説明

スペーサ固定用部材及びスペーサ固定用部材付きスペーサ

【課題】スペーサを骨に固定する操作を容易かつ確実に行うことができるスペーサ固定用部材、及び骨同士の間隙を確保する操作を容易に行うことのできるスペーサ固定用部材付きスペーサを提供する。
【解決手段】骨同士の間隙にスペーサを挿入した状態で、前記スペーサを前記骨に固定するのに用いられるスペーサ固定用部材であって、複数本のチタン製線材と、前記複数本のチタン製線材の少なくとも一端を束ねて固着するための棒状の結束部材とからなることを特徴とするスペーサ固定用部材、及びスペーサ骨同士の間隙に挿入される、貫通孔を有するスペーサと、前記貫通孔に挿通された前記スペーサ固定用部材とを有するスペーサ固定用部材付きスペーサ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スペーサを骨に固定する際に用いられるスペーサ固定用部材及びかかるスペーサ固定用部材を備えたスペーサに関する。
【背景技術】
【0002】
頚椎脊椎症性脊髄症、後縦靭帯骨化症、黄色靭帯骨化症、椎間板ヘルニア等の治療として、正中縦割式頚椎拡大椎弓形成術が行なわれている。
【0003】
正中縦割式拡大椎弓形成術では、椎弓や棘突起の正中部(中央部)を切断し、正中部を境にして、両側の椎弓をヒンジのようにして開くことにより、脊柱管を拡大する。この際、椎弓や棘突起を切断して開いた間隙には、スペーサが挿入される。
【0004】
スペーサは、例えば、平面視でほぼ台形状のものを、幅の狭い部分が脊柱管(椎孔)側となるように、前記間隙に挿入して使用される。
【0005】
スペーサが椎弓又は棘突起から離脱するのを防止するために、椎弓又は棘突起に形成された貫通孔、及びスペーサに形成された貫通孔に縫合糸を挿通し、スペーサを締め付けるように縛って固定する(例えば、特開2007-082826号(特許文献1)参照)。このスペーサの固定は通常複数の縫合糸を用いて行なわれるが、複数本の縫合糸を貫通孔に挿通する操作は極めて煩雑であり、改良が望まれている。
【0006】
特開2010-11929号(特許文献2)は、複数本の生体親和性材料からなる縫合糸と、この縫合糸の長手方向に間隔をあけて配置された2つの針状の硬質部とを備える骨移植用縫合具を開示しており、前記硬質部は手術針、又は接着剤により前記縫合糸の一部を硬化してなる構成を記載している。骨移植用縫合具を用いることにより、椎弓又は棘突起に形成された貫通孔、及びスペーサに形成された貫通孔に縫合糸を挿通する際、硬質部を手術針の代わりに用いて縫合糸を誘導することができるので手術針が不要になり、縫合糸が手術針から抜けるという不都合がなくなると記載している。
【0007】
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載された縫合糸は、前述したように椎弓又は棘突起に形成された貫通孔、及びスペーサに形成された貫通孔に挿通し、スペーサを締め付けるように縛って固定するものであるため、縛り方によってスペーサの固定が不十分であったり、また締め付けすぎたりすることがある。このため、簡便な操作で適度な締め付けができるような改良が望まれている。
【0008】
ベストメディカル株式会社、「体内固定用ワイヤ チタンワイヤー」添付文書、2008年9月1日作成(新様式第1版)、インターネット(URL: http://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/20100BZZ01408000_A_02_01/)(非特許文献1)には、2本のチタンワイヤの両端部を球状の部材で固定してなる体内固定用ワイヤが記載されている。しかしながら、例えば正中縦割式拡大椎弓形成術においてスペーサを固定するために前記体内固定用ワイヤを使用する場合、前記ワイヤの端部が球状の部材で固定されているため、骨やスペーサに形成された貫通孔に前記チタンワイヤをスムーズに挿入するのが困難である。またチタンワイヤを太くして腰をもたせることによって、ある程度前記貫通孔への挿入が容易となるが、一方でチタンワイヤが太くなることによってワイヤの柔軟性が低下し、ワイヤの端部同士を撚って締め付ける操作が難しくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007-082826号公報
