説明

スラブの連続鋳造装置

【課題】鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造する。
【解決手段】1つのロール群Iは、2分割された5本の基準側ロールと、3分割された5本の基準側ロールとから構成されている。2分割された基準側ロールは、1個の非接触部を有し、3分割された基準側ロールは、2個の非接触部を有する。1つのロール群Iには、所定数以上の非接触部が、互いに異なる幅方向位置に配置されている。鋳片の全ての幅方向位置において、非接触比率が、0%以上且つ20%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造方向に並設されたサポートロール群を有するスラブの連続鋳造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(図2)には、連続鋳造機用のロール装置が開示されている。この装置には、鋳片に接触する複数の分割ロールと、鋳片幅方向に隣り合う2つの分割ロールの間に配置された軸受部とを有する成形用ロールが鋳造方向に並設されている。また、この装置では、複数の軸受部が千鳥状に配置されていることから、分割ロール及び軸受部は、それぞれ一本の成形用ロールおきに、鋳片の幅方向について同じ位置に配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−83279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されたロール装置では、所定の幅方向位置において、軸受部は配置されずに分割ロールだけが鋳造方向に沿って並設されている。また、別の幅方向位置において、分割ロールと軸受部とが、鋳造方向に沿って交互に配置されている。したがって、全ての幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に軸受部が存在するロール数の比率が同一ではなく、この比率は、上述した別の幅方向位置において大きくなる。
【0005】
ところで、鋼が連続鋳造されるとき、成形用ロールの軸受部は、鋳片と接触しないため、その部分では、鋳片からの抜熱量が少ない。したがって、鋳片において、軸受部と対向した部分では、分割ロールが接触した部分よりも凝固が遅い。よって、鋳片の軸受部と対向した部分は、最終凝固部となり、ザクや中心偏析が発生しやすい。このため、上述した別の幅方向位置においては、連続鋳造される鋳片の品質が低下する。
【0006】
そこで、本発明は、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができるスラブの連続鋳造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のスラブの連続鋳造装置は、鋳造方向に並設された複数の基準側ロールと、鋳造方向に並設され且つ前記複数の基準側ロールとそれぞれ対向する位置に配置された複数の反基準側ロールとを備えたスラブの連続鋳造装置であり、前記複数の基準側ロール及び前記複数の反基準側ロールは、それぞれ、互いに異なる分割数で分割された複数のロールを含み、且つ、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いた幅W−Tの範囲内において、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数のロールで構成されたものであって、前記Nが、下記(1)式を満たしている。

(但し、Nは、自然数
Sは、複数のロールの分割数であって2以上の自然数
nは、最大分割数(但し、nは3以上の自然数)
は、ロールの全数に対する、S分割されたロールの比率))
また、前記複数の基準側ロール及び前記複数の反基準側ロールのそれぞれについて、前記幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、前記複数のロールに含まれるロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率が、0%以上であり且つ20%以下である。
【0008】
本発明によると、複数の基準側ロール及び複数の反基準側ロールのそれぞれにおいて、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いたW−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、複数のロールに含まれるロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率が、0%以上であり且つ20%以下となるように、連続鋳造装置を構成することができる。したがって、鋳片の幅方向全体に亘って、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる。これにより、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
【0009】
また、本発明において、前記分割位置の幅がD(mm)であるとき、前記Nが、下記(2)式を満たすことが好ましい。
N≦(W−T)/D の値の小数点以下を切り上げた数 (但し、Nは自然数)・・・(2)
【0010】
本発明によると、分割位置の種類数Nを、(W−T)/D の値の小数点以下を切り上げた数以下とすることにより、複数の基準側ロール及び複数の反基準側ロールのそれぞれにおいて、分割位置の種類を比較的少なくすることができる。したがって、複数の基準側ロール及び複数の反基準側ロールのそれぞれを構成するロール(基準側ロール及び反基準側ロール)の種類数が少なくなるため、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のスラブの連続鋳造装置によると、複数の基準側ロール及び複数の反基準側ロールのそれぞれにおいて、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いたW−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、複数のロールに含まれるロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率が、0%以上であり且つ20%以下となるように、連続鋳造装置を構成することができる。したがって、鋳片の幅方向全体に亘って、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる。これにより、鋳片幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る連続鋳造装置の全体概略図である。
【図2】図1に示す基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図3】連続鋳造された鋳片の断面図である。
【図4】実験で用いたサポートロール群の構成を示す図である。
【図5】炭素含有量比に対する熱影響部における中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差を示す図である。
【図6】ザク密度に対する製品残存欠陥サイズを示す図である。
【図7】炭素含有量比に対するザク密度を示す図である。
【図8】非接触比率に対する炭素含有量比を示す図である。
【図9】非接触比率に対するザク密度を示す図である。
【図10】第2実施形態に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図11】第3実施形態に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図12】第4実施形態に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図13】比較例1に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図14】比較例2に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図15】比較例3に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【図16】比較例4に係る基準側ロール群の一部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
〔第1実施形態〕
(連続鋳造装置)
図1に示すように、スラブ用の連続鋳造装置100は、タンディッシュ1と、タンディッシュ1から浸漬ノズル2を介して注湯された溶鋼を、冷却し、所定形状の凝固シェル(凝固殻)を形成する鋳型3と、2次冷却帯に設けられたサポートロール群40とを備えている。サポートロール群40は、基準側ロール群40aと、反基準側ロール群40bとを備えている。なお、本実施の形態では、最大幅W、厚みTの鋳片を連続鋳造する連続鋳造装置100について説明する。また、連続鋳造装置100によって連続鋳造される鋳片の最大幅Wは、鋳型3の幅に対応している。
【0015】
サポートロール群40には、複数のロール対4が、鋳造方向に沿って並設されている。ロール対4は、鋳造経路Q(鋳片)を挟んで対向する位置に配置された基準側ロール41及び反基準側ロール42により構成されている。基準側ロール41は、鋳造経路Qの一方側(連続鋳造される鋳片の下側に対応した側)に配置されている。また、反基準側ロール42は、鋳造経路Qの他方側(連続鋳造される鋳片の上側に対応した側)に配置されている。そして、鋳造方向に並設された複数の基準側ロール41により基準側ロール群40aが構成されている。また、鋳造方向に並設された複数の反基準側ロール42により反基準側ロール群40bが構成されている。
【0016】
2次冷却帯には、冷却スプレー5が、鋳造方向に隣り合う2つの基準側ロール41の間及び鋳造方向に隣り合う2つの反基準側ロール42の間にそれぞれ設けられている。冷却スプレー5は、鋳型3から引き抜かれた凝固シェル(鋳造経路Qを搬送される凝固シェル)に対して、所定流量の冷却水を噴霧する。
【0017】
(基準側ロール及び反基準側ロール)
基準側ロール41及び反基準側ロール42は、それぞれ、連続鋳造される鋳片に接触する接触部と、鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間に配置され、連続鋳造される鋳片に接触しない非接触部とを有している。この非接触部は、接触部の両側において接触部を回転自在に支持する軸受けが配置される部位に対応している。なお、基準側ロール41及び反基準側ロール42は、それぞれ非接触部において接触部が分割されていることから、本実施の形態では、非接触部を「ロールの分割位置」ということがある。
【0018】
本実施の形態においては、基準側ロール41及び反基準側ロール42が、鋳片の幅方向に2分割又は3分割されている。ここで、「基準側ロール41が2分割されている」とは、基準側ロール41の分割数が2であり、基準側ロール41が、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部と、その2個の接触部の間に配置された1個の非接触部(分割位置)とを有することを意味する。「基準側ロール41が3分割されている」とは、基準側ロール41の分割数が3であり、基準側ロールが、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部と、その3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部(分割位置)とを有することを意味する。したがって、「基準側ロールが、鋳片の幅方向にS(Sは2以上の自然数)分割されている」とは、基準側ロール41の分割数がSであり、基準側ロールが、鋳片の幅方向に離れて配置されたS個の接触部と、そのS個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された(S−1)個の非接触部(分割位置)とを有することを意味する。なお、反基準側ロールについても同様である。
【0019】
本実施形態では、ロール対4において、基準側ロール41の接触部と反基準側ロール42の接触部とは、鋳片の幅方向について同じ位置に配置されている。したがって、ロール対4において、基準側ロール41の非接触部と反基準側ロール42の非接触部とは、鋳片の幅方向について同じ位置に配置される。よって、ロール対4において、基準側ロール41の接触部と反基準側ロール42の接触部とが対向するとともに、基準側ロール41の非接触部と反基準側ロール42の非接触部とが対向する。
