説明

スライディングノズル装置

【課題】スライディングノズルの交換を速やかに行うことができるスライディングノズル装置を提供すること。
【解決手段】前記溶湯容器の底部に設けられ溶湯流出孔に連通する通孔2aを備えるベースプレート2と、ベースプレート2の下面にスライド可能に配置された少なくとも一つのスライディングノズル3と、スライディングノズル3をそのノズル孔3aがベースプレート2の通孔2aに連通する位置にスライドさせる第1スライド手段6と、ベースプレート2の下面にスライド可能に配置され、スライディングノズル3と共通のルートを通って通孔2aに連通する位置にスライドさせられる少なくとも一つの予備スライディングノズル4と、予備スライディングノズル4を第1スライド手段6の作動領域にスライドさせる第2スライド手段7と、を有することを特徴とするスライディングノズル装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鋼用のタンディッシュや取鍋等の溶湯容器の底部に設けられたスライディングノズルを交換するスライディングノズル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
タンディッシュや取鍋等の溶湯容器の底部に形成された出鋼口には、溶融金属の出鋼量を制御するためのスライディングノズル装置が具備されている。
【0003】
従来のスライディングノズル装置(例えば、特許文献1参照)を図7に示す。溶鋼収納鍋の底部50には、溶鋼の出鋼口50aが設けられ、この出鋼口50aには、中央に流出孔60aを施した上ノズル60が取付けられている。そして、上ノズル60の下端部には、スライディングノズル装置70が取付けられている。
【0004】
スライディングノズル装置70は、上ノズル60の流出孔60aと連通する通孔71aが設けられたベースプレート71と、ベースプレート71の下面にスライド可能に取り付けられたスライディングノズル72と、スライディングノズル72をスライドさせるスライド手段73と、を備えている。スライディングノズル72は、ベースプレート71の下面にスライド可能に配置される通孔721aが形成されたノズルプレート721と、ノズルプレート721の下方に配置されるノズル孔723aが形成された下ノズル723とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−339757号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
スライディングノズル72は、出湯の度に通孔721a、ノズル孔723aの内壁が溶損したり、孔詰まりを起こしたりするので、定期的に或いはその都度交換される。上記従来のスライディングノズル装置の場合、出湯動作を停止してスライディングノズル72をベースプレート71から取り外し、新たなスライディングノズルを取り付ける必要があった。すなわち、従来のスライディングノズル装置70は、スライディングノズル72の交換に時間がかかり、出湯を長時間停止しなければならなかった。
【0007】
本発明は、以上のような従来技術の問題点に鑑み創案されたもので、スライディングノズルの交換を速やかに行うことができるスライディングノズル装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、溶湯容器の底部の溶湯流出孔から溶湯を流出させるスライディングノズル装置であって、前記溶湯容器の底部に設けられ前記溶湯流出孔に連通する通孔を備えるベースプレートと、前記ベースプレートの下面にスライド可能に配置された少なくとも一つのスライディングノズルと、前記スライディングノズルをそのノズル孔が前記ベースプレートの通孔に連通する位置にスライドさせる第1スライド手段と、前記ベースプレートの下面にスライド可能に配置され、前記スライディングノズルと共通のルートを通って前記通孔に連通する位置にスライドさせられる少なくとも一つの予備スライディングノズルと、前記予備スライディングノズルを前記第1スライド手段の作動領域にスライドさせる第2スライド手段と、を有することを特徴とする。
【0009】
