説明

スルホニウム塩の製造方法

【課題】実質的にイオン性不純物や酸成分を含まないスルホニウム塩を製造する方法の提供
【解決手段】式(1)の化合物(R1、R2は炭化水素基又は複素環基を表すか、双方が直接又は−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンかフェニレン基を介し結合して環を形成し、R’はC1〜5のアルキル又はC6〜10のアリール)とアリール化合物とを、フッ素化アルカンスルホン酸又はフッ素化アレーンスルホン酸と脱水剤との存在下に反応させる、式(2)(Arはアリール基、X-はフッ素化アルカンスルホン酸又はフッ素化アレーンスルホン酸のアニオン残基)


のスルホニウム塩の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スルホニウム塩の製造方法に関する。さらに詳しくは、半導体のパターン形成に用いる化学増幅型レジスト用の光酸発生剤として好適なスルホニウム塩の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体、特にLSIは、近年ますます配線が微細化、高密度化し、それに伴って半導体のパターン形成に用いるレジストが、従来のg線(438nm)やi線(365nm)で露光するものから、KrFエキシマレーザー(248nm)あるいはArFエキシマレーザー(193nm)で露光するものへと進化してきている。ここで、KrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザー用のレジストは、ポリヒドロキシスチレンのヒドロキシル基をtert−ブトキシカルボニル基で保護したもの、あるいはポリ(メタ)アクリル酸のカルボキシル基を脂環式炭化水素基(たとえばアダマンチル基)で保護したものなどの有機溶剤溶液に光酸発生剤を添加したものであり、この塗膜をKrFエキシマレーザーやArFエキシマレーザーで露光すると、光酸発生剤が酸すなわちプロトン(H+)を発生し、樹脂の保護基を脱離させる。この結果、官能基が保護されていた樹脂に、フェノール性ヒドロキシル基やカルボキシル基が再生し、光の当たった部分がアルカリ現像可能となるのがこれらの、いわゆる化学増幅型レジスト、の原理である。このような用途で使用される光酸発生剤は、LSIやICとして使用されるシリコンを加工するものであるから要求事項は非常に厳しく、特にアルカリ、アルカリ土類、あるいは遷移金属などの金属イオン、あるいは塩素、臭素等のハロゲンイオン、さらには光が当たる前にレジストの保護基を脱離させる酸成分の残存や混入を極力避ける必要がある。具体的には、これらの不純物は各々100ppb以下であることが求められる。
【0003】
上記KrFあるいはArFエキシマレーザー用のレジストに用いられる光酸発生剤として代表的なものは、トリアリールスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート塩であるが、これらの製造方法としては、まずスルホキシド化合物にグリニヤール試薬を反応させた後、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナートを反応させる方法(特許文献1、非特許文献1参照。)あるいはスルホキシド化合物にトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナートを反応させ、次いでグリニヤール試薬を反応させる方法(特許文献2〜5、非特許文献2参照。)が知られている。しかしこれらの製造方法では目的物の収率が低いのみならず、グリニヤール試薬を使用するため製品中に金属あるいはハロゲンイオンが混入する問題点がある。
【0004】
上記の問題を解決するスルホニウムスルホナート塩の製造方法として、スルホキシド化合物、芳香族化合物およびパーフルオロアルカンスルホン酸無水物を反応させる方法(特許文献6参照。)が提案されている。この方法は、反応試薬として金属やハロゲンを含有するものを一切使用しないため、得られるスルホニウム塩は金属あるいはハロゲンイオンを含まないという特徴があるが、この方法には2つの欠点がある。すなわち、まず、本製造方法において、特に好ましいとされる反応比率、つまりスルホキシド1当量に対し、芳香族化合物1〜1.5当量およびパーフルオロメタンスルホン酸無水物1〜1.5当量との反応では、得られる製品の収率が低く、満足な収率を得るにはパーフルオロアルカンスルホン酸無水物を2当量以上使用する必要がある。パーフルオロアルカンスルホン酸およびその無水物は高価な化学品であり、本来1当量で充分であるべき貴重な化学品を必要以上に使用することは、製品がコスト高になるため好ましくない。次に、本製造方法におけるスルホニウム塩の精製方法は何も規定されていないが、実施例においては、まず反応混合物を蒸留水で洗浄後有機層の溶剤を真空下で除き、得られた油状物を溶剤に再溶解させる。次いで貧溶剤を加えてスルホニウム塩を晶析させ、最後に結晶をろ過し、乾燥するものであるが、反応液に含まれる酸成分は水洗と晶析では完全に除去できず、得られた製品中に微量の酸成分が残存する。
【0005】
【特許文献1】特開平08−311018号公報
【特許文献2】特開平07−324069号公報
【特許文献3】特開平10−7650号公報
【特許文献4】特開平07−252214号公報
【特許文献5】特開平08−245566号公報
【特許文献6】特許第2992517号公報
【非特許文献1】J. Am. Chem. Soc.,112, 6004 (1990)
【非特許文献2】J. Org. Chem., 53, 5571 (1988)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来のスルホニウムパーフルオロアルカンスルホナート塩の製造方法が有する欠点、すなわち収率が低く、コストが高いこと、さらに金属やハロゲンイオンあるいは酸成分が混入することの解決を目的とする。すなわち、本発明は、所望のスルホニウムスルホナート塩を高収率で、かつ金属やハロゲンイオンの混入、あるいは酸成分の残存がなく製造する方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、スルホキシド化合物とアリール化合物との縮合反応は、パーフルオロアルカンスルホン酸無水物を一切使用しなくても、理論量のパーフルオロアルカンスルホン酸と安価な脱水剤の使用で、ほぼ定量的に進行すること、またフッ素化アレーンスルホン酸を使用しても上記と同様に反応が進行すること、さらに反応液の精製時に非金属アルカリで処理すれば、金属イオンの混入なしに製品中への酸成分の残存が避けられることを見出し、本発明を完成した。
すなわち本発明は、
(1) 下記一般式(1)で表されるスルホキシド化合物(A)、
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1、R2は、それらの各々が、互いに同一若しくは異なって、置換されていてもよい炭化水素基若しくは置換されていてもよい複素環基を表すか、又は、双方が直接若しくは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して、置換されていてもよい環構造を形成しており、ここに、R’は、炭素数1〜5のアルキル基若しくは炭素数6〜10のアリール基を表す。)と、アリール基の少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合しているアリール化合物(B)とを、フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)と脱水剤(D)との存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(2)、
