スペーサテープ
【課題】 本発明は、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ等の製造や保管の際に、共巻き用に使用されるスペーサテープであって、回路テープとの共巻きを良好に行うことができ、共巻きされたソルダーレジストインクに加熱処理を施す際に、ソルダーレジストインクの硬化を促進することができ、揮発成分の再付着を起こすことがなく、耐熱性及び耐久性に優れ、回路テープ等を損傷することがないスペーサテープを提供することを、その課題とする。
【解決手段】 本発明のスペーサテープ1は、耐熱性ベースプラスチックテープ2の少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープ3が、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープ1であり、該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部4と凹部5が繰り返し形成されており、凸部4の厚みが0.6〜3mmであり、凹部5の厚みが0.02〜0.3mmであり、凸部4の厚みと凹部5の厚みの差が0.5mm以上である。
【解決手段】 本発明のスペーサテープ1は、耐熱性ベースプラスチックテープ2の少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープ3が、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープ1であり、該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部4と凹部5が繰り返し形成されており、凸部4の厚みが0.6〜3mmであり、凹部5の厚みが0.02〜0.3mmであり、凸部4の厚みと凹部5の厚みの差が0.5mm以上である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体実装回路テープ等の製造や保管の際に、半導体実装回路テープ等との共巻き用に用いられる、スペーサテープ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンやテレビなどのディスプレイには、省スペース化等の観点から薄型化が要求され、液晶ディスプレイパネル(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイに対する需要が高まっている。これらのフラットパネルディスプレイを駆動させるためには、通常駆動用の半導体が用いられ、このような駆動用の半導体の多くは、TAB(Tape Automated Bonding)もしくはCOF(Chip on Film)と呼ばれる半導体実装回路テープ(以下、単に「回路テープ」とも記す。)に実装される。
【0003】
これらの回路テープの製造は、通常次の方法により行われる。
まず、ポリイミド樹脂などのプラスチックフィルムテープにエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、デバイスホールと呼ばれる開口部をパンチングにより形成し、これに銅箔をホットローラ等で熱接合してテープ状銅張積層板とし、更に両端部にスプロケットホールと呼ばれる搬送用の連続穴を形成する。次に、銅エッチング用感光性レジストの塗布、露光、現像、銅エッチング、レジスト剥離等により回路を形成し、その回路を保護するための保護用レジスト層を形成すれば、回路テープが得られる。
【0004】
なお、回路テープの製造は、次の方法によっても行われる。
ポリイミドなどの耐熱性フィルム上にスパッタリングやメッキ等の方法により銅層を形成した銅張積層板や、圧延銅箔又は電解銅箔にポリイミドワニスを塗布してポリイミド層を形成させた銅張積層板などのいわゆる無接着剤銅張積層板を原材料として用い、これらをスリットしてテープ状とし、これに上記と同様にスプロケットホールの形成、回路の形成、更に保護用レジスト層を形成すれば、回路テープが得られる。
【0005】
これらの回路テープの製造には、通常、アルミニウムやプラスチック等で作られたリールを用いる、リールtoリールと呼ばれる方式が採用され、各工程の巻き出し及び巻き取りが連続的に行われる。また、上記保護用レジスト層の形成は、通常、液状のソルダーレジストインクと呼ばれるレジストを、スクリーン印刷等の方法により、所定の位置に塗布し、溶剤を乾燥した後、リールに巻き取られた状態で、100℃以上の温度で熱硬化されることにより行われる。
【0006】
回路テープをリールに巻き取るときに、回路テープ同士が接触し、その表面にダメージが発生する可能性がある。そこで、回路テープにダメージを与えないために、スペーサテープを用いて共巻が行なわれる。該スペーサテープとしては、例えば、ポリイミド等のプラスチックフィルムをベーステープとし、その両端にエンボス加工を施すことにより凸部が規則的に設けられているものがある。このようなスペーサテープを回路テープと共巻きすれば、回路テープ同士が接触することがないので、回路テープの表面が保護される。
【0007】
このように回路テープと共巻きして用いられるスペーサテープ5は、一般的に図11(a)(b)に示されるように、プラスチックテープの両端部にエンボス加工により、突起6を形成することにより製造されるものである。そのため、プラスチックテープの片側の面では突起6が形成される一方で、反対側の面では凹部6bが形成されてしまう。このように凹部のあるスペーサテープ5と、回路テープとを共巻きすると、突起6と凹部6bの位置が重なり合った際に、突起6が回路テープと共に凹部6bに入り込んでしまい、その結果、回路テープの端面で波うちが発生し、回路テープ表面の損傷や、テストパッド、インナーリード、アウターリード等のボンディング部にダメージが発生し易いという問題がある。
なお、図11(a)は、従来のスペーサテープの平面図、同(b)はXI−XI線に沿う縦断面図である。
【0008】
このような問題点を解決するための発明が、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、ベース基材となるスペーサテープの長手方向に連続的に形成された取付孔に、インジェクション成形により、突起に相当するスペーサ部が形成された、TAB用スペーサテープが提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されたスペーサテープは、取付孔を形成後にインジェクション成形によりスペーサ部を形成しているため、生産性が極めて悪く、また、スペーサ部が取付孔から脱落しやすいという問題を有していた。
また、特許文献2には、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレン等の合成樹脂製の個片からなるスペーサ用突起と、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂ベース材とを別々に製作してから、合成樹脂ベース材にスペーサ用突起を接着剤で接着して凸部を形成したり、超音波で接着して凸部を形成したり、あるいは溶着等することにより凸部を形成したりして製造されたスペーシングテープスペーサが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されたスペーシングテープスペーサは、別体としてのスペーサ用突起を合成樹脂ベース材に固着したものであることから、スペーサ用突起が脱落しやすいという問題を有していた。
【0010】
更に、特許文献3には、耐熱性樹脂フィルムまたはクロステープの長手方向の両端部の上下面に帯状のシリコーンゴムを貼り合わせてなるスペーサテープが提案されており、特許文献3には、帯状のシリコーンゴムに凹部もしくは凸部を形成することが開示されている。
【0011】
特許文献3に開示されたスペーサテープは、スペーサ部が簡単に脱落することはないものである。
しかしながら、特許文献3に記載されたスペーサテープには、<1>スペーサテープの剛性が高くなりすぎて柔軟性に欠けるので、回路テープとの共巻きを良好に行うことが困難となったり、<2>ソルダーレジストインクを塗布した回路テープと共巻きして熱風オーブン等でソルダーレジストインクの加熱硬化等の処理を施す際に、共巻きしたロールの内部に十分に熱風が入らなくなってソルダーレジストインクの硬化が十分に進行しなくなり、さらに揮発成分が揮散することなく再付着して、回路テープを汚染するという問題があった。また、<3>ゴムを用いていることから、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ用のスペーサテープとして用いた場合、耐熱性の制約から使用温度が制限されるという問題があった。更には、<4>半導体実装回路テープのレジスト層を形成するために、半導体実装用回路テープと共巻きして熱処理を行う際に、スペーサテープが変形して、半導体実装用回路テープにダメージを与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平05−206211号公報
【特許文献2】特開2003−68802号公報
【特許文献3】特開平03−218655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ等の製造や保管の際に、共巻き用に使用されるスペーサテープであって、回路テープとの共巻きを良好に行うことができ、共巻きされたソルダーレジストインクに加熱処理を施す際に、ソルダーレジストインクの硬化を促進することができ、揮発成分の再付着を起こすことがなく、耐熱性及び耐久性に優れ、回路テープ等を損傷することがないスペーサテープを提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に示すスペーサテープ及びその製造方法が提供される。
〔1〕 耐熱性ベースプラスチックテープの少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープにおいて、
該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部と凹部が繰り返し形成されており、該凸部の厚みが0.6〜3mmであり、該凹部の厚みが0.02〜0.3mmであり、該凸部の厚みと該凹部の厚みの差が0.5mm以上であることを特徴とするスペーサテープ。
〔2〕 前記2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、前記耐熱性ベースプラスチックテープの両面のそれぞれに、連続的に固着されていることを特徴とする前記1に記載のスペーサテープ。
〔3〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの厚みが、0.05〜0.3mmであることを特徴とする前記1又は2に記載のスペーサテープ。
〔4〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの幅が、10〜350mmであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔5〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの材質が、ポリエーテルイミド、ポリイミド及びポリフェニレンサルファイドから選択されるいずれかである前記1〜4のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔6〕 前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、芳香族ポリマーで形成されていることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔7〕 前記芳香族ポリマーが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンから選択されるいずれかであることを特徴とする前記6記載のスペーサテープ。
〔8〕 前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、熱硬化性接着剤を介して耐熱性ベースプラスチックテープに固着されていることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のスペーサテープ