溶湯容器の底部の溶湯流出孔の周囲に少なくとも一つのスライディングノズルをスライド可能に備え、さらに前記スライディングノズルと共通のルートを通って前記通孔に連通する位置にスライドさせられる少なくとも一つの予備スライディングノズルを備えるので、スライディングノズルが孔詰まりなどを起こしても予備スライディングノズルと速やかに交換することができる。
【0010】
なお、スライディングノズルは、ベースプレートの通孔にアクセスできるノズルである。予備スライディングノズルは、前記スライディングノズルの後から共通のルートを通って通孔にアクセスできるように前記スライディングノズルの上流に配置されたノズルである。
【0011】
上記スライディングノズル装置において、前記ベースプレートは、下面がX−Y平面を形成し、前記スライディングノズルは、前記ベースプレートの下面のプラスX平面或いはマイナスX平面に配置され、前記予備スライディングノズルは、前記スライディングノズルと同じ平面に配置され、前記第1スライド手段は、前記スライディングノズルをマイナスX方向或いはプラスX方向にスライドさせてそのノズル孔をY軸上に位置させ、前記第2スライド手段は、前記予備スライディングノズルをプラスY方向或いはマイナスY方向にスライドさせて前記第1スライド手段の作動領域に位置させ、前記第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルを、そのノズル孔がY軸に沿うようにスライドさせる第3スライド手段を有するようにするとよい(請求項2)。
【0012】
なお、X軸及びY軸は互いに交差する仮想線である。X軸及びY軸の交差角度は、たとえば、75〜105°にでき、さらには、80〜100°にできる。90°でもよい。
【0013】
第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルが第3スライド手段で予備スライディングノズルのスライド方向と同じ方向にスライドさせられるので、スライディングノズル装置を小型化できる。
【0014】
また、本発明の好ましい形態によれば、前記スライディングノズルがX軸に沿ってスライドするように前記スライディングノズルをガイドするX方向ガイドと、前記予備スライディングノズルがY軸に沿ってスライドするように前記予備スライディングノズルをガイドするY方向ガイドと、を備えるとよい(請求項3)。
【0015】
スライディングノズルのノズル孔をY軸上に確実に位置させることができる。また、予備スライディングノズルを第1スライド手段の作動領域に確実に位置させることができる。
【0016】
また、前記第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルがY軸に沿ってスライドするように前記スライディングノズルをガイドする第2Y方向ガイドを備えるとよい(請求項4)。
【0017】
第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルがそのノズル孔が確実にY軸に沿うようにスライドさせられる。
【0018】
また、前記ベースプレートの前記通孔は、X軸とY軸との交点にあり、前記スライディングノズル及び予備スライディングノズルは、前記ベースプレートの下面に係合する上部に一対の背向する側面をもつ矩形状ノズルプレートを備え、kが前記矩形状ノズルプレートの一方の背向する側面の長さより大きい定数として、前記スライディングノズルは、そのノズル孔がY=kの直線上に位置し前記ノズルプレートの他方の背向する側面がX軸と平行となるように前記ベースプレートの下面に配置されているものとするとよい(請求項5)。
【0019】
スライディングノズルがベースプレートの通孔からkだけオフセットされているので、通孔と連通するスライディングノズルがY=kの直線上をスライドするスライディングノズルと機械的に干渉しなくなる。その結果、通孔と連通するスライディングノズルのノズルプレートの一方の背向する側面部をベースプレートに押し付ける加圧手段を備えることができ、溶湯が隙間から漏れ出すことがない。
【発明の効果】
【0020】