【0010】
【化2】

【0011】
(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表し、R1及びR2は前記定義に同じであり、X-はフッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)のアニオン残基を表す。)で示されるスルホニウム塩の製造方法。
(2) 反応後の精製工程が、該スルホニウム塩を含んでなる有機相をアンモニアまたは有機アミン化合物(E)で処理する段階を含むことを特徴とするものである、上記(1)の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、実質的にイオン性不純物および酸成分を含まない高純度なスルホニウムスルホナート塩を、高収率、低コストで製造することができる。したがって、本発明の製造方法で得られるスルホニウムスルホナート塩は、半導体微細加工用の化学増幅型レジストに用いる光酸発生剤として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のスルホニウムスルホナート塩の製造方法は、スルホキシド化合物とアリール化合物をフッ素化アルカンスルホン酸またはフッ素化アレーンスルホン酸、および脱水剤の存在下で脱水縮合させるものである。
本発明で用いられるスルホキシド化合物は下記一般式(1)で表される。
【0014】
【化3】

【0015】
式(1)中、R1、R2は、それらの各々が、互いに同一若しくは異なって、置換されていてもよい炭化水素基若しくは置換されていてもよい複素環基を表すときは、炭化水素基としては炭素数1〜30のアルキル基、炭素数6〜30のアリール基、炭素数2〜30のアルケニル基、または炭素数2〜30のアルキニル基が挙げられる。複素環基としては、酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を1〜3個含む炭素数3〜30のものが挙げられ、ヘテロ原子は同一であっても異なっていても良い。
【0016】
上記炭化水素基の炭素数1〜30のアルキル基としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、オクチル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの直鎖アルキル基、イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチル、イソヘキシルなどの分岐アルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのシクロアルキル基、ベンジル、ナフチルメチル、アントリルメチル、1−フェニルエチル、2−フェニルエチルのようなアラルキル基が挙げられる。
【0017】
上記炭化水素基の炭素数6〜30のアリール基の具体例としては、フェニルなどの単環式アリール基およびナフチル、アントラセニル、フェナンスレニル、ピレニル、クリセニル、ナフタセニル、ベンズアントラセニル、アントラキノリル、フルオレニル、ナフトキノリルなどの縮合多環式アリール基が挙げられる。
【0018】
上記炭化水素基の炭素数2〜30のアルケニル基の具体例としては、ビニル、アリル、1−プロペニル、2−プロペニル、1‐ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−メチル−1−プロペニル、1−メチル−2−プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、2−メチル−2−プロぺニルなどの直鎖状または分岐状のもの、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニルなどのシクロアルケニル基、あるいはスチリル、シンナミルのようなアリールアルケニル基が挙げられる。
【0019】
上記炭化水素基の炭素数2〜30のアルキニル基の具体例としては、エチニル、1−プロピニル、2−プロピニル、1−ブチニル、2−ブチニル、3−ブチニル、1−メチル−2−プロピニル、1,1−ジメチル−2−プロピニル、1−ぺンチニル、2−ペンチニル、3−ペンチニル、4−ペンチニル、1−メチル−2−ブチニル、3メチル−1−ブチニル、1−デシニル、2−デシニル、8−デシニル、1−ドデシニル、2−ドデシニル、10−ドデシニルなどの直鎖状または分岐状のもの、あるいはフェニルエチニルなどのアリールアルキニル基が挙げられる。
【0020】
上記複素環基の具体例としてはチエニル、フラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニルなどの単環式複素環基;インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなどの縮合多環式複素環基が挙げられる。
【0021】
上記一般式(1)中、R1、R2は置換基で置換されていてもよく、該置換基の例としては、メチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−オクチルなど炭素数1〜18の直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなど炭素数1〜18の分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなど炭素数3〜18のシクロアルキル基;フェニル、トリル、ジメチルフェニル、ナフチルなど炭素数6〜10のアリール基;チエニル、フラニル、ピラニル、ピロリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピリジル、ピリミジル、ピラジニル、インドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル、ベンゾチアゾニル、ベンゾチアジアゾリニル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、カルバゾリル、アクリジニル、フェノチアジニル、フェナジニル、キサンテニル、チアントレニル、フェノキサジニル、フェノキサチイニル、クロマニル、イソクロマニル、ジベンゾチエニル、キサントニル、チオキサントニル、ジベンゾフラニルなど炭素数3〜20の複素環基;ヒドロキシ基;メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシなど炭素数1〜18の直鎖状または分岐のあるアルコキシ基;フェノキシ、1−ナフチルキシ、2−ナフチルキシなど炭素数6〜10のアリールオキシ基;アセチル、プロピオニル、ブタノイル、2−メチルプロピオニル、ヘプタノイル、2−メチルブタノイル、3−メチルブタノイル、オクタノイルなど炭素数2〜18の直鎖状または分岐のあるアシル基;ベンゾイル、ナフトイルなど炭素数7〜11のアロイル基;メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、sec−ブトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、オクチロキシカルボニルなど炭素数2〜19の直鎖状または分岐のあるアルコキシカルボニル基;フェノキシカルボニル、ナフチルオキシカルボニルなど炭素数7〜11のアリールオキシカルボニル基;メトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