説明

スライド式カートン

【課題】クッション性を有するスライド式カートンを提供する。
【解決手段】
前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記中舟の、前記内面と前記外面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。さらには、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内容物を収容するための舟形状の中舟と、該中舟を覆いつつ前後自在に摺動して開閉封を行なう筒形状のスリーブとからなるスライド式カートンに関し、特に、内容物と接する前後左右上下の内側の6面にクッション効果を奏する構成を形成したクッション性を有するスライド式カートンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば図16に示すような、粒状の内容物を舟形状の中舟Bに収容し、かつ該中舟Bを覆う前後に摺動自在な筒形状のスリーブDとで構成された、スライド式のカートンA(カートンA)が知られている。このようなカートンAは、通常、中舟Bの内側の面に、複数の中芯の空間を有する片面ダンボールで形成したクッション性を有する中敷Cを別途設けて、内容物の輸送中の振動による変形や破壊から保護している(例えば、特許文献1)。
【0003】
【特許文献1】特開平5−270541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のような別途クッション性を有する中敷C部材を、中舟Bの内側の面に設けたカートンAでは以下のような難点がある。
【0005】
1、中舟Bと、中敷Cとを別々に形成するため、これら別個の製造ラインを必要とする 。
2、中舟Bの内側に、中敷Cを貼り付けるための製造工程を必要とする。
3、中敷Cは、クッション性を出すための複雑な形状を必要とするため、製造コストが 高価である。
4、内容物が油脂成分を含む場合、前記中敷Cに耐油加工を施す必要があり、さらに耐 油性中敷を製造するためのコストがかかる。
【0006】
このように、クッション性を有するスライド式カートンAにおいては、通常のカートンに比べ割高なものとなってしまうという欠点があった。
【0007】
また、中舟Bの内側に設けられた前記中敷Cは、中舟の前後左右上下の全6面をクッション性を有するシートで覆っており、中舟をスリーブから引き出した際にも、中舟の開口部分が前記シートで覆われているため、内容物を取り出すときに、消費者は中舟の開口部分を覆う上方の中敷Cを、めくり上げる手間を要した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、これらの課題を解決するため、本発明の請求項1記載の発明は、前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記中舟の、前記内面と前記外面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0010】
また、請求項3記載の発明は、前記中舟の、前記外側の面と前記内側の面との高さを、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を傾斜させて、前記空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0011】
また、請求項4記載の発明は、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との長さもしくは幅を、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を撓ませて、前記空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0012】
また、請求項5記載の発明は、前記中舟の、前記内側の面の少なくとも一部をさらに内方若しくは外方へと折り込んだ、二重内面を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、前記内側の面と前記外側の面との間に、凸部を形成することにより、前記空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0014】
また、請求項7記載の発明は、前記凸部は、罫線状の凸部であることを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0015】
また、請求項8記載の発明は、前記内側の面と前記外側の面と、が同一のシートからなることを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【0016】
