説明

スポット空調装置および空調空気のスイング設定値設定方法

【課題】 本発明は、スポット空調装置に関し、低温または高温の空気が継続して作業者に当たり作業者に不快感をもたらすおそれを容易,確実に解消することを目的とする。また、このスポット空調装置に好適する空調空気のスイング設定値設定方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 冷温熱交換手段および送風手段を備えた空調機からの空調空気を管路を介して作業者の近傍に配置される複数の吹出口に導き、前記吹出口から作業者に向けて空調空気を吹き出すスポット空調装置において、前記冷温熱交換手段および前記送風手段を制御し、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる制御手段を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポット空調装置および空調空気のスイング設定値設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、全空気式の空調方式では、その能力は給気風量と給気温度差により決定される。そして、空調関連の搬送エネルギは冷水など冷媒、温媒よりも空気の方が大きいので、給気温度を低くつまり給気温度差を大きく設定した場合は給気風量が少なくなり省エネルギを図ることができる。しかしながら、この場合ドラフト感が強くなったり結露の対策が必要になる。また、給気風量を多く、給気温度を高くつまり給気温度差を小さくした場合は気流感が改善されるが搬送動力が大きくなる。従来、VAV(可変風量ダンパ Variable Air Volume damper)等を用いた空調設備では、給気温度の設定値を低くすることで、VAVによる室内の温度制御が少風量側に働き、搬送エネルギの削減が図られている。
【0003】
一方、各種工場など大空間におけるスポット空調では、各作業者に対して吹出口を設け、複数の吹出口から温度制御された空気を供給し、作業者の快適性を向上させる。空間全てを温調せず、作業者の存在する局所にのみ温調空気を供給する。空調機の夏期能力設計では、給気温度は15〜25℃が採用され、また、吸込口を工場建屋上部とした場合の空調機入口温度は30℃以上になる。そして、中間期になると建屋内に侵入する外壁負荷の減少から建屋内の温度が低下し、空調機の入口温度も30℃を下まわるようになり、冷却コイルの能力に余裕ができる。従って、この中間期において、給気温度差を大きくし給気風量を少なくすると省エネルギが可能になる。
【0004】
なお、従来、スポット空調装置として、例えば特開平5−203245号公報に開示されるように、各吹出口に吹き出し装置を設け、吹き出し装置の補助ファンの出力を調整することにより、給気風量(吹き出し風量)をスイングするものが知られている。
【特許文献1】特開平5−203245号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のスポット空調装置では、中間期において、給気温度差を大きくして給気風量を少なくして省エネルギを図ると、低温または高温の空気が継続して作業者に当たり、作業者に不快感をもたらすおそれがある。
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、低温または高温の空気が継続して作業者に当たり作業者に不快感をもたらすおそれを容易,確実に解消することができるスポット空調装置を提供することを目的とする。また、このスポット空調装置に好適する空調空気のスイング設定値設定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のスポット空調装置は、冷温熱交換手段および送風手段を備えた空調機からの空調空気を管路を介して作業者の近傍に配置される複数の吹出口に導き、前記吹出口から作業者に向けて空調空気を吹き出すスポット空調装置において、前記冷温熱交換手段および前記送風手段を制御し、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる制御手段を有することを特徴とする。
【0007】
請求項2のスポット空調装置は、請求項1記載のスポット空調装置において、前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、前記吹出口から吹き出す給気風量を通常制御設定値より小さくすることを特徴とする。
請求項3のスポット空調装置は、請求項1記載のスポット空調装置において、前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、前記吹出口から吹き出す給気風量を所定の周期でスイングさせることを特徴とする。
【0008】
請求項4のスポット空調装置は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項のスポット空調装置において、前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる時に、予め定められた時間毎にスイング量を変更することを特徴とするスポット空調装置。