〔9〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凹部の長さより長いことを特徴とする前記2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔10〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さより長いと共に、一方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さと、他方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さとが等しいことを特徴とする前記2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスペーサテープは、耐熱性ベースプラスチックテープに、特定範囲の厚みからなる凸部と凹部が繰り返し形成された耐熱性スペーシングプラスチックテープが固着されたものである。この構成により、スペーサテープが適度な剛性及び柔軟性を有しているので、回路テープとスペーサテープのリールへの共巻きを容易に行うことができる。また、凸部と凹部の厚みの差が適度な範囲に設定されていることにより、回路テープへのレジスト層形成等の熱処理工程において、レジストからの揮発成分を速やかに排出でき、揮発成分の再付着を起こすことがなく、ソルダーレジストインクの硬化を促進することができる。また、本発明のスペーサテープは耐熱性樹脂からなるので、耐熱性及び耐久性に優れ、熱処理を行う際に、スペーサテープが変形することがないので、回路テープのレジスト層を形成するための熱処理を行う際に、回路テープにダメージを与えることがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、片面2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図1(b)は同(a)のI−I線に沿う縦断面図である。
【図2】図2(a)は、片面3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図2(b)は同(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが両面に設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図3(b)は同(a)のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図4(a)は、両面の各々に3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図4(b)は同(a)IV−IV線に沿う縦断面図である。
【図5】図5(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図5(b)は同(a)のV−V線に沿う縦断面図である。
【図6】プラスチックシートの表面の一の方向に繰り返し凹部となる溝を切削する工程の模式図である。
【図7】一の方向に繰り返し凹部が切削されたプラスチックシートの表面に、該凹部と直交方向にV字溝を切削する工程の模式図である。
【図8】プラスチックシートの表面の一の方向に繰り返し凹部となる溝が切削され、更に該凹部と直交方向にV字溝が切削されたるプラスチックシートの模式図である。
【図9】図9(a)は、一の方向に繰り返し凹部となる溝が形成されたフィルムの斜視図である。図9(b)は、同(a)のフィルムを溝と直交方向に一定幅で切断することにより得られたスペーシングテープの斜視図である。
【図10】図10(a)は、金型を用いて加熱成型することにより製造された、台形形状の凸部を有するスペーシングテープの縦断面図である。同(b)は、その斜視図である。
【図11】図11(a)は、プラスチックテープの両端部にエンボス加工により、突起6を形成することにより製造された従来のスペーサテープの平面図である。同(b)は、図11(a)のXI−XI線に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のスペーサテープについて、図面を用いて詳細に説明する。
本発明のスペーサテープは、耐熱性ベースプラスチックテープ(以下、単に「ベーステープ」とも記す。)と、該ベーステープの少なくとも片面に固着された、耐熱性スペーシングプラスチックテープ(以下、単に「スペーシングテープ」とも記す。)とからなるものである。
【0018】
図1〜図4に、本発明のスペーサテープの例を示す。図1(a)は、片面2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図1(b)は同(a)のI−I線に沿う縦断面図である。図2(a)は、片面3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図2(b)は同(a)II−II線に沿う断面図である。図3(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが両面に設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図3(b)は同(a)のIII−III線に沿う縦断面図である。図4(a)は、両面の各々に3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図4(b)は同(a)IV−IV線に沿う縦断面図である。
【0019】
なお、図1〜図4において、1はスペーサテープを、2はベーステープを、3はスペーシングテープを、4はスペーシングテープに形成された凸部を、5はスペーシングテープに形成された凹部を示し、wはスペーシングテープの幅、dはスペーシングテープの凸部の長さ、sはスペーシングテープの凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)、t1はスペーシングテープの凸部の厚み、t2はスペーシングテープの凹部の厚みを示す。
【0020】
本発明のスペーサテープ1においては、スペーシングテープ3は、図1〜4に示すように、ベーステープの少なくとも片面の長さ方向に少なくとも2列となるように連続的に固着されている。
【0021】
本発明においては、スペーシングテープ3を、図1、図2に示すように、ベーステープ2の片面のみに2列以上固着することもできれば、図3、図4に示すように、ベーステープ2の両面の各々に2列以上、合計4列以上固着することもできる。
【0022】
本発明に用いるベーステープ2の幅は、必要とするスペーサテープの幅に合わせて選択されるが、通常は10〜350mm、好ましくは35〜200mmである。幅が狭すぎると、回路テープの製造に使用することができないというおそれがあり、幅が広すぎると、回路テープと共巻きする際の作業性が悪くなるおそれがある。
【0023】
なお、製造が容易で取扱い性にも優れることから、ベーステープの幅は長手方向に一定であることが好ましいが、製造の容易性や取扱い性の障害にならない程度であれば、例えば、端部が波状に形成されることにより幅の長さが変化していても良い。その場合には、幅が最も広い部分の幅をベーステープの幅とする。
【0024】
本発明に使用されるベーステープには任意の厚みのプラスチックフィルムが使用できるが、好ましくは0.05〜0.3mmであり、より好ましくは0.07〜0.25mmであり、更に好ましくは0.1〜0.2mmである。ベーステープの厚みが薄すぎると、ベーステープの剛性が低下して、変形する虞がある。また、ベーステープの厚みが厚すぎると、剛性が高くなり過ぎて、回路テープとの共巻きが容易でなくなり、重量が大きくなり過ぎたり、高価なものとなる。
【0025】
なお、本発明に使用される耐熱性ベーステープとして、ガラス転移温度が80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは160℃以上のプラスチックフィルムが使用される。ベーステープがこの範囲のガラス転移温度を有することにより、使用温度が制限されることなく、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ用のスペーサテープとして用いることができる。これに対し、ガラス転移温度が低すぎると、熱処理を施した際にスペーサテープの剛性が低下し、変形やしわといった問題が発生する虞がある。ガラス転移温度が80℃以上のプラスチックフィルムとしては、主鎖中にベンゼン環を有する芳香族ポリマーが好適に用いられ、より好ましくはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドであり、特に好ましくはポリイミドである。
【0026】
本発明のスペーサテープ1においては、前記ベーステープ2の少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングテープ3が、ベーステープ2の長さ方向に連続的に固着されている。従って、スペーサテープ1を回路テープと共巻きする際に、回路テープ表面が、ベーステープと接触することがないので、回路テープの損傷が防止される。
【0027】
スペーシングテープ3の幅wは通常0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜3mmであって、その合計の幅が、好ましくはベーステープの3分の1以下、より好ましくは5分の1以下である。
【0028】
スペーシングテープ3の厚みは、後述する凸部4の厚みを考慮すると、0.6〜3mmが好ましく、より好ましくは0.8〜2.5mm、更に好ましくは1〜2mmである。
【0029】
本発明のスペーシングテープ3の表面には、凸部4と凹部5が繰り返し形成されている。該凸部4高さを調整することにより、ベーステープ2と凸部4の上面との間に回路テープの保護に必要な間隔が確保される。更に、凹部5の存在により、例えばソルダーレジストインクを塗布した回路テープと共巻きしてソルダーレジストインクの加熱硬化等の処理を施す際に、ソルダーレジストインクから発生する溶剤等の揮発成分の排出経路が確保されるので、硬化の過程で発生する溶剤等の揮発成分を、凹部5の隙間から、外部に逃がすことができ、ソルダーレジストインクの硬化をスムーズに行なうことができる。
【0030】
スペーシングテープの凸部4の形状は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の形状とすることができるが、直方体、立方体、円柱、角柱、角錐台、円錐台等の上面に平坦部を有する形状が好ましい。
【0031】
次に、スペーシングテープの凸部の厚み(t1)、凹部の厚み(t2)、凸部の厚み(t1)及び凹部の厚み(t2)の差(t1−t2)について説明する。本発明の大きな特徴は、これらの数値を特定範囲内とすることにあり、この構成は、本発明者等が前記問題を発見し、該問題が起きる原因を研究した結果、到達したものである。
【0032】
凸部4の厚み、即ちベーステープ2からの高さ(t1)は0.6〜3mmであり、好ましくは0.8〜2.5mm、より好ましくは1〜2mmである。凸部4の厚み(t1)が0.6mm未満であると、回路テープ等と共巻きした際に、回路テープ等の表面がスペーサテープ1に接触してダメージを受ける等の不具合が発生するおそれがある。一方、3mm超であると、回路テープ等と共にリールに巻き取った際にその径が著しく大きくなり作業性が悪くなる上に、巻き取りが不安定となり、巻き取りの際に型崩れが起こりやすくなるという問題が発生する。
【0033】
凹部5の厚み、即ちベーステープ2から凹部5の底までの高さ(t2)は0.02〜0.3mmであり、好ましくは0.05〜0.2mm、より好ましくは0.075〜0.15mmである。
凹部5の厚み(t2)が0.02mm未満であると、スペーシングテープ1としての剛性が小さくなってしわが入りやすくなり、ベーステープへの安定した貼り付けが困難となるおそれがある。一方、0.3mm超であると、ベーステープ2に貼り付けたあとのスペーサテープ1としての剛性が大きくなりすぎて柔軟性がなくなるので、リールに巻き取ることが困難となるおそれがある。
