説明

スルホン構造を有する有機半導体化合物

【課題】有機半導体材料は、主たるキャリアがホールであるp型駆動する材料と、主たるキャリアが電子であるn型駆動する材料に分けることができる。金電極のような仕事関数の大きな金属を使用したとき、n型駆動する有機半導体材料の種類は、同条件でp型駆動する有機半導体よりも、数が極めて少ない事を解消するため酸化劣化しにくい化合物を提供。
【解決手段】スルホン構造を有することを特徴とする、新しい骨格の酸化劣化しにくい、有機半導体材料。すなわち、一般式(1)に示すスルホン構造を特徴とする化合物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有機半導体などの電子材料への展開が可能な有機化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
有機半導体材料は、主たるキャリアがホールであるp型駆動する材料と、主たるキャリアが電子であるn型駆動する材料に分けることができる。p型であるかn型であるかは、有機半導体化合物の最高被占軌道(HOMO)を使いキャリアを移動させるのか、最低空軌道(LUMO)を使ってキャリアを移動させるのかの違いによって決まるとされている。
【0003】
一般的に、仕事関数の小さな金属を電極として使用すると、n型半導体として作用しやすく、仕事関数の大きな金属を電極として使用すると、p型半導体として作用しやすい。仕事関数の小さな金属電極としては、例えば、カルシウム(約2.87eV)などが知られているが、大気中では、酸素によって表面が酸化したり、湿気により水酸化物を生成したりするなどそのままでは不安定であるため、有機デバイスとして使用するためには、電極が、水分や酸素の影響を受けないように、封止をする必要がある。一方、仕事関数の大きな金属としては、例えば、金(約5.1eV)など、大気中で安定な金属が知られている。仕事関数が大きな金属を電極に使用すると、封止に要求される性能が物理的な保護のみとなるため、コスト上のメリットもあり、産業上より好ましい。しかし、金電極のような仕事関数の大きな金属を使用したとき、n型駆動する有機半導体材料の種類は、同条件でp型駆動する有機半導体よりも、数が極めて少ないのが現状である。
【0004】
これまで、n型半導体として駆動する化合物の例としては、チアゾール誘導体(非特許文献1)、ペンタセン誘導体(非特許文献2―3)、フラーレンおよびその誘導体(非特許文献4)、ペリレンイミド誘導体(非特許文献5)などが知られている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】S.Ando,R.Murakami,J.−I.Nishida,H.Tada,Y.Inoue,S.Tokito,Y.Yamashita,J.Am.Chem.Soc.,127,3997(2005).
【非特許文献2】Y.Sakamoto,T.Suzuki,M.Kobayashi,Y.Gao,Y.Fukai,Y.Inoue,F.Sato,S.Tokito,J.Am.Che.Soc.,126,8138(2004).
【非特許文献3】K.Okamoto,K.Ogino,M.Ikari,Y.Kunugi,Bull.Chem.Soc.Jpn.,81,530(2008).
【非特許文献4】R.C.Haddon,A.S.Perel,R.C.Morris,T.T.M.Palstra,A.F.Hebard,R.M.Fleming,Appl.Phys.Lett.,67,121(1995).C.Waldauf,P.Schilinsky,M.Perisutti,J.Hauch,C.J.Brabec,Adv.Mater.,15,2084(2003).
