説明

スラリーを装填可能な電気起爆装置

【課題】スラリーを装填可能な電気起爆装置を提供する。
【解決手段】火工材料38スラリーは、起爆装置2中に装填される。少なくとも一つの導電ピン30を有するヘッダ22並びに同ヘッダ及び同ピン間にある架橋ワイヤ34を備えた点火アセンブリは、同架橋ワイヤが起爆装置の火工材料と適切に接続されるように据え付けられる。別の態様において、ヘッダの別の電気接続部としてシェルが設けられ、同接続部は、曲げ接続あるいは溶接接続によってヘッダに接合され、更に火工材料の含まれた装填カップとシェルを接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気起爆装置の分野に関し、より詳細には、スラリーを装填可能な電気起爆装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気起爆装置は、広く種々の用途に使用される。これらの起爆装置では、通常、適切な時に火工材料を点火するために、各種ケーシング内に包含された火工材料及び架橋ワイヤ等が使用される。架橋ワイヤは、典型的には火工材料と接続され、閉電気回路の一部である。従って、電流が架橋ワイヤを流れると、同架橋ワイヤが加熱し、火工材料が点火される。これら火工材料の燃焼は、種々の用途に使用される。
【0003】
電気起爆装置は、例えば自動車の膨張式安全装置においては、高い確実性をもってしばしば使用される。すなわち、この種の起爆装置は、通常では、誤作動した場合、人体にとって危険であるので、人体に対する安全性が重要であるシステムの一部といえる。電気起爆装置の性能にとって重要な要因として、架橋ワイヤと火工材料間の適切な接続を維持すること(例えば、点火するために両者の接触が良好であること)、及び電気点火回路を閉じた状態に維持する(例えば、架橋ワイヤが切断する危険性を低減するため)ための架橋ワイヤの構造的完全性が挙げられる。
【0004】
高い信頼性をもって使用される電気起爆装置の高度な「品質管理」面における必要性に加え、この種の起爆装置の製造に関する適切な安全基準を維持することも必要である。電気起爆装置に使用される火工材料は、この種の起爆装置の製造において、安全性に関する問題が存在する場合がある。例えば、火工材料の一つ以上の個々の成分は、一つ以上の形状にて取り扱うことが危険な場合が有り得る(例えば、ある成分が粉末あるいは顆粒状にて爆発の危険性が高い場合)。更に、火工材料を調製する方法においても、人体に対する安全性に関する問題が存在する(例えば、乾燥状態にて一つ以上の成分を混合すること、及び取り扱うことが危険な場合)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的はスラリーを装填可能な電気起爆装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するための本発明の一つの態様は電気起爆装置に関する。起爆装置は、適切な火工材料の入れられた装填ホルダ(例えば、カップ形状)を備える。ヘッダは、装填ホルダの少なくとも一部に配置され、同ヘッダを貫通して延び、かつ電気絶縁体によって同ヘッダから絶縁された少なくとも一つの導電ピンを有する。ピンは、ヘッダに一つの電気接続部を提供する。
【0007】
架橋ワイヤは、ヘッダの火工材料と相互に作用する面上に配置され、ピン及びヘッダを電気的に接続するために、同ピン及びヘッダに装着される。ピン及び架橋ワイヤを流れる電流が架橋ワイヤを加熱し、火工材料を点火させる。電気回路を完成し、かつ起爆装置に別の電気接続部を提供するために、導電性ハウジングあるいはシェルがヘッダに接続される。この電気接続部は、ヘッダ中に環状の溝が設けられ、その中にシェルの端部が据え付けられ、(例えば、同シェル上に折り重ねられたシェルの一部を含む)、かつシェル上へヘッダを折り曲げることによって得られるクリンプ接合部によって提供される。それにより、ヘッダ及びシェル接続部間の望ましい「強固な」接続が得られる。このハウジングあるいはシェルはまた、ヘッダ及び装填ホルダに同時に溶接されたフランジを有するリングであり得る(例えば、これら三つの部材が単一の環あるいは円周溶接によって連結されるような場合)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に、図を参照して、本発明の各種の特徴を詳細に説明する。