説明

スルフィナート基を含むオリゴマーおよびポリマー並びにその製造方法

【課題】スルフィン酸基P-(SO2)nX(Xは、1価(n=1)、2価(n=2)又は3価(n=3)の金属カチオン又はH+又はアンモニウムイオンNR4+(Rはアルキル、アリール、Hである)である)及びスルホハロゲン化物の基SO2Y基(Yは、F、Cl、Br、Iである)を有するポリマーを製造する方法を提供する。
【解決手段】SO2Y基(Yは、F、Cl、Br、Iである)を含むポリマーを、有機溶媒又は水に溶解するか又は懸濁し、還元剤を、有機溶媒もしくは水で希釈するか、又は純粋なまま溶解して又は固体として添加し、還元剤の量及び/又は還元時間及び/又は還元温度に応じて部分的に還元を行い、得られたスルフィナート基及びSO2Y基を含むポリマーを、沈殿剤で沈殿させ、続いて濾過し、乾燥することによって単離し、二酸化硫黄と有機金属修飾ポリマーの反応によってスルフィナート基を生成することができないことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
スルフィナート基であるSO2Liを含むポリマーにおいて、ジオリゴハロゲノアルカン又はオリゴハロゲノアルカンによって、スルフィナート基をスルホン基へアルキル化することで、スルフィナート基を架橋することができることは文献より既知である(特許文献1、2、3)。膜の膨潤を少なくするために、このような架橋方法を用いてアイオノマー膜を架橋することができ、それによって、それぞれの膜の処理(例えば、電気透析、拡散透析、膜燃料電池(水素膜燃料電池、直接メタノール燃料電池))において膜の機械的及び熱的安定性が優れたものになる。そのように架橋したアイオノマー膜を以下のように2種類製造することができる。すなわち、1)スルホン化したポリマーを、スルフィン化した(sulfinated)ポリマーと共に適している大部分の両性非プロトン性溶媒に溶解し、ジハロゲノ架橋剤又はオリゴハロゲノ架橋剤、例えば1,4−ジヨードブタンを必要であれば添加する。溶媒を蒸発させている間に架橋反応を行う(非特許文献1)。
2)スルフィナート基およびスルホネート基(例えば、ポリマーのスルフィナートをNaOCl、KMnO4、H2O2等で部分的に酸化させることによって製造した)の両方を含むポリマーを適した両性非プロトン性溶媒に溶解し、ジハロゲノ架橋剤又はオリゴハロゲノ架橋剤、例えば1,4−ジヨードブタンを必要であれば添加する。溶媒を蒸発させている間に架橋反応を行う(非特許文献2)。しかしながら、現在までにスルフィン化した(sulfinated)ポリマーのみが文献より既知となっており、該ポリマーは、二酸化硫黄と有機金属化(organometallated)ポリマーの反応から製造される(例えば、ブチルリチウム又はフェニルリチウムとポリスルホンの反応からリチウム化(lithiated)ポリスルホン)(特許文献4、5)。しかしながら、有機金属試薬は、ポリマーの官能基と反応し、ポリマーを破壊することができるので、すべてのポリマーが有機金属試薬で処理することができるとは限らない。有機金属試薬はカルボニル基と反応するので、例えば主鎖にカルボニル基を含む高性能の熱可塑性ポリエーテルケトン・ファミリー(ポリエーテルケトン PEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトン PEEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンケトン PEEKK又はポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(登録商標))をリチウム化(lithiation)によってスルフィン化(sulfinated)することができない。スルフィナート基の導入のために、別の方法をこれらのポリマーのために見出さなければならない。ポリエーテルケトンをスルフィン化(sulfinated)することが、このようなポリマーを架橋することができるので望ましい。前記ポリエーテルケトンは、例えばポリスルホン又はポリフェニレンエーテルより熱的に、かつ機械的に安定しており、従ってポリエーテルケトン・ポリマー由来の架橋したアイオノマー膜は、(電気)膜処理において優れた安定性を示す。
【背景技術】
【0002】
低分子のスルホクロリドを、Zn粉末、鉄粉末、亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、H2S、LiAlH4、トリエチルアルミニウム、エチルアルミニウム・セスキクロリドを用いた還元によってスルフィナートへ還元することができる(非特許文献3、4)。主にZn粉末(非特許文献5)とLiAlH4(非特許文献6)で還元することによって収率が良くなる。驚くべきことに、非イオンのスルホネート基誘導体、例えばスルホクロリド基SO2Clを含むポリマーを(ポリマーのスルホクロリドは、チオニルクロリド、リンのトリクロリド酸化物、リン五酸化物とスルホン酸基の反応によって、又はスルフリルクロリドとリチル化した(lithiated)ポリマーの反応によって容易に入手できる)、適した還元剤を用いて又は適した還元剤の混合物を用いて、溶液中もしくは懸濁液中で、高収率で、かつ架橋することなく変換することができることを今日では見出した。各ポリマーのスルホクロリド基を、還元剤の種類及び量又は他の反応条件(例えば、濃度、温度)に応じて完全に又は部分的にスルフィナート基へ変換することができる。反応の最中に副反応としてポリマーの架橋が全く行われないという事実は、スルフィン酸が、互いに不均化の下で反応することができることがスルフィン酸の例として知られている(非特許文献7)ので第一に注目すべきことであり、従って驚くべきことである。ポリマーのスルホクロリドの反応が、-20から-60℃の温度で、架橋することなく、高収率でLiAlH4を用いて行われることは、この反応においてルイス酸の中間体が現れ、該中間体は形成したスルフィナート基の架橋を触媒することができる(非特許文献6)ので特に驚くべきことである。
【特許文献1】1 "Vernetzung von modifizierten Engineering Thermoplasten"J. Kerres, W. Cui, W. Schnurnberger:ドイツ国特許第196 22 337.7号(1996年6月4日出願)、ドイツ特許庁(1997)。
【特許文献2】"Reticulation de Materiaux Thermoplastiques Industriels Modifies"J. Kerres, W. Cui, W. Schnurnberger:フランス国特許第F 97 06706号、1997年5月30日。
【特許文献3】"Cross-Linking of Modified Engineering Thermoplastics"J. Kerres, W. Cui, W. Schnurnberger:米国特許第6,221,923、2001年4月24日に与えられた。
【特許文献4】"Aromatic Polysulfone Compounds and their Manufacture" M. D. Guiver, O. Kutowy 米国特許第4,999,415号 (1991)。