、プロポキシカルボニルオキシ、イソプロポキシカルボニルオキシ、ブトキシカルボニルオキシ、イソブトキシカルボニルオキシ、sec−ブトキシカルボニルオキシ、tert−ブトキシカルボニルオキシなどの炭素数2〜19の直鎖状または分岐のあるアルキルオキシカルボニルオキシ基;アセトキシ、エチルカルボニルオキシ、プロピルカルボニルオキシ、イソプロピルカルボニルオキシ、ブチルカルボニルオキシ、イソブチルカルボニルオキシ、sec−ブチルカルボニルオキシ、tert−ブチルカルボニルオキシ、オクチルカルボニルオキシなど炭素数2〜19の直鎖状または分岐のあるアシルオキシ基;ベンゾイルオキシ、ナフトイルオキシなど炭素数6〜10のアロイルオキシ基;メルカプト基;メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、ブチルチオ、イソブチルチオ、sec−ブチルチオ、tert−ブチルチオ、ペンチルチオ、イソペンチルチオ、ネオペンチルチオ、tert−ペンチルチオ、オクチルチオ、デシルチオ、ドデシルチオなど炭素数1〜18の直鎖状または分岐のあるアルキルチオ基;フェニルチオ、2−メチルフェニルチオ、3−メチルフェニルチオ、4−メチルフェニルチオ、2−クロロフェニルチオ、3−クロロフェニルチオ、4−クロロフェニルチオ、2−ブロモフェニルチオ、3−ブロモフェニルチオ、4−ブロモフェニルチオ、2−フルオロフェニルチオ、3−フルオロフェニルチオ、4−フルオロフェニルチオ、2−ヒドロキシフェニルチオ、4−ヒドロキシフェニルチオ、2−メトキシフェニルチオ、4−メトキシフェニルチオ、1−ナフチルチオ、2−ナフチルチオ、4−[4−(フェニルチオ)ベンゾイル]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェノキシ]フェニルチオ、4−[4−(フェニルチオ)フェニル]フェニルチオ、4−(フェニルチオ)フェニルチオ、4−ベンゾイルフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−クロロフェニルチオ、4−ベンゾイル−3−メチルチオフェニルチオ、4−ベンゾイル−2−メチルチオフェニル、4−(4−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(2−メチルチオベンゾイル)フェニルチオ、4−(p−tert−ブチルベンゾイル)フェニルチオなど炭素数6〜20のアリールチオ基;メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、プロピルスルフィニル、イソプロピルスルフィニル、ブチルスルフィニル、イソブチルスルフィニル、sec−ブチルスルフィニル、tert−ブチルスルフィニル、ペンチルスルフィニル、イソペンチルスルフィニル、ネオペンチルスルフィニル、tert−ペンチルスルフィニル、オクチルスルフィニルなど炭素数1〜18の直鎖状または分岐のあるアルキルスルフィニル基;フェニルスルフィニル、トリルスルフィニル、ナフチルスルフィニルなど炭素数6〜10のアリールスルフィニル基;メチルスルホニル、エチルスルホニル、プロピルスルホニル、イソプロピルスルホニル、ブチルスルホニル、イソブチルスルホニル、sec−ブチルスルホニル、tert−ブチルスルホニル、ペンチルスルホニル、イソペンチルスルホニル、ネオペンチルスルホニル、tert−ペンチルスルホニル、オクチルスルホニルなど炭素数1〜18の直鎖または分岐のあるアルキルスルホニル基;フェニルスルホニル、p−トルエンスルホニル(トシル基)、ナフチルスルホニルなど炭素数の6〜10のアリールスルホニル基;ジメチルスルホニオ、ジエチルスルホニオ、エチルメチルスルホニオなどの炭素数1〜18の直鎖または分岐のあるアルキル基よりなるジアルキルスルホニオ基;メチルフェニルスルホニオ、メチルナフチルスルホニオなどの炭素数1〜18のアルキル基と炭素数6〜20のアリール基よりなるアルキルアリールスルホニオ基;ジフェニルスルホニオ、ジ−p−トリルスルホニオ、などの炭素数6〜20のアリール基よりなるジアリールスルホニオ基;2−ヒドロキシエトキシ、2−メトキシエトキシ、2−ヒドロキシ−1−メチルエトキシ、2−ベンジルオキシエトキシ、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシなどのアルキレンオキシ基;無置換のアミノ基並びに炭素数1〜5のアルキルおよび/または炭素数6〜10のアリール基でモノ置換もしくはジ置換されているアミノ基(炭素数1〜5のアルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなどの分岐アルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどのシクロアルキル基が挙げられる。炭素数6〜10のアリール基の具体例としてはフェニル、ナフチルなどが挙げられる);シアノ基;ニトロ基;フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンなどが挙げられる。
【0022】
また上記一般式(1)中、R1、R2は、双方が直接または−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレンもしくはフェニレン基を介して結合して、置換されていてもよい環構造を形成していることができる。置換基の例としては、R1、R2の各々が、炭化水素基又は複素環基を表す場合におけるそれらの置換基の例として上記したものと同じものが挙げられる。またR’は、炭素数1〜5のアルキル基もしくは炭素数6〜10のアリール基を表す。アルキル基の具体例としてはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチルなどの直鎖アルキル基;イソプロピル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、イソペンチル、ネオペンチル、tert−ペンチルなどの分岐を有するアルキル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルなどのシクロアルキル基が挙げられる。アリール基の具体例としてはフェニル、ナフチルなどが挙げられる。
1、R2が直接又は間接的に結合して環構造を形成している場合における一般式(1)で表されるスルホキシド化合物(A)の具体例としては、下記のものが挙げられる。
【0023】
【化4】


【0024】
ここに、Lは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、又は−CONH−を表し、R’は前記定義に同じである。
【0025】
これらのスルホキシド化合物(A)の好ましい具体例としては、ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、テトラメチレンスルホキシド、ペンタメチレンスルホキシド、1,4−チオキサン−S−オキシド、ジベンジルスルホキシドなどのジアルキルスルホキシド;フェナシルフェニルスルホキシド、ベンジルフェニルスルホキシド、メチルフェニルスルホキシド、ブチルフェニルスルホキシド、メチル−2−ナフチルスルホキシド、メチル−9−アントラニルスルホキシドなどのモノアリールスルホキシド;ジフェニルスルホキシド、ジベンゾチオフェン−S−オキシド、(4−メチルフェニル)フェニルスルホキシド、p−トリルスルフィド、ビス(4−メトキシフェニル)スルホキシド、4−メチルチオフェニルフェニルスルホキシド、(4−フェニルチオフェニル)フェニルスルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−フルオロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロジフェニル)スルホキシド、フェノキサチイン−10−オキシド、チアンスレン−5−オキシド、チオキサントン−10−オキシド、2−イソプロピルチオキサントン−10−オキシドなどのジアリールスルホキシドが挙げられる。