また、請求項9記載の発明は、前記内側の面に、耐油加工を施したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートンである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1記載の発明によれば、前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記中舟の、前記内面と前記外面との間に空隙を形成したことを特徴とするから、中舟の外側の面と内側の面との間に空隙を形成して、内容物と接する中舟の内側の面にクッション性を持たせることが可能である。
【0018】
また、請求項2記載の発明によれば、前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との間に空隙を形成したことを特徴とするから、スリーブの外側の面と内側の面との間に空隙を形成して、内容物と接するスリーブの内側の面にクッション性を持たせることが可能である。
【0019】
また、請求項3記載の発明によれば、前記中舟の、前記外側の面と前記内側の面との高さを、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を傾斜させて、前記空隙を形成したことを特徴とするから、中舟の内側の面を傾斜させる簡単な構成により、内容物と接する内側の面にクッション性を持たせることが可能である。
【0020】
また、請求項4記載の発明によれば、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との長さもしくは幅を、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を撓ませて、前記空隙を形成したことを特徴とするから、スリーブの内側の面を撓ませる簡単な構成により、スリーブの内容物と接する内側の面にクッション性を持たせることが可能である。
【0021】
また、請求項5記載の発明によれば、前記中舟の、前記内側の面の少なくとも一部をさらに内方若しくは外方へと折り込んだ、二重内面を形成したことを特徴とするから、より大きな空隙を形成することが可能であるとともに、内面の端部付近においても確実にクッション性を奏することが可能である。
【0022】
また、請求項6記載の発明によれば、前記内側の面と前記外側の面との間に、凸部を形成することにより、前記空隙を形成したことを特徴とするから、振動等により内面と外面とが接した場合でも、最低限、凸部の高さ分の空隙を確保することができるため、より確実なクッション効果を期待できる。
【0023】
また、請求項7記載の発明によれば、前記凸部は、罫線状の凸部であることを特徴とするから、従来の罫線を形成する方法により凸部を形成できるため、低コストかつ簡単な方法により凸部を形成することが可能である。
【0024】
また、請求項8記載の発明によれば、前記内側の面と前記外側の面と、が同一のシートからなることを特徴とするから、クッション性を有するスライド式カートンを、低コストで簡単に作製可能である。
【0025】
また、請求項9記載の発明によれば、前記内側の面に、耐油加工を施したことを特徴とするから、内容物の表面が油脂類を含むものであっても収容可能な、スライド式カートンを提供することができる。
【0026】
このように、クッション性を有するスライド式カートンを、簡単かつ低コストで提供することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施例について図面を参照しつつ説明する。
本発明のクッション性を有するスライド式カートン1(カートン1)の一例としては、図1(a)に示すように、内容物を収容するための上方に開口Kを有する舟形状からなる中舟10と、該中舟10の外形と略同形状の筒体からなるスリーブ40とから構成され、図1(b)に示すように、前記スリーブ40が、前記中舟10を覆いつつ、前後方向へと摺動して、カートン1の開口Kの開口量を調節するとともに、前記カートン1の開閉封を行なう構成である。
【0028】
そして、前記中舟10の外側の面(以下、外面ともいう)は、前後左右および底の計5面からなる外面を有し、かつ、前記中舟10の内側の面(以下、内面ともいう)は、上方の開口K部分を除く内容物と接する前後左右および底の計5面からなる内面を有する。特に、これら中舟10の内面および外面との間には、後述する、空隙7が形成されており、中舟の前後左右および底の計5面の、クッション性を奏することが可能である。
【0029】
他方、前記スリーブ40の外側の面(外面)は、左右上下の計4面からなる外面を有し、また、後述する前記中舟10の開口Kを覆うスリーブ10の上方の外面の裏側には、クッション性を有するための内側の面(内面)が形成されており、中舟10の上方向である開口K部分のクッション性を奏することが可能である。
【0030】