請求項5の空調空気のスイング設定値設定方法は、冷温熱交換手段および送風手段を制御し、空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる時に設定されるスイング設定値を設定するための空調空気のスイング設定値設定方法において、空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる周期関数の1周期をN個の間隔に分割し、前記間隔内において前記スイング設定値を同一の値に維持することを特徴とする。
【0009】
請求項6の空調空気のスイング設定値設定方法は、請求項5記載の空調空気のスイング設定値設定方法において、前記周期関数を複数の2次曲線を組み合わせて形成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1のスポット空調装置では、吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるようにしたので、低温または高温の空気が継続して作業者に当たり作業者に不快感をもたらすおそれを容易,確実に解消することができる。
また、スイングすることで作業者の快適感を損なうことなく、給気温度差をさらに大きくとれることから、給気風量が小さくできるので搬送動力を低減できる。また、スイングすることで、作業者は給気温度変化による温冷感が向上し、そのため給気風量の平均値をさらに低くしたり、給気温度差の平均値を上げても同じ空調効果をもたらし、大きく省エネルギが図れる。
【0011】
請求項2のスポット空調装置では、吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、吹出口から吹き出す給気風量を通常制御設定値より小さくすることにより非常に高いエネルギ削減率を得ることができる。
請求項3のスポット空調装置では、吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、吹出口から吹き出す給気風量を所定の周期でスイングさせることにより高い温冷感を得ることが可能になり、また、高いエネルギ削減率を得ることができる。
【0012】
請求項4のスポット空調装置では、吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる時に、予め定められた時間毎にスイング量を変更するようにしたので、作業者に対する温冷感を高めることができ、また、給気温度を安定した状態でスイングすることができる。
請求項5の空調空気のスイング設定値設定方法では、空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる周期関数の1周期をN個の間隔に分割し、分割された間隔内においてスイング設定値を同一の値に維持するようにしたので、給気温度または給気風量を安定した状態でスイングすることが可能になり、また、演算を容易にすることができる。
【0013】
請求項6の空調空気のスイング設定値設定方法では、周期関数を複数の2次曲線を組み合わせて形成したので、周期関数にサインカーブ等の曲線を使用する場合に比較してスイング演算が容易になり、コントローラの演算能力を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明のスポット空調装置の一実施形態が配置される機械製作工場,組み立て工場等の建家11を示している。
建家11内には、建家11内の空気の一部を空調し、作業者の存在する局所へ給気する空調機13が配置され、空調機13からの給気管路15が建家11の上部空間に延存されている。給気管路15から分岐して複数の分岐管路17が下方に向けて延存され、各分岐管路17の先端に吹出口19が形成されている。そして、この吹出口19からの空調空気が建家11内で働く作業者21に供給される。
【0015】
図2は、図1の空調機13および空調機13を制御するコントローラ23の詳細を示している。
空調機13内には、フィルタ25、冷温水コイル27、ファン29が収容されている。冷温水コイル27には、冷温水管31が接続され、冷温水管31には、冷温水弁33が配置されている。給気管路15には、圧力計35および温度計37が配置されている。圧力計35は給気管路15内の給気圧力(これをもとに給気風量を演算する)を測定する。また、温度計37は空調空気の給気温度を測定する。
【0016】
コントローラ23は、入力部39、出力部41および演算部43を有している。入力部39は、圧力計35および温度計37からの信号を入力する。出力部41は、冷温水弁33の開度を制御する制御信号を冷温水弁33に出力する。また、出力部41は、インバータ45に周波数を制御する制御信号を出力しファン29の回転数を制御する。
この実施形態では、コントローラ23には、スイング運転を選択するスイッチボックス24が付属しており、SW1で通常運転、または後述するモード0、モード1、モード2、モード3およびモード4を選択し、SW2で決定と入力を行う。なお。スイッチボックス24には、選択内容等の表示を行う例えばLCDからなる表示部26が設けられている。
【0017】
