説明

スルホン化ポリマーを含むオストミー用器具

本発明は、身体側構成要素と、瘻周辺領域および/または瘻に該身体側構成要素を付着させるための生体適合性感圧接着性構成要素とを備えるオストミー用器具であって、該生体適合性接着性構成要素が、スルホン化官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する、器具に関する。または、身体側構成要素と、該身体側構成要素ならびに/または瘻周辺領域および瘻をコーティングし、該瘻周辺領域および瘻に該器具を固定するための、別個の生体適合性感圧接着性構成要素とを備える、オストミー用器具に関する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(発明の背景)
排泄物を集めるために、身体へのデバイスの付着(例えば、オストミー)を必要とする数種の医療状態が存在する。これらのデバイスは、代表的には、感圧接着剤を介して身体に付着される。オストミー用器具またはデバイスは、代表的には、感圧接着剤を含有するウエファー、および身体からの排泄物を収集し入れるための収容袋または収容バッグを備える。この袋が結合機構を介してウエファーに取り外し可能に付着される場合、それは2部分デバイスと称される。このウエファーおよび袋がお互いに永続的に付着される場合、このデバイスは1部分デバイスと称される。身体に接着するウエファーの能力は、主として、感圧接着剤により決定される。接着剤に対する最小の負荷または負荷無しで感圧接着剤を介して身体に固定される他のデバイスと異なり、オストミー用デバイスまたは器具においては、この接着剤は、身体に対してしっかりと固定するだけではなく、袋が身体からの排泄物で満たされた場合にはその袋の重さを支えることも可能でなければならない。
【0002】
上記器具を適用する前に、使用者は、1部分器具または2部分器具の接着部分の開口部を切り取って、瘻の周りに合わせる。オストミー用器具において使用される感圧接着剤は、代表的には、親水コロイドを基礎とする。この親水コロイドは、感圧接着剤組成物のマトリクス中へ混合され、ここで、この感圧接着剤組成物は、乾燥条件下での皮膚への接着を提供し、この親水コロイドは、濡れた/湿った条件下で皮膚への接着を提供する。オストミーに適用するための接着において際立った難題は、皮膚が発汗している場合、および接着剤が瘻での排出物と接触する場合に、湿った条件下での十分な接着を維持することである。慣習的なオストミー用接着剤の親水コロイドにより提供される接着は、これらの条件下で身体へのしっかりした接着を維持するのに十分ではない。
【0003】
瘻に近い接着部分が、糞便に曝露される場合、その接着は危険にさらされ得、上記器具は、漏出させ得、使用者にとって恥ずかしい事態を引き起こし得る。これが発生する場合、頻繁に、瘻周辺の皮膚の健康もまた影響を受け、そのことは、使用者に深刻な衝撃を与え得る。したがって、身体へしっかりと接着し、腸の排出物を収集バッグに方向付けることにより瘻周辺領域の腸の排出物の漏出を防ぐ器具を有することが所望される。
【0004】
本発明の目的は、オストミー用器具を身体および/または瘻へしっかりと接着するための生体適合性感圧接着剤を提供することである。これを達成するために、この感圧接着剤は、粘膜との特異的相互作用を有し、また、皮膚にしっかりと結合する成分を含有するべきである。粘膜に接着する接着剤は、粘膜接着剤(mucoadhesive)と称される。粘膜接着剤は、口腔または胃腸管への薬物送達において広く使用される。しかし、そのような接着剤は、感圧接着剤でないか、オストミーの袋の負荷を支えるための剪断強度または湿潤強度を有していないかのどちらかである。本発明より以前は、粘膜接着性成分を含む感圧接着剤は、オストミー用器具での使用に対して、身体および瘻への同時接着を提供し、かつ、乾燥条件および湿潤条件下で接着を維持すると考えられてこなかった。
【0005】
本発明の生体適合性接着剤は、粘膜と特異的相互作用を有する官能基、好ましくはスルホン化官能基を含むポリマーを基礎とする。
【0006】
本発明に関連するいくつかの特許文献を、以下で検討する。
【0007】
特許文献1は、イソプレンおよびスチレンスルホン酸ナトリウムのコポリマーを含む感圧接着剤を開示し、また、このコポリマーは、溶媒を除去するために乳化重合により調製されることを開示する。本発明における粘膜接着剤についての言及はない。
【0008】
特許文献2は、生物医学的電極を皮膚に付着させるためのヒドロゲル感圧接着剤組成物を開示し、また、この組成物は、水溶性長鎖(メタ)アクリレートエステルモノマーと、スルホネート基、酸基、アクリルアミド基、またはホスホネート基を含むモノマーとを重合させることにより形成されることを開示する。本発明における粘膜接着剤についての言及はない。
【0009】
