説明

スライドバルブ装置およびその制御方法

【課題】本発明は、プレートの交換作業時にスライドケースを移動させることで面圧の負荷/解除を行う際に、鋳造時における面圧解除を防止することを目的とする。
【解決手段】本発明によるスライドバルブ装置は、鋳造時には全開位置(A)と全閉位置(B)のリミットスイッチ(LS1,LS2)によりスライドケース(5)の移動が鋳造ストローク(S)内に限定され、プレート(2,4)の交換作業時には解除スイッチ(R1,R2,R3)によりリミットスイッチ(LS1,LS2)が解除され、スライドケース(5)が全開又は全閉位置(A,B)を超えて鋳造ストローク(S)の外側に移動可能となり、スライドケース(5)が鋳造ストローク(S)の外側の面圧解除位置(C)まで移動して面圧が解除される構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融金属の流出を制御するための複数のプレートを有するスライドバルブ装置およびその制御方法に関し、特に、プレートの交換作業時にスライドケースを移動させることで面圧の負荷/解除を行う際に、鋳造時における面圧解除を防止するための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
鋳造設備においては、溶融金属容器からの溶融金属の流出を制御する手段として、溶融金属容器の底部または側面にその流出口を開閉するスライドバルブ装置が設けられている。
このスライドバルブ装置としては、代表的な構成として特許文献1〜4の構成を挙げることができる。すなわち、固定プレート及びスライドプレート等のノズル孔付きの耐火物製プレートを複数有しており、それらのプレートには溶融金属容器の流出口に対し固定されている固定プレートと、この流出口の開閉および開口面積を制御するための移動可能なスライドプレートがある。スライドプレートはスライドケースと呼ばれる部材の中に収納され、このスライドケースに連結した駆動手段により移動することで、流出口の開閉および開口面積を制御している。駆動手段には油圧式や電動式の駆動装置が主に使用されている。
スライドバルブ装置には、固定プレートとスライドプレートが各1枚の2層式と固定プレート2枚とスライドプレートが1枚の3層式とがある。これらのプレートは、溶融金属の漏出と外気の侵入を防止するため、バネ等により面圧を負荷され互いに密着している。損傷したプレートの交換の際には、面圧を解除後、スライドケースを開放してから交換作業を行っている。
面圧の負荷方法にはいくつかの種類があるが、プレート交換作業時の作業負荷低減のため、スライドケースの移動により面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置が開発されている。
【0003】
前述の特許文献1〜4の構成は、いずれも、スライドケース又はその相当品がバネに支えられたレールまたはローラー上を移動することにより面圧の負荷/解除を行い、面圧の解除とスライドケースの開放が同時にできるようになっている。また溶融金属の流出中に誤って面圧解除位置にスライドケースが移動しないようにするため、特許文献3及び4の構成にはストッパーが設けられている。
これらのように機械的にスライドケースの移動を制限する場合、ストッパー等で強制的にスライドケースが停止させられた時に、駆動装置に過負荷が掛かってしまう。特に電動式駆動装置の場合には過負荷が掛かり続けると駆動装置が過熱する危険性があるため、停止位置にリミットスイッチ等を設け電気的に駆動装置を停止させるのが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公平1−38592号公報
【特許文献2】特表2002−521206号公報
【特許文献3】特開2006−136912号公報
【特許文献4】特開2007−326120号公報
【特許文献5】特開2010−167429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来のスライドバルブ装置およびその制御方法は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、鋳造中に誤って面圧の解除位置にスライドケースが移動する恐れがある。さらにスライドケースの移動によりスライドケースの開放を行うタイプのスライドバルブ装置では鋳造中に誤ってスライドケースが開放されてしまう恐れがある。