【特許文献2】特開2010-11929号公報
【非特許文献1】ベストメディカル株式会社、「体内固定用ワイヤ チタンワイヤー」添付文書、2008年9月1日作成(新様式第1版)、インターネット(URL: http://www.info.pmda.go.jp/ygo/pack/20100BZZ01408000_A_02_01/)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、スペーサを骨に固定する操作を容易かつ確実に行うことができるスペーサ固定用部材、及び骨同士の間隙を確保する操作を容易に行うことのできるスペーサ固定用部材付きスペーサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者らは、縫合糸を用いてスペーサを縛って固定する代わりに、チタン製線材を使用して、前記チタン製線材を撚ることにより、簡便にかつ迅速に、適度な強度でスペーサを固定することができること、及び前記チタン製線材を複数本束ねた端部に棒状の結束部材を固定することにより、骨及びスペーサに設けた貫通孔に容易に挿入が可能となることを見出し、本発明に想到した。
【0012】
すなわち、骨同士の間隙にスペーサを挿入した状態で、前記スペーサを前記骨に固定するのに用いられる本発明のスペーサ固定用部材は、複数本のチタン製線材と、前記複数本のチタン製線材の少なくとも一端を束ねて固着するための棒状の結束部材とからなることを特徴とする。
【0013】
前記複数本のチタン製線材の両端部がそれぞれ結束部材により束ねて固着されているのが好ましい。
【0014】
前記複数本のチタン製線材は、前記結束部材の基部に軸方向に設けられた取付け孔に挿入した状態で押圧着することによって固着されているのが好ましい。
【0015】
前記チタン製線材は直径0.1〜1.2 mmであるのが好ましい。
【0016】
前記複数本のチタン製線材はそれぞれ異なる色彩を有するのが好ましい。
【0017】
少なくとも1本の前記チタン製線材が、陽極酸化皮膜を形成することにより着色されているのが好ましい。
【0018】
前記チタン製線材が2本であるのが好ましい。
【0019】
前記結束部材の長さは5〜35 mmであるのが好ましい。
【0020】
前記結束部材の太さは1〜5 mmであるのが好ましい。
【0021】
前記結束部材の端部が面取り処理されているのが好ましい。
【0022】
前記結束部材はステンレスからなるのが好ましい。
【0023】
前記結束部材は樹脂からなるのが好ましい。
【0024】
本発明の骨同士の間隙に挿入されるスペーサは、貫通孔を有するスペーサと、前記貫通孔に挿通された前記スペーサ固定用部材とを有することを特徴とする。
【0025】
前記スペーサは、椎弓、又は椎弓及び棘突起を切断して開いた間隙に挿入するためのものであるのが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明のスペーサ固定用部材は、複数本のチタン製線材を結束部材によって束ねてなるので、骨及びスペーサに設けた貫通孔に複数のチタン製線材を容易に挿通することができるとともに、切断した複数本のチタン製線材を撚ることによって、スペーサを固定し骨同士の間隙を確保する操作を容易かつ確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明のスペーサ固定用部材の一例を示す模式図である。
【図2】本発明のスペーサ固定用部材の、チタン製線材と結束部材とを固着する方法の一例を示す模式図である。
【図3】本発明のスペーサ固定用部材付きスペーサの一例を示す斜視図である。
【図4】正中縦割式拡大椎弓形成術を説明するための模式図である。
【図5】正中縦割式拡大椎弓形成術を説明するための他の模式図である。
【図6】正中縦割式拡大椎弓形成術を説明するためのさらに他の模式図である。
【図7】正中縦割式拡大椎弓形成術を説明するためのさらに他の模式図である。
【図8】スペーサを固定する方法を説明するための斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
[1] 正中縦割式拡大椎弓形成術
本発明のスペーサ固定用部材又はスペーサ固定用部材付きスペーサは、例えば正中縦割式拡大椎弓形成術において使用する。正中縦割式拡大椎弓形成術を、図4〜図7を用いて説明する。なお、図4〜図7において、上側が背側、下側が腹側である。