図3は、コントローラ23の演算部43の詳細を示している。
この演算部43は、スイング演算部47および調節部49を有している。
スイング演算部47は、目標値設定部51からの基準設定値を示す信号およびスイング動作調節値設定部53からのスイング動作調整値を示す信号を入力してスイング設定値を演算する。ここで基準設定値は、スイングを伴わない通常制御時に設定される値であり、給気圧力Psoおよび給気温度Tsoとされている。また、スイング動作調整値は、スイング動作の内容を設定する値であり、最大設定圧力Pmax、最小設定圧力Pmin、最大設定温度Tmax、最小設定温度Tmin、1周期時間tcおよび設定保持時間tkとされている。そして、スイング設定値は、各時刻における給気圧力および給気温度を示す給気圧力Ps(n)および給気温度Ts(n)とされている。
【0018】
調節部49は、スイング演算部47、制御調節値設定部55、温度計37および圧力計35からの信号を入力してインバータ制御出力および冷温水弁制御出力を演算し、インバータ運転周波数および冷温水弁開度を制御する。制御調節値設定部55は、PID演算を行うための制御調節値である圧力制御比例帯PP、圧力制御積分時間IP、圧力制御微分時間DP、温度制御比例帯PT、温度制御積分時間IT、温度制御微分時間DTを調節部49に出力する。
【0019】
なお、基準設定値の給気圧力Pso、スイング動作調節値の最大設定圧力Pmax、最小設定圧力Pminについては、この前段に圧力と風力の関数を設定可能で、演算可能な風量変換演算部をそれぞれ設けることで、給気風量Qso、最大設定風量Qmax、最小設定風量Qminとすることとしてもよい。
図4は、図3のコントローラ23により設定される変動制御運転の変動モードを示している。
【0020】
変動制御運転の変動モードは、給気温度と給気圧力の変化の組合せで図4の(a)〜(e)に示す5種類とされている。各図とも横軸を時間軸として、給気温度と給気圧力の設定値のようすを示している。以下各モードについて説明する。なお、給気圧力Pは、給気風量Qとして構成してもよい。
(a)モード0
給気圧力をPsoからPminまで少なくし、給気温度をTsoからTminまで低くした運転である。低負荷時に設定温度を下げて、空調機13の冷却温度差を大きくすると、空調熱量が通常運転と同じで、給気風量を少なくでき、省エネルギが可能になる。すなわち、例えば、中間期になると建屋内の温度が低下し、空調機13の入口温度も30℃を下まわるようになり、冷却コイルの能力に余裕ができるため、特に、この中間期において、給気温度差を大きくし給気風量を少なくすることにより省エネルギを有効に図ることができる。
(b)モード1
給気圧力をPmaxとPminの間で変動つまりスイングし、給気温度をTmaxとTminの間で変動(スイング)させる運転である。給気圧力と給気温度の両者を変動(スイング)することにより作業者21の温冷感が増すので、空調能力の軽減が可能である。また、給気圧力設定の平均を通常の給気圧力Psoよりも低く、給気温度設定の平均を通常の給気温度Tsoよりも高く設定することで、省エネルギを図ることができる。なお、設定により、給気圧力と給気温度の設定値のピークをずらすようにしても良い。
(c)モード2
給気圧力をPsoより少なくし、給気温度をTmaxとTminの間で変動(スイング)させ、変動(スイング)する温度で温冷感を補う運転である。給気温度設定の平均を通常の給気温度Tsoよりも高く設定することで、省エネルギを図ることができる。搬送動力の軽減量はモード1よりも大きくなる。
(d)モード3
給気温度はTsoで一定とし、給気圧力をPmaxとPminの間で変動(スイング)させる運転である。空調能力は低下するが、給気圧力つまり給気風量の変化による温冷感の向上が見込まれる。省エネルギ効果は、送風動力と風量変化に伴う空調能力変化分となる。
(e)モード4
給気圧力を確保する必要がある設備や、直動方式の空調機13の運転で、給気圧力をPsoで一定とし、給気温度のみをTmaxとTminの間で変動(スイング)させる運転である。変動する給気温度の平均がTsoよりも高いときに、空調能力分が省エネルギとなる。
【0021】
図5は、図3のスイング演算部47でスイング設定値Ps(n),Ts(n)を演算する時に用いられる空調空気のスイング設定値設定方法を示している。
このスイング設定値設定方法では、周期関数にサインカーブを使用すると計算時間がかかるため、周期関数に2次曲線a,b,cを組み合わせて使用している。
図5において、横軸にはスイングカウント数nがとられ、縦軸には設定値SP(Set Point)がとられている。SPmaxは、図3に示した最大設定圧力Pmaxまたは最大設定温度Tmaxに対応する。また、SPminは、図3に示した最小設定圧力Pminまたは最小設定温度Tminに対応する。
【0022】
