説明

スラブ穿孔装置およびスラブ穿孔システム

【課題】運搬やレールからの退避が容易で、作業効率を高めることができるスラブ穿孔装置およびスラブ穿孔システムを提供する。
【解決手段】複数の主車輪12が2本のレールうちの一方のレール上を走行可能に設けられており、複数の固定スプリング13が一方のレールの幅方向に伸縮可能に各主車輪12を両側から挟んで基台11と各主車輪12との間に設けられており、1対のガイドローラ14が走行中に一方のレールを互いに両側から挟んで回転するよう基台11に設けられており、1対のロック部材16が一方のレールを互いに両側から挟むようそれぞれ一方のレールの側面に対して進退してその側面を押さえる固定位置と側面から離れる開放位置とに位置付け可能に基台11に設けられており、穿孔手段17が軌道スラブをその表面に対して垂直方向に穿孔可能に基台11に設けられていることでスラブ穿孔装置を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軌道スラブに孔をあけるためのスラブ穿孔装置およびスラブ穿孔システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、既設の鉄道軌道の耐震補強工事のため、既設の軌道スラブに補強工事用の孔をあける作業が行われている。この作業には、従来、鉄道用の2本のレールに架け渡され、レール上を走行して移動しながら、搭載したコンクリート用の穿孔装置(例えば、特許文献1参照)によりスラブの所定の位置に孔を開ける、トロリー式のスラブ穿孔装置が使用されている。このトロリー式のスラブ穿孔装置によれば、比較的大型のコンクリート用穿孔装置を搭載して、レール上を安定走行することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−121328号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のトロリー式のスラブ穿孔装置では、装置全体が重くなるため、移動用のトラックなどからレールまでの運搬や、レールから移動用のトラックまでの運搬に労力を要するという課題があった。また、レールから退避するのに手間がかかるため、安全のため予め作業時間を列車のダイヤに組み込み、その作業時間内に作業を行う必要がある。このため、作業効率を高めたくても、限界があるという課題があった。
【0005】
本発明は、このような課題に着目してなされたもので、運搬やレールからの退避が容易で、作業効率を高めることができるスラブ穿孔装置およびスラブ穿孔システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係るスラブ穿孔装置は、鉄道用の2本のレールが平行に敷設された軌道スラブに孔をあけるためのスラブ穿孔装置であって、基台と、前記2本のレールうちの一方のレール上を走行可能に設けられた複数の主車輪と、前記一方のレールの幅方向に伸縮可能に、各主車輪を両側から挟んで前記基台と各主車輪との間に設けられた複数の固定スプリングと、走行中に前記一方のレールを互いに両側から挟んで回転するよう、前記基台に設けられた1対のガイドローラと、前記一方のレールを互いに両側から挟むよう、それぞれ前記一方のレールの側面に対して進退し、前記側面を押さえる固定位置と前記側面から離れる開放位置とに位置付け可能に前記基台に設けられた1対のロック部材と、前記軌道スラブをその表面に対して垂直方向に穿孔可能に前記基台に設けられた穿孔手段とを、有することを特徴とする。
【0007】
本発明に係るスラブ穿孔装置は、鉄道用の2本のレールが平行に敷設された軌道スラブに孔をあけるため、以下のようにして使用される。まず、各主車輪を一方のレール上に載せて、一方のレール上を走行させて穿孔位置まで移動する。このとき、1対のガイドローラが、走行中に一方のレールを互いに両側から挟んで回転するよう基台に設けられているため、各主車輪が一方のレールから外れるのを防ぎ、一方のレール上をスムーズに走行することができる。また、一方のレールの幅方向に伸縮可能に、各主車輪を両側から挟んで基台と各主車輪との間に設けられた複数の固定スプリングにより、走行中であっても、基台に対して各主車輪を所定の位置に保持することができる。また、走行中に横方向に振動しても、各固定スプリングにより振動を吸収することができ、安定した走行を行うことができる。