これらのうち特に好ましいものとして、ジフェニルスルホキシド、ジ(p−トリル)スルホキシド、ビス(4−メトキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−フルオロフェニル)スルホキシド、ビス(4−クロロジフェニル)スルホキシド、フェノキサチイン−10−オキシド、チアンスレン−5−オキシド、チオキサントン−10−オキシド、2−イソプロピルチオキサントン−10−オキシド、ジベンゾチオフェン−S−オキシドが挙げられる。
【0026】
これらのスルホキシド化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。また、これらは市販のものや別途合成したものでよく、あるいは、所望により、スルホニウム塩を製造する前工程として、反応系内で、対応するスルフィド化合物を過酸化水素等の過酸化物で酸化して得てもよい。
【0027】
本発明で用いられる、アリール基の少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合しているアリール化合物(B)としては、炭素数が6〜30の単環式または縮合多環式芳香族炭化水素、並びに酸素、窒素、硫黄などのヘテロ原子を1〜3個有する炭素数が3〜30の単環式または縮合多環式複素環芳香族化合物が挙げられ、ヘテロ原子はそれぞれ同一であっても異なってもよい。
【0028】
これらアリール化合物(B)は、少なくとも1種の置換基でさらに置換されていてもよく、該置換基の例としては、スルホキシド化合物(A)の一般式(1)中、R1、R2の各々が、炭化水素基又は複素環基を表す場合におけるそれらの置換基の例として上に記載したものと同じものが挙げられる。
【0029】
これらアリール化合物(B)の具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、ピレン、クリセン、ナフタセン、ベンズアントラセン、アセナフチレン、インデン、フルオレンなどの無置換芳香族炭化水素;チオフェン、フラン、チアゾール、チアジアゾール、ベンゾチオフェン、ベンゾフラン、チオキサンテン、キサンテン、フェノキサチイン、チアントレン、ジベンゾチオフェンなどの無置換複素環芳香族化合物;トルエン、クメン、tert−ブチルベンゼン、キシレン、エチルベンゼン、ドデシルベンゼン、1−メチルナフタレンなどのアルキル基で置換されたアリール化合物;ビフェニル、ビフェニレン、1,2’−ビナフチル、2−フェニルナフタレンなどのアリール基で置換されたアリール化合物;フェノール、カテコール、ピロガロール、1−ナフトール、2−ナフトール、などのヒドロキシ基で置換されたアリール化合物;アニソール、フェネトール、tert−ブトキシベンゼン、1−メトキシナフタレン、2−エトキシナフタレン、ベンジルフェニルエーテル、9,10−ジブトキシアントラセンなどの置換されていてもよいアルコキシ基で置換されたアリール化合物;ジフェニルエーテル、4−フェノキシフェノールなどの置換されていてもよいアリールオキシ基で置換されたアリール化合物;アセトフェノン、アセチルアセトフェノン、2−フェニルアセトフェノン、ナフトキノン、アセナフテンキノン、ジアゾナフトキノンなどの置換されていてもよいアシル基で置換されたアリール化合物;ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、キサントン、アントラキノンなどの置換されていてもよいアロイル基で置換されたアリール化合物;安息香酸メチル、Nー(tert−ブトキシカルボニル)ピロールなどのアルコキシカルボニル基で置換されたアリール化合物;安息香酸フェニルなどのアリールオキシカルボニル基で置換されたアリール化合物;酢酸フェニル、ピバル酸フェニルなどのアシルオキシ基で置換されたアリール化合物;メトキシカルボニルオキシベンゼン、エトキシカルボニルオキシベンゼン、tert−ブトキシカルボニルオキシベンゼンなどの置換されていてもよいアルコキシカルボニルオキシ基で置換された化合物;チオフェノールなどのメルカプト基で置換されたアリール化合物;チオアニソール、エチルチオベンゼン、ベンジルフェニルスルフィド、フェナシルフェニルスルフィドなどの置換されていてもよいアルキルチオ基で置換されたアリール化合物;ジフェニルスルフィド、(2−メチルフェニル)フェニルスルフィド、(4−メチルフェニル)フェニルスルフィド、2,2’−ジトリルスルフィド、2,3’−ジトリルスルフィド、2−フェニルチオナフタレン、9−フェニルチオアントラセン、(3−クロロフェニル)フェニルスルフィド、(4−クロロフェニル)フェニルスルフィド、3,3’−ジクロロジフェニルスルフィド、(3−ブロモフェニル)フェニルスルフィド、2,2’−ジブロモジフェニルスルフィド、3,3’−ジブロモジフェニルスルフィド、(2−メトキシフェニル)フェニルスルフィド、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−メトキシチオキサントン、4,4’−ジフェニルチオベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルチオジフェニルエーテル、4,4’−ジフェニルチオビフェニル、(4−フェニルチオフェニル)フェニルスルフィド、(4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−メチルチオベンゾイルフェニル)フェニルスルフィドなどの置換されていてもよいアリールチオ基で置換されたアリール化合物;メチルフェニルスルホンなどのアルキルスルホニル基で置換されたアリール化合物;ジフェニルスルホンなどのアリールスルホニル基で置換されたアリール化合物;ジメチルスルホニオベンゼン、ジエチルスルホニオナフタレンなどのジアルキルスルホニオ基で置換されたアリール化合物;メチルフェニルスルホニオベンゼン、メチルフェニルスルホニオナフタレンなどのアルキルアリールスルホニオ基で置換されたアリール化合物;ジフェニルスルホニオベンゼン、(4−ジフェニルスルホニオフェニル)フェニルスルフィドなどのようなジアリールスルホニオ基で置換されたアリール化合物;2−ヒドロキシエトキシベンゼン、2−メトキシエトキシベンゼン、2−(2−メトキシエトキシ)エトキシベンゼンなどアルキレンオキシ基で置換されたアリール化合物;アニリン、メチルフェニルアニリン、ジメチルアニリン、ジフェニルアニリンなどの置換されていてもよいアミノ基で置換されたアリール化合物;ニトロベンゼンなどのニトロ基で置換されたアリール化合物;ベンゾニトリルなどのシアノ基で置換されたアリール化合物;フルオロベンゼン、クロロベンゼンなどのハロゲンが置換したアリール化合物等が挙げられる。
【0030】
これらのアリール化合物(B)のうち好ましいものは、単環式または縮合多環式の無置換のアリール化合物;ヒドロキシ基、ハロゲン原子で置換されたアリール化合物;置換されていてもよいアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アロイル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ジアリールスルホニオ基で置換されたアリール化合物;より好ましくは、無置換のアリール化合物;ヒドロキシル基、ハロゲン原子で置換されたアリール化合物;置換されていてもよいアルキル基、アルコキシ基、アシル基、アロイル基、アシルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールチオ基、ジアリールスルホニオ基により置換されたアリール化合物である。
