説明

スラグ投入による海水のOH−負荷量の予測方法及び海域投入用スラグの調製又は選定方法

【課題】スラグAを海域に投入した場合に海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量を正確且つ簡便に予測する。
【解決手段】スラグAの粒度分布を複数の粒度帯gに区分けし、各粒度帯gのスラグ比表面積sと海面〜可視水深の沈降時間tを求めるとともに、複数の粒度帯gの中から任意の粒度帯gを選択し、次の手順でOH溶出量Dを求める。(1)粒度帯gのスラグの溶出試験で測定されたpHに基づき海水のOH濃度増加速度vを求め、(2)粒度帯gのスラグ比表面積sとOH濃度増加速度vに基づき、スラグAの単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を求め、これに基づき粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグOH濃度増加速度vを求め、(3)各粒度帯gのスラグについて、[OH濃度増加速度v]×[海面〜可視水深の沈降時間t]×[スラグA中の割合w]=OH溶出量dを求め、それらの総和をOH溶出量Dとして求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スラグを海洋土木材料等として海域に投入した場合に、スラグが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量を予測するための方法と、この予測方法を利用して、海面〜可視水深領域の海水に白濁を生じさせない海域投入用スラグを調製又は選定するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の精錬工程や製錬工程においては、高純度で上質な金属を得るために種々のスラグが発生し、製鉄所においても、高炉スラグ、溶銑予備処理スラグ、転炉脱炭スラグ、取鍋スラグ等のような組成の異なる種々のスラグが発生する。これらのスラグは、路盤材、土壌改良材、地盤改良材、セメントやコンクリートの骨材、石材だけでなく、海洋における潜堤材、裏ごめ材、裏埋め材、盛上材、サンドコンパクション、SCPサンドマット、浅場造成材などの海洋土木材料として利用されている。
【0003】
これらのスラグのなかで、製鋼スラグ(例えば、溶銑予備処理スラグ、転炉脱炭スラグ、取鍋スラグ等)は、比較的多量の遊離CaOを含有しているものが多く、このような製鋼スラグを海域に施工(投入)した場合、スラグ中の遊離CaOが海水に溶出し、海水のpHが上昇することによって、海水の白濁現象が発生する。この白濁現象は、以下のメカニズムで発生するものと考えられる。すなわち、スラグから遊離CaOが海水に溶出してCa(OH)が生成し、これにより海水のpHが上昇する。このpHの上昇により海水に溶解していたMg2+がMg(OH)となって析出し、この析出物により海水の白濁現象が発生する。
【0004】
白濁化の原因となるMg(OH)自体は無害であるが、施工中の白濁現象は、外観上の問題から港湾工事を進める上での障害となることがある。また、白濁発生は、遊離CaOに起因する海水のpH上昇(OH負荷量の増大)を示唆し、環境上留意されなければならない。
最近の製鋼プロセスにおいては、脱Si処理、脱S処理、脱P処理及び脱C処理の各工程の効率的な分割化、順序の最適化が進み、多種多様な製鋼スラグが発生しており、その形状、組織は多岐にわたり、スラグ中の遊離CaOの溶解挙動も複雑となっている。製鋼スラグを海域に施工するにあたり、このような種々の製鋼スラグから白濁現象を発生しないスラグを選定する方法、或いは白濁現象を発生しないスラグへと加工する方法が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には、遊離CaO分が0〜10.0質量%、硫黄分が0〜1.0質量%の製鋼スラグであって、2倍の質量比の海水に浸漬させて3時間経過した時点における海水のpHが10.5以下である港湾工事用製鋼スラグが提案されている。この特許文献1では、製鋼スラグの2倍の質量比の海水に浸漬させて3時間経過した時点における海水のpHが10.5以下であれば、当該製鋼スラグからのCa2+溶出量は少なく、海域に施工した場合の白濁を防止できるとしている。また、特許文献1では、遊離CaOが0〜10.0質量%、硫黄分が0〜1.0質量%であり、且つ粒径10mm未満の粒子の割合が25質量%以下の製鋼スラグであれば、白濁が抑制されるとしている。
【0006】
また、特許文献2には、0.075mm以下の微粒分の多い製鋼スラグを海水に浸漬すると、微粒分から多くのCa2+が溶出して白濁現象が起こるとして、0.075mm以下の微粒分を5質量%以上含む粉状製鋼スラグと、高炉スラグ微粉末と、水とを用いて成型した造粒物が提案されている。特許文献2では、微粒分の多い製鋼スラグであっても造粒して粗大化することにより、Ca2+の溶出が抑制され、白濁が防止できるとしている。
【0007】