【0034】
また、スペーシングテープの凸部の厚み(t1)と凹部の厚み(t2)の差は0.5mm以上である。このように、凸部4と凹部5の厚みに0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上の差を設けることで、本発明のスペーサテープを回路テープ等と共巻きした際に、凹部5の部分に隙間を形成することができ、その結果、例えば熱風オーブンを用いてソルダーレジストインクの硬化を行う際に、その隙間から熱風が効率的に取り入れられ、ソルダーレジストインクの硬化を十分に促進できるとともに、硬化の際に発生する溶剤等の揮発成分を効率的に排出することが可能となり、揮発成分の再付着による回路テープの汚染が防止される。
【0035】
凸部4の長さdは通常1〜15mmであり、より好ましくは2〜10mmである。該長さdが短すぎると、凸部4の製造が困難になるおそれがあり、該長さdが長すぎるとスペーサテープ1全体の柔軟性が損なわれるおそれがある。
なお、凸部4の上面全体が前記平坦部として形成されていることが好ましく、その場合、凸部4の長さdと該平坦部の長さは同じになる。
【0036】
また、本発明のスペーシングテープの幅は、全て同一であっても、それぞれが異なっていても良い。但し、一定の幅の回路テープと共巻きして使用されるという観点から、幅wは一定であることが好ましく、同一の面に固着されたスペーシングテープの凸部の厚みは一定であることが好ましい。
【0037】
凹部5の長さ、即ち凸部と凸部の間隔sは、回路テープと共巻きして使用するという本発明のスペーサテープの目的が損なわれさえしなければ、前記凸部4の長さdと同一にすることもできれば、異なる長さにすることもできる。
【0038】
但し、ベーステープ2の両面にスペーシングテープ3が固着される場合、図4に示すように、一方の面に固着されたスペーシングテープの凸部4aが他方の面に固着されるスペーシングテープの凹部5bにはまり込むことを防ぐため、<1>凸部4aの長さd1、特に凸部4aの上面平坦部の長さを、該凹部5bの間隔s2よりも長くすることが好ましい。なお、この場合、一方の面の凸部4aの長さd1と他方の面の凸部4bの長さd2とを等しくし、一方の面の凹部5aの長さs1と他方の面の凹部5bの長さs2とを等しくすることが、スペーシングテープの構造が簡単になり、製造が容易なので好ましい。
【0039】
また、上記と同じ目的で、<2>ベーステープ2の一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープ3に形成された凸部4aの長さd1が、他方の面に固着された耐熱性スペーシングテープ3に形成された凸部5aの長さd2より長いと共に、一方の面の隣あう凸部4aと凹部5aの合計の長さ「d1+s1」と、他方の面の隣り合う凸部4bと凹部5bの合計の長さ「d2+s2」とを等しくすることも好ましい。その一例を図5に示す。
【0040】
なお、本発明における凸部の長さとは、凸部の上面の幅方向端縁中央部と対向する幅方向端縁中央部との間隔をいい、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)とは、凸部上面の端幅方向縁中央部と凹部を挟んで向かい合う凸部上面の幅方向端縁中央部との間隔をいう。
【0041】
本発明においては、スペーシングテープ3の長さに制限はなく、例えば、ベーステープ2と実質的に同一の長さのスペーシングテープ3をベーステープ2に固着して用いても良く、また、短いものを連続的にベーステープ2に固着しても差し支えない。後者においては、一のスペーシングテープ3の長さは、30mm以上が好ましく、より好ましくは50mm以上であれば、本発明の目的を損なうことがない。
【0042】
本発明において、スペーシングテープとしてはプラスチックが用いられ、その材質としては芳香族ポリマーが好適に用いられる。ここでいう芳香族ポリマーとは、その主鎖中にベンゼン環を有するポリマーを意味し、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン等のポリマーが挙げられ、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンが好適に用いられる。
【0043】
本発明において、凸部と凹部が繰り返し形成されたスペーシングテープを製造する方法に制限はなく、使用するプラスチックの種類や性質により、適宜選択することができる。例えば、プラスチックを射出成形して、スペーシングテープとする方法、一定の幅に成形されたプラスチックに更に金型等を用いて熱成型により凹凸を形成する方法、0.6mm以上の一定厚みのプラスチックフィルムに金型やソーイング装置等を用いた機械加工により凹部を形成し、さらに切断することにより全体として凹凸のあるスペーシングテープとする方法等が挙げられる。
【0044】
また、耐熱性フィルム上に、別に準備したスペーシングテープの凸部を形成する芳香族ポリマーを固着して、所定の幅に裁断することでスペーシングテープとすることもできる。この場合、凸部を形成するプラスチックは、接着剤を使用して耐熱性フィルム上に固着することができる。
【0045】
前記の方法の中では、一定厚みのプラスチックに機械加工により凹部を形成し切断することにより、全体として凹凸のあるスペーシングテープとする方法が、簡便に大量生産できることから好ましい。
次に、該方法の一例について詳しく説明する。
まず、一定厚みのプラスチックシート11を準備し、該シート11の表面に、3次元NC制御のソーイング装置等を用いて、図6、図8に示されるように、一の方向に繰り返し凹部となる溝12を切削する。この場合、スペーシングテープ3の長さ、スペーシングテープ3の厚み、凸部4の厚み(t1)、凹部5の厚み(t2)、凸部4の厚み(t1)と凹部5の厚み(t2)の差、凸部4の長さd、凹部5の長さsは、前記のとおりに定めればよい。
【0046】
次に、<2−1>図7に示すように、溝12が形成されたフィルム11を、溝と直交方向にV字溝13を切削し、V字溝13の谷に沿って切断することにより、スペーシングテープを得ることができる。または<2−2>溝12が形成されたフィルムを、溝12と直交方向に一定幅で切断することにより、スペーシングテープを得ることもできる(図9)。これらの場合、スペーシングテープの幅は、前記のとおりに定めればよい。
【0047】
スペーシングテープ3をベーステープ2に固着する方法に制限はなく、接着剤を用いて固着する方法、スペーシングテープを高温でベーステープに熱融着させる方法など任意の方法が採用される。その中では、耐熱性に優れるスペーシングテープ3をベーステープ2に確実に固着して、耐熱性に優れるスペーサテープ1を得ることができることから、エポキシ系やアクリル系の熱硬化性接着剤もしくはポリイミド系の接着剤を用いて、固着する方法が好ましい。
【0048】
接着剤を用いて、スペーシングテープ3をベーステープ2に固着させる場合、接着剤をスペーシングテープの凹凸のない平坦な面に塗布する方法、ベーステープに概ねスペーシングテープの幅となるよう接着剤を塗布する方法、別途作成した接着剤シートを概ねスペーシングテープの幅に合わせてスリットもしくは裁断し、その後貼り合わせる方法等、任意の方法が可能である。
【0049】
本発明のスペーサテープにおいて、ベーステープとスペーシングテープを強固に固着するために、ベーステープとスペーシングテープの何れか一方、もしくは両方に、プラズマ処理、コロナ処理、ブラスト処理、化学処理等の表面処理を行うことも可能である。
【0050】
なお、本発明のスペーサテープは、TABやCOF等の半導体実装回路テープの製造に好適に使用できるものであるが、これに限られず、熱処理工程を伴うテープ様の材料の共巻き用に使用することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープ2本を作成した(図10(a)、(b))。スペーシングテープの幅wは2mmで、凸部上面平坦部の長さでは5mm、幅は2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は1.7mm、凹部の厚みt2は0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は1.6mmであった。
【0053】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmの幅にスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、目的とするスペーサテープを得た。
【0054】
得られたスペーサテープにおいて、スペーシングテープとベーステープとは強固に接合されていた。
【0055】
次に、厚み0.038mmのポリイミドフィルム上に厚み0.008mmの導体層が、スパッタリング及びめっき法で形成された無接着剤銅張積層板(住友金属鉱山株式会社製、エスパーフレックス)を用いて、エッチング法により回路を形成した回路テープを準備し、その回路上にポリイミド系のソルダーレジストインクをスクリーン印刷した後、本実施例のスペーサテープと一緒にリールに共巻きして、160℃、4時間の条件でソルダーレジストインクの硬化を行った。
【0056】
回路テープには、端部の波うち、回路やソルダーレジストインクのダメージといった不具合は観察されず、ソルダーレジストインクも十分に硬化されており、揮発成分の再付着もなく、良好な回路テープを得ることができた。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1と同様に4本のスペーシングテープを準備した。次に、ベーステープの両面の両端に計4本のスペーシングテープを固着した以外は、実施例1と同様に行い、両面に各2列のスペーシングテープが固着されたスペーサテープを得た。
【0058】
スペーシングテープとベーステープは強固に固着されていた。また、実施例1と同様に、ソルダーレジストインク層が形成された回路付きの銅張積層板と一緒に、リールに共巻きして、160℃4時間の条件でソルダーレジストインクの硬化を行ったところ、回路テープには、端部の波うち、回路やソルダーレジストインクのダメージといった不具合は観察されず、ソルダーレジストインクも十分に硬化されており、揮発成分の再付着もなく、良好な回路テープを得ることが可能であった。
【0059】
〔実施例3〕
実施例1と同様にスペーシングテープを3本準備した。次に、予めプラズマ処理が施された厚み0.125mmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製カプトンEN)を96mmの幅にスリットして、長さ100mのベーステープを作製した。次に、該ベーステープの両端と中央の3列に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて、実施例1のスペーシングテープを固着して、片面に3列スペーシングテープが固着されたスペーサテープを得た。
【0060】
スペーシングテープとベーステープは強固に固着されており、ソルダーレジストインク層が形成された回路テープをリールに共巻きして、160℃で4時間硬化を行っても、実施例1と同様に回路テープに特に不具合は認められなかった。
【0061】
〔実施例4〕
厚み1.8mm、長さ100mm、幅70mmのポリエーテルエーテルケトンのシートに、3次元NC制御のソーイング装置を用いて、図6、図9に示されるように幅方向に繰り返し凹部となる溝を形成した。溝の幅は3mm、溝と溝の間隔は5mm、溝の部分の厚みは0.12mmであった。
【0062】
次に、溝が形成されたポリエーテルエーテルケトンのシートを、溝と直交するように長さ方向に2mmの幅で切断し、幅wが2mm、長さ100mm、凸部の側面形状が長方形で、凸部の厚みt1が1.8mm、凹部の厚みt2が0.12mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が1.68mm、凸部の長さdが5mm、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sが3mmのスペーシングテープ(図9(b))を得た。
【0063】
