説明

スリーブ及びそれを備えたメカニカルスプライス

【課題】メカニカルスプライスの性能を落とすことなくコストダウンを図ること。
【解決手段】一方の光ファイバ素線の端部とこれに接続される他方の光ファイバ素線の端部とを収容するV溝を第1スリーブ分割体31に設けた。V溝に支持された両方の光ファイバ素線をV溝の底部に押し付けて光ファイバ素線の端部同士の突合せ状態を維持する押付け面を第2スリーブ分割体32に設けた。両方の光ファイバ素線をV溝内に挿入可能なように第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とを離隔する離隔手段を第1、第2スリーブ分割体31,32に設けた。押付け面が両方の光ファイバ素線をV溝の底部に押し付けた状態を維持するように第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とを接合させる接合手段を第1、第2スリーブ分割体31,32に設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は2つの光ファイバコードの光ファイバ素線の端部同士を突き合わせるスリーブ及びそれを備えたメカニカルスプライスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジングと一対のレバーと金属スリーブとを備えるメカニカルスプライスが知られている(下記特許文献1参照)。
【0003】
ハウジングには一対の光ファイバコード挿入孔が形成されている。光ファイバコード挿入孔はハウジングの長手方向に沿って延びる。
【0004】
レバーはハウジングの両端部にそれぞれ設けられている。レバーは押圧部を有する。レバーは光ファイバコード挿入可能位置と光ファイバコード固定位置との間で回転可能である。
【0005】
金属スリーブは一対の光ファイバコード挿入孔の間に配置されている。金属スリーブの中央部には窓孔が形成されている。
【0006】
このメカニカルスプライスを用いた光ファイバコードの接続作業は次の通りである。
【0007】
まず、二つの光ファイバコードの一端部の被覆をそれぞれ除去し、光ファイバ素線(コアとコアを被覆するクラッドとで構成される)を露出させる。この光ファイバ素線を金属スリーブに挿入するとともに光ファイバコードを光ファイバコード挿入孔に挿入する。
【0008】
次に、レバーを光ファイバコード挿入可能位置から光ファイバコード固定位置まで回転させる。このとき、レバーの押圧部によって光ファイバコードは金属スリーブの方へ送られるとともに、光ファイバコード挿入孔の内周面に押し付けられてハウジングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】登録実用新案第3121157号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のメカニカルスプライスの金属スリーブの加工には高い精度が要求されるため、これがメカニカルスプライスの製造コストを高くする一因になっていた。
【0011】
加工精度の低い金属スリーブを用いればメカニカルスプライスの製造コストを下げることができるが、そうするとメカニカルスプライスの性能が低下してしまう。
【0012】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は、メカニカルスプライスの性能を落とすことなくコストダウンを図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決するため請求項1の発明のスリーブは、一方の光ファイバ素線の端部とこれに接続される他方の光ファイバ素線の端部とを支持する溝を有する第1スリーブ分割体と、前記溝に支持された前記両方の光ファイバ素線を前記溝の底部に押し付けて前記端部同士の突合せ状態を維持する押付け面を有する第2スリーブ分割体と、前記両方の光ファイバ素線を前記溝に挿入可能なように前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とを離隔する離隔手段と、前記押付け面が前記両方の光ファイバ素線を前記溝の底部に押し付けた状態を維持可能なように前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とを接合する接合手段とを備えることを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、請求項1記載のスリーブにおいて、前記溝がV溝であることを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、請求項1又は2記載のスリーブにおいて、前記第1、第2スリーブ分割体が合成樹脂製であることを特徴とする。
