない。また、ある種の物質は、たとえ痕跡量で加えられても、反応の速度を低下させ得ることが見出されている。これは、触媒作用の反対のように見え、実際に、反応速度を低下させる物質は負触媒と呼ばれてきている。公知の触媒は、それらが繰り返し使用され得るように、それらが使用されそして再生されるサイクルを経る。触媒は、触媒の不存在のときに得られるよりも高い反応速度、あるいは遅い反応速度を有し得る反応のための別の経路を与えることにより働く。反応の終わりに、触媒は回収され得るので、触媒が反応に関与しなかったように見える。しかし、触媒は、反応において役割を演じている筈であり、さもなければ反応速度は変化しないであろう。触媒の作用は、過去5つの主要ステップで現わされてまた:
1.触媒作用部位への拡散(反応剤)
2.触媒作用部位での結合の形成(反応剤)
3.触媒−反応剤錯体の反応
4.触媒作用部位での結合の解裂(生成物)
5.触媒作用部位からの拡散退去(生成物)
触媒作用の正確な機構は、知られていないが、触媒なしでは実用的には遅すぎる反応を高速化することができる。
【0012】
公知工業的触媒に関わる多数の問題がある:第1に、触媒はその効率を失うだけでなくその選択性も失うことがあり、これは触媒の過熱または汚染により起こり得る;第2に、多くの触媒は白金または銀のような高価な金属を含み、そして限定的な寿命期間しか有せず、あるものは新品様に再生が困難であり、また貴金属が容易に回収されない。
【0013】
従って、化学反応を公知の物理的触媒の欠点なしで、かつ熱的の公知の電磁輻射方法よりも高い特異性でもって、接触反応させる方法が必要とされているのである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
用語
本発明の目的のために、以下、明細書及び請求の範囲に現れる用語ならびに表現は、下記の意味を持つものと意図されている。
ここで使用される「スペクトルパターン」は、原子または分子の励起後に発生または吸収される一つまたはそれ以上の電磁振動数により形成されるパターンをi意味する。
ここで使用される「触媒スペクトルパターン」は、化学反応系にビームまたは場(field)の形で加えられた時に、下記のように化学反応に触媒作用を及ぼすことができる物理的触媒のスペクトルパターンを意味する:
a)物理的化学的触媒に完全にとって代わる;
b)物理的化学的触媒と調和して作用して反応速度を増加させる;
c)負触媒として作用して、反応速度を低減する;あるいは、
d)特定生成物の形成のための反応の経路を変える。
ここで使用される「スペクトル触媒」は、化学反応に影響を与え、制御し、または導く触媒スペクトルパターンを有する触媒として作用しうる電磁エネルギーを意味する。
ここで使用される「振動数」は、正確な振動数または実質的に近似の振動数を包含する。
【0015】
本発明の目的は、化学反応に関与する反応剤を開始させ、活性化し、または反応剤に影響を与え得る少なくとも1つの電磁エネルギー振動数を有するスペクトル触媒の形で電磁エネルギーを印加することにより化学反応を制御または導くことである。
この点に関して、本発明の主要な目的は、化学反応における既知の物理的触媒を取り替え、及び/または補増するための効果的、選択的かつ経済的な方法を提供することであり、その方法は:
a) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも一つの振動数を複製し;そして
b) その化学反応系を、該複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも一つの振動数にその化学反応に触媒作用を与えるのに足りる量で、暴露する;
ことを含む。
本発明の別の目的は、化学反応系における物理的触媒をスペクトル触媒で取り替える方法を提供することであり、その方法は:
a) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンを決定し;
b) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数を少なくとも1つの電磁エネルギー発生源でもって複製し;そして
c) その化学反応系を、その化学反応に触媒作用を与えるのに充分な量および時間、その複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも1つの振動数に、暴露する;
ことを含む。
【0016】
本発明の更なる目的は、物理的触媒を増補することによりスペクトル触媒で化学反応に影響を与え、それを導く方法を提供することであり:その方法は:
化学反応系における物理的触媒をスペクトル触媒で取り替える方法であって:
a) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数を少なくとも1つの電磁エネルギー発生源でもって複製し;
b) その化学反応系を、ほぼ無線振動数からほぼ紫外振動数の振動数範囲を有するその複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも1つの振動数でもって、該化学反応に触媒作用をなすのに足りる時間、照射し;そして
