説明

スラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置

【課題】スラブ鋳片の幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する。
【解決手段】
冷却装置20は、鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズル31でそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群30を備える。ノズル群30は、同一ヘッダーに接続された複数のノズル31(31、31B1、31B2)で構成されている。また、ノズル群30において、軸受箱のある幅方向範囲には、軸受箱7bのある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置しているノズル31よりも高水量のミストを噴霧可能に構成されたノズル31B1、31B2の先端が位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼のスラブ用の連続鋳造機に用いられる鋳片を冷却するための冷却装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機は、鋳造方向に沿って並設され、鋳片を鋳造方向の下流側に送る複数のロール対と、鋳造経路を通過する鋳片に冷却水を噴霧する複数のノズルを有する冷却装置を備えている(例えば、特許文献1参照)。鋳造経路を通過する鋳片は、主に、ロール面との接触による抜熱と、ミスト冷却による抜熱によって冷却される。また、各ロールは、撓みの抑制と軸受への負担の軽減のために、軸方向に2〜4分割されるとともにその分割位置で軸受箱に支持された分割型ロールが用いられている場合が多い。この軸受箱は鋳片と接触しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−248115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、分割型ロールを用いた場合、軸受箱は鋳片と接触しないため、鋳片において、軸受箱を通過した部位は、ロール面との接触による抜熱がないため、抜熱総量が他の部位よりも少なくなる。そのため、軸受箱を通過した部位で凝固遅れが生じて、その結果、凝固が遅れている部分の中心偏析が悪化して、幅方向の中心偏析にバラツキが生じてしまう。
【0005】
そこで、本発明は、軸受箱に起因する凝固遅れ部を強冷却して、幅方向について凝固完了位置のバラツキを抑制して、中心偏析のバラツキを低減することができる連続鋳造機の冷却装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段及び発明の効果】
【0006】
第1の発明のスラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置は、鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、前記複数のノズル群は、同一ヘッダーに接続された複数のノズルで構成され、且つ、前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置しているノズルよりも高水量のミストを噴霧可能に構成されたノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲に位置しているノズル群を含むことを特徴とする。
【0007】
この構成によると、軸受箱のある幅方向範囲に配置されたノズルが、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に配置され且つ同一ヘッダーに接続された同群のノズルよりも高水量を噴霧可能に構成されているため、軸受箱のある幅方向範囲の冷却水量を、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片の幅方向の冷却を均一化することができる。したがって、軸受箱を通過した部位での凝固遅れを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
また、消耗品であるノズルの混合部またはノズルチップを交換するだけで実施できるため、追加の水量制御やポンプが不要であり、シンプルな設備構成で中心偏析のバラツキを抑制できる。
【0008】
第2の発明のスラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置は、鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、前記複数のノズル群は、同一ヘッダーに接続された複数のノズルで構成され、且つ、前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置している2つのノズルよりも狭いピッチで配列された2つのノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲に位置しているノズル群を含むことを特徴とする。
【0009】
この構成によると、軸受箱のある幅方向範囲に配置された2つのノズルのピッチが、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に配置され且つ同一ヘッダーに接続された同群の2つのノズルのピッチよりも狭いため、軸受箱のある幅方向範囲の冷却水量を、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片の幅方向の冷却を均一化することができる。
したがって、軸受箱を通過した部位での凝固遅れをを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
また、ヘッダーの構成を変更するだけで実施できるため、追加の水量制御やポンプが不要であり、シンプルな設備構成で中心偏析のバラツキを抑制できる。
【0010】
第3の発明のスラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置は、鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、前記複数のノズル群は、前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置しているノズルと異なるヘッダーに接続されたノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲に位置しているノズル群を含むことを特徴とする。
【0011】