【非特許文献5】P.R.L.Malenfant,C.D.Dimitrakopoulos,J.D.Gelorme,L.L.Kosbar,T.O.Graham,A.Curioni,W.Andreoni,Appl.Phys.Lett.,80,2517(2002).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、n型半導体としては、化合物の種類が限定されており、選択の幅が狭い。また、ペンタセン誘導体(非特許文献3)では、大気中にて酸化劣化してしまうという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、本発明者らは、スルホン構造を有することを特徴とする、新しい骨格の有機半導体材料を新規に合成し、次のような構成からなる発明に到達した。すなわち、本発明に関わる請求項1に記載の化合物は、一般式(1)に示すスルホン構造を特徴とする有機化合物である。
【0008】
【化1】

ここで、置換基R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子および重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホニル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【0009】
さらに、本発明に関わる請求項2に記載の化合物は、一般式(1)中のRとR(n+4)が同一の置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物である。ここで、nは1以上4以下の整数である。
【0010】
さらに、本発明に関わる請求項3に記載の化合物は、下記一般式(2)〜(7)で示されるいずれかの構造を特徴とする有機化合物である。
【0011】
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

【0012】
ここで、置換基R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子および重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホニル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【0013】
さらに、本発明に関わる請求項4に記載の化合物は、一般式(2)〜(4)中のRとR(m+6)が同一の置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物である。ここで、mは1以上6以下の整数である。
【0014】
さらに、本発明に関わる請求項5に記載の化合物は、重合機能を有する請求項1〜4のいずれかに記載の有機化合物である。
【0015】
さらに、本発明に関わる請求項6に記載の化合物は、一般式請求項1〜5に記載の有機化合物の骨格を少なくとも一つ以上有するオリゴマーまたはポリマーである。
【0016】
さらに、本発明に関わる請求項7に記載の有機薄膜は、請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物からなる有機薄膜である。
【0017】
さらに、本発明に関わる請求項8に記載の有機薄膜デバイスは、請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物からなる有機デバイスである。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、耐酸化性に優れたスルホン構造を有する有機半導体材料を提供する。さらに、本発明の有機デバイスは優れた特性を有している。
すなわち、請求項1の発明によれば、耐光性、耐酸化性に優れた有機化合物を提供するものである。請求項2の発明によれば、化合物(1)の合成を簡略化でき、効率的な製造が可能になる。請求項3の発明によれば、耐光性、耐酸化性、耐熱性に優れた有機化合物を提供するものである。請求項4の発明によれば、化合物(2)〜(7)の合成を簡略化でき、効率的な製造が可能になる。請求項5の発明によれば、デバイスを製造する際に、必要な化合物(1)〜(7)のパターニング(塗り分け)が容易になり、重ね塗りが可能になる。請求項6の発明によれば、優れた製膜性を付与することができる。請求項7の発明によれば、薄膜にすることで、優れた電気機能性を付与することができる。請求項8の発明によれば、本発明の化合物を有機デバイスに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例1記載の化合物の紫外可視吸収スペクトル
【図2】実施例2記載の化合物の紫外可視吸収スペクトル
【図3】実施例3記載の化合物の紫外可視吸収スペクトル
【図4】ペンタセンの紫外可視吸収スペクトル
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の化合物は、前記一般式(1)〜(7)に示すような構造の化合物であり、一般式(1)〜(7)中の置換基R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子および重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホニル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【0021】
これらのうち好ましいものとしては、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基が挙げられる。
また、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基は、炭素数1〜36が好ましい。合成の容易さや、原料の入手のし易さの観点から、炭素数1〜18がさらに好ましい。
【0022】
一般式(1)〜(7)中の置換基R〜R12の具体例としては、
例えば、水素原子、重水素原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などのハロゲン原子である。
例えば、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、パーフルオロフェニル基、パーフルオロナフチル基、パーフルオロビフェニル基、パーフルオロターフェニル基、4−フルオロフェニル基、3−フルオロフェニル基、2−フルオロフェニル基、p−トリル基、p−フルオロフェニル基、p−ヘキシルフェニル基、p−シクロペンチルフェニル基、m−トリル基、m−フルオロフェニル基、m−ヘキシルフェニル基、m−シクロペンチルフェニル基、o−トリル基、o−フルオロフェニル基、o−ヘキシルフェニル基、o−シクロペンチルフェニル基、3,5−ジメチルフェニル基、メチルナフチル基、フルオロナフチル基、オクチルオキシナフチル基、シクロペンチルオキシナフチル基、メチルビフェニル基、フルオロビフェニル基、オクチルオキシビフェニル基、シクロヘキシルビフェニル基、メチルターフェニル基、イソプロピルターフェニル基、トリデシルターフェニル基、トリデシルオキシターフェニル基などのアリール基である。
【0023】