【0029】
図4に示すように、椎骨100は、椎体110と、椎体110の後方(図4中の上側)に延び、脊柱管(椎孔)140を形成する椎弓120と、椎弓120の中央部から後方に突出する棘突起130とを有する。
【0030】
まず、図5に示すように、棘突起130を、正中線200に沿ってエアドリル等を用いて切断し、椎弓120を2分割して切断部130a、130bを形成する。また、椎弓120の根元部の外側に、エアドリル等を用いて溝121a、121bを形成する。この溝121a、121bは、外板のみ削り内板を削らない程度の深さとする。この溝121a、121bを形成した部位は、ヒンジ部(蝶番)122a、122bとなる。
【0031】
次に、図6に示すように、ヒンジ部122a、122bを軸に、切断部130a、130bを回動させることにより、棘突起130の切断した部分を広げ、間隙150をあける。ここで、必要に応じて、切断部130a、130bの間隙150に面した内側面を整形する。
【0032】
次に、切断部130a、130bに貫通孔131a、131bをあける。その後、図7に示すように、平面視でほぼ台形状のスペーサSを間隙150に挿入する。これにより、患者の棘突起130と、スペーサSとで、拡大された椎弓160が形成される。
【0033】
この操作を行う途中又は終了後、棘突起130の貫通孔131a、131b及びスペーサSの貫通孔S1に、本発明のスペーサ固定用部材1を挿通する。そして、後述するように、チタン製線材10a,10bを結束部材11に近い部分で切断し、2本に分離したチタン製線材10a,10bを用いて、スペーサSを切断部130a、130bに固定する。
【0034】
スペーサSとしては、アルミナ、ジルコニア、リン酸カルシウム系化合物等のバイオセラミックスで構成されるものが好適に用いられる。また、気孔率は、70%以下(特に30〜50%)のものが好適である。
【0035】
[2]スペーサ固定用部材
(1)構成
スペーサ固定用部材1は、図1に示すように、それぞれ直径Dを有する複数本のチタン製線材10(本実施形態では、チタン製線材10a,10bの2本)と、これらの複数本の線材10の少なくとも一端を束ねるための棒状の結束部材11とからなる。本実施形態のスペーサ固定用部材1は、前記複数本のチタン製線材10の両端部にそれぞれ結束部材11,11を固着した形状を有する。
【0036】
結束部材11は、前述の正中縦割式拡大椎弓形成術において、棘突起130に形成された貫通孔131a、131b及びスペーサSに形成された貫通孔S1(図6及び図7を参照)にスペーサ固定用部材1を挿通し易くするために、その先端部11aを面取り処理し、なめらかな形状(図1では球面形状)に加工するのが好ましい。先端部11aの形状は円錐形状等であってもよい。
【0037】
結束部材11をスペーサ固定用部材1の両端部に設けることにより、スペーサ固定用部材1を貫通孔131a、131b及びS1に挿通する際に、いずれの端部側からでも、挿通する操作を行うことができる。
【0038】
前述の正中縦割式拡大椎弓形成術において、図8に示すように、(a)貫通孔131a、131b及びS1にスペーサ固定用部材1を挿通し、(b)スペーサSを棘突起130の切断部130a、130bに合わせた後、(c)チタン製線材10a,10bを結束部材11に近い部分で切断し、前記結束部材11で固着されているチタン製線材10a,10bを分離し、(d)それぞれのチタン製線材10a,10bを、スペーサSと棘突起130の切断部130a、130bとを締め付けるように撚ることにより、スペーサSを棘突起130の切断部130a、130bに強固にかつ迅速に固定することができる。スペーサ固定用部材1の使用方法は、後に詳細に説明する。
【0039】
(2)チタン製線材
線材は、純チタンのものを使用する。純チタン製の線材は耐食性及び強度に優れ、生体為害性がなく、生体骨との馴染みもよいので本発明の目的に好適である。チタンとしてはJIS1種、JIS2種、JIS3種、JIS4種等が使用できるが、本発明の目的には、柔軟性の高いJIS1種又はJIS2種が好ましい。
【0040】