この構成によると、軸受箱のある幅方向範囲に配置されたノズルが、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に配置された同群のノズルと異なるヘッダーに接続されているため、ヘッダーに供給する水量を調整することで、軸受箱のある幅方向範囲の冷却水量を、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片の幅方向の冷却を均一化することができる。したがって、軸受箱を通過した部位での凝固遅れをを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
本発明では、追加の水量制御やポンプが必要となり設備構成が複雑となるものの、ヘッダーに供給する水量等を調整することで、軸受箱のある幅方向範囲に設置されるノズルと、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に設置されるノズルの水量比を任意に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る冷却装置を備える連続鋳造機を模式的に示した図である。
【図2】図1の連続鋳造機の一部分を示す図である。
【図3】図2に示すロールスタンドを鋳造方向下流側から見た図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】図4のV−V線断面図である。
【図6】図2に示すロールスタンドに設置される冷却部のヘッダーの構成を示す図である。
【図7】ノズルチップを2方向から見た図である。
【図8】ノズルの混合部を3方向から見た図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る冷却装置を備える連続鋳造機の図4に相当する図である。
【図10】本発明の第3実施形態に係る冷却装置を備える連続鋳造機の図4に相当する図である。
【図11】第3実施形態の冷却装置のヘッダーの構成を示す図である。
【図12】実施例2、8の連続鋳造機を示す図である。
【図13】実施例3の連続鋳造機を示す図である。
【図14】比較例2の連続鋳造機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態の連続鋳造機1について説明する。本実施形態の連続鋳造機1は、厚板または薄板鋼板向け素材であるスラブを製造するための連続鋳造機1である。図1に示すように、連続鋳造機1は、浸漬ノズル2を介して溶鋼が注湯される矩形状の鋳型3と、鋳型3の直下から鋳造経路Qに沿って並設された複数のロール対5と、鋳造経路Qを通過する鋳片50を冷却する冷却装置20(図6参照)とを備えている。ロール対5は、鋳片50を挟んで対向配置される2つのロール6で構成される。また、ロール6には、駆動力を持たずスラブを支持するためのフリーロールと、スラブの支持及び引き抜きのための駆動ロールの2種類が存在する。冷却装置20は、鋳片50に対してミストを噴霧する複数のノズル31と、複数のノズル31に水と空気をそれぞれ供給するヘッダー40とを有する。
【0014】
本実施形態の連続鋳造機1は、垂直曲げ型の連続鋳造機であって、鋳造経路Qは、鋳型の直下からほぼ鉛直下方に延びる垂直領域と、緩やかに湾曲する曲げ領域と、ほぼ水平に延びる水平領域とを有している。
【0015】
この連続鋳造機1では、鋳型3へ注湯された溶鋼が鋳型3によって冷却(一次冷却)されることで、凝固シェル50aが形成される。これにより、外側に凝固シェル50aを有し、内部に未凝固部50bを有する鋳片50が形成される。鋳型3内の鋳片50は、ロール対5によって鋳型3から引き抜かれて、鋳造経路Qの下流側に送られながら、ノズル31から噴射されるミストによって冷却(二次冷却)される。鋳造経路Qを通過する鋳片50の内部では、凝固シェル50aが鋳片50の中心に向かって徐々に凝固成長していき、最終的に、内部まで完全に凝固した鋳片50が形成される。
【0016】
本実施形態の連続鋳造機1での鋳造速度(鋳片の引抜き速度)は、例えば0.70〜1.30[m/min.]である。また、鋳型3の直下から最下流ロールまでの区間の比水量(鋳片単位重量当たりに使用する冷却水量)は、0.5〜1.5[L/kg-steel]である。なお、比水量は、単位時間当たりの冷却水量[L/min.]を、単位時間当たりの鋳造鋳片重量[kg/min.]で除することで算出される。また、鋳型直下から最下流ロールまでの区間において、鋳片50の上面に対する冷却水量と、鋳片の下面に対する冷却水量との比は、1:0.5〜2.2である。
【0017】
連続鋳造機1は、複数のロールスタンド4を備えており、図2に示すように、ロール対5は、複数対ごとにロールスタンド4に設けられている。なお、図2は、鋳造経路Qの水平領域に設置されるロールスタンド4を示している。鋳造経路Qの鉛直領域と曲げ領域に設置されるロールスタンドも、図2に示すロールスタンド4とほぼ同様の構成である。
【0018】
図3に示すように、ロールスタンド4は、鋳片50の上側に配置されるロール6を支持する上フレーム8と、鋳片50の下側に配置されるロール6を支持する下フレーム9と、上下フレーム8、9を連結すると共に、上フレーム8を下フレーム9に対して上下方向に移動させるシリンダー10とを備えている。
【0019】
各ロール6の両端は、軸受けを介して軸受箱7aに支持されている。また、ロール6は、軸方向(鋳片幅方向)に2分割されており、その分割位置で軸受けを介して軸受箱7bに支持されている。このような分割型のロールを用いることにより、ロール6の撓みを抑制できると共に、軸受への負担を軽減できる。また、軸受箱7bは、鋳片50と接触しないように、ロール面よりも鋳片50から離れている。
【0020】
本実施形態では、軸受箱7bは、ロール6を軸方向に約2対5に2分割するような位置に配置されている。また、図4に示すように、鋳片50の下側に配置される複数のロール6の軸受箱7bは、千鳥状に配列している。つまり、軸受箱7bは、ロール1本おきに、鋳片幅方向について同じ位置に配置されている。本実施形態では、鋳型直下から最下流までの区間において、鋳片50の下側に配置される全てのロール6のうちの大部分(具体的にはフリーロール)の軸受箱7bが、図4と同様の千鳥状配列となっている。
【0021】
また、1つのロール対5を構成する2つのロール6の軸受箱7bは、左右対称な位置に配置されている(図3参照)。したがって、図示は省略するが、鋳片50の上側に配置されるロール6の軸受箱7bがある幅方向範囲は、鋳片50の下側に配置されるロール6の軸受箱7bがある幅方向範囲と同じである。また、鋳型直下から最下流までの区間において、鋳片50の上側に配置される全てのロール6のうちの大部分(具体的にはフリーロール)の軸受箱7bは、千鳥状配列となっている。
【0022】
次に、冷却装置20の詳細について説明する。