よって、中舟10の前後左右と底の計5面からなる内面と、スリーブ40の上方の内面とにより、カートン1内部の、前後左右上下(全方向)の計6面において、クッション性を有することが可能である。
【0031】
次に、このようなスライド式カートン1を構成する前記中舟10について説明する。
中舟10を構成する各面は、図2の展開図に示すように、1枚のシート上に折り線(k、v)を介して、それぞれ連設されている。
ここで、折り線kおよび折り線vは、後述する、シート状のカートンから立体形状のカートンを組み立てる際に、シートを折り線に沿って、山折りするための折り線kと、谷折りするための折り線vである。
また、シートの外端部分に形成された貼合面Pは、カートン形成時に各面を貼り合わせるための面である。
また、外左面22と、前記外右面24とからは、さらに折り線を介して挿入面Rが形成されており、カートン1形成時に外面と内面との間に挿入される面である。
【0032】
まず、図2の展開図に示す、中央部分の面25は、中舟10の外底面25であり、該外底面25を中心として複数の面が十字状に連設されている。この面の配置は、後述する、外面と内面とを形成することが可能な配置であれば、特に限定されるものではない。
そして、外底面25の左方には、外左面22と、内左面12と、左底面15と、貼合面Pとが、折り線(k、v)を介して連設されている。
また、前記外底面25の右方には、外右面24と、内右面14と、右底面16と、折り面17と、貼合面Pとが、折り線(k、v)を介して連設されている。
さらに、前記外底面25の上方には、外前面21と、内前面11と、貼合面Pとが、折り線(k、v)を介して連設されている。
さらに、前記外底面25の下方には、外後面23と、内後面13と、貼合面Pとが、折り線(k、v)を介して連設されている。
【0033】
特に、左右の外面(外左面22、外右面24)の高さ方向の長さH(高さH)と、左右の前記内面(内左面12、内右面14)の高さ方向の長さh(高さh)とは、それぞれ異なっており(H≠h)、内面の高さhは外面の高さHより低く(h<H)形成されている。これにより、後述する(段落0037)、中舟10を形成した際に、中舟10の左右の内面が斜めに傾斜した傾斜面Sを形成して、内面と外面との間に空隙7を形成することが可能である。
【0034】
また、前後の外面(外前面21、外後面23)の高さ方向の長さH(高さH)と、左右の前記内面(内前面11、内後面13)の高さ方向の長さh(高さh)とは、それぞれ異なっており(H≠h)、内面の高さhは外面の高さHより高く(h>H)形成されている。これにより、後述する(段落0040)、中舟10を形成した際に、中舟10の前後の内面が斜めに傾斜した傾斜面Sを形成して、内面と外面との間に空隙7を形成することが可能である。
【0035】
このような展開図(図2)から、各面を折り線kに沿って山折り、折り線vに沿って谷折りするとともに、前記貼合面Pを、外底面25に貼り合わせることにより、図3に示すような、立体形状の中舟10を形成する。
【0036】
そして、中舟10の外側の面(外面)は、前後左右の外面(外前面21、外後面23、外左面22、外右面24)と、1つの外底面25と、からなる計5面を形成する。
また、中舟の内側の面(内面)は、前後左右の内面(内前面11、内後面13、内左面12、内右面14)と、底の内面(左底面15と、右底面16)と、からなる計5面を形成し、さらに前記折り面17は、底面部分に二重内面を形成する。
【0037】
次に、このようにして形成された中舟の左右の面のクッション性について説明する。
中舟10の左側と右側の各面は、図4(a)(b)に示すように、外面の高さHと、内面の高さhとがそれぞれ異なっており(H≠h)、内面の高さhが、外面の高さHより小さく形成されている(h<H)。
そして、貼合面Pを外底面25に貼り合せる際に、それぞれ左右の内面が、斜めの傾斜面Sを形成する位置において、前記貼合面Pを外底面25へと貼り合せることにより、左右および底の内面(12,15,16,14)と、左右および底の外面(22,25,24)との間に空隙7が形成される。
【0038】
また、前記貼合面Pの上方部分において、折り面17を内方へと折り込んだ状態で、貼合面Pを外底面25に貼り合せることにより、折り面17と右底面16との間に空隙7を有する二重内面を形成し、前記貼合面Pの上方部分においても、空隙7を形成することが可能である。
【0039】
よって、中舟の左右および底の内面と、中舟の外面と、の間に空隙7が形成されることにより、前記中舟10の左右および底の3つの内面に接する内容物が、外面からの衝撃から保護されるクッション効果を奏する構成であり、このようにして、中舟10の左右および底の部分に、クッション性を持たせることが可能である。
【0040】
次に、中舟10の前後の面のクッション性について説明する。