同じ操作を繰り返して、十分な数量になるようにスペーシングテープを作成した後、予めプラズマ処理を施した厚み0.075mm、幅48mm、長さ50mのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックスRN)の片面両端に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて連続的に繰り返し貼り付けて、ポリイミドフィルムの片面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0064】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0065】
〔実施例5〕
実施例4で作成したスペーシングテープ(図9(b))を、実施例4で使用したベーステープの両面両端にアクリル系接着剤を用いて連続的に貼り付けて、ポリイミドフィルムの両面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0066】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0067】
〔実施例6〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、上面に長方形の平坦部を有する凸部を形成し、長さ100mのスペーシングテープ2種類を各2本、計4本作成した(図10)。片方のスペーシングテープ(A)の幅wは2mm、凸部の上面平坦部の長さdは5mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上面の間隔)sは3mm、他方のスペーシングテープ(B)の幅は2mm、凸部の上面平坦部の長さは8mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上面の間隔)sは4.8mmであった。なお、スペーシングテープの厚みに関しては、何れも凸部の厚みt1が1.7mm、凹部の厚みt2が0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が、1.6mmであった。
【0068】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。次に、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープ(A)を、他方の面の両端にスペーシングテープ(B)を固着して、各面それぞれ異なった凸部上面の長さと上面間の間隔を有するスペーシングが、両端に固着されたスペーサテープを得た。
【0069】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0070】
〔実施例7〕
ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いて射出成型を行い、側面が長方形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ50mmのスペーシングテープを多数作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは4mmであって、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sは3mmであった。スペーシングテープの厚みに関しては、凸部の厚みt1が1.7mm、凹部の厚みt2が0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が1.6mmであった。
【0071】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.1mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープを固着して、片面の両端にスペーシングが固着されたスペーサテープを得た。
【0072】
次に、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0073】
〔比較例1〕
厚み0.5mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープを2本作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは5mm、幅2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は0.55mm、凹部の厚みt2は0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は、0.45mmであった。
【0074】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、スペーサテープを得た。
【0075】
次に、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーシングテープの凸部の高さが0.55mmしかないことにより、ソルダーレジストインクの一部がスペーサテープのポリイミドフィルムに付着するとともに、凸部と厚みt1と凹部の厚みt2の差が0.45mmしかないために、ソルダーレジストインク中の溶剤が十分には排出されず、ソルダーレジストインクの硬化が十分に進行しないという不具合が発生した。
【0076】
〔比較例2〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープを2本作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは5mm、幅2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は1.7mm、凹部の厚みt2は0.4mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は1.3mmであった。
【0077】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、スペーサテープを得た。
【0078】
実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行おうとしたところ、スペーシングテープの凹部が0.4mmと厚く、そのためリールに巻き取ることができないという問題が発生した。
【0079】
〔比較例3〕
厚み4mm、長さ100mm、幅70mmのポリエーテルエーテルケトンのシートに、3次元NC制御のソーイング装置を用いて、図6、図9に示されるように幅方向に繰り返し凹部となる溝を形成した。溝の幅は3mm、溝と溝の間隔は5mm、溝の部分の厚みは0.12mmであった。
【0080】
次に、溝が形成されたポリエーテルエーテルケトンのシートを、溝と直交するように長さ方向に2mmの幅で切断し、幅wが2mm、長さ100mm、凸部の側面形状が長方形で、凸部の厚みt1が4mm、凹部の厚みt2が0.12mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が3.88mm、凸部の長さdが5mm、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sが3mmのスペーシングテープ(図9(b))を得た。
【0081】
同じ操作を繰り返して、十分な数量になるようにスペーシングテープを作成した後、予めプラズマ処理を施した厚み0.075mm、幅48mm、長さ50mのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックスRN)の両面両端に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて連続的に繰り返し貼り付けて、ポリイミドフィルムの片面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0082】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーシングテープの厚みが4mmと厚いため、リールへの巻き取りを型崩れなく行うことが困難であった。
〔比較例4〕
【0083】
厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mm幅にスリットしたテープを準備した。次に送り装置と、突起形成のための金型プレス装置を用いて、ポリイミドのテープに図11(a)、(b)に示される高さh=1.2mm、下底が直径D=5mmの半球形の突起を、全長に亘って形成しスペーサテープを得た。
【0084】
実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーサテープの凸部が凹部に入り込んだことが原因と思われる回路テープエッジ部での波うちの不具合が発生した。
【符号の説明】
【0085】
1 スペーサテープ
2 ベーステープ
3 スペーシングテープ
4、4a、4b 凸部
5、5a、5b 凹部
11 プラスチックシート
12 溝
13 V字溝
w スペーシングテープの幅
d 凸部の長さ
s 凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)
t1 凸部の厚み
t2 凹部の厚み
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体実装回路テープ等の製造や保管の際に、半導体実装回路テープ等との共巻き用に用いられる、スペーサテープ及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パソコンやテレビなどのディスプレイには、省スペース化等の観点から薄型化が要求され、液晶ディスプレイパネル(LCD)やプラズマディスプレイパネル(PDP)等のフラットパネルディスプレイに対する需要が高まっている。これらのフラットパネルディスプレイを駆動させるためには、通常駆動用の半導体が用いられ、このような駆動用の半導体の多くは、TAB(Tape Automated Bonding)もしくはCOF(Chip on Film)と呼ばれる半導体実装回路テープ(以下、単に「回路テープ」とも記す。)に実装される。
【0003】
これらの回路テープの製造は、通常次の方法により行われる。
まず、ポリイミド樹脂などのプラスチックフィルムテープにエポキシ樹脂等の接着剤を塗布し、デバイスホールと呼ばれる開口部をパンチングにより形成し、これに銅箔をホットローラ等で熱接合してテープ状銅張積層板とし、更に両端部にスプロケットホールと呼ばれる搬送用の連続穴を形成する。次に、銅エッチング用感光性レジストの塗布、露光、現像、銅エッチング、レジスト剥離等により回路を形成し、その回路を保護するための保護用レジスト層を形成すれば、回路テープが得られる。
【0004】
なお、回路テープの製造は、次の方法によっても行われる。
ポリイミドなどの耐熱性フィルム上にスパッタリングやメッキ等の方法により銅層を形成した銅張積層板や、圧延銅箔又は電解銅箔にポリイミドワニスを塗布してポリイミド層を形成させた銅張積層板などのいわゆる無接着剤銅張積層板を原材料として用い、これらをスリットしてテープ状とし、これに上記と同様にスプロケットホールの形成、回路の形成、更に保護用レジスト層を形成すれば、回路テープが得られる。
【0005】
これらの回路テープの製造には、通常、アルミニウムやプラスチック等で作られたリールを用いる、リールtoリールと呼ばれる方式が採用され、各工程の巻き出し及び巻き取りが連続的に行われる。また、上記保護用レジスト層の形成は、通常、液状のソルダーレジストインクと呼ばれるレジストを、スクリーン印刷等の方法により、所定の位置に塗布し、溶剤を乾燥した後、リールに巻き取られた状態で、100℃以上の温度で熱硬化されることにより行われる。
【0006】
回路テープをリールに巻き取るときに、回路テープ同士が接触し、その表面にダメージが発生する可能性がある。そこで、回路テープにダメージを与えないために、スペーサテープを用いて共巻が行なわれる。該スペーサテープとしては、例えば、ポリイミド等のプラスチックフィルムをベーステープとし、その両端にエンボス加工を施すことにより凸部が規則的に設けられているものがある。このようなスペーサテープを回路テープと共巻きすれば、回路テープ同士が接触することがないので、回路テープの表面が保護される。
【0007】
このように回路テープと共巻きして用いられるスペーサテープ5は、一般的に図11(a)(b)に示されるように、プラスチックテープの両端部にエンボス加工により、突起6を形成することにより製造されるものである。そのため、プラスチックテープの片側の面では突起6が形成される一方で、反対側の面では凹部6bが形成されてしまう。このように凹部のあるスペーサテープ5と、回路テープとを共巻きすると、突起6と凹部6bの位置が重なり合った際に、突起6が回路テープと共に凹部6bに入り込んでしまい、その結果、回路テープの端面で波うちが発生し、回路テープ表面の損傷や、テストパッド、インナーリード、アウターリード等のボンディング部にダメージが発生し易いという問題がある。
なお、図11(a)は、従来のスペーサテープの平面図、同(b)はXI−XI線に沿う縦断面図である。
【0008】
このような問題点を解決するための発明が、特許文献1〜3に開示されている。
特許文献1には、ベース基材となるスペーサテープの長手方向に連続的に形成された取付孔に、インジェクション成形により、突起に相当するスペーサ部が形成された、TAB用スペーサテープが提案されている。
しかしながら、特許文献1に開示されたスペーサテープは、取付孔を形成後にインジェクション成形によりスペーサ部を形成しているため、生産性が極めて悪く、また、スペーサ部が取付孔から脱落しやすいという問題を有していた。
また、特許文献2には、ポリプロピレン、ポリアセタール、ポリエチレン等の合成樹脂製の個片からなるスペーサ用突起と、ポリエチレンテレフタレート等の合成樹脂ベース材とを別々に製作してから、合成樹脂ベース材にスペーサ用突起を接着剤で接着して凸部を形成したり、超音波で接着して凸部を形成したり、あるいは溶着等することにより凸部を形成したりして製造されたスペーシングテープスペーサが提案されている。
【0009】
しかしながら、特許文献2に開示されたスペーシングテープスペーサは、別体としてのスペーサ用突起を合成樹脂ベース材に固着したものであることから、スペーサ用突起が脱落しやすいという問題を有していた。
【0010】
更に、特許文献3には、耐熱性樹脂フィルムまたはクロステープの長手方向の両端部の上下面に帯状のシリコーンゴムを貼り合わせてなるスペーサテープが提案されており、特許文献3には、帯状のシリコーンゴムに凹部もしくは凸部を形成することが開示されている。
【0011】
特許文献3に開示されたスペーサテープは、スペーサ部が簡単に脱落することはないものである。
しかしながら、特許文献3に記載されたスペーサテープには、<1>スペーサテープの剛性が高くなりすぎて柔軟性に欠けるので、回路テープとの共巻きを良好に行うことが困難となったり、<2>ソルダーレジストインクを塗布した回路テープと共巻きして熱風オーブン等でソルダーレジストインクの加熱硬化等の処理を施す際に、共巻きしたロールの内部に十分に熱風が入らなくなってソルダーレジストインクの硬化が十分に進行しなくなり、さらに揮発成分が揮散することなく再付着して、回路テープを汚染するという問題があった。また、<3>ゴムを用いていることから、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ用のスペーサテープとして用いた場合、耐熱性の制約から使用温度が制限されるという問題があった。更には、<4>半導体実装回路テープのレジスト層を形成するために、半導体実装用回路テープと共巻きして熱処理を行う際に、スペーサテープが変形して、半導体実装用回路テープにダメージを与えるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平05−206211号公報
【特許文献2】特開2003−68802号公報
【特許文献3】特開平03−218655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ等の製造や保管の際に、共巻き用に使用されるスペーサテープであって、回路テープとの共巻きを良好に行うことができ、共巻きされたソルダーレジストインクに加熱処理を施す際に、ソルダーレジストインクの硬化を促進することができ、揮発成分の再付着を起こすことがなく、耐熱性及び耐久性に優れ、回路テープ等を損傷することがないスペーサテープを提供することを、その課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明によれば、以下に示すスペーサテープ及びその製造方法が提供される。
〔1〕 耐熱性ベースプラスチックテープの少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープにおいて、
該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部と凹部が繰り返し形成されており、該凸部の厚みが0.6〜3mmであり、該凹部の厚みが0.02〜0.3mmであり、該凸部の厚みと該凹部の厚みの差が0.5mm以上であることを特徴とするスペーサテープ。
〔2〕 前記2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、前記耐熱性ベースプラスチックテープの両面のそれぞれに、連続的に固着されていることを特徴とする前記1に記載のスペーサテープ。
〔3〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの厚みが、0.05〜0.3mmであることを特徴とする前記1又は2に記載のスペーサテープ。
〔4〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの幅が、10〜350mmであることを特徴とする前記1〜3のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔5〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの材質が、ポリエーテルイミド、ポリイミド及びポリフェニレンサルファイドから選択されるいずれかである前記1〜4のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔6〕 前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、芳香族ポリマーで形成されていることを特徴とする前記1〜5のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔7〕 前記芳香族ポリマーが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンから選択されるいずれかであることを特徴とする前記6記載のスペーサテープ。
〔8〕 前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、熱硬化性接着剤を介して耐熱性ベースプラスチックテープに固着されていることを特徴とする前記1〜7のいずれかに記載のスペーサテープ
〔9〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凹部の長さより長いことを特徴とする前記2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
〔10〕 前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さより長いと共に、一方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さと、他方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さとが等しいことを特徴とする前記2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【発明の効果】
【0015】
本発明のスペーサテープは、耐熱性ベースプラスチックテープに、特定範囲の厚みからなる凸部と凹部が繰り返し形成された耐熱性スペーシングプラスチックテープが固着されたものである。この構成により、スペーサテープが適度な剛性及び柔軟性を有しているので、回路テープとスペーサテープのリールへの共巻きを容易に行うことができる。また、凸部と凹部の厚みの差が適度な範囲に設定されていることにより、回路テープへのレジスト層形成等の熱処理工程において、レジストからの揮発成分を速やかに排出でき、揮発成分の再付着を起こすことがなく、ソルダーレジストインクの硬化を促進することができる。また、本発明のスペーサテープは耐熱性樹脂からなるので、耐熱性及び耐久性に優れ、熱処理を行う際に、スペーサテープが変形することがないので、回路テープのレジスト層を形成するための熱処理を行う際に、回路テープにダメージを与えることがないものである。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1(a)は、片面2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図1(b)は同(a)のI−I線に沿う縦断面図である。
【図2】図2(a)は、片面3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図2(b)は同(a)のII−II線に沿う断面図である。
【図3】図3(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが両面に設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図3(b)は同(a)のIII−III線に沿う縦断面図である。
【図4】図4(a)は、両面の各々に3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図4(b)は同(a)IV−IV線に沿う縦断面図である。
【図5】図5(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図5(b)は同(a)のV−V線に沿う縦断面図である。
【図6】プラスチックシートの表面の一の方向に繰り返し凹部となる溝を切削する工程の模式図である。
【図7】一の方向に繰り返し凹部が切削されたプラスチックシートの表面に、該凹部と直交方向にV字溝を切削する工程の模式図である。
【図8】プラスチックシートの表面の一の方向に繰り返し凹部となる溝が切削され、更に該凹部と直交方向にV字溝が切削されたるプラスチックシートの模式図である。
【図9】図9(a)は、一の方向に繰り返し凹部となる溝が形成されたフィルムの斜視図である。図9(b)は、同(a)のフィルムを溝と直交方向に一定幅で切断することにより得られたスペーシングテープの斜視図である。
【図10】図10(a)は、金型を用いて加熱成型することにより製造された、台形形状の凸部を有するスペーシングテープの縦断面図である。同(b)は、その斜視図である。
【図11】図11(a)は、プラスチックテープの両端部にエンボス加工により、突起6を形成することにより製造された従来のスペーサテープの平面図である。同(b)は、図11(a)のXI−XI線に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のスペーサテープについて、図面を用いて詳細に説明する。
本発明のスペーサテープは、耐熱性ベースプラスチックテープ(以下、単に「ベーステープ」とも記す。)と、該ベーステープの少なくとも片面に固着された、耐熱性スペーシングプラスチックテープ(以下、単に「スペーシングテープ」とも記す。)とからなるものである。
【0018】