冷却装置20は、複数のロールスタンド4にそれぞれ設置された複数の冷却部で構成される。冷却装置20が備える複数の冷却部のうち、鋳型直下のロールスタンド4からメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンド4までの複数のロールスタンド4に設置される冷却部を、冷却部21とする。なお、メニスカス距離とは、鋳型3内に収容されている溶鋼の湯面の位置を起点とし、鋳造経路Qに沿った距離である。
【0023】
図2に示すように、冷却部21は、鋳片50の下側に配置された複数のノズル31と、鋳片50の上側に配置された複数のノズル31を有する。なお、図3は、ノズル31を省略して表示している。図4に示すように、ノズル31は、隣接するロール間において、鋳片幅方向に等間隔に並んで配置されている。図4は、鋳片50の下側に配置されたノズル31を表示している。図示は省略するが、鋳片50の上側に配置されたノズル31も同様に配置されている。鋳片幅方向に並列する複数のノズル31がノズル群30を構成している。したがって、冷却部21は、鋳片50の下側において隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群30と、鋳片50の上側において隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群30とを有する。
【0024】
また、図5および図6に示すように、冷却部21は、鋳片50の下側に配置される複数のノズル群30に接続されるヘッダー40と、鋳片50の上側に配置される複数のノズル群30に接続されるヘッダー40とを有する。
【0025】
本実施形態では、鋳片50の下側の複数のノズル群30およびヘッダー40と、鋳片50の上側の複数のノズル群30およびヘッダー40とは、上下対称で且つ左右対称に構成されている。そのため、以下、鋳片50の下側のノズル群30およびヘッダー40について説明し、鋳片50の上側のノズル群30およびヘッダー40の説明を省略する。
【0026】
図6に示すように、ヘッダー40は、ノズル31に水を供給する水ヘッダー41と、ノズル31に空気を供給する空気ヘッダー42とで構成されている。水ヘッダー41は、調整弁43を介して水ポンプ44に接続される。水ヘッダー41は、複数の水分岐管41aを有しており、各水分岐管41aは、各ノズル群30を構成する複数のノズル31に接続される。また、空気ヘッダー42は、調整弁45を介して空気ポンプ46に接続される。空気ヘッダー42は、複数の空気分岐管42aを有しており、各空気分岐管42aは、各ノズル群30を構成する複数のノズル31に接続される。
【0027】
図4に示すように、各ノズル群30は、鋳片幅方向に等間隔に並んだ6本または7本のノズル31で構成される。6本のノズル31を有するノズル群30と、7本のノズル31を有するノズル群30とは、鋳造方向に交互に配置されている。
【0028】
図4に示すように、軸受箱7bが存在する幅方向範囲を図4中左側から順にS1、S2とする。また、冷却部21が有する複数のノズル31のうち、範囲S1にその先端が位置するノズル31をノズル31B1とし、範囲S2にその先端が位置するノズル31をノズル31B2とし、範囲S1、S2にその先端が位置しないノズル31をノズル31とする。範囲S1にノズル31の先端が位置するとは、範囲S1にノズル31の後述する噴霧孔32aの中心が位置することをいう。図4および図6では、ノズル31B1、31B2を太線で表示し、ノズル31を細線で表示している。各ノズル群30は、1本のノズル31B1と、1本のノズル31B2と、4本または5本のノズル31で構成される。以下の説明において、ノズル31B1、ノズル31B2をまとめてノズル31と称する場合がある。
【0029】
図5に示すように、ノズル31は、ミストを噴霧するノズルチップ32と、水と空気とを混合する混合部33とを有する。図7に示すように、ノズルチップ32は、噴霧孔32aを1つだけ有する1孔型のノズルチップである。図8に示すように、混合部33は、水ヘッダー41の水分岐管41aから供給される水と、空気ヘッダー42の空気分岐管42aから供給される空気とを混合するためのものであって、混合部33は、水が通過する水オリフィス34と、空気が通過する空気オリフィス35とを有する。
【0030】
ノズル31B1とノズル31B2は同じ構成である。ノズル31(31B1、31B2)の水オリフィス34の内径は、ノズル31の水オリフィス34の内径よりも大きい。また、ノズル31の噴霧孔32aの径は、ノズル31の噴霧孔32aの径よりも大きい。冷却部21のノズル31は全て同じヘッダー40に接続されているため、ノズル31は、同群のノズル31よりも高水量のミストを噴霧する。
【0031】
また、冷却装置20が備える複数の冷却部のうち、冷却部21よりも下流側に配置される冷却部は、各ノズル群を構成する複数のノズル31の構成が全てノズル31と同じである。この冷却部のその他の構成は、冷却部21と同様である。
【0032】
鋳造経路Qを通過する鋳片50は、主に、ロール面との接触による抜熱と、ミスト冷却による抜熱によって冷却される。軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2では、鋳片50のロール面との接触による抜熱量が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲よりも少なくなる。
【0033】
本実施形態の冷却装置20では、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置されたノズル31B1、31B2が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置され且つ同一ヘッダーに接続されたノズル31よりも高水量を噴霧可能に構成されているため、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量を、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片50の幅方向の冷却を均一化することができる。したがって、軸受箱7bを通過した部位での凝固遅れを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
【0034】
また、本実施形態では、消耗品であるノズルチップ32および混合部33を交換するだけで実施できるため、追加の水量制御やポンプが不要であり、シンプルな設備構成で中心偏析のバラツキを抑制できる。
【0035】
また、鋳片冷却時の総熱抵抗θは、凝固シェル50aの熱伝達係数をλ、ロール接触とミストによる鋳片表面の熱伝達係数をhとすると、θ=(D/λ)+(1/h)で表される。メニスカス距離が15m以下の領域では、凝固シェル50aの厚みDが薄いため、鋳片50からの抜熱に対しては、凝固シェル50aの熱伝達抵抗(D/λ)よりも、鋳片50表面の熱伝達抵抗(1/h)が支配的となる。一方、メニスカス距離が15mを超える領域では、凝固シェル50aの厚みが厚くなるため、鋳片からの抜熱に対しては、鋳片表面の熱伝達抵抗(1/h)よりも、凝固シェル50aの熱伝達抵抗(D/λ)が支配的となる。そのため、メニスカス距離が15mを超える領域では、鋳片表面の熱伝達抵抗の変化(ロール接触とミストによる抜熱量の変化)は、凝固遅れにほとんど影響を及ぼさない。