【0008】
穿孔位置まで移動したならば、各ロック部材を固定位置に位置付け、各ロック部材により一方のレールの側面を押さえて、基台を一方のレールに固定する。固定後、穿孔手段により、軌道スラブをその表面に対して垂直方向に穿孔する。このとき、各ロック部材により基台を固定しているため、穿孔による振動で穿孔位置がずれるのを防ぐことができる。穿孔が終わったならば、各ロック部材を開放位置に位置付けて基台の固定を解除し、次の穿孔位置まで移動する。このとき、各ロック部材が一方のレールを両側から挟むようになっているため、各ロック部材を開放位置に位置付けることによりレールへの固定を確実に解除することができ、安全性が高い。こうして、レール上を移動しながら、次々と軌道スラブに孔をあけていくことができる。一方のレールから他方のレールに運搬して移動させることにより、他方のレール側でも穿孔を行うことができる。
【0009】
本発明に係るスラブ穿孔装置は、軽量の穿孔手段を使用することにより、装置全体を軽くすることができ、運搬を容易にすることができる。また、列車が来たときなどに、レールから退避するのも容易である。このため、作業時間を列車のダイヤに組み込まなくとも、列車の通過時にすばやく退避し、列車が通過しないときに作業を行うことができ、作業効率を高めることができる。本発明に係るスラブ穿孔装置は、一方のレールのみを使用して走行するため、トロリー式ではなく、諸車扱いとなるよう軽量化を図ったものである。
【0010】
本発明に係るスラブ穿孔装置で、穿孔手段は、水を使用せずに穿孔する乾式のものから成ることが好ましい。この場合、軌道スラブを穿孔するときに発生する切り屑が、周囲に流出したりしみ込んだりせず、周囲への環境負荷を軽減することができる。また、穿孔手段は、基台に対して上下方向にスライド可能で下方に伸びる回転ロッドと、回転ロッドの下端に設けられたビットとを有していることが好ましい。ビットは、ダイヤモンドビットから成ることが好ましい。ビットは、重量等が嵩む発電機を使用せずに済むよう、鉄道軌道に供給されている電力を利用して回転駆動可能に構成されていることが好ましい。基台と穿孔手段とは、人力で容易に運搬できるようそれぞれ分離・組立可能であることが好ましい。
【0011】
本発明に係るスラブ穿孔装置は、前記一方のレールの伸長方向に対して平行な前記軌道スラブの側面から所定の距離の位置に、前記穿孔手段を位置付け可能に、前記軌道スラブの側面に当接可能な基準部材を有することが好ましい。この場合、基準部材を軌道スラブの側面に当接させることにより、軌道スラブの側面から所定の距離の位置に穿孔手段を位置付けることができる。このため、一方のレールから常に同じ距離の位置に穿孔することができ、穿孔位置の位置出しを容易に行うことができる。
【0012】
本発明に係るスラブ穿孔装置は、前記一方のレールの両側で前記軌道スラブの上を走行可能に前記基台に設けられた1対の補助車輪を有することが好ましい。この場合、各補助車輪により一方のレールの両側で基台を支えるため、スムーズに走行することができる。
【0013】
本発明に係るスラブ穿孔装置で、前記穿孔手段は1対から成り、前記一方のレールの伸長方向に並んで配置され、互いに前記一方のレールの反対側の前記軌道スラブを穿孔可能に、それぞれ前記一方のレールの反対側で前記一方のレールの幅方向に移動するよう構成されていてもよい。この場合、各穿孔手段により、一方のレールを挟む両側で、軌道スラブに穿孔することができる。また、各穿孔手段をそれぞれ一方のレールの幅方向に移動させて、穿孔位置を調整することができる。
【0014】