例えば、2−ピリジル基、3−ピリジル基、4−ピリジル基、ビピリジル基、キノリル基、2−チエニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、オキサゾリル基、イソオキサゾリル基、チアゾリル基、フルオロピリジル基、フルオロビピリジル基、フルオロキノリル基、フルオロチエニル基、フルオロフリル基、フルオロオキサゾリル基、フルオロイソオキサゾリル基、フルオロチアゾリル基、メチルピリジル基、メチルビピリジル基、メチルキノリル基、メチルチエニル基、メチルフリル基、メチルオキサゾリル基、メチルチアゾリル基、エチルピリジル基、エチルビピリジル基、エチルキノリル基、エチルチエニル基、プロピルピリジル基、プロピルビピリジル基、プロピルキノリル基、プロピルチエニル基、プロピルフリル基、プロピルオキサゾリル基、プロピルイソオキサゾリル基、プロピルチアゾリル基シクロペンチルピリジル基、シクロペンチルビピリジル基、シクロペンチルキノリル基、シクロペンチルチエニル基、シクロペンチルフリル基、シクロペンチルオキサゾリル基、シクロペンチルイソオキサゾリル基、シクロペンチルチアゾリル基オクチルピリジル基、オクチルビピリジル基、オクチルキノリル基、オクチルチエニル基、フリル基、オクチルオキサゾリル基、オクチルイソオキサゾリル基、オクチルチアゾリル基トリデシルピリジル基、トリデシルビピリジル基、トリデシルキノリル基、トリデシルチエニル基、トリデシルフリル基、トリデシルオキサゾリル基、トリデシルイソオキサゾリル基、トリデシルチアゾリル基などの置換複素環基である。
【0024】
例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert―ペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基、1−メチルペンチル基、4−メチル−2−ペンチル基、3,3−ジメチルブチル基、2−エチルブチル基、n−ヘプチル基、シクロヘプチル基、2−メチルヘキシル基、3−プロピルペンチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、n−イコシル基、n−トリアコンチル基、n−ヘキサトリアコンチル基などの無置換アルキル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、トリフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロシクロペンチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロシクロヘキシル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロノニル基、パーフルオロデシル基、パーフルオロウンデシル基、パーフルオロドデシル基、パーフルオロトリデシル基、パーフルオロテトラデシル基、パーフルオロペンタデシル基、パーフルオロヘキサデシル基、パーフルオロヘプタデシル基、パーフルオロオクタデシル基、パーフルオロノナデシル基、パーフルオロイコシル基、パーフルオロトリアコンチル基、パーフルオロヘキサトリアコンチル基、などのアルキル基である。
【0025】
例えば、エテニル基、メチルエテニル基、イソプロピルエテニル基、(n−ブチル)エテニル基、(シクロペンチル)エテニル基、(n−オクチル)エテニル基、(n−トリデシル)エテニル基、(1,2−ジフルオロフェニル)エテニル基、(トリフルオロメチル)エテニル基、フェニルエテニル基、パーフルオロフェニルエテニル基、(4−(n−オクチル)フェニル)エテニル基、4−トリフルオロメチルフェニルエテニル基、4−パーフルオロオクチルフェニルエテニル基、ビフェニルエテニル基、ターフェニルエテニル基、ナフチルエテニル基、シアノエテニル基、ジシアノエテニル基などのアルケニル基;
【0026】
例えば、メチルエチニル基、イソプロピルエチニル基、tert−ブチルエチニル基、(n−ペンチル)エチニル基、(n−シクロヘキシル)エチニル基、(n−オクチル)エチニル基、(n−トリデシル)エチニル基、(n−オクタデシル)エチニル基、(トリフルオロメチル)エチニル基、(n−パーフルオロブチル)エチニル基、(パーフルオロオクチル)エチニル基、フェニルエチニル基、パーフルオロフェニルエチニル基、(p−オクチルフェニル)エチニル基、ビフェニルエチニル基、ナフチルエチニル基、(p−メチルフェニル)エチニル基、(m−メチルフェニル)エチニル基、(o−メチルフェニル)エチニル基、(p−イソプロピルフェニル)エチニル基、(m−シクロペンチルフェニル)エチニル基、などの置換アルキニル基である。
【0027】
例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、tert−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、ネオペンチルオキシ基、tert―ペンチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、1−メチルペンチルオキシ基、4−メチル−2−ペンチルオキシ基、3,3−ジメチルブチルオキシ基、2−エチルブチルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、2−メチルヘキシルオキシ基、3−プロピルペンチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ウンデシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−トリデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−ペンタデシルオキシ基、n−ヘキサデシルオキシ基、n−ヘプタデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、n−ノナデシルオキシ基、n−イコシルオキシ基、n−トリアコンチルオキシ基、n−ヘキサトリアコンチルオキシ基などのアルコキシ基である。
【0028】
これらのうち好ましいものとしては、水素原子、重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基が挙げられる。
また、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基の炭素数は、1〜36が好ましく、製造コストの観点から、さらに好ましくは、炭素数1〜18である。
【0029】
一般式(1)中のRとR(n+4)が同一の置換基である場合(ここで、nは1以上4以下の整数である)や、一般式(2)〜(7)中のRとR(m+6)が同一の置換基である場合(ここで、mは1以上6以下の整数である)は、合成を簡略化でき、効率的な製造が可能になるため好ましい。
【0030】
本発明の一般式(1)〜(4)に示される化合物の製造方法について述べる。
本発明の一般式(1)〜(4)に示される化合物は、ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体を、酸化剤または電極によって酸化することによって製造できる。ベンゾチエノベンゾチオフェン誘導体は、公知の方法(例えば、特許文献1〜4、非特許文献6)を参考にして製造することが可能である。
【特許文献1】WO2006/077888 A1
【特許文献2】特願2009−004142
【特許文献3】特願2009−106387
【特許文献4】特開2009−021390
【非特許文献6】S.Y.Zherdeva,A.Barudi,A.Y.Zheltov,B.I.Stepanov,Zh.Organi.Khimi.,16,430(1980).