【0016】
請求項4の発明のメカニカルスプライスは、請求項1〜3のいずれか1項記載のスリーブと、前記両方の光ファイバ素線と前記スリーブとを収容するハウジングと、前記ハウジングに収容された前記両方の光ファイバ素線を前記ハウジングに固定するための光ファイバ素線固定手段とを備え、前記ハウジングは、前記スリーブが収容される凹部が形成されたベースと、このベースに前記光ファイバ素線の径方向へスライド可能に装着され、前記凹部を覆うカバーとを有し、前記カバーは、前記スリーブを保持可能であるとともに、前記両方の光ファイバ素線を前記スリーブに通すことが可能な所定位置とこの所定位置から変位した変位位置との間を移動可能であるとともに前記変位位置にあるときに前記スリーブを前記ベースに突き当て、前記カバーが前記所定位置から前記変位位置に移動したとき、前記カバーを前記所定位置に戻す弾性力が生じることを特徴とする。
【0017】
請求項5の発明は、請求項4記載のメカニカルスプライスにおいて、前記カバーが前記ベースの高さ方向へスライド可能であることを特徴とする。
【0018】
請求項6の発明は、請求項4又は5記載のメカニカルスプライスにおいて、前記光ファイバ素線固定手段は、前記ベースの両端部のそれぞれに、前記凹部に前記光ファイバ素線の端部を挿入可能な光ファイバ素線挿入位置と前記ベースに前記光ファイバ素線を固定可能な光ファイバ素線固定可能位置との間で移動可能に連結された可動部材であることを特徴とする。
【0019】
請求項7の発明は、請求項4〜6のいずれか1項記載のメカニカルスプライスにおいて、前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とのうちの一方のスリーブ分割体が、前記カバーに一体化されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
この発明によれば、メカニカルスプライスの性能を落とすことなくコストダウンを図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態のメカニカルスプライスの斜視図である。
【図2】図2は図1に示すメカニカルスプライスの分解斜視図である。
【図3】図3は図1に示すメカニカルスプライスのスリーブの斜視図である。
【図4】図4は図3に示すスリーブの正面図である。
【図5】図5は図3に示すスリーブの側面図である。
【図6】図6は図4のVI−VI線に沿う断面図である。
【図7】図7は図4のVII−VII線に沿う断面図である。
【図8】図8は図4のVIII−VIII線に沿う断面図である。
【図9】図9は図5のIX−IX線に沿う断面図である。
【図10】図10は図3に示すスリーブの第1スリーブ分割体を裏返した状態の斜視図である。
【図11】図11は図10に示す第1スリーブ分割体の正面図である。
【図12】図12は図10に示す第1スリーブ分割体の平面図である。
【図13】図13は図10に示す第1スリーブ分割体の底面図である。
【図14】図14は図10に示す第1スリーブ分割体の側面図である。
【図15】図15は図11のXV−XV線に沿う断面図である。
【図16】図16は図11のXVI−XVI線に沿う断面図である。
【図17】図17は図11のXVII−XVII線に沿う断面図である。
【図18】図18は図3に示すスリーブの第2スリーブ分割体の斜視図である。
【図19】図19は図18に第2スリーブ分割体の正面図である。
【図20】図20は図18に示す第2スリーブ分割体の平面図である。
【図21】図21は図18に示す第2スリーブ分割体の底面図である。
【図22】図22は図16に示す第2スリーブ分割体の側面図である。
【図23】図23は図19のIIXIII−IIXIII線に沿う断面図である。
【図24】図24は図20のIIXIV−IIXIV線に沿う断面図である。
【図25】図25は図1に示すメカニカルスプライスのベースの斜視図である。
【図26】図26は図25に示すベースの平面図である。
【図27】図27は図25に示すベースの正面図である。
【図28】図28は図26のIIXVIII−IIXVIII線に沿う断面図である。
【図29】図29は図27のIIXIX−IIXIX線に沿う断面図である。
【図30】図30は図27のIIIX−IIIX線に沿う断面図である。
【図31】図31は図27のIIIXI−IIIXI線に沿う断面図である。
【図32】図32は図27のIIIXII−IIIXII線に沿う断面図である。
【図33】図33は図27のIIIXIII−IIIXIII線に沿う断面図である。
【図34】図34は図27のIIIXIV−IIIXIV線に沿う断面図である。
【図35】図35は図1に示すメカニカルスプライスのセンターカバーの斜視図である。