本発明に係るスラブ穿孔装置で、前記穿孔手段は、全体または一部を覆うための防音性および防水性のカバーを有していることが好ましい。この場合、カバーで穿孔手段の全体または一部を覆うことにより、穿孔手段で穿孔するときの騒音を抑制することができる。また、雨天時にも、穿孔手段の電気系統に雨がかかって危険な状態になるのを防ぐことができる。
【0015】
本発明に係るスラブ穿孔システムは、本発明に係るスラブ穿孔装置と、前記穿孔手段による穿孔を閉塞可能な、撥水性かつ発泡性の素材から成る栓とを、有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るスラブ穿孔システムでは、穿孔手段による穿孔後、栓をしてその穿孔を閉塞する。これにより、穿孔に雨水などが入り込まないため、水の排出や乾燥などの作業を行うことなく、栓を取り外して直ぐに穿孔を利用することができ、穿孔を利用したその後の作業効率を高めることができる。栓が撥水性であるため、雨水などの浸入防止効果が高い。また、栓が発泡性であるため、軽く持ち運びが容易で、穴を開けたりすることにより穿孔から取り外しやすい。
【0017】
本発明に係るスラブ穿孔システムは、前記穿孔手段による穿孔の内側面に、前記穿孔と同軸で、前記穿孔よりも大きい内径を有する部分を形成可能に構成された削孔手段を有することが好ましい。この場合、穿孔にボルトやアンカー等を挿入し、コンクリート等で固定したとき、その引き抜き強度を高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、運搬やレールからの退避が容易で、作業効率を高めることができるスラブ穿孔装置およびスラブ穿孔システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態のスラブ穿孔装置を示す平面図である。
【図2】図1に示すスラブ穿孔装置の側面図である。
【図3】図1に示すスラブ穿孔装置の(a)ガイドローラを示す正面図、(b)ロック部材を示す正面図である。
【図4】本発明の実施の形態のスラブ穿孔システムの削孔後の孔を閉塞した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面に基づき、本発明の実施の形態について説明する。
図1乃至図3は、本発明の実施の形態のスラブ穿孔装置を示している。
図1乃至図3に示すように、スラブ穿孔装置10は、基台11と2つの主車輪12と4対の固定スプリング13と2対のガイドローラ14と2対の補助車輪15と2対のロック部材16と1対の穿孔手段17とを有している。スラブ穿孔装置10は、鉄道用の2本のレールが平行に敷設された軌道スラブ1に孔をあけるために使用される。なお、軌道スラブ1は、各レールの外側に、各レールの伸長方向に対して平行な側面を有している。
【0021】
図1および図2に示すように、基台11は、2つの五角形の枠体11aを接続した形状を成している。基台11は、各枠体11aがレールの伸長方向に対して平行に並ぶよう配置可能になっている。
【0022】
図1に示すように、各主車輪12は、それぞれ基台11の各枠体11aの内側に配置されている。各主車輪12は、2本のレールうちの一方のレール2上を走行可能に、車軸が互いに平行を成すよう、同一平面内に配置されている。
【0023】
各固定スプリング13は、各主車輪12に対して2対ずつ設けられている。各固定スプリング13は、各主車輪12の車軸の方向、すなわち一方のレール2の幅方向に伸縮可能に、各主車輪12を両側から挟んで基台11と各主車輪12との間に設けられている。これにより、各主車輪12は、各固定スプリング13を介して基台11に回転可能に取り付けられている。
【0024】
図1および図3(a)に示すように、各ガイドローラ14は、それぞれレールの伸長方向に沿った基台11の両端部に、1対ずつ設けられている。各対のガイドローラ14は、走行中に一方のレール2を互いに両側から挟んで回転するよう設けられている。
【0025】