一方、特許文献3には、特許文献1,2について次のように記載されている。まず、特許文献1については、スラグを浸漬したときに海水のpHが10.5以下であれば白濁を防止できるとしているが、実際にはpHが10を超える海水では白濁の発生があることから、白濁防止の評価法としては不十分であるとしている。また、特許文献2については、白濁は防止できるものの、新たに造粒工程が必要であり、スラグの処理費用を大幅に増大させるとしている。このような問題に対して、特許方法3では、以下のような海水のpH上昇予測法を提案している。この方法は、スラグをスラグ質量の1000倍以上の純水に浸漬させたときのCa2+溶出量を測定し、このCa2+溶出量と当該スラグの比表面積との関係、並びに予め求めておいたスラグの粒度分布に基づき、前記スラグを海水に投入したときの所定深さにおける海水へのスラグからのCa2+の溶出量を求め、このCa2+の溶出量から、海水中に存在するMg2+の緩衝作用を考慮して、海水のpHを予測するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−26456号公報
【特許文献2】特開2005−314155号公報
【特許文献3】特開2009−204272号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記従来技術には以下のような問題点がある。
特許文献3にも記載されているように、特許文献1ではスラグを浸漬したときに海水のpHが10.5以下であれば白濁を防止できるとしているが、白濁の主原因たるMg(OH)はpH≧9.5〜9.8領域にて発生し得ること、pH10を超える海水では白濁発生が実際にあることから、特許文献1は白濁防止の評価法としては不十分であると考えられる。
同じく特許文献3に記載されているように、特許文献2では白濁は防止できるものの、新たに造粒工程が必要であり、スラグの処理費用を大幅に増大させる問題がある。
【0010】
一方、以上のような特許文献1,2の問題点を踏まえて提案された特許文献3であるが、同文献の方法は、スラグの1000倍以上という大量の純水が必要であり、試験法としては簡便ではない。また、特許文献3では、溶媒として純水を使用し、pH測定結果からCa2+イオンの溶出量を換算する。次に、海水にスラグを投入した時の状況を推定するに際し、Ca2+イオンの溶出量をOH溶出量に換算してpHを計算している。さらにpHが9.8に到達してからは、海中のMg2+イオン全てがスラグから溶出したOHと反応してMg(OH)が析出し、完全にMg(OH)析出した後は再びpHが上昇すると仮定して、海水の緩衝効果(pH上昇の抑制効果)を再現した、としている。しかしながら、この導出には海水の緩衝作用としてMg(OH)析出のみしか考慮していない、という問題がある。
【0011】
ここで、Ca(OH)飽和溶液5ml(予め測定によりpH12.5を確認)を、2Lの純水と海水にそれぞれ入れた時のpH値を測定した。その上で海水にも純水と同じく全く緩衝作用が生じない、(すなわちpH12.5のCa(OH)飽和溶液が希釈されるのみ)と仮定した時の計算pHを横軸に、縦軸に実測pHをプロットしたものを図1に示す。図1によれば、溶媒として海水を使用した場合、pHはMg(OH)析出による緩衝効果が働く9.5〜9.8以下となっていることから、この低pH領域においても緩衝効果が働いていることが明白である。これは、下記(1)式で示されるCaCO析出による緩衝作用によるものと考えられる。
Ca(OH)+HCO→CaCO+2HO …(1)
【0012】
スラグの遊離CaOがCa(OH)となり溶出したCa2+イオンは、炭酸HCOから生じた炭酸イオンと炭酸カルシウムを形成し、スラグからのOHは炭酸から生じたHと打ち消しあうことで、pH上昇が抑制される。
以上の点から、特許文献3のように溶出試験の溶媒として純水を用いることは、スラグの影響による海水のOH濃度上昇を再現する上で、相当な過大評価であり、厳しい条件であると考えられる。
【0013】
本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、スラグを海域に投入した場合に海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量(海水のpH上昇量)を正確且つ簡便に予測することができる方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記予測方法を利用して、海面〜可視水深領域の海水に白濁を生じさせない海域投入用スラグを調製又は選定することができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]或る任意のスラグAを海域に投入した場合にスラグが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量を予測するための方法であって、スラグAの粒度分布を複数の粒度帯gに区分けし、各粒度帯gのスラグについて、比表面積sと海域に投入した際の海面から可視水深までの沈降時間tを求めるとともに、複数の粒度帯gの中から任意の粒度帯gを選択し、下記(i)〜(iii)の手順に従い、スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域でのスラグからのOH溶出量Dを求めることを特徴とする、スラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