溶湯容器の底部の溶湯流出孔の周囲に少なくとも一つのスライディングノズルをスライド可能に備え、さらにその上流に少なくとも一つの予備スライディングノズルをスライド可能に備えるので、スライディングノズルが孔詰まりなどを起こしても予備スライディングノズルと速やかに交換することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態1に係るスライディングノズル装置の概略側方視図である。
【図2】図1の上方視図である。
【図3】図2のD1−D1線部分断面図である。
【図4】実施形態2に係るスライディングノズル装置の概略上方視図である。
【図5】図4のD2−D2線部分断面図である。
【図6】実施形態3に係るスライディングノズル装置の概略上方視図である。
【図7】従来のスライディングノズル装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の実施形態を図面を参照して詳しく説明する。
(実施形態1)図1は、本実施形態に係るスライディングノズル装置の側方視図、図2は、下から上方を見上げた上方視図である。図3は、図2のD1−D1線部分断面図である。
【0023】
本実施形態のスライディングノズル装置1は、上面が溶湯容器の底部に当接されて溶湯流出孔に連通する通孔2aを備えるベースプレート2と、ベースプレート2の下面に上部がスライド可能に係合されたスライディングノズル3と、ベースプレート2の下面に上部がスライド可能に係合され、スライディングノズル3と共通のルートを通って通孔2aに連通する位置にスライドさせられるスライディングノズル3の上流に配置された複数の予備スライディングノズル4、5と、を備えている。また、スライディングノズル3をそのノズル孔3aがベースプレート2の通孔2aに連通する位置(ノズル使用位置P3)にスライドさせる第1スライド手段6と、予備スライディングノズル4、5を第1スライド手段6の作動領域(ノズル待機位置P1)にスライドさせる第2スライド手段7と、を備えている。
【0024】
ここで、第1スライド手段6の作動領域は、これのスライドさせる力が及ぶ領域である。
【0025】
第1スライド手段6、第2スライド手段7は、たとえば、空気圧や油圧のシリンダ装置で形成されているが、場合によってはモータ駆動装置で形成されていてもよい。
【0026】
スライディングノズル3と、予備スライディングノズル4、5は、ベースプレート2の下面に係合する上部に一対の背向する側面3b1、3b2、4b1、4b2、5b1、5b2をもつ矩形状ノズルプレート3b、4b、5bを備えている。そして、スライディングノズル3と予備スライディングノズル4、5の落下を防止し、一定の方向にスライドをガイドするガイド9A、9B、10A、10Bがベースプレート2に取り付けられている。
【0027】
ガイド9A、9B、10A、10Bは、図3に示すようにL字型断面をしており、スライディングノズル3、4、5のスライドを一定の方向にガイドすると共に、落下を防止することができる。
【0028】
スライディングノズル3は、そのノズル孔3aの中心とベースプレート2の通孔2aの中心が第1スライド手段6のスライド方向(矢印6c方向)と平行な直線L1上に位置するように構成されている。また、予備スライディングノズル4、5は、そのノズル孔4a、5aの中心とスライディングノズル3のノズル孔3aの中心が第2スライド手段7のスライド方向(矢印7c方向)と平行で前記直線L1と交差する直線L2上に位置するように構成されている。
【0029】
次に、本実施形態のスライディングノズル装置1の動作を説明する。先ず、第1スライド手段6でスライディングノズル3を矢印A1方向(ノズル使用位置P3に向かう方向)にスライドさせ、ノズル孔3aが通孔2aと一致してノズル使用位置P3に位置する点線で示すスライディングノズル3の状態にする。この状態で次に、第2スライド手段7で予備スライディングノズル4、5を矢印A2方向に沿ってノズル待機位置P1に向けてスライドさせ、予備スライディングノズル4を第1スライド手段6の作動領域に位置させる。次に、溶湯を流す処理をしていたとき、通孔2aに一致した(ノズル使用位置P3に位置する)スライディングノズル3のノズル孔3aが、たとえば詰まったら、ノズル待機位置P1で待機している予備スライディングノズル4を第1スライド手段6で矢印A1方向に沿ってノズル使用位置P3に向けてスライドさせ、点線で示す(ノズル使用位置P3にある)スライディングノズル3を矢印A1方向に押し出す。