【特許文献5】"Aromatische Polysulfonderivate und Verfahren zu ihrer Herstellung"M. D. Guiver, O. Kutowy, J. W. ApSimonドイツ国特許公開公報第36 36 854 A1号(1987)
【非特許文献1】"Development and Characterization of Crosslinked Ionomer Membranes Based Upon Sulfinated and Sulfonated PSU. 2. Crosslinked PSU Blend Membranes By Alkylation of Sulfinate Groups With Dihalogenoalkanes." Jochen Kerres, Wei Cui, Martin Junginger J. Memb. Sci. 139, 227-241 (1998)。
【非特許文献2】"New sulfonated engineering polymers via the metalation route. 2. Sulfinated-Sulfonated Poly(ethersulfone) PSU Udel(登録商標) and Its Crosslinking."J. Kerres, W. Zhang, W. Cui J. Polym. Sci.: Part A: Polym. Chem. 36, 1441-1448 (1998)
【非特許文献3】"Syntheses of sulfinic acids" Uri Zoller, in "The Chemistry of Sulphinic Acids, Esters and Their Derivatives", ed. by S. Patai, John Wiley and Sons, 1990, New York, S. 187f
【非特許文献4】"VIII. Reductions of Sulfonyl Derivatives" S. Oae, in "Organic Sulfur Chemistry: Structure and Mechanism", ed. by J. T. Doi, CRC Press, Inc., Boca Raton, 1991, S. 334f
【非特許文献5】"Sodium p-Toluenesulfinate" F. C. Whitmore, F. H. Hamilton, in "Organic Syntheses", Coll. Vol. I, ed by H. Gilman, 2nd ed., John Wiley and Sons, New York, 1956
【非特許文献6】"Lithium Aluminium Hydride Reduction of Certain Sulfonic Acid Derivatives" L. Field, F. A. Grunwald J. Org. Chem. 16, 946-953 (1951)
【非特許文献7】"Development and Characterization of Crosslinked Ionomer Membranes Based Upon Sulfinated and Sulfonated PSU. 1. Crosslinked PSU Blend Membranes ByDisproportionation of Sulfinic Acid Groups." Jochen Kerres, Wei Cui, Ralf Disson, Wolfgang Neubrand J. Memb. Sci. 139, 211-225 (1998)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウムのようなナトリウム塩の水溶液もしくは他の含硫還元剤又はこのような還元剤の混合物を用いるポリマーのスルホクロリドの還元において、スルホクロリドの一部のみをスルフィナート基へ変換し、残存するスルホクロリド基は変化しないままである(例えば、スルホン酸基へ加水分解されない)といった方法で反応を制御することができることは、さらに驚くべきことである。このことは、スルホクロリド基とスルフィナート基の両方を含むポリマーのスルフィナート基をS−アルキル化によってアルキル化する場合、重要なことである。アルキル化の例として:
− ジハロゲノ化合物もしくはオリゴハロゲノ化合物又は他の二官能基のもしくは少数の官能基を有する(oligofunctional)アルキル化剤による共有結合による架橋、及び/又は
− 単官能基のアルキル化剤による反応がある。
【0004】
イオン性の(ionical)スルホン酸塩誘導体の代わりに、スルホクロリド基がポリマーに使用できる場合、スルフィナートのS−アルキル化はより大きい収率で進行する。これは、おそらく非荷電のスルホクロリド基は、溶媒によって、スルホン酸塩の基よりもよく溶媒和され、該溶媒は、スルフィナート基を含むポリマーに通常用いられるもの(N−メチルピロリジノン NMP、N,N−ジメチルアセトアミド DNAc、N,N−ジメチルホルムアミド DMF、ジメチルスルホキシド DMSO又はスルホランのような両性非プロトン性溶媒)であるからである。溶媒和が優れていることによって、スルホクロリド化(sulfochlorinated)ポリマー及びスルフィン化(sulfinated)ポリマーの両方の溶解度が優れたものとなり(イオン効果:異なるポリマーを含む溶液のイオン濃度及びそれによるイオン強度が小さい場合、スルフィン化(sulfinated)ポリマーもよく溶解する)、従って、スルフィナート基をアルキル化剤と共に含むポリマーの反応性が高くなる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の方法で、本発明によるポリマーのスルフィナートの多数が入手可能であり、実際に、すべてのポリマー又はオリゴマーのスルホン酸を、スルホハライド又は別の非イオン性のスルホン酸誘導体へ転換した後に、それぞれのポリマー又はオリゴマーのスルフィナートに換えることができる。従って、詳細にはスルフィン化(sulfinated)ポリマーが入手可能であり、例えば主鎖又は側鎖にカルボニル基を含むポリマーのような該ポリマーは、他の方法でスルフィン化する(sulfinated)ことができない。詳細には、ポリエーテルケトンのファミリー由来の高性能の熱可塑性物質を本発明に従ってスルフィン化することができるが、これに限定されない。
【発明の効果】
【0006】
従って、新規な共有結合架橋オリゴマー又はポリマー又はポリマー(混合)膜は、様々な用途、例えば、膜燃料電池、電気透析(必要であれば両極性膜を用いた)、浸透気化、ガスの分離、拡散透析、逆浸透、パーストラクションなどのような膜処理に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】図1は、PSU-SO2ClのIRスペクトル(スペクトル1)、SO2とPSU-Liの反応によって製造したPSU-SO2LiのIRスペクトル(スペクトル2)、及びLiAlH4でPSU-SO2Clを還元することによって製造したPSU-SO2LiのIRスペクトル(スペクトル3)を示す図である。