(i)粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験を行い、スラグを海水に浸漬した時のpH測定結果に基づき、海水のOH濃度増加速度vを求める。
(ii)粒度帯gのスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vに基づき、スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を求め、この単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグの比表面積sに乗ずることで、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグのOH濃度増加速度vを求める。
(iii)各粒度帯gのスラグについて、[OH濃度増加速度v]×[海面から可視水深までの沈降時間t]×[スラグA中に占める割合w]=OH溶出量dを求め、全ての粒度帯gのスラグのOH溶出量dの総和をOH溶出量Dとして求める。
【0015】
[2]上記[1]の予測方法において、OH溶出量Dに基づき、さらに[OH溶出量D]×[海域へのスラグ投入速度]=実OH負荷量Fを求めることを特徴とする、スラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
[3]上記[1]又は[2]の予測方法において、粒度帯gのスラグは、比表面積が0.5m/kg以上であることを特徴とする、スラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
[4]上記[1]〜[3]のいずれかの予測方法において、粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験では、スラグ質量の3〜20倍の質量の海水中にスラグ浸漬させ、50〜300rpmの回転速度で撹拌を与えながらpHを測定し、このpHからOH濃度増加速度を求めることを特徴とする、スラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
【0016】
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの予測方法を用いた海域投入用スラグの調製方法であり、下記(a)又は(b)に従いスラグの粒度調整を行うことを特徴とする海域投入用スラグの調製方法。
(a)OH溶出量Dについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Dを設定し、算出されるOH溶出量Dが基準値D以下となるように、スラグの粒度調整を行う。
(b)実OH負荷量Fについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Fを設定し、算出される実OH負荷量Fが基準値F以下となるように、スラグの粒度調整を行う。
[6]上記[1]〜[4]のいずれかの予測方法を用いた海域投入用スラグの選定方法であり、下記(a)又は(b)に従いスラグの選定を行うことを特徴とする海域投入用スラグの選定方法。
(a)OH溶出量Dについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Dを設定し、算出されるOH溶出量Dが基準値D以下のスラグを選定する。
(b)実OH負荷量Fについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Fを設定し、算出される実OH負荷量Fが基準値F以下のスラグを選定する。
【発明の効果】
【0017】
本発明の海水のOH負荷量の予測方法によれば、溶媒として比較的少ない量の海水を用いて行うことができる簡便な溶出試験を、対象スラグのうちの一部の粒度帯のスラグについてだけ実施すればよく、しかも溶媒として純水を用いることによるOH濃度上昇の過大評価も防ぐことができるので、スラグを海域に投入した場合にスラグが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量(海水のpH上昇量)を正確且つ簡便に予測することができる。
また、本発明の海域投入用スラグの調製又は選定方法によれば、上記予測方法を利用することにより、海面〜可視水深領域の海水に白濁を生じさせない海域投入用スラグを正確且つ簡便に調製又は選定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】2Lの純水と海水にCa(OH)飽和溶液5mLを加えた時の実測pHを示すグラフ
【図2】製鋼スラグから取り出された特定の粒度帯のスラグ(3つの粒度帯のスラグ)について、海水を溶媒として溶出試験を行ったときのpHの推移を示すグラフ
【図3】図2のpHをOH濃度に換算して示すグラフ
【図4】図3の結果である単位時間、単位スラグ量当たりの海水のOH濃度増加速度をスラグの比表面積との関係で示すグラフ
【図5】或る任意の2つの製鋼スラグの粒度分布(水準a,b)を示すグラフ
【図6】スラグの粒度帯別の水深5mまでの沈降時間とOH濃度増加速度、及び図5に示す製鋼スラグにおける粒度帯別のスラグの質量割合(各粒度帯のスラグのスラグ全体に占める質量割合)と粒度帯別のOH溶出量を示すグラフ