【図36】図36は図35に示すセンターカバーの正面図である。
【図37】図37は図35に示すセンターカバーの平面図である。
【図38】図38は図35に示すセンターカバーの底面図である。
【図39】図39は図37のIIIXIX−IIIXIX線に沿う断面図である。
【図40】図40は図36のIVX−IVX線に沿う断面図である。
【図41】図41は図36のIVXI−IVXI線に沿う断面図である。
【図42】図42は図36のIVXII−IVXII線に沿う断面図である。
【図43】図43は図36のIVXIII−IVXIII線に沿う断面図である。
【図44】図44は図1に示すメカニカルスプライスのサイドカバーの斜視図である。
【図45】図45は図44に示すサイドカバーの正面図である。
【図46】図46は図44に示すサイドカバーの平面図である。
【図47】図47は図44に示すサイドカバーの底面図である。
【図48】図48は図46のIVXVIII−IVXVIII線に沿う断面図である。
【図49】図49は図45のIVXIX−IVXIX線に沿う断面図である。
【図50】図50は図45のVX−VX線に沿う断面図である。
【図51】図51は図45のVXI−VXI線に沿う断面図である。
【図52】図52は第1スリーブ分割体と第2スリーブ分割体とが離隔した状態を示し、図6と同じ切断面の断面図である。
【図53】図53は第1スリーブ分割体と第2スリーブ分割体とが離隔した状態を示し、図7と同じ切断面での断面図である。
【図54】図54は第1スリーブ分割体と第2スリーブ分割体とが離隔した状態を示し、図8と同じ切断面の断面図である。
【図55】図55はセンターカバーが所定位置にあり、両方のサイドカバーが仮止め位置にあり、一方の光ファイバコードがハウジングに挿入された状態を示す概念図である。
【図56】図56はセンターカバーが所定位置にあり、一方のサイドカバーがロック位置にあり、他方のサイドカバーが仮止め位置にある状態を示す概念図である。
【図57】図57はセンターカバーが所定位置にあり、一方のサイドカバーがロック位置にあり、他方のサイドカバーが仮止め位置にあり、他方の光ファイバコードがハウジングに挿入された状態を示す概念図である。
【図58】図58はセンターカバーが変位位置にあり、一方のサイドカバーがロック位置にあり、他方のサイドカバーが仮止め位置にある状態を示す概念図である。
【図59】図59はセンターカバーが変位位置にあり、両方のサイドカバーがロック位置にある状態を示す概念図である。
【図60】図60はセンターカバーが所定位置にあり、両方のサイドカバーがロック位置にある状態を示す概念図である。
【図61】図61はこの発明の第2実施形態のメカニカルスプライスのセンターカバーに一体化された第1スリーブ分割体と第2分割体とが離隔した状態を示す断面図である。
【図62】図62は図61に示すセンターカバーに一体化された第1スリーブ分割体と第2分割体とが接合した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
この発明の第1実施形態のメカニカルスプライスを図1〜図60に基づいて説明する。
【0024】
図1、図2に示すように、メカニカルスプライス1は、一方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aの端部と他方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aの端部とを突き合わせて光ファイバコード21,21同士を接続するものである。メカニカルスプライス1はスリーブ3とハウジング5とを備える。
【0025】
図3〜図9に示すように、スリーブ3は合成樹脂製であり、第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とを有する。
【0026】
図10〜図14に示すように、第1スリーブ分割体31はほぼ板状である。第1スリーブ分割体31の底面31aの中央部には凹部311が形成されている。凹部311は第1スリーブ分割体31の長手方向に沿って延びている。凹部311にはV溝(溝)312及び誘い溝313が形成されている。V溝312は凹部311の中央部に位置し、第1スリーブ分割体31の長手方向に沿って延びている。誘い溝313は凹部311の両端部に位置している。誘い溝313の一端は窄まり、V溝312に通じており、誘い溝313の他端は広がり、第1スリーブ分割体31の長手方向端面31dで開口している。
【0027】
第1スリーブ分割体31の正面31b及び背面31cの中央部には第1爪部314が形成されている(図15参照)。また、第1スリーブ分割体31の正面31b及び背面31cの中央部には2つの第2爪部315が形成されている(図17参照)。2つの第2爪部315は第1爪部314を挟むように配置されている。