【0031】
ここで、酸化剤として用いることのできるものとしては、例えば、過酸化水素、過酸、ヒドロペルオキシド、ハロゲン、ハロゲン化剤、オゾン、酸素と遷移金属触媒、ペルオキシカリウム、過マンガン酸カリウム、四酸化二窒素、メタ過ヨウ素酸ナトリウム、硝酸などが挙げられる。また、電極を用いた酸化も利用することができる。
【0032】
過酸としては、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、過フタル酸およびその誘導体などが使用できる。ヒドロペルオキシドとしては、p−シメンヒドロペルオキシド、クメンヒドロペルオキシド、ジフェニルメチルヒドロペルオキシド、9−フルオレニルヒドロペルオキシド、Sec−ブチルヒドロペルオキシド、tert−ブチルヒドロペルオキシド、シクロヘキシルヒドロペルオキシド、1−メチルシクロヘキシルヒドロペルオキシドなどが使用できる。
ハロゲンとしては、塩素、臭素、ヨウ素などが使用できる。
【0033】
ハロゲン化剤としては、N−ブロモスクシンイミド、N−クロロスクシンイミド、N−ヨードスクシンイミドなどが使用できる。遷移金属触媒としては、WO、KMnO、RuO、NaWO、Pd(PPh、PdCl(PPh、Ni(cod)、Ni(CO)、CpFe、Fe(CO)、Mo(CO)、RuCl(PCy、RhCl(PPhなどが使用できる。
【0034】
本発明によれば、重合機能を有する請求項5に記載の化合物は、デバイスを製造する際に、必要な化合物(1)〜(7)のパターニング(塗り分け)が容易になり、重ね塗りが可能になる。ここで、重合機能を有するとは、重合性の官能基を有することである。例えば、一分子中にジイン構造を一カ所以上有する化合物。一分子中に、ハロゲン原子、ビニル基、メタクリル基、エポキシ基、アミノ基、カルボキシル基などを二つ以上有する化合物が挙げられる。
【0035】
重合性官能基を重合させた結果得られる重合物(オリゴマーやポリマー)も本発明に含まれる。重合性官能基を重合させる方法としては、熱、光、酸のいずれを用いてもよい。
【実施例】
【0036】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。本発明は、これら実施例によってなんら限定されない。
【実施例1】
【0037】
ベンゾチエノベンゾチオフェン0.6gと酢酸60mlと無水酢酸60mlを200mlのフラスコに仕込み、オイルバスにて反応液を60℃まで加熱した。その後、過酸化水素水25mlをゆっくりと滴下し、発熱を確認したところで、オイルバスを外し、発熱が収まるまで時間をおいた。その後、再度オイルバスにて100℃で加熱しながら一晩攪拌した。これを室温まで冷却し、析出した結晶を濾集、1,2−ジクロロメタンに溶解させ、カラムクロマトグラフィーを用いて精製することで、黄色の固体を得た。
H NMR(400MHz,CDCl,δppm)8.22−8.27(m,2H), 7.82−7.92(m,6H)。

【実施例2】
【0038】
2−トリデカンベンゾチエノベンゾチオフェン2.0gと1,2−ジクロロエタン100mlを200mlのフラスコに仕込み、85℃のオイルバスにて反応液を還流温度まで加熱した。その後、m−クロロ過安息香酸6.0gを1,2−ジクロロエタン70mlに溶解したものを反応液に滴下した。滴下後、85℃で24時間加熱攪拌した。この反応液をジクロロメタン350mlに注ぎ、均一に溶解させた後、カラムクロマトグラフィーにて精製することで黄色の微結晶を得た。
H NMