説明

スライド機構

【課題】 高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことがスライド機構を提供すること。
【解決手段】 下面板12と、上面板14と、中間板16とを備える。台形状に形成された中間板16は、ネジ18により上面板14に締結され、中間板16と上面板14とで、アリが形成された第2の部材を構成する。下面板12(第1の部材)には、当該アリに嵌合するアリ溝が形成されている。中間板16の側面に、コロ32、34を配置し、中間板16の底面に、コロ36を配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スライド機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、物体の移動や位置決めなどに使用される直動ステージ装置が知られており、プリント・サーキットボード(PCB)とフレキシブル印刷配線板との接合位置合わせや、液晶パネルや有機ELパネルの貼り合わせ等に幅広く使用されている。また、物体の姿勢調整などに使用される傾斜ステージが知られている(例えば、特許文献1)。
【0003】
図7に、アリ式ステージと呼ばれる直動ステージ装置の従来例を示す。図6に示すアリ式ステージは、下面板101と、下面板101に対して移動する上面板102を備え、上面板102にはアリが形成され、下面板101にはアリと嵌合するアリ溝が形成されている。図6に示すアリ式ステージでは、送りネジノブ103により送りネジ(図示せず)を回すことで上面板102を移動させることができ、クランプネジ104により上面板102の位置を固定することができる。また、与圧用ネジ105によりアリ溝とアリ間の隙間を調節することできる。
【0004】
図8(A)に、クロスローラガイドと呼ばれるスライド機構を用いた直動ステージの従来例を示す。図8(A)に示す直動ステージは、下面板201と、下面板201に対して移動する上面板202を備え、下面板201と上面板202との間には、ローラ(コロ)を交互に直交配置したクロスローラガイド203、204が設けられている。また、クロスローラガイドは、取り付けネジ205により上面板202に取り付けられ、図示しない取り付けネジにより下面板201に取り付けられている。図8(A)に示す直動ステージでは、マイクロメータ取り付け金具206に取り付けられたマイクロメータ207により上面板202を移動させることができ、クランプネジ208により上面板202の位置を固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−42154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図7に示すアリ式ステージのスライド機構では、上面板102に比較的大きな加重が印加されると、上面板102と下面板101の間の摺動抵抗が増大しスムーズな駆動及び位置合わせが極めて困難になるという問題があった。
【0007】
また、図8(A)に示す直動ステージに用いられるクロスローラガイドでは、中加重時においては、スムーズな駆動及び位置合わせが可能であるが、図8(B)、図8(C)に示すクロスローラガイド204の構成図から分かるように、加重方向と平行な位置関係で荷重を支えているため、高加重時においては、スムーズな駆動及び位置合わせが困難になるという問題があった。
【0008】
本発明は、以上のような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことが可能なスライド機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、第1の部材と、前記第1の部材に対して移動する第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材の一方にアリが、他方に前記アリに嵌合するアリ溝が形成されたスライド機構において、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面にコロを配置したことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、第1の部材と第2の部材とが対向する面にコロを配置することで、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことができる。
【0011】
(2)また本発明において、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面に、複数のコロを前記第2の部材の移動方向に並べて配置するようにしてもよい。
【0012】
本発明によれば、第1の部材と第2の部材とが対向する面に複数のコロを第2の部材の移動方向に並べて配置することで、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことができる。
【0013】
(3)また本発明において、
前記アリ又は前記アリ溝の斜面、及び前記アリ又は前記アリ溝の底面のそれぞれにコロを配置するようにしてもよい。
【0014】
本発明によれば、アリ又はアリ溝の斜面にコロを配置することで、直動性能を向上させることができ、アリ又はアリ溝の底面にコロを配置することで、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことができる。
【0015】
(4)また本発明において、
前記アリ又は前記アリ溝の斜面、及び前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面であって前記アリ又は前記アリ溝が形成されていない面のそれぞれにコロを配置するようにしてもよい。