押し出されたスライディングノズル3は、落下して図示しない回収箱に収容される。次に、第2スライド手段7で予備スライディングノズル5を矢印A2方向にスライドさせ、第1スライド手段6の作動領域に位置させる。さらに、点線で示すスライディングノズル3と入れ替わった予備スライディングノズル4のノズル孔4aが詰まったら、スライド手段6の作動領域に位置する予備スライディングノズル5を第1スライド手段6で矢印A1方向に沿ってノズル使用位置P3に向けてスライドさせ、通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)にある予備スライディングノズル4と交換する。
【0030】
本実施形態のスライディングノズル装置1は、ベースプレート2の通孔2aの位置に最短距離でアクセスするスライディングノズル3と、スライディングノズル3の上流に予備スライディングノズル4、5を備えているので、スライディングノズル3が孔詰まりなどを起こしても予備スライディングノズル4、5と速やかに交換することができる。
【0031】
また、ガイド9A、9Bを備えているので、スライディングノズル3を通孔2aに向けて直線L1に沿ってスライドさせることができ、ノズル孔3aを通孔2aに確実に一致させることができる。また、ガイド10A、10Bを備えているので、予備スライディングノズル4、5を直線L2(直線L1と交差する)に沿ってスライドさせることができ、予備スライディングノズル4、5をノズル待機位置P1(第1スライド手段6の作動領域)に確実に位置させることができる。
(実施形態2)図4は、本実施形態に係るスライディングノズル装置を下から見上げた上方視図、図5は図4のD2−D2線部分断面図である。
【0032】
本実施形態に係るスライディングノズル装置1Aでは、実施形態1のスライディングノズル装置1において、ベースプレート2の下面がX−Y平面を形成している。Xは第1の仮想線であり、Yは第2の仮想線である。図4において互いに交差するX軸とY軸との交点Oを原点とし、Y軸より右側をプラスX平面2b、左側をマイナスX平面2cとすると、スライディングノズル3と、予備スライディングノズル4、5は、ベースプレート2の下面のマイナスX平面2cに、X軸に対してノズルプレート3b、4b、5bの側面3b2、4b2、5b2が平行に配置されている。また、第1スライド手段6がスライディングノズル3をプラスX方向(矢印A3方向)にスライドさせてそのノズル孔3aを通孔2aがあるY軸上に位置させ、第2スライド手段7が予備スライディングノズル4をマイナスY方向(矢印A4方向)にスライドさせて第1スライド手段6の作動領域に位置させるように構成されている。そして、第1スライド手段6でノズル孔3aがY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズル3を、そのノズル孔3aがY軸に沿うように矢印A5方向にスライドさせる第3スライド手段8を備えている。
【0033】
また、本実施形態に係るスライディングノズル装置1Aは、スライディングノズル3、予備スライディングノズル4、5をX軸に沿うようにスライドさせるX方向ガイド9A、9B、Y軸に沿うようにスライドさせるY方向ガイド10A、10B、10C及び可変ガイド12を備えている。
【0034】
X方向ガイド9A、9B及びY方向ガイド10A、10B、第2Y方向ガイド10Cは、実施形態1のガイド9A、9B、10a、10bと同じL字型断面をしている。
【0035】
可変ガイド12は、一端部がベースプレート2に枢支部12cを介して回転可能に軸支された断面L字型アーム12a(図5参照)とアーム12aを反時計回転方向(矢印A6方向)に付勢する付勢手段(バネ)12bとを備えている。
【0036】