図1に示す電気起爆装置2は、これを所望の構造物(例えば、自動車用膨張式安全装置のインフレータ)に装着するための適切な形状を有するアダプタ6を備えている。起爆装置2は、適切な火工材料38を含む金属(例えば、ステンレス鋼)製装填ホルダ即ちカップ14を有する。装填カップ14の開放端には金属ヘッダ22が配置され、火工材料38の上面に隣接している。ヘッダ22はまた、実質的に平坦な上面24a及び下面24bと略円筒形状の外壁25とを有する。ヘッダ22の中央には開口部が設けられ、この開口部には同軸上に配置されると共に中央に配置され、電気的に絶縁された導電ピン30が収容されている。ピン30とヘッダ22との間には、ガラス対金属のシール26が備えられている。
【0009】
ピン30の端部は架橋ワイヤ34に相互に連結されている。架橋ワイヤ34はピン30から延び、ガラス対金属のシール26の上方を通過し、ヘッダ22の上面24aに係合している。架橋ワイヤ34は、ピン30及びヘッダ22のそれぞれに溶接される。ヘッダ22の下面24bには金属リング18が溶接され、閉電気回路を完結させている。アダプタ6を装填カップ14/ヘッダ22/リング18から絶縁するため、アダプタ6とこれらの部材との間にナイロンインシュレータスリーブ10が配置されている。操作時には電流がピン30に流れ、架橋ワイヤ34を介してヘッダ22に至ることにより、更にリング18に至って架橋ワイヤ34の温度を上昇させて火工材料38を点火する。
【0010】
起爆装置2に関して留意すべき多くの特徴がある。起爆装置2は、人体の安全性に関する応用等、高い信頼性に基づく応用に適している。また、ヘッダ22は圧縮成型及び圧印加工により形成される。更に、装填カップ14内における火工材料38の(中心軸線に沿った)長さと火工材料38の直径との比率は、約0.5:1を上回る必要はなく、多くの場合は約0.25:1未満でよい。従って起爆装置2は同軸上に配置された単一のピン30を備え、これにより、起爆装置2が装着時に所定の”角度”位置に配置されなければならない必要性が軽減され、製造作業中に”抗回転”構造を有する必要性も軽減される。
【0011】
スラリーを装填可能な電気起爆装置の別の実施形態を図4〜5に示す。起爆装置74は、適切な火工材料102を収容する金属製装填ホルダ即ちカップ78を備えている。装填カップ78の開放端には金属ヘッダ82が配置され、火工材料102の上面に隣接している。ヘッダ82の中央には開口部が設けられ、この開口部には同軸上に配置されると共に中央に配置され、電気的に絶縁された導電ピン94が収容されている。ヘッダ82とピン94との間には、それらの間を絶縁するためのガラス対金属のシール90が備えられている。
【0012】
ピン94の端部は架橋ワイヤ98に相互に連結されている。架橋ワイヤ98はピン94から延び、ガラス対金属のシール90の上方を通過し、ヘッダ82の上面に係合している。同上面は火工材料102に接続されると共に、ほぼ平坦な形状を有する。架橋ワイヤ98は、ピン94及びヘッダ82のそれぞれに溶接される。従って、電流はピン94を通り、架橋ワイヤ98を介してガラス対金属のシール90を越えて流れ、火工材料102の温度を上昇させて点火させ、ヘッダ82の本体に至る。ヘッダ82に接続されたシェル86によって電気回路は完成される。ピン94及びシェル86により、起爆装置74のための2つの電気的接続が供与されるが、いずれも、起爆装置74を特定の角度に基づいて位置決めする必要はない。
【0013】
シェル86は、縁を曲げてヘッダ82に連結されている。シェル86の端部88は折り曲げられてシェル86と重なり、ヘッダ82に形成されたスロット80内に配置されている。スロット80内にシェル86が配置された状態で、ヘッダ82の端部84は、中央に配置されたピン94に向かって、内方に折り曲げられている。同様に、装填カップ78の端部は放射方向内方に偏向され、円周状の溶接114によってヘッダ82に取着されている。
【0014】
図5には、起爆装置74における前述の部分の概略のみを示す。同図に示すように、起爆装置74はまた、これを所望の構造物(例えば、自動車用膨張式安全装置のインフレータ)に搭載するため、適切な形状を有するアダプタ106を備え得る。更に、装填カップ78/ヘッダ82とアダプタ106とを絶縁するため、これらの間に、ナイロンインシュレータスリーブ110が設けられる。また、装填カップ78の端部を電気的に絶縁するために、装填カップ78の上部にカップ状スリーブ118が設けられる。