また、中舟10の前後の部分は、図5(a)(b)に示すように、外前面21の高さ方向の長さ(高さ)Hと、内前面11との高さ方向の長さ(高さ)hとが、異なっており(H≠h)、外前面21の高さHより、内前面の高さhのほうが高く形成されている(H<h)。同様に、外後面23の高さHと、内後面の高さhとは、それぞれ高さが異なっており(H≠h)、外後面の高さHより、外後面の高さhのほうが高く形成されている(H<h)。
【0041】
そして、貼合面Pを外底面25に貼り合せる際に、それぞれ前後の内面が、斜めの傾斜面Sを形成する位置において、前記貼合面Pを外底面25へと貼り合せることにより、前後の内面(11、13)と、前後の外面(21、23)との間に空隙7が形成される。
【0042】
よって、中舟の前後の内面と、中舟の外面と、の間に空隙7が形成されることにより、前記中舟10の前後2つの内面に接する内容物が、外面からの衝撃から保護されるクッション効果を奏する構成であり、このようにして、中舟10の前後の部分に、クッション性を持たせることが可能である。
【0043】
このようにして、図6に示すように、中舟10は、前後左右底の計5つの内面(11,12,13,14,15,16)と、5つの外面(21,22,23,24,25)との間に空隙7を形成するため、前後左右底の5つの方向に対するクッション性を有することが可能である。
【0044】
前記空隙7としては、内面が傾斜面Sを形成し、断面視で、傾斜面Sを斜辺とし、外面を高さとする、直角三角形の底辺Dを、最大幅の空隙Dとするものであり、外面と内面とが接する箇所の角度θが大きいほど、空隙の最大幅(sinθ)がより大きく形成される。
【0045】
そして、空隙7の大きさ(最大幅の空隙D)としては、好ましくは通常2mm〜5mmの範囲であり、特に大きなクッション効果を奏するためには、5mm〜10mmの範囲が適切である。よって、内面と外面とのなす角度θは、傾斜面Sの長さh(内面の高さh)を10mm〜50mmの範囲とした場合、h・sinθ=Dから、arcsinθ=0.2〜arcsinθ=0.5の範囲であることが好ましい。よって、10°≦θ≦30°の角度θのとき、より適切なクッション性を奏することが可能である。
【0046】
次に、中舟10の開口K部分である上方向のクッション効果を奏するための構成を以下に説明する。
中舟10の開口K部分は、通常、筒形状のスリーブにより覆われており、内容物の上方は、スリーブの上面と接することとなる。よって、中舟10の開口部分である、スリーブの上外面に、クッション性を有する構成を形成することにより、カートン内部の前後左右上下の6面すべてにクッション性を奏する構成を形成することが可能である。
【0047】
例えば、図7の展開図に示すように、筒形状を形成するスリーブは、横方向に、貼合面Pと、上外面41と、右外面43と、下外面44と、左外面42と、がそれぞれ折り線kを介して連設されている。
特に、前記上外面41には、該上外面41の長手方向に、折り線kを介してさらに、上内面45が連設され、該上内面45からさらに貼合面Fが連設されている。そして、上内面45の長手方向の長さlは、前記上外面41の長手方向の長さLより長い形状(l>L)をなしており、後述する(段落0049)、スリーブ40を形成した際に、上外面41の内方にクッション性を有する上内面45を形成することが可能である。
【0048】
このような、展開図(図7)から、各面を折り線kに沿って内方へと折り込むとともに、貼合面Pと左外面42とを貼り合せて、筒形状のスリーブ40を形成し、さらに、前記上内面45の先端部分に形成された貼合面Fを内方へと折り込み、前記上外面41の一端に貼り合せることにより、図8に示すような、スリーブ40を形成する。
【0049】
特に、スリーブ40の前記上内面45は、前記上外面41より長手方向に長い形状を有するため、スリーブ40を形成した際に、図9(a)(b)に示すように、上外面41に対して上内面45が撓んだ形状βとなり、外面と内面との間に空隙7が形成される。よって、この空隙7により、スリーブの上面、すなわち中舟の開口K部分に、クッション性を持たせることが可能である。
【0050】
また、前記スリーブ40は、幅方向の長さを異ならせてもよく、例えば、図10(a)の展開図に示すように、左から横方向に、貼合面Pと、上内面45と、貼合面Pと、外下面44と、外左面42と、外上面41と、外右面43と、をそれぞれ折り線kを介して連設し、特に、前記上内面45の横幅wは、前記上外面41の横幅Wより長い形状とすることにより、スリーブを形成した際に、図10(b)に示すように、外上面41に対して幅方向に撓んだ形状βの上内面45を形成することにより外面と内面との間に空隙7が形成され、クッション性を有するスリーブを形成してもよい。
【0051】
このようにして、前記中舟10と、前記スリーブ40とを組み合わせたカートン1を形成し、このカートン1を閉封すると、図11に示すように、内容物と直に接する前後左右上下の内面(内前面11、内左面12、内後面13、内右面14、内底面15、上内面45)の計6面と、外面(外前面21、外左面22、外後面23、外右面24、外底面25、および、スリーブの上外面41)との計6面の間に、それぞれ空隙7が形成されて、カートン内部の内容物を保護するクッション効果を奏することが可能である。