【0020】
このように、ロール対4を構成する基準側ロール41と反基準側ロール42とは略同じ構成であり、基準側ロール群40aと反基準側ロール群40bとは略同じ構成である。したがって、以下においては、基準側ロール群40aについて説明し、反基準側ロール群40bの説明を省略する。
【0021】
本実施の形態では、鋳片の所定の幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率を非接触比率という。したがって、基準側ロールについての非接触比率は、鋳造方向に並設された基準側ロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在する基準側ロールの比率を示す。また、反基準側ロールについての非接触比率は、鋳造方向に並設された反基準側ロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在する反基準側ロールの比率を示す。
【0022】
(基準側ロール群40a)
次に、図2を参照しつつ、基準側ロール群40aの構成について詳細に説明する。図2は、図1に示す基準側ロール群40aの一部の構成を示している。基準側ロール群40aには、複数のロール群Iが鋳造方向に並設されている。なお、図2には、1つのロール群Iだけを図示している。また、複数のロール群Iは、全て同じ構成のロール群であるため、以下の説明においては、1つのロール群Iについて説明し、他のロール群の説明を省略する。さらに、図2においては、非接触部に対応する位置に配置された軸受けを省略している。本実施形態では、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群Iから構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する基準側ロールの全数は、ロール群Iを構成する基準側ロール数の複数倍(例えば、10倍)となっている。
【0023】
(ロール群)
図2に示すように、ロール群Iには、鋳造方向に沿って、所定のピッチで並設された10本の基準側ロールR,R,R,R,R,R,R,R,R,R10から構成されている。
【0024】
10本の基準側ロールのうちの5本の基準側ロールR,R,R,R,Rは鋳片の幅方向に3分割されている。また、他の5本の基準側ロールR,R,R,R,R10は鋳片の幅方向に2分割されている。したがって、1つのロール群Iにおいて、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとは、同じ数(1:1の比率)である。
【0025】
3分割された5本の基準側ロールR,R,R,R,Rについて説明する。基準側ロールRは、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r11,r12,r13と、その3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部(分割位置)d,dとを有している。基準側ロールRは、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r31,r32,r33と、その3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d,dとを有している。また、基準側ロールR,R,Rは、基準側ロールR,Rと略同様な構成であるため、図2に図示しているが、説明を省略する。なお、図2において、基準側ロールRと基準側ロールR、及び、基準側ロールRと基準側ロールRは、異なる符号で図示しているが、それらは、それぞれ同じ構成である。
【0026】
2分割された5本の基準側ロールR,R,R,R,R10について説明する。基準側ロールRは、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r21,r22と、接触部r21と接触部r22との間に配置された1個の非接触部(分割位置)dとを有している。基準側ロールRは、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r41,r42と、接触部r41と接触部r42との間に配置された1個の非接触部dとを有している。また、基準側ロールR,R,R10は、基準側ロールR,Rと略同様な構成であるため、図2に図示しているが、説明を省略する。なお、図2において、基準側ロールRと基準側ロールR、及び、基準側ロールRと基準側ロールR10とは、異なる符号で図示しているが、それらは、それぞれ同じ構成である。
【0027】
なお、基準側ロールRは、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r61,r62と、接触部r61と接触部r62との間に配置された1個の非接触部dとを有している。ここで、基準側ロールRの非接触部dは、基準側ロールRの非接触部dと同一の幅方向位置に配置されていることから、図2では、非接触部d(d)と図示している。したがって、後述するように、基準側ロールRの非接触部(分割位置)dと、基準側ロールRの非接触部(分割位置)dとは、分割位置の種類は同一である。
【0028】
本実施形態では、1つのロール群Iが、2分割された5本の基準側ロールと、3分割された5本の基準側ロールとから構成されていることから、ロール群Iに、1個×5本+2個×5本=15個の非接触部(分割位置)d,d,d,d,d,d,d,d,d,d10,d11,d12,d13,d14,d15が配置されている。そして、8個の非接触部d,d,d,d,d,d,d,dは、互いに異なる8箇所の幅方向位置に配置されている。また、他の7個の非接触部d,d10,d11,d12,d13,d14,d15は、上記8個の非接触部d,d,d,d,d,d,d,dのいずれかと同じ幅方向位置に配置されている。図2において、上述した非接触部d(d)のように、同じ幅方向位置に配置された同一の種類の非接触部は、括弧書きで示している。なお、15個の非接触部(分割位置)の鋳片幅方向に関する幅は、全て同じ幅Dである。
【0029】
次に、本発明は、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる発明であることから、まず、連続鋳造される鋳片に発生する中心偏析及びザクについて説明する。
【0030】
(中心偏析及びザクの発生)
図3は、図1に示す連続鋳造装置100によって鋳造される鋳片を鋳造方向に対して垂直な方向に切断したときの、鋳造される鋳片の断面図である。鋳片が鋳造経路Qを通過しているとき、溶鋼の凝固は、鋳造経路Qに対して上下面及び左右側面(図3に示す鋳片断面の上下面及び左右側面)から鋳片内部に向かって進行する。
【0031】
図3に示すように、鋳片の幅方向について、最大幅Wの鋳片の幅方向左端からT/2の幅の範囲では、溶鋼の凝固が、上面と下面と左側面とから内部へ進行する。また、最大幅Wの鋳片の幅方向右端からT/2の幅の範囲では、溶鋼の凝固が、上面と下面と右側面とから内部へ進行する。一方、鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いた幅W−Tの範囲(以下、「鋳片の幅W−Tの範囲」と称する)内は、溶鋼の凝固が上面と下面のみから内部へ進行するため、鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅の範囲よりも溶鋼の凝固が遅い。したがって、鋳片の幅W−Tの範囲(特に、鋳片の幅W−Tの範囲の厚み中心部)は、最終凝固部となりやすい。
【0032】
ところで、溶鋼の凝固中の収縮に伴う体積減少により、溶鋼の凝固進行部位には、その体積減少分に相当する溶鋼が、上流から補給される。しかし、凝固が鋳片内部へ進行し、鋳片の厚み中心部まで進行したら、その厚み中心部では、溶鋼の補給が難しくなる。溶鋼の凝固進行部位に、体積減少分に相当する量の溶鋼が補給されなかったら、その部位にザク(引け巣)が形成される。また、その部位の近隣から、ミクロ偏析による溶質が濃化した溶鋼が補給されれば、その部位が中心偏析となる。したがって、最終凝固部となる鋳片の幅W−Tの範囲内では、ザクや中心偏析が生じやすい。特に、鋳片の幅W−Tの範囲の厚み中心部には、鋳片の幅方向に延在した中心偏析線(図3に図示する一点鎖線)が形成される。
【0033】
そして、鋳造される鋳片に発生した中心偏析は、最終製品の硬度及び靭性に悪影響を及ぼす。ここで、最終製品とは、連続鋳造される鋳片を圧延して得られる製品を意味する。連続鋳造される鋳片に存在する中心偏析は、連続鋳造される鋳片が圧延されても最終製品に残存する。したがって、連続鋳造される鋳片に中心偏析が存在すれば、最終製品の品質が低下する。また、連続鋳造される鋳片にザクが発生していたら、圧下比(連続鋳造される鋳片の厚み/最終製品の厚み)を所定の圧下比より大きくした場合は、圧延により鋳造される鋳片に発生したザクを殆ど消失させることができるため、最終製品に悪影響を及ぼさないが、圧下比が小さい場合は、圧延により鋳造される鋳片に発生したザクを殆ど減少させることができないため、ザクが最終製品に残存する。そのため、連続鋳造される鋳片に発生したザクは、最終製品に悪影響を及ぼす。また、連続鋳造される鋳片の特定の幅方向位置に中心偏析やザクが偏って発生したら、その幅方向位置において、他の幅方向位置よりも、品質が大幅に低下する。
【0034】
(実験)
次に、中心偏析及びザクの発生についての実験及び実験結果について説明する。以下の実験条件により、鋳片を鋳造した。
【0035】
<実験条件>
・鋳片 :厚み 280mm
最大幅 2100mm
・鋳造条件 :鋳造速度 1.2mm/min
非完全凝固部での比水量 0.54L/Sg(鋳造量1Sg当りの冷却水量(L))
・溶鋼成分 :中炭素鋼(C含有量:0.12wt%)
・連続鋳造装置の二次冷却帯に設けられたサポートロール群の構成:
ロールピッチ 210mm〜380mm
非接触部の鋳片の幅方向についての幅 210mm
図4は、鋳片の幅方向位置と非接触比率との関係を示している。なお、図4では、鋳片の幅方向位置が鋳片の幅一端からの距離で示されており、非接触比率は、上述した本実施の形態における非接触比率に対応する。
【0036】
<中心偏析の評価>
図5は、炭素含有量比と、溶接部近傍の熱影響部における中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差との関係を示している。炭素含有量比C/Cは、鋳造される鋳片の最終未凝固部、具体的には、鋳造される鋳片の厚み方向の中心位置から採取した切粉の炭素含有量Cを、鋳造される鋳片の厚みが1/4の厚み方向位置(鋳片表面から鋳片の厚みの1/4だけ内側に深い位置)から採取した切粉の炭素含有量Cで除した値である。鋳片の切粉は、ドリル(φ5mm)を用いて採取されたものである。また、溶接部近傍の熱影響部における中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差において、「中心偏析部位」は鋳片の中心偏析が存在する部位であり、「健全部」は(鋳片の中心偏析が存在しない部位であって、鋳片表面から鋳片の厚みの1/4だけ内側に深い位置)である。
【0037】
図5から、C/Cが大きくなるにつれて、熱影響部の中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差が大きくなることが分かる。したがって、C/Cが1.1以下であるとき、熱影響部の中心偏析部位の硬度と健全部位の硬度との差が小さくなり、熱影響部の中心偏析部位の硬度が健全部位の硬度に近い硬度であることが分かる。よって、C/Cが1.1以下のとき、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができる。
【0038】
<ザクについて>
図6は、ザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係を示している。ザク密度は、以下の方法により求めた。鋳造される鋳片の最終凝固部を挟んで鋳片の厚み方向に±5mmの厚み10mm×鋳片の幅方向に幅50mm×長さ50mmの直方体状の試料を採取した。この試料に存在するザクの体積をアルキメデス法(比重測定法)により求めた。このザクの体積を鋳片の幅方向に幅50mm×鋳造方向に長さ50mmの面積で除することにより、鋳片の単位面積当りの密度に換算した。また、製品残存欠陥サイズは、最終製品(鋳造される鋳片を圧延して得られる製品)に残存した欠陥のサイズである。図6には、圧延比1.63のときのザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係及び圧延比2.0のときのザク密度と製品残存欠陥サイズとの関係を示している。ここで、圧延比は、鋳造される鋳片の厚みを最終製品の厚みで除した値である。また、圧延比2.0が、限界圧延比である。