【0031】
これら好ましいアリール化合物のうち、ベンゼン、トルエン、tert−ブチルベンゼン、フェノール、クロロベンゼン、フルオロベンゼン、アニソール、tert−ブトキシベンゼン、ベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、ピバル酸フェニル、tert−ブトキシカルボニルオキシベンゼン、ジフェニルスルフィド、2−フェニルチオナフタレン、9−フェニルチオアントラセン、(4−クロロフェニル)フェニルスルフィド、チオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、4,4’−ジフェニルチオベンゾフェノン、4,4’−ジフェニルチオビフェニル、(4−フェニルチオフェニル)フェニルスルフィド、(4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(2−クロロ−4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド、(4−ジフェニルスルホニオフェニル)フェニルスルフィドが特に好ましい。これらのアリール化合物は、1種のものを単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0032】
本発明の製造方法において、反応系内に仕込むスルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)の当量比は、理論量すなわち1:1が好ましいが、通常1:(0.8〜1.2)、好ましくは、1:(0.9〜1.1)の範囲で変動させてもよい。スルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)の当量比がこの範囲外になるといずれかが過剰となって反応後も残存し、製品の純度低下とコスト高の要因となるため好ましくない。ただし、アリール化合物(B)が安価である場合は、溶剤を兼ねて大過剰に用いても支障はない。
【0033】
本発明で用いられるフッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)のうち、フッ素化アルカンスルホン酸としては、例えば炭素数1〜20のパーフルオロアルキル基をもつスルホン酸などが挙げられ、そのうち経済的に入手し得る炭素数1〜10のものが好ましい。炭素数1〜10のパーフルオロアルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状または環状のもの、あるいはこれらパーフルオロアルキル基の一つ以上のフッ素原子が炭素数1〜4のパーフルオロアルキルアルコキシ基でさらに置換されたものが挙げられる。具体例として、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、パーフルオロシクロへキサンスルホン酸、パーフルオロエトキシエタンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましいのは、トリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸である。
【0034】
上記のフッ素化アレーンスルホン酸としては、炭素数6〜20の、少なくともフッ素原子もしくはトリフルオロメチル基が一つ以上置換した芳香族基をもつスルホン酸が挙げられ、このうち炭素数6〜10のものが好ましい。具体例としては、2−フルオロベンゼンスルホン酸、4−フルオロベンゼンスルホン酸、2,4−ジフルオロベンゼンスルホン酸、3,5−ジフルオロベンゼンスルホン酸、2,6−ジフルオロベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリフルオロベンゼンスルホン酸、パーフルオロベンゼンスルホン酸、パーフルオロナフタレンスルホン酸、2−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸、3,5‐ビス(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸などが挙げられる。特に好ましいのは、4−フルオロベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリフルオロベンゼンスルホン酸、パーフルオロベンゼンスルホン酸、4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸である。
【0035】
本発明の製造方法において、フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)の使用量は、スルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)のうち当量数の少ない方1当量に対し理論量の1当量でよいが、反応速度を上げるために少し過剰であることが好ましい。すなわちスルホン酸(C)の当量は、スルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)のうち当量数の少ない方に対し通常、1:(1.0〜1.5)、好ましくは、1:(1.0〜1.3)である。スルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)のうち当量数の少ない方に対して、スルホン酸(C)が1.0当量未満では、得られるスルホニウム塩の収率が低下し、また、1.5当量で反応率は短時間にほぼ100%に達するため、それ以上スルホン酸(C)を増やしてもコストが高くなるのみである。
【0036】
本発明の製造方法は、スルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)とを脱水縮合させるものであるため、反応系内に過剰の水分があると反応が遅くなり、スルホニウム塩の収率が低下する。このため、反応系内から水分を除去する目的で、脱水剤(D)を使用する。脱水剤(D)としては、五酸化リン等の無機酸化物、ポリリン酸等の無機酸、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水フタル酸等の有機酸無水物などが挙げられる。これらの脱水剤(D)は、単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。これらのうち好ましいのは、有機酸無水物、特に好ましいのは入手が容易な無水酢酸である。
【0037】
脱水剤(D)の使用量は、反応系内の水分、つまりスルホキシド化合物(A)とアリール化合物(B)の反応により生成する水分と反応原料中の水分の合計量に対して2倍当量もしくはそれよりも少し過剰に使用する。例えば、無水酢酸を脱水剤として使用する場合、その使用量は、反応系内の水分1当量に対し、通常、2.0〜4.0当量、好ましくは2.0〜3.0当量の範囲である。
【0038】