図2に示すように、各補助車輪15は、それぞれレールの伸長方向に沿った基台11の両端部に1対ずつ設けられ、各対ごとに一方のレール2を挟む位置に配置されている。各補助車輪15は、各主車輪12がレール上を走行するとき、一方のレール2の両側で軌道スラブ1の上をレールと平行に走行するための、軌道スラブ1に対して斜めになる走行位置と、各主車輪12を一方のレール2より上方に上げて、一方のレール2から外しやすくするための、軌道スラブ1に対して垂直になる垂直位置とに、位置付け可能に構成されている。
【0026】
図1および図3(b)に示すように、各ロック部材16は、それぞれレールの伸長方向に沿った基台11の両端部に、1対ずつ設けられている。各対のロック部材16は、一方のレール2の両側面を押さえて挟み込むよう互いに対向して設けられている。各ロック部材16は、それぞれ一方のレール2の各側面に向かって、一方のレール2を押さえる固定位置と、一方のレール2から離れる開放位置との間で進退可能に構成されている。
【0027】
図1および図2に示すように、各穿孔手段17は、市販の軽量の電動ドリルから成っている。各穿孔手段17は、垂直方向の軸を中心として回転可能に、一方のレール2の伸長方向に並んで、それぞれ基台11の各枠体11aに配置されている。各穿孔手段17は、基台11に対して上下方向にスライド可能で下方に伸びる回転ロッドと、回転ロッドの下端に設けられたビットとを有している。ビットは、円筒状のダイヤモンドビットから成っている。また、各穿孔手段17は、重量等が嵩む発電機を使用せずに済むよう、鉄道軌道に供給されている保守電源設備を利用するための電源プラグを有している。
【0028】
各穿孔手段17は、互いに一方のレール2の反対側の軌道スラブ1を穿孔可能に、回転させたとき、それぞれのビットが互いに一方のレール2の反対側に移動するよう構成されている。これにより、各穿孔手段17のビットが、それぞれ一方のレール2の反対側で一方のレール2の幅方向に移動可能になっている。各穿孔手段17は、ビットがスライド方向に沿った軸周りに回転駆動して、軌道スラブ1をその表面に対して垂直方向に穿孔可能になっている。各穿孔手段17は、スイッチを入れると、回転ロッドが下降して、設定した深さまで軌道スラブ1を自動的に穿孔し、穿孔終了後、元の位置まで上昇して停止するようになっている。なお、各穿孔手段17は、穿孔方向に沿ってビットの中心位置を通るレーザー光を発光可能に設けられたレーザーポインタを有し、レーザー光を穿孔位置の中心位置に合わせることにより、穿孔位置を調整可能になっている。
【0029】
次に、作用について説明する。
スラブ穿孔装置10は、鉄道用の2本のレールが平行に敷設された軌道スラブ1に孔をあけるため、以下のようにして使用される。まず、各主車輪12を一方のレール2上に載せ、各補助車輪15を軌道スラブ1の上に載せ、各主車輪12により一方のレール2上を走行させて穿孔位置まで移動する。このとき、1対のガイドローラ14が、走行中に一方のレール2を互いに両側から挟んで回転するよう基台11に設けられているため、各主車輪12が一方のレール2から外れるのを防ぎ、一方のレール2上をスムーズに走行することができる。また、各補助車輪15により一方のレール2の両側で基台11を支えるため、よりスムーズに走行することができる。
【0030】
また、一方のレール2の幅方向に伸縮可能に、各主車輪12を両側から挟んで基台11と各主車輪12との間に設けられた各固定スプリング13により、走行中であっても、基台11に対して各主車輪12を所定の位置に保持することができる。走行中に横方向に振動しても、各固定スプリング13により振動を吸収することができ、安定した走行を行うことができる。これにより、開放位置に位置付けられている各ロック部材16が、走行中に一方のレール2の側面に当たるのを防ぐことができる。
【0031】
穿孔位置まで移動したならば、各ロック部材16を固定位置に位置付け、各ロック部材16により一方のレール2の側面を押さえて、基台11を一方のレール2に固定する。固定後、各穿孔手段17を穿孔位置に位置付ける。このとき、各穿孔手段17を回転させることにより、一方のレール2の幅方向での穿孔位置を調整することができる。各穿孔手段17により、軌道スラブ1をその表面に対して垂直方向に穿孔する。このとき、各ロック部材16により基台11を固定しているため、穿孔による振動で穿孔位置がずれるのを防ぐことができる。