チタン製線材の太さDは、使用目的によって選択すればよいが、例えば、正中縦割式拡大椎弓形成術におけるスペーサ固定用に使用する場合は、0.1〜1.2 mmφであるのが好ましく、0.1〜0.5 mmφであるのがより好ましく、0.2〜0.4 mmφであるのが最も好ましい。図1に示す態様おいて、チタン製線材10a,10bは、ほぼ等しい径を有しているのが好ましいが、目的に応じて各チタン製線材10a,10bの径は異なっていてもよい。
【0041】
チタン製線材の長さは、使用する目的によって適宜設定すればよく特に限定されないが、10〜100 cm程度であるのが好ましく、15〜30 cm程度であるのがより好ましい。図1に示すように、チタン製線材10a,10bは、ほぼ等しい長さを有しているのが好ましい。
【0042】
複数本のチタン製線材を、結束部材11の基部11b付近で切断し分離した後スペーサを固定する際に、異なるチタン製線材10a,10bの端部同士を繋いでしまわないようにするために、チタン製線材10a,10bは、互いに異なる色彩を有しているのが好ましい。チタン製線材への着色は、陽極酸化によってチタン材表面に酸化被膜を形成することにより行うことができる。
【0043】
陽極酸化法を用いて、チタン材の表面に陽極酸化被膜を形成する技術は、公知の方法である。この陽極酸化被膜は、通常、数10〜数100 nm程度の厚みの薄膜であり、チタン材の表面に干渉色を付与する。陽極酸化の条件(電圧及び温度)を調節して被膜の厚みを変えることにより、様々な色調にチタン材を着色することができる。
【0044】
各チタン製線材は、モノフィラメントで構成してもよく、マルチフィラメントで構成してもよい。ここで、モノフィラメントとは、長く連続して形成された接続部を有さない一本の線材のことを言い、マルチフィラメントとは、複数のモノフィラメントを撚り合わせて構成されたものを言う。
【0045】
モノフィラメントを用いた場合、各線材の腰が強くなり、スペーサSをより強固に締め付けること(固定すること)ができるという利点がある。また、フィラメント同士による間隙を有さないので、感染のリスクが減少する。一方、マルチフィラメントを用いた場合は、各線材の柔軟性が高まり、スペーサSをより容易かつ正確に締め付けることができるようになるという利点がある。
【0046】
(3)結束部材
結束部材11の長さは、特に限定されないが、5〜35 mm程度であるのが好ましく、7〜30 mm程度であるのがより好ましい。結束部材11の長さを前記範囲とすることにより、結束部材11を確実に指等で把持することができる。また、前記範囲であれば、結束部材11の長さが長過ぎることがなく、貫通孔131a、131b及び貫通孔S1へのスペーサ固定用部材1の挿通操作を容易に行うことができる。
【0047】
結束部材11の太さは、特に限定されないが、1〜5 mm程度であるのが好ましく、2〜4 mm程度であるのがより好ましい。結束部材11の太さは、骨やスペーサに形成した貫通孔によって適宜設定するのが好ましい。
【0048】
結束部材11は、ステンレス、チタン、チタン合金等の耐食性に優れた材料からなるのが好ましい。また、目的に応じて樹脂、特に熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂のものを用いても良い。
【0049】
前記結束部材11として金属を使用した場合、複数本のチタン製線材10の前記結束部材11への固着は、例えば図2に示すように、前記結束部材11の基部11bに軸方向に設けられた取付け孔11cに複数本の線材10(図ではチタン製線材10a,10bの2本)の端部をまとめて挿入し、前記結束部材11の外周部分からペンチ等の器具によって押圧することによって行う方法が挙げられる。前記取付け孔11cは、レーザー加工等により形成することができる。前記取付け孔11cは、前記チタン製線材10が実用的な強度で固着できる程度の内径及び深さがあれば良く、例えば0.3〜0.4 mm程度の線材を2本使用する場合、前記取付け孔11cの内径は0.7〜0.9 mm程度、深さは2〜4 mm程度であればよい。
【0050】
前記結束部材11として樹脂製の部材を用いる場合、前記チタン製線材10の固着は、例えば熱収縮性樹脂を使用して加熱等によって行うことができる。
【0051】
(4)スペーサ固定用部材の使用例
スペーサ固定用部材1を用いて、スペーサSを棘突起130の切断部130a、130bに固定する方法について図8を用いて説明する。なお、図8は、正中縦割式拡大椎弓形成術を説明する図6と図7との間の段階を示すものである。