c) 反応系に物理的触媒を導入する;
ことを含む。
【0017】
上記方法は、物理的触媒の電磁スペクトルパターンでの反応系の照射前、及び/または照射中、及び/または照射後に、反応系に物理的触媒を導入することにより実施でき;あるいは、反応系を物理的及びスペクトル触媒に同時に暴露することもできる。
【0018】
本発明の更なる目的は、スペクトル触媒を用いて反応系に影響を与え、それを導く方法を提供することであり、その方法は:
a) 反応系の出発反応剤についての電磁スペクトルパターンを決定し;
b) 反応系の目的生成物についての電磁スペクトルパターンを決定し;
c) その反応剤及び生成物の電磁スペクトルパターンから追加電磁スペクトルパターンを計算して、触媒作用スペクトルパターンを決定し;
d) その触媒作用スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数を発生させ;そして、
e) 反応系をその触媒作用スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数で照射する;
ことを含む。
【0019】
本発明において置き換え、または増補され得る特定の物理的触媒は、固体、液体または気体触媒であってもよく、そして均一系または不均一系の触媒活性を有していてよい。均一系触媒は、その分子が反応化学物質と同一の相に分散されるものとして定義される。不均一系触媒は、その分子が反応化学物質と同一の相内に無いものとして定義される。さらに、生物学的触媒と考えられる酵素触媒は、本発明に包含される。置き換えまたは増補されうる触媒の若干の例は、元素触媒及び分子触媒の両方を含み、限定的ではなく、銀、白金、ニッケル、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及び鉄のような金属;NiO,ZnO,MgO,Bi23/MoO3,TiO2,SrTiO3,CdS,CdSe,SiC,GaP,WO2、MgO3のような半導体金属酸化物及び硫化物;硫酸銅;Ai23,SiO2及びMgOのような絶縁性酸化物;四塩化チタン、及びトリアルキルアルミニウムのようなチーグラー・ナッタ触媒が包含される。
【0020】
何らの特定の作用理論に拘泥する意図はないが、物理的触媒は、反応を開始、及び/または促進して中間体及び/または最終製品を形成する必要な活性化エネルギーを系に与えるものと信じられる。従って、ここに、物理的触媒のスペクトルパターンを複製し、反応系を電磁照射線の形の電磁エネルギーに暴露することにより、物理的触媒を置き換えられることが判明した。特定の振動数(単または複数)を有するエネルギー量子は、分光分析法によって決定することができ、反応系に何らかの電磁エネルギー発生源から照射手段によって分配され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
好ましい具体例の説明
多様の反応が、反応系を開始し、制御し、及び/または促進するために予め定められたエネルギー量子を移行させる特定電磁スペクトルパターンを有するスペクトル触媒の助力により有利に影響されそして導かれ得る。本発明において使用されるスペクトル触媒は、物理的触媒によって通常供給される追加のエネルギーを置換しそして与えることができる。スペクトル触媒は、反応速度をぞうだいさせるための正触媒として、及び反応速度を低減させる負触媒として、両方の作用をなし得る。さらにはスペクトル触媒は、物理化学触媒と一緒に反応系で使用することにより物理化学触媒を補増することができる。スペクトル触媒は、化学触媒の活性を改善することができ、また多くの反応の高い圧力及び温度の要件を除くこともできる。また、スペクトル触媒は、単に化学触媒の特定量に取って代わって多くの工業的反応における物理的触媒の高コストを低減できる。
【0022】
本発明において、スペクトル触媒は、化学反応を開始し及び/または促進するために充分な時間にわたり充分な量で、特定振動数(単または複数)を含む電磁照射を与える。スペクトル触媒からの電磁エネルギーの吸収により、化学反応は、化学反応の開始のためのより高いエネルギー状態へ電子を励起し得るエネルギー移転;化学反応に参加し得る反応剤をイオン化または解離させる;目的生成物を安定化させる;及び化学反応に関与する中間体にエネルギーを与えまたは安定化させる;ことを含む一つまたはそれ以上の経路を介して進行し得る。
【0023】
もしある化学反応が、少なくとも1つの反応剤“A”が少なくとも1つの生成物“B”に転化されるようにするものであるならば、物理的触媒“C”が利用され得る。対照的に、スペクトル触媒のスペクトルパターンは、反応に触媒作用を与えるために電磁ビームまたは場の形で印加されうる。
【0024】
【数1】

【0025】