スライディングノズル3は、そのノズル孔3aの中心とY軸上にあるベースプレート2の通孔2aの中心がX軸と平行な直線X1上に位置するように配置されている。また、第1スライド手段6のスライド方向(矢印A3方向)は、X軸に平行である。第2スライド手段7のスライド方向(矢印A4方向)と第3スライド手段8のスライド方向(矢印A5方向)は、Y軸と平行である。したがって、スライディングノズル3を第1スライド手段6で矢印A3方向に沿ってノズル使用位置P3に向けてスライドさせることでノズル孔3aを通孔2aに一致させることができる。また、たとえば、溶湯を流す処理をしていたとき通孔2aに一致した(ノズル使用位置P3にある)スライディングノズル3のノズル孔3aが詰まったら、通孔2aに一致した(ノズル使用位置P3にある)スライディングノズル3を第3スライド手段8で矢印A5方向(マイナスY方向)にスライドさせて通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)から排除する。次に、予備スライディングノズル4を第2スライド手段7で矢印A4方向(マイナスY方向)に沿ってノズル待機位置P1に向けてスライドさせることで、第1スライド手段6の作動領域(ノズル待機位置P1)に位置させることができる。
【0037】
次に、本実施形態のスライディングノズル装置1Aの動作を説明する。先ず、第1スライド手段6でスライディングノズル3を矢印A3方向に沿ってノズル使用位置P3に向けてスライドさせ、ノズル孔3aを通孔2aに一致させ、点線で示すスライディングノズル3の状態にする。このとき、ノズルプレート3bは、可変ガイド12のアーム12aによってY方向ガイド9Bに押し付けられながら矢印A3方向にスライドして行く。次に、第2スライド手段7で予備スライディングノズル4、5を矢印A4方向に沿ってノズル待機位置P1に向けてスライドさせ、予備スライディングノズル4をスライディングノズル3のあった位置(ノズル待機位置P1)に合わせる。次に、溶湯を流す処理をしていたとき通孔2aに一致した(ノズル使用位置P3にあった)点線で示すスライディングノズル3のノズル孔3aが、たとえば詰まったら、第3スライド手段8で矢印A5方向(マイナスY方向)に点線で示すスライディングノズル3を押す。押す力を大きくすると、矢印A6方向(反時計回転方向)に付勢されていたアーム12aが矢印A7方向(時計回転方向)に回動し、通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)にあったスライディングノズル3を矢印A5方向(退避方向)に押し出し排除する。このとき、可変ガイド12は第2Y方向ガイドとして機能する。次に、ノズル待機位置P1にある予備スライディングノズル4を第1スライド手段6で矢印A3方向に沿ってノズル使用位置P3に向けてスライドさせ、点線で示すスライディングノズル3の位置に合わせる。次に、第2スライド手段7で予備スライディングノズル5を矢印A4方向に沿ってノズル待機位置P1に向けてスライドさせ、スライド手段6の作動領域(ノズル待機位置P1)に位置させる。
【0038】
本実施形態のスライディングノズル装置1Aでは、通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)にあるスライディングノズルがY軸に沿うように矢印A5方向にスライドさせられるので、性能が低下したスライディングノズルを一カ所から排出することができる。また、矢印A5方向が予備スライディングノズル4、5のスライド方向である矢印A4と平行であるので、ベースプレート2の幅(X軸と平行な辺の長さ)を短くすることができる。その結果スライディングノズル装置を小型化できる。
【0039】
また、本実施形態のスライディングノズル装置1Aは、X方向ガイド9A、9B、可変ガイド12を備えているので、スライディングノズル3のノズル孔3aを通孔2aに確実に一致させることができる。また、Y方向ガイド10A、10Bを備えているので、予備スライディングノズル4、5を第1スライド手段6の作動領域(ノズル待機位置P1)に確実に位置させることができる。
【0040】
なお、本実施形態のスライディングノズル装置1Aでは、スライド手段6、7、8がいずれも油圧シリンダ装置のようなアクチュエータであったが、少なくとも第2スライド手段7は、場合によってはバネなどを用いた付勢手段でもよい。すなわち、付勢手段7で予備スライディングノズル5の側面5b2を矢印A4方向(マイナスY方向)に付勢するようにしてもよい。