本発明の製造方法は、必要により、溶媒の存在下で実施してもよい。その場合に用いる溶媒としては、例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、クロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系有機溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、無水酢酸、無水プロピオン酸等の有機酸無水物、アセトニトリル等のニトリル類およびその他の極性有機溶剤が挙げられる。これらの溶媒は、1種のものを使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0039】
上記溶媒で特に好ましいのは、ジエチルエーテル、ジクロロメタン、酢酸、無水酢酸、アセトニトリルである。
【0040】
上記溶媒の使用量は、スルホキシド化合物(A)、アリール化合物(B)、フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)、脱水剤(D)、および該溶媒の合計重量に対して、通常、0〜80重量%、好ましくは20〜60重量%である。
【0041】
本発明において、各原料の仕込み順序は特に限定されないが、各原料を反応容器へ一括して仕込んだ場合は、反応による発熱が激しいため反応容器を急速に冷却することが必要である。発熱を制御するため、フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)を、他の原料を仕込んだ反応容器に1〜2時間で滴下することが好ましい。
【0042】
本発明における反応温度は、通常、−30〜120℃、好ましくは0〜100℃、さらに好ましくは20〜70℃の範囲である。反応時間は、反応温度、反応濃度、攪拌の程度にもよるが、通常0.5〜24時間、好ましくは1〜10時間である。
【0043】
本発明の製造方法では、分子内に1個のスルホニオ基を持つモノスルホニウム塩が主生成物であるが、分子内に2個のスルホニオ基をもつビススルホニウム塩も少量生成することがある。このものも半導体用レジストに用いられる光酸発生剤として有用な成分である。
【0044】
本発明の製造方法は、上記で得られた反応混合物から高純度のスルホニウム塩を得るための精製工程において、反応液中の過剰の酸や酸無水物、すなわち、過剰のパーフルオロアルカンスルホン酸またはフッ素化アレーンスルホン酸、酢酸、あるいは無水酢酸等の残存酸成分(加水分解して酸を生ずる成分を含む)を完全に除去するために、有機相を非金属アルカリにより処理する段階を含む。この処理に用いる非金属アルカリとして好ましいのは、アンモニアおよび有機アミン化合物(E)であり、これにより酸性不純物がなく、しかもアルカリ金属等の金属不純物を含まない高純度なスルホニウム塩を得ることができる。ここに「処理」とは、有機相を非金属アルカリと接触させて、有機相中の残存酸成分を塩に変換して有機相から分離することをいう。
【0045】
上記処理で使用するアンモニアはガス状のものでよいが、アンモニア水が取り扱い易く、好都合である。アンモニア水の濃度は通常25〜30%のものであるが、必要により、水でさらに希釈してもよい。
有機アミン化合物(E)としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミンなどの1級アミン、トリメチルアミンやトリエチルアミンなどの3級アミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩、さらにモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンなどのヒドロキシ基含有アミンなどが挙げられる。これらは必要に応じて水溶液の形態で使用してもよく、水溶液で用いる時の濃度は通常30〜50%のものであり、水でさらに希釈してもよい。これらアンモニアおよび各種アミンのうちで好ましいのは、過剰の酸との中和塩が容易に水洗除去できるもの、すなわちアンモニア、メチルアミン、エチルアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミンであり、特にアンモニアとメチルアミンが好ましい。
【0046】
上記処理段階においては、必要に応じて非水溶性溶剤(F)を使用してもよい。非水溶性溶剤(F)の例としては、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族炭化水素類、クロロホルム、ジクロロメタンなどの塩素系有機溶剤などが使用できる。
【0047】
アンモニアまたは有機アミン化合物による反応液中の過剰の酸の処理は、スルホキシド化合物とアリール化合物との反応で得られた反応混合物そのものに対して行ってもよいが、この場合はアンモニアやアミン化合物の使用量が増え、また発熱が激しく中和に時間がかかるため、反応混合物を一旦水洗し、水相を除いた後の有機相に対して行うことが好ましい。これにより中和に必要なアンモニアまたは有機アミン化合物の量が減少できる。なお、水洗後の分液により生じた酸性排水は水酸化ナトリウムなどのより安価なアルカリで処理し、適切に廃棄処置すればよい。
【0048】
上記処理におけるアンモニアおよび有機アミン化合物(E)の使用量は、反応液内に残存する酸成分を完全に中和できる量でよいが、理論量より少し過剰に用いることが好ましい。すなわちこれら処理剤の使用量は、具体的には残存酸成分の合計当量数に対して通常1.0〜2.0当量、好ましくは1.1〜1.5当量である。
【0049】
上記処理は、必要に応じて上記有機溶剤(F)を加えた反応液に、アンモニア水あるいは有機アミン化合物(E)またはその水溶液を滴下し、その後通常0.5〜2時間、好ましくは1.0時間攪拌することにより実施する。
【0050】
処理後、生成した水相は分液により除き、有機相は必要に応じてさらに水洗により精製する。水洗に使用する水としては、製品へ金属イオンの混入を避けるために蒸留水やイオン交換水を使用することが好ましい。使用する水の量や回数は特に限定されないが、有機相の容量に対して30〜150%の水量で、1〜5回水洗を行うことが好ましい。
【0051】
上記のように非金属アルカリで処理され、さらに必要に応じて水洗されたスルホニウム塩を含む有機相は、所望の濃度まで濃縮して製品とすることができる。あるいは有機相に所望の高沸点溶剤、例えばプロピレンカーボネート、γーブチロラクトンなどのカチオン重合性組成物で使用される溶剤や、乳酸エチル、シクロヘキサノン、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどの半導体レジストに一般的に用いられている溶剤を所定量添加し、低沸点溶剤を留去することにより、所望の溶剤の溶液としてもよい。または上記で非金属アルカリ処理され、さらに必要に応じて水洗されたスルホニウム塩を含む有機相をさらに精製することができる。この精製は、上記スルホニウム塩を含む溶液に対して直接、あるいは所望の濃度にまで濃縮した後、貧溶剤を加えてスルホニウム塩を析出させて行う。ここで用いる貧溶剤としては、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、へキサン、シクロヘキサンなどの脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。析出物が油状物の場合は、油層を分離し、減圧下溶剤を除いて目的のスルホニウムスルホナート塩を得ることができる。析出物が固体の場合は、析出した固体をろ過、乾燥させて目的物を得ることができる。さらに目的のスルホニウム塩が固体である場合、再結晶によって精製することができる。すなわち、得られた固体を溶剤、例えばクロロホルム、ジクロロメタン等の塩素系有機溶剤、メタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類に溶解させ、冷却するなど温度による溶解度の差を利用して結晶を析出させる。あるいは、スルホニウム塩を含む溶剤溶液に対して上記で例を示したような貧溶剤を徐々に加えて結晶を析出させることによって実施できる。