【0016】
本発明によれば、アリ又はアリ溝の斜面にコロを配置することで、直動性能を向上させることができ、第1の部材と第2の部材とが対向する面であってアリ又はアリ溝が形成されていない面にコロを配置することで、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことができる。
【0017】
(5)また本発明において、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面に配置したコロの直径を変更することによって前記アリに与える与圧を調整可能に構成するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1(A)、図1(B)は、本実施形態のスライド機構の構成の一例を示す図。
【図2】上面板を取り外した場合のスライド機構の外観を示す斜視図。
【図3】スライド機構の中間板の外観を示す斜視図。
【図4】スライド機構の中間板の外観を示す斜視図。
【図5】本実施形態のスライド機構を用いた直動ステージ装置の構成の一例を示す図。
【図6】変形例について説明するための図。
【図7】従来の直動ステージの構成の一例を示す図。
【図8】図7(A)〜図7(C)は、クロスローラガイドを用いた従来の直動ステージの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本実施形態について説明する。なお、以下に説明する本実施形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また本実施形態で説明される構成の全てが、本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0020】
1.構成
図1(A)、図1(B)は、本実施形態のスライド機構の構成の一例を示す図である。
【0021】
本実施形態のスライド機構10(直動機構、直動ガイド)は、下面板12(第1の部材)と、上面板14と、中間板16とを備える。台形状に形成された中間板16は、ネジ18により上面板14に締結され、中間板16と上面板14とで、アリが形成された第2の部材を構成する。また、下面板12には、当該アリに嵌合するアリ溝が形成されている。第2の部材を構成する上面板14及び中間板16は、下面板12に対して直線的に移動する。
【0022】
図2は、上面板14を取り外した場合のスライド機構10の外観を示す斜視図である。
【0023】
図1(B)、図2に示すように、下面板12には、中間板16に与圧を与えるための与圧板46が設けられている。中間板16に与圧を与えることで、中間板16の運動直進性を向上し、ヨーイング、ピッチング、ローリングを抑えることができる。なお、中間板16に与える与圧は、下面板12に設けられたネジ48によりその強さを任意に調節することができる。
【0024】
また、本実施形態のスライド機構10では、下面板12と中間板16とが対向する面(第1の部材と第2の部材とが対向する面)にコロを配置している。すなわち、図1(B)に示すように、中間板16の2つの側面(第2の部材に形成されたアリの2つの斜面)には、コロ32、34が設けられ、中間板16の底面(第2の部材に形成されたアリの底面)には、コロ36が設けられている。
【0025】
図3、図4は、スライド機構10の中間板16の外観を示す斜視図である。
【0026】
図3に示すように、中間板16の2つの側面(斜面)のそれぞれには、その回転軸が中間板16の移動方向と直交する複数のコロ32、34(円筒状のローラ)が、中間板16の移動方向(第2の部材の移動方向)に沿って(並べて)配置されている。また、中間板16の2つの側面には、ガイド溝41が形成され、複数のコロ32は、コロ32の回転に従ってガイド溝41に沿って移動するゲージ31に収められ、複数のコロ34は、コロ34の回転に従ってガイド溝(図示せず)に沿って移動するゲージ(図示せず)に収められている。
【0027】
また、図4に示すように、中間板16の底面には、その回転軸が中間板16の移動方向と直交する複数のコロ36が、中間板16の移動方向に沿って配置されている。また、中間板16の底面には、ガイド溝45が形成され、複数のコロ36は、コロ36の回転に従ってガイド溝45に沿って移動するゲージ35に収められている。
【0028】
本実施形態のスライド機構10では、第2の部材を構成する中間板16が、中間板16の側面及び底面に配置されたコロ32、34、36により支持され、中間板16及び上面板14の移動に伴ってコロ32、34、36が回転するように構成されている。
【0029】
図7に示す従来のアリ式ステージのスライド機構では、上面板102と下面板101は、摺動面において接触しており、上面板102の直進運動は、摺動抵抗を介して行われる。一方、本実施形態のスライド機構10では、従来のアリ式ステージ装置の摺動面に相当する部分(中間板16の両側面と底面)にコロ32、34、36を配置することにより、第2の部材を構成する中間板16及び上面板14の直進運動が、コロの転がり抵抗を介して行われる。
【0030】
すなわち本実施形態によれば、従来のアリ式ステージ装置のスライド機構と比較して、駆動時の摺動抵抗成分を低減し、転がり抵抗成分を増やすことにより、静止摩擦抵抗、動摩擦抵抗、駆動抵抗を低減することができ、また、運動耐久性、運動速度耐久性を向上させることができる。
【0031】
また本実施形態では、中間板16の2つの側面(第2の部材に形成されたアリの2つの斜面)にそれぞれコロ32、34を配置することにより、図8(C)に示すクロスローラガイド204と実質的に等価な運動機構を構成することができ、従来のアリ式ステージ装置のスライド機構と比較して、運動直進性を向上させ、ピッチング、ヨーイングを低減することができ、高精度な位置決めを行うことができる。