【0028】
第1スリーブ分割体31の正面31b及び背面31cの両端部には第3爪部316が形成されている(図16参照)。
【0029】
第1スリーブ分割体31の正面31b及び背面31cの上部には突出片317が形成されている。突出片317には切欠き317a,317bが形成されている。切欠き317aは突出片317の中央部に位置する。切欠き317bは突出片317の両端部に位置する。
【0030】
図18〜図22に示すように、第2スリーブ分割体32は本体320と1対の保持片325とを有する。
【0031】
本体320はほぼ板状である。本体320の上面320aの中央部には第1凸部321が形成されている。第1凸部321は本体320の長手方向に沿って延びている。第1凸部321の上面中央部には第2凸部322が形成され、第1凸部321の両端部には誘い溝323が形成されている。第2凸部322の幅は第1凸部321の幅よりも狭く、第2凸部322は第1凸部321と平行に延びている。第2凸部322の上面(押付け面)322aは平坦面である。誘い溝323の一端は窄まり、第2凸部322に達しており、誘い溝323の他端は広がり、本体320の長手方向端面320dで開口している。
【0032】
保持片325はほぼ角柱状であり、本体320の正面320a及び背面320b(図22参照)の上部に結合されている。
【0033】
第2スリーブ分割体32の正面及び背面の中央部にはそれぞれ1つの切除部326と2つの切除部327とが形成されている。切除部326は本体320の底面から延び、保持片325の上端面近傍に達している。切除部326の上部は保持片325の内面で開口している。2つの切除部327は切除部326を挟むように配置されている。切除部327は本体320の底面から延び、保持片325の上端面に達している。切除部327の上部は保持片325の内面で開口している。切除部327の上部内には突起329が配置されている。
【0034】
第2スリーブ分割体32の正面及び背面の両端部にはそれぞれ切除部328が形成されている。切除部328は本体320の底面から延び、保持片325の上端面近傍に達している。切除部326の上部は保持片325の内面で開口している。
【0035】
図1、図2に示すように、ハウジング5はベース6とセンターカバー7とで構成されている。
【0036】
図25〜図28に示すように、ベース6の正面及び背面の中央部にはガイド601が形成されている。また、ベース6の中央部には凹部602が形成されている。凹部602はベース6の長手方向Lに沿って延びている。凹部602は段差を有し、凹部602の中央部の深さは、凹部602の長手方向Lの両端部の深さよりも深い。凹部602の長手方向の両端部は光ファイバ収容空間602aとなっている(図28参照)。光ファイバ収容空間602aは、光ファイバコード21(図2参照)の端部で露出した光ファイバ素線21aの一部分(スリーブ3に収容されていない部分)を撓ませるための空間である。凹部602の中央部の底面にはほぼ円板状の凸部603が形成されている(図29参照)。
【0037】
ベース6の長手方向Lの両端部にはそれぞれ凹部610が形成されている。凹部610はベース6の長手方向Lに沿って形成されている。凹部610は凹部602に連なる。凹部610の底面には突出片611が形成されている。突出片611はほぼ板状であり、ベース6の長手方向に沿って延びている。突出片611の板厚方向はベース6の短手方向Sと平行である。突出片611は肉厚部611aと肉薄部611bとを有する(図26参照)。肉厚部611aの上面には幅広溝611cが形成され(図33参照)、肉薄部611bには溝611dが形成されている(図32参照)。溝611dは幅広溝611cに連なる。
【0038】
ベース6の中央部の正面及び背面にはそれぞれ2つの第1係止突起613が形成されている。2つの第1係止突起613はガイド部601を挟むように配置されている。第1係止突起613は傾斜面613aと下面613bとを有する(図31参照)。
【0039】
ベース6の中央部の正面及び背面にはそれぞれ2対の第2係止突起614が形成されている。対の第2係止突起614は第1係止突起613の両側に配置されている。第2係止突起614は第1係止突起613よりも下方に位置する(図31参照)。第2係止突起614は傾斜面614aと下面614bとを有する(図30参照)。
【0040】
ベース6の長手方向Lの両端部の正面及び背面にはそれぞれガイド凸部615が形成されている。ガイド凸部615は矩形であり、ガイド面615aを有する。ガイド面615aはベース6の高さ方向Hと平行である(図25参照)。
【0041】
また、ベース6の両端部の正面及び背面にはそれぞれ2つの第3係止突起616が形成されている。2つの第3係止突起616はガイド凸部615を挟むように配置されている。