本発明において、触媒剤“C”の電磁スペクトルパターンは公知の分光法によって決定できる。分光分析機器をもちいて、物理的触媒剤の電磁スペクトルパターンは、物理的触媒を用いる化学反応において生じている条件とほぼ似ている条件下で決定されるのが好ましい。分光分析法は、系の許容状態(複数)間のエネルギー差を、吸収または放出される対応電磁エネルギーの振動数を決定することにより、測定する方法である。分光分析法は、一般に、電磁照射と物質との相互作用を取り扱う。光子が原子または分子と相互作用すると、原子及び分子の性質の変化が観察される。
【0026】
原子及び分子は、いくつかの異なるタイプの運動と関連している。分子全体が回転し、結合部分が振動し、そして通常はわれわれが電子密度分布として取り扱う程に急速であるにも拘わらず、電子が動くことさえある。この種の運動のそれぞれは量子化される。すなわち、原子または分子は、非連続のエネルギー含量に対応する区別され得る状態でのみ存在し得る。異なった量子状態の間のエネルギー差は係わる運動のタイプに依存する。従って、転移を生じさせるのに必要とされるエネルギーの波長は異なるタイプの運動ごとに異なる。すなわち、各運動タイプは、電磁スペクトルのいろいろな領域におけるエネルギーの吸収に対応し、異なる分光分析装置が各スペクトル領域に必要とされうる。ある原子または分子の全運動エネルギーは、その電子的、回転、及び振動のエネルギーの合計と考えられる。
【0027】
発光及び吸収の両スペクトルにおいて、原子または分子中のエネルギー変化と発光または吸収電磁エネルギーの振動数との間の関係は、いはゆる、ボアー振動数条件によって与えられる。
△E=hv
ここに、hはプランクの定数であり、vは振動数であり、そして△Eは最終及び初期状態でのエネルギーの差である。
【0028】
電子スペクトルは、一つの原子または分子でのある電子エネルギーレベルから他のレベルへの電子の移動でもたらされる。分子状の物理触媒のスペクトルパターンは電子エネルギー移転のみならず、回転エネルギーレベルと振動エネルギーレベルとの間の移転をも含み得る。結果として、分子のスペクトルは、原子のスペクトルよりもはるかに複雑である。光子との相互作用の後の原子または分子観察される主たる変化は、励起、イオン化及び/または化学結合の破壊が包含され、これらの全てはエネルギーレベル分離について同じ情報を与える発光または吸光スペクトル分析を含む分光分析法によって、測定されそして量子化され得る。
【0029】
発光分光分析において、原子または分子が炎または放電に付されると、それらは、エネルギーを吸収し、“励起”され得る。それらが“通常”の状態に復帰する時に、それらは輻射線を放出し得る。そのような放出(発光)は、原子または分子の高エネルギーまたは“励起”状態からより低い状態の一つへの遷移の結果である。その遷移で失われるエネルギーは電磁エネルギーの形で放出される。“励起”原子は、普通、線スペクトルを生じるが、“励起”分子は帯スペクトルを生じる傾向がある。
【0030】
吸収分光分析において、近単色入射輻射線の吸収は、ある範囲の振動数にわたって掃引される際に監視される。吸収行程中に原子または分子は低エネルギーの状態から高エネルギーの状態へ移行する。電磁エネルギー吸収によって生じるエネルギー変化は、量子と呼ばれるエネルギーの単位量の積分倍数でのみ起こり、それは各吸収種に特異的である。吸収スペクトルは、4つのタイプ、すなわち、回転、回転−振動、振動及び電子のタイプに分類され得る。
【0031】
分子の回転スペクトルは、分子の回転状態において起こる変化に関連している。回転状態のエネルギーは、比較的小さい量で差が有るだけであり、従って、回転レベルの変化を生じさせるのに必要な光の振動数は、非常に小さくそして電磁エネルギーの波長は非常に大きい。分子回転状態のエネルギースペーシングは、結合距離及び角度に依存する。純粋な回転スペクトルは、遠赤外及びマイクロ波、高周波領域において観察慰される(表1参照)。
【0032】
回転−振動スペクトルは、分子の振動状態が変化し、そして回転状態の変化が伴い得る遷移と関連している。吸収は、より大きな振動数、あるいはより短い波長において起こり、普通は、赤外領域の中間で起こる(表1参照)。
【0033】
種々の振動エネルギーレベルからの振動スペクトルは、結合の彎曲及び伸長の故に起こる。伸長振動は、二つの原子間の結合の軸に沿う原子間距離の変化を伴。彎曲振動は、二つの結合の間の角度の変化を特徴とする。分子の振動スペクトルは、近赤外領域にある。
【0034】
電子スペクトルは、原子に付いての電子状態(複数)の間の遷移から生じ、分子は同時に分子中の回転及び振動の変化を伴う。相対的に大きなエネルギー差が、伴い、従って吸収はむしろ大きな振動数、あるいは相対的に短い波長において起こる。原子または分子の異なった電子状態は、電磁スペクトルの赤外、紫外−可視またはx−線領域におけるエネルギーに相当する(表1参照)。
【0035】
【表1】

【0036】
エネルギーの形の電磁輻射は、吸収されまたは放出され得る、従って、多くの異なるタイプのスペクトルが本発明において物理的触媒のスペクトルパターンを決定するのに使用でき、それらには、x−線、紫外、赤外、マイクロ波、原子吸収、炎発光、原子発光、誘導結合プラズマ、DCアルゴンプラズマ、アーク源発光、スパーク源発光、高解像レーザー、高周波、ラマン等が含まれるが、これらに限定されない。
【0037】