【0039】
図6から、ザク密度が大きくなるにつれて、製品残存欠陥サイズも大きくなることが分かる。また、同じザク密度で比べたら、圧延比が小さい方が、製品残存欠陥サイズが大きい。したがって、図6から、ザク密度が0.015mm/mm以下であるとき、圧延比が2.0以下であればどのような圧延比でも、欠陥が殆ど存在しない最終製品を得ることができる。
【0040】
以上から、鋳造される鋳片において、C/Cが1.1以下、または、ザク密度が0.015mm/mm以下であれば、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができることが分かる。
【0041】
<C/Cとザク密度との関係>
図7は、炭素含有量比とザク密度との関係を示している。また、図7に示す直線は、炭素含有量比とザク密度との相関関係を示しており、以下の関係式を示している。
C/Cの値をXとし、ザク密度をYとしたとき、
Y=0.15× X −0.15
したがって、C/Cの値がわかれば、上記関係式からザク密度を求めることができる。
【0042】
<実験結果>
表1には、実験条件として、鋳片の幅方向位置(鋳片の幅方向について鋳片の幅一端からの距離)とその距離における非接触比率が示されている。また、実験結果として、実験条件におけるC/C及びザク密度を示している。図8,9は、表1に示す実験結果を図示したものである。
【0043】
【表1】

【0044】
図8から、C/Cが1.1以下になるためには、データのばらつきを考慮すると、非接触比率が20%以下であることが必要であることが分かる。また、図9から、ザク密度についても、ザク密度が0.015mm/mm以下となるためには、データのばらつきを考慮すると、非接触比率が20%以下であることが必要であることが分かる。換言すると、非接触比率を20%以下にすると、バラツキを考慮しても、C/Cを1.1以下、且つ、ザク密度を0.015mm/mm以下とすることができる。したがって、非接触比率が20%以下であるとき、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができる。
【0045】
次に、非接触比率を20%以下にするための連続鋳造装置の構成について説明する。
【0046】
非接触比率は、上述したように、鋳片の所定の幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率である。
【0047】
非接触比率は、鋳造される鋳片の全ての幅方向位置において0%以上であり且つ20%以下であることが望ましいが、最大幅Wの鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅の範囲内は、溶鋼の凝固が早いため、中心偏析やザクが発生しにくい。したがって、鋳造される鋳片の幅W−Tの範囲内において、非接触比率を0%以上であり且つ20%以内にすることができれば、実用上、品質に問題のない最終製品を製造することができる。
【0048】
<ロール群が2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率 1:1で有している場合>
基準側ロール群40aが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールを比率 1:1で有するロール群から構成される場合について、図2を用いて説明する。
【0049】
図2に示すように、1つのロール群Iは、2分割された5本の基準側ロールR,R,R,R,R10と、3分割された5本の基準側ロールR,R,R,R,Rとを含む合計10本の基準側ロールにより構成されている。また、1つのロール群Iでは、3分割された基準側ロールと2分割された基準側ロールとが、鋳造方向に沿って、交互に並設されている。
【0050】
1つのロール群Iに含まれる基準側ロールRは3分割されていることから、3個の接触部と、2個の非接触部とを有する。そして、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールRにおいて、所定の幅方向位置(例えば、図2のX)に、2個の非接触部のうちの1個の非接触部(図2のd)が配置されている場合に、そのロール群Iにおいて、その幅方向位置の非接触比率を20%以下とするためには、1つのロール群Iが10本の基準側ロールから構成されていることから、その幅方向位置(X)に、その非接触部の他に、9個の接触部が配置されるか、または、1個の非接触部と8個の接触部とが配置される必要がある。そして、図2に示すように、所定の幅方向位置(X)に、1個の非接触部と9個の接触部とが配置されていることから、そのロール群Iにおいて、幅方向位置(X)の非接触比率は、{1/(1+9)}×100=(1/10)×100=10%となる。
【0051】
また、基準側ロールRにおいて、2個の非接触部のうちの他の非接触部(図2のd)が配置されている幅方向位置(例えば、図2のX23)についても、同様に考えたら、その幅方向位置(X23)に、その非接触部の他に、9個の接触部が配置されるか、または、1個の非接触部と8個の接触部とが配置されることにより、そのロール群Iにおいて、その幅方向位置の非接触比率を20%以下とすることができる。ここで、図2において、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールRの1個の非接触部d12は、基準側ロールRの非接触部dと同一の幅方向位置に配置されている。そして、図2に示すように、所定の幅方向位置(X23)に、2個の非接触部と8個の接触部とが配置されていることから、そのロール群Iにおける幅方向位置(X23)の非接触比率は、{2/(2+8)}×100=(2/10)×100=20%となる。
【0052】
このように、1つのロール群Iが2分割された基準側ロール41と3分割された基準側ロール41を比率 1:1 で有する10本の基準側ロール41から構成されている場合、所定の幅方向位置において、10(本)/(100%/20%)=2(本)以下の基準側ロール41の非接触部を配置させても、ロール群Iにおいて、その幅方向位置の非接触比率を20%以下にすることができる。
【0053】
また、1つのロール群Iに含まれる他の基準側ロールRは、2分割されていることから、2個の接触部と、1個の非接触部(分割位置)を有する。基準側ロールRの非接触部dが、基準側ロールRの2個の非接触部と互いに異なる幅方向位置に配置されたとき、1つのロール群Iが10本の基準側ロールから構成されていることから、基準側ロールRの非接触部が配置された幅方向位置(X13)に、その非接触部の他に、9個の接触部が配置されるか、または、1個の非接触部と8個の接触部とが配置されることにより、ロール群Iにおけるその幅方向位置の非接触比率を20%以下とすることができる。そして、図2に示すように、所定の幅方向位置(X13)に、2個の非接触部と8個の接触部とが配置されていることから、ロール群Iにおける幅方向位置(X13)の非接触比率は、{2/(2+8)}×100=(2/10)×100=20%となる。
【0054】
また、同様に考えたら、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールR,R,Rのそれぞれの非接触部(分割位置)を、基準側ロールR,Rの非接触部と異なる幅方向位置に配置した場合、基準側ロールR,R,Rの非接触部が配置された幅方向位置に、その非接触部の他に、9個の接触部が配置されるか、または、1個の非接触部と8個の接触部とが配置されることにより、そのロール群Iにおけるその幅方向位置の非接触比率を20%以下とすることができる。
【0055】
ここで、上述したように、1つのロール群Iは、2分割された5本の基準側ロールと、3分割された5本の基準側ロールとから構成されていることから、ロール群Iには、15個の非接触部が配置される。
【0056】
また、ロール群Iにおいて、所定の幅方向位置の非接触比率を20%以下にするためには、その幅方向位置に、10(本)/(100%/20%)=2(本)の基準側ロール41の非接触部までを配置させることができる。
【0057】
そして、1つのロール群Iに配置された非接触部の全数(15個)と、1つの幅方向位置に非接触部を配置可能な最大ロール数(2本)とに基づいて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、ロール群Iにおける非接触比率を20%以下にするために1つのロール群Iに配置されることが必要な非接触部の数(分割位置の種類数)Nの範囲を得ることができる。したがって、1つのロール群Iに配置されることが必要な非接触部の数(分割位置の種類数)Nは、自然数であることから、15/2=7.5の小数点以下を切り上げた数である8となる。
【0058】
よって、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールを比率 1:1で有する10本の基準側ロールにより構成された1つのロール群Iでは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、少なくとも8個の非接触部(8種類の分割位置)を、互いに異なる幅方向位置に配置することにより、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、ロール群Iにおける非接触比率を20%以下にすることが可能になる。なお、接触部だけが配置された幅方向位置では、非接触部が存在しないため、非接触比率が0%となる。
【0059】
なお、図2において、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールR,R,R,R,Rは、3分割された3本の基準側ロールと2分割された2本の基準側ロールとであるため、基準側ロールR,R,R,R,Rに、2個×3本+1個×2本=8個の非接触部(8種類の分割位置)が配置される。したがって、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールR,R,R,R,Rにおいて、1つのロール群Iに配置される15個の非接触部のうちの8個の非接触部が、互いに異なる幅方向位置に配置されたら、1つのロール群Iにおいて、8個の非接触部(分割位置)の幅方向位置が決まる。
【0060】
また、1つのロール群Iに含まれる基準側ロールR,R,R,R,R10は、2分割された3本の基準側ロールと、3分割された2本の基準側ロールとであることから、基準側ロールR,R,R,R,R10には、1個×3本+2個×2本=7個の非接触部(分割位置)が配置される。したがって、1つのロール群Iにおいて、8個の非接触部(8種類の分割位置)が互いに異なる幅方向位置に配置される場合、上記7個の非接触部が、それぞれ、基準側ロールR,R,R,R,Rの8個の非接触部のいずれかと同一の幅方向位置に配置されることになる。
【0061】
そして、本実施の形態では、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群Iで構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41は、鋳片の幅W−Tの範囲内において、少なくとも8個の非接触部(8種類の分割位置)を、互いに異なる幅方向位置に配置することにより、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率を20%以下にすることが可能になる。
【0062】
本実施形態では、2つの非接触部(分割位置)が互いに異なる幅方向位置に配置されているとき、2つの非接触部(分割位置)の種類が異なることとする。そして、2つの非接触部(分割位置)の種類が異なるとは、2つの非接触部(分割位置)の幅方向位置が完全に一致していないことを示す。したがって、2つの非接触部(分割位置)のそれぞれの幅方向位置が部分的に重複していても、その2つの非接触部(分割位置)の種類は異なることになる。
【0063】
<ロール群が互いに異なる分割数で分割された基準側ロールを種々の比率で有している場合>
基準側ロール群40aが、互いに異なる分割数で分割された基準側ロール41を種々の比率で有するロール群から構成される場合について説明する。
【0064】