【図7】図5の水準a,bの粒度分布を有する製鋼スラグについて、算出された海面〜可視水深(水深5m)領域でのOH溶出量を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の対象となるスラグに特別な制限はない。スラグとしては、鉄鋼スラグ(鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ)が代表的なものとして挙げられるが、これに限定されるものではなく、例えば、鉄鋼以外の金属の精錬又は製錬スラグ、廃棄物ガス化溶融スラグ、ごみ焼却灰溶融スラグなどであってもよい。
鉄鋼スラグとしては、高炉スラグ、製鋼スラグ、鉱石溶融還元スラグなどが挙げられ、また、製鋼スラグとしては、例えば、溶銑予備処理スラグ(脱燐スラグ、脱珪スラグ、脱硫スラグなど)、転炉脱炭スラグ、鋳造スラグ、電気炉スラグなどが挙げられる。これらのなかでも、製鋼スラグは遊離CaOの含有量が比較的多く、一方において海域利用が増えつつあるので、本発明法は、製鋼スラグを海域に用いる場合のOH負荷量の予測方法として特に有用であると言える。
【0020】
本発明者等は、遊離CaOを含有する製鋼スラグ等のスラグの海域での利用を、安全性を確保しつつ拡大させることを目的として、スラグを海域に投入した場合に、海水のpHがどの程度増加するか、またそれによる白濁発生の有無を予測することを検討した。
まず最初に、スラグを海域に投入した場合の海水に与えるOH負荷量(海水のpH上昇量)の算出手法について検討を行った。
スラグ投入による海水のpH上昇は、下記(2)式で表すことができる。
CaO+HO→Ca(OH)→Ca2++2OH …(2)
すなわち、スラグ中のCaO(酸化カルシウム)が水分と反応してCa(OH)(水酸化カルシウム)に変化し、このCa(OH)が海水に溶解してCa2+(カルシウムイオン)とOH(水酸化物イオン)を生成することで、アルカリ性となる。
【0021】
以下に示すスラグによる海水のpH上昇を測定する溶出試験は、JIS−K−0058−1:2005「スラグ類の化学物質試験方法−第1部:溶出量試験方法」に準拠した。この溶出試験では、対象スラグ質量の10倍相当の溶媒(海水)を用い、200rpmでの撹拌を保った状態でpH測定を行う。溶媒として海水を用いることで、実海域にスラグを投入したときの海水のpH上昇を精確に再現することが可能となる。
予め破砕された製鋼スラグを20℃、相対湿度50%環境で風乾状態とし、この製鋼スラグを篩分けして、2mm超4.75mm以下、9.5mm超13.2mm以下、30mm超50mm以下の3種類の粒度帯のスラグを取り出し、各粒度帯のスラグ毎にpH測定を行った。
【0022】
溶出試験では、各粒度帯のスラグから200gのスラグを採取し、このスラグをビーカーに収容された2Lの海水に浸漬させ、回転翼撹拌器にて200rpmの回転速度で撹拌しつつ、pH測定計を用いて溶媒のpHを測定した。各粒度帯のスラグのpH測定結果を図2に示すが、スラグ粒度の違いによってpH変化に差があることが判る。すなわち、スラグ粒度が細かいほどpHの変化が大きく、また、最終的なpH値が高くなることが判る。図3は、図2のpHをOH濃度に換算したものである。図2および図3から、pH≦9.5(OH濃度:約3.2×10−5mol/L)までは時間に対して直線的にOH濃度が上昇すること、及びその直線の傾きはスラグ粒度が細かいほど大きいことが判る。この直線の傾きは、単位スラグ量当たりの海水のOH濃度増加速度に相当する。
【0023】
図4は、図3の結果である単位時間、単位スラグ量当たりの海水のOH濃度増加速度をスラグの比表面積との関係で示したものである。ここで、各粒度帯のスラグの比表面積を求めるにあたり、スラグの形状は球体と仮定し、スラグ密度はスラグ単体の真比重(3.5t/m)とした。また、スラグ粒径は、各粒度帯の平均粒径(粒度帯上限値と下限値の平均値)を用いた。
図4によれば、スラグの比表面積とOH濃度増加速度は比例関係にあることが判る。すなわち、単位時間、単位スラグ比表面積当たりの海水のOH濃度増加速度はほぼ一定であり、スラグ粒度が細かいほど比表面積が大きくなるため、OH濃度増加速度が大きくなると結論される。
【0024】
以上の点から、対象となるスラグAからの海水へのOH溶出量は、以下のようにして予測可能である。すなわち、対象となるスラグAを篩分けして取り出された或る任意の粒度帯gのスラグについて、海水を溶媒とする前出の溶出試験を行ってpHを測定し、このpH測定結果から、当該粒度帯gのスラグのOH濃度増加速度vを求める。スラグの比表面積とOH濃度増加速度は比例関係にあるため(図4)、粒度帯gのスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vから、スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を求めることができる。そして、この単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を、スラグAの粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグの比表面積sに乗ずることで、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグのOH濃度増加速度vを求めることができ、これら各粒度帯gのOH濃度増加速度vから、スラグAからの海水へのOH溶出量を求めることができる。