【図2】図2は、スルフィン化(sulfinated)PEEKのFTIRスペクトルを示す図である。
【図3】図3は、種々のPEEKのスルホ誘導体のIRスペクトルの比較を示す図である。
【図4】図4は、スルフィン化(sulfinated)PEEKの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図5】図5は、出発ポリマーPEEK-SO2Clの1H-NMRスペクトルを示す図である。
【図6】図6は、膜の水の取り込みの温度への依存を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の還元方法の特別な利益は、等モルより少ない量の還元剤によってスルホニル基を一部分のみ還元することができることにあり、従って同じバックボーン上にスルフィナート基とスルホニル基の両方を持つポリマー又はオリゴマーが得られる。スルホニル基は、別の工程で、酸、アルカリ及び/又は中性によりそれぞれスルホネート基へ加水分解され、従ってスルホネート基及びスルフィナート基の両方を含むオリゴマー又はポリマーが生じ、さらなる工程で、共有結合で架橋したプロトン伝導ポリマー膜に転換することができ、それによってスルフィナート基を通常の方法に従って架橋することができる(特許文献1、2、3)。
【0009】
部分的にスルフィナートに還元されたポリマーのスルホハライドの可能な別の製造は、同じポリマーのバックボーン上に2種又は3種の異なるスルホハライド基を持つポリマーを使用することによって可能になる。スルホクロリド、スルホブロミド及び/又はスルホフルオリドからなる組み合わせが特に好ましい。同じポリマー分子内のスルホクロリド及びスルホブロミド基からなる組み合わせが特に好ましい。スルホハライド基の割合は、互いにあらゆる任意の値であってもよい。選択した還元剤及び用いる溶媒により、対応するスルホハライドは還元への異なる傾向を示す。
【0010】
上記ですでに述べたように、スルホハライド及びスルフィナート基を同じバックボーン上に含むポリマーの製造が特に好ましい。続いて、ポリマーのPEEKを用いる実施例5で例として示すように、さらに加工して共有結合で架橋した膜を作る。もうひとつの方法として、架橋した後、残存するスルホハライド基を、水、希釈した酸及び/又はアルカリ中で加水分解し、スルホン酸又はスルホン酸塩誘導体へ換える。
【0011】
最終生成物内でのスルホクロリドとスルフィナート基の比は、あらゆる任意の値を採用することができる。それは、ただただ選択した還元条件のみに依存する。その還元条件として、
a)還元時間:数秒から60時間の間であり、10から30時間が好ましい。
b)還元の温度:媒体に応じて-60℃から100℃の間である。還元剤として亜硫酸ナトリウムを用いた場合、50℃から100℃の間である。
c)用いる溶媒:水及び両性非プロトン性溶媒が好ましく、両性非プロトン性極性溶媒(NMP、DMAc、DMSO及びTHF)及び任意の互いに混合したものが特に好ましい。
ことが挙げられる。
【0012】
本発明によるスルフィン化(sulfinated)オリゴマー及びポリマーの還元が行われている間、二官能基又は少数の官能基を有する(oligofunctional)架橋剤(例えば1,4−ジヨードブタン)を除く他のアルキル化剤をスルフィン化(sulfinated)ポリマー又はオリゴマーの適した溶媒の溶液に同時に添加することができ、該アルキル化剤は、スルフィナート基を架橋反応と同時にアルキル化する。それによって、架橋した膜及び他の生成物を製造することができ、それらの性質を、さらに導入した官能基によって改変する。他のアルキル化剤が酸性の官能基を含む場合、架橋した膜及び他のポリマー生成物の、例えばカチオン伝導性、特にプロトン伝導性が生じる。塩基性基を含むアルキル化剤でアルキル化すると、塩基性アニオン交換基で修飾された膜が得られる。
【0013】
本発明のポリマー及びオリゴマーの主鎖(バックボーン)は任意に選択されるが、以下のポリマー:
−ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン、ポリ(1,4−ブタジエン)、ポリ(1,2−ブタジエン)のようなポリオレフィン
−ポリスチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(α,β,β−トリフルオロスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)のようなスチレン(共)重合体
−Nafion(登録商標)又はNafion(登録商標)のSO2Hal-前駆体(Hal=F、Cl、Br、I)、Dow(登録商標)膜、GoreSelect(登録商標)膜のような過フッ素化アイオノマー
−スルホン化PVDF及び/又はそのSO2Hal-前駆体(Halは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素を表す)
−以下のような(ヘテロ)アリールが主鎖のポリマー:
−ポリエーテルケトンPEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンPEEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンケトンPEEKK、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(登録商標)のようなポリエーテルケトン
−ポリスルホンUdel(登録商標)、ポリフェニルスルホンRadel R(登録商標)、ポリエーテルエーテルスルホンRadel A(登録商標)、ポリエーテルスルホンPES Victrex(登録商標)のようなポリエーテルスルホン
−PBI Celazol(登録商標)並びに(ベンズ)イミダゾール・モノマーを含む他のオリゴマー及びポリマー((ベンズ)イミダゾール基は、主鎖またはポリマーの側鎖に存在することができる)のようなポリ(ベンズ)イミダゾール
−例えば、ポリ(2,6−ジメチルオキシフェニレン)、ポリ(2,6−ジフェニルオキシフェニレン)のようなポリフェニレンエーテル
−ポリフェニレン硫化物及び共重合体
−ポリ(1,4−フェニレン)又はポリ(1,3−フェニレン)(必要であれば、ベンゾイル−、ナフトイル−又はo−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基、m−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基又はp−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基を用いて側基に修飾することができる)
−ポリ(ベンズオキサゾール)及び共重合体
−ポリ(ベンズチアゾール)及び共重合体
−ポリ(フタラジノン)及び共重合体
−ポリアニリン及び共重合体
が主鎖として好ましい。
【0014】
以下の反応式(1)及び(2):
【化1】


【化2】


は、スルホン化PEEK(polyetheretherketone、ポリエーテルエーテルケトン)のスルフィナートへの典型的な還元を示す。
【0015】
スルホン化PEEKの、対応するスルホクロリドを経由するスルフィナートへの部分的な還元を、例として以下のフローチャートに表す。
【化3】

【0016】
ポリマーのスルフィナートは非常に不安定であるので、生じたナトリウム塩の形態を、かなり安定であるリチウム塩に陽イオン交換によって換える。
【0017】
本発明の方法によれば、スルホクロリド化(sulfochlorinated)ポリスルホン(polysulfone、PSU)又は他のポリ(エーテルスルホン)並びにスルホクロリド化(sulfochlorinated)PEEK又は他のポリ(エーテルケトン)を部分的に又は完全に還元することが大変特に好ましい。
【0018】
共有結合で架橋することによって製造した膜は、水素燃料電池、特に膜燃料電池で、主なポリマーのバックボーンに応じて-50℃から+280℃までの温度の範囲内で使用することができる。
【実施例1】
【0019】
(PSUスルホクロリドをリチウムアルミニウム水素化物で還元することによるスルフィン化(sulfinated)ポリスルホンPSU Udel(登録商標)の製造)
10.83gのスルホクロリド化(sulfochlorinated)PSU Udel(登録商標)を300mlのテトラヒドロフラン(tetrahydrofurane、THF)に溶解した。溶液を、アルゴン保護ガス下で、-65℃まで冷却した。この後、0.013モル濃度のリチウムアルミニウム水素化物THF溶液13mlを2時間以内に滴下漏斗によってポリマー溶液に添加した。還元の開始は、水素の発生によって示される。水素の発生が約1時間後に終了した後、10%LiOH溶液60mlとエタノール120mlの混合物を反応混合物に入れた。この後、反応混合物を、2.5 lのイソプロパノール内に沈殿させ、濾過した。残留物を、60℃及び圧力が50ヘクトパスカルの乾燥オーブン内で乾燥した。PSUスルフィナートの生成を、生成物のIRスペクトルによって観察した。970cm-1におけるスルフィナートのバンドがはっきりと認識できた(図1、PSU-SO2ClのIRスペクトル(スペクトル1)、SO2とPSU-Liの反応によって製造したPSU-SO2LiのIRスペクトル(スペクトル2)、及びLiAlH4でPSU-SO2Clを還元することによって製造したPSU-SO2LiのIRスペクトル(スペクトル3))。
【実施例2】
【0020】
(亜硫酸ナトリウム水溶液でPEEK-SO2Clを還元することによるスルフィン化(sulfinated)ポリ(エーテルエーテルケトン)PEEKの製造)
材料:
7.6g PEEK-SO2Cl(0.02モル)
126g(1モル) Na2SO3
500ml H2O
【化4】


PEEKSO2Clを、500mlの2M Na2SO3溶液に添加し、70℃で20時間攪拌した。この後、100℃まで加熱し、この温度で10分間反応させた。次に、白色ポリマーを濾過して分離した。次に、ポリマーを、500mlの10%LiOH溶液に入れて攪拌して、イオン交換によってスルフィナート基をLiの形態へ換えた。この後、それを濾過し、洗浄水が中性の反応に至るまで沈殿物を洗浄した。この後、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。この後、ポリマーを水に懸濁し、透析した。透析したポリマー溶液を脱水し、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。
【0021】
IR:970cm-1におけるSO2Liのスルフィナート基のバンドを容易に検出した(図2)。
【0022】
スルフィン化(sulfinated)PEEKは、NMP及びDMSOに容易に溶解できる。1,4−ジヨードブタンを前記ポリマーのNMP溶液に与えた場合、5分以内にゲル化が起こり、それによりポリマーが架橋した。図4は、スルフィン化(sulfinated)PEEKの1H-NMRスペクトルを示す。
【0023】
元素分析:1.0基が置換した。
【0024】
【表1】

【0025】
生成物であるポリマーの透析後の元素分析(ポリマー内にスルホクロリドとして存在するClがまだある):
【0026】
【表2】

【0027】
出発生成物であるスルホクロリド化(sulfochlorinated)PEEKの元素分析:
【0028】
【表3】

【0029】
官能基の25%がスルホクロリドとして存在し、官能基の75%がスルフィナートとして存在すると仮定して計算した値を用いた元素分析:
分子量397g/モル(C19H11O7S1Cl0.25Li0.75
【0030】
【表4】

【実施例3】
【0031】
(亜硫酸ナトリウム水溶液でPEEK-SO2Clを還元することによる部分的にスルフィン化した(sulfinated)ポリ(エーテルエーテルケトン)PEEKの製造)
材料:
20g PEEK-SO2Cl(0.053モル)
300ml 2モル濃度のNa2SO3水溶液
【化5】


PEEKSO2Clを、300mlの2M Na2SO3溶液に添加し、70℃で20時間攪拌した。次に、白色ポリマーを濾過して分離した。次に、ポリマーを、500mlの10%LiOH溶液に入れて攪拌して、Liの形態のスルフィナート基にした。この後、それを濾過し、洗浄水が中性の反応に至るまで沈殿物を洗浄した。この後、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。この後、ポリマーを水に懸濁し、透析した。透析したポリマー溶液を脱水し、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。
【0032】
透析後の元素分析の結果:
【0033】
【表5】

【0034】
元素分析の結果では、反復単位当たり、残存スルホクロリド基は約0.28、得られたスルフィナート基は0.72であった。過剰のNaOClによるスルフィン化(sulfinated)ポリマーの酸化還元滴定及び亜硫酸ナトリウムによる逆滴定では、スルフィナート基は反復単位当たり約0.58だった。
【0035】
前記滴定のデータ:
CNa2S2O3=0.1N
CNaOCl=0.4962mmol/g
1.259g PEEK-SO2Li
11.265g NaOCl(5.5897mmol)
VNa2S2O3=70.626ml
GNaOCl=70.626*0.1/2=3.5313mmol
GSO2Li=5.5897-3.5313=2.0584mmol
40℃、4時間、150ml H2O。

IECPEEK-SO2Li=2.0584/1.259=1.63mmol/g(反復単位当たり約0.58 SO2Li基)。
【0036】
酸化したポリマーを0.1N NaOHで滴定した。その結果、IECは、ポリマーのグラム当たり2.52meq SO3H基であった。出発ポリマーであるスルホン化PEEK(スルホクロリド生成前)は、2.7meq/gのIECを有していた。
【実施例4】
【0037】
(部分的に還元されたPEEK-SO2Clの製造)
材料:
7.6g PEEK-SO2Cl(0.02モル)
126g(1モル)Na2SO3
500ml H2O
【化6】


PEEKSO2Clを、300mlの2M Na2SO3溶液に添加し、70℃で20時間攪拌した。次に、白色ポリマーを濾過して分離した。次に、ポリマーを、500mlの10%LiOH溶液に入れて攪拌して、イオン交換によってLiの形態のスルフィナート基にした。この後、それを濾過し、洗浄水が中性の反応に至るまで沈殿物を洗浄した。この後、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。この後、ポリマーを水に懸濁し、透析した。透析したポリマー溶液を脱水し、重量が一定になるまでポリマーを室温で真空乾燥した。得られた生成物は、スルフィナート基とスルホクロリド基の両方を含んでいた。
【実施例5】
【0038】
(スルフィン化(sulfinated)PEEKを用いた共有結合で架橋した膜の製造)
実施例3のスルフィン化(sulfinated)PEEK(反復単位当たり0.72のスルフィナート基および0.28のスルホクロリド基)を、必要であればスルホン化PEK-SO3Li(IECsPEK=1.8meq/g)と共にNMPに溶解して、15%溶液を得た。架橋剤である1,4−ジヨードブタンを溶液に添加し、膜を成形した。真空乾燥オーブン内で(初めは100℃/800hPas、次に120℃/50hPas)溶液を蒸発させ、前記乾燥オーブンから膜を取り出した。冷却した後、それを水中に移し、60℃の7%NaOH内で1時間、次に90℃の水内で1日、それから90℃の10%H2SO4内で1日、最後に90℃の水で1日、後処理した。
【0039】
膜の製造:
【0040】
【表6】

【0041】
膜のキャラクタリゼーションの結果:
【0042】
【表7】

【0043】
図6から、PEEK-SO2LiSO2Cl(スルホクロリドとスルフィナート基の両方を含むPEEK)由来の共有結合で架橋した膜の膨潤は、まさに90℃の温度では33%のみであり、これは22.1Ω*cmというプロトンの伝導度が高い時のものであることが分かる。このことは、この膜が、80℃を越える温度での膜燃料電池への応用の非常に良い見通しを期待させる注目すべき結果である。
【0044】
以下のスキーム:
【化7】