【0015】
スラリーを装填可能な電気起爆装置のその他の実施形態を図6〜7に示す。起爆装置124は、適切な火工材料152を収容する金属製装填ホルダ即ちカップ128を備えている。装填カップ128の開放端には金属ヘッダ132が配置され、火工材料152の上面に隣接している。ヘッダ132の中央には開口部が設けられ、この開口部には同軸上に配置されると共に中央に配置され、電気的に絶縁された導電ピン144が収容されている。ピン144とヘッダ132との間を絶縁するため、これらの間にはガラス対金属のシール140が備えられている。
ピン144の端部は架橋ワイヤ148に相互に連結されている。架橋ワイヤ148はピン144から延び、ガラス対金属のシール140の上方を通過し、ヘッダ132の表面に係合している。同表面は火工材料152に連結されると共に、ほぼ平坦な形状を有する。架橋ワイヤ148は、ピン144及びヘッダ132のそれぞれに溶接され得る。従って、電流はピン144を通り、架橋ワイヤ148を介してガラス対金属のシール140を越えて流れ、火工材料152の温度を上昇させて点火させ、ヘッダ132の本体に至る。ヘッダ132及び装填カップ128の両方に接続されたシェル136によって電気回路は完成される。ピン144及びシェル136により、起爆装置124のための2つの電気的接続が供与されるが、いずれも、起爆装置124または対応する外部のコネクタをピン144の中心軸線の周りに特定の角度で位置決めする必要はない。
【0016】
シェル136は、環状即ち円周状の溶接164によって、装填カップ128及びヘッダ132に、それぞれ相互に連結されている。シェル136の端部138は、その側壁134にほぼ垂直に配置され、フランジとして特徴付けられ得る。
端部138は、ヘッダ132の端部及び装填カップ128の端部の両方に隣接し、この結果、これら3つの要素は、単一の溶接164により相互に連結される。
図7には、起爆装置124における前述の部分を示す。同図に示すように、起爆装置124はまた、これを所望の構造物(例えば、自動車用膨張式安全装置のインフレータ)に搭載するため、適切な形状を有するアダプタ156を備え得る。更に、装填カップ128/ヘッダ132からアダプタ156を絶縁するため、これらの間に、ナイロンインシュレータスリーブ160が設けられ得る。また、装填カップ128の端部を電気的に絶縁するために、その装填カップ128の上方にカップ状のスリーブ160が設けられ得る。
図1に示す起爆装置2の火工材料38は、スラリーとして装填可能であり、起爆装置74の火工材料102及び起爆装置124の火工材料152についても同様ある。便宜上、本発明におけるスラリー装填を起爆装置2に関して説明する。
一般的に、燃料スラリー及び酸化剤スラリーは別個に調製され、使用時に混合されて火工材料スラリーとして調製されることが好ましい。この火工材料スラリーは、次に、装填カップ14に装填される。通常、火工材料スラリーは、乾燥されて火工材料38となる。組み立てられた点火アセンブリ(例えば、ピン30に溶接された架橋ワイヤ34を伴うヘッダ22)は、架橋ワイヤ34と火工材料38とを適切に接続するように配置される。このように組み立てられた点火アセンブリは、事実上、装填カップ14内にて火工材料38を圧縮するために用いられる。ヘッダ22とカップ14との相互連結が完了するまで、このような圧縮は保持される。
【0017】
図2に示すように、燃料スラリーはスラリーステーション42にて調製され、ここでは単純な懸濁液(例えば、燃料スラリー中に懸濁され、ほぼ均質に分配された固形燃料)である。一実施形態では、燃料スラリーはジルコニウムを基剤とし、約100部のジルコニウム、約66.7部のRDX(ヘキサヒドロトリニトロトリアジン)、約0.5部のHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、及び約40部のIPA(イソプロピルアルコール)を含む。ジルコニウムは、起爆装置2の作動により生じる燃焼反応(以下に述べる酸化剤スラリー中の過塩素酸カリウムとの反応)における燃料であり、燃料スラリー中に懸濁されている。