【0032】
穿孔が終わったならば、各ロック部材16を開放位置に位置付けて基台11の固定を解除し、次の穿孔位置まで移動する。このとき、各ロック部材16が一方のレール2を両側から挟むようになっているため、各ロック部材16を開放位置に位置付けることによりレールへの固定を確実に解除することができ、安全性が高い。こうして、レール上を移動しながら、次々と軌道スラブ1に孔をあけていくことができる。また、一方のレール2から他方のレールに運搬して移動させることにより、他方のレール側でも穿孔を行うことができる。
【0033】
スラブ穿孔装置10は、軽量の穿孔手段17を使用するため、装置全体が軽く、運搬が容易である。基台11と各穿孔手段17とを分離することにより、人力でさらに容易に運搬することができる。このため、列車が来たときなどに、レールから退避するのも容易である。具体的な一例では、全重量が約70kgであり、2人の作業員で1分以内に退避することができる。このように、作業時間を列車のダイヤに組み込まなくとも、列車の通過時にすばやく退避し、列車が通過しないときに作業を行うことができ、作業効率を高めることができる。なお、スラブ穿孔装置10は、一方のレール2のみを使用して走行するため、トロリー式ではなく、諸車扱いとなるよう軽量化を図ったものである。
【0034】
各穿孔手段17が一方のレール2の伸長方向に並んで配置されているため、スラブ穿孔手段17の一方のレール2の幅方向での突出を少なくすることができ、コンパクトである。また、発電機を使用することなく、電源プラグにより鉄道軌道に供給されている保守電源設備を利用して各穿孔手段17を稼働することができる。このため、発電機からの排気ガスや騒音が発生せず、近隣の民家などへの影響を減らすことができる。また、トンネル内で作業を行う場合にも、排気ガスや騒音などによる作業員の人体への影響を減らすことができる。
【0035】
なお、スラブ穿孔装置10は、一方のレール2の伸長方向に対して平行な軌道スラブ1の側面から所定の距離の位置に、穿孔手段17を位置付け可能に、軌道スラブ1の側面に当接可能な基準部材を有していてもよい。この場合、基準部材を軌道スラブ1の側面に当接させることにより、軌道スラブ1の側面から所定の距離の位置に穿孔手段17を位置付けることができる。このため、一方のレール2から常に同じ距離の位置に穿孔することができ、穿孔位置の位置出しを容易に行うことができる。
【0036】
また、各穿孔手段17は、回転ロッドを回転させるための電動モータを覆う、防音性および防水性の着脱可能なカバーを有していてもよい。この場合、カバーで電動モータを覆うことにより、穿孔手段17で穿孔するときに電動モータから発する騒音を抑制することができ、夜間であっても騒音により地域住民に迷惑をかけるのを防ぐことができる。また、雨天時にも、電動モータに雨が入り込んで危険な状態になるのを防ぐことができる。カバーは、一例では、ジャバラ式で、角柱または円柱形状を成し、外面がナイロンなどの防水性の素材から成り、その内側に吸音材が取り付けられている。さらに、各穿孔手段17は、ビットおよび穿孔口を覆う、防音性の着脱可能な防音カバーを有していてもよい。この場合にも、防音カバーでビットおよび穿孔口を覆うことにより、穿孔手段17で穿孔するときの切削音を抑制することができ、夜間であっても騒音により地域住民に迷惑をかけるのを防ぐことができる。防音カバーは、一例では、断面が台形状を成し、外面がナイロンなどの防水性の素材から成っている。
【0037】
図4に示すように、本発明の実施の形態のスラブ穿孔システムは、スラブ穿孔装置10と削孔手段(図示せず)と栓21とを有している。
削孔手段は、スラブ穿孔装置10の穿孔手段17による穿孔3の内側面に、穿孔と同軸で、穿孔3よりも大きい内径を有する部分4を形成可能に構成されている。栓21は、撥水性かつ発泡性の素材から成り、穿孔手段17による穿孔3を閉塞可能な大きさを有している。