図1〜図4に、本発明のスペーサテープの例を示す。図1(a)は、片面2列の連続したスペーシングテープが設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図1(b)は同(a)のI−I線に沿う縦断面図である。図2(a)は、片面3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図2(b)は同(a)II−II線に沿う断面図である。図3(a)は、両面の各々に2列の連続したスペーシングテープが両面に設けられている本発明スペーサテープの一例を示す平面図、図3(b)は同(a)のIII−III線に沿う縦断面図である。図4(a)は、両面の各々に3列のスペーシングテープが設けられているスペーサテープの一例を示す平面図、図4(b)は同(a)IV−IV線に沿う縦断面図である。
【0019】
なお、図1〜図4において、1はスペーサテープを、2はベーステープを、3はスペーシングテープを、4はスペーシングテープに形成された凸部を、5はスペーシングテープに形成された凹部を示し、wはスペーシングテープの幅、dはスペーシングテープの凸部の長さ、sはスペーシングテープの凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)、t1はスペーシングテープの凸部の厚み、t2はスペーシングテープの凹部の厚みを示す。
【0020】
本発明のスペーサテープ1においては、スペーシングテープ3は、図1〜4に示すように、ベーステープの少なくとも片面の長さ方向に少なくとも2列となるように連続的に固着されている。
【0021】
本発明においては、スペーシングテープ3を、図1、図2に示すように、ベーステープ2の片面のみに2列以上固着することもできれば、図3、図4に示すように、ベーステープ2の両面の各々に2列以上、合計4列以上固着することもできる。
【0022】
本発明に用いるベーステープ2の幅は、必要とするスペーサテープの幅に合わせて選択されるが、通常は10〜350mm、好ましくは35〜200mmである。幅が狭すぎると、回路テープの製造に使用することができないというおそれがあり、幅が広すぎると、回路テープと共巻きする際の作業性が悪くなるおそれがある。
【0023】
なお、製造が容易で取扱い性にも優れることから、ベーステープの幅は長手方向に一定であることが好ましいが、製造の容易性や取扱い性の障害にならない程度であれば、例えば、端部が波状に形成されることにより幅の長さが変化していても良い。その場合には、幅が最も広い部分の幅をベーステープの幅とする。
【0024】
本発明に使用されるベーステープには任意の厚みのプラスチックフィルムが使用できるが、好ましくは0.05〜0.3mmであり、より好ましくは0.07〜0.25mmであり、更に好ましくは0.1〜0.2mmである。ベーステープの厚みが薄すぎると、ベーステープの剛性が低下して、変形する虞がある。また、ベーステープの厚みが厚すぎると、剛性が高くなり過ぎて、回路テープとの共巻きが容易でなくなり、重量が大きくなり過ぎたり、高価なものとなる。
【0025】
なお、本発明に使用される耐熱性ベーステープとして、ガラス転移温度が80℃以上、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、更に好ましくは160℃以上のプラスチックフィルムが使用される。ベーステープがこの範囲のガラス転移温度を有することにより、使用温度が制限されることなく、TABやCOF等の半導体実装用回路テープ用のスペーサテープとして用いることができる。これに対し、ガラス転移温度が低すぎると、熱処理を施した際にスペーサテープの剛性が低下し、変形やしわといった問題が発生する虞がある。ガラス転移温度が80℃以上のプラスチックフィルムとしては、主鎖中にベンゼン環を有する芳香族ポリマーが好適に用いられ、より好ましくはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイドであり、特に好ましくはポリイミドである。
【0026】
本発明のスペーサテープ1においては、前記ベーステープ2の少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングテープ3が、ベーステープ2の長さ方向に連続的に固着されている。従って、スペーサテープ1を回路テープと共巻きする際に、回路テープ表面が、ベーステープと接触することがないので、回路テープの損傷が防止される。
【0027】
スペーシングテープ3の幅wは通常0.5〜5mmであり、より好ましくは1〜3mmであって、その合計の幅が、好ましくはベーステープの3分の1以下、より好ましくは5分の1以下である。
【0028】
スペーシングテープ3の厚みは、後述する凸部4の厚みを考慮すると、0.6〜3mmが好ましく、より好ましくは0.8〜2.5mm、更に好ましくは1〜2mmである。
【0029】
本発明のスペーシングテープ3の表面には、凸部4と凹部5が繰り返し形成されている。該凸部4高さを調整することにより、ベーステープ2と凸部4の上面との間に回路テープの保護に必要な間隔が確保される。更に、凹部5の存在により、例えばソルダーレジストインクを塗布した回路テープと共巻きしてソルダーレジストインクの加熱硬化等の処理を施す際に、ソルダーレジストインクから発生する溶剤等の揮発成分の排出経路が確保されるので、硬化の過程で発生する溶剤等の揮発成分を、凹部5の隙間から、外部に逃がすことができ、ソルダーレジストインクの硬化をスムーズに行なうことができる。
【0030】
スペーシングテープの凸部4の形状は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の形状とすることができるが、直方体、立方体、円柱、角柱、角錐台、円錐台等の上面に平坦部を有する形状が好ましい。
【0031】
次に、スペーシングテープの凸部の厚み(t1)、凹部の厚み(t2)、凸部の厚み(t1)及び凹部の厚み(t2)の差(t1−t2)について説明する。本発明の大きな特徴は、これらの数値を特定範囲内とすることにあり、この構成は、本発明者等が前記問題を発見し、該問題が起きる原因を研究した結果、到達したものである。
【0032】
凸部4の厚み、即ちベーステープ2からの高さ(t1)は0.6〜3mmであり、好ましくは0.8〜2.5mm、より好ましくは1〜2mmである。凸部4の厚み(t1)が0.6mm未満であると、回路テープ等と共巻きした際に、回路テープ等の表面がスペーサテープ1に接触してダメージを受ける等の不具合が発生するおそれがある。一方、3mm超であると、回路テープ等と共にリールに巻き取った際にその径が著しく大きくなり作業性が悪くなる上に、巻き取りが不安定となり、巻き取りの際に型崩れが起こりやすくなるという問題が発生する。
【0033】
凹部5の厚み、即ちベーステープ2から凹部5の底までの高さ(t2)は0.02〜0.3mmであり、好ましくは0.05〜0.2mm、より好ましくは0.075〜0.15mmである。
凹部5の厚み(t2)が0.02mm未満であると、スペーシングテープ1としての剛性が小さくなってしわが入りやすくなり、ベーステープへの安定した貼り付けが困難となるおそれがある。一方、0.3mm超であると、ベーステープ2に貼り付けたあとのスペーサテープ1としての剛性が大きくなりすぎて柔軟性がなくなるので、リールに巻き取ることが困難となるおそれがある。
【0034】
また、スペーシングテープの凸部の厚み(t1)と凹部の厚み(t2)の差は0.5mm以上である。このように、凸部4と凹部5の厚みに0.5mm以上、好ましくは1mm以上、より好ましくは1.5mm以上の差を設けることで、本発明のスペーサテープを回路テープ等と共巻きした際に、凹部5の部分に隙間を形成することができ、その結果、例えば熱風オーブンを用いてソルダーレジストインクの硬化を行う際に、その隙間から熱風が効率的に取り入れられ、ソルダーレジストインクの硬化を十分に促進できるとともに、硬化の際に発生する溶剤等の揮発成分を効率的に排出することが可能となり、揮発成分の再付着による回路テープの汚染が防止される。
【0035】
凸部4の長さdは通常1〜15mmであり、より好ましくは2〜10mmである。該長さdが短すぎると、凸部4の製造が困難になるおそれがあり、該長さdが長すぎるとスペーサテープ1全体の柔軟性が損なわれるおそれがある。
なお、凸部4の上面全体が前記平坦部として形成されていることが好ましく、その場合、凸部4の長さdと該平坦部の長さは同じになる。
【0036】
また、本発明のスペーシングテープの幅は、全て同一であっても、それぞれが異なっていても良い。但し、一定の幅の回路テープと共巻きして使用されるという観点から、幅wは一定であることが好ましく、同一の面に固着されたスペーシングテープの凸部の厚みは一定であることが好ましい。
【0037】
凹部5の長さ、即ち凸部と凸部の間隔sは、回路テープと共巻きして使用するという本発明のスペーサテープの目的が損なわれさえしなければ、前記凸部4の長さdと同一にすることもできれば、異なる長さにすることもできる。
【0038】
但し、ベーステープ2の両面にスペーシングテープ3が固着される場合、図4に示すように、一方の面に固着されたスペーシングテープの凸部4aが他方の面に固着されるスペーシングテープの凹部5bにはまり込むことを防ぐため、<1>凸部4aの長さd1、特に凸部4aの上面平坦部の長さを、該凹部5bの間隔s2よりも長くすることが好ましい。なお、この場合、一方の面の凸部4aの長さd1と他方の面の凸部4bの長さd2とを等しくし、一方の面の凹部5aの長さs1と他方の面の凹部5bの長さs2とを等しくすることが、スペーシングテープの構造が簡単になり、製造が容易なので好ましい。
【0039】
また、上記と同じ目的で、<2>ベーステープ2の一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープ3に形成された凸部4aの長さd1が、他方の面に固着された耐熱性スペーシングテープ3に形成された凸部5aの長さd2より長いと共に、一方の面の隣あう凸部4aと凹部5aの合計の長さ「d1+s1」と、他方の面の隣り合う凸部4bと凹部5bの合計の長さ「d2+s2」とを等しくすることも好ましい。その一例を図5に示す。
【0040】
なお、本発明における凸部の長さとは、凸部の上面の幅方向端縁中央部と対向する幅方向端縁中央部との間隔をいい、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)とは、凸部上面の端幅方向縁中央部と凹部を挟んで向かい合う凸部上面の幅方向端縁中央部との間隔をいう。
【0041】
本発明においては、スペーシングテープ3の長さに制限はなく、例えば、ベーステープ2と実質的に同一の長さのスペーシングテープ3をベーステープ2に固着して用いても良く、また、短いものを連続的にベーステープ2に固着しても差し支えない。後者においては、一のスペーシングテープ3の長さは、30mm以上が好ましく、より好ましくは50mm以上であれば、本発明の目的を損なうことがない。
【0042】
本発明において、スペーシングテープとしてはプラスチックが用いられ、その材質としては芳香族ポリマーが好適に用いられる。ここでいう芳香族ポリマーとは、その主鎖中にベンゼン環を有するポリマーを意味し、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフォン、ポリスルフォン、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン等のポリマーが挙げられ、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトンが好適に用いられる。
【0043】
本発明において、凸部と凹部が繰り返し形成されたスペーシングテープを製造する方法に制限はなく、使用するプラスチックの種類や性質により、適宜選択することができる。例えば、プラスチックを射出成形して、スペーシングテープとする方法、一定の幅に成形されたプラスチックに更に金型等を用いて熱成型により凹凸を形成する方法、0.6mm以上の一定厚みのプラスチックフィルムに金型やソーイング装置等を用いた機械加工により凹部を形成し、さらに切断することにより全体として凹凸のあるスペーシングテープとする方法等が挙げられる。
【0044】
また、耐熱性フィルム上に、別に準備したスペーシングテープの凸部を形成する芳香族ポリマーを固着して、所定の幅に裁断することでスペーシングテープとすることもできる。この場合、凸部を形成するプラスチックは、接着剤を使用して耐熱性フィルム上に固着することができる。
【0045】