特許文献3は、デバイスまたはプロテーゼを構成する種々の物質および粘膜内層(mucous lining)に付着し得る、水溶性感圧粘膜接着剤を開示し、そして、体腔でのそのようなデバイスの設置について開示する。その著者らは、高水溶性ポリマーおよび可塑剤を基礎とする組成物を開示しており、この水溶性ポリマーおよび可塑剤は、水または湿気の存在下で浸出する。
【0010】
特許文献4は、架橋可能な疎水性組成物と親水性組成物との混合物を含有する、二相の生物接着性組成物の調製を開示する。上記親水性ポリマーは、上記組成物中にブレンドされるので、この親水性ポリマーは、水分または湿気の存在下で浸出し得る。
【0011】
特許文献5は、ポリマー主鎖に結合し、毒素と相互作用するリガンドを含む粘膜接着性ポリマーを開示する。
【0012】
特許文献6は、2つの表面を合わせて付着させるため、または、表面をコーティングするための組成物を開示し、また、これらの組成物は足糸を形成するイガイ類(byssus−forming mussel)に由来するポリフェノール系タンパク質の酸性水溶液からなることを開示する。
【0013】
特許文献7は、上皮粘膜防御の増強のための、N−アルキルアクリレートを基礎とする組成物を開示する。
【0014】
特許文献8は、コロイド性ナノ多孔性(nanoporous)ナノ粒子のネットワークおよびキトサンを基礎とするナノコンポジット薬物送達システムを開示する。
【0015】
特許文献9は、生物学的表面に接着して治療剤を送達するための、ポリマー主鎖および側鎖または側基を含むポリマーを開示し、また、この側鎖または側基は1つ以上のヒドロキシル基で置換された芳香族基(例えば、カテコール)を含むことを開示する。
【0016】
特許文献10は、足糸形成イガイに由来するポリフェノール系タンパク質の水溶液からなり、かつ、非酵素的酸化性過ヨウ素酸イオンと混合している組成物を開示する。
【0017】
特許文献11は、スルホン化ブロックコポリマーを作製する方法、およびそのようなポリマーの様々な用途を開示する。この米国特許文献は、接着剤としてのそのようなポリマーの有用性を主張するが、オストミー用器具としてそのような組成物の有用性を示す実施例は存在しない。
【0018】
特許文献12は、皮膚接着のための、スルホン化両親媒性ポリエステルおよび湿潤剤を基礎とした、低アレルギー誘発性の接着剤組成物を開示する。
【0019】
先行技術である発明は、乾燥条件および湿潤条件下でオストミー用器具の重量を支え得る、スルホン化感圧接着剤を例示していない。皮膚、および、湿潤表面(例えば、粘膜)に付着するより良い接着剤に対する必要性は、いまだに存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】米国特許第5,066,694号明細書
【特許文献2】米国特許第5,614,586号明細書
【特許文献3】米国特許第5,700,478号明細書
【特許文献4】米国特許第7,138,458号明細書
【特許文献5】国際公開第2006/0927991号
【特許文献6】米国特許出願公開第2006/0054276号明細書
【特許文献7】米国特許出願公開第2005/0281775号明細書
【特許文献8】国際公開第2005/117844号
【特許文献9】国際公開第2005/056708号
【特許文献10】米国特許出願公開第2005/0224175号明細書
【特許文献11】米国特許出願公開第2007/0021569号明細書
【特許文献12】米国特許出願公開第2008/0085972号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0021】
(発明の要旨)
本発明は、身体側構成要素と、瘻周辺領域および/または瘻にその身体側構成要素を付着させるための生体適合性感圧接着性構成要素とを備えるオストミー用器具であって、上記生体適合性接着性構成要素が、スルホン化官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する、器具である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(発明の詳細な説明)
本発明によると、オストミー用器具は、身体側構成要素と、瘻周辺領域および/または瘻にその身体側構成要素を付着させるための生体適合性感圧接着性構成要素とを備え、ここで、上記生体適合性感圧接着性構成要素は、スルホン化官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する。上記ポリマーのスルホン化度は、湿潤表面への接着を提供するのに十分であり、好ましくは、全ポリマーの5〜100%である。
【0023】