【0052】
また、カートン1の開封時においても、図12に示すように、開口部Kのスリーブ40の上内面45が、スリーブ40と一体に形成されているため、従来のように中敷Cが開口部を覆ったままの状態の中舟10となることなく、中舟の開口が形成された状態であるため、スムーズに内容物の取り出しができる効果がある。
【0053】
このように、本発明のスライド式カートン1は、内容物と接する内面と、カートン外面との間に、空隙7を形成した構造とすることにより、内容物を保護するためのクッション効果を奏するものである。
【0054】
また、前記内面と前記外面との間に、凸部Bを形成することにより、前記空隙7を形成してもよい。例えば、図13の展開図に示すように、中舟10の内面(12,15,14,16,17,11,13)にストライプ加工を施し、各内面の裏側に罫線状の凸部Bを形成することにより、より確実にクッション効果を奏することが可能である。
【0055】
この凸部Bは、前後左右下の内面の裏側に形成されており、これにより、図14(a)(b)の断面図に示すように、外面と内面とが接する折り線k付近や、貼合面p付近などの、内面が外面と接しやすい箇所において、強制的に凸部Bの高さ分の空隙7を確保することが可能である。
【0056】
さらには、輸送時の振動等により、内容物の自重で内面パネルが下方向に沈んでしまう際や、内面パネルが横方向に歪んでしまう際にも、内面と、外面とが直接的に接することはなく、内面の裏側に形成された複数の凸部Bが外面と接するため、たとえ、凸部Bと外面とが接しても、最低限、凸部Bの高さ分の空隙を確保することが可能である。
【0057】
このように、中舟10とスリーブ40との、内容物と接する内面と、外側の外面との間に空隙7を形成し、さらに、内面の裏側全体に、凸部Bを形成することにより、図15に示すように、カートンの外面と内面との間に空隙を形成するとともに、ショック等で空隙が狭まった際においても、内面と外面とが面接触する前に、内面の裏側に形成された凸部が外面と線接触するため、ショックを低減し、確実にクッション効果を奏することが可能である。
【0058】
また、前記凸部Bは、凸形状を有する罫線状の場合を示したが、罫線に限らず、凸形状を有する点でも良い。また、直線に限らず、曲線、破線などどのような形状でもよく、前記内面と外面との間に空隙を形成可能であれば良い。
また、前記凸部は、内面の裏側に形成した例を示したが、これに限らず、外面の裏側や、さらには、内面と外面のそれぞれの裏側に形成してもよい。特に、内面と外面にそれぞれ形成し、かつ内面と外面との凸部が互いに対向するように形成することにより、より大きなクッション効果を奏することが可能である。また、スリーブの外面と内面との間に形成してもよく、凸部の形成箇所は外面と内面との間であれば限定されるものではない。
【0059】
また、本発明のスライド式カートン1は、内容物と直に接する前記内面に、耐油性のコーティング加工を施すことにより、クッション性のみならず、耐油性をも兼ね備えたスライド式カートンを低コストで作製することができる。耐油性のコーティング材料としては、アクリル樹脂コート、シリコン、フッ素加工、ポリプロピレンフィルムなど、耐油性を有するものであれば、特に限定しない。また、内面に印刷を施した後、該印刷面上に耐油加工を施してもよい。
【0060】
本発明のスライド式カートン1を形成する材料の材質は、紙製に限らず、プラスチックシート、多層コーティングフィルムなど、広範囲のシート(ブランク)の使用が可能であるが、剛度が有り、耐折強度の強い、カード系、特板系が好適に使用できる。また長期にわたり使用する場合には折れ線や切れ目線等からの破壊等を起きにくくするために、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリスチレン等のフィルムを板紙にラミネートするとよい。また、このラミネートによって防湿性の向上を図ることもできる。
【0061】
さらに、板紙に代わって、プラスチックシートをブランクに使用した場合、例えば、タルク等のフィラーを混入して不透明にしたポリプロピレンシート、アモルファスポリエチレンテレフタレート等のシートをそのままブランク基材として使用することができる。また、内容物によっては透明プラスチックシートを使用して、中身を見せるようなスケルトンにしてもよい。
【0062】
また、ブランク基材への印刷にはオフセット、グラビア、シルクスクリーン等のいかなる周知の印刷方法を用いてもよい。またエンボス、箔押し、OPニスコート等の後加工を行ってもよい。これら印刷及び後加工は板紙あるいはプラスチックのシート状での加工であるため美しい、迫力のあるシャープな仕上がりとなる。なお、本発明によるスライド式カートンには密封性を上げ、また塵埃の混入防止のため、成形充填後にスライド式カートン 全体を防湿性プラスチックフィルムでオーバーラップすることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のスライド式カートンを示す図である。(a)中舟をスリーブへと挿入する前を示す図である。(b)中舟をスリーブへと挿入した後を示す図である。