前記の方法の中では、一定厚みのプラスチックに機械加工により凹部を形成し切断することにより、全体として凹凸のあるスペーシングテープとする方法が、簡便に大量生産できることから好ましい。
次に、該方法の一例について詳しく説明する。
まず、一定厚みのプラスチックシート11を準備し、該シート11の表面に、3次元NC制御のソーイング装置等を用いて、図6、図8に示されるように、一の方向に繰り返し凹部となる溝12を切削する。この場合、スペーシングテープ3の長さ、スペーシングテープ3の厚み、凸部4の厚み(t1)、凹部5の厚み(t2)、凸部4の厚み(t1)と凹部5の厚み(t2)の差、凸部4の長さd、凹部5の長さsは、前記のとおりに定めればよい。
【0046】
次に、<2−1>図7に示すように、溝12が形成されたフィルム11を、溝と直交方向にV字溝13を切削し、V字溝13の谷に沿って切断することにより、スペーシングテープを得ることができる。または<2−2>溝12が形成されたフィルムを、溝12と直交方向に一定幅で切断することにより、スペーシングテープを得ることもできる(図9)。これらの場合、スペーシングテープの幅は、前記のとおりに定めればよい。
【0047】
スペーシングテープ3をベーステープ2に固着する方法に制限はなく、接着剤を用いて固着する方法、スペーシングテープを高温でベーステープに熱融着させる方法など任意の方法が採用される。その中では、耐熱性に優れるスペーシングテープ3をベーステープ2に確実に固着して、耐熱性に優れるスペーサテープ1を得ることができることから、エポキシ系やアクリル系の熱硬化性接着剤もしくはポリイミド系の接着剤を用いて、固着する方法が好ましい。
【0048】
接着剤を用いて、スペーシングテープ3をベーステープ2に固着させる場合、接着剤をスペーシングテープの凹凸のない平坦な面に塗布する方法、ベーステープに概ねスペーシングテープの幅となるよう接着剤を塗布する方法、別途作成した接着剤シートを概ねスペーシングテープの幅に合わせてスリットもしくは裁断し、その後貼り合わせる方法等、任意の方法が可能である。
【0049】
本発明のスペーサテープにおいて、ベーステープとスペーシングテープを強固に固着するために、ベーステープとスペーシングテープの何れか一方、もしくは両方に、プラズマ処理、コロナ処理、ブラスト処理、化学処理等の表面処理を行うことも可能である。
【0050】
なお、本発明のスペーサテープは、TABやCOF等の半導体実装回路テープの製造に好適に使用できるものであるが、これに限られず、熱処理工程を伴うテープ様の材料の共巻き用に使用することが可能である。
【実施例】
【0051】
以下、実施例に基づき、本発明を具体的に説明する。但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
〔実施例1〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープ2本を作成した(図10(a)、(b))。スペーシングテープの幅wは2mmで、凸部上面平坦部の長さでは5mm、幅は2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は1.7mm、凹部の厚みt2は0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は1.6mmであった。
【0053】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmの幅にスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、目的とするスペーサテープを得た。
【0054】
得られたスペーサテープにおいて、スペーシングテープとベーステープとは強固に接合されていた。
【0055】
次に、厚み0.038mmのポリイミドフィルム上に厚み0.008mmの導体層が、スパッタリング及びめっき法で形成された無接着剤銅張積層板(住友金属鉱山株式会社製、エスパーフレックス)を用いて、エッチング法により回路を形成した回路テープを準備し、その回路上にポリイミド系のソルダーレジストインクをスクリーン印刷した後、本実施例のスペーサテープと一緒にリールに共巻きして、160℃、4時間の条件でソルダーレジストインクの硬化を行った。
【0056】
回路テープには、端部の波うち、回路やソルダーレジストインクのダメージといった不具合は観察されず、ソルダーレジストインクも十分に硬化されており、揮発成分の再付着もなく、良好な回路テープを得ることができた。
【0057】
〔実施例2〕
実施例1と同様に4本のスペーシングテープを準備した。次に、ベーステープの両面の両端に計4本のスペーシングテープを固着した以外は、実施例1と同様に行い、両面に各2列のスペーシングテープが固着されたスペーサテープを得た。
【0058】
スペーシングテープとベーステープは強固に固着されていた。また、実施例1と同様に、ソルダーレジストインク層が形成された回路付きの銅張積層板と一緒に、リールに共巻きして、160℃4時間の条件でソルダーレジストインクの硬化を行ったところ、回路テープには、端部の波うち、回路やソルダーレジストインクのダメージといった不具合は観察されず、ソルダーレジストインクも十分に硬化されており、揮発成分の再付着もなく、良好な回路テープを得ることが可能であった。
【0059】
〔実施例3〕
実施例1と同様にスペーシングテープを3本準備した。次に、予めプラズマ処理が施された厚み0.125mmのポリイミドフィルム(東レデュポン株式会社製カプトンEN)を96mmの幅にスリットして、長さ100mのベーステープを作製した。次に、該ベーステープの両端と中央の3列に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて、実施例1のスペーシングテープを固着して、片面に3列スペーシングテープが固着されたスペーサテープを得た。
【0060】
スペーシングテープとベーステープは強固に固着されており、ソルダーレジストインク層が形成された回路テープをリールに共巻きして、160℃で4時間硬化を行っても、実施例1と同様に回路テープに特に不具合は認められなかった。
【0061】
〔実施例4〕
厚み1.8mm、長さ100mm、幅70mmのポリエーテルエーテルケトンのシートに、3次元NC制御のソーイング装置を用いて、図6、図9に示されるように幅方向に繰り返し凹部となる溝を形成した。溝の幅は3mm、溝と溝の間隔は5mm、溝の部分の厚みは0.12mmであった。
【0062】
次に、溝が形成されたポリエーテルエーテルケトンのシートを、溝と直交するように長さ方向に2mmの幅で切断し、幅wが2mm、長さ100mm、凸部の側面形状が長方形で、凸部の厚みt1が1.8mm、凹部の厚みt2が0.12mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が1.68mm、凸部の長さdが5mm、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sが3mmのスペーシングテープ(図9(b))を得た。
【0063】
同じ操作を繰り返して、十分な数量になるようにスペーシングテープを作成した後、予めプラズマ処理を施した厚み0.075mm、幅48mm、長さ50mのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックスRN)の片面両端に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて連続的に繰り返し貼り付けて、ポリイミドフィルムの片面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0064】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0065】
〔実施例5〕
実施例4で作成したスペーシングテープ(図9(b))を、実施例4で使用したベーステープの両面両端にアクリル系接着剤を用いて連続的に貼り付けて、ポリイミドフィルムの両面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0066】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0067】
〔実施例6〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、上面に長方形の平坦部を有する凸部を形成し、長さ100mのスペーシングテープ2種類を各2本、計4本作成した(図10)。片方のスペーシングテープ(A)の幅wは2mm、凸部の上面平坦部の長さdは5mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上面の間隔)sは3mm、他方のスペーシングテープ(B)の幅は2mm、凸部の上面平坦部の長さは8mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上面の間隔)sは4.8mmであった。なお、スペーシングテープの厚みに関しては、何れも凸部の厚みt1が1.7mm、凹部の厚みt2が0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が、1.6mmであった。
【0068】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。次に、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープ(A)を、他方の面の両端にスペーシングテープ(B)を固着して、各面それぞれ異なった凸部上面の長さと上面間の間隔を有するスペーシングが、両端に固着されたスペーサテープを得た。
【0069】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0070】
〔実施例7〕
ポリフェニレンサルファイド樹脂を用いて射出成型を行い、側面が長方形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ50mmのスペーシングテープを多数作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは4mmであって、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sは3mmであった。スペーシングテープの厚みに関しては、凸部の厚みt1が1.7mm、凹部の厚みt2が0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が1.6mmであった。
【0071】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.1mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープを固着して、片面の両端にスペーシングが固着されたスペーサテープを得た。
【0072】
次に、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、回路テープの波うちや、導体及びソルダーレジストインクのダメージといった不具合は確認されず、実施例1と同様に良好な回路テープを得ることができた。
【0073】
〔比較例1〕
厚み0.5mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープを2本作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは5mm、幅2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は0.55mm、凹部の厚みt2は0.1mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は、0.45mmであった。
【0074】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、スペーサテープを得た。
【0075】