それらを避けるために図4の回路構成を有する図6の構成のように固定ノズル孔1を有する固定プレート2に対して可動ノズル孔3を有するスライドプレート4を備えたスライドケース5に対して、その位置を検出するため鋳造ストロークSだけ離間した第1リミットスイッチLS1および第2リミットスイッチLS2が全開位置Aおよび全閉位置Bに配設されてスライドケース5等に設けられたドグD1により作動するようにすると、流出口閉鎖後に面圧解除位置やスライドケースの開放位置にスライドケースを移動させることができない。また特許文献5には遅延装置を設ける例が記載されているが、切替スイッチ付の遅延装置を用いる場合は制御装置が複雑となり、さらに既存のスライドバルブ装置から特許文献5のスライドバルブ装置に交換する場合、制御装置の改修等に手間とコストが掛かると共に、加えて鋳造中に切替スイッチを誤操作する恐れもあることにより、実用化が困難であった。すなわち、鋳造現場では従来構成でも問題はないが、整備場ではスライドケース5を面圧解除位置に移動することはできなかった。
【0006】
本発明は、以上にかんがみ、スライドケースの移動により面圧の負荷/解除を行うタイプのスライドバルブ装置に対して、鋳造中に誤って面圧が解除されてしまう恐れを回避し、なおかつ駆動装置に過負荷がかからない機構を採用したスライドバルブ装置とその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるスライドバルブ装置は、溶融金属容器の流出口に設けられ溶融金属の流出を制御するための1枚以上の固定プレートとスライドプレートとを有し、前記各プレートは面圧の負荷により互いに密着しており、前記スライドプレートは電動式の駆動手段と連結されたスライドケースに組み込まれており、スライドケースを駆動手段により移動させることで溶融金属の流出量制御と面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置において、前記スライドケースの停止位置として前記流出口の全開位置と全閉位置とスライドケースの面圧解除位置の少なくとも3ヶ所が規定されており、面圧解除位置は全開位置−全閉位置間として規定される鋳造ストロークの外側にあり、スライドケースの移動を停止させるためのリミットスイッチが全開位置と全閉位置と面圧解除位置の少なくとも3ヶ所に設けられ、鋳造時には全開位置と全閉位置のリミットスイッチによりスライドケースの移動が鋳造ストローク内に限定され、前記プレートの交換作業時には解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチが解除されることで、スライドケースが全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストロークの外側に移動可能となり、スライドケースが鋳造ストロークの外側にある面圧解除位置まで移動して面圧が解除される構成であり、また、前記スライドケースの開放後にプレート交換作業が実施され、プレートの交換作業終了後にはスライドケースが面圧解除位置から全開位置または全閉位置方向に移動して面圧が負荷され、解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチが解除されなくても、全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストローク内にスライドケースが移動可能である請求項1記載の構成であり、また、前記スライドケースが面圧解除位置に達した時、面圧解除と同時にスライドケースが開放される構成であり、また、前記解除スイッチがプレートの交換作業を実施する整備場にて操作される構成であり、また、本発明によるスライドバルブ装置の制御方法は、溶融金属容器の流出口に設けられ溶融金属の流出を制御するための1枚以上の固定プレートとスライドプレートとを有し、前記各プレートは面圧の負荷により互いに密着しており、前記スライドプレートは電動式の駆動手段と連結されたスライドケースに組み込まれており、スライドケースを駆動手段により移動させることで溶融金属の流出量制御と面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置を用い、前記スライドケースの停止位置として前記流出口の全開位置と全閉位置とスライドケースの面圧解除位置の少なくとも3ヶ所を規定し、面圧解除位置は全開位置−全閉位置間として規定される鋳造ストロークの外側にあり、スライドケースの移動を停止させるためのリミットスイッチを全開位置と全閉位置と面圧解除位置の少なくとも3ヶ所に設け、鋳造時には全開位置と全閉位置のリミットスイッチによりスライドケースの移動を鋳造ストローク内に限定し、前記プレートの交換作業時には解