1つのロール群は、R本の基準側ロールから構成されるとする。また、1つのロール群に含まれる基準側ロールの最大分割数を、n(但し、nは3以上の自然数)とする。したがって、1つのロール群が、2分割された基準側ロールと、3分割された基準側ロールとから構成される場合は、最大分割数は3となる。また、1つのロール群において、S分割(但し、Sは2以上n以下の自然数)された基準側ロールを有するロール対が、それぞれ、ロール比率P(ロール比率Pは、1つのロール群において、ロールの全数に対する、S分割されたロールの比率)で含まれるとする。
【0065】
したがって、1つのロール群は、R本の基準側ロールで構成されており、1つのロール群において、S分割された基準側ロールのロール比率はPで示されることから、1つのロール群において、2分割された基準側ロールのロール比率はPであり、3分割された基準側ロールのロール比率はPであり、・・・、S分割された基準側ロールのロール比率はPであり・・・、n分割された基準側ロールのロール比率はPnである。
【0066】
また、ロール比率Pは、1つのロール群に含まれるロールの全数に対する、S分割されたロールの比率を示すことから、Pは、以下の式を満たす。

【0067】
1つのロール群に含まれる基準側ロールが2分割されている場合、その基準側ロールは、2個の接触部と1個の非接触部(分割位置)を有し、基準側ロールが3分割されている場合、その基準側ロールは、3個の接触部と2個の非接触部(分割位置)とを有する。したがって、基準側ロールがS分割されている場合についても、同様に考えたら、その基準側ロールは、S個の接触部と、(S−1)個の非接触部(分割位置)を有する。
【0068】
また、1つのロール群はR本の基準側ロールから構成されていることから、1つのロール群において、2分割された基準側ロールは、(R×P)本であり、3分割された基準側ロールは、(R×P)本であり、・・・、S分割された基準側ロールは、(R×P)本であり・・・、n分割された基準側ロールは、(R×P)本である。
【0069】
したがって、R本の基準側ロールから構成された1つのロール群に配置される非接触部(分割位置)の全数をB個としたら、Bは、以下の式を満たす。
B=(2−1)×(R×P)+(3−1)×(R×P)+・・・+(S−1)×(R×P)+・・・+(n−1)×(R×P

【0070】
また、所定の幅方向位置の非接触比率を20%以下にするためには、その幅方向位置に、R(本)/(100%/20%)=R/5(本)の基準側ロール41の非接触部までを配置させることができる。
【0071】
したがって、1つのロール群に配置された非接触部の全数Bと、1つの幅方向位置に非接触部を配置可能な最大ロール数(R/5)とに基づいて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率を20%以下にするために1つのロール群Iに配置されることが必要な非接触部の数(分割位置の種類数)Nの範囲を得ることができる。よって、1つのロール群Iに配置されることが必要な非接触部の数(分割位置の種類数)Nは、以下の式を満たす。

【0072】
したがって、互いに異なる分割数で分割された基準側ロール41を種々の比率で有するR本の基準側ロール41により構成された1つのロール群では、鋳片の幅W−Tの範囲内において、少なくともN個の非接触部(N種類の分割位置)を、互いに異なる幅方向位置に配置することにより、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、そのロール群における非接触比率を20%以下にすることが可能になる。なお、接触部だけが配置された幅方向位置では、非接触部が存在しないため、非接触比率が0%となる。
【0073】
また、本実施の形態では、上述したように、2つの非接触部(分割位置)が互いに異なる幅方向位置に配置されている場合、この2つの非接触部(分割位置)の種類が異なることになる。したがって、1つのロール群が、互いに異なる分割数で分割された基準側ロール41を種々の比率で有するR本の基準側ロール41により構成されている場合において、その1つのロール群に対して、N個の非接触部が、互いに異なる幅方向位置に配置されている場合は、1つのロール群が、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていることになる。
【0074】
そして、上述したように、基準側ロール群40aは、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されたロール群を複数有していることから、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41は、互いに異なる分割数で分割された複数の基準側ロール41含み、且つ、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていることになる。上記Nは、下記(1)式の範囲内にある。

(但し、Nは、自然数
Sは、複数のロールの分割数であって2以上の自然数
nは、最大分割数(但し、nは3以上の自然数)
は、ロールの全数に対する、S分割されたロールの比率))
これにより、複数の基準側ロール41について、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率を0%以上20%以下にすることが可能となる。
【0075】
なお、1つのロール群において分割位置の種類数が増加したら、1つのロール群において基準側ロールの種類数が増加する。本実施の形態では、1つのロール群に配置される非接触部を、上記W−Tの範囲内において、それぞれ、鋳片の幅方向について、重複することなく、異なる位置に配置されるようにすることにより、1つのロール群において、基準側ロールの種類数を少なくすることができる。これにより、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
【0076】
また、基準側ロール群が、複数のロール群から構成されている場合は、1つのロール群に配置される非接触部を、上記W−Tの範囲内において、それぞれ、鋳片の幅方向について、重複することなく、異なる位置に配置されるようにすることにより、基準側ロール群を構成する基準側ロールの種類数を少なくすることができる。
【0077】
したがって、1つのロール群に含まれる分割位置の種類数Nは、下記(2)式の範囲内にある。
N≦(W−T)/D の値の小数点を切り上げた数 (但し、Nは自然数)・・・(2)
【0078】
そして、1つのロール群に含まれる分割位置の種類数Nが上記(2)式の範囲内にあれば、基準側ロール群が、そのロール群を複数有している場合は、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、分割位置の種類数Nが上記(2)式の範囲内にある。したがって、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
【0079】
本実施の形態において、図2に示すように、基準側ロール群40aは、複数のロール群Iから構成されている。また、図2に示すように、ロール群Iは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率 1:1で有する構成であることから、ロール群Iにおいて、P=0.5、P=0.5である。したがって、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41は、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率 1:1で有することから、複数の基準側ロール41において、P=0.5、P=0.5である。よって、上記(1)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。

そして、Nは自然数であるため、上記(1)式で得られた分割位置の種類数Nが、下記の範囲となる。
N≧8
また、連続鋳造装置100により鋳造される鋳片の最大幅Wが2200mmであり且つ厚みが200mmであり、非接触部の幅Dが150mmであるとき、上記(2)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦(2200−200)/150=14
【0080】
なお、ロール群が互いに異なる分割数で分割された基準側ロールを種々の比率で有している場合に、1つのロール群に含まれる基準側ロールの分割数及びその比率が異なるときに上記(1)式で得られる分割位置の種類数Nの範囲を説明する。表2は、1つのロール群が、互いに異なる分割数で分割された2種の基準側ロールで構成されている場合を示しており、表3は、1つのロール群が、互いに異なる分割数で分割された3種の基準側ロールで構成されている場合を示している。なお、本実施形態では、基準側ロール群が複数のロール群から構成されている場合について説明しているため、表2,3に示す分割位置の種類数Nの範囲は、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについての分割位置の種類数Nの範囲を示している。
【表2】

【表3】

【0081】
また、非接触部の幅Dが100mmである場合には、上記(2)式から、N≦20の範囲が得られる。また、非接触部の幅Dが150mmである場合には、上記(2)式から、N≦14の範囲が得られる。さらに、非接触部の幅Dが200mmである場合には、上記(2)式から、N≦10の範囲が得られる。
【0082】
本実施の形態においては、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群Iから構成されている。また、1つのロール群Iは、互いに異なる8種類の分割位置で分割された10本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群40aを構成する複数の基準側ロール41が、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる8種類の分割位置で分割された複数の基準側ロール41で構成されている。よって、本実施の形態では、分割位置の種類数(N=8)が、上記(1)式及び(2)式から得られた分割位置の種類数の範囲内にある。
【0083】
また、図2の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X,X,X,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。1つのロール群Iにおいて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下となっている。なお、図2では、40個の幅方向位置の非接触比率について説明しているが、鋳片の幅W−Tの範囲内における他の幅方向位置の非接触比率も0%以上且つ20%以下となっている。
【0084】
また、上述したように、基準側ロール群40aは、複数のロール群Iから構成されていることから、基準側ロール群40aを構成する基準側ロールの全数は、ロール群Iを構成する基準側ロール数の複数倍(例えば、10倍)となっている。したがって、基準側ロール群40aを構成する全ての基準側ロール41について、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下となっている。
【0085】
以上に述べたように、本実施の形態の連続鋳造装置100によると、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれについて、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いたW−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、非接触比率(鋳造方向に並設されたロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率)が、0%以上であり且つ20%以下となるように、連続鋳造装置を構成することができる。したがって、鋳片の幅方向全体に亘って、中心偏析を改善することができるとともにザクの発生を抑えることができる。これにより、鋳片の幅方向全体に亘って高品質なスラブを鋳造することができる。
【0086】
また、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれについて、分割位置の種類を比較的少なくすることができる。したがって、複数の基準側ロール41及び複数の反基準側ロール42のそれぞれを構成するロール(基準側ロール及び反基準側ロール)の種類数が少なくなるため、連続鋳造装置のコストを低減することができる。