【0036】
したがって、メニスカス距離が15m以下の領域において、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量を、範囲S1、S2以外の冷却水量よりも多くすることにより、充分に中心偏析のバラツキを抑制することができる。
また、メニスカス距離が15mを超える領域においては、冷却水量を幅方向に関して制御することは不要であり、範囲S1、S2の冷却水量を増加させて無駄に水量を多くする必要がない。
【0037】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態の連続鋳造機について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0038】
図9に示すように、本実施形態の連続鋳造機の冷却装置220は、鋳型直下のロールスタンド4からメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンド4までの複数のロールスタンド4に配置される冷却部221のノズル群の構成が、第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0039】
冷却部221は、鋳片50の下側に配置される複数のノズル群230と、鋳片50の上側に配置される、複数のノズル群230と上下対称に構成された複数のノズル群230とを有する。以下、ノズル群230について説明し、鋳片50の上側に配置されるノズル群の説明は省略する。
【0040】
ノズル群230は、鋳片幅方向に並んだ8本または9本のノズル231で構成される。8本のノズル31を有するノズル群230と、9本のノズル31を有するノズル群230とは、鋳造方向に交互に配置されている。
【0041】
冷却部221が有する複数のノズル231のうち、軸受箱7bのある幅方向範囲S1に、その先端が位置するノズル231をノズル231B1とし、軸受箱7bのある幅方向範囲S2に、その先端が位置するノズル231をノズル231B2とし、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に、その先端が位置しないノズル231をノズル231とする。なお、図9では、ノズル231B1、231B2を太線で表示し、ノズル231を細線で表示している。各ノズル群230は、2本のノズル231B1と、2本のノズル231B2と、4本または5本のノズル231で構成される。
【0042】
ノズル231B1、231B2、231の構成(噴霧孔の径、水オリフィスの内径)は、全て同じである。また、冷却部221のノズル231は全て同じヘッダー40に接続されているため、同群のノズル231B1、231B2、231の1本当たりの噴霧水量は全て同じである。
【0043】
また、各ノズル群230において、範囲S1に配置される2本のノズル231B1のピッチ(噴霧孔32aの中心の間隔)は、鋳片幅方向に隣接する2本のノズル231のピッチよりも狭くなっている。また、各ノズル群230において、範囲S1に配置される2本のノズル231B2のピッチは、ノズル231B1のピッチと同じであって、ノズル231のピッチよりも狭くなっている。したがって、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量は、範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くなる。言い換えると、範囲S1、S2は、範囲S1、S2の以外の範囲よりも強冷却される。
【0044】
本実施形態の冷却装置220では、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置された2つのノズル231のピッチが、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置され且つ同一ヘッダーに接続された2つのノズル231のピッチよりも狭いため、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量を、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片50の幅方向の冷却を均一化することができる。したがって、軸受箱7bを通過した部位での凝固遅れを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
【0045】
また、ヘッダーの構成を変更するだけで実施できるため、追加の水量制御やポンプが不要であり、シンプルな設備構成で中心偏析のバラツキを抑制できる。
【0046】
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態の連続鋳造機について説明する。但し、前記第1実施形態と同様の構成を有するものについては、同じ符号を用いて適宜その説明を省略する。
【0047】
図10および図11に示すように、本実施形態の連続鋳造機の冷却装置320は、鋳型直下のロールスタンド4からメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンド4までの複数のロールスタンド4に配置される冷却部321のノズル群とヘッダーの構成が、第1実施形態と異なっており、その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0048】
冷却部321は、鋳片50の下側に配置される複数のノズル群330および2つのヘッダー340、350と、鋳片50の上側に配置され、複数のノズル群230と上下対称に構成された複数のノズル群および2つのヘッダー(図示省略)とを有する。以下、ノズル群330およびヘッダー340、350について説明し、鋳片50の上側に配置されるノズル群およびヘッダーの説明は省略する。
【0049】
ノズル群330は、鋳片幅方向に等間隔に並んだ6本または7本のノズル331で構成される。6本のノズル331を有するノズル群330と、7本のノズル331を有するノズル群330とは、鋳造方向に交互に配置されている。
【0050】
図10に示すように、冷却部321が有する複数のノズル331のうち、軸受箱7bのある幅方向範囲S1に、その先端が位置するノズル331をノズル331B1とし、軸受箱7bのある幅方向範囲S2に、その先端が位置するノズル331をノズル331B2とし、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に、その先端が位置しないノズル331をノズル331とする。なお、図10および図11では、ノズル331B1、331B2を太線で表示し、ノズル331を細線で表示している。各ノズル群330は、1本のノズル331B1と、1本のノズル331B2と、4本または5本のノズル331で構成される。