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチを解除することで、スライドケースを全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストロークの外側に移動可能とし、スライドケースを鋳造ストロークの外側にある面圧解除位置まで移動させて面圧を解除する方法であり、また、前記スライドケースの開放後にプレート交換作業を実施し、プレートの交換作業終了後にはスライドケースを面圧解除位置から全開位置または全閉位置方向に移動させて面圧を負荷し、解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチを解除しなくても、全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストローク内にスライドケースを移動可能とする請求項5記載の方法であり、また、前記スライドケースが面圧解除位置に達した時、面圧解除と同時にスライドケースが開放される請求項5または6記載の方法であり、また、前記解除スイッチをプレートの交換作業を実施する整備場にて操作する請求項5ないし7の何れかに記載の方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によるスライドバルブ装置およびその制御方法は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、溶融金属容器の流出口に設けられ溶融金属の流出を制御するための1枚以上の固定プレートとスライドプレートとを有し、前記各プレートは面圧の負荷により互いに密着しており、前記スライドプレートは電動式の駆動手段と連結されたスライドケースに組み込まれており、スライドケースを駆動手段により移動させることで溶融金属の流出量制御と面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置において、前記スライドケースの停止位置として前記流出口の全開位置と全閉位置とスライドケースの面圧解除位置の少なくとも3ヶ所が規定されており、面圧解除位置は全開位置−全閉位置間として規定される鋳造ストロークの外側にあり、スライドケースの移動を停止させるためのリミットスイッチが全開位置と全閉位置と面圧解除位置の少なくとも3ヶ所に設けられ、鋳造時には全開位置と全閉位置のリミットスイッチによりスライドケースの移動が鋳造ストローク内に限定され、プレートの交換作業時には解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチが解除されることで、スライドケースが全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストロークの外側に移動可能となり、スライドケースが鋳造ストロークの外側にある面圧解除位置まで移動して面圧が解除され、さらに、前記スライドケースの開放後にプレート交換作業が実施され、プレートの交換作業終了後にはスライドケースが面圧解除位置から全開位置または全閉位置方向に移動して面圧が負荷され、解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチが解除されなくても、全開位置または全閉位置を超えて鋳造ストローク内にスライドケースが移動可能であり、さらに、前記スライドケースが面圧解除位置に達した時、面圧解除と同時にスライドケースが開放され、さらに、前記解除スイッチがプレートの交換作業を実施する整備場にて操作されることにより、スライドケースの移動によって面圧の負荷/解除を行うタイプのスライドバルブ装置に対して、鋳造中に誤って面圧が解除されてしまう恐れを回避し、かつ、駆動手段に過負荷がかからないスライドバルブ装置およびその制御方法を実現することができる。
また、リミットスイッチにより、鋳造中はスライドケースの移動が全開位置A−全閉位置B間の鋳造ストローク内に限定されるので、前述のように、鋳造中に誤ってスライドケースが面圧解除位置Cに移動することがない。そして、プレートの交換作業時に解除スイッチにより適宜リミットスイッチを解除することで、スライドケースが鋳造ストローク内と面圧解除位置C間を随時移動可能となる。
さらに整備場にてリミットスイッチの解除操作をするようにすれば、鋳造現場では解除スイッチを操作することなく操業できるため、操作ミスにより鋳造中に面圧が解除されたり、スライドケースが開放される恐れはない。
また本発明によれば、スライドバルブ装置の制御回路をリミットスイッチとその解除スイッチから構成される簡易な回路にできるので、新設、既存装置の改修を問わず手間とコストが最小限となる。