また、スルホン化官能基を含むポリマーは、ポリアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、N−アルキルアミノアクリレート、N−アルキルアミノメタクリレート、アクリルアミド、スチレン系ブロックコポリマー、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリオレフィン、シリコーン、ポリN−ビニルラクタム、ポリウレタン、ポリエーテル、多糖類、ポリペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択される。さらに、このスルホン化官能基は、その酸形態、塩形態、もしくは、アミンにより中和された形態、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0024】
この生体適合性感圧接着性構成要素は、他の構成要素(例えば、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、両親媒性ポリマー、粘着剤、樹脂、可塑剤、親水コロイド、無機粒子充填剤もしく有機粒子充填剤、抗酸化剤、またはこれらの組み合わせ)をさらに含有し得る。
【0025】
一実施形態において、上記2つの構成要素を含む生体適合性接着剤は、例えば、1部分または2部分オストミー器具として使用する前に、器具の一部であり得る。別の実施形態において、生体適合性接着剤は、オストミー用器具の付着前に、瘻および瘻周辺領域をコーティングするために別個の構成要素として使用され得る。生体適合性感圧接着剤が別個の構成要素である場合、この接着剤は、液体、泡、ゲル、フィルム、ペースト、シート、粉末、またはこれらの組み合わせの形態で、瘻および瘻周辺領域へ送達され得る。
【0026】
本発明はまた、瘻に対して内側部分および/または外側部分、ならびに、生体適合性感圧接着性構成要素を有するオストミー用器具を含み、この生体適合性感圧接着性構成要素は、上記器具の一部をコーティングするための組成物を、コーティングされた部分を少なくとも瘻および/または瘻周辺領域に付着させるために含有する。そのような器具の例としては、灌注用デバイス、排泄を制御可能なオストミー用ポートデバイスなどが挙げられる。
【0027】
本発明に従うオストミー用器具の身体側構成要素は、身体からの排泄物を収集する構成要素をさらに備え得る。
【0028】
本発明の生体適合性感圧接着剤は、乾燥条件または湿潤条件下で接着を提供する。
【0029】
ポリマー中のスルホン化基は、繰り返し単位上に、または、ブロックもしくは交互形式で無作為に配置され得る。スルホン化ポリマーの一部の例としては、スルホン化ポリエステル(例えば、AQポリエステルという商品名でEastman Chemicalによって販売されているもの)、スルホン化スチレン系ブロックコポリマー、スルホン化ポリオレフィン、スルホン化ポリアクリレート、スルホン化ポリアルキルメタクリレート、スルホン化ポリシロキサン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。また、このスルホン化官能基は、その酸形態、塩形態、アミンにより中和された形態、またはこれらの組み合わせであり得る。
【0030】
スルホン化官能基を含むポリマーは、スルホン化モノマー(例えば、アクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホニルプロピルメタクリレートなど)から合成されるか、あるいは、既存のポリマーのスルホン化により合成され得る。例えば、スチレン系ブロックコポリマーのスルホン化は周知である。また、スルホン化ポリマーは、ホモポリマーまたはコポリマーであり得る。スルホン化ポリマーは、直鎖状、分枝鎖状、放射状、またはこれらの組み合わせであり得る。上記コポリマーは、ブロックコポリマー、ランダムコポリマー、分枝鎖状コポリマー、交互コポリマー、またはこれらの組み合わせであり得る。例えば、リビングフリーラジカル重合プロセスは、スルホン化不飽和モノマー(例えば、ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、スルホアルキルアクリレート、スルホアルキルメタクリレート、スルホアリールアクリレート、スルホアリールメタクリレート)と、モノマー(例えば、エチルヘキシルアクリレート、ビニルメチルエーテル、グリセロールメタクリレート、スチレン、ビニル−ポリジメチルシロキサン、ビニルピロリドン、メチルメタクリレートなど)とのブロックコポリマーを合成するために使用され得る。
【実施例】
【0031】
実施例1
感圧接着剤組成物を、約10〜60グラムのスルホン化スチレン−エチレン−ブチレン−スチレン(SEBS)(スチレンの55〜65%がスルホン化されている、Sigma Aldrichから入手可能)を、20〜70グラムのPentalyn H粘着剤(Hercules Incorporated(Delaware)から入手可能、)、および5〜20グラムのナフテン系ホワイト油(例えば、kaydol油(Sonneborn Incorporated(New York)から入手可能)、0〜20グラムのスルホン化ポリスチレン(から入手可能)、および0〜10グラムのステアリン酸亜鉛を、Haake2軸スクリュー混合機(twin screw mixer)中にて約150℃で混合することにより調製し得る。
