説明

スライドドア車のピラー構造

【課題】 リーンホースメントの大幅な重量増とコストアップを避けつつピラー上端部の剛性強化を実現する。
【解決手段】 スライドドア開口Oの後縁に位置し閉断面構造をなして上下方向へ延びるピラー1の上端部11の内空間にリインホースメント6を設けたスライドドア車のピラー構造において、リインホースメント6に形成された凹陥断面部62内に板状のバルクヘッド7を設けて、当該バルクヘッド7の内側辺71を凹陥断面部62の底面に接合するとともに、外側72を凹陥断面部62の開口を横切ってその開口縁61,631間に結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスライドドア車のピラー構造に関し、特に、スライドドア開口の後縁に位置するピラーの剛性強化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3には、スライドドアで開閉される開口Oを備えた車両ボデーパネルの後部側面斜視図を示す。開口Oの後縁には上下方向へ延びるピラー1が設けられており、当該ピラー1の上端部11の詳細斜視図を図4に示す。また、図4におけるV-V線、VI−VI線、VII−VII線に沿った断面図を、それぞれ図5、図6、図7に示す。なお、図4ではルーフパネルやピラーアウタパネル等は省略されている。
【0003】
ピラー1より前方の、開口Oの上縁では図5に示すように、ルーフサイドインナパネル2より外方の、ルーフパネル3の外縁部31下方において、ルーフサイドアウタパネル41,42が、大きく車両内方へ凹陥する空間を形成しており、当該空間の内壁上面に,下方へ開くU字断面のガイドレール5が位置させられて、スライドドアに設けられたアッパガイドローラを案内するようになっている。一方、ピラー1より後方のルーフサイド部では図6に示すように、ルーフパネル3の外縁部31にルーフサイドインナパネル2が接合されて車両前後方向へ延びる閉断面構造が形成されている。
【0004】
このようにルーフサイドの断面構造がピラー1の前後で急変するため、ピラー1の上端部11には、車両方向転換時等の外力によってねじれ応力が集中する。そこで従来は、図4、図7に示すように、ピラー上端部11の、ルーフサイドインナパネル2とルーフパネル外縁部31とで形成された内空間Sに、リーンホースメント6を配設してピラー上端部11の剛性強化を図っている。このリーンホースメント6は、上下方向でのピラー1の強化を図るために一部が段付きに外方へ突出して上下方向へ延びる突出部61(図4)となっている。
【0005】
なお、特許文献1にはバルクヘッドを設けてフロントピラーの強化を図ったものが示されている。
【特許文献1】特開2001−130445
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記従来の構造において、リーンホースメント6には突出部61の存在によって図7に示すように局所的な凹陥断面部62が生じ、このため、外力が加わると、当該凹陥断面部61が断面崩れを生じるおそれがある。そこで、これを避けてピラー上端部11のさらなる剛性向上を図ろうとすると、リーンホースメント6全体の板厚を厚くする必要があるため、大幅な重量増とコストアップを招くという問題がある。
【0007】
そこで、本発明はこのような課題を解決するもので、リーンホースメントの大幅な重量増とコストアップを避けつつピラー上端部の剛性強化を実現したスライドドア車のピラー構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明では、スライドドア開口(O)の後縁に位置し閉断面構造をなして上下方向へ延びるピラー(1)の上端部(11)の内空間(S)にリインホースメント(6)を配設したスライドドア車のピラー構造において、リインホースメント(6)に形成された凹陥断面部(62)内に板状のバルクヘッド(7)を設けて、当該バルクヘッド(7)の一辺(71)を凹陥断面部(62)の底面(63)に接合するとともに、他辺(72)を凹陥断面部(62)の開口を横切ってその開口縁(61,631)間に結合する。
【0009】
本発明においては、凹陥断面部の底面に接合されたバルクヘッドの一辺が当該底面の変形を抑え、また、バルクヘッドの他辺が凹陥断面部の開口を横切ってその開口縁間に結合されていることによって、ねじれ応力が集中しても凹陥断面部の断面崩れが小さく抑えられる。これにより、ピラー上端部の剛性強化が図られるとともに、従来のようにリーンホースメント全体の板厚を厚くする必要がないから大幅な重量増とコストアップを避けることができる。
【0010】