なおリミットスイッチや解除スイッチの誤作動等により、鋳造中に誤ってスライドケースが面圧解除位置Cに移動しないようにするための機械的なストッパーを設けてさらに安全性を確保することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明によるスライドバルブ装置に用いるリミットスイッチの強制解除回路例である。
【図2】図1の他の回路例である。
【図3】図1の他の回路例である。
【図4】図5の流出口の全開位置と全閉位置のみにリミットスイッチを設けた場合の回路例である。
【図5】本発明によるスライドバルブ装置の動作を示す説明図である。
【図6】従来のスライドバルブ装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、プレートの交換作業時にスライドケースを移動させることで面圧の負荷/解除を行う際に、鋳造時における面圧解除を防止するようにしたスライドバルブ装置およびその制御方法を提供することを目的とする。
【実施例】
【0011】
以下、図面と共に本発明によるスライドバルブ装置およびその制御方法の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分については同一符号を用いて説明する。
図5は本発明によるスライドバルブ装置およびその制御方法の一例について示しており、周知のスライドバルブ装置10の要部を模式的に示している。
すなわち、駆動手段Mを介して矢印Eの方向に往復移動自在に配設されたスライドケース5には可動ノズル孔3を有するスライドプレート4が設けられ、このスライドプレート4の上方には、固定ノズル孔1を有する固定プレート2が図示しない本体部材側に固定されて設けられている。
【0012】
前記固定プレート2とスライドプレート4との間には、周知の図示しない面圧解除機構が介在されており、この面圧解除機構によって前記固定プレート2とスライドプレート4とを周知の面圧負荷状態および面圧解除状態とすることができるように構成されている。
【0013】
次に、本発明によるスライドバルブ装置の動作について説明する。
前記スライドケース5の移動により面圧解除/負荷及びスライドケース5の開放を行うタイプのスライドバルブ装置10の場合、スライドケース5の移動を制御するには、スライドケース5の停止位置として流出口の全開位置Aと全閉位置Bとスライドケース5の面圧解除位置Cの少なくとも3ヶ所を規定する必要がある。これらの一例としては全開位置A−全閉位置B−面圧解除位置Cの順に並ぶ構成が図5に示されるように存在する。
尚、前述の全開位置Aはスライドケース5等に設置されたドグD1でリミットスイッチLS1により検出され、全閉位置Bはスライドケース5等に設置されたドグD1でリミットスイッチLS2により検出され、面圧解除位置Cはスライドケース5等に設置されたドグD1でリミットスイッチLS3により検出され、各リミットスイッチLS1,LS2,LS3は、そのアーム20がドグD1に接離することによりオン/オフするように構成されている。
【0014】
前記スライドバルブ装置10による鋳造中は、スライドケース5は鋳造ストロークS内に位置することになる。この鋳造を終えるとスライドケース5は流出口の全閉位置Bで停止させられ、スライドバルブ装置10の整備作業を行うため、スライドバルブ装置10が装着されたそのままの状態で溶融金属容器ごと鋳造現場から整備場に移送される。そこでプレート4又は/及び2を交換する必要がある場合には、スライドケース5を面圧解除位置Cに移動させ面圧を解除し、スライドケース5の開放後にプレート4又は/及び2の交換作業を実施する。
つまりスライドケース5の移動を制御するために、各停止位置A,B,CにリミットスイッチLS1〜LS3を設けると、整備場に移送された後スライドケース5を面圧解除位置Cに移動させようとしても、全閉位置Bでリミットがかかっているため、スライドケース5が面圧解除位置Cに移動できず、開放させることができない。したがって、全閉位置Bのリミットスイッチを解除スイッチにより解除することで、鋳造ストロークSの外側にある面圧解除位置Cにスライドケース5が移動可能となる。
【0015】
そして、前記プレート4又は/及び2の交換作業終了後にスライドケース5を閉じて面圧を負荷させるべく全閉位置B方向に移動させることになる。ここで、全閉位置BのリミットスイッチLS2がスライドケース5を鋳造ストロークS内から鋳造ストロークS外へ移動させる方向にだけ駆動手段Mを停止させるようにしておくと、スライドケース5が全閉位置Bに到達しても駆動装置Mは停止しないため、スライドケース5を全閉位置Bで停止させることなく、スムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そのため面圧負荷時には解除スイッチによりリミットスイッチLS2を解除する必要がない。
