説明

スライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法及びその方法を用いた光学フィルムの製造方法

【課題】偏光板加工における貼合工程での搬送性、貼合適正にすぐれた光学フィルムの製造方法を提供する。
【解決手段】スライド面18を流下する1以上の塗布液が、スライド面下端のリップ先端26と連続走行する帯状の支持体14面との間に形成されるリップクリアランスに塗布液ビードを介して塗布液を支持体面に塗布すると共に、スライド面18上の両端部に塗布液の流下をガイドするガイド板28、28を備えたスライド塗布装置10において、ガイド板28下端をリップ先端26よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短くする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法及びその方法を用いた光学フィルムの製造方法に係り、特に、スライド塗布ホッパーのスライド面上の両端部にガイド板を設けて、スライド面を流下する塗布液をガイドするようにしたスライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法及びその方法を用いた光学フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スライド塗布装置を用いて塗布液を連続走行する帯状の支持体(以下ウエブともいう)に塗布する場合、塗布液が流下するスライド面の両端部にガイド板を配設している。このガイド板は、その接液面がスライド面を流下する塗布液の両端に接することにより、ウエブに塗布される塗布液をスライド面先端のリップ先端まで安定に誘導する役目がある。
【0003】
特許文献1では、高速かつ薄膜塗布においても安定塗布を可能とするガイド板を配設しているスライドビード塗布装置として、ダイス前縁の幅手両端部(リップ先端)より支持体に近接または接触する可撓性片を設けることが開示されている。
【0004】
また、特許文献2では、塗布膜端部の厚塗りや耳ムラを防止できるだけでなく、縮流による端部内側での厚塗りも防止できるスライドビード塗布装置として、ガイド板のガイド板先端側部分を濡れ性の高い親水性素材で形成し、ガイド板後端側部分を濡れ性の低い撥水性素材で形成することが開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、スライド面の両端に低粘度の補助液を供給しながら高粘度液を塗布することでネックインを防止し、厚膜を解消することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−4065号公報
【特許文献2】特開2005−58922号公報
【特許文献3】特開2000−262948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1〜3のスライドビード塗布装置を用いても、低粘度の塗布液を塗布すると、塗布膜の端部が厚塗りになってしまうという問題が生じた。また、場合によっては塗布膜の端部にスジが発現してしまうという問題が生じた。
【0008】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止できるスライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前記目的を達成するために、スライド面を流下する1以上の塗布液が、前記スライド面下端のリップ先端と連続走行する帯状の支持体面との間に形成されるリップクリアランスに塗布液ビードを介して該塗布液を前記支持体面に塗布すると共に、前記スライド面上の両端部に前記塗布液の流下をガイドするガイド板を備えたスライド塗布装置において、前記ガイド板下端は、前記リップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短く備えられていることを特徴とするスライド塗布装置を提供する。
【0010】
そして、本発明は、前記目的を達成するために、前記スライド塗布装置を用いて塗布液を塗布することを特徴とするスライド塗布方法を提供する。
【0011】
ガイド板は、塗布液の流下をガイドして塗布液の幅広がりを防ぐために、従来からスライド面上の両端部に設けられていた。そして、塗布液の幅広がりを防ぐのは、塗布液を塗布する支持体裏面への裏回りを防止するためなので、ガイド板は少なくともスライド面下端のリップ先端まで覆うのが常識であった。
【0012】
しかしながら、低粘度の塗布液を用いる場合、スライド面を流れてリップとウエブの間にビードを形成する際、塗布液がウエブ搬送方向(MD)のみならず、リップとウエブの隙間方向(CD)に流れ易くなり、その結果、ガイド板によって形成される規制幅を超えて塗布膜端部が広がり、厚塗りやスジ(耳切れ)などの塗布故障が発生してしまった。
【0013】
鋭意検討の結果、上記塗布故障を引き起こす原因として、ガイド板とウエブが塗布クリアランス同等に近接していることであることを突き止めた。両者が近接していると、ガイド板を伝ってきた液が、毛細管力によってその隙間に流れてしまい、規制幅以上に塗れ拡がってしまうと分かった。すなわち、ガイド板をリップ先端まで覆う、もしくはガイド板先端をリップ先端よりもウエブ方向へ突出させる特許文献1のような方法では、低粘度の塗布液を幅方向均一に塗布することができない。
【0014】
そこで、本願発明者は、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止するために、ガイド板下端をリップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短く備えることとした。