第3係止突起616は傾斜面616aと下面616bとを有する(図34参照)。
【0042】
更に、ベース6の両端部の正面及び背面にはそれぞれ2つの第4係止突起617が形成されている。2つの第4係止突起617はそれぞれ第3係止突起616のガイド凸部615側に隣接させて形成されている。第4係止突起617は第3係止突起616よりも下方に位置する。第4係止突起617は傾斜面617aと下面617bとを有する(図32参照)。
【0043】
図35〜図38に示すように、センターカバー7は上面板71と端面板72とを有し、弾性を有する合成樹脂で形成されている。端面板72はその板厚方向へ弾性変形可能である。
【0044】
両端面板72の両端部にはそれぞれ2つの窓孔72aが形成されている。窓孔72aはベース6の第1係止突起613を受け容れる。両端面板72の両端部の内面の下部には傾斜面72bが形成されている(図38、図43参照)。傾斜面72bは第2係止突起614と接触する。
【0045】
両端面板72の中央部の内側面にはそれぞれ凹部72cが形成されている(図41、図42参照)。凹部72cはベース6のガイド部601を受け容れる。
【0046】
上面板71の下面の中央部には2対の挟持部73が形成されている(図38、図39参照)。挟持部73はほぼ板状であり、その板厚方向は端面板72の板厚方向と平行である。また、2対の挟持部73はその板厚方向へ弾性変形可能である。センターカバー7の短手方向S7における挟持部73の間隔はスリーブ3の短手方向の寸法よりも小さい。挟持部73の先端には爪73aが形成されている(図41参照)。
【0047】
上面板71の下面の両端部にはそれぞれ突出片74が形成されている。突出片74は上面板71の長手方向へ延びている。突出片74は肉厚部74aと肉薄部74bとを有する。肉厚部74aは上面板71の中央部側に位置している。
【0048】
突出片74には溝部74dが形成されている。溝部74dには光ファイバコード21の光ファイバ素線21aが配置される。
【0049】
上面板71の下面の中央部には2つの支持部75が形成されている。支持部75は肉厚部74aの挟持部73に隣接する。支持部75は挟持部73に挟持されたスリーブ3の端部を支持する。
【0050】
図44〜図47に示すように、サイドカバー(可動部材)8は上面板81と端面板82とを有し、弾性を有する合成樹脂で形成されている。端面板82はその板厚方向へ弾性変形可能である。サイドカバー8はハウジング5に収容された両方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aをハウジング5に固定するための光ファイバ素線固定手段である。
【0051】
上面板81の下面には突出片84が形成されている。突出片84は上面板81の長手方向へ延びている。突出片84には幅広溝84aと溝84bとが形成されている(図49、図51参照)。幅広溝84aは突出片84の一端側に位置している。溝84bは突出片84の他端側に位置し、幅広溝84aに連なる。幅広溝84aには光ファイバコード21が収容される。溝84bには光ファイバコード21の被覆を切除して露出した光ファイバ素線21aが収容される。更に、幅広溝84aにはベース6の突出片611の肉厚部611aが挿入され、溝84bにはベース6の突出片611の肉薄部611bが挿入される。
【0052】
両端面板82の中央部内面には凹部82aが形成されている。凹部82aは係合面82bを有している。係合面82bはサイドカバー8の高さ方向に平行である。凹部82aはベース6のガイド凸部615(図2参照)を受け容れる。係合面82bはガイド凸部615のガイド面615aに係合する。
【0053】
また、両端面板82にはそれぞれ2つの窓孔82eが形成されている。窓孔82eはほぼ矩形である。窓孔82eはベース6の第3係止突起616と第4係止突起617とを受け容れる(図1参照)。両端面板82の下端には傾斜面82fが形成されている(図48参照)。
【0054】
次に、このメカニカルスプライス1のスリーブ3の組立について説明する。
【0055】
まず、第2スリーブ分割体32を平坦なところにおき、第1スリーブ分割体31を第2スリーブ分割体32に重ね、第1スリーブ分割体31を所定の力で第2スリーブ分割体32の方へ押し込む。
【0056】
図52に示すように、第1爪部314の全体が切除部326に入ると、図54に示すように、第2爪部315が第2スリーブ分割体32の突起329の上面に突き当たり、第1スリーブ分割体31が止まる。このとき、図53に示すように、第2爪部315の先端部だけが切除部328に挿入されている。
【0057】
この状態では、第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とが離隔しており、第2凸部322の上面322aがV溝321から離れているので、光ファイバ素線21aを容易にV溝321に挿入することができる。