なお、上記カッコ内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明のスライドドア車のピラー構造によれば、リーンホースメントの大幅な重量増とコストアップを避けつつピラー上端部の剛性強化を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1にはピラー上端部11の、アウタパネル(ルーフパネル外縁部)31を取り去った状態での斜視図を示し、従来例を示す図4に対応する図である。また、図2は図1のII−II線に沿った断面図である。スライドドアで開閉される車両開口O(図1)の後縁には、ルーフサイドインナパネル(以下、単にインナパネルという)2とこれに接合されるアウタパネル31(図2)で構成される閉断面構造をなして上下方向へ延びるピラー1が位置し、当該ピラー1の内空間Sにはこれを横断してリーンホースメント6が配設されている。リーンホースメント6は従来のものと同様に(図4参照)ピラー1の上端部11全域に設けられて、その外周縁がインナパネル2とアウタパネル31の衝合部に挟着されて適宜箇所で溶接されている。
【0013】
リーンホースメント6は前半部63がインナパネル2に近接して位置するとともに、途中で段付きに外方へ突出して従来例で説明したような突出部61となっている。そして、当該突出部61によってリーンホースメント6には局所的な凹陥断面部62が形成されている。ここで、本実施形態では、当該凹陥断面部62内にバルクヘッド7が設けられている。バルクヘッド7は図1に示すように、外周縁に所定幅で略直角に折り曲げられたフランジ部を有する板体で、その内側辺71は二箇所でリーンホースメント6の凹陥断面部62の底面をなす前半部63板面に接合されている(図1、図2の×印)。また、バルクヘッド7の外側辺72は一端がリーンホースメント6の突出部61の頂面に接合され、他端が、インナパネル2に沿って外方へ屈曲したリーンホースメント6の外周縁631(図1)に接合されている(図1、図2の×印)。なお、バルクヘッド7はリーンホースメント6に予めアッセンブリしておくことで、ライン工程での作業負荷増を回避できる。
【0014】
このようなバルクヘッド7は、図2に示すように、リーンホースメント6に生じた凹陥断面部62内に位置して、内側辺71が凹陥断面部62の底面たる前半部63板面に接合されて当該底面の変形を抑えるとともに、外側辺72が凹陥断面部62の開口を横切ってその開口縁間を結合する。これにより、車両の方向転換時等の外力によってねじれ応力が集中しても凹陥断面部62の断面崩れは小さく抑えられる。この結果、ピラー上端部11の剛性が向上させられる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態を示す、ピラー上端部の拡大斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿った断面図である。
【図3】スライドドア開口を備えた車両ボデーパネルの後部側面斜視図である。
【図4】ピラー上端部の斜視図で、図3のA部の拡大斜視図である。
【図5】図4のV−V線に沿った断面図である。
【図6】図4のVI−VI線に沿った断面図である。
【図7】図4のVII−VII線に沿った断面図である。
【符号の説明】
【0016】
1…ピラー、11…上端部、6…リインホースメント、61…突出部、631…外周縁、62…凹陥断面部、63…リーンホースメントの前半部、7…バルクヘッド、71…内側辺、72…外側辺、O…開口、S…内空間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライドドア開口の後縁に位置し閉断面構造をなして上下方向へ延びるピラーの上端部内空間にリインホースメントを配設したスライドドア車のピラー構造において、前記リインホースメントに形成された局部的な凹陥断面部内に板状のバルクヘッドを設けて、当該バルクヘッドの一辺を前記凹陥断面部の底面に接合するとともに、他辺を凹陥断面部の開口を横切ってその開口縁間に結合したことを特徴とするスライドドア車のピラー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−123665(P2006−123665A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−313379(P2004−313379)
【出願日】平成16年10月28日(2004.10.28)
【出願人】(000110321)トヨタ車体株式会社 (1,272)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】