【0038】
本発明の実施の形態のスラブ穿孔システムでは、スラブ穿孔装置10の穿孔手段17による穿孔後、削孔手段により削孔を行い、栓21をしてその穿孔3を閉塞する。これにより、穿孔3に雨水などが入り込まないため、水の排出や乾燥、さらに冬期には氷の融解などの作業を行うことなく、栓21を取り外して直ぐに穿孔3を利用することができる。このため、穿孔3を利用したその後の作業効率を高めることができる。栓21が撥水性であるため、雨水などの浸入防止効果が高い。また、栓21が発泡性であるため、軽く持ち運びが容易で、コルク抜きなどの道具を使用することにより、穿孔3から取り外しやすい。
【0039】
削孔手段により削孔を行った孔にボルトやアンカー等を挿入し、コンクリート等で固定すると、削孔手段による削孔を行わない場合に比べて、その引き抜き強度を高めることができる。具体的な一例では、穿孔手段17による内径52mm、深さ130mmの穿孔を行った後、コンクリートで固定したときの引き抜き強度が約3.8tであったのに対し、穿孔後さらに削孔手段により削孔したときの引き抜き強度は約12tであり、削孔手段の削孔により約3倍の強度が得られた。
【符号の説明】
【0040】
1 軌道スラブ
2 一方のレール
3 穿孔
10 スラブ穿孔装置
11 基台
12 主車輪
13 固定スプリング
14 ガイドローラ
15 補助車輪
16 ロック部材
17 穿孔手段
21 栓


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道用の2本のレールが平行に敷設された軌道スラブに孔をあけるためのスラブ穿孔装置であって、
基台と、
前記2本のレールうちの一方のレール上を走行可能に設けられた複数の主車輪と、
前記一方のレールの幅方向に伸縮可能に、各主車輪を両側から挟んで前記基台と各主車輪との間に設けられた複数の固定スプリングと、
走行中に前記一方のレールを互いに両側から挟んで回転するよう、前記基台に設けられた1対のガイドローラと、
前記一方のレールを互いに両側から挟むよう、それぞれ前記一方のレールの側面に対して進退し、前記側面を押さえる固定位置と前記側面から離れる開放位置とに位置付け可能に前記基台に設けられた1対のロック部材と、
前記軌道スラブをその表面に対して垂直方向に穿孔可能に前記基台に設けられた穿孔手段とを、
有することを特徴とするスラブ穿孔装置。
【請求項2】
前記一方のレールの伸長方向に対して平行な前記軌道スラブの側面から所定の距離の位置に、前記穿孔手段を位置付け可能に、前記軌道スラブの側面に当接可能な基準部材を有することを、特徴とする請求項1記載のスラブ穿孔装置。
【請求項3】
前記一方のレールの両側で前記軌道スラブの上を走行可能に前記基台に設けられた1対の補助車輪を有することを、特徴とする請求項1または2記載のスラブ穿孔装置。
【請求項4】
前記穿孔手段は1対から成り、前記一方のレールの伸長方向に並んで配置され、互いに前記一方のレールの反対側の前記軌道スラブを穿孔可能に、それぞれ前記一方のレールの反対側で前記一方のレールの幅方向に移動するよう構成されていることを、特徴とする請求項1、2または3記載のスラブ穿孔装置。
【請求項5】
前記穿孔手段は、全体または一部を覆うための防音性および防水性のカバーを有していることを、特徴とする請求項1、2、3または4記載のスラブ穿孔装置。
【請求項6】
請求項1、2、3、4または5記載のスラブ穿孔装置と、
前記穿孔手段による穿孔を閉塞可能な、撥水性かつ発泡性の素材から成る栓とを、
有することを特徴とするスラブ穿孔システム。
【請求項7】
前記穿孔手段による穿孔の内側面に、前記穿孔と同軸で、前記穿孔よりも大きい内径を有する部分を形成可能に構成された削孔手段を有することを、特徴とする請求項6記載のスラブ穿孔システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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