【0016】
また、各リミットスイッチLS1〜LS3の位置が全閉位置B−全開位置A−面圧解除位置Cの順となることも考えられるが、この場合は解除スイッチを全開位置AのリミットスイッチLS1に対して作用させて、スライドケース5が全開位置Aを超えて鋳造ストロークS内外に移動可能とすればよいだけであり、両者に本質的な差異はない。この場合、全開位置AのリミットスイッチLS1がスライドケース5を鋳造ストロークS内から鋳造ストロークS外へ移動させる方向にだけ駆動手段Mを停止させるようにしておくと、交換作業終了後の面圧負荷時にスライドケース5を全開位置A方向に移動させた時、スライドケース5が全開位置Aに到達しても駆動装置Mは停止しないため、スライドケース5を全開位置Aで停止させることなく、スムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そのため面圧負荷時には解除スイッチによりリミットスイッチLS1を解除する必要がない。さらに解除スイッチを全開位置Aと全閉位置B双方のリミットスイッチに対して作用させるようにすれば、全開位置A、全閉位置B、面圧解除位置Cの位置関係にかかわらず、スライドケースを鋳造ストロークS内と面圧解除位置Cに随時移動させることができる。この場合、全開位置AのリミットスイッチLS1と全閉位置BのリミットスイッチLS2の双方がスライドケース5を鋳造ストロークS内から鋳造ストロークS外へ移動させる方向にだけ駆動手段Mを停止させるようにしておくと、交換作業終了後の面圧負荷時にスライドケース5を鋳造ストロークS内方向に移動させた時、スライドケース5を全開位置Aまたは全閉位置Bで停止させることなく、スムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そのため面圧負荷時には解除スイッチによりリミットスイッチLS1又はLS2を解除する必要がない。
【0017】
また、本発明においては、リミットスイッチLS1〜LS3によりスライドケース5の移動を電気的に制御することで、駆動手段Mに過負荷がかかることがなく、特に電動式駆動手段に対して好適である。
前記、リミットスイッチLS1〜LS3としては汎用品から適当なものを選べばよく、取り付け位置についても操業に支障がない場所であれば特に限定されることはない。また各停止位置の3ヶ所以外にバックアップ用など必要に応じてリミットスイッチを増設してもかまわない。
リミットスイッチLS1およびリミットスイッチLS2がスライドケース5を鋳造ストロークS内から鋳造ストロークS外へ移動させる方向にだけ駆動手段Mを停止させるようにするための手段としては、一方向からの移動にのみ作用するリミットスイッチを用いたり、制御回路の工夫など既知の手段を採用することができる。
ドグの形状、取り付け位置についても、スライドケースの動きと連動してリミットスイッチを作動させられる形状や位置であれば、特に限定されない。また必要に応じて複数個所に取り付けてもよい。
またプレート4又は/及び2の交換作業時にスライドケース5の移動により、面圧解除とスライドケース5の開放が同時にできるタイプのスライドバルブ装置10に対しても好適である。
電動式駆動手段としては、電動シリンダー、電動モーター、リニアモーターなどを単独またはそれらと各種歯車やカムなどを組み合わせたものなど既存の物が使用できる。その中では特に電動シリンダーが好適である。
さらに本発明によれば、リミットスイッチLS1〜LS3により、鋳造中はスライドケース5の移動が全開位置A−全閉位置B間の鋳造ストローク内に限定されるので、鋳造中に誤ってスライドケース5が面圧解除位置Cに移動することがない。そして、プレート4,2の交換作業時に解除スイッチにより適宜リミットスイッチを解除することで、スライドケース5が鋳造ストロークS内と面圧解除位置C間を随時移動可能となる。
そして、全開位置AのリミットスイッチLS1又は/および全閉位置BのリミットスイッチLS2がスライドケース5を鋳造ストロークS内から鋳造ストロークS外へ移動させる方向にだけ駆動手段Mを停止させるようにしておくと、交換作業終了後の面圧負荷時にスライドケース5を鋳造ストロークS内方向に移動させても、スライドケース5を全開位置Aまたは全閉位置Bで停止させることなく、スムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そのため面圧負荷時には解除スイッチによりリミットスイッチLS1又はLS2を解除する必要がない。