以上のように、溶媒として海水を用いてスラグのpH測定試験をすることで、溶媒のpH測定値からOH濃度増加速度を精度良く且つ迅速に測定できること、そして、得られたOH濃度増加速度とスラグの比表面積(すなわちスラグの粒度分布)とから、そのスラグを海域に投入した際のOH溶出量(OH濃度増加量)を予測できることが判った。
【0025】
次に、スラグを海域に投入した際の海水のpH変化を、スラグ粒度の観点から検討した。
まず、海水に投入した際のスラグ粒子の沈降挙動について検討を行った。これは、粒子径の小さいスラグほど海水のOH濃度増加速度が大きいことから白濁現象の主原因となり得るので、スラグ投入による海水pHの上昇を求めるにあたり、白濁に影響を及ぼす粒子径の小さいスラグが海面近傍でどの程度の時間漂っているかを把握するためである。ここで、海中の可視水深よりも深い領域は海面上方から目視により確認できないため、スラグを施工した直後で問題となる白濁現象としては、海面から可視水深までの領域を考えればよい。通常の海域では、海中の可視水深は約5m程度であり、ここでは、水深5mまでを可視水深とした。したがって、沈降速度の大きいスラグは直ちに水深5m以上まで沈降するため、海面近傍でのpH上昇に与える影響は小さいであろうことが推察される。
【0026】
スラグ粒子の沈降挙動は、微粒子の沈降に広く使用されるストークスの式、アレンの式およびニュートンの式を用いて求めた。下記の(3)式にストークスの式、(4)式にアレンの式、(5)式にニュートンの式を示す。ここで、ストークスの式はレイノズル数<1の場合、アレンの式は1≦レイノズル数≦500の場合、ニュートンの式はレイノズル数>500の場合に適用される。
Vt=(ρs−ρ)×g×(D2/18μ) …(3)
Vt=[4/225×(ρs−ρ)2×g2/ρμ]1/3×D2 …(4)
Vt=[3×(ρs−ρ)×g×(D/ρ)]1/2 …(5)
ここで Vt:粒子の終末速度(cm/s)
ρs:粒子の密度(g/cm)
ρ:液体の密度(g/cm)
μ:液体の粘性係数(g/cm・s)
D:粒子径(cm)
g:重力加速度(cm/s)
製鋼スラグの粒度分布を複数の粒度帯に区分けし、各粒度帯のスラグの沈降速度を計算した結果を表1に示す。ここでは、製鋼スラグの密度は3.5t/m(3.5g/cm)として計算した。また、スラグ粒径は、各粒度帯の平均粒径(粒度帯上限値と下限値の平均値)を用いた。
【0027】
【表1】

【0028】
表1に示すように、スラグ粒径が小さいほど水深5mまでの沈降に要する時間は長いことが判る。ここで、表1の各粒度帯のスラグについて、それらのOH濃度増加速度に水深5m(可視水深)までの沈降時間を乗ずることで、各粒度帯のスラグの海面〜水深5m(可視水深)でのOH濃度増加量を求めることができる。
したがって、対象となるスラグAの各粒度帯のスラグについて、各々の「OH濃度増加速度v」に「海面から可視水深(水深5m)までの沈降時間t」と「スラグA中に占める質量割合w」を乗じ、その値の全粒度帯の総和を求めることにより、スラグAの海面〜可視水深(水深5m)でのOH濃度増加量、すなわち海水へのOH溶出量を求めることができる。
【0029】
そこで、本発明では、或る任意のスラグAを海域に投入した場合にスラグAが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量を、以下のようにして予測するものである。以下、これを図5及び図6に基づいて説明する。図5は、スラグAに相当する或る任意の2つの製鋼スラグの粒度分布(水準a,b)を示す。水準aは、篩目として下:13mm、上:85mmの篩を用いて選別したスラグであり、水準bは、篩目として下:30mm、上:85mmの篩を用いて選別したスラグである。図6は、スラグの粒度帯別の水深5mまでの沈降時間とOH濃度増加速度、及び図5に示す製鋼スラグにおける粒度帯別のスラグの質量割合(各粒度帯のスラグのスラグ全体に占める質量割合)と粒度帯別のOH溶出量を示している。
【0030】
本発明では、まず、対象となるスラグAの粒度分布を複数の粒度帯gに区分けする。図6に示す例では、図5の水準a,bの粒度分布を有する製鋼スラグを12の粒度帯g(0.075mm以下、0.075mm超-0.15mm以下、0.15mm超-0.3mm以下、0.3mm超-0.6mm以下、0.6mm超-1.18mm以下、1.18mm超-2.36mm以下、2.36mm超-4.75mm以下、4.75mm超-9.5mm以下、9.5mm超-13.2mm以下、13.2mm超-19mm以下、19mm超-26.5mm以下、26.5mm超-85mm以下)に区分けしている。
そして、各粒度帯gのスラグについて、比表面積s(m/kg)と、海域に投入した際の海面から可視水深までの沈降時間t(分)を求める。通常、各粒度帯gのスラグの比表面積sの算出では、スラグの形状は球体と仮定し、スラグ密度はスラグ単体の真比重(3.5t/m)とする。また、スラグ粒径は、各粒度帯の平均粒径(粒度帯上限値と下限値の平均値)を用いればよい。