電子移転を研究するために、検討されるべき物質は、分子が微細化(原子化)され、励起される炎の中のような高温に加熱される必要がありうる。ガスを微細化するための別の非常に効果的な方法は、気体放電を用いることである。荷電されて、電場を生じさせている電極間に気体が置かれると、電子が電極ならびに気体原子自体から放出される。これらの電子は、気体原子と衝突し、気体原子は微細化され、励起されまたはイオン化されることになる。高振動数電場を使用することにより、電極を使用せずに気体放電を誘起させることができる。電場強度を変えることにより、励起エネルギーを変えることができる。固体物質の場合、電気火花または電気アークを使用できる。火花またはアークの中で、分析されるべき物質は、気化され、その原子が励起される。
【0038】
発光分光分析器の基本スキームは、励起されるべき試料を含む純粋シリカセルを備えている。試料の輻射線は、スリットを通過し、分散素子によってスペクトルに分離される。スペクトルパターンは、スクリーン、写真フィルム上に、または検出器によって検出され得る。
【0039】
原子は、それが飛び出すのと同じ振動数において電磁エネルギーを最も強く吸収するであろう。吸収の測定は、源から放出される電磁輻射線が波長制限装置を通り、セル内に保持されている物理的触媒に衝突するように、なされることが多い。白色光のビームが物質を通過するときに、ビームから選択された振動数が吸収される。物理的触媒によって吸収されなかった電磁輻射線は、セルを通り抜け、検出器に当たる。残留ビームがスペクトルに広げられる時に吸収されてしまった振動数は、通常は連続であるスペクトル中に黒い線として現れる。これらの黒線の位置は、同じ分子または原子の発光スペクトル中の線の位置と正確に一致する。発光及び吸光分光分析器の両方は、通常の商業経路で入手できる。
【0040】
物理的触媒剤の電磁スペクトルパターンを決定後、そのスペクトルパターンを複製し、化学反応系に適用することができる。電磁輻射線の許容し得る概略の範囲内の1またはそれ以上の振動数の任意の発生器を本発明では使用できる。触媒スペクトル中の1またはそれ以上の振動数を複製するときに、その振動数を正確に複製することは必要ではない。例えば、1,000Thzの振動数で達成される効果は、それに非常に近い,1,001または999Thzのような振動数によっても達成され得る。従って、反応に触媒作用を及ぼすある範囲が正確な振動数の上と下にあることになる。さらには、正確な振動数の上方及び下方の両方におけるスペクトル触媒振動数の倍値(harmonics)は、正確な振動数と共鳴し、反応に触媒作用を及ぼすであろう。最後に、正確な振動数自体を用いるのではなく、正確な振動数の作用の機構の一つまたはそれ以上を複製することにより反応に触媒作用を与えることが可能である。例えば、白金は、部分的には、そのほぼ1,060Thzの振動数でヒドロキシル・ラジカルにエネルギーを与えることにより、水素及び酸素からの水の生成に触媒作用を与える。その反応は、そのマイクロ波振動数でヒドロキシル・ラジカルにエネルギーを与えて、それにより白金の作用機構を複製して、触媒作用を及ぼすことができる。
【0041】
電磁輻射線放出源は、下記の特性を有すべきである:所望の波長の高い強度、長い寿命、安定性及びパルス及び/または連続態の電磁エネルギー放出能。
【0042】
照射源は、限定的ではないが、キセノン−アーク、水素及び重水素、クリプトン−アーク、高圧水銀、白金、銀のようなアークランプ;プラズマアーク、As,Bi,Cd,Cs,Ge,Hg,K,P,Pb,Rb,Sb,Se,Sn,Ti,Tl及びZnのような放電ランプ;Cu,Pt及びAgのような単一または多元素のホロウ(中空)−カソードランプ;太陽光、及びメーザー及びレーザーのようなコヒーレント電磁エネルギー発光が包含される。
【0043】
メーザーは、高い安定性及び精度で電磁エネルギーを増幅または発生する装置である。メーザーは、レーザーと同じ原理で作動するが、スペクトルの可視領域ではなく、高周波及びマイクロ波の電磁エネルギーを作り出す。メーザーにおいて、電磁エネルギーは回転エネルギーレベルの間の分子の遷移によって生じる。
【0044】
レーザーは、同じ振動数、相及び方向を有する光子(複数)のビーム、すなわち、正確に同じく移行する光子(複数)のビーム、を作り出す強力なコヒーレント光子源である。物理的触媒の予め定めたスペクトルパターンは、所望の振動数を作り出す一連のまたは組合わせたレーザーによって放出され得る。スペクトル触媒の振動数(単または複数)をもつ必要な電磁照射を発生し得る任意のレーザーが、本発明において使用できる。レーザーは、スペクトル範囲の大部分にわたって使用のために入手できる。それらは、連続またはパルス態で使用できる。ラインを発生するレーザーや連続体を発生するレーザーを本発明に使用できる。ライン(線)源は、アルゴンイオンレーザー、ルビィレーザー、窒素レーザー、Nd−YAGレーザー、二酸化炭素レーザー、一酸化炭素レーザー、亜酸化窒素−二酸化炭素レーザーを包含し得る。レーザーによって放出されるスペクトル線(ライン)以外に、一つのレーザーから発生される振動数の結晶に、別のレーザーによって発生されるものを加え、あるいは差し引くことにより、いくつかの別の線(ライン)を入手できる。