【0015】
本発明によれば、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止することができるスライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法を提供することができる。
【0016】
本発明は、塗布液の粘度が10mPa・s未満のときに特に効果を発揮する。塗布液の粘度が10mPa・s以上であると、特許文献1または特許文献2のような従来型のスライドビード塗布装置を用いても、塗布膜の端部が濡れ拡がることによって厚塗りになったり、スジが発現したりする、という本発明の課題が生じにくいためである。
【0017】
本発明は、塗布液の総塗布膜厚が40g/m以下であるときに特に効果を発揮する。ここで、塗布液の総塗布膜厚とは、複数の塗布液が重畳する場合には、重畳した塗布膜の総ての膜厚の和であり、スライド面上でのウエット総塗布膜の厚みをいう。塗布液の総塗布膜厚がずっと厚い場合は、幅方向端部で多少の厚塗りがあっても製品上問題にならない場合が多いからである。それに対し、総塗布膜厚が薄い場合は端部厚塗り部が致命的になる製品が多い。
【0018】
なお、ウエブの走行速度は50m/min以下である場合に本発明の効果が特に発揮される。塗布液の総塗布膜厚を一定とした場合、ウエブの走行速度を遅くすると、ウエブが搬送方向へ塗布液を引っ張る力が小さくなる。すると、ガイド板とウエブの隙間に濡れ拡がろうとする毛細管力が相対的に大きく効くようになり、端部厚塗りは悪化方向になる。したがって、ウエブの走行速度が遅いほど、本発明の必要性が高まる。
【0019】
本発明のスライド塗布方法により塗布され製造された光学フィルムは、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止することができるスライド塗布装置及びその装置を用いた塗布方法及びその方法を用いた光学フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明のスライド塗布装置の側面断面図
【図2】スライド塗布ホッパーを示した斜視図
【図3】本発明のスライド塗布装置の上面図
【図4】ガイド板下端の位置を変えて塗布膜の厚みを調べたものを示すグラフ図
【図5】実施例の条件と結果を示す表図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明の実施態様について詳細に説明する。ただし、本発明はここに挙げる実施態様に限定されるものではない。
【0023】
図1は本発明のスライド塗布装置10の側面断面図であり、図2はスライド塗布ホッパー12を示した斜視図であり、図3は本発明のスライド塗布装置10の上面図である。なお、複層スライドビード塗布の一例として、ウエブ14に接触する下層塗布液L1、上層塗布液L2の2層塗布の例で以下に説明するが、本発明は1層塗布であっても良いし3層以上の塗布であっても良い。
【0024】
図1〜図3に示すように、スライド塗布装置10は、主としてスライド塗布ホッパー12とウエブ14を連続走行させるバックアップローラ16とで構成される。スライド塗布ホッパー12の上面にはバックアップローラ16側に向かって下方に傾斜するスライド面18が形成されると共に、スライド面18には2本のスリット20、22の細長い吐出口が平行に形成される。この2本のスリット20、22を塗布液の流れ方向下流側から下層塗布液L1の第1のスリット20、及び上層塗布液L2の第2のスリット22と呼ぶことにする。
【0025】
塗布液L1、L2は、各スリット20、22を介してスライド面18に押し出される。スライド面18に押し出された各塗布液L1、L2は、スライド面18を流下しながら順次重畳して複層塗布液を形成し、互いに混ざり合うことなくスライド面18下端のリップ先端26に達する。この塗布液のスライド面18における流下は、スライド面18上の両端部に平行に配設された一対のガイド板28、28によりガイドされる。リップ先端26に達した塗布液は、リップ先端26と、バックアップローラ16に巻き掛けられて走行するウエブ14面との間隙30に塗布液ビードを形成し、この塗布液ビードを介してウエブ14面に塗布される。
【0026】
塗布液L1、L2としては、光学フィルムの用途に応じて種々の液組成物が考えられるが、例えば、ハードコート層を形成する塗布液と導電性ハードコート層を形成する塗布液の組み合わせが考えられる。
【0027】
本発明に使用されるウエブとは、紙、プラスチックフィルム、金属、レジンコーティッド紙、合成紙等が包含される。プラスチックフィルムの材質は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン等のビニル重合体、6,6─ナイロン、6─ナイロン等のポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン─2,6─ナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、セルローストリアセテート、セルロースダイアセテート等のセルロースアセテート等が使用される。また、レジンコーティッド紙に用いる樹脂としては、ポリエチレンを始めとするポリオレフィンが代表的であるが、必ずしもこれに限定されない。また、金属ウエブとしては、例えば、アルミニウムウエブがある。
【0028】