(実施形態3)図6は、本実施形態に係るスライディングノズル装置1Bを下から見上げた上方視図である。実施形態2のスライディングノズル装置1Aと同じ構成要素には同一の符号を付し、説明を省略する。
【0041】
本実施形態のスライディングノズル装置1Bは、実施形態2のスライディングノズル装置1Aと以下の点が異なる。
【0042】
すなわち、通孔2aがX軸とY軸との交点(原点O)にあり、スライディングノズル3、3AがY軸を挟んで左右対称配置され、二つのスライディングノズル3、3Aのノズル孔3a、3Aaを結ぶX軸と平行な直線X1が、Y=kと表される点が大きく異なる。ここで、k>dであり、dは、各スライディングノズル3、3A、各予備スライディングノズル4、5、11のX軸に平行な二つの側面3b2、3Ab2、4b2、5b2、11b2間の間隔である。
【0043】
また、予備スライディングノズル11が予備スライディングノズル5の上流に追加され、可変ガイド12Aが可変ガイド12の対称位置に追加されている。
【0044】
また、通孔2aと連通する位置(ノズル使用位置P3)にスライドされた点線で示すスライディングノズル3、3A 等のY軸に平行な側面部3b3を上方(ベースプレート2の下面)に押し付ける一対の加圧手段13を備えている。
【0045】
また、通孔2aの位置から通孔2aの下流、Y軸方向(矢印A5方向)に排出されたスライディングノズルを、X軸と沿う方向(矢印A11方向)にスライドさせるスライド手段14を備えている。
【0046】
予備スライディングノズル11は、中央にノズル孔11aを有し、ベースプレート2の下面に係合する上部に一対の背向する側面11b1、11b2をもつ矩形状ノズルプレート11bを備えている。
【0047】
可変ガイド12Aは、一端部がベースプレート2に枢支部12Acを介して回転可能に軸支された断面L字型アーム12Aaとアーム12Aaを時計回転方向(矢印A8方向)に付勢する付勢手段(バネ)12Abとアーム12AaをX軸に平行に保持するアーム回転ストッパ12Adとを備えている。なお、本実施形態の可変ガイド12もアーム12aをX軸に平行に保持するアーム回転ストッパ12dを備えている。
【0048】
加圧手段13は、Y軸に平行な軸13bに回転可能に軸支された独立した複数のアーム状の加圧板(鍵盤)13aを備えている。加圧板13aのスライディングノズル3から遠い一方の端部13a1を、図示しない加圧装置で下方(図6で紙面に対して上向き)に加圧して押し下げることで加圧板13aの他方の端部13a2が上方(図6で紙面に対して下向き)に押し上げられ、スライディングノズル3のノズルプレート3bがベースプレート2に押し付けられる。なお、図示しない加圧装置は、たとえば、空気圧、油圧、バネ等のシリンダ装置あるいはモータ駆動装置で形成される。
【0049】
次に、本実施形態のスライディングノズル装置1Bの動作を説明する。
【0050】
先ず、スライディングノズル3をスライド手段6でY=kの直線X1上を矢印A3方向(プラスX方向)に沿ってノズル孔3aがY軸上に位置するノズル待機位置P2に向けてスライドさせ、ノズル孔3aをY軸上に位置させてノズル待機位置P2とする。このとき、スライディングノズル3のノズルプレート3bの側面3b2の一方はX方向ガイド9Aとアーム12a、12Aaとで保持及びガイドされ、他方の側面3b2はX方向ガイド9B、9Dで保持及びガイドされる。
【0051】
次に、ノズル孔3aがY軸上に位置している(ノズル待機位置P2にある)スライディングノズル3をスライド手段8でノズル使用位置P3に向けてマイナスY方向(矢印A5方向)に押す。押す力が大きくなると、実線矢印A6(反時計回転)、A8(時計回転)方向に付勢されていたアーム12a、12Aaが点線矢印A7(時計回転)、A9(反時計回転)方向にほぼ90度回動してY方向ガイドとして機能するようになる。したがって、ノズル孔3aがY軸上に位置していた(ノズル待機位置P2にあった)スライディングノズル3は、点線で示すアーム12a、12AaでY方向(矢印A5方向)にガイドされ、ノズル孔3aが通孔2aに一致するノズル使用位置P3に位置するようになる。
【0052】
次に、図示しない加圧装置で加圧板13aの端部13a1を下方(図6で紙面に対して上向き)に加圧して押し下げ、点線で示すスライディングノズル3のノズルプレート3bをベースプレート2に押し付ける。