第2の実施形態は、100部のジルコニウム、0.2部のHPC、20部のIPAである。燃料スラリーに用いられ得るその他の燃料には、チタン、金属水素化物、ホウ素、アルミニウム、ハフニウム及びマグネシウムがある。RDXもまた、起爆装置2(例えば、”内部”ブースタ)の作動に際して、高ガス出力または圧力サージをもたらす燃料であり、同様に燃料スラリーに懸濁されている。燃料スラリーに用いられ得るその他のブースタには、HMX(シクロテトラメチレンテトラニトラミン)、PETN、ニトログアニジン、5−アミノテトラゾール、及びセルロース化合物、ポリエチレン、炭素等の非爆発性有機材料がある。
【0018】
HPCは起爆装置2内における火工材料38のための結合剤であり、燃料スラリーに所望の粘度をもたらし、また、以下に更に詳細に述べるように、乾燥されて火工材料38とされたとき、火工材料スラリーの収縮を減少させる。現在、本発明においてはグレードアクアロン(Grade Aqualon)MV HPCが用いられている。燃料スラリーに用いられ得るその他の結合剤には、その他のセルロース化合物、及びその他の溶剤中に分散可能な粘度形成添加剤(ポリマー類またはフュームドシリカ等の高表面積材料)がある。IPAは溶剤であり、通常、ジルコニウム及びRDXがIPAに加えられる前に、まずHPCがIPAに溶解される。燃料スラリーに用いられ得るその他の溶剤には、その他のアルコール、エステル、水及びケトン並びにこれらの物質における種々の組み合わせがある。
【0019】
本発明の目的のため、燃料(例えば2ミクロンのジルコニウム粉末)、ブースタ(例えば粒径5ミクロンのRDX粉末)、及び結合剤は粉末の形態であり得る。燃料、ブースタ及び結合剤はそれぞれ、スラリーステーション42にて重量を測定され、溶剤と適切に混合される。前述のように、最初にHPCをIPAに溶解することが好ましい。その後、ジルコニウム及びRDXがIPA中に混合され得る。
【0020】
火工材料スラリーの粘度、従って燃料スラリーの粘度は、起爆装置2へのスラリー装填に関し、1つ以上の観点において重要である。例えば、火工材料スラリーの粘度は、装填カップ14への火工材料スラリーの装填、火工材料スラリー中の固体(例えば燃料及び酸化剤)の分布、火工材料の乾燥の状態(例えば、収縮及び/またはひび割れの度合い)、及びスラリー装填の際の装填カップ14内に収容される火工材料38の量の制御の度合いに影響を及ぼす。燃料スラリーの粘度は通常、約500,000センチポアズより大きい。更に詳細には、通常、約800,000センチポアズと約2,000,000センチポアズとの間である。
【0021】
多くの変数が燃料スラリーの粘度に影響を及ぼす。一般的に、過量の溶剤(例えばIPA)が燃料スラリーに用いられた場合、燃料スラリーの粘度は所望の値より低くなる。このような”所望の値より低い”粘度によって、燃料スラリー中において望ましくない度合いの固体分離が生じ、以下に記載する方法により乾燥されたとき、火工材料には望ましくない度合いの収縮が生じる。燃料スラリーに用いられる溶剤が過度に少量であった場合、燃料スラリーは過剰な粘性を有し、プレスドライング(燃料スラリーが押し出されたとき、溶剤が滲み出すこと)の可能性が生じる。過量の結合剤(例えばHPC)が用いられた場合、燃料スラリーに対して、過度に少量の溶剤が用いられた場合と類似した影響がもたらされる。
一方、過度に少量の結合剤(例えばHPC)が用いられた場合、燃料スラリーに対して、過量の溶剤が用いられた場合と類似した影響がもたらされる。当然ながら、燃料スラリー中に懸濁された燃料の量もまた粘度に対する影響を有するが、燃料スラリー中の燃料の量は火工材料38における所望の酸化剤対燃料の比率を達成することに関連していることから、これは、燃料スラリーの粘度を制御するために用いられる主たる変数ではない。火工材料のための酸化剤対燃料の比率は、通常、約70:30と約30:70との間である。
【0022】