さらに整備場にて、好ましくは整備場のみでリミットスイッチの解除操作をするようにすれば、鋳造現場では解除スイッチを操作することなく操業できるため、操作ミスにより鋳造中に面圧が解除されたり、スライドケースが開放される恐れはない。
また、本発明によれば、スライドバルブ装置10の制御回路をリミットスイッチとその解除スイッチから構成される簡易な回路にできるので、新設、既存装置の改修を問わず手間とコストが最小限となる。
なお、リミットスイッチや解除スイッチの誤作動等により、鋳造中に誤ってスライドケース5が面圧解除位置Cに移動しないようにするための機械的なストッパーを設けてさらに安全性を確保してもよい。
【0018】
次に、図5のスライドバルブ装置およびその制御方法に用いられている各リミットスイッチLS1〜LS3の強制解除回路例の具体的構成および鋳造動作について述べる。
図1は、リミットスイッチの強制解除回路例を示し、前記スライドケース5の停止位置が全開位置A−全閉位置B−面圧解除位置Cの順に並ぶ場合の回路例である。各リミットスイッチLS1,LS2.LS3は流出口の全開位置Aと全閉位置B及びスライドケースの面圧解除位置Cの3ヶ所(それぞれ順にLS1、LS2、LS3)に設けられ、リミットスイッチLS2を解除する解除スイッチR2、駆動手段M(電動シリンダー)を駆動させるためのスイッチMF(スライドケースが全閉位置Bから全開位置A方向に移動)とスイッチMR(スライドケースが全開位置Aから全閉位置B方向に移動)が設けられ、各スイッチMFとMRにはそれぞれリレー(MC1F、MC1R)、リレー回路(LR1、MC1RとLR3、LR2、MC1F)が接続されている。
【0019】
前述の状態で、鋳造開始時にスイッチMFを入れる(ON)とリレーMC1Fが作動(ON)し、駆動手段Mはスライドケース5を全閉位置Bから全開位置A方向に移動させる。このスライドケース5が全開位置Aに達するとリミットスイッチLS1が入り(ON)、リレーLR1が作動(ON)しスイッチMFが切れた(OFF)状態となりスライドケース5が全開位置Aで停止する。
また、鋳造終了時にスイッチMRを入れる(ON)とリレーMC1Rが作動(ON)し、駆動手段Mはスライドケース5を全閉位置B方向に移動させる。このスライドケース5が全閉位置Bに達しリミットスイッチLS2が入る(ON)と、リレーLR2が作動(ON)しスイッチMRが切れた(OFF)状態となり、スライドケース5が全閉位置Bで停止する。
【0020】
この状態で溶融金属容器(図示せず)を整備場に移送後、プレート交換作業を実施する場合には、整備場にて解除スイッチR2を入れる(ON)とリレーLSR2が作動(ON)しリミットスイッチLS2が解除(OFF)され、再度スイッチMRを入れる(ON)と駆動手段Mは全閉位置Bを超えてスライドケース5を面圧解除位置Cに移動させる。このスライドケース5が面圧解除位置Cに達するとリミットスイッチLS3が入り(ON)、リレーLR3が作動(ON)しスイッチMRが切れた(OFF)状態となり、スライドケース5が面圧解除位置Cで停止し面圧が解除される。さらにスライドケース5の開放後にプレート4又は/及び2の交換作業を実施する。
交換作業終了後は、スライドケース5を閉じてスイッチMFを入れ(ON)スライドケース5を全開位置A方向に移動させると、全閉位置BでリミットスイッチLS2が入る(ON)が、リミットスイッチLS2はスイッチMRのみに作用しスイッチMFには作用しないので、スライドケース5が全閉位置Bに到達してもスイッチMFが切れることはなく駆動装置Mも停止しないため、スライドケース5は全閉位置Bで停止しない。そのため解除スイッチR2を操作することなく、スライドケース5をスムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そして作動確認を実施し、スライドケース5を全閉位置Bで停止させる。その後整備場にてスライドケース5が面圧解除位置Cに移動しないようストッパー(図示せず)を設置してから、鋳造現場に移送する。
【0021】
図2は、スライドケース5の停止位置が全閉位置B−全開位置A−面圧解除位置Cの順に並ぶ場合の回路例である。すなわち図1の形態とは異なり、解除スイッチR1が全開位置AのリミットスイッチLS1に作用する構成であるが、それ以外は図1と同じで、溶融金属容器(図示せず)を整備場に移送するまでは図1と同じであるため説明を省略する。