は、部分的に還元されたPEEK-SO2Clからの共有結合で架橋した膜の生成を示す。
【0045】
本発明において特に好ましいポリマーを、再度その構造と共に以下に示す。示されているポリマーは、還元する前にスルホハライド基で置換される。反復単位当たりの置換の程度は、ポリマーごとに異なり、反復単位当たりのスルホハライド基は10までの値に達することができる。スルホハライド基は、1から5まで、特に2から4までの値であることが好ましい。スルホハライド基をスルフィナート基へ100%還元することができるが、スルホハライド基をスルフィナート基へ部分的に還元することが好ましい。用いるスルホハライド基の30から60%までの値が好ましい。
【0046】
スルホハライド基とスルホクロリド基の両方を持つポリマーの共有結合した膜の製造において、加水分解後に0.8から2.2までのイオン交換容量(ion exchange capacity、IEC)を有する膜が好ましく、1.0から1.8までのIECを有する膜が特に好ましい。
【0047】
本発明において特に好ましい一般式(1)の反復単位を有するポリマーとして、単独重合体及び例えばVictrex(登録商標)720P、Astrel(登録商標)などのランダム共重合体である共重合体が挙げられる。特に好ましいポリマーは、ポリアリールエーテル、ポリアリールチオエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアゾール、ポリフェニレン、ポリフェニレンビニレン、ポリアニリン、ポリアズレン、ポリカルバゾール、ポリピレン、ポリインドフェニン及びポリビニルピリジンであり、特にポリアリールエーテルである。
【0048】
ポリアリールエーテル:
ポリフェニレンオキシド
【化8】


ポリアリールチオエーテル:
ポリフェニレンスルフィド
【化9】


ポリスルホン:
Victrex(登録商標)200P
【化10】


Victrex(登録商標)720P
【化11】


(nはoより大きい。)

Radel(登録商標)
【化12】


Radel(登録商標)R
【化13】


Victrex(登録商標)HTA
【化14】


Astrel(登録商標)
【化15】


(nはoより小さい。)

Udel(登録商標)
【化16】


ポリエーテルケトン:
PEK
【化17】


PEKK
【化18】


PEKEKK
【化19】


PEEK
【化20】


PEEKK
【化21】


ポリピロール:
【化22】


ポリチオフェン:
【化23】


ポリアゾール:
ポリイミダゾール
【化24】


ポリフェニレン:
【化25】


ポリフェニレンビニレン:
【化26】


ポリアニリン:
【化27】


ポリアズレン:
【化28】


ポリカルバゾール:
【化29】


ポリピレン:
【化30】


ポリインドフェニン:
【化31】


ポリビニルピリジン:
【化32】


【化33】


【化34】

【0049】
一般式(1A-1)、(1B-1)、(1C-1)、(1I-1)、(1G-1)、(1E-1)、(1H-1)、(1I-1)、(1F-1)、(1J-1)、(1K-1)、(1L-1)、(1M-1)及び/又は(1N-1)の反復単位を有する架橋ポリマーが本発明において特に好ましい。
【0050】
本発明において、nは、架橋ポリマーの一つの高分子鎖に沿う反復単位の数を示す。このような架橋ポリマーの一つの高分子鎖に沿う一般式(1)の反復単位の数は、10より大きい又は10と等しい整数であるのが好ましく、特に100より大きい又は100と等しい整数であるのが好ましい。架橋ポリマーの一つの高分子鎖に沿う一般式(1A)、(1B)、(1C)、(1D)、(1E)、(1F)、(1G)、(1H)、(1I)、(1J)、(1K)、(1L)、(1M)、(1N)、(1O)、(1P)、(1Q)、(1R)、(1S)及び/又は(1T)の反復単位の数は、10より大きい又は10と等しい整数であるのが好ましく、特に100より大きい又は100と等しい整数であるのが好ましい。
【0051】
本発明の特に好ましい実施態様の一つにおいて、高分子鎖の数平均分子量は、25,000g/モルより大きく、適切なのは50,000g/モルより大きく、特に100,000g/モルより大きい。
【0052】
引用した非特許文献
(非特許文献1)"Development and Characterization of Crosslinked Ionomer Membranes Based Upon Sulfinated and Sulfonated PSU. 2. Crosslinked PSU Blend Membranes By Alkylation of Sulfinate Groups With Dihalogenoalkanes." Jochen Kerres, Wei Cui, Martin Junginger J. Memb. Sci. 139, 227-241 (1998)。
(非特許文献2)"New sulfonated engineering polymers via the metalation route. 2. Sulfinated-Sulfonated Poly(ethersulfone) PSU Udel(登録商標) and Its Crosslinking."
J. Kerres, W. Zhang, W. Cui J. Polym. Sci.: Part A: Polym. Chem. 36, 1441-1448 (1998)
(非特許文献3)"Syntheses of sulfinic acids" Uri Zoller, in "The Chemistry of Sulphinic Acids, Esters and Their Derivatives", ed. by S. Patai, John Wiley and Sons, 1990, New York, S. 187f
(非特許文献4)"VIII. Reductions of Sulfonyl Derivatives" S. Oae, in "Organic Sulfur Chemistry: Structure and Mechanism", ed. by J. T. Doi, CRC Press, Inc., Boca Raton, 1991, S. 334f
(非特許文献5)"Sodium p-Toluenesulfinate" F. C. Whitmore, F. H. Hamilton, in "Organic Syntheses", Coll. Vol. I, ed by H. Gilman, 2nd ed., John Wiley and Sons, New York, 1956
(非特許文献6)"Lithium Aluminium Hydride Reduction of Certain Sulfonic Acid Derivatives" L. Field, F. A. Grunwald J. Org. Chem. 16, 946-953 (1951)
(非特許文献7)"Development and Characterization of Crosslinked Ionomer Membranes Based Upon Sulfinated and Sulfonated PSU. 1. Crosslinked PSU Blend Membranes By
Disproportionation of Sulfinic Acid Groups." Jochen Kerres, Wei Cui, Ralf Disson, Wolfgang Neubrand J. Memb. Sci. 139, 211-225 (1998)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともスルフィナート基(P-(SO2)nX、Xは、1-(n=1)、2-(n=2)又は3-(n=3)価の金属カチオン又はH+又はアンモニウムイオンNR4+である(Rは、アルキル、アリール、Hである))を大量に又は表面的に含むポリマー又はオリゴマーであり、該ポリマー又は該オリゴマーは、SO2Y基(Yは、F、Cl、Br、I、OR、NR2(Rは、アルキル及び/又はアリール及び/又はHである)、N−イミダゾール、N−ピラゾールである)を含むポリマー又はオリゴマーを、懸濁液又は溶液の状態で適した還元剤を用いて、大量に又は表面的に、完全に又は部分的に還元することによって得られることを特徴とする、該ポリマー又はオリゴマー。
【請求項2】
前記ポリマー又はオリゴマーは、
−ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、ポリノルボルネン、ポリメチルペンテン、ポリイソプレン、ポリ(1,4−ブタジエン)、ポリ(1,2−ブタジエン)のようなポリオレフィン
−ポリスチレン、ポリ(メチルスチレン)、ポリ(α,β,β−トリフルオロスチレン)、ポリ(ペンタフルオロスチレン)のようなスチレン(共)重合体
−Nafion(登録商標)又はNafion(登録商標)のSO2Hal前駆体(HalはF、Cl、Br、Iである)、Dow(登録商標)膜、GoreSelect(登録商標)膜のような過フッ素化アイオノマー
−以下のような(ヘテロ)アリールが主鎖のポリマー:
−ポリエーテルケトンPEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンPEEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンケトンPEEKK、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(登録商標)のようなポリエーテルケトン
−ポリスルホンUdel(登録商標)、ポリフェニルスルホンRadel R(登録商標)、ポリエーテルエーテルスルホンRadel A(登録商標)、ポリエーテルスルホンPES Victrex(登録商標)のようなポリエーテルスルホン
−PBI Celazol(登録商標)並びに(ベンズ)イミダゾール・モノマーを含む他のオリゴマー及びポリマー((ベンズ)イミダゾール基は、主鎖またはポリマーの側鎖に存在することができる)のようなポリ(ベンズ)イミダゾール
−例えば、ポリ(2,6−ジメチルオキシフェニレン)、ポリ(2,6−ジフェニルオキシフェニレン)のようなポリフェニレンエーテル
−ポリフェニレンスルフィド及び共重合体
−ポリ(1,4−フェニレン)又はポリ(1,3−フェニレン)(必要であれば、ベンゾイル−、ナフトイル−又はo−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基、m−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基又はp−フェニルオキシ−1,4−ベンゾイル基を用いて側基に修飾することができる)
−ポリ(ベンゾオキサゾール)及び共重合体
−ポリ(ベンズチアゾール)及び共重合体
−ポリ(フタラジノン)及び共重合体
−ポリアニリン及び共重合体
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマー又はポリマー(混合)膜。
【請求項3】
前記ポリマー又はオリゴマーは、(ヘテロ)アリールが主鎖のポリマーからなる群より選択されることを特徴とする、請求項1ないし2のいずれか一つの請求項に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマー。