【0053】
次に、ノズル待機位置P1にある予備スライディングノズル4をスライド手段6でY=kの直線X1上を矢印A3方向(プラスX方向)に沿ってノズル孔4aがY軸上に位置するノズル待機位置P2に向けてスライドさせ、ノズル孔4aをY軸上に位置させてノズル待機位置P2とする。
【0054】
次に、予備スライディングノズル4をスライド手段7Aで矢印A4方向(マイナスY方向)に沿って待機位置P1に向けてスライドさせ、予備スライディングノズル4をスライド手段6の作動領域(ノズル待機位置P1)に位置させる。
【0055】
次に、たとえば、通孔2aの位置にある(ノズル使用位置P3に位置する)スライディングノズル3のノズル孔3aが溶損して大きくなったら、加圧手段13によるスライディングノズル3の加圧を継続しながら、ノズル孔4aがY軸上に位置している(ノズル待機位置P2に位置する)スライディングノズル4をスライド手段8でノズル使用位置P3に向けてマイナスY方向(矢印A5方向)にスライドさせ点線で示すノズル使用位置P3に位置するスライディングノズル3をマイナスY方向(矢印A5方向)に押し出す。
【0056】
次に、スライディングノズル4がノズル使用位置P3に位置して通孔2aの位置にノズル孔4aが一致したら、溶湯を開始する。
【0057】
さらに、スライディングノズル3Aをスライド手段6AでY=kの直線X1上を矢印A10方向(マイナスX方向)に沿ってノズル孔3AaがY軸上に位置するノズル待機位置P2に向けてスライドさせることもできる。これは、非常用スライディングノズルや溶湯を止めたい時にノズル孔のないスライディングノズルとして使用することができる。
【0058】
以下、上記のような動作が繰り返される。
【0059】
通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)から押し出されたスライディングノズル(たとえば、3)は、スライド手段14でプラスX方向(矢印A11方向)に沿って排出される。
【0060】
以上の動作説明から明らかなように、スライディングノズルをそのノズル孔がベースプレートの通孔に連通する位置にスライドさせる第1スライド手段は、本実施形態のスライディングノズル装置1Bにおいては、スライド手段6とスライド手段8及びスライド手段6Aとスライド手段8が分担することがわかる。また、予備スライディングノズルを第1スライド手段の作動領域にスライドさせる第2スライド手段は、スライド手段7Aが担う。また、スライディングノズルをY軸に沿うようにスライドさせる第3スライド手段は、スライド手段8が担う。
【0061】
本実施形態のスライディングノズル装置1Bは、二つのスライディングノズル3、3A がベースプレート2の通孔2aからkだけオフセットされているので、通孔2aと連通する(ノズル使用位置P3に位置する)スライディングノズル(たとえば、3)が、Y=kの直線X1上をスライドするスライディングノズル3、4と機械的に干渉することがなくなる。その結果、通孔2aと連通する(使用位置P3に位置する)スライディングノズル3のノズルプレート3bの一方の背向する側面部3b2をベースプレート2に押し付ける加圧手段9を備えることができ、溶湯が隙間から漏れ出すことが抑制される。
【0062】
また、本実施形態のスライディングノズル装置1Bでは、通孔2aの位置にある(ノズル使用位置P3に位置する)スライディングノズルがY軸に沿うように矢印A5方向にスライドさせられ、矢印A5方向が予備スライディングノズル4、5、11のスライド方向である矢印A4と平行であるので、ベースプレート2の横幅(X軸と平行な辺の長さ)を短くすることができる。さらに、通孔2aの下流に通孔2aの位置(ノズル使用位置P3)からマイナスY方向(矢印A5方向)に排出されたスライディングノズルを、X軸と平行方向(矢印A11方向)にスライドさせるスライド手段14を備えているので、ベースプレート2の縦幅(Y軸と平行な辺の長さ)を短くすることができる。その結果スライディングノズル装置をさらに小型化できる。
【符号の説明】
【0063】
1、1A、1B・・・・・・・スライディングノズル装置