【0032】
また本実施形態では、中間板16の底面(第2の部材に形成されたアリの底面)にコロ36を配置することにより、加重方向と平行な位置関係で荷重を支えるクロスローラガイドと比較して、高加重時においてもスムーズな駆動及び位置合わせを行うことができる。
【0033】
図5は、本実施形態のスライド機構10を用いた直動ステージ装置の構成の一例を示す図である。図5に示す直動ステージ装置50は、不動部材52と、不動部材52に対して移動する可動部材54を備え、不動部材52と可動部材54との間に、本実施形態のスライド機構10が設けられている。スライド機構10の上面板14は、取り付けネジにより可動部材54に取り付けられ、スライド機構10の下面板12は、取り付けネジにより不動部材52に取り付けられている。
【0034】
2.変形例
なお、本発明の適用は上述した実施例に限定されず、種々の変形が可能である。
【0035】
例えば、本実施形態では、加工を容易にするため、第2の部材を2つの部材(上面板14及び中間板16)で構成する例について説明したが、第2の部材を一体的に構成するようにしてもよい。
【0036】
また本実施形態では、下面板12に設けられた与圧板46により中間板16(第2の部材に形成されたアリ)に与圧を与え、下面板12に設けられたネジ48により中間板16に与える与圧を調節可能に構成する例について説明したが、下面板12に与圧板46(及び与圧板46が配置される溝)とネジ48を設けずに、中間板16の斜面に配置されたコロ32、34或いは中間板16の底面に配置されたコロ36(第1の部材と第2の部材とが対向する面に配置したコロの一例)の直径を変更することにより、中間板16(アリ)に与える与圧を調節可能に構成するようにしてもよい。すなわち、配置されたコロの直径を大きくするほど、中間板16に与える与圧を大きくすることができ、配置されたコロの直径を小さくするほど、中間板16に与える与圧を小さくすることができる。
【0037】
また本実施形態では、中間板16の2つの斜面及び底面(第2の部材に形成されたアリの2つの斜面及び底面)のそれぞれにコロを配置する例について説明したが、これに代えて、下面板12(第1の部材)に形成されたアリ溝の2つの斜面と底面のそれぞれにコロを配置するようにしてもよい。
【0038】
また、図6に示すように、中間板16の2つの斜面(アリ又はアリ溝の2つの斜面)にコロ32、34を配置し、上面板14と下面板12とが対向する面(第1の部材と第2の部材とが対向する面であって、アリ又はアリ溝が形成されていない面)にコロ30、39を配置するようにしてもよい。このように、アリ又はアリ溝の底面にコロを配置することに代えて、第1の部材と第2の部材とが対向する面であってアリ又はアリ溝が形成されていない面にコロを配置するようにしても、本実施形態のスライド機構と同様の作用効果を奏する。
【0039】
また、本実施形態では、物体の直線的な移動、位置決めに用いられるスライド機構(直動機構、直動ガイドについて説明したが、本発明を、アリ溝及びアリが、第1及び第2の部材のスライド方向に湾曲した円弧に沿って形成されたスライド機構(ゴニオステージに用いられるスライド機構)に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10 スライド機構、12 下面板、14 上面板、16 中間板、18 ネジ、31 ゲージ、32 コロ、34 コロ、35 ゲージ、36 コロ、41 ガイド溝、45 ガイド溝、46 与圧板、48 ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の部材と、前記第1の部材に対して移動する第2の部材とを備え、前記第1の部材と前記第2の部材の一方にアリが、他方に前記アリに嵌合するアリ溝が形成されたスライド機構において、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面にコロを配置したことを特徴とするスライド機構。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面に、複数のコロを前記第2の部材の移動方向に並べて配置したことを特徴とするスライド機構。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記アリ又は前記アリ溝の斜面、及び前記アリ又は前記アリ溝の底面のそれぞれにコロを配置したことを特徴とするスライド機構。
【請求項4】
請求項1又は2において、
前記アリ又は前記アリ溝の斜面、及び前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面であって前記アリ又は前記アリ溝が形成されていない面のそれぞれにコロを配置したことを特徴とするスライド機構。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記第1の部材と前記第2の部材とが対向する面に配置したコロの直径を変更することによって前記アリに与える与圧を調整可能に構成したことを特徴とするスライド機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−38538(P2011−38538A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−183419(P2009−183419)
【出願日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【出願人】(592253736)シグマ光機株式会社 (46)
【Fターム(参考)】