【0052】
本発明の製造方法で得られたスルホニウムスルホナート塩は、半導体のパターン形成に用いる化学増幅型レジスト用の光酸発生剤として好適に使用される。すなわちフォトレジストの基本樹脂、添加剤、溶剤、および光酸発生剤として本発明で得られたスルホニウム塩からなるレジスト組成物を用いてパターン形成を行った場合、良好なレジストパターンが得られる。
【実施例】
【0053】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにより限定されるものではない。
【0054】
(実施例1)
100mlの反応容器にジクロロメタン28.0g、ジフェニルスルホキシド7.77g(38.4ミリ当量)、ジフェニルスルフィド7.28g(39.6ミリ当量)、および無水酢酸9.80g(96.0ミリ当量)を仕込み、均一に混合した後、トリフルオロメタンスルホン酸7.13g(47.5ミリ当量)を室温で60分間かけて滴下した。滴下中液温は、発熱により50℃まで上昇した。さらに50℃で4時間攪拌後、反応液をイオン交換水20.0gで2回洗浄した後、有機相と水相を分液した。この有機相49.2gの酸価を測定したところ、22.9(KOHmg/g)であった。次いでこの有機相に酸成分の1.3倍当量に当たる25%アンモニア水1.78g(26.1ミリ当量)を徐々に添加し、室温で30分間攪拌した。静置後水相と有機相を分液し、有機相をイオン交換水40.0gで3回洗浄した後、ジクロロメタン層を分液した。これに酢酸ブチル25.5gを攪拌下で徐々に加えたところ、溶液が白濁し白色粉末が析出した。これを濾別し減圧下55℃で乾燥させて、16.6g(収率83%)の白色粉末を得た。13C−NMR、IRおよびHPLC(高速液体クロマトグラフ装置 L−7000使用、日立製作所製、商品名、以下、同様)による分析の結果、このものは、目的物である(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを98.8%、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビストリフルオロメタンスルホナートを0.9%、および未反応原料であるジフェニルスルフィドとジフェニルスルホキシドを各0.1%含んでいた。
【0055】
(実施例2)
100mlの反応容器にジクロロメタン28.0g、ジフェニルスルホキシド7.77g(38.4ミリ当量)、ジフェニルスルフィド7.28g(39.6ミリ当量)、および無水酢酸9.80g(96.0ミリ当量)を仕込み、均一に混合した後、ノナフルオロブタンスルホン酸14.26g(47.5ミリ当量)を室温で60分間かけて滴下した。滴下中液温は、発熱により50℃まで上昇した。さらに50℃で4時間攪拌後、氷水浴で冷却しながら、反応液に25%アンモニア水を17.8g(261ミリ当量)、60分間かけて滴下し、室温で30分間攪拌した。その後静置し、分離した有機相をイオン交換水40.0gで3回洗浄した後、ジクロロメタン層を分液した。これに酢酸ブチル25.5gを攪拌下で徐々に加えたところ、溶液が白濁し白色粉末が析出した。これを濾別し減圧下55℃で乾燥させて、白色粉末13.5g(収率87%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムノナフルオロブタンスルホナートを98.8%、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビスノナフルオロブタンスルホンナートを0.5%、ジフェニルスルフィドを0.1%、およびジフェニルスルホキシドを0.3%含んでいた。
【0056】
(実施例3)
トリフルオロメタンスルホン酸に代えてペンタフルオロベンゼンスルホン酸11.79g(47.5ミリ当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして、白色粉末19.7g(収率83%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものの組成は、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムペンタフルオロベンゼンスルホナート98.8%、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビスペンタフルオロベンゼンスルホナート0.9%、ジフェニルスルフィド0.1%ジフェニルスルホキシド0.1%であった。
【0057】
(実施例4)
ジフェニルスルホキシドに代えてジ−p−トリルスルホキシド8.69g(37.7ミリ当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして、やや黄みをおびた粉末15.9g(収率:85%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、(4−フェニルチオフェニル)−ジ−p−トリルスルホニウムトリフルオロメタンスルホンナート99.1%、チオジ−p−フェニレンビス(ジ−p−トリルスルホニウム)ビストリフルオロメタンスルホンナート0.4%、ジフェニルスルフィド0.2%、ジ−p−トリルスルホキシド0.1%の組成であった。
【0058】
(実施例5)
ジフェニルスルフィドに代えて(4−ベンゾイルフェニル)フェニルスルフィド8.07g(38.0ミリ当量)を用いた以外は、実施例1と同様にして目的物16.0g(収率:84%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、4−(4−ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホンナートを99.0%、4−ベンゾイルジフェニルスルフィドを0.3%、ジフェニルスルホキシドを0.2%含んでいた。
【0059】
(比較例1)
50mlの反応容器中で、ジフェニルスルホキシド2.0g(9.9ミリ当量)を20mlのジクロロメタンに溶解させた後、−78℃まで冷却した。これにトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル2.8g(12.7ミリ当量)を5分かけて滴下し、−78℃で10分間、ついで徐々に昇温させて0℃で30分攪拌した。この溶液を再度−78℃まで冷却し、4−フェニルチオフェニルマグネシウムブロマイドの2.0Mテトラヒドロフラン溶液10ml(20.0ミリ当量)を15分かけて滴下した。−78℃で10分間、さらに徐々に昇温させて0℃で30分攪拌後、反応液に3重量%のトリフルオロメタンスルホン酸水溶液30mlを加えて反応を停止させた。これにジエチルエーテル200mlを加えて混合した後静置し、エーテル層と水相(水相−1)とを分離した。エーテル層を3重量%のトリフルオロメタンスルホン酸水溶液30mlで洗浄し、エーテル層と水相(水相−2)に分離した。エーテル層をさらに3重量%のトリフルオロメタンスルホン酸水溶液30mlで洗浄し、エーテル層と水相(水相−3)に分離した。水相−1、水相−2、水相−3を混合し、これをクロロホルム30mlで3回抽出した。これらのクロロホルム層とエーテル層とを混合し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過後溶剤を留去して、3.1gの油状物を得た。これに酢酸ブチル/イソプロピルアルコール=3/1(重量比)の混合溶剤を加えて攪拌後、油状物を分離し、減圧下で乾燥させて1.5g(収率:30%)の淡褐色油状物を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを94.4%、ジフェニルスルフィドを4.0%、およびジフェニルスルホキシドを1.0%含んでいた。