振動数を組合せる、本発明において使用できる装置は、階差振動数発生器及び合併振動数ミキサーを含む。本発明において使用できる他のレーザーは、限定的ではないが、Cr3+でドープされたAl23,Nd3+でドープされたY3Al512のような結晶;He−Ne,Kr−イオンのようなガス;ガラス、振動励起されたHCl及びHFのような化学品;メタノール中のローダミン(RHODAMINE)6Gのような染料;及びGa1-xAlxAsのような半導体レーザーが包含される。多くの型式が、種々の振動数範囲に調整でき、それにより一つの装置からいくつかの異なる振動数を得て、反応系にそれを適用できる(表2参照)。
【0045】
【表2】

【0046】
単一または一連のレーザーからのコヒーレント光は、反応が起こる領域に焦点を結ぶようにされる。光源は光が反応剤に届かない“デッド・スペース”を除くために充分に近くなければならないが、完全な入射光吸収を確保するのに充分離れていなければならない。紫外源は熱を発生するので、効果的な作動を維持するために冷却される必要が有り得る。反応剤の励起を生じさせる照射時間は、各反応ごとに個別に設定されることになり:連続反応のためには光源へ大きな表面を暴露させる時には若干短い期間、またはその他の系に付いては長い光−接触となる。
【0047】
本発明の更なる目的は、反応剤及び生成物のスペクトルパターンの波形分析により決定及び計算されたスペクトルパターンを応用することにより、反応系に電磁エネルギーを与えることである。この触媒作用スペクトルパターンは、好ましい化学反応を発生させるためのスペクトル触媒として作用する。基本的には、同定された物質の分光分析データは、簡単な波形計算を行って、反応に触媒作用を及ぼすのに必要な正しい電磁エネルギー振動数に到達することができる。
【0048】
【数2】

【0049】
反応剤及び生成物の両スペクトルパターンが決定され得る。これは、前述の分光分析手段によって行うことができる。物質と電磁輻射との相互作用の特定振動数(単または複数)でスペクトルパターンが一旦決定されると、スペクトル触媒のスペクトルパターンが決定できる。反応剤及び生成物のスペクトルパターンを使用して、波形分析計算は、反応剤と生成物との間のエネルギー差を計算でき、計算されたスペクトルパターンは、反応系に適用されて、反応に触媒作用を与えることができる。スペクトルパターンの特定振動数(単または複数)は、化学反応に影響を与え、開始するために、系中への必要なエネルギー入力を与える。
【0050】
正確な電磁エネルギー振動数(単または複数)へ到達するための波形分析計算を実施することは、複雑な代数のフーリエ変換、または商標MATHEMATICARでWolfram社から供給されて商業経路で入手できるウエーブレット・トランスフォームス(Wavelet Transforms)を用いて行うことができる。
【0051】
物理的触媒のスペクトルパターンは、前記定義及び説明の電磁照射放出源によって発生され、反応系へ適用され得る。
【0052】
スペクトル触媒の使用は、生化学プロセスから工業的反応に及ぶ多くの異なった技術分野で応用され得る。
【0053】
最も驚くべき触媒は、生体組織内で多数の反応に触媒作用を与える酵素である。生体系において起こる全ての複雑なプロセスの中で、酵素触媒よりも強力で、あるいは必須であるものは無い。酵素に付いての驚くべき事実は、それらが106ないし1012倍も生化学反応速度を増大できるばかりでなく、それらが高度に特異的であることである。ある酵素はある種の分子のみに作用し、系の残りのものに影響を与えずに置く。若干のものは、高度の特異性を有するが、他のものは多数の反応に触媒作用を与え得る。ある生物学的反応が一つのみの酵素で触媒作用を受けるとすれば、その酵素の活性損失または活性低減は、その特異反応を著しく抑制し、生体組織にとって有害であり得る。この状態が起こった場合、スペクトルパターンを当該酵素ないしは当該機構に付いて決定し、次いで遺伝子的欠陥を、その酵素の代わりとなる触媒作用スペクトルパターンを与えることにより補増できよう。本発明の目的の一つは、酵素によって移行されるスペクトル触媒の形のエネルギーの同じ振動数(単または複数)を与えることである。
【0054】
本発明は、以下の特定の実施例から一層明らかに了解され、また、よりよく理解されよう。
【実施例1】
【0055】
2+O2>>>>白金触媒>>>>>H2
水は、H2およびO2を物理的白金触媒上で接触させる方法によって製造されうるが、常に潜在的に危険な爆発の虞を生じさせる可能性がある。この実験は物理的白金触媒の代わりに物理的白金触媒のスペクトルパターンを含むスペクトル触媒を用いた。
【0056】