スリット20、22からスライド面18に押し出された塗布液L1、L2は、ガイド板28にガイドされてスライド面18を流下しながら重畳されて複層塗布液を形成する。塗布液はガイド板28に濡れ広がる形状となり、そのため塗布液層はガイド板28に接する端面が厚くなる。かかる複層塗布液の形成において、本発明では、ガイド板下端が前記リップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短くなるようにガイド板28を備えるようにした。
【0029】
ガイド板は、塗布液の流下をガイドして塗布液の幅広がりを防ぐために、従来からスライド面上の両端部に設けられていたが、塗布液の幅広がりを防ぐのは、塗布液を塗布する支持体裏面への裏回りの防止のためなので、ガイド板は少なくともスライド面下端のリップ先端まで覆うのが常識であった。
【0030】
しかしながら、本発明では、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止するために、ガイド板下端をリップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短く備えることとした。即ち、図3に示したガイド板28下端とリップ先端26との距離Lを、0mmを超えて4mm未満の範囲で引っ込めるようにした。
【0031】
これにより、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止することができる。
【0032】
本発明のスライド塗布により塗布され製造された光学フィルムは、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止することができる。
【0033】
図4は、ガイド板下端の位置を変えて塗布膜の厚みを調べたものを示すグラフである。この実験では、塗布液は粘度7.5mPa・sの1層塗布とし、塗布幅を130mmと一定にして実験を行った。そして、ガイド板下端の位置をリップ先端から引っ込めたもの、ガイド板下端の位置をリップ先端に一致させたもの、ガイド板下端の位置をリップ先端から突き出したものについて実験を行った。なお、ここで、引っ込めた長さと突き出した長さはそれぞれ1mm、0.1mmとした。
【0034】
図4のグラフから分かるように、ガイド板下端をリップ先端から引っ込めることで、塗布膜の端部が厚塗り(耳立ち)になるのを防止することができる。したがって、この後、乾燥・硬化工程を経た光学フィルムがロール状に巻き取られても、光学フィルムは耳立ちが抑えられていることでロールに発現してしまうシワを防止することができ、高品質な光学フィルムを提供することができる。
【0035】
なお、本発明の光学フィルムは、ウエブ上に塗布された後、溶剤を乾燥するために加熱されたゾーンにウエブで搬送されることが好ましい。
【0036】
溶剤を乾燥する方法としては、各種の知見を利用することができる。具体的な知見としては特開2001−286817号、同2001−314798号、同2003−126768号、同2003−315505号、同2004−34002号などが挙げられる。
乾燥ゾーンの温度は25℃〜140℃が好ましく、乾燥ゾーンの前半は比較的低温であり、後半は比較的高温であることが好ましい。ただし、各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。例えば、紫外線硬化樹脂と併用される市販の光ラジカル発生剤のなかには120℃の温風中で数分以内にその数10%前後が揮発してしまうものもあり、また、単官能、2官能のアクリレートモノマー等は100℃の温風中で揮発が進行するものもある。そのような場合には、前記のように各層の塗布組成物に含有される溶剤以外の成分の揮発が始まる温度以下であることが好ましい。
【0037】
また、ウエブ上に塗布した後の乾燥風は、塗布組成物の固形分濃度が1〜50%の間は塗膜表面の風速が0.1〜2m/秒の範囲にあることが、乾燥ムラを防止するために好ましい。
【0038】
また、塗布液をウエブ上に塗布した後、乾燥ゾーン内で支持体の塗布面とは反対の面に接触する搬送ロールと支持体との温度差が0℃〜20℃以内とすると、搬送ロール上での伝熱ムラによる乾燥ムラが防止でき、好ましい。
【0039】
本発明の光学フィルムは溶剤の乾燥の後に、ウエブで電離放射線および/または熱により各塗膜を硬化させるゾーンを通過させ、塗膜を硬化する。本発明における電離放射線種は特に制限されるものではなく、皮膜を形成する硬化性組成物の種類に応じて、紫外線、電子線、近紫外線、可視光、近赤外線、赤外線、X線などから適宜選択することができ、紫外線、電子線が好ましく、特に取り扱いが簡便で高エネルギーが容易に得られるという点で紫外線が好ましい。
【0040】
紫外線反応性化合物を光重合させる紫外線の光源としては、紫外線を発生する光源であれば何れも使用できる。例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ等を用いることができる。また、ArFエキシマレーザ、KrFエキシマレーザ、エキシマランプまたはシンクロトロン放射光等も用いることができる。このうち、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク、キセノンアーク、メタルハライドランプを好ましく利用できる。
【0041】
また、電子線も同様に使用できる。電子線としては、コックロフトワルトン型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される50〜1000keV、好ましくは100〜300keVのエネルギーを有する電子線を挙げることができる。
【0042】
照射条件はそれぞれのランプによって異なるが、照射光量は10mJ/cm以上が好ましく、さらに好ましくは、50mJ/cm〜10000mJ/cmであり、特に好ましくは、50mJ/cm〜2000mJ/cmである。その際、ウエブの幅方向の照射量分布は中央の最大照射量に対して両端まで含めて50〜100%の分布が好ましく、80〜100%の分布がより好ましい。
