説明

スリッタ下流部における繊維巻き取り紙の処理方法

本発明は、スリッタ下流部における繊維巻き取り紙の処理方法に関する。本方法では、所望の特性を供するための繊維巻き取り紙の仕上げは、一以上の仕上げユニットを用いて実行され、そのうちの少なくとも一は、金属ベルトが供されている巻き取り紙処理装置を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スリッタ下流部における繊維巻き取り紙の処理方法に関する。当該処理方法はたとえば、カレンダリング、コーティング又は上記方法の様々な組み合わせを有する。
【背景技術】
【0002】
紙及び板紙の品質は非常に多様で、秤量に従って二の部類に分類することが可能である。1つは、秤量が25[g/m2]から300[g/m2]の単一層の紙で、もう1つは、秤量が150[g/m2]から600[g/m2]の多層技術によって製造された板紙である。上述のように、紙と板紙との境界線は流動的で、最低の秤量を有する板紙は、最も重い紙よりも軽い。
【0003】
以降における典型的な説明は、繊維巻き取り紙について現在使用されている値の例であって、そのような値と実質的な差異が生じることはありえる。以降の説明は主として、非特許文献1からの引用である。
【0004】
メカニカルパルプに基づく又は、木材を含有する印刷紙には、新聞紙、コーティングされていない雑誌紙及び、コーティングされた雑誌紙が含まれる。
【0005】
新聞紙は、その全てがメカニカルパルプで構成されるか、又は少量の漂白された針葉樹パルプを含んで良い、及び/又は、リサイクルされたパルプはメカニカルパルプの一部にとって代わる物として使用されても良い。以下の値は、新聞紙について一般に使用される値とみなして良い。秤量が40[g/m2]-48.8[g/m2]、灰含有量(SCAN-P 5:63)が0%-20%、PPS s10粗さ(SCAN-P 76-95)が3.0[μm]-4.5[μm]、Bendtsen粗さ(SCAN-P 21:67)が100[ml/min]-200[ml/min]、密度が600[kg/m3]-750[kg/m3]、明るさ(ISO 2470:1999)が57%-63%で、不透明度(ISO 2470:1998)が90%-96%である。
【0006】
コーティングされていない雑誌紙(SC=スーパーカレンダリング)は一般に、50%-70%のメカニカルパルプ、10%-25%の漂白された針葉樹パルプ及び、15%-30%のフィルタを有する。カレンダリングされたSC紙(とりわけ、SC-C、SC-B及びSC-A/A+を含む)の典型的な値は、秤量が40[g/m2]-60[g/m2]、灰含有量(SCAN-P 5:63)が0%-35%、Hunter光沢(ISO/DIS8254/1)が20%-50%より小さく、PPS s10粗さ(SCAN-P 76-95)が1.0[μm]-2.5[μm]、密度が700[kg/m3]-1250[kg/m3]、明るさ(ISO 2470:1999)が62%-70%で、不透明度(ISO 2470:1998)が90%-95%である。
【0007】
表1は、メカニカルパルプを含む、コーティング可能な紙の典型的な値を示す。(ここで、MDF=マシン仕上げコーティング、FCO=フィルムコーティングオフセット、LWC=軽量コーティング、MWC=中質量コーティング、HWC=重量コーティング、である。)
【0008】
【表1】