スイングカウント数nは、スィング運転1周期の分割数をNとすると周期の最初が1となり周期の最後がN+1となる。スィング運転1周期の分割数Nは、図3に示した1周期時間tcを設定保持時間tkで割り算することにより求められる。1周期時間tcとは、スイング動作の1周期に要する時間であり、例えば10×60秒、20×60秒等の値に設定される。また、設定保持時間tkとは、スイング動作時に、給気圧力または給気温度を変動することなく同一の値に維持する時間であり、例えば2×60秒、3×60秒等の値に設定される。すなわち、この実施形態では、スイング動作時においてスイング設定値SPnは、常に変動されるのではなく、設定保持時間tkの間は、同一の値に維持される。ここで、スイング設定値SPnは、図3に示したスイング設定値である給気圧力Ps(n)または給気温度Ts(n)に対応する。
【0023】
そして、計算上の便宜のために、
△SP=((SPmax−SPmin)/N)×2
と定義すると、スイング設定値SPnは以下の式で求められる。
この実施形態では、16ビットの演算により充分な精度を得るために、スィング運転1周期の分割数Nにより場合分けを行っている。また、スイングカウント数nにより場合分けを行い重み付けを行って変動(スイング)の精度を確保している。
【0024】
N≦12の時
1≦n<N/4: SPn=SPmax−(△SP×(40(n−1)2/N))/10
N/4≦n<N/2: SPn=SPmin+(△SP×(40(N/2−(n−1))2/N))/10
N/2≦n<3N/4: SPn=SPmin+(△SP×(40((n−1)−N/2)2/N))/10
3N/4≦n≦N: SPn=SPmax−(△SP×(40(N−(n−1))2/N))/10
N>12の時
1≦n<N/4: SPn=SPmax−△SP×(4(n−1)2/N)
N/4≦n<N/2: SPn=SPmin+△SP×(4(N/2−(n−1))2/N)
N/2≦n<3N/4: SPn=SPmin+△SP×(4((n−1)−N/2)2/N)
3N/4≦n≦N: SPn=SPmax−△SP×(4(N−(n−1))2/N)
図6は、冷房時に変動制御運転が可能か否かを判断するための運転判断フローチャートを示している。このフローチャートでは、変動制御運転が可能な条件を設定し、各種の条件判断を行った上で変動制御運転が行われる。
【0025】
先ず、ステップS1では、空調機13の運転が行われているか否かが判断される。
次に、ステップS2では、冷房運転が行われているか否かが判断される。
次に、ステップS3では、変動運転が選択されているか否かが判断される。
次に、ステップS4では、変動運転の設定が条件に整合しているか否かが判断される。条件には、変動制御運転を行って良い建家11内の温度範囲やスイング設定値の確認条件等が設定されている。
【0026】
次に、ステップS5では、予め設定されたスケジュールを満たしているか否かが判断される。スケジュールには、変動制御運転を行って良い時刻等が設定されている。
次に、ステップS6では、給気温度が正常であるか否かが判断される。
次に、ステップS7では、給気圧力が正常であるか否かが判断される。
そして、ステップS1からステップS7の条件が全て満たされている時に、ステップS8の変動制御運転が行われる。また、ステップS6またはステップS7の条件が満たされていない時には、給気温度あるいは給気圧力に異常があるため、ステップS9の変動禁止処理として計測値が所定範囲内に復帰しても一定時間は変動制御を行わないようにしている。そして、ステップS2からステップS5のいずれか1の条件が満たされていない時には、ステップS10の通常運転が行われる。
【0027】
図7および図8は、図3のコントローラ23の動作を示すフローチャートである。この実施形態では、プログラム計算周期は1秒とされている。
先ず、ステップS1では、変動制御運転が許可されているか否かが判断される。この判断は図6のフローチャートのステップS8に基づいて行われる。許可されていない場合は、ステップS2において内部タイマーtの値を1に設定する。
【0028】
一方、許可されている場合には、ステップS3において、定数計算が行われる。この定数計算では、1周期時間tcを設定保持時間tkで割り算することにより1周期分割数Nが求められる。また、ΔPspおよびΔTspが求められる。ΔPspは、給気圧力の図5のΔSPに対応する値である。また、ΔTspは、給気温度の図5のΔSPに対応する値である。
次に、ステップS4では、内部タイマーtの値から1が減算される。この実施形態では、内部タイマーtの初期設定値は120秒とされている。
【0029】
次に、ステップS5では、内部タイマーtの値が0であるか否かが判断される。
内部タイマーtの値が0である時には、ステップS6において、内部タイマーtの値が設定保持時間tk(この実施形態では120秒)に再設定され、スイングカウント数nに1が加算される。
次に、ステップS7では、スイングカウント数nがN+1であるか否かが判断される。N+1になっている時には、ステップS8においてスイングカウント数nが1に再設定される。
【0030】
次に、ステップS9では、図4に示したモード0が選択されているか否かが判断される。モード0が選択されている時には、ステップS10において給気圧力Ps(n)をPminに設定し、給気温度Ts(n)をTminに設定する。
モード0が選択されていない時には、ステップS11において図4に示したモード1が選択されているか否かが判断される。モード1が選択されている時には、ステップS12において給気圧力Ps(n)および給気温度Ts(n)を図5に示したように計算する。