また、各粒度帯gのスラグの海面から可視水深(例えば、5m水深)までの沈降時間tは、さきに挙げたストークスの式、アレンの式及びニュートンの式により、表1及び図6(ア)に示すように算出する。
ここで、海域の「可視水深」の決め方は、一般に行われる透明度板を用いた海水透明度の測定手法を用い、透明度板を海中に下ろし、海面上から透明度板を目視できる水深を求めればよい。
【0031】
複数の粒度帯gの中から任意の粒度帯gを選択し、下記(i)〜(iii)の手順に従い、スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域でのスラグからのOH溶出量Dを求める。
(i)粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験を行い、スラグを海水に浸漬した時のpH測定結果に基づき、海水のOH濃度増加速度vを求める。
(ii)粒度帯gのスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vに基づき、スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を求め、この単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグの比表面積sに乗ずることで、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグのOH濃度増加速度vを求める。
(iii)各粒度帯gのスラグについて、[OH濃度増加速度v]×[海面から可視水深までの沈降時間t]×[スラグA中に占める割合w]=OH溶出量dを求め、全ての粒度帯gのスラグのOH溶出量dの総和をOH溶出量Dとして求める。
【0032】
本発明では、スラグAのうちの1つの粒度帯gのスラグについてだけ溶出試験を実施してpH測定を行うものである。選択される粒度帯gは複数の粒度帯gのうちのいずれでもよく、図6の場合には、12の粒度帯gのうちいずれでもよい。ただし、本発明では、粒度帯gのスラグの比表面積sと、pH測定結果に基づく海水のOH濃度増加速度vにより、「スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分」(図4に表された直線X(=原点を通過)の傾きに相当)を求めるものであるため、粒度帯gとして比表面積の大きいスラグからなる粒度帯を選択した方が、算出誤差を小さくするという面から好ましい。具体的には、選択される粒度帯gのスラグは、比表面積が0.5m/kg以上であることが好ましい。
【0033】
上記(i)における粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験(タンクリーチング試験)では、スラグ質量の3〜20倍の質量の海水中にスラグ浸漬させ、回転翼撹拌器などを用いて撹拌を与えながらpHを測定することが好ましい。溶媒として用いる海水の質量がスラグ質量の3倍未満では、溶出試験開始後にpHがすぐに9.5まで上昇してしまい測定に支障をきたすおそれがある。一方、20倍を超えると、装置の規模が大きくなり試験法としては簡便ではなくなる。このような観点からより好ましい海水の量は、スラグ質量の5〜10倍程度である。また、実海域で生じている海流の乱流状態を溶出試験でも再現するという意味で、撹拌は50〜300rpm程度、好ましくは100〜200rpm程度の回転速度で行うことが望ましい。溶出試験のその他の試験条件は、JIS−K−0058−1:2005「スラグ類の化学物質試験方法−第1部:溶出量試験方法」に準拠することが好ましい。
この溶出試験で測定された粒度帯gのスラグのpH値をOH濃度に換算し、図3に示すような海水のOH濃度増加速度を求める。
【0034】
図4に示すようにスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vは比例関係あり、単位時間、単位スラグ比表面積当たりの海水のOH濃度増加速度はほぼ一定である。上記(ii)においては、粒度帯gのスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vから、「スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分」(図4に表された直線X(=原点を通過)の傾きに相当)を求める。そして、この「スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分」を、スラグAの粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグの比表面積sに乗ずることで、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグのOH濃度増加速度vを求める。
【0035】
そして、上記(iii)においては、各粒度帯gのスラグについて、[OH濃度増加速度v(mol/分・スラグ1kg)]×[海面から可視水深までの沈降時間t(分)]×[スラグA中に占める割合w(質量%)]=OH溶出量dを求め、全ての粒度帯gのスラグのOH溶出量dの総和をOH溶出量Dとして求める。