2・・・・・・・・・・・・ベースプレート
2a・・・・・・・・・・通孔
3、3A・・・・・・・・・スライディングノズル
3a、3Aa・・・・・・・ノズル孔
3b、3Ab・・・・・・・矩形状ノズルプレート
3b1、3b2、3Ab1、3Ab2・・・側面
4、5、11・・・・・・・予備スライディングノズル
4a、5a、11a・・・・ノズル孔
4b、5b、11b・・・・・矩形状ノズルプレート
4b1、4b2、5b1、5b2、11b1、11b2・・・側面
6、6A・・・・・・・・・・第1スライド手段
7、7A・・・・・・・・・・第2スライド手段
8・・・・・・・・・・・・第3スライド手段
9A、9B・・・・・・・・・X方向ガイド
10A、10B・・・・・・・Y方向ガイド
10C、12、12A・・・・・第2Y方向ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶湯容器の底部の溶湯流出孔から溶湯を流出させるスライディングノズル装置であって、
前記溶湯容器の底部に設けられ前記溶湯流出孔に連通する通孔を備えるベースプレートと、
前記ベースプレートの下面にスライド可能に配置された少なくとも一つのスライディングノズルと、
前記スライディングノズルをそのノズル孔が前記ベースプレートの通孔に連通する位置にスライドさせる第1スライド手段と、
前記ベースプレートの下面にスライド可能に配置され、前記スライディングノズルと共通のルートを通って前記通孔に連通する位置にスライドさせられる少なくとも一つの予備スライディングノズルと、
前記予備スライディングノズルを前記第1スライド手段の作動領域にスライドさせる第2スライド手段と、を有することを特徴とするスライディングノズル装置。
【請求項2】
前記ベースプレートは、下面がX−Y平面を形成し、
前記スライディングノズルは、前記ベースプレートの下面のプラスX平面或いはマイナスX平面に配置され、
前記予備スライディングノズルは、前記スライディングノズルと同じ平面に配置され、
前記第1スライド手段は、前記スライディングノズルをマイナスX方向或いはプラスX方向に移動させてそのノズル孔をY軸上に位置させ、
前記第2スライド手段は、前記予備スライディングノズルをプラスY方向或いはマイナスY方向に移動させて前記第1スライド手段の作動領域に位置させ、
前記第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルを、そのノズル孔がY軸に沿うようにスライドさせる第3スライド手段を有する請求項1に記載のスライディングノズル装置。
【請求項3】
前記スライディングノズルがX軸に沿ってスライドするように前記スライディングノズルをガイドするX方向ガイドと、
前記予備スライディングノズルがY軸に沿ってスライドするように前記予備スライディングノズルをガイドするY方向ガイドを備える請求項2に記載のスライディングノズル装置。
【請求項4】
前記第1スライド手段でノズル孔がY軸上に位置するようにスライドさせられたスライディングノズルがY軸に沿ってスライドするように前記スライディングノズルをガイドする第2Y方向ガイドを備える、請求項2または3に記載のスライディングノズル装置。
【請求項5】
前記ベースプレートの前記通孔は、X軸とY軸との交点にあり、
前記スライディングノズル及び予備スライディングノズルは、前記ベースプレートの下面に係合する上部に一対の背向する側面をもつ矩形状ノズルプレートを備え、
kが前記矩形状ノズルプレートの一方の背向する側面の長さより大きい定数として、前記スライディングノズルは、そのノズル孔がY=kの直線上に位置し前記ノズルプレートの他方の背向する側面がX軸と平行となるように前記ベースプレートの下面に配置されている請求項2から4のいずれか1項に記載のスライディングノズル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−173126(P2011−173126A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36760(P2010−36760)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】