【0058】
その後、第1スリーブ分割体31を更に強い力で押圧すると、第2爪部315が突起329を乗り越え、第1スリーブ分割体31が下がり、第1スリーブ分割体31が第2スリーブ分割体32に接合される(図6、図7、図8参照)。このとき、第2凸部322の上面322aは光ファイバ素線21aをV溝312の底部へ押し付け、その結果、光ファイバ素線21aが保持される。
【0059】
次に、センターカバー7の動作について説明する。
【0060】
センターカバー7をベース6の方へ押し込む。その結果、センターカバー7の窓孔72aにベース6の第1係止突起613が挿入されるので、センターカバー7はベース6に装着される。センターカバー7の端面板72の傾斜面72bはベース6の第2係止突起614の傾斜面614aに接触する。
【0061】
センターカバー7を指(図示せず)で更に下方へ押圧すると、センターカバー7の傾斜面72bはベース6の第2係止突起614の傾斜面614a上を滑り下り、センターカバー7が下がる。このとき、ベース6の短手方向Sで両端面板72間の間隔が第2係止突起614によって押し広げられ、端面板72にはもとの状態に戻ろうとする弾性力が生じる。この弾性力によってセンターカバー7の傾斜面72bは第2係止突起614の傾斜面614aを押圧する。したがって、センターカバー7を押圧している指の力を弱めれば、端面板72の弾性力によってセンターカバー7の傾斜面72bは上方に向かって傾斜面614a上を滑り、センターカバー7は上方へ移動し、センターカバー7の窓孔72aの下縁がベース6の第1係止突起613の下面613bに突き当たったところで止まる。
【0062】
このように、センターカバー7は、所定位置にあるセンターカバー7に指で力を加えていないときのセンターカバー7の位置と所定位置から変位した変位位置との間を移動可能であるとともに、センターカバー7が所定位置から変位位置に移動したとき、センターカバー7を初期位置に戻す弾性力が生じる。センターカバー7が所定位置にあるとき、両方の光ファイバ素線21aをスリーブ3に通すことが可能である。
【0063】
次に、サイドカバー8の動作について説明する。
【0064】
サイドカバー8は、ベース6のガイド凸部615のガイド面615aと平行な方向(ベース6の高さ方向H)に沿って後述する仮止め位置とロック位置との間を移動できる。
【0065】
サイドカバー8の窓孔82eの下縁に隣接する部分が第3係止突起616の下面616bと第4係止突起617の傾斜面617aとで挟まれ、サイドカバー8がベース6に仮止めされたときのサイドカバー8の位置が仮止め位置である。仮止め位置ではベース6の突出片611の幅広溝611cがサイドカバー8の幅広溝84aに、突出片611の溝611dがサイドカバー8の溝84bに、それぞれ間隔をあけて対向する。このとき、光ファイバコード21(被覆されている部分)を幅広溝611c,84a間に、光ファイバ素線21a(光ファイバコード21の被覆が除去された部分)を溝611d,84b間にそれぞれ挿抜可能である。
【0066】
仮止め位置にあるサイドカバー8を下方へ押し下げると、サイドカバー8の凹部82aの係合面82bがベース6のガイド凸部615のガイド面615aによってガイドされ、サイドカバー8がガイド面615aに沿って下方へ移動し、サイドカバー8の窓孔82eの下縁に隣接する部分が第4係止突起617の下面617bに係合する。このときのサイドカバー8の位置がロック位置である。
【0067】
サイドカバー8が仮止め位置からロック位置へ移動するとき、サイドカバー8の幅広溝84aの底面は光ファイバコード21をベース6の幅広溝611cの底面に、サイドカバー8の溝84bの底面は光ファイバ素線21aをベース6の溝611dの底面に、それぞれ押し付ける。この結果、光ファイバコード21はサイドカバー8とベース6とによって挟持される。
【0068】
次に、メカニカルスプライス1による光ファイバコードの接続作業について説明する。
【0069】
まず、図55に示すように、センターカバー7を所定位置におき、両サイドカバー8を仮止め位置におく。このとき、スリーブ3の第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とを離隔しておく。
【0070】
この状態で、一方の光ファイバコード21を一方のサイドカバー8とベース6との間に挿入するとともに、一方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aをスリーブ3に挿入する。
【0071】
次に、図56に示すように、一方のサイドカバー8を指で下方に押圧してロック位置に移動させる。これにより、一方のサイドカバー8とベース6とで一方の光ファイバコード21が保持される。