図6において、各粒度帯gのスラグの[OH濃度増加速度v(mol/分・スラグ1kg)]が図6(イ)であり、各粒度帯gのスラグの[海面から可視水深までの沈降時間t(分)]が図6(ア)であり、各粒度帯gのスラグの[スラグA中に占める割合w(質量%)]が図6(ウ)であり、各粒度帯gのスラグについて、それらの値を乗算することにより、スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域での、各粒度帯gのスラグからのOH溶出量d、すなわち図6(エ)が求まる。そして、各粒度帯gのスラグからのOH溶出量dの総和(=Σ(v×t×w))が、スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域でのスラグからのOH溶出量Dということになる。
本発明では、このOH溶出量Dを、スラグAを海域に投入した場合にスラグが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量として捉え、例えば、海面〜可視水深領域での白濁発生の有無を判断する指標などとして用いるものである。
【0036】
図7は、図5(ア),(イ)の水準a,bの製鋼スラグについて、図6(エ)に示す各粒度帯gのスラグからのOH溶出量dの総和である「スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域でのスラグからのOH溶出量D」を示したものである。これによれば、水準bのスラグは、OH濃度増加速度及び沈降時間が大きい細かい粒径のスラグ粒子の割合が、水準aのスラグに較べて少ないため、OH溶出量Dが水準aのスラグの1/5程度である。
【0037】
また、後述するように、実際にスラグを投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じるかどうかは、本発明で予測されるOH溶出量Dとスラグの海域への投入速度(t/hr)によって決まるので、算出されたOH溶出量D(mol/スラグ1kg)と予め決められているスラグ投入速度(t/hr)に基づき、さらに[OH溶出量D(mol/スラグ1kg)]×[海域へのスラグ投入速度(t/hr)]=実OH負荷量F(mol/hr)を求めてもよく、この実OH負荷量Fを、例えば、海面〜可視水深領域での白濁発生の有無を判断する指標などとして用いてもよい。
【0038】
次に、本発明による海域投入用スラグの調製方法又は選定方法について説明する。この海域投入用スラグの調製方法又は選定方法では、上述したような本発明の予測方法を用い、この予測方法で算出されたOH溶出量D又は[OH溶出量D]×[海域へのスラグ投入速度]=実OH負荷量Fを用いて、スラグの調製又は選定を行う。
1つの方法としては、OH溶出量Dについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Dを設定する。この場合、海域投入用スラグの調製方法では、前記予測方法で算出されるOH溶出量Dが基準値D以下となるように、スラグの粒度調整を行う。通常、この粒度調整では、スラグを篩分けして細かい粒径のスラグ粒子を取り除く。また、海域投入用スラグの選定方法では、前記予測方法で算出されるOH溶出量Dが基準値D以下のスラグを海域投入に適したスラグとして選定する。
【0039】
ここで、実際にスラグを投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じるかどうかは、本発明で予測されるOH溶出量Dとスラグの海域への投入速度(t/hr)によって決まる。図7に示される水準a,bの製鋼スラグを例にとると、水準aのスラグのOH溶出量Dは1.04×10−3mol/スラグ1kg、水準bのスラグのOH溶出量Dは1.98×10−4mol/スラグ1kgであるが、仮に、水準aのスラグを200t/hrの投入速度で投入した場合に海面〜可視水深領域で白濁を生じないとすると、水準bのスラグ(OH溶出量Dは水準aのスラグの約1/5)をその約3倍の投入速度(600t/hr)で投入しても海面〜可視水深領域で白濁を生じないことになる。したがって、基準値Dは、スラグの実際の投入速度を考慮して決めることが好ましい。
【0040】
例えば、或る製鋼スラグについて、本発明の予測方法により求めたOH溶出量Dがα(mol/スラグ1kg)であり、この製鋼スラグを投入速度β(t/hr)で海域に投入した場合に海面〜可視水深領域で白濁を生じないとすると、以下のように基準値Dを設定することができる。
・スラグ投入速度:β(t/hr)以下の場合、基準値D:α(mol/スラグ1kg)
・スラグ投入速度:β(t/hr)超、2×β(t/hr)以下の場合、基準値D:0.5×α(mol/スラグ1kg)
・スラグ投入速度:2×β(t/hr)超、3×β(t/hr)以下の場合、基準値D:0.33×α(mol/スラグ1kg)
【0041】
また、他の方法としては、[OH溶出量D(mol/スラグ1kg)]×[海域へのスラグ投入速度(t/hr)]=実OH負荷量F(mol/hr)について、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Fを設定してもよい。この場合、海域投入用スラグの調製方法では、OH溶出量D(mol/スラグ1kg)と予め決められているスラグ投入速度(t/hr)から求まる実OH負荷量Fが基準値F以下となるように、スラグの粒度調整を行う。通常、この粒度調整では、スラグを篩分けして細かい粒径のスラグ粒子を取り除く。また、海域投入用スラグの選定方法では、実OH負荷量Fが基準値F以下のスラグを海域投入に適したスラグとして選定する。