前記整備場において、まずスイッチMFを入れ(ON)スライドケース5を全閉位置Bから全開位置A方向に移動させる。スライドケース5が全開位置Aに達するとリミットスイッチLS1が入り(ON)、リレーLR1が作動(ON)しスイッチMFが切れた(OFF)状態となりスライドケース5が全開位置Aで停止する。そこで解除スイッチR1を入れる(ON)とリレーLSR1が作動(ON)しリミットスイッチLS1が解除(OFF)され、再度スイッチMFを入れる(ON)と、駆動手段Mは全開位置Aを超えてスライドケース5を面圧解除位置Cに移動させる。このスライドケース5が面圧解除位置Cに達するとリミットスイッチLS3が入り(ON)、リレーLR3が作動(ON)しスイッチMFが切れた(OFF)状態となり、スライドケース5が面圧解除位置Cで停止し面圧が解除される。そしてスライドケース5の開放後にプレート4又は/及び2の交換作業を実施する。
【0022】
前述の交換作業終了後は、スライドケース5を閉じてスイッチMRを入れ(ON)、スライドケース5を全閉位置B方向に移動させる。そして全開位置AでリミットスイッチLS1が入る(ON)が、リミットスイッチLS1はスイッチMFのみに作用しスイッチMRには作用しないので、スライドケース5が全開位置Aに到達してもスイッチMRが切れることはなく駆動装置Mも停止しないため、スライドケース5は全開位置Aで停止しない。そのため解除スイッチR1を操作することなく、スライドケース5をスムーズに鋳造ストロークS内に移動させることができる。そして移動後に作動確認を実施し、スライドケース5を全閉位置Bで停止させる。その後整備場にてスライドケース5が面圧解除位置Cに移動しないようストッパー(図示せず)を設置してから、鋳造現場に移送する。
【0023】
図3は、解除スイッチR3が全開位置AのリミットスイッチLS1と全閉位置BのリミットスイッチLS2の双方に作用する構成であるが、それ以外は図1と同じである。従って、解除スイッチR3を入れる(ON)とリレーLSR3が作動(ON)し、リミットスイッチLS1、LS2の双方が切れた(OFF)状態となり、図1と図2の形態を合わせた機能を発揮できるため、全開位置A、全閉位置B、面圧解除位置Cの位置関係にかかわらず、スライドケース5を鋳造ストロークS内と面圧解除位置Cに随時移動させることができる。
そして、リミットスイッチLS1はスイッチMFのみに作用しスイッチMRには作用せず、逆にリミットスイッチLS2はスイッチMRのみに作用しスイッチMFには作用しないので、図1、図2と同様に、面圧負荷時には解除スイッチR3を操作することなく、スムーズにスライドケース5を鋳造ストロークS外から鋳造ストロークS内に移動させることができる。
上述のように、本発明の装置および操作方法であれば、鋳造現場では解除スイッチR1、R2、R3を操作することなく操業できるため、操作ミスにより鋳造中に面圧が解除されたり、スライドケース5が開放される恐れはない。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明によるスライドバルブ装置およびその制御方法は、鋳造中における面圧の誤解除を回避し、駆動手段への過負荷を回避することができる。
【符号の説明】
【0025】
1 固定ノズル孔
2 固定プレート
3 可動ノズル孔
4 スライドプレート
5 スライドケース
10 スライドバルブ装置
M 駆動手段
S 鋳造ストローク
A 全開位置
B 全閉位置
C 面圧解除位置
D1 ドグ
LS1,LS2,LS3 リミットスイッチ
R2 解除スイッチ
MF スイッチ
LR1,LR2,LR3,LSR2,MC1F,MC1R リレー
MR スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属容器の流出口に設けられ溶融金属の流出を制御するための1枚以上の固定プレート(2)とスライドプレート(4)とを有し、前記各プレート(2,4)は面圧の負荷により互いに密着しており、前記スライドプレート(4)は電動式の駆動手段(M)と連結されたスライドケース(5)に組み込まれており、スライドケース(5)を駆動手段(M)により移動させることで溶融金属の流出量制御と面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置において、前記スライドケース(5)の停止位置として前記流出口の全開位置(A)と全閉位置(B)とスライドケース(5)の面圧解除位置(C)の少なくとも3ヶ所が規定されており、面圧解除位置(C)は全開位置(A)−全閉位置(B)間として規定される鋳造ストローク(S)の外側にあり、スライドケース(5)