【0051】
ノズル331B1、331B2、331の構成(噴霧孔の径、水オリフィスの内径)は、全て同じである。
【0052】
図11に示すように、ヘッダー340は、水ヘッダー341と空気ヘッダー342とで構成されている。水ヘッダー341は、調整弁343を介して水ポンプ344に接続される。水ヘッダー341は、複数の水分岐管341aを有しており、各水分岐管341aは、各ノズル群330が有する複数のノズル331に接続される。空気ヘッダー342は、調整弁345を介して空気ポンプ346に接続される。空気ヘッダー342は、複数の空気分岐管342aを有しており、各空気分岐管342aは、各ノズル群330が有する複数のノズル331に接続される。
【0053】
ヘッダー350は、水ヘッダー351と空気ヘッダー352とで構成されている。水ヘッダー351は、調整弁353を介して空気ポンプ354に接続される。水ヘッダー351は、複数の水分岐管351aを有しており、各水分岐管351aは、各ノズル群330が有するノズル331B1、331B2に接続される。空気ヘッダー352は、調整弁355を介して空気ポンプ356に接続される。空気ヘッダー352は、複数の空気分岐管352aを有しており、各空気分岐管352aは、各ノズル群330が有するノズル331B1、331B2に接続される。
【0054】
ヘッダー340、350にそれぞれ供給される水量は、ノズル331B1、331B2の1本当たりの噴霧水量が、ノズル331の1本当たりの噴霧水量よりも多くなるように設定される。したがって、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2は、範囲S1、S2の以外の範囲よりも強冷却される。
【0055】
本実施形態の冷却装置320では、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置されたノズル331B1、331B2が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置されたノズル331と異なるヘッダーに接続されているため、ヘッダーに供給する水量を調整することで、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量を、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くすることができる。つまり、ロール面との接触による抜熱量が少ない部位に対する冷却水量を増加させることができ、鋳片50の幅方向の冷却を均一化することができる。したがって、軸受箱7bを通過した部位での凝固遅れを抑制でき、スラブの幅方向の中心偏析のバラツキを抑制することができる。
【0056】
また、本実施形態では、追加の水量制御やポンプが必要となり、設備構成が複雑となるものの、ヘッダーに供給する水量等を調整することで、軸受箱のある幅方向範囲に設置されるノズルと、軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に設置されるノズルの水量比を任意に変更することができる。
【0057】
また、本実施形態では、ヘッダー340、350に供給する水量等を調整するだけで、ノズル群の構成を変更しなくても、ノズル331とノズル331の水量比を容易に変更することができる。
【0058】
以上、本発明の好適な実施形態として、第1〜第3実施形態を説明したが、上記実施形態は以下のように変更して実施することができる。
【0059】
上記第1実施形態では、ノズル群30は全て、同一ヘッダー40に接続された複数のノズル31で構成され、且つ、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置されたノズル31よりも高水量のミストを噴霧可能に構成されたノズル31が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置された構成となっているが、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量が、範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くなる構成であれば、この構成に限定されない。
つまり、軸受箱7bのある幅方向範囲S1に配置された複数のノズル31のうちの一部と、軸受箱7bのある幅方向範囲S2に配置された複数のノズル31のうちの一部が、それぞれ同群のノズル31よりも高水量のミストを噴霧可能に構成されていれば、他のノズル31は、同群のノズル31と同じ構成であってもよい。
【0060】
上記第2実施形態では、ノズル群230は全て、同一ヘッダー40に接続された複数のノズル31で構成され、且つ、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置された2つのノズル231よりも狭いピッチの2つのノズル231が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置された構成となっているが、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量が、範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くなる構成であれば、この構成に限定されない。
つまり、軸受箱7bのある幅方向範囲S1に配置された複数のノズル31のうちの一部と、軸受箱7bのある幅方向範囲S2に配置された複数のノズル31のうちの一部が、それぞれ同群のノズル31のピッチよりも狭いピッチで配置されていれば、他のノズル31は、同群のノズル31と同じピッチでもよい。
【0061】
上記第3実施形態では、ノズル群330は全て、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2以外の範囲に配置されたノズル331と異なるヘッダーに接続されたノズル331が、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2に配置された構成となっているが、軸受箱7bのある幅方向範囲S1、S2の冷却水量が、範囲S1、S2以外の範囲の冷却水量よりも多くなる構成であれば、この構成に限定されない。
つまり、軸受箱7bのある幅方向範囲S1に配置された複数のノズル31のうちの一部と、軸受箱7bのある幅方向範囲S2に配置された複数のノズル31のうちの一部が、それぞれ同群のノズル31と異なるヘッダーに接続されていれば、他のノズル31は、同群のノズル31と同じヘッダーに接続されていてもよい。
【0062】