酸素及び水素がスペクトル触媒を用いて結合しうることを示すために、水の電気分解を行って、必要な酸素及び水素出発原料ガスを得た。三つ口フラスコの外側の二つの口に2つのゴム栓を付け、それぞれにガラス封入白金電極を取り付けた。フラスコに蒸留水及び少量の塩を入れた。中央の口をゴム栓を介して真空パイプに結合し、それをドライエライト(DRIERITE)カラムへ導き、生成気体から水を取り除いた。系中の全ての気体の真空除去後、二つの電極に結んだ12Vの電源を用いて電気分解を実施した。電気分解を開始すると続いて水素及び酸素ガスの生成が生じた。これらのガスをドライエライト(DRIERITE)カラムに通し、正負圧力ゲージに結ばれた真空パイプに通し、そして密封丸型石英フラスコ中へ入れた。乾燥コバルトを含む紙片をその密封フラスコの底に置いた。コバルト紙は水の存在でピンクに変色し、そして水が存在しない時には青になるので、コバルト紙を使用した。初期にコバルト紙は青であった。
【0057】
伝統的物理的白金触媒の代わりに、フラスコからほぼ2cmに配置したフィッシャー・サイエンティフィック・ホロウ(中空)・カソード白金ランプからのスペクトル触媒白金放出を用いた。これにより、丸型石英フラスコ内の酸素及び水素ガスが、スペクトル触媒からの放出エネルギーで照射され得た。カソデオン・ホロウ・カソード・ランプ・サプライC610を用いてPtランプに最大電流の80%(12mアンペア)で電力を供給した。反応フラスコを、可能性のある熱による触媒作用を防止するため丸型石英フラスコの直接下に置いたスチロフォーム容器中のドライアイスで冷却した。Ptランプにスイッチを入れ、そして2ないし3日以内の照射でコバルト紙片での顕著なピンク色が明白であり、これが丸型石英フラスコ内の水の存在を示した。研究室内の周囲空気に曝された同様なコバルトテスト片は、青いままであった。次の4−5日にわたり、スペクトル触媒を継続適用することにより、コバルト片上のピンク色領域は明るくかつ大きくなった。実験の終了時、ランプのスイッチを切ったが、系は結ばれた状態のままとした。次の4ないし5日間にわたり、ピンク色領域はゆっくりと薄くなり、これはフラスコ内で生成された水が徐々に脱出したこと、生成された水はフラスコ内の雰囲気からのものではなく白金ランプにより触媒作用を受けた化学反応によるものであることを示している。
【0058】
Pt発光を断絶した時に、H2Ogaコバルト片から拡散して出てきてドライエライト(DRIERITE)カラムに吸収され、コバルト片のピンク着色は褪色消失した。
【実施例2】
【0059】
22>>>>白金触媒>>>>>H2O+O2
過酸化水素の分解は触媒の不存在下では極めて遅い反応である。従って、物理的触媒である、微粉砕白金が、白金のスペクトルパターンを有するスペクトル触媒によって置き換えられうることを示すため実験を行った。過酸化水素を2つのニップル付き石英管に入れた。両方の石英管を過酸化水素を満たしたビーカー液溜内で逆さにし、そして入射光をブロックするためにアルミ箔で包んだ厚紙で遮蔽した。ラップした石英管の一方を、対照として用いた。他の石英管のセットは、カソデオン・ホロウ・カソード・ランプ・サプライC610を最大電流の80%(12mアンペア)で用いてフィッシャー・サイエンチック・ホロウ・カソード白金(Pt)用ランプへ24−96時間露出した。この石英管セットは、反応が熱的効果によるものでないことを確保するため温度の増加に付いて監視された。Ptのスペクトルパターンに露出された管のニップル内にO2の大きな泡が形成されたが、対照の管内には形成されなかった。
【0060】
いずれのランプでも同一の結果を与えるものではないことを確認するために、ネガティブ(負)対照として、上記実験をNaランプで繰り返した。(伝統的な反応においてNaは水との反応剤であり水素ガスを放出するものであり、過酸化水素分解の触媒ではない。) その結果は、Pt発生のスペクトルパターンで得られたような大きな泡の形成を示さなかった。このことは、スペクトル放出は、触媒の代わりとなりうるが、それでも、それは反応剤の代わりとなることが出来ないことを示した。またそれは、過酸化水素中へ熱及びエネルギーを放出するホロウ(中空)・カソード・ランプを使用することの簡単な効果は、ガス泡形成の原因ではなく、物理的触媒の代わりのPtのスペクトルパターンが反応を生じさせたことを示した。
【実施例3】
【0061】
ある種の感受性生物(例えば、E.coli,Strep pneumoniae,またはStaph.aureus)は銀に対して毒作用を有することが知られている。この点に関して、銀のスペクトルを放出するスペクトル触媒がこれらの生物に対して類似の効果を示すことを明らかにするため一つの実験を行った。
【0062】
野生E.coli、野生Strep pncumoniac,野生Staph.aureus及び野生Salmonella typhiを別々のペトリ皿中の標準生育培地上に平板接種した。各皿を暴露室の底に置いた。パターン化スリット付きの箔カバーされた厚紙を、各培養平板上に置いた。銀用のフィッシャー・サイエンティフィック・ホロウ(中空)・カソード・ランプ暴露室の蓋を通して差込、銀のスペクトル発生パターンが培養平板上の細菌を照射するようにした。カソデオン・ホロウ・カソード・ランプ・サプライC610を用いてAgランプに最大電力の80%(3.6mアンペア)の電力を供給した。培養平板は、Ag放出光に12−24時間暴露し、次いで平板を標準的技法でインキュベートした。野生E.coli、野生Strep pneumoniae,野生Staph.aureusについては、銀放出に暴露されたパターン化スリット部において細菌の生育がなかった。野生Salmonellaは生育阻止を示した。