図2に示すように、酸化剤スラリーはスラリーステーション46にて調製され得る。一実施形態では、酸化剤スラリーは過塩素酸カリウムを基剤とし、約80重量%の過塩素酸カリウム、約19.6重量%のIPA(イソプロピルアルコール)、約0.3重量%のHPC(ヒドロキシプロピルセルロース)、及び約0.1重量%のCab−O−Sil(商標名)を含む。過塩素酸カリウムは、起爆装置2の作動によって生じる燃焼反応(燃料スラリーからのジルコニウム及びRDXの反応)のための酸化剤である。酸化剤スラリーに用いられ得るその他の酸化剤は、金属硝酸塩及び金属塩素酸塩を含む。HPC及びIPAは燃料スラリーについて述べた機能と同様の機能を有する。Cab−O−Sil(商標名)は過塩素酸塩が互いに膠着することを防止すると共に、粘度にも影響を及ぼす。従って、Cab−O−Sil(商標名)は、浸潤剤/粘度増加剤として特徴付けられ得る。一実施形態では、EH−5級Cab−O−Sil(商標名)が用いられる。Cab−O−Sil(商標名)の適切な代替物質としては、水素結合力を有するその他の高表面積材料が挙げられる。
【0023】
本発明の目的のため、酸化剤(例えば5ミクロンの過塩素酸カリウム粉末)、結合剤(例えばHPC粉末)、及び浸潤剤/粘度増加剤(例えばCab−O−Sil(商標名))は粉末の形態であり得る。酸化剤、結合剤及び浸潤剤/粘度増加剤は、それぞれ、スラリーステーション46にて乾燥重量を測定される。燃料スラリーの場合と同様に、最初にHPCをIPAに溶解し、その後、過塩素酸カリウム及びCab−O−Sil(商標名)を同時に、IPA中に溶解することが好ましい。火工材料スラリーの粘度、即ち酸化剤スラリーの粘度は、やはり前述した種々の要因に影響を及ぼす。一実施形態では、酸化剤スラリーの粘度は通常、約500,000センチポアズより大きい。更に詳細には、通常、約800,000センチポアズと約2,000,000センチポアズとの間である。
【0024】
燃料スラリー及び酸化剤スラリーは別々に調製された後、それぞれ遠心分離される(例えば、空気泡をそこから除去するため)。燃料スラリーは遠心分離ステーション50に供給され、約30秒から約5分までの間、約50”g”から約500”g”までの遠心分離力に曝される。一方、酸化剤スラリーは遠心分離ステーション54に供給され、約30秒から約5分までの間、約50”g”から約500”g”までの遠心分離力に曝される。
【0025】
図2に示すように、遠心分離後、燃料スラリー及び酸化剤スラリーは共に、混合ステーション58にて混合され、均質な火工材料スラリーとして調製される(例えば、火工材料スラリー中に、固体燃料及び酸化剤を均質に分配する)ことが好ましい。火工材料スラリーの粘度は、約500,000センチポアズより大きいことが好ましく、約800,000センチポアズと約2,000,000センチポアズとの間にあれば更に好ましい。一実施形態では、混合ステーション58は固定ミキサ(例えば、10−30エレメントから成る固定ミキサ)である。固定ミキサにより所望の均質度が火工材料に付与されると共に、一度に調製される火工材料スラリーの量が最小になる(例えば、本発明の1つの観点において、約20グラム以下の火工材料が生成中に混合される)。また、燃料スラリー及び酸化剤スラリーは混合ステーション58に連続的に供給されると共に、酸化剤対燃料の比率を所望の数値(例えば、約1:3と約3:1との間)とするように、混合ステーション58に供給される燃料スラリーと酸化剤スラリーとの割合を調整することが可能になる。
【0026】
火工材料は調製された後、火工材料スラリー装填ステーション62に供給され、そこで、適切な量の火工材料スラリーが起爆装置2に、更に詳細には装填カップ14に装填される。一実施形態では、装填は容積式ポンプ(例えばディジスペンス(Digispense),アイヴィイーケイ,インク(IVEK,Inc.),ノーススプリングフィールド,バーモント州から入手可能)によって行われる。前述の所望の粘度を有する火工材料スラリーと共に、このような容積式ポンプを用いることにより、正確な量の火工材料スラリーを起爆装置の装填カップ14に分配し、本発明のスラリーが装填された複数の起爆装置2内の火工材料の量における所望の分散率(例えば、容量の約0.5%未満)を達成することが可能になる。即ち、生成中に複数の装填カップ14のそれぞれに含まれる火工材料38の量は、一貫して非常に狭い範囲内(例えば、複数の起爆装置2における火工材料38の重量当たり分散率約1%未満)にある。