【0087】
続いて、本発明に係る連続鋳造装置の他の実施形態を、図10〜12を参照しつつ説明する。
【0088】
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群における分割位置の種類数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第2実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第2実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0089】
(ロール群IA)
図10に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、1つのロール群IAは、2分割された9本の基準側ロールR202,R203,R204,R205,R206,R207,R208,R209,R210と、3分割された1本の基準側ロールR201とを含む合計10本の基準側ロールにより構成されている。したがって、1つのロール群IAは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率9:1で有する。
【0090】
3分割された基準側ロールR201は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r201a,r201b,r201cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d201,d202とを有している。
【0091】
2分割された基準側ロールR202は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r202a,r202bと、接触部r202aと接触部r202bとの間に配置された1個の非接触部d203とを有している。また、基準側ロールR203,R204,R205,R206,R207,R208,R209,R210は、基準側ロールR202と略同様な構成であるため、図10に図示しているが、説明を省略する。なお、図10において、基準側ロールR202と基準側ロールR208、基準側ロールR203と基準側ロールR209、及び、基準側ロールR204と基準側ロールR210は、異なる符号で図示しているが、それらは、それぞれ同じ構成である。
【0092】
ここで、基準側ロールRの非接触部d206は、基準側ロールRの非接触部d202と同一の幅方向位置に配置されていることから、図10では、非接触部d206(d202)と図示している。したがって、基準側ロールRの非接触部(分割位置)d206と、基準側ロールRの非接触部(分割位置)d202とは、分割位置の種類は同一である。また、図10において、上述した非接触部d206(d202)のように、同じ幅方向位置に配置された同一の種類の非接触部は、括弧書きで示している。
【0093】
ロール群IAは、2分割された9本の基準側ロールと、3分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IAには、1個×9本+2個×1本=11個の非接触部(分割位置)d201,d202,d203,d204,d205,d206,d207,d208,d209,d210,d211が配置されている。
【0094】
1つのロール群IAに含まれる5本の基準側ロールR201,R202,R203,R204,R206において、11個の非接触部のうちの6個の非接触部が、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、1つのロール群IAに含まれる5本の基準側ロールR205,R207,R208,R209,R210において、5個の非接触部が、それぞれ、5本の基準側ロールR201,R202,R203,R204,R206の6個の非接触部のいずれかと同一の幅方向位置に配置されている。
【0095】
したがって、1つのロール群IAは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる6種類の分割位置で分割された10本の基準側ロールで構成されている。
【0096】
1つのロール群IAに含まれる基準側ロールR201において、非接触部d201が配置された幅方向位置(例えば、X)に、基準側ロールR207の非接触部d208が配置されていることから、幅方向位置(X)に、2個の非接触部の他に、8個の接触部が配置されている。したがって、1つのロール群IAにおいて、幅方向位置(X)の非接触比率は、{2/(2+8)}×100=20%である。同様に考えたら、1つのロール群IAに含まれる他の基準側ロールR202,R203,R204,R205,R207,R208,R209,R210の非接触部が配置された幅方向位置においても、2個の非接触部の他に、8個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IAにおいて、その幅方向位置の非接触比率は、20%である。
【0097】
また、1つのロール群IAに含まれる基準側ロールR206において、非接触部d207が配置された幅方向位置(例えば、X36)に、1個の非接触部の他に、9個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IAにおいて、幅方向位置(X)の非接触比率は、{1/(1+9)}×100=10%である。
【0098】
本実施形態では、ロール群IAは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率 9:1で有することから、ロール群IAにおいて、P=0.9、P=0.1である。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IAから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率9:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.9、P=0.1である。したがって、上記(1)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。

上記(1)式で得られた分割位置の種類数Nは、自然数であることから、下記の範囲となる。
N≧6
また、第1実施形態と同様に、上記(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦14
【0099】
また、本実施形態では、図10に示すように、1つのロール群IAは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる6種類の分割位置で分割された10本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる6種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは6である。
【0100】
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
【0101】
また、図10の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X,X,X,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群IAにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IAから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IAを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
【0102】
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。
【0103】
〔第3実施形態〕
第3実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第3実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第3実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0104】
(ロール群IB)
図11に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、1つのロール群IBは、4分割された1本の基準側ロールR301と、3分割された4本の基準側ロールR302,R303,R304,R305とを含む合計5本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群IBは、3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率4:1で有する。
【0105】
基準側ロールR301は、鋳片の幅方向に離れて配置された4個の接触部r301a,r301b,r301c,r301dと、4個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された3個の非接触部d301,d302,d303とを有している。
【0106】
基準側ロールR302は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r302a,r302b,r302cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d304,d305とを有している。また、基準側ロールR303,R304,R305は、基準側ロールR302と略同様な構成であるため、図11に図示しているが、説明を省略する。
【0107】
ロール群IBは、3分割された4本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IBには、2個×4本+3個×1本=11個の非接触部(分割位置)が配置されている。1つのロール群IBに含まれる5本の基準側ロールR301,R302,R303,R304,R305において、11個の非接触部(分割位置)は、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。
【0108】
したがって、1つのロール群IBは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる11種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されたロール群IBを有している。
【0109】
なお、本実施形態では、鋳片の幅W−Tの範囲内に非接触部(分割位置)が配置されるとは、非接触部(分割位置)の全部又は一部が鋳片の幅W−Tの範囲内に配置されることを示す。
【0110】
1つのロール群IBに含まれる基準側ロールR301において、非接触部d301が配置された幅方向位置(例えば、X)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおける幅方向位置(X)の非接触比率は、{1/(1+4)}×100=20%である。同様に考えたら、1つのロール群IBに含まれる他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IBにおいて、その幅方向位置の非接触比率は、20%である。
【0111】
本実施形態では、ロール群IBが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率 4:1で有することから、P=0.8、P=0.2である。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IBから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率4:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.8、P=0.2である。したがって、上記(1)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。

また、第1実施形態と同様に、上記(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦14
【0112】
本実施形態では、図11に示すように、1つのロール群IBは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる11種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる11種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは11である。
【0113】
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
【0114】
また、図11の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X,X,X,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、1つのロール群IBにおける非接触比率を鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群IBから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群IBを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
【0115】
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。
【0116】
〔第4実施形態〕
第4実施形態に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数とにおいて、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、第4実施形態に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、第4実施形態に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0117】
(ロール群IC)
図12に示すように、本実施形態の連続鋳造装置では、1つのロール群ICは、4分割された1本の基準側ロールR401と、3分割された2本の基準側ロールR402,R404と、2分割された2本の基準側ロールR403,R405とを含む合計5本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群ICは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率2:2:1で有する。
【0118】
4分割された基準側ロールR401は、鋳片の幅方向に離れて配置された4個の接触部r401a,r401b,r401c,r401dと、4個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された3個の非接触部d401,d402,d403とを有している。
【0119】
2分割された基準側ロールR402は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r402a,r402bと、接触部r402aと接触部r402bとの間に配置された1個の非接触部d404とを有している。また、基準側ロールR404は、基準側ロールR402と略同様な構成であるため、図12に図示しているが、説明を省略する。
【0120】
3分割された基準側ロールR403は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r403a,r403b,r403cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d405,d406とを有している。また、基準側ロールR405は、基準側ロールR403と略同様な構成であるため、図12に図示しているが、説明を省略する。
【0121】
ロール群ICは、2分割された2本の基準側ロールと、3分割された2本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群ICには、1個×2本+2個×2本+3個×1本=9個の非接触部(分割位置)が配置されている。1つのロール群IAに含まれる5本の基準側ロールR401,R402,R404,R403,R405において、9個の非接触部(分割位置)は、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。
【0122】
したがって、1つのロール群ICは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる9種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。
【0123】
1つのロール群ICに含まれる基準側ロールR401において、非接触部d401が配置された幅方向位置(例えば、X)に、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおいて、幅方向位置(X)の非接触比率は、20%である。同様に考えたら、1つのロール群ICに含まれる他の基準側ロールの非接触部が配置された幅方向位置においても、1個の非接触部の他に、4個の接触部が配置されていることから、1つのロール群ICにおいて、その幅方向位置の非接触比率は、20%である。
【0124】
本実施形態では、ロール群ICが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率2:2:1で有することから、ロール群ICにおいて、P=0.4、P=0.4、P=0.2である。そして、基準側ロール群は、複数のロール群ICから構成されていることから、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率2:2:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.4、P=0.4、P=0.2である。したがって、上記(1)式から、下記の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×{(2−1)×0.4+(3−1)×0.4+(4−1)×0.2}
N≧9
また、第1実施形態と同様に、上記(2)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≦14
【0125】
また、本実施形態では、図12に示すように、1つのロール群ICは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる9種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる9種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されている。よって、分割位置の種類数Nは9である。
【0126】
したがって、本実施形態では、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にある。
【0127】
また、図12の下方に、鋳片の幅W−Tの範囲内において、40個の互いに異なる幅方向位置X,X,X,・・・X40と、その幅方向位置における非接触比率が図示されている。本実施形態においては、分割位置の種類数が、上記(1)式及び(2)式で得られた範囲内にあるため、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、1つのロール群ICにおける非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。そして、基準側ロール群は、複数のロール群ICから構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、ロール群ICを構成する基準側ロール数の複数倍となっている。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率を0%以上且つ20%以下とすることが可能となっている。
【0128】
以上に述べたように、本実施形態に係る連続鋳造装置においても、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様な効果を得ることができる。
【0129】
次に、図13〜16を参照しつつ、本発明に係る比較例を説明する。
【0130】
〔比較例1〕
比較例1に係る連続鋳造装置は、1つのロール群における分割位置の種類数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例1に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例1に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0131】
(ロール群ID)
図13に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、1つのロール群IDは、3分割された5本の基準側ロールR501,R503,R505,R507,R509と、2分割された5本の基準側ロールR502,R504,R506,R508,R510とを含む合計10本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群IDは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率1:1で有する。
【0132】
基準側ロールR501は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r501a,r501b,r501cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d501,d502とを有している。また、基準側ロールR503,R505,R507,R509は、基準側ロールR501と略同様な構成であるため、図13に図示しているが、説明を省略する。
【0133】
基準側ロールR502は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r502a,r502bと、接触部r502aと接触部r502bとの間に配置された1個の非接触部d503とを有している。また、基準側ロールR504,R506,R508,R510は、基準側ロールR502と略同様な構成であるため、図13に図示しているが、説明を省略する。なお、図13において、基準側ロールR502と基準側ロールR506、基準側ロールR503と基準側ロールR507、基準側ロールR504と基準側ロールR510、及び基準側ロールR505と基準側ロールR509は、異なる符号で図示しているが、それらは、それぞれ同じ構成である。
【0134】
基準側ロールR503の非接触部d504及び基準側ロールR507の非接触部d510は、基準側ロールR510の非接触部d501と同一の幅方向位置に配置されていることから、それら非接触部の基準側ロールの分割位置の種類は同一である。また、図13において、同じ幅方向位置に配置された同一の種類の非接触部は、括弧書きで示している。
【0135】
ロール群IDは、2分割された5本の基準側ロールと、3分割された5本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IDには、1個×5本+2個×5本=15個の非接触部(分割位置)d501,d502,d503,d504,d505,d506,d507,d508,d509,d510,d512,d513,d514,d515が配置されている。
【0136】
1つのロール群IDに含まれる5本の基準側ロールR501,R502,R503,R504,R505において、15個の非接触部のうちの7個の非接触部が、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、1つのロール群IEに含まれる6本の基準側ロールR503,R506,R507,R508,R509,R510において、8個の非接触部が、それぞれ、5本の基準側ロールR501,R502,R503,R504,R505の7個の非接触部のいずれかと同一の幅方向位置に配置されている。
【0137】