例えば、或る製鋼スラグについて、本発明の予測方法により求めたOH溶出量Dがα(mol/スラグ1kg)であり、この製鋼スラグを投入速度β(t/hr)で投入した場合に海面〜可視水深領域で白濁を生じないとすると、α(mol/スラグ1kg)×β(t/hr)=α×β(mol/hr)を基準値Fとして設定することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
或る任意のスラグAを海域に投入した場合にスラグが海面〜可視水深領域の海水に与えるOH負荷量を予測するための方法であって、
スラグAの粒度分布を複数の粒度帯gに区分けし、各粒度帯gのスラグについて、比表面積sと海域に投入した際の海面から可視水深までの沈降時間tを求めるとともに、複数の粒度帯gの中から任意の粒度帯gを選択し、下記(i)〜(iii)の手順に従い、スラグAを海域に投入した際の海面〜可視水深領域でのスラグからのOH溶出量Dを求めることを特徴とする、スラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
(i)粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験を行い、スラグを海水に浸漬した時のpH測定結果に基づき、海水のOH濃度増加速度vを求める。
(ii)粒度帯gのスラグの比表面積sとOH濃度増加速度vに基づき、スラグAにおける単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を求め、この単位比表面積当たりのOH濃度増加速度分を、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグの比表面積sに乗ずることで、粒度帯g以外の他の粒度帯gの各スラグのOH濃度増加速度vを求める。
(iii)各粒度帯gのスラグについて、[OH濃度増加速度v]×[海面から可視水深までの沈降時間t]×[スラグA中に占める割合w]=OH溶出量dを求め、全ての粒度帯gのスラグのOH溶出量dの総和をOH溶出量Dとして求める。
【請求項2】
OH溶出量Dに基づき、さらに[OH溶出量D]×[海域へのスラグ投入速度]=実OH負荷量Fを求めることを特徴とする、請求項1に記載のスラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
【請求項3】
粒度帯gのスラグは、比表面積が0.5m/kg以上であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
【請求項4】
粒度帯gのスラグを供試体とする溶出試験では、スラグ質量の3〜20倍の質量の海水中にスラグ浸漬させ、50〜300rpmの回転速度で撹拌を与えながらpHを測定し、このpHからOH濃度増加速度を求めることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のスラグ投入による海水のOH負荷量の予測方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の予測方法を用いた海域投入用スラグの調製方法であり、下記(a)又は(b)に従いスラグの粒度調整を行うことを特徴とする海域投入用スラグの調製方法。
(a)OH溶出量Dについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Dを設定し、算出されるOH溶出量Dが基準値D以下となるように、スラグの粒度調整を行う。
(b)実OH負荷量Fについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Fを設定し、算出される実OH負荷量Fが基準値F以下となるように、スラグの粒度調整を行う。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の予測方法を用いた海域投入用スラグの選定方法であり、下記(a)又は(b)に従いスラグの選定を行うことを特徴とする海域投入用スラグの選定方法。
(a)OH溶出量Dについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Dを設定し、算出されるOH溶出量Dが基準値D以下のスラグを選定する。
(b)実OH負荷量Fについて、スラグ投入した際に海面〜可視水深領域で白濁を生じない基準値Fを設定し、算出される実OH負荷量Fが基準値F以下のスラグを選定する。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−77922(P2012−77922A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−220556(P2010−220556)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】