【0043】
本発明では、ウエブ上のハードコート層、導電性ハードコート層を、電離放射線を照射しかつ電離放射線照射開始から0.5秒以上の間、膜面温度50℃以上に加熱した状態で、酸素濃度1000ppm、好ましくは500ppm、さらに好ましくは、100ppm、最も好ましくは50ppm以下の雰囲気で電離放射線を照射する工程によって硬化することが好ましい。
【0044】
また電離放射線照射と同時および/または連続して、低酸素濃度の雰囲気で加熱されることも好ましい。
【0045】
電離放射線を照射する時間については0.7秒以上60秒以下が好ましく、0.7秒以上10秒以下がより好ましい。0.5秒以下では、硬化反応が完了することができず、十分な硬化を行うことができない。また長時間低酸素条件を維持することは、設備が大型化し、多量の不活性ガスが必要であり好ましくない。
【0046】
酸素濃度を1000ppm以下にする手法としては、大気を別の気体で置換することが好ましく、特に好ましくは窒素で置換(窒素パージ)することである。
【0047】
不活性ガスを、電離放射線による硬化反応が行なわれる電離放射線照射室(「反応室」ともいう)に供給し、かつ反応室のウェッブ入口側にやや吹き出す条件にすることで、ウェッブ搬送にともなう導搬エアーを排除し反応室の酸素濃度を有効に下げられると共に、酸素による硬化阻害の大きい極表面の実質の酸素濃度を効率よく低減することができる。反応室のウェッブ入口側での不活性ガスの流れの方向は、反応室の給気、排気のバランスを調整することなどで制御できる。
【0048】
不活性ガスをウェッブ表面に直接吹き付けることも、導搬エアーを除去する方法として好ましく用いられる。
【0049】
また前記反応室の前に前室を設け、事前にウエブ表面の酸素を排除することで、より硬化を効率よく進めることができる。また電離放射線反応室または前室のウエブ入口側を構成する側面は、不活性ガスを効率的に使用するために、ウエブ表面とのギャップは0.2〜15mmが好ましく、より好ましくは、0.2〜10mmとするのがよく、0.2〜5mmとするのが最も好ましい。
【0050】
[実施例]
次に、本発明のスライド塗布装置10の実施例を説明する。スライド塗布ホッパー12の構造は図1〜図3で示したものと同様である。
【0051】
図5の表に示すように、リップ先端26とウエブ14面とのクリアランスCLを50μmから200μmまでの範囲で変え、塗布速度を20m/minから60m/minまでの範囲で変え、スライド塗布装置10で塗布液を塗布した。そして、図5の表に示す粘度・表面張力の塗布液を、表に示す塗布膜厚となるようにスリット20、22を介してスライド面18に押し出した。なお、図5の表において、下層のみを塗布した場合は、スリット22は用いなかった。
【0052】
ここで、ガイド板28の先端(下端)位置を変えて実験を行った。ガイド板下端の位置をリップ先端から引っ込めたものはマイナス(−)、ガイド板下端の位置をリップ先端に一致させたものはゼロ(0)、ガイド板下端の位置をリップ先端から突き出したものはプラス(+)で記載している。
【0053】
ここで、塗布膜の端部を接触式連続膜厚計で評価した。
【0054】
この評価から、ガイド板下端をリップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短く備えることで、塗布膜の端部が厚塗りになるのを防止し、塗布膜の端部にスジが発現するのを防止できることが分かる。
【符号の説明】
【0055】
10…スライド塗布装置、12…スライド塗布ホッパー、14…ウエブ(支持体)、16…バックアプローラ、18…スライド面、20…下層塗布液の第1のスリット、22…上層塗布液の第2のスリット、26…リップ先端、28…ガイド板、30…間隙、L1…下層塗布液、L2…上層塗布液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スライド面を流下する1以上の塗布液が、前記スライド面下端のリップ先端と連続走行する帯状の支持体面との間に形成されるリップクリアランスに塗布液ビードを介して該塗布液を前記支持体面に塗布すると共に、前記スライド面上の両端部に前記塗布液の流下をガイドするガイド板を備えたスライド塗布装置において、
前記ガイド板下端は、前記リップ先端よりも0mmを超えて4mm未満の範囲で短く備えられていることを特徴とするスライド塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスライド塗布装置を用いて塗布液を塗布することを特徴とするスライド塗布方法。
【請求項3】
前記塗布液の粘度は10mPa・s未満であることを特徴とする請求項2に記載のスライド塗布方法。
【請求項4】
前記塗布液の総塗布膜厚は40g/m以下であることを特徴とする請求項3に記載のスライド塗布方法。
【請求項5】
前記帯状の支持体の走行速度は50m/min以下であることを特徴とする請求項3又は4に記載のスライド塗布方法。
【請求項6】
請求項2〜5の何れか1に記載のスライド塗布方法により塗布されたことを特徴とする光学フィルムの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−30147(P2012−30147A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−169567(P2010−169567)
【出願日】平成22年7月28日(2010.7.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】