【実施例4】
【0063】
銀に対して毒作用を示すある種の感受性背物が銀のスペクトルを放出するスペクトル触媒に対して類似の作用を持つことを、さらに示すために、培養物を、アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション(ATCC)から得た。これらは、Escherichia coli #25922,Klebsjella pneumonia,subsp #13883を含んでいた。これらの微生物をペトリ皿中の標準生育培地上に平板接種した。皿をコーヒー缶の底のような暴露室の底に置いた。銀(Ag)用のフィッシャー・サイエンティフィック・ホロウ(中空)・カソード・ランプ暴露室の蓋(アルミ箔カバー付きコーヒー蓋)を通して差込、銀のスペクトル放出パターンが培養平板上を照射するようにした。カソデオン・ホロウ・カソード・ランプ・サプライC610を用いてAgランプに最大電流の80%(3.6mアンペア)の電力を供給した。培養平板は、Ag発光に12−24時間暴露し、次いで平板を標準的技法でインキュベートした。平板を双眼顕微鏡で検査した。E.coliはスペクトル銀発光の殺細菌効果に対して中度の抵抗を示し、他方Klebsiellaは、中度の感受性を示した。
【0064】
物理的銀触媒を用いて同様な効果を示すために、0.9%無菌塩水5cc及び蒸留水を用いて、コロイド状銀溶液を80ppmで調製した。抗生試験用の無菌試験ディスクをコロイド状銀溶液に浸漬した。同じ微生物をストック培養物から再びペトリ皿中の標準生育培地上に平板接種した。コロイド状銀試験ディスクを書く平板の上に置き、それらの平板を標準的技法でインキュベートした。E.coljは、再び中度の抵抗を示しが、今回は物理的コロイド状銀の殺細菌効果に対してであった。他方Klebsiellaは、再び中度の感受性を示した。
【実施例5】
【0065】
物理的触媒を補増するためにスペクトル触媒を利用して酸素と水素とを結合させて水を作り得ることを示すために、実施例1のように水の電気分解を行い必要な酸素及び水素の出発ガスを得た。
【0066】
2つの石英フラスコ(A及びB)をその電気分解装置に連結し、それぞれのフラスコに真空および圧力ゲージのセットを備えた。白金粉末(31mg)をそれぞれのフラスコに入れた。フラスコにH2およびO2を120mmHgまで満たし、そして反応の進行に伴って各フラスコ内の圧力を記録した。さらには、各フラスコにH2およびO2を220mmHgまで満たして、試験を繰り返した。物理的触媒での反応の触媒作用は、ベースライン反応曲線を生じさせたに過ぎなかった。
【0067】
伝統的物理的白金触媒を、フラスコAから2cm離して置いた2個の平行な実施例1のようなフィッシャー・サイエンチック・ホロウ・カソード白金ランプからのスペクトル触媒白金放出光で補増した。これにより、酸素及び水素ガス、ならびに物理的白金触媒がスペクトル触媒からの放出光により照射されるようになった。圧力の低減により測定した、そして温度に付いての制御後の反応速度は、ベースライン速度よりも70%にいたるまで増加し、平均の反応速度増加は約60%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化学反応系における物理的触媒をスペクトル触媒で取り替える方法であって:
a) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンを決定し;
b) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数を少なくとも1つの電磁エネルギー発生源でもって複製し;そして
c) その化学反応系を、その複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも1つの振動数でもって、該化学反応に触媒作用をなすのに足りる量で、照射する;
ことを含む諸工程により特徴付けられる上記方法。
【請求項2】
物理的触媒が金属、金属酸化物、及び金属硫化物からなる群より選択される一員であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
電磁エネルギーがほぼ無線振動数からほぼ紫外振動数の振動数範囲を有することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
物理的触媒が銀、白金、白金酸化物、ニッケル、パラジウム、ロジウム、銅、ルテニウム及び鉄からなる群より選択されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
物理的触媒が銀であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
電磁エネルギーがほぼ赤外から紫外までの範囲内の振動数を有することを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