の移動を停止させるためのリミットスイッチ(LS1,LS2,LS3)が全開位置(A)と全閉位置(B)と面圧解除位置(C)の少なくとも3ヶ所に設けられ、鋳造時には全開位置(A)と全閉位置(B)のリミットスイッチ(C)によりスライドケース(5)の移動が鋳造ストローク内に限定され、前記プレート(2,4)の交換作業時には解除スイッチにより全開位置または全閉位置のリミットスイッチ(LS1,LS2)が解除されることで、スライドケース(5)が全開位置(A)または全閉位置(B)を超えて鋳造ストローク(S)の外側に移動可能となり、スライドケース(5)が鋳造ストローク(S)の外側にある面圧解除位置まで移動して面圧が解除されることを特徴とするスライドバルブ装置。
【請求項2】
前記スライドケース(5)の開放後にプレート交換作業が実施され、プレート(2,4)の交換作業終了後にはスライドケース(5)が面圧解除位置(C)から全開位置(A)または全閉位置(B)方向に移動して面圧が負荷され、解除スイッチ(R1,R2,R3)により全開位置(A)または全閉位置(B)のリミットスイッチ(LS1,LS2)が解除されなくても、全開位置(A)または全閉位置(B)を超えて鋳造ストローク(S)内にスライドケース(5)が移動可能であることを特徴とする請求項1記載のスライドバルブ装置。
【請求項3】
前記スライドケース(5)が面圧解除位置(C)に達した時、面圧解除と同時にスライドケース(5)が開放されることを特徴とする請求項1または2記載のスライドバルブ装置。
【請求項4】
前記解除スイッチ(R1,R2,R3)がプレート(2,4)の交換作業を実施する整備場にて操作されることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載のスライドバルブ装置。
【請求項5】
溶融金属容器の流出口に設けられ溶融金属の流出を制御するための1枚以上の固定プレート(2)とスライドプレート(4)とを有し、前記各プレート(2,4)は面圧の負荷により互いに密着しており、前記スライドプレート(4)は電動式の駆動手段(M)と連結されたスライドケース(5)に組み込まれており、スライドケース(5)を駆動手段(M)により移動させることで溶融金属の流出量制御と面圧の負荷/解除を行うスライドバルブ装置を用い、前記スライドケース(5)の停止位置として前記流出口の全開位置(A)と全閉位置(B)とスライドケース(5)の面圧解除位置(C)の少なくとも3ヶ所を規定し、面圧解除位置(C)は全開位置(A)−全閉位置(B)間として規定される鋳造ストローク(S)の外側にあり、スライドケース(5)の移動を停止させるためのリミットスイッチ(LS1,LS2,LS3)を全開位置(A)と全閉位置(B)と面圧解除位置(C)の少なくとも3ヶ所に設け、鋳造時には全開位置(A)と全閉位置(B)のリミットスイッチ(LS1,LS2)によりスライドケース(5)の移動を鋳造ストローク(S)内に限定し、プレート(2,4)の交換作業時には解除スイッチ(R1,R2,R3)により全開位置または全閉位置のリミットスイッチ(LS1,LS2)を解除することで、スライドケース(5)を全開位置(A)または全閉位置(B)を超えて鋳造ストローク(S)の外側に移動可能とし、スライドケース(5)を鋳造ストローク(S)の外側にある面圧解除位置(C)まで移動させて面圧を解除することを特徴とするスライドバルブ装置の制御方法。
【請求項6】
前記スライドケース(5)の開放後にプレート交換作業を実施し、プレート(2,4)の交換作業終了後にはスライドケース(5)を面圧解除位置(C)から全開位置(A)または全閉位置(B)方向に移動させて面圧を負荷し、解除スイッチ(R1,R2,R3)により全開位置(A)または全閉位置(B)のリミットスイッチ(LS1,LS2)を解除しなくても、全開位置(A)または全閉位置(B)を超えて鋳造ストローク(S)内にスライドケース(5)を移動可能とすることを特徴とする請求項5記載のスライドバルブ装置の制御方法。
【請求項7】
前記スライドケース(5)が面圧解除位置(C)に達した時、面圧解除と同時にスライドケース(5)を開放されることを特徴とする請求項5または6記載のスライドバルブ装置の制御方法。
【請求項8】
前記解除スイッチ(R1,R2,R3)がプレート(2,4)の交換作業を実施する整備場にて操作されることを特徴とする請求項5ないし7の何れかに記載のスライドバルブ装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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