【0052】
(i) スペーサ固定用部材1の一方の結束部材11を指等で把持し、スペーサSの貫通孔S1に挿通する(図示せず)。スペーサ固定用部材1がスペーサSの貫通孔S1に挿通した状態で、スペーサ固定用部材1の一方の結束部材11を切断部130aにあけた貫通孔131aに、他方の結束部材11を切断部130bにあけた貫通孔131bに挿通する(図8(a)参照)。
【0053】
このとき、結束部材11は、ある程度の長さを有するため、確実に把持することができるとともに、貫通孔131a、131b及びS1に挿通する際にチタン製線材が折れ曲がることなく、この操作を確実に行うことができる。
【0054】
(ii)スペーサ固定用部材1の両端部を離間する方向に引っ張るとともに、スペーサSを間隙150に挿入する(図8(b)参照)。
【0055】
(iii)各結束部材11の基部11bの近くで、前記チタン製線材10a,10bを切断し分離する(図8(c)参照)。このとき、結束部材11はある程度の長さ及び太さを有するので、切断した部分を見失って患者の体内に取り残す危険性が少ない。なお、(ii)と(iii)の順序は逆であっても良い。
【0056】
(iv)チタン製線材10a,10bを、それぞれスペーサSを締め付けるようにして撚る。これにより、スペーサSを簡単に迅速に切断部130a、130bに固定することができる。
【0057】
(v)チタン製線材10a,10bの不要な部分を切断して、正中縦割式拡大椎弓形成術を完了する(図8(d)参照)。
【0058】
本発明と異なり、例えば、非特許文献1に記載されたチタンワイヤを用いた場合、前記ワイヤの端部が球状の部材で固定されているため、椎弓、棘突起、スペーサ等に形成された貫通孔に前記チタンワイヤをスムーズに挿入するのが困難である。前記貫通孔に前記チタンワイヤをスムーズに挿入することができる程度に前記チタンワイヤを太くして腰をもたせた場合、ある程度前記貫通孔への挿入が容易となるが、一方でチタンワイヤが太くなることによってワイヤの柔軟性が低下し、ワイヤの端部同士を撚って締め付ける操作が難しくなる。
【0059】
また前記ワイヤの端部を固定している球状の部材は小さいので、切断した球状部材を見失った場合、この部分を見つけ出すことが難しく、患者の体内に取り残す危険性もある。
【0060】
なお、本実施形態では、結束部材11がスペーサ固定用部材1の両端部に設けられていたが、貫通孔131a、131b及びS1に、スペーサ固定用部材1を挿通する操作のし易さの点だけを考慮した場合、結束部材11は、スペーサ固定用部材1のいずれか一方の端部にのみ設けるようにしてもよい。
【0061】
[3]スペーサ固定用部材付きスペーサ
図3に示すように、スペーサ固定用部材付きスペーサ1Sは、貫通孔を有するスペーサSと、前記貫通孔に挿通されたスペーサ固定用部材1とからなる。
【0062】
スペーサ固定用部材1は、例えば、スペーサSの貫通孔S1に挿通された状態で術者に提供される。スペーサ固定用部材1は、生体適合性を有する材料等を用いて、スペーサSに固定されていても良い。
【0063】
スペーサ固定用部材付きスペーサを用いることで、術場で、スペーサSの貫通孔S1にスペーサ固定用部材1を挿通する操作を省略することができるので、手術時間の短縮を図ることができ、患者の負担を軽減できる。
【0064】
以上、本発明のスペーサ固定用部材及びスペーサ固定用部材付きスペーサを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、各構成は、同様の機能を発揮し得る任意のものと置換することができ、又は任意の構成のものを付加することができる。
【0065】
例えば、図1に示すスペーサ固定用部材は、2本のチタン製線材で構成されているが、3本以上のチタン製線材で構成されていてもよい。この場合、例えば、2本のチタン製線材でスペーサを骨に固定し、残りのチタン製線材は、椎弓から棘突起を切離した場合に、この切離した棘突起を元の位置に固定するために使用したり、棘突起から靭帯を切離した場合に、この切離した靭帯を棘突起に固定するために使用したりすることができる。
【0066】