【0032】
(実施例2)
感圧接着剤組成物を、約30〜80グラムの分枝鎖状スルホン化ポリエステル(例えば、AQ1045TM)、5〜40グラムの直鎖状スルホン化ポリエステル(例えば、AQ55STM)(両方とも、Eastman Chemical Companyから入手可能)、0〜20グラムのポリビニルピロリドン(PVP)(International Specialty Productsから入手可能)、および0〜20グラムのポリエチレンオキシドPEG400(Dow Chemicalから入手可能)を、Haake混合機中にて200℃で30分間混合することにより調製し得る。
【0033】
(実施例3)
感圧接着剤組成物を、約30〜80グラムの分枝鎖状スルホン化ポリエステル(例えば、AQ1045TM)、5〜40グラムの直鎖状スルホン化ポリエステル(例えば、AQ55STM)(両方とも、Eastman Chemical Companyから入手可能)、および0〜40グラムの部分的もしくは完全に加水分解されたポリビニルアセテート、0〜20グラムのポリエチレンオキシドPEG400(Dow Chemical Companyから入手可能)を、Haake混合機中にて200℃で30分間混合することにより調製し得る。
【0034】
上述の記載は本発明の好ましい形態を含むこと、ならびに、多くの改変、改良、および等価体は本発明の範囲内であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体側構成要素と、瘻周辺領域および/または瘻に該身体側構成要素を付着させるための生体適合性感圧接着性構成要素とを備えるオストミー用器具であって、該生体適合性接着性構成要素が、スルホン化官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含有する、器具。
【請求項2】
前記スルホン化基が、全ポリマーの5〜80%である、請求項1に記載のオストミー用器具。
【請求項3】
スルホン化官能基を含む前記ポリマーが、ポリアクリレート、ポリアルキルメタクリレート、N−アルキルアミノアクリレート、N−アルキルアミノメタクリレート、アクリルアミド、スチレン系ブロックコポリマー、ポリエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリオレフィン、シリコーン、ポリN−ビニルラクタム、ポリウレタン、ポリエーテル、多糖類、ポリペプチド、およびこれらの組み合わせからなる群より選択され、また、該スルホン化官能基は、その酸形態、塩形態、アミンにより中和された形態、および/またはこれらの組み合わせであり得る、請求項1に記載のオストミー用器具。
【請求項4】
前記生体適合性感圧接着性構成要素は、疎水性ポリマー、親水性ポリマー、両親媒性ポリマー、粘着剤、樹脂、可塑剤、親水コロイド、無機粒子充填剤もしく有機粒子充填剤、抗酸化剤、およびこれらの組み合わせといった他の構成要素をさらに含有し得る、請求項1に記載のオストミー用器具。
【請求項5】
オストミー用器具であって、
身体側構成要素と、
別個の生体適合性感圧接着性構成要素であって、該身体側構成要素ならびに/または瘻周辺領域および瘻をコーティングし、該瘻周辺領域および/または瘻に該器具を固定するためのものである、構成要素
とを備える、器具。
【請求項6】
瘻に対して内側部分および/または外側部分、ならびに、生体適合性感圧接着性構成要素を有するオストミー用器具であって、該生体適合性感圧接着性構成要素は、上記器具の部分をコーティングする組成物を含有し、該組成物は、コーティングされた部分を少なくとも瘻および/または瘻周辺領域に付着させるためのものである、器具。
【請求項7】
身体側構成要素と、瘻周辺領域および/または瘻に該身体側構成要素を付着させるための生体適合性感圧接着性構成要素とを備えるオストミー用器具であって、該生体適合性感圧接着性構成要素が、スルホン化官能基を含む少なくとも1種のポリマーを含有し、該身体側構成要素が、身体からの排泄物を収集する構成要素を備える、器具。
【請求項8】
前記生体適合性感圧接着性構成要素が、乾燥条件下および湿潤条件下で付着する、請求項1に記載のオストミー用器具。

【公表番号】特表2011−525134(P2011−525134A)
【公表日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−514849(P2011−514849)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/047984
【国際公開番号】WO2009/155533
【国際公開日】平成21年12月23日(2009.12.23)
【出願人】(510264626)コンバテック テクノロジーズ インコーポレイテッド (7)
【Fターム(参考)】