【0031】
モード1が選択されていない時には、ステップS13において図4に示したモード2が選択されているか否かが判断される。モード2が選択されている時には、ステップS14において給気圧力Ps(n)をPminに設定し、給気温度Ts(n)を図5に示したように計算する。
モード2が選択されていない時には、ステップS15において図4に示したモード3が選択されているか否かが判断される。モード3が選択されている時には、ステップS16において給気圧力Ps(n)を図5に示したように計算し、給気温度Ts(n)をTsoに設定する。
【0032】
モード3が選択されていない時には、ステップS17において図4に示したモード4が選択されているか否かが判断される。モード4が選択されている時には、ステップS18において給気圧力Ps(n)をPsoに設定し、給気温度Ts(n)を図5に示したように計算する。
次に、モード4が選択されていない時には、変動制御運転が選択されていないと判断し、ステップS19において給気圧力Ps(n)をPsoに設定し、給気温度Ts(n)をTsoに設定する。
【0033】
次に、図8に示すステップS20において圧力制御出力計算が行われる。この計算は図3の調節部49で行われ、計算された値から求められたインバータ制御出力によりインバータ運転周波数が変更される。
次に、ステップS21において温度制御出力計算が行われる。この計算は図3の調節部49で行われ、計算された値から求められた冷温水弁制御出力により冷温水弁33の開度が変更される。
【0034】
図9は、上述した各モードを使用した時のエネルギ削減率を示している。
風量が10,000m3/hの空調機13を想定し、各運転モードのエネルギ削減率を試算した。結果と想定した条件を示す。モード0では、給気風量(給気圧力)および給気温度の両者を低減することによりエネルギ削減率が19%になっている。モード1では、給気風量(給気圧力)および給気温度の両者をスイングすることによりエネルギ削減率が20%になっている。モード2では、給気風量(給気圧力)を低減し、給気温度をスイングすることによりエネルギ削減率が33%になっている。モード3では、給気風量(給気圧力)のみをスイングすることによりエネルギ削減率が14%になっている。モード4では、給気温度をスイングすることによりエネルギ削減率が6%になっている。
【0035】
上述したスポット空調装置では、図10の(a)に示すように、給気圧力Ps(n)をスイングすることにより、図10の(a)の縦線の部分の空気搬送動力が削減され、省エネルギを図ることができる。また、図10の(b)に示すように、給気温度Ts(n)をスイングすることにより、図10の(b)の縦線の部分の冷房能力の軽減を図ることができる。
そして、上述したスポット空調装置では、吹出口19から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせることにより、低温の空気が継続して作業者21に当たり作業者21に不快感をもたらすおそれを容易,確実に解消することができる。また、給気温度の設定をスイングさせることで温冷感が増し冷水使用量が少なくてもスポット空調の効果が得られるので、熱源の消費エネルギを削減できる。
【0036】
また、図4に示したモード2のように、吹出口19から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、吹出口19から吹き出す給気風量を通常制御設定値より小さくすることにより非常に高いエネルギ削減率を得ることができる。
そして、図4に示したモード1のように、吹出口19から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、吹出口19から吹き出す給気風量を所定の周期でスイングさせることにより高い温冷感を得ることが可能になり、また、高いエネルギ削減率を得ることができる。
【0037】
また、上述したスポット空調装置では、吹出口19から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる時に、予め定められた時間毎にスイング量を変更するようにしたので、作業者21に対する温冷感を高めることができ、また、給気温度を安定した状態でスイングすることができる。なお、予め定められた時間は、吹出口19から作業者21までの距離、作業者21の作業環境等に応じて設定され、例えばスイング運転1周期が30×60秒の場合には、例えば2×60秒程度の時間に設定することにより作業者21に対する温冷感を高めることができる。
【0038】
さらに、上述したスポット空調装置では、モード設定スイッチSW1により複数のモードを選択可能にしたので、その日の天気の状態、作業の状態等に応じて最適なモードを選択することができる。
そして、上述した空調空気のスイング設定値設定方法では、空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる周期関数の1周期をN個の間隔に分割し、分割された間隔内においてスイング設定値を同一の値に維持するようにしたので、給気温度または給気風量を安定した状態でスイングすることが可能になり、また、演算を容易にすることができる。