【請求項4】
前記ポリマー又はオリゴマーは、
−ポリエーテルケトンPEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンPEEK Victrex(登録商標)、ポリエーテルエーテルケトンケトンPEEKK、ポリエーテルケトンエーテルケトンケトンPEKEKK Ultrapek(登録商標)のようなポリエーテルケトン
−ポリスルホンUdel(登録商標)、ポリフェニルスルホンRadel R(登録商標)、ポリエーテルエーテルスルホンRadel A(登録商標)、ポリエーテルスルホンPES Victrex(登録商標)のようなポリエーテルスルホン
からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1、2ないし3のいずれか一つの請求項に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマー。
【請求項5】
還元剤として、Zn粉末、鉄粉末、亜硫酸ナトリウム、又は亜ジチオン酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム若しくはこれらの含硫塩の混合物などの他の還元含硫塩、ヒドラジン、H2S、LiAlH4、トリエチルアルミニウム、エチルアルミニウム・セスキクロリドを使用することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一つの請求項に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマー。
【請求項6】
還元剤として、固体状態の若しくは水溶液である亜硫酸ナトリウム、固体状態の又はエーテル溶媒の溶液であるZn粉末又はLiAlH4が好ましいことを特徴とする、請求項5に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマー。
【請求項7】
SO2Y基(Yは、F、Cl、Br、I、OR、NR2(Rは、アルキル及び/又はアリール及び/又はHである)、N−イミダゾール、N−ピラゾールである)を含むポリマー又はオリゴマーを、適した有機溶媒又は水に溶解するか又は懸濁し、還元剤を、有機溶媒もしくは水で希釈するか、又は純粋なまま溶解して又は固体として添加し、還元剤の量及び/又は還元時間及び/又は還元温度に応じて完全に又は部分的に還元を行い、得られたスルフィナート基を含むポリマー又はオリゴマーを、適した沈殿剤で沈殿させ、必要であれば、塩基又は酸の水溶液又は非水溶液を用いて、残存するSO2Y基をスルホナート基SO3Xに加水分解し、続いて両性非プロトン性溶媒に溶解し、再び適した沈殿剤で沈殿させ、続いて濾過し、乾燥することによって単離することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか一つの請求項に記載のスルフィナート基(P-(SO2)nX)を含むポリマー又はオリゴマーを還元する方法。
【請求項8】
SO2Y基を含むポリマー又はオリゴマーを、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒又は水又はアルコールに溶解するか、又は懸濁することを特徴とする、請求項7記載の方法。
【請求項9】
還元剤として、テトラヒドロフランなどのエーテル溶媒に溶解したLiAlH4を用いることを特徴とする、請求項7ないし8のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項10】
還元を、-20℃から-80℃までの温度で行うことを特徴とする、請求項7ないし請求項9のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項11】
沈殿剤として、メタノール、エタノール若しくはプロパノールのようなアルコール又は水を用いることを特徴とする、請求項7ないし請求項10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項12】
両性非プロトン性溶媒として、N−メチルピロリジノン、N,N−ジメチルアセトアミド又はN,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド又はスルホランを用いることを特徴とする、請求項7ないし10のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項13】
SO2Y基を含む前記ポリマー又はオリゴマーを水に溶解するか、又は懸濁し、還元剤として、亜硫酸ナトリウム又は亜ジチオン酸ナトリウム又はチオ硫酸ナトリウムを、固体として又は水に溶解して添加し、還元剤の量及び/又は還元時間及び/又は還元温度に応じて完全に又は部分的に還元を行い、得られたスルフィナート基を含むポリマー又はオリゴマーを、適した沈殿剤で沈殿させ、必要であれば、塩基又は酸の水溶液又は非水溶液を用いて、残存するSO2Y基をスルホナート基SO3Xへ加水分解し、続いて両性非プロトン性溶媒に溶解し、再び適した沈殿剤で沈殿させ、続いて濾過し、乾燥することによって単離することを特徴とする、請求項6ないし7のいずれか一つの請求項に記載の方法。
【請求項14】
ジハロゲノアルカンもしくはオリゴハロゲノアルカン又はトシル基、エポキシ基を有する化合物のような他の二官能基もしくは少数の官能基を有する(oligofunctional)アルキル化剤をポリマーの両性非プロトン性溶媒の溶液に添加することによって、請求項1ないし13のいずれか一つの請求項に記載の部分的に又は完全にスルフィン化した(sulfinated)ポリマー又はオリゴマーから製造される架橋ポリマー。
【請求項15】
架橋剤を部分的に又は完全にスルフィン化した(sulfinated)ポリマーの溶液に添加する前に、必要であればさらに他の官能性を持たせたポリマーを溶解して又は固体として添加することを特徴とする、請求項14に記載の架橋ポリマー又はポリマー膜又はポリマー混合膜。
【請求項16】
スルフィン化(sulfinated)ポリマーを含むポリマー溶液に添加される前記ポリマーは、陽イオン交換ポリマー、あるいは陽イオン交換基であるSO3H及び/又はPO3H2及び/又はCOOH、及び/又はSO2Y及び/又はPO2Y2若しくはCOYのような陽イオン交換基の非イオン性前駆体を含むその非イオン性前駆体から選択されることを特徴とする、請求項1ないし15のいずれか一つの請求項に記載の架橋ポリマー又はポリマー膜又はポリマー混合膜。
【請求項17】
スルフィン化(sulfinated)ポリマーを含む前記ポリマー溶液と、必要であれば二官能基もしくは少数の官能基を有する(oligofunctional)架橋剤を除く他のポリマーに、さらに他の単官能基のアルキル化剤を添加し、必要であれば、該アルキル化剤はさらなる官能基を持つことができ、該官能基は:
−酸性基:COOM、PO3M2、SO3M(Mは、H又は任意の陽イオンである);
−酸性基の前駆体:COY、PO2Y2、SO2Y;
−第一級、第二級、第三級アミン、ピリジン基、イミダゾール基、ピラゾール基のような塩基性基
から選択され、
これらが、架橋反応と同時に、アルキル化によってスルフィナート基と反応することを特徴とする、請求項1ないし16のいずれか一つの請求項に記載の架橋ポリマー又はポリマー膜又はポリマー混合膜。
【請求項18】
電気化学的な方法でエネルギーを生成するために、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。
【請求項19】
-20℃から+180℃までの温度において膜燃料電池(水素又は直接メタノール燃料電池)の構成要素として、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。
【請求項20】
電気化学電池において、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。
【請求項21】
二次電池において、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。
【請求項22】
電解セルにおいて、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。
【請求項23】
ガス分離、浸透気化、パーストラクション、逆浸透、電気透析及び拡散透析のような膜分離処理において、請求項1ないし17のいずれか一つの請求項に記載の膜を使用する方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17005(P2011−17005A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−178178(P2010−178178)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【分割の表示】特願2003−526963(P2003−526963)の分割
【原出願日】平成14年9月2日(2002.9.2)
【出願人】(508236284)
【出願人】(507055877)
【Fターム(参考)】