上記第1〜第3実施形態では、鋳片幅方向に並んだノズルの本数は6〜9本であるが、この数に限定されるものではない。
【0063】
上記第1実施形態では、冷却部21が備える複数のノズル31は、全て同じ構成であるが、異なっていてもよい。例えば、複数のノズル31は、ノズル群30ごとに噴霧水量が異なるように構成されていてもよい。
【0064】
上記第1実施形態では、冷却部21が備える複数のノズル31は、全て同じ構成であるが、異なっていてもよい。例えば、複数のノズル31は、ノズル群30ごとに噴霧水量が異なるように構成されていてもよい。
【0065】
上記第2および第3実施形態では、冷却部221、321が備える複数のノズル231、331は全て同じ構成であるが、異なっていてもよい。例えば、ノズル231、331が、このノズル231、331と同群のノズル231、331より噴霧孔の径または水オリフィスの径が大きくてもよい。また、例えば、ノズル群230、330ごとに噴霧水量が異なるように構成されていてもよい。
【0066】
上記第2実施形態では、ノズル231のピッチは、全て同じであるが、異なっていてもよい。
【0067】
上記第2実施形態では、軸受箱7bがある幅方向範囲S1に、2本のノズル231B1が鋳片幅方向に並んで配置されているが、3本以上のノズル231B1が鋳片幅方向に並んで配置されていてもよい。
【0068】
上記第1および3実施形態では、ノズル群30、330を構成する複数のノズル31、331は等間隔に配置されているが、この構成に限定されない。例えば、上記第2実形態と同様に、軸受箱7bのある幅方向範囲に、ノズル31、331のピッチよりも狭いピッチで、2本以上のノズル31、331を配置してもよい。この場合、鋳片幅方向に並んだ複数のノズル31(331)のうちの一方が、同群のノズル31(331)より高水量噴霧可能に構成(または異なるヘッダーに接続)されていれば)、他方のノズル31(331)は同群のノズル31(331)と同じ構成(または同一ヘッダーに接続)であってもよい。
【0069】
上記第3実施形態では、1つの冷却部321の複数のノズル331は、1つのヘッダー340に接続されているが、冷却部321のノズル331が接続されるヘッダーの数は、2以上でもよい。例えば、ノズル群ごとに異なるヘッダーに接続されていてもよい。
【0070】
上記第3実施形態では、1つの冷却部321の複数のノズル331は、1つのヘッダー350に接続されているが、冷却部321のノズル331が接続されるヘッダーの数は、2以上でよい。
【0071】
第1および第2実施形態では、1つの冷却部は、ヘッダーを1つだけ有していないが、複数のヘッダーを有していてもよい。例えば、ノズル群ごとに異なるヘッダーに接続されていてもよい。
【0072】
上記第1〜第3実施形態では、ヘッダーは冷却部ごとに設けられている。つまり、1つのヘッダー40は、1つの冷却部のノズル群にのみ接続されているが、1つのヘッダーが複数の冷却部のノズル群に接続されていてもよい。
【0073】
上記第1〜第3実施形態では、鋳型直下のロールスタンド4からメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンド4までのロールスタンド4に冷却部21、221、321が配置されているが、メニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンド4よりも下流側のロールスタンド4に、冷却部21、221、321を設置してもよい。
【0074】
上記第1〜第3実施形態では、鋳片50の下側に設置される複数のノズル群およびヘッダーは、鋳片50の上側に設置される複数のノズル群およびヘッダーと上下対称に構成されているが、上下対称でなくてもよい。
【0075】
上記第1〜第3実施形態では、1つのロール対5を構成する2つのロール6の軸受箱7bは、左右対称な位置に配置されているが、対向する位置に配置されていてもよい。
【0076】
また、上記第1〜第3実施形態では、鋳片50の上側に設置されるロール6の軸受箱7bが存在する幅方向範囲と、鋳片50の下側に配置されるロール6の軸受箱7bが存在する幅方向範囲とが同じであるが、異なっていてもよい。この場合、鋳片上側のロールの軸受箱のある範囲の冷却水量が多くなるように、鋳片上側に配置されるノズルとヘッダーを構成し、鋳片下側のロールの軸受箱のある範囲の冷却水量が多くなるように、鋳片下側に配置されるノズルとヘッダーを構成する。
【0077】
上記実施形態では、ノズルには、噴霧孔32aを1つだけ有する1孔型のノズルチップ32が用いられているが(図7参照)、2つ以上の孔を有するノズルチップを用いてもよい。
【0078】
上記第1〜第3実施形態の連続鋳造機は、軸方向に2分割されたロール6が用いられているが、3分割以上されたロール6を用いてもよい。
【0079】
上記第1〜第3実施形態の連続鋳造機は、分割位置が左右対称の2本の2分割型ロールを鋳造方向に交互に配置している。つまり、分割位置が1種類のロールのみを用いているが、分割位置の異なる複数種類のロールを用いてもよい。この場合、軸受箱のある幅方向範囲であっても、軸受箱の数が少ない場合には、強冷却の対象としなくてよい。具体的には例えば、メニスカス距離15mの範囲について、任意の鋳片幅方向位置において、鋳造方向に並設されたロールの全本数に対する、その幅方向位置に軸受箱が存在する上ロールの本数の比率(軸受箱率)が0.2以下であれば、強冷却の対象としなくてよい。
【0080】
上記第1〜第3実施形態は、垂直曲げ型の連続鋳造機に本発明の冷却装置20を適用した一例であるが、曲げ型、または、垂直型の連続鋳造機に本発明を適用してもよい。
【実施例】
【0081】
次に、本発明の具体的な実施例と比較例について説明する。なお、実施例1〜8および比較例1、2において、軸受箱のある範囲に先端が位置するノズルをノズルBと称し、軸受箱のある範囲にに先端が位置しないノズルをノズルAと称する。
【0082】
<実施例1>
実施例1は、上述の第1実施形態の連続鋳造機(図1〜図8参照)と同様の構成の連続鋳造機を用いて、鋳片を鋳造した。ノズルBは、噴霧孔の径と水オリフィスの径が同群のノズルAよりも大きいものを用いており、同群のノズルA、Bが同じヘッダーに接続された場合に、ノズルBが同群のノズルAの2倍の水量を噴霧できるように構成した。ノズルBの先端中心(噴霧孔の中心)は、軸受箱の端から25mmの位置に配置した。ノズルBの1本当たりの噴霧水量W、ノズルAの1本当たりの噴霧水量W、水量比W/W、ノズルAのピッチは、表1に示す通りである。なお、水量比W/Wは、同じノズル群に属するノズルA、Bの水量比を示している。
【0083】
【表1】

【0084】
実施例1のその他の鋳造条件は下記の通りである。なお、下記の鋳造条件は実施例2〜8および比較例1、2も同じである。
【0085】
・炭素濃度:0.12mass%
・鋳型の上端の鋳片厚み方向の開口幅:290mm
・鋳片幅:2100mm
・鋳造速度:1.2m/min.