次に、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーシングテープの凸部の高さが0.55mmしかないことにより、ソルダーレジストインクの一部がスペーサテープのポリイミドフィルムに付着するとともに、凸部と厚みt1と凹部の厚みt2の差が0.45mmしかないために、ソルダーレジストインク中の溶剤が十分には排出されず、ソルダーレジストインクの硬化が十分に進行しないという不具合が発生した。
【0076】
〔比較例2〕
厚み1.6mm、幅2mmのポリエーテルイミドフィルム(三菱樹脂株式会社製スペリオUT)を、ギア形状が形成可能な金型を用いて320℃で連続プレス加工することにより、側面が台形で、平坦な長方形の上面の凸部を有する長さ100mのスペーシングテープを2本作成した。スペーシングテープの幅wは2mm、凸部上面の長さdは5mm、幅2mm、凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の上部の間隔)sは3mmであった。また、凸部の厚みt1は1.7mm、凹部の厚みt2は0.4mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差は1.3mmであった。
【0077】
次に、予めプラズマ処理を施した厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mmにスリットして、長さ100mのベーステープを準備した。そして、エポキシ系熱硬化性接着剤を用いて、ベーステープの片方の面の両端に、スペーシングテープの凹凸が形成されていない平坦な面がベーステープに接するように固着して、スペーサテープを得た。
【0078】
実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行おうとしたところ、スペーシングテープの凹部が0.4mmと厚く、そのためリールに巻き取ることができないという問題が発生した。
【0079】
〔比較例3〕
厚み4mm、長さ100mm、幅70mmのポリエーテルエーテルケトンのシートに、3次元NC制御のソーイング装置を用いて、図6、図9に示されるように幅方向に繰り返し凹部となる溝を形成した。溝の幅は3mm、溝と溝の間隔は5mm、溝の部分の厚みは0.12mmであった。
【0080】
次に、溝が形成されたポリエーテルエーテルケトンのシートを、溝と直交するように長さ方向に2mmの幅で切断し、幅wが2mm、長さ100mm、凸部の側面形状が長方形で、凸部の厚みt1が4mm、凹部の厚みt2が0.12mm、凸部の厚みと凹部の厚みの差が3.88mm、凸部の長さdが5mm、凹部の長さ(凸部と凸部の間隔)sが3mmのスペーシングテープ(図9(b))を得た。
【0081】
同じ操作を繰り返して、十分な数量になるようにスペーシングテープを作成した後、予めプラズマ処理を施した厚み0.075mm、幅48mm、長さ50mのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製、ユーピレックスRN)の両面両端に、アクリル系熱硬化性接着剤を用いて連続的に繰り返し貼り付けて、ポリイミドフィルムの片面両端にスペーシングテープが、貼り付けられたスペーサテープを得た。
【0082】
以下、実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーシングテープの厚みが4mmと厚いため、リールへの巻き取りを型崩れなく行うことが困難であった。
〔比較例4〕
【0083】
厚み0.125mmのポリイミドフィルム(宇部興産株式会社製ユーピレックスRN)を48mm幅にスリットしたテープを準備した。次に送り装置と、突起形成のための金型プレス装置を用いて、ポリイミドのテープに図11(a)、(b)に示される高さh=1.2mm、下底が直径D=5mmの半球形の突起を、全長に亘って形成しスペーサテープを得た。
【0084】
実施例1と同様にソルダーレジストインク付きの回路テープとの共巻きの評価を行ったところ、スペーサテープの凸部が凹部に入り込んだことが原因と思われる回路テープエッジ部での波うちの不具合が発生した。
【符号の説明】
【0085】
1 スペーサテープ
2 ベーステープ
3 スペーシングテープ
4、4a、4b 凸部
5、5a、5b 凹部
11 プラスチックシート
12 溝
13 V字溝
w スペーシングテープの幅
d 凸部の長さ
s 凹部の長さ(隣り合う凸部と凸部の間隔)
t1 凸部の厚み
t2 凹部の厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性ベースプラスチックテープの少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープにおいて、
該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部と凹部が繰り返し形成されており、該凸部の厚みが0.6〜3mmであり、該凹部の厚みが0.02〜0.3mmであり、該凸部の厚みと該凹部の厚みの差が0.5mm以上であることを特徴とするスペーサテープ。
【請求項2】
前記2列以上の耐熱性スペーシングテープが、前記耐熱性ベースプラスチックテープの両面のそれぞれに、連続的に固着されていることを特徴とする請求項1に記載のスペーサテープ。
【請求項3】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの厚みが、0.05〜0.3mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサテープ。
【請求項4】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの幅が、10〜350mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項5】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの材質が、ポリエーテルイミド、ポリイミド及びポリフェニレンサルファイドから選択されるいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項6】
前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、芳香族ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項7】
前記芳香族ポリマーが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項6記載のスペーサテープ。
【請求項8】
前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、熱硬化性接着剤を介して耐熱性ベースプラスチックテープに固着されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスペーサテープ
【請求項9】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着されている前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープに形成された凹部の長さより長いことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項10】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さより長いと共に、一方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さと、他方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さとが等しいことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項1】
耐熱性ベースプラスチックテープの少なくとも片面に、2列以上の耐熱性スペーシングプラスチックテープが、該耐熱性ベースプラスチックテープの長さ方向に連続的に固着されたスペーサテープにおいて、
該耐熱性スペーシングプラスチックテープの表面に凸部と凹部が繰り返し形成されており、該凸部の厚みが0.6〜3mmであり、該凹部の厚みが0.02〜0.3mmであり、該凸部の厚みと該凹部の厚みの差が0.5mm以上であることを特徴とするスペーサテープ。
【請求項2】
前記2列以上の耐熱性スペーシングテープが、前記耐熱性ベースプラスチックテープの両面のそれぞれに、連続的に固着されていることを特徴とする請求項1に記載のスペーサテープ。
【請求項3】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの厚みが、0.05〜0.3mmであることを特徴とする請求項1又は2に記載のスペーサテープ。
【請求項4】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの幅が、10〜350mmであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項5】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの材質が、ポリエーテルイミド、ポリイミド及びポリフェニレンサルファイドから選択されるいずれかである請求項1〜4のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項6】
前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、芳香族ポリマーで形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項7】
前記芳香族ポリマーが、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド及びポリエーテルエーテルケトンから選択されるいずれかであることを特徴とする請求項6記載のスペーサテープ。
【請求項8】
前記耐熱性スペーシングプラスチックテープが、熱硬化性接着剤を介して耐熱性ベースプラスチックテープに固着されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載のスペーサテープ
【請求項9】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着されている前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングテープに形成された凹部の長さより長いことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【請求項10】
前記耐熱性ベースプラスチックテープの一方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さが、他方の面に固着された前記耐熱性スペーシングプラスチックテープに形成された凸部の長さより長いと共に、一方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さと、他方の面に固着されたスペーシングテープの隣り合う凸部と凹部の合計の長さとが等しいことを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載のスペーサテープ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−146883(P2012−146883A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5298(P2011−5298)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(592166137)河村産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(592166137)河村産業株式会社 (31)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]