火工材料スラリーの粘度と、装填カップ14への火工材料スラリーの装填とに関して、本発明における別の重要な特徴は、火工材料スラリーの装填の完了の仕方にある。本発明によると、装填カップ14への火工材料スラリー装填完了時に、火工材料スラリーは一瞬にしてもぎとられ、あるいはプッツリと切られる。この結果、図3に示すニップルの高さ”H”は最小になる(例えば、約1mm以下であることが好ましい)。また、装填後の装填カップは、装填されたスラリーを更に水平にするように振とうされる。従って、ヘッダ22上の架橋ワイヤ34に向かって突出し、これと接続される火工材料のために、比較的平坦な上面が得られる。このことにより、起爆装置2が完全に組み立てられた後(即ち、火工材料38との接続時)、架橋ワイヤ34が遮断される可能性が減少し、火工材料38の点火に悪影響を及ぼし得る架橋ワイヤ34と火工材料38との非係合の度合いも減少する。
【0027】
場合によっては、火工材料38に加えて、別個のブースタチャージ(例えば、純粋なRDX、HMX、またはその他の二次爆薬または火工組成物)を起爆装置2に含めることが必要であり得る(例えば、一定の出力を得るため)。ブースタチャージは、装填カップ14にスラリーとして装填され、(例えば、約5分から約45分の間、約100゜Fから約160゜Fまでの温度にて)乾燥され、その後装填カップ14に充填され得る。充填前には、理論密度値は約60%から約95%であり、読み込みを行うために適切なプランジャーまたは組み立てられた点火アセンブリを使用した後には、理論密度値は約80%から約97%である。この後、前述の方法により、火工材料38を装填カップ14に装填する。また、ブースタ材料は乾燥させて(例えば、18ミクロンの純粋なRDX粉末として)装填カップ14に装填され、次に前述の方法により充填されることがより好ましい。その後、火工材料スラリーは前述の方法に従い、装填カップ14に装填され得る。
【0028】
火工材料スラリーは、前述の方法により装填カップ14に装填された後、乾燥ステーション66に供給され、火工材料38に調製される。一実施形態では、火工材料スラリーと共に装填カップ14が、約5分から約45分の間、約100゜Fから約160゜Fまでの温度にて乾燥される(例えば、水分含有率を約0.5%未満とするために)。以下に、より詳細に説明するように、本発明における流動学的な特性により、この火工材料スラリーの乾燥において収縮は全く生じないか、あるいはほとんど生じない(例えば、直径においては約2%以下、長さにおいては約2%未満)。
【0029】
装填カップ14における火工材料スラリーの粘度は、乾燥によって得られる火工材料38に影響を及ぼす。乾燥中に生じる火工材料スラリーの収縮の量を最小にするように、火工材料の流動学的特性を予め選択することが可能である。火工材料スラリーの粘度が前述の範囲内にて選択された場合、直径の収縮率は約2%以下、長さの収縮率は約2%以下である。更に、乾燥中に生じる火工材料スラリーのひび割れの量は、前述の範囲内の粘度では最小になる。ひび割れにより、火工材料38と架橋ワイヤ34との接続に影響が及ぼされ、その結果、材料38の点火にも影響が及ぶ。また、ひび割れにより材料38の燃焼率にも影響が及び得るが、これにより不都合が生じる場合も考えられる。
【0030】
起爆装置2の組立は、組み立てられた点火アセンブリを、点火アセンブリ搭載ステーション70にて搭載することにより完成する。一実施形態では、ピン30はヘッダ22内に搭載され、それらの間にガラス対金属のシール26が設けられると共に、ピン30及びヘッダ22の上面24aにおける所望の位置に架橋ワイヤ34が溶接される。また、ヘッダ22の下面24aにはリング18が溶接される。次に、このように組み立てられた点火アセンブリは、装填カップ14内に乾燥火工材料38を充填するため(例えば、約1500psiを上回る充填力により、約80%から約97%までの理論密度値を達成するため)に用いられる。火工材料38の装填カップ14への充填を維持する一方、即ち、より詳細には、点火アセンブリを介して火工材料38に力を伝達し続ける一方で、ヘッダ22は装填カップ14に溶接される。その後、スリーブ10及びアダプタ6が装着される。
【0031】