【0060】
(比較例2)
100mlの反応容器に、ジフェニルスルホキシド1.00g(4.94ミリ当量)、ジフェニルスルフィド1.02g(5.48ミリ当量)、ジクロロメタン50mlを加え均一に溶解させた後、−78℃でトリフルオロメタンスルホン酸無水物0.74g(5.26ミリ当量)を徐々に添加した。−78℃で30分間攪拌した後、徐々に室温まで昇温させた。室温でさらに1時間攪拌後、反応混合物を蒸留水28.0gで4回洗浄した。有機相と水相を分離し、有機相の有機溶剤を除去して2.05gの淡褐色油状物を得た。この油状物をジクロロメタン2.3mlに完全に溶解させた後、ジエチルエーテルを45.8ml徐々に添加して白色の沈殿を得た。この沈殿物をろ過、乾燥し白色粉末1.01g(収率:39%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを98.4%、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビストリフルオロメタンスルホナートを0.6%、ジフェニルスルフィドを0.6%、ジフェニルスルホキシドを0.2%含んでいた。
【0061】
(比較例3)
トリフルオロメタンスルホン酸無水物の仕込み量0.74g(5.26ミリ当量)を1.48g(10.5ミリ当量)とした以外は、比較例2と同様にして、白色粉末2.19g(収率:85%)を得た。13C−NMR、IRおよびHPLCによる分析の結果、このものは、(4−フェニルチオフェニル)ジフェニルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナートを99.3%、チオジ−p−フェニレンビス(ジフェニルスルホニウム)ビストリフルオロメタンスルホナートを0.2%、ジフェニルスルフィドを0.3%、ジフェニルスルホキシドを0.1%含んでいた。
【0062】
実施例1〜4および比較例1〜3で得られた各スルホニウム塩中に含まれるイオン含有量、および酸成分含有量を測定した結果を表1に示す。
これから、本発明の製造方法によれば、フォトレジスト用光酸発生剤として不都合なイオン性不純物、あるいは酸成分を実質的に含まないスルホニウムスルホナート塩が得られるのみならず、目的物が高純度かつ高収率で得られることがわかる。また、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を使用する従来の方法(比較例2および3)では、満足な収率を得るにはトリフルオロメタンスルホン酸無水物が2当量以上必要であることがわかる。
【0063】
【表1】


1)反応に用いたスルホキシドに対するスルホン酸の当量比
2)モノスルホニウム塩とビススルホニウム塩を合わせた純度を示す。
3)スルホニウムスルホナート塩中に含まれる各イオンの含有量を示す。
N.D.:検出限界以下を示す。
(参考)各イオンの検出限界値(単位ppb)
Na:50、K:50、Mg:20、Fe:10、Cu:5、Cl:100、Br:100
【0064】
(金属イオン測定法)
実施例および比較例で得られたスルホニウム塩1.0gをメタノール(精密分析用試薬)10mlに溶解し、この溶液中の各金属イオン含有量を原子吸光分光光度計(島津製作所(株)製、AA-6700F)を用いてフレームレス原子吸光分析法にて測定した。
(ハロゲンイオン測定法)
実施例および比較例で得られたスルホニウム塩5.0gとイオン交換水50.0gをテフロン(登録商標)製耐圧容器に入れ、密閉下100℃で20時間加熱しハロゲンイオンを抽出した。冷却後、抽出水2.0mlを0.45μmのメンブレンフィルターでろ過し、この濾液中のハロゲンイオンをイオンクロマトグラフ(日本ダイオネクス(株)社製、イオンクロマトグラムDXi500)により測定した。
(酸価測定法)
実施例および比較例で得られたスルホニウム塩2.0gをアセトン20mlに溶解し、電位差滴定装置(京都電子工業(株)製、AT-410)を用い、0.01N水酸化カリウム水溶液で滴定した。酸成分の含有量は、スルホニウム塩1.0g中の酸を中和するのに要する水酸化カリウム(KOH)のμg数で表示した。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、高純度で実質的にイオン性不純物および酸成分を含まないスルホニウム塩を、高収率、低コストで製造することができる。したがって、本発明の製造方法で得られるスルホニウム塩は、半導体分野で使用される化学増幅型レジストに用いられる光酸発生剤として好適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表されるスルホキシド化合物(A)、
【化1】



(式中、R1、R2は、それらの各々が、互いに同一若しくは異なって、置換されていてもよい炭化水素基若しくは置換されていてもよい複素環基を表すか、又は、双方が直接若しくは−O−、−S−、−SO−、−SO2−、−NH−、−NR’−、−CO−、−COO−、−CONH−、炭素数1〜3のアルキレン若しくはフェニレン基を介して結合して、置換されていてもよい環構造を形成しており、ここに、R’は、炭素数1〜5のアルキル基若しくは炭素数6〜10のアリール基を表す。)と、アリール基の少なくとも1つの炭素原子に水素原子が結合しているアリール化合物(B)とを、フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)と脱水剤(D)との存在下で反応させることを特徴とする、下記一般式(2)、
【化2】



(式中、Arは置換されていてもよいアリール基を表し、R1及びR2は前記定義に同じであり、X-はフッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)のアニオン残基を表す。)で示されるスルホニウム塩の製造方法。
【請求項2】
該反応後の精製工程が、該スルホニウム塩を含んでなる有機相をアンモニアまたは有機アミン化合物(E)で処理する段階を含むことを特徴とするものである、請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
フッ素化アルカンスルホン酸あるいはフッ素化アレーンスルホン酸(C)がトリフルオロメタンスルホン酸、ペンタフルオロエタンスルホン酸、ノナフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸、ペンタフルオロベンゼンスルホン酸、4−フルオロベンゼンスルホン酸、2,4,6−トリフルオロベンゼンスルホン酸、及び4−(トリフルオロメチル)ベンゼンスルホン酸より選ばれる、少なくとも1つの化合物であることを特徴とする請求項1または2の製造方法。
【請求項4】
脱水剤(D)が無水酢酸である請求項1ないし3の何れかの製造方法。
【請求項5】
請求項1ないし4の何れかの製造方法によって得られたスルホニウム塩を含んでなる、フォトレジスト用光酸発生剤。


【公開番号】特開2007−91628(P2007−91628A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−282411(P2005−282411)
【出願日】平成17年9月28日(2005.9.28)
【出願人】(000106139)サンアプロ株式会社 (32)
【Fターム(参考)】