・鋳型直下から最下流ロールまでの比水量:1.2L/kg-steel
・鋳型直下のロールスタンドからメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンドまでのロールの径:150〜290mm
・鋳型直下のロールスタンドからメニスカス距離15mの位置に配置されたロールスタンドまでのロールのピッチ:180〜355mm
・軸受箱(ロール両端の軸受箱を除く)の幅:200mm
【0086】
<実施例2>
実施例2は、ロールの分割位置と冷却装置のノズル群の構成が実施例1と異なっており、その他の構成が実施例1と同様である連続鋳造機を用いた。図12に示すように、実施例2では、2本のノズルB(図12中太線で表示)と4本のノズルA(図12中細線で表示)とで構成されるノズル群と、7本のノズルA(図12中細線で表示)のみで構成されるノズル群とを、鋳造方向に交互に配置した。ロールは、軸方向に約2対3に2分割されたものを用いた。ノズルBの先端中心は、軸受箱の幅方向中央に配置した。表1に示すように、ノズルB、Aの噴霧水量W、W、およびノズルAのピッチは、実施例1と同じである。
【0087】
<実施例3>
実施例3は、ロールの分割位置が実施例1と異なっており、その他の構成が実施例1と同様である連続鋳造機を用いた。図13に示すように、実施例3では、2本のノズルB(図13中太線で表示)と4本のノズルA(図13中細線で表示)とで構成されるノズル群と、7本のノズルA(図13中細線で表示)のみで構成されるノズル群とを、鋳造方向に交互に配置した。ロールは、軸方向に約4対5に2分割されたものを用いた。ノズルBの先端中心は、軸受箱の端から25mmの位置に配置した。表1に示すように、ノズルB、Aの噴霧水量W、WおよびノズルAのピッチは、実施例1と同じである。
【0088】
<実施例4>
実施例4は、上述の第2実施形態の連続鋳造機(図9参照)と同様の構成の連続鋳造機を用いた。表1に示すように、ノズルBのピッチを300mm、ノズルAのピッチを100mmとした。鋳片幅方向に隣接する2本のノズルBの先端中心は、軸受箱の一端から25mmの位置と、軸受箱の他端から75mmの位置に配置した。ノズルB、Aは同じ構成である。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、Wは上記表1に示す通りである。
【0089】
<実施例5>
実施例5は、冷却装置のノズルBの構成が実施例4と異なっており、その他の構成が実施例4と同様である連続鋳造機を用いた。ノズルBは、噴霧孔の径と水オリフィスの径が同群のノズルAよりも大きいものを用いており、同群のノズルA、Bが同じヘッダーに接続された場合に、ノズルBが同群のノズルAの1.5倍の水量を噴霧できるように構成した。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、Wは上記表1に示す通りである。
【0090】
<実施例6>
実施例6は、上述の第3実施形態の連続鋳造機(図10および図11参照)と同様の構成の連続鋳造機を用いた。ノズルB、Aを異なるヘッダーに接続し、各ヘッダーにそれぞれ供給される水量を、ノズルBの1本当たりの噴霧水量が同群のノズルAの1本当たりの噴霧水量の2倍となるように設定した。また、ノズルBの先端中心は、軸受箱の端から25mmの位置に配置した。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、WおよびノズルAのピッチは上記表1に示す通りである。
【0091】
<実施例7>
実施例7は、冷却装置のノズルBの構成が実施例6と異なっており、その他の構成が実施例6と同様である連続鋳造機を用いた。ノズルBは、噴霧孔の径と水オリフィスの径が同群のノズルAよりも大きいものを用いた。そして、ノズルB、Aに接続されるヘッダーにそれぞれ供給される水量を、ノズルB1本当たりの噴霧水量が同群のノズルA1本当たりの噴霧水量の2倍となるように設定した。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、WおよびノズルAのピッチは上記表1に示す通りである。
【0092】
<実施例8>
実施例8は、ロールの分割位置と冷却装置のノズル群の構成が実施例6と異なっており、その他の構成が実施例6と同様である連続鋳造機を用いた。実施例8のノズル群の構成は、実施例2と同様(図12参照)と同様である。また、ノズルBは、実施例7と同様に、噴霧孔の径と水オリフィスの径がノズルAよりも大きいものを用いた。そして、ノズルB、Aに接続されるヘッダーにそれぞれ供給される水量を、ノズルB1本当たりの噴霧水量がノズルA1本当たりの噴霧水量の2倍となるように設定した。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、WおよびノズルAのピッチは上記表1に示す通りである。
【0093】
<比較例1>
比較例1は、ノズルBの構成が実施例1と異なっており、その他の構成が実施例1と同様である連続鋳造機を用いた。ノズルBは、ノズルAと同じ構成のものを用いた。ノズルB、Aの具体的な噴霧水量W、WおよびノズルAのピッチは上記表1に示す通りである。
【0094】
<比較例2>
比較例2は、ノズルB、Aの構成が実施例1と異なっており、その他の構成が実施例1とほぼ同様である連続鋳造機を用いた。図14に示すように、ノズルAのうち、軸受箱のある範囲に近接して配置されたノズルA1(図14中黒丸で表示)は、他のノズルA2(図14中細線の白丸で表示)の2倍の水量を噴霧可能に構成されたものを用いた。また、ノズルB(図14中太線で表示)は、ノズルA2と同じ構成のものを用いた。ノズルA1、A2、Bの1本当たりの噴霧水量およびノズルAのピッチは、表1に示す通りである。