【図2】中舟の展開図の一例を示す図である。
【図3】中舟を示す全体斜視図である。
【図4】中舟の一部切断説明図である。 (a)中舟の横切断斜視図である。 (b)中舟の横切断面図である。
【図5】中舟の一部切断説明図である。 (a)中舟の縦切断斜視図である。 (b)中舟の縦切断面図である。
【図6】中舟の一部切断図である。
【図7】スリーブの展開図の一例を示す図である。
【図8】スリーブを示す斜視図である。
【図9】スリーブの一部切断説明図である。(a)スリーブの縦切断斜視図である。(a)スリーブの縦切断面図である。
【図10】スリーブの別の例を示す図である。(a)スリーブの展開図である。(b)スリーブの正面視図である。
【図11】本発明のスライド式カートンの閉封時を示す一部切断説明図である。
【図12】本発明のスライド式カートンの開封時を示す一部切断説明図である。
【図13】本発明のスライド式カートンのさらに別の例を示す展開図である。
【図14】中舟の別の例を示す断面図である。(a)中舟の横切断面図である。(b)中舟の縦切断面図である。
【図15】中舟の一部切断図である。
【図16】従来のスライド式カートンを示す図である。
【符号の説明】
【0064】
1 スライド式カートン
7 空隙
10 中舟
11 内前面
12 内左面
13 内後面
14 内右面
15 内底面
16 内底面
17 二重内面
21 外前面
22 外左面
23 外後面
24 外右面
25 外底面
40 スリーブ
41 外上面
42 外左面
43 外右面
44 外下面
45 上内面
K 開口
P、F 貼合面
B 凸部
S 斜面(傾斜面)
k、v 折り線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記中舟の、前記内面と前記外面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートン。
【請求項2】
前後左右底の外側の面と、該外面より連設され内方へと折り込まれた内側の面とを有する舟形状の中舟と、該中舟を覆う上下左右の外側の面を有する筒形状のスリーブと、からなるスライド式カートンにおいて、前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との間に空隙を形成したことを特徴とする、クッション性を有するスライド式カートン。
【請求項3】
前記中舟の、前記外側の面と前記内側の面との高さを、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を傾斜させて、前記空隙を形成したことを特徴とする、請求項1記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項4】
前記スリーブの、前記外側の面と前記内側の面との長さもしくは幅を、それぞれ異ならせることにより前記内側の面を撓ませて、前記空隙を形成したことを特徴とする、請求項2記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項5】
前記中舟の、前記内側の面の少なくとも一部をさらに内方若しくは外方へと折り込んだ、二重内面を形成したことを特徴とする、請求項1又は3記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項6】
前記内側の面と前記外側の面との間に、凸部を形成することにより、前記空隙を形成したことを特徴とする、請求項1乃至5記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項7】
前記凸部は、罫線状の凸部であることを特徴とする、請求項1乃至6記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項8】
前記内側の面と前記外側の面と、が同一のシートからなることを特徴とする、請求項1乃至7記載のクッション性を有するスライド式カートン。
【請求項9】
前記内側の面に、耐油加工を施したことを特徴とする、請求項1乃至8記載のクッション性を有するスライド式カートン。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2008−74414(P2008−74414A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252669(P2006−252669)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】