【0039】
また、周期関数を複数の2次曲線を組み合わせて形成したので、周期関数にサインカーブ等の曲線を使用する場合に比較してスイング演算が容易になり、コントローラ23の演算能力を軽減することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0040】
(1)上述した実施形態では、冷房運転の場合について説明したが、設定値を変更することにより暖房運転の場合にも同様に適用することができる。
(2)上述した実施形態では、コントローラ23を一体型にした例について説明したが、例えば、図11に示すように、スイング演算部47と圧力調整器61と温度調整器63とを分離し、分割型にしても良い。
【0041】
(3)上述した実施形態では、冷温熱交換手段に冷温水コイル27を用いた例について説明したが、例えば気液相変化する媒体を用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明のスポット空調装置の一実施形態が配置される建家を示す説明図である。
【図2】本発明のスポット空調装置の一実施形態の詳細を示す説明図である。
【図3】図2のコントローラの演算部を示すブロック図である。
【図4】図2のコントローラに設定される変動制御運転のモードを示す説明図である。
【図5】本発明の空調空気のスイング設定値設定方法の一実施形態を示す説明図である。
【図6】図2のコントローラに設定される運転判断を行うためのフローチャートである。
【図7】図2のコントローラの動作を示すフローチャートである。
【図8】図7のフローチャートのAより下流側を示すフローチャートである。
【図9】各モードのエネルギ削減率を示す説明図である。
【図10】給気圧力および給気温度をスイングした時の空気搬送動力削減および冷房能力削減を示す説明図である。
【図11】コントローラの他の例を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0043】
13 空調機
15 給気管路
19 吹出口
23 コントローラ
27 冷温水コイル
29 ファン
33 冷温水弁
35 圧力計
37 温度計
43 演算部
47 スイング演算部
49 調節部
51 目標値設定部
53 スイング動作調節値設定部
55 制御調節値設定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷温熱交換手段および送風手段を備えた空調機からの空調空気を管路を介して作業者の近傍に配置される複数の吹出口に導き、前記吹出口から作業者に向けて空調空気を吹き出すスポット空調装置において、
前記冷温熱交換手段および前記送風手段を制御し、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる制御手段を有することを特徴とするスポット空調装置。
【請求項2】
請求項1記載のスポット空調装置において、
前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、前記吹出口から吹き出す給気風量を通常制御設定値より小さくすることを特徴とするスポット空調装置。
【請求項3】
請求項1記載のスポット空調装置において、
前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせるスイングモード時に、前記吹出口から吹き出す給気風量を所定の周期でスイングさせることを特徴とするスポット空調装置。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれか1項のスポット空調装置において、
前記制御手段は、前記吹出口から吹き出される空調空気の給気温度を所定の周期でスイングさせる時に、予め定められた時間毎にスイング量を変更することを特徴とするスポット空調装置。
【請求項5】
冷温熱交換手段および送風手段を制御し、空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる時に設定されるスイング設定値を設定するための空調空気のスイング設定値設定方法において、
空調空気の給気温度または給気風量を所定の周期でスイングさせる周期関数の1周期をN個の間隔に分割し、前記間隔内において前記スイング設定値を同一の値に維持することを特徴とする空調空気のスイング設定値設定方法。
【請求項6】
請求項5記載の空調空気のスイング設定値設定方法において、
前記周期関数を複数の2次曲線を組み合わせて形成することを特徴とする空調空気のスイング設定値設定方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−64310(P2006−64310A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248711(P2004−248711)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000001834)三機工業株式会社 (316)
【Fターム(参考)】