したがって、1つのロール群IDは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる7種類の分割位置で分割された10本の基準側ロールで構成されている。よって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる7種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されているため、分割位置の種類数Nは7である。
【0138】
また、本比較例では、第1実施形態と同様に、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧8
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=7)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
【0139】
また、1つのロール群IDに含まれる基準側ロールR501において、非接触部d501が配置された幅方向位置(X)に、3個の非接触部の他に、7個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IDの幅方向位置(X)の非接触比率は、{3/(3+7)}×100=30%である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、幅方向位置(X)の非接触比率は30%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧8を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
【0140】
〔比較例2〕
比較例2に係る連続鋳造装置は、1つのロール群における分割位置の種類数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例2に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例2に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0141】
(ロール群IE)
図14に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、1つのロール群IEは、3分割された1本の基準側ロールR601と、2分割された9本の基準側ロールR602,R603,R604,R605,R606,R607,R608,R609,R610とを含む合計10本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群IEは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを比率9:1で有する。
【0142】
3分割された基準側ロールR601は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r601a,r601b,r601cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d601,d602とを有している。
【0143】
2分割された基準側ロールR602は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r602a,r602bと、接触部r602aと接触部r602bとの間に配置された1個の非接触部d603とを有している。また、基準側ロールR603,R604,R605,R606,R607,R608,R609,R610は、基準側ロールR602と略同様な構成であるため、図14に図示しているが、説明を省略する。なお、図14において、基準側ロールR602と基準側ロールR608、基準側ロールR603と基準側ロールR606と基準側ロールR609、及び基準側ロールR604と基準側ロールR610は、異なる符号で図示しているが、それらは、それぞれ同じ構成である。
【0144】
ロール群IEは、2分割された9本の基準側ロールと、3分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IDには、1個×9本+2個×1本=11個の非接触部(分割位置)d601,d602,d603,d604,d605,d606,d607,d608,d609,d610,d611が配置されている。
【0145】
1つのロール群IEに含まれる4本の基準側ロールR601,R602,R603,R604において、11個の非接触部のうちの5個の非接触部が、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、1つのロール群IEに含まれる6本の基準側ロールR605,R606,R607,R608,R609,R610において、6個の非接触部が、それぞれ、4本の基準側ロールR601,R602,R603,R604の5個の非接触部のいずれかと同一の幅方向位置に配置されている。
【0146】
したがって、1つのロール群IEは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる5種類の分割位置で分割された10本の基準側ロールで構成されている。よって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる5種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されているため、本比較例では、分割位置の種類数Nは5である。
【0147】
本比較例では、ロール群IEは、2分割された9本の基準側ロールと3分割された1本の基準側ロールとを比率9:1で有することから、P=0.9、P=0.1である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、2分割された9本の基準側ロールと3分割された1本の基準側ロールとを比率9:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.9、P=0.1である。よって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×{(2−1)×0.9+(3−1)×0.1}=5.5
上記(1)式で得られた分割位置の種類数Nは、自然数であることから、下記の範囲となる。
N≧6
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=5)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
【0148】
また、1つのロール群IEに含まれる基準側ロールR603において、非接触部d604が配置された幅方向位置(X17)に、3個の非接触部の他に、7個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IEの幅方向位置(X17)の非接触比率は、{3/(3+7)}×100=30%である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、幅方向位置(X17)の非接触比率は30%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧6を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
【0149】
〔比較例3〕
比較例3に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数と、1つのロール群における分割位置の種類数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例3に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例3に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0150】
(ロール群IF)
図15に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、1つのロール群IFは、4分割された1本の基準側ロールR701と、3分割された4本の基準側ロールR702,R703,R704,R705とを含む合計5本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群IFは、3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率4:1で有する。
【0151】
4分割された基準側ロールR701は、鋳片の幅方向に離れて配置された4個の接触部r701a,r701b,r701c,r701dと、4個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された3個の非接触部d701,d702,d703とを有している。
【0152】
3分割された基準側ロールR702は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r702a,r702b,r702c,r702dと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d704,d705とを有している。なお、基準側ロールR703,R704,R705は、基準側ロールR702と略同様な構成であるため、図15に図示しているが、説明を省略する。
【0153】
ロール群IFは、3分割された4本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IFには、2個×4本+3個×1本=11個の非接触部(分割位置)d701,d702,d703,d704,d705,d706,d707,d708,d709,d710,d711が配置されている。
【0154】
1つのロール群IFに含まれる5本の基準側ロールR701,R702,R703,R704,R705において、11個の非接触部のうちの10個の非接触部が、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、1つのロール群IEに含まれる1本の基準側ロールR705において、11個の非接触部のうちの1個の非接触部d711が、1本の基準側ロールR701の1個の非接触部d703と同一の幅方向位置に配置されている。
【0155】
したがって、1つのロール群IFは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。よって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる10種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されているため、分割位置の種類数Nは10である。
【0156】
本比較例では、ロール群IFが、3分割された4本の基準側ロールと4分割された1本の基準側ロールとを比率4:1で有することから、P=0.8、P=0.2である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、3分割された4本の基準側ロールと4分割された1本の基準側ロールとを比率4:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.8、P=0.2ある。したがって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×{(3−1)×0.8+(4−1)×0.2}
=11
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=10)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
【0157】
1つのロール群IFに含まれる基準側ロールR701において、非接触部d703が配置された幅方向位置(X36)に、2個の非接触部の他に、3個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IFの幅方向位置(X36)の非接触比率は、{2/(2+3)}×100=40%である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、幅方向位置(X36)の非接触比率は40%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧11を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
【0158】
〔比較例4〕
比較例4に係る連続鋳造装置は、1つのロール群を構成する基準側ロールの全数において、第1実施形態に係る連続鋳造装置と異なる。なお、比較例4に係る連続鋳造装置のその他の構成は、第1実施形態の連続鋳造装置の構成と同様であるため、説明を省略する。また、比較例4に係る連続鋳造装置では、第1実施形態に係る連続鋳造装置と同様に、基準側ロール群は、複数のロール群から構成されていることから、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数は、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍となっている。
【0159】
(ロール群IG)
図16に示すように、本比較例の連続鋳造装置では、1つのロール群IGは、4分割された1本の基準側ロールR801と、2分割された2本の基準側ロールR802,R804と、3分割された2本の基準側ロールR803,R805とを含む合計5本の基準側ロールから構成されている。したがって、1つのロール群IGは、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールと4分割された基準側ロールとを比率2:2:1で有する。
【0160】
4分割された基準側ロールR801は、鋳片の幅方向に離れて配置された4個の接触部r801a,r801b,r801c,r801dと、4個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された3個の非接触部d801,d802,d803とを有している。
【0161】
2分割された基準側ロールR802は、鋳片の幅方向に離れて配置された2個の接触部r802a,r802bと、接触部r802aと接触部r802bとの間に配置された1個の非接触部d804とを有している。なお、基準側ロールR804は、基準側ロールR802と略同様な構成であるため、図16に図示しているが、説明を省略する。
【0162】
3分割された基準側ロールR803は、鋳片の幅方向に離れて配置された3個の接触部r803a,r803b,r803cと、3個の接触部の鋳片の幅方向に隣り合う2個の接触部の間にそれぞれ配置された2個の非接触部d805,d806とを有している。なお、基準側ロールR805は、基準側ロールR803と略同様な構成であるため、図16に図示しているが、説明を省略する。
【0163】
ロール群IGは、2分割された2本の基準側ロールと、3分割された2本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとにより構成されていることから、ロール群IGには、1個×2本+2個×2本+3個×1本=9個の非接触部(分割位置)d801,d802,d803,d804,d805,d806,d807,d808,d809が配置されている。
【0164】
1つのロール群IGに含まれる5本の基準側ロールR801,R802,R803,R804,R805において、9個の非接触部のうちの8個の非接触部が、鋳片の幅方向に重複しないように、且つ、互いに異なる幅方向位置に配置されている。また、1つのロール群IEに含まれる1本の基準側ロールR804において、9個の非接触部のうちの他の1個の非接触部d807が、1本の基準側ロールR801の1個の非接触部d802と同じ幅方向位置に配置されている。
【0165】
したがって、1つのロール群IGは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる8種類の分割位置で分割された5本の基準側ロールで構成されている。よって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、鋳片の幅W−Tの範囲内において、互いに異なる8種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されているため、分割位置の種類数Nは8である。
【0166】
本比較例では、ロール群IGが、2分割された2本の基準側ロールと、3分割された2本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとを比率2:2:1で有することから、P=0.4、P=0.4、P=0.2である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールは、2分割された2本の基準側ロールと、3分割された2本の基準側ロールと、4分割された1本の基準側ロールとを比率2:2:1で有する複数の基準側ロールから構成されており、P=0.4、P=0.4、P=0.2である。よって、上記(1)式から、以下の分割位置の種類数Nの範囲が得られる。
N≧5×{(2−1)×0.4+(3−1)×0.4+(4−1)×0.2}
=9
したがって、本比較例では、分割位置の種類数(N=8)が、上記(1)式で得られた範囲内にない。
【0167】
また、1つのロール群IGに含まれる基準側ロールR801において、非接触部d802が配置された幅方向位置(X24)に、2個の非接触部の他に、3個の接触部が配置されていることから、1つのロール群IGの幅方向位置(X24)の非接触比率は、{2/(2+3)}×100=40%である。したがって、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールについて、幅方向位置(X24)の非接触比率は40%である。本比較例においては、分割位置の種類数が、N≧9を満たさないため、鋳片の幅W−Tの範囲内に、非接触比率が20%を超える幅方向位置が存在する。
【0168】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々な変更が可能なものである。例えば、本実施形態においては、1つのロール群に配置される非接触部(分割位置)の幅が全て同じ幅Dであるが、1つのロール群に配置される非接触部(分割位置)の幅が、全て同じ幅でなくてもよい。また、本実施形態では、1つのロール群において、複数の基準側ロールが所定のピッチで並設されているが、1つのロール群において、複数の基準側ロールが所定のピッチで並設されていなくてもよい。
【0169】
また、本実施形態では、基準側ロールの接触部と反基準側ロールの接触部とは、鋳片の幅方向について、同じ位置に配置されているが、それらは同じ位置に配置されていなくてもよい。したがって、一対のロール対を構成する基準側ロールと反基準側ロールとが同じ構成でなくてもよい。また、基準側ロール群と反基準側ロール群とが同じ構成でなくてもよい。例えば、基準側ロール群を構成する複数の基準側ロールと、反基準側ロール群を構成する複数の反基準側ロールとにおいて、互いに異なる分割数で分割されたロールの種類が異なっていてもよい。例えば、表2,3に示すように、複数の基準側ロールが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとから構成され、且つ、複数の反基準側ロールが、3分割された反基準側ロールと4分割された反基準側ロールとから構成されていてもよい。また、複数の基準側ロールが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとから構成され、且つ、複数の反基準側ロールが、2分割された反基準側ロールと3分割された反基準側ロールと4分割された反基準側ロールとから構成されていてもよい。
【0170】
また、上記の互いに異なる分割数で分割されたロールの種類の比率が異なっていてもよい。例えば、表2,3に示すように、複数の基準側ロールが、2分割された基準側ロールと3分割された基準側ロールとを、ロール比率P=0.8とロール比率P=0.2とで有しており、且つ、複数の反基準側ロールが、2分割された反基準側ロールと3分割された反基準側ロールとを、ロール比率P=0.4とロール比率P=0.6とで有していてもよい。
【0171】
さらに、本実施形態では、1つのロール群において、複数の基準側ロールが、鋳造方向に、所定の順序で並設されているが、1つのロール群が、鋳片の幅W−Tの範囲内において、上記(1)式の範囲内にある互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数の基準側ロールで構成されていれば、1つのロール群において、複数の基準側ロールが鋳造方向に並設される順序は、変更可能である。例えば、第1実施形態において、1つのロール群Iを構成する基準側ロールが、基準側ロールR,・・・,R,R10の順に鋳造方向に並設されている必要がなく、基準側ロールR,・・・,R,R10の順序は変更可能である。
【0172】
加えて、基準側ロール群が、複数のロール群から構成されている場合に、複数のロール群を構成する全ての基準側ロールの順番を並べ替えてもよい。このとき、鋳片の幅W−Tの範囲内のそれぞれの幅方向位置での非接触比率は変化しないが、基準側ロールの分割位置(非接触部)を鋳造方向に偏らせないためには、ロール群を繰り返すなどの周期的な配列とすることが好ましい。
【0173】
また、本実施形態では、基準側ロール群を構成する基準側ロールの全数が、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍である場合を説明したが、基準側ロール群を構成する全ての基準側ロールについて、鋳片の幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置の非接触比率が0%以上且つ20%以下であれば、基準側ロール群に、1つのロール群を構成する基準側ロール数の複数倍の数の基準側ロール以外の基準側ロールが追加されてもよい。このとき、追加される基準側ロールの分割位置(非接触部)が、1つのロール群に配置されるN種類の分割位置と異なる種類の分割位置を含んでいないときは、全ての基準側ロールについての分割位置の種類数はNである。また、追加される基準側ロールの分割位置(非接触部)が、1つのロール群に配置されるN種類の分割位置と異なる種類の分割位置を含んでいるときは、全ての基準側ロールについての分割位置の種類数Nが増加することから、上記(1)式を満たす。
【0174】
なお、上述の変形例では、基準側ロールについて説明したが、反基準側ロールについても同様である。
【符号の説明】
【0175】
1 タンディッシュ
2 浸漬ノズル
3 鋳型
4 ロール対
40 サポートロール群
40a 基準側ロール群
40b 反基準側ロール群
41 基準側ロール
42 反基準側ロール
d 非接触部
r 接触部
100 連続鋳造装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳造方向に並設された複数の基準側ロールと、鋳造方向に並設され且つ前記複数の基準側ロールとそれぞれ対向する位置に配置された複数の反基準側ロールとを備えたスラブの連続鋳造装置であり、
前記複数の基準側ロール及び前記複数の反基準側ロールは、それぞれ、互いに異なる分割数で分割された複数のロールを含み、且つ、最大幅がW(mm)であり且つ厚みがT(mm)である連続鋳造される鋳片の幅方向について、その鋳片の幅方向両端からそれぞれT/2の幅を除いた幅W−Tの範囲内において、互いに異なるN種類の分割位置で分割された複数のロールで構成されたものであって、
前記Nが、下記(1)式を満たしており、

(但し、Nは、自然数
Sは、複数のロールの分割数であって2以上の自然数
nは、最大分割数(但し、nは3以上の自然数)
は、ロールの全数に対する、S分割されたロールの比率))
前記複数の基準側ロール及び前記複数の反基準側ロールのそれぞれについて、前記幅W−Tの範囲内の全ての幅方向位置において、前記複数のロールに含まれるロールの全数に対する、その幅方向位置に分割位置が存在するロールの比率が、0%以上であり且つ20%以下であることを特徴とするスラブの連続鋳造装置。
【請求項2】
前記分割位置の幅がD(mm)であるとき、
前記Nが、下記(2)式を満たすことを特徴とする請求項1に記載のスラブの連続鋳造装置。
N≦(W−T)/D の値の小数点以下を切り上げた数 (但し、Nは自然数)・・・(2)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−30286(P2012−30286A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−126596(P2011−126596)
【出願日】平成23年6月6日(2011.6.6)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】