【0072】
その後、図57に示すように、他方の光ファイバコード21を他方のサイドカバー8とベース6との間に挿入するとともに、他方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aの端部をスリーブ3に挿入し、一方の光ファイバコード21の光ファイバ素線21aの端部に突き合わせる。
【0073】
次に、図58に示すように、他方の光ファイバコード21を一方の光ファイバコード21の方へ押圧しながら、センターカバー7を指で押圧して所定位置から変位位置まで移動させる。このとき、センターカバー7に保持されたスリーブ3がベース6の凸部603に突き当たり、スリーブ3が凸部603によって押圧され、スリーブ3の状態が離隔状態から第1スリーブ分割体31と第2スリーブ分割体32とが接合される。その結果、両方の光ファイバ素線21aの端部同士が突き合わされた状態でスリーブ3に保持される。
【0074】
その後、図59に示すように、他方の光ファイバコード21を一方の光ファイバコード21の方へ押圧しながら、他方のサイドカバー8を指で下方に押圧してロック位置に移動させる。これにより、他方のサイドカバー8とベース6とで他方の光ファイバコード21が保持される。
【0075】
最後に、センターカバー7から指を離す。その結果、図60に示すように、センターカバー7は上述のように弾性力によって所定位置にもどる。その結果、円弧状に撓んでいた両方の光ファイバ素線21aがゆるやかなS字状になり、両方の光ファイバ素線21aに光ファイバ素線21aの端部同士を突き合わせる力が生じる。
【0076】
第1実施形態によれば、合成樹脂性のスリーブ3を採用したので、製造コストを低減することができる。
【0077】
また、第2スリーブ分割体32の第2凸部322の上面322aで両方の光ファイバ素線21aを第1スリーブ分割体31のV溝312の底部に押し付けるので、光ファイバ素線21aの端面同士を正確に突き合わせることができ、メカニカルスプライスの性能低下を抑制できる。
【0078】
この発明の第2実施形態のメカニカルスプライスを図61〜図62に基づいて説明する。第1実施形態と共通する部分には同一符号を付して、その説明を省略する。
【0079】
第1実施形態では、スリーブ3はセンターカバー7と別体であるが、第2実施形態のメカニカルスプライスのスリーブ203の第1スリーブ分割体231はセンターカバー(カバー)207と一体化されている。
【0080】
第2実施形態によれば、第1実施形態の効果と同様の効果を奏するとともに、第1スリーブ分割体231とセンターカバー207とを一体化することにより、部品点数が少なくなるので、より製造コストを低減することができる。
【0081】
第2実施形態の変形例としては、スリーブ3の第2スリーブ分割体32とセンターカバー7とを一体化したものが考えられる。この変形例によれば、第2実施形態の効果と同様の効果を奏する。
【0082】
なお、第1スリーブ分割体31にV溝312が形成されているが、両方の光ファイバ素線21aの端部を収容する溝としてはV溝312に限られず、例えば、断面U字形の溝や断面半円形の溝等でもよい。
【0083】
また、スリーブ3は合成樹脂性であるが、スリーブ3の材料は合成樹脂に限らない。
【0084】
なお、上述の実施形態のセンターカバー7,207はベース6の高さ方向に沿って所定位置と変位位置との間を移動可能であるが、カバーの移動方向はベースの高さ方向に限られず、光ファイバ素線の径方向であればよい。
【符号の説明】
【0085】
1 メカニカルスプライス
3 スリーブ
31 第1スリーブ分割体
312 V溝(溝)
314 第1爪部(離隔手段)
315 第2爪部(離隔手段)
316 第3爪部(接合手段)
32 第2スリーブ分割体
322a 上面(押付け面)
326,327 切除部(離隔手段)
328 切除部(接合手段)
329 突起(離隔手段)
5 ハウジング
6 ベース
602 凹部
7,207 センターカバー(カバー)
8 サイドカバー(可動部材)
21a 光ファイバ素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の光ファイバ素線の端部とこれに接続される他方の光ファイバ素線の端部とを支持する溝を有する第1スリーブ分割体と、
前記溝に支持された前記両方の光ファイバ素線を前記溝の底部に押し付けて前記端部同士の突合せ状態を維持する押付け面を有する第2スリーブ分割体と、
前記両方の光ファイバ素線を前記溝に挿入可能なように前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とを離隔する離隔手段と、