【0009】
コーティングされた雑誌紙(LWC=軽量コーティング)は、40%-60%のメカニカルパルプ、25%-40%の漂白された針葉樹パルプ並びに、20%-35%のフィルタ及びコーティング物質を有する。
【0010】
HWCは、2倍よりさらに大きくコーティングされて良い。
【0011】
化学パルプ又は上級紙からなる、木材を含まない印刷紙は、化学パルプをベースとする、コーティングされた印刷紙及びコーティングされていない印刷紙の両方を含む。その際、メカニカルパルプの割合は10%未満である。
【0012】
化学パルプをベースとしたコーティングされていない印刷紙(WFU)は、55%-80%の漂白された樺の木パルプ、0%-30%の針葉樹パルプ及び、10%-30%のフィルタを有する。WFUでは、値の変動幅が大きいことを示す。秤量が50[g/m2]-90[g/m2](さらには240[g/m2]まで)、Bendtsen粗さが250[ml/min]-400[ml/min]、明るさが86%-92%で、不透明度が83%-98%である。
【0013】
化学パルプをベースとしたコーティングされた印刷紙(WFC)は、要求及び用途に従って広範にコーティングを変化させる。以下の値は、一度及び二度コーティングされた、化学パルプをベースとする印刷紙の典型的な値である。一度コーティングでは、秤量が90[g/m2]、Hunter光沢が65%-80%、PPS s10粗さが0.75[μm]-2.2[μm]、明るさが80%-88%、不透明度が91%-94%で、二度コーティングでは、秤量が130[g/m2]、Hunter光沢が70%-80%、PPS s10粗さが0.65[μm]-0.95[μm]、明るさが83%-90%、不透明度が95%-97%である。
【0014】
他の紙にはとりわけ、袋用紙、ティッシュ及び壁紙が含まれる。
【0015】
板紙の作製は、化学パルプ、メカニカルパルプ及び/又は、リサイクルパルプを用いることで実行される。板紙の品質はたとえば、意図された用途に従って、以下の主要群に分類することが可能である。
【0016】
段ボールは、ライナ及び心紙を有する。
【0017】
箱紙は、箱、入れ物の作製に用いられる。箱紙はとりわけ、液体包装用板紙(FBB=折りたたみ箱紙、LPB=液体包装用板紙、WLC=裏白チップボール、SBS=純粋な漂白された亜硫酸塩剤、SUS=純粋な漂白されていない亜硫酸塩剤)を有する。
【0018】
グラフィックボードはたとえば、カード、折り込み機、ファイル、ケース、カバーなどの作製に用いられる。
【0019】
前述のように、紙及び板紙の品質には様々な種類が存在し、それらの製造には複数の異なる型の機械が用いられる。
【特許文献1】芬国特許出願公開第03/00066号明細書
【特許文献2】芬国特許出願公開第03/00067号明細書
【特許文献3】芬国特許出願公開第03/00068号明細書
【非特許文献1】Jokio M編、”Papermaking Science and Technology、section Papermaking Part 3、finishing”、Fapet Oy出版、1999年、pp.361
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、実際の製造ラインにおけるスリット下部工程に従うプロセス中において、コーティングされた紙及び板紙、並びにコーティングされていない紙及び板紙を最適方法で処理する方法及び装置の提供である。処理される巻き取り紙は、たとえば0.15[m]-4.5[m]と狭く、仕上げ機の大きさも、狭い巻き取り紙に対応して、現在の製造ラインで通常使用されている処理装置よりも実質的に小さく設計されている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的を実現するため、本発明の方法が、請求項1の特徴部での説明によって特徴づけられる。本発明の方法では、所望の特性を与えるための繊維巻き取り紙の処理はたとえば、繊維巻き取り紙を印刷機に通す前に、印刷面において一以上の仕上げユニットを用いることで実行され、当該仕上げユニットのうちの少なくとも一は、たとえば金属ベルトカレンダー、コーター、ドライヤー、ドライコーター等の金属ベルトが備えられた巻き取り紙処理装置である。
【実施例】
【0022】
処理領域における、非常に広範な圧力範囲及び、使用時間(熱輸送時間及び/又は、処理時間)での使用を可能にし、一でかつ同一の装置は、様々なコーティングされた印刷紙及び板紙並びに、コーティングされない印刷紙及び板紙の処理への適用が可能であることを特徴とする金属ベルトカレンダーについては、本出願人による過去の出願である、特許文献1、特許文献2及び特許文献3にその詳細が説明されているので、ここではこれ以上説明しない。金属ベルトカレンダーでは、処理領域の長さは、ベルト案内素子の設置及び/又は、対抗素子の設計及び/又は設置によって決定され、処理領域内で巻き取り紙にかかる接触圧力はたとえば、約0.01MPaから約200MPaの範囲内で調節可能である。
【0023】
金属ベルトカレンダーの大きさは小さくすることが可能で、その使用時には、巻き上げ式の狭い繊維巻き取り紙は、印刷機又は他の処理装置の幅に適合される。金属ベルトカレンダーを使用することで、処理条件を迅速に変更することが可能となる。それによりたとえば、一でかつ同一の紙料に基づきながら、それぞれ異なる用途での品質を有する紙及び板紙の製造を可能にし、当該紙料は、紙又は板紙のコーティングされた、又はコーティングされていない巻き取り紙で構成されて良い。品質間の切り換えは、十分かつ迅速に行うことが可能であるので、たとえ少量の処理であっても費用対効果の良い方法で製造することが可能である。それに加えて、印刷所の紙料購入費が減少する。
【0024】
さらに、金属ベルトカレンダーは、繊維巻き取り紙の構造を安定化することで、水可溶性印刷インクの使用によって生じる、印刷機中の気泡の発生を最小に抑制することが可能となる。
【0025】
本発明の方法はまた、その方法が印刷物のつや出しに有益である場合には、印刷機下流部において、金属ベルトカレンダーを有する印刷された繊維巻き取り紙に比較的簡単な処理を行うことによって実現することも可能である。
【0026】
金属ベルトカレンダーに関しては、たとえば乾燥コーティング装置又は分離コーターのような、繊維巻き取り紙をコーティングする素子が、金属ベルトカレンダー上流部又は下流部に供されて良い。印刷機に関しては、金属ベルトカレンダーのみならず、繊維巻き取り紙を印刷機に通す前に、繊維巻き取り紙の多目的処理を可能にする他の型のカレンダーが供されて良い。
【0027】
金属ベルトカレンダーはまた、繊維巻き取り紙の乾燥に用いることが可能なため、製紙ラインでの高巻き上げ湿度の利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スリッタ下流部における繊維巻き取り紙の処理方法であって、
所望の特性を与えるための繊維巻き取り紙の仕上げが、一以上の仕上げユニットを用いることによって行われ、
前記仕上げユニットのうちの少なくとも一は、金属ベルトが供される巻き取り紙処理装置を有し、
前記の金属ベルトが備えられている巻き取り紙処理装置は、金属ベルトカレンダー、及び/又は金属ベルトコーター、及び/又は金属ベルトドライヤー、及び/又はドライコーターを有し、かつ、
前記仕上げが、印刷面において所望の仕上げが施された前記繊維巻き取り紙を供するために、前記巻き取り紙が印刷機を通る前に実行される、
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
共通の紙料を使用し、金属ベルトの動作条件を変化させることによって、前記紙料を様々な品質で製造し、様々な用途に対応させる工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷機下流部にて、前記繊維巻き取り紙を金属ベルトカレンダーで処理し、その印刷物のつや出しを行う工程を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記一以上の仕上げユニットが前記印刷機に対してオンラインで設置されていることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記一以上の仕上げユニットが前記印刷機に対してオフラインで設置されていることを特徴とする、請求項1から3のうちのいずれかに記載の方法。

【公表番号】特表2008−506043(P2008−506043A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−517319(P2007−517319)
【出願日】平成17年5月31日(2005.5.31)
【国際出願番号】PCT/FI2005/050184
【国際公開番号】WO2006/000633
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】