以上、本発明についての記載は、例証及び説明を目的とするものである。また、本発明を、同記載により開示された形態に限定する意図はない。従って、前述の開示内容と関連分野の技術及び知識と同等の変更例及び変形例は、本発明の範囲内にあるものとする。前述の実施形態は、本発明を実施する上で知られている最良の形態を説明するために記載されたものであり、当該技術分野の通常の知識を有する者が本発明をそのまま、もしくは他の実施形態にて、本発明における特定の応用または利用方法にて必要とされる種々の変更を加えた上で実施することができるように意図されたものである。本願特許請求の範囲は、従来技術によって許される範囲内で、その他の実施形態をも含むものとみなされたい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】スラリー装填電気起爆装置の一実施形態を示す断面図。
【図2】図1の起爆装置にスラリーを装填するための方法を示すブロック図。
【図3】火工材料スラリー装填後の電気起爆装置の装填カップの断面図。
【図4】スラリーを装填可能な電気起爆装置のその他の実施形態を示す断面図。
【図5】最終使用構造を有し、図4の起爆装置を連結するためのアセンブリを示す断面図。
【図6】スラリーを装填可能な電気起爆装置のその他の実施形態を示す断面図。
【図7】最終使用構造を有し、図6の起爆装置を連結するためのアセンブリを示す断面図。
【符号の説明】
【0033】
2,74,124…起爆装置、14,78,128…装填ケーシング、22,82,132…ヘッダ、26,90,140…シール、30,94,144…導電ピン、34,98,148…架橋ワイヤ、38,102,152…火工材料、86,136…シェル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装填ホルダと、
直径及び長さを有し、かつ前記装填ホルダに配置される火工材料と、前記長さの前記直径に対する比率は、約0.25であるにすぎないことと、
前記装填ホルダに接続され、前記火工材料と接続される少なくとも一つの導電ピン及び架橋ワイヤを含む点火アセンブリとを備える電気起爆装置。
【請求項2】
開放端部及び閉鎖端部を有する装填ホルダと、
前記装填ホルダに配置される火工材料と、
前記装填ホルダの開放端部内に配置され、第一及び第二の端部、並びに同第一及び第二の端部間に延びる孔を有するヘッダと、前記ヘッダの第二の端部は前記火工材料と接続されていることと、
前記ヘッダの前記孔内に配置された導電ピンと、
前記ピン及び前記ヘッダの間にあり、かつ前記ヘッダの孔内に配置された電気絶縁体と、
前記ヘッダの第二の端部に配置された架橋ワイヤと、同架橋ワイヤは前記導電ピン及び前記ヘッダの第二の端部を電気的に接続していることと、
導電性のシェルと、
前記導電シェルと前記ヘッダとの間にあり、かつ曲げ接合部及び溶接接合部からなるグループより選択される第一の接合部と、前記溶接接合部はまた、前記導電シェルを前記装填ホルダに接続していることとを備える電気起爆装置。
【請求項3】
請求項2に記載の電気起爆装置において、前記ヘッダの第一の端部は環状溝を備え、前記シェルは前記溝に配置され、かつ前記曲げ接合部は、前記シェル上に折り曲げられた前記ヘッダの端部からなる電気起爆装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電気起爆装置において、前記シェルの端部は、同シェル上に折り重ねられ、前記ヘッダ中の環状溝に配置される電気起爆装置。
【請求項5】
請求項3に記載の電気起爆装置において、前記導電シェルは、第一及び第二の部分を備え、前記第一の部分は、ほぼ円筒状であり、かつ前記第二の部分は、前記第一の部分の端部上にある据え付けフランジであり、前記第二の部分は、前記ヘッダ及び前記装填カップと接続され、かつ前記溶接接合部は、前記第2の部分上にある電気起爆装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−70109(P2008−70109A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268996(P2007−268996)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【分割の表示】特願平8−338323の分割
【原出願日】平成8年12月18日(1996.12.18)
【出願人】(597065363)オートリブ エーエスピー,インコーポレイティド (87)
【Fターム(参考)】