また、図3に示すスペーサは、椎弓及び棘突起を切断することにより形成された骨同士の間隙に使用するスペーサ、すなわち、棘突起スペーサであるが、椎弓を切断することにより形成された骨同士の間隙に使用するスペーサ、すなわち、椎弓スペーサであってもよい。さらには、前記スペーサは、椎体間に用いられる椎間スペーサであってもよい。
【符号の説明】
【0067】
1・・・スペーサ固定用部材
10、10a、10b・・・チタン製線材
11・・・結束部材
1S・・・スペーサ固定用部材付きスペーサ
S・・・スペーサ
S1・・・貫通孔
100・・・椎骨
110・・・椎体
120・・・椎弓
121a、121b・・・溝
122a、122b・・・ヒンジ部
130・・・棘突起
130a、130b・・・切断部
131a、131b・・・貫通孔
140・・・脊柱管
150・・・間隙
160・・・拡大された椎弓
200・・・正中線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
骨同士の間隙にスペーサを挿入した状態で、前記スペーサを前記骨に固定するのに用いられるスペーサ固定用部材であって、複数本のチタン製線材と、前記複数本のチタン製線材の少なくとも一端を束ねて固着するための棒状の結束部材とからなることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項2】
請求項1に記載のスペーサ固定用部材において、前記複数本のチタン製線材の両端部がそれぞれ結束部材により束ねて固着されていることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のスペーサ固定用部材において、前記複数本のチタン製線材は、前記結束部材の基部に軸方向に設けられた取付け孔に挿入した状態で押圧着することによって固着されていることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記チタン製線材は直径0.1〜1.2 mmであることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記複数本のチタン製線材がそれぞれ異なる色彩を有することを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、少なくとも1本の前記チタン製線材が、陽極酸化皮膜を形成することにより着色されていることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記チタン製線材が2本であることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記結束部材の長さが5〜35 mmであることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記結束部材の太さが1〜5 mmであることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記結束部材の端部が面取り処理されていることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記結束部材がステンレスからなることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項12】
請求項1〜10のいずれかに記載のスペーサ固定用部材において、前記結束部材が樹脂からなることを特徴とするスペーサ固定用部材。
【請求項13】
骨同士の間隙に挿入されるスペーサであって、貫通孔を有するスペーサと、前記貫通孔に挿通された請求項1〜12のいずれかに記載のスペーサ固定用部材とを有することを特徴とするスペーサ固定用部材付きスペーサ。
【請求項14】
請求項13に記載のスペーサ固定用部材付きスペーサにおいて、前記スペーサが、椎弓、又は椎弓及び棘突起を切断して開いた間隙に挿入するためのものであることを特徴とするスペーサ固定用部材付きスペーサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−34507(P2013−34507A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170468(P2011−170468)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】