【0095】
実施例1〜8および比較例1、2で鋳造された鋳片の中心偏析を以下の方法で調べた。
【0096】
第1に、鋳片を長手方向に対して垂直に切断した。第2に、Φ5mmのドリル刃を用いて、該切断面を腐食させて現れた中心偏析痕に沿って10mm間隔で深さ20mm程度穿孔し、複数の切粉試料を採取した。第3に、上記第2で得られた切粉試料の炭素含有量C[wt%]を燃焼赤外線吸収法により測定した。第4に、上記第3で測定した複数の切粉試料の炭素含有量Cのうち最も高い値をCMAX[wt%]として記録した。第5に、同断面で、鋳片表面から鋳片の厚みの1/4だけ内側の位置(中心偏析が存在しない部位)で、上記第2と同様の方法で切粉試料を採取した。第6に、上記第5で得られた切粉試料の炭素含有量C[wt%]を測定し、上記第4で記録されたCMAX[wt%]との比CMAX/Cを算出した。その結果を表1に示した。
【0097】
MAX/Cが1.1以下だった試験を「○」と、CMAX/Cが1.2を超えた試験を「×」と評価した。なお、CMAX/Cが1.1以下であれば、実用上、品質に問題がない最終製品を製造することができる。
【0098】
表1に示すように、実施例1〜8ではCMAX/Cが、1.1以下であって、中心偏析のバラツキが抑制されている。また、比較例1、2ではCMAX/Cが、1.1を超えており、中心偏析のバラツキが大きくなっている。
【符号の説明】
【0099】
1 連続鋳造機
4 ロールスタンド
5 ロール対
6 ロール
7a、7b 軸受箱
20 冷却装置
21 冷却部
30、230、330 ノズル群
31、231、331 ノズル
31、231、331 軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に配置されたノズル
31B1、31B2、231B1、231B2、331B1、331B2 軸受箱のある幅方向範囲に配置されたノズル
32 ノズルチップ
33 混合部
40、340、350 ヘッダー
41、341、351 水ヘッダー
42、342、352 空気ヘッダー
50 鋳片
S1、S2 軸受箱のある幅方向範囲

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、
鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、
鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、
前記複数のノズル群は、
同一ヘッダーに接続された複数のノズルで構成され、且つ、前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置しているノズルよりも高水量のミストを噴霧可能に構成されたノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲にのみ配置されているノズル群を含むことを特徴とする、スラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置。
【請求項2】
鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、
鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、
鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、
前記複数のノズル群は、
同一ヘッダーに接続された複数のノズルで構成され、且つ、前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置している2つのノズルよりも狭いピッチで配列された2つのノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲にのみ配置されているノズル群を含むことを特徴とする、スラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置。
【請求項3】
鋼のスラブの連続鋳造機に用いられる冷却装置であって、
鋳片を挟んで対向配置される2つのロールでそれぞれ構成され且つ鋳造方向に沿って並設された複数のロール対を備え、各ロールが鋳片幅方向に2〜4分割されると共に分割位置で軸受箱に支持されているロールスタンドに設置され、
鋳片幅方向に並設され且つミストを噴霧可能な複数のノズルでそれぞれ構成されており、鋳造方向に隣接するロール間にそれぞれ配置される複数のノズル群を備え、
前記複数のノズル群は、
前記軸受箱のある幅方向範囲以外の範囲に先端が位置しているノズルと異なるヘッダーに接続されたノズルの先端が、前記軸受箱のある幅方向範囲にのみ配置さえれているノズル群を含むことを特徴とする、スラブ幅方向の中心偏析のバラツキを抑制する連続鋳造機の冷却装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−27893(P2013−27893A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164552(P2011−164552)
【出願日】平成23年7月27日(2011.7.27)
【出願人】(000001199)株式会社神戸製鋼所 (5,860)
【Fターム(参考)】