電磁エネルギー発生源がAg中空カソード管及び少なくとも1種のレーザーからなる群より選択されることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
物理的触媒が酵素であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
電磁スペクトルパターンが分光法によって決定されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
化学反応系における物理的触媒をスペクトル触媒で増補する方法であって
a) その物理的触媒の電磁スペクトルパターンを決定し;
b) 工程(a)の電磁スペクトルパターンの少なくとも1つの振動数を少なくとも1つの電磁エネルギー発生源でもって複製し;
c) その化学反応系を、その複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも1つの振動数に暴露することによりその物理的触媒を増補する;
ことを含む諸工程により特徴付けられる上記方法。
【請求項11】
物理的触媒が金属、金属酸化物、及び金属硫化物からなる群より選択される一員であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電磁スペクトルパターンが分光法によって決定されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項13】
ほぼ赤外振動数から紫外振動数までの範囲内の振動数を有する電磁スペクトルパターンで化学反応系を照射することを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項14】
該振動数が可視光範囲内にあることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
物理的触媒が酵素であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項16】
物理的触媒がスペクトル触媒での照射前に化学反応中に導入されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項17】
該分光法がx−線、紫外、マイクロ波、赤外、原子吸光、炎発光、原子発光、誘導結合プラズマ、DCアルゴンプラズマ、アーク源発光、スパーク源発光、高解像レーザー及びラマンからなる群より選択される一つであることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項18】
物理的触媒が銀、白金、白金酸化物、ニッケル、パラジウム、ロジウム、銅、ルテニウム及び鉄からなる群より選択されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項19】
電磁エネルギー源が少なくとも1種のレーザーであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
物理的触媒は化学反応系をスペクトル触媒で照射してからその反応系に導入されることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項21】
物理的触媒を化学反応系に導入し、そしてスペクトル触媒での該系の照射が実質的に同時であることを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項22】
化学反応における物理的触媒を置き換える方法であって:
a)その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも一つの振動数を複製し;そして
b)その化学反応系を、該複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも一つの振動数にその化学反応に触媒作用を与えるのに足りる量で、暴露する;
ことを含む工程によって特徴付けられる上記方法。
【請求項23】
化学反応における物理的触媒を増強する方法であって:
a)その物理的触媒の電磁スペクトルパターンの少なくとも一つの振動数を複製し;そして
b)その化学反応系を、該複製電磁スペクトルパターンの該少なくとも一つの振動数にその物理的触媒を増強するのに足りる量で、暴露する;
ことを含む工程によって特徴付けられる上記方法。

【公開番号】特開2009−45621(P2009−45621A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2008−239583(P2008−239583)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【分割の表示】特願平11−504693の分割
【原出願日】平成10年6月17日(1998.6.17)
【出願人】(506271810)ジーアール インテレクチュアル リザーブ リミティド ライアビリティ カンパニー (8)
【Fターム(参考)】