前記押付け面が前記両方の光ファイバ素線を前記溝の底部に押し付けた状態を維持可能なように前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とを接合する接合手段と
を備えることを特徴とするスリーブ。
【請求項2】
前記溝がV溝であることを特徴とする請求項1記載のスリーブ。
【請求項3】
前記第1、第2スリーブ分割体が合成樹脂製であることを特徴とする請求項1又は2記載のスリーブ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載のスリーブと、
前記両方の光ファイバ素線と前記スリーブとを収容するハウジングと、
前記ハウジングに収容された前記両方の光ファイバ素線を前記ハウジングに固定するための光ファイバ素線固定手段とを備え、
前記ハウジングは、前記スリーブが収容される凹部が形成されたベースと、このベースに前記光ファイバ素線の径方向へスライド可能に装着され、前記凹部を覆うカバーとを有し、
前記カバーは、前記スリーブを保持可能であるとともに、前記両方の光ファイバ素線を前記スリーブに通すことが可能な所定位置とこの所定位置から変位した変位位置との間を移動可能であるとともに前記変位位置にあるときに前記スリーブを前記ベースに突き当て、
前記カバーが前記所定位置から前記変位位置に移動したとき、前記カバーを前記所定位置に戻す弾性力が生じる
ことを特徴とするメカニカルスプライス。
【請求項5】
前記カバーが前記ベースの高さ方向へスライド可能であることを特徴とする請求項4記載のメカニカルスプライス。
【請求項6】
前記光ファイバ素線固定手段は、
前記ベースの両端部のそれぞれに、前記凹部に前記光ファイバ素線の端部を挿入可能な光ファイバ素線挿入位置と前記ベースに前記光ファイバ素線を固定可能な光ファイバ素線固定可能位置との間で移動可能に連結された可動部材である
ことを特徴とする請求項4又は5記載のメカニカルスプライス。
【請求項7】
前記第1スリーブ分割体と前記第2スリーブ分割体とのうちの一方のスリーブ分割体が、前記カバーに一体化されていることを特徴とする請求項4〜6のいずれか1項記載のメカニカルスプライス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【図47】
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【図48】
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【図49】
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【図50】
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【図51】
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【図52】
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【図53】
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【図54】
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【図55】
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【図56】
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【図57】
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【図58】
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【図59】
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【図60】
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【図61】
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【図62】
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【公開番号】特開2012−189616(P2012−189616A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−166577(P2009−166577)
【出願日】平成21年7月15日(2009.7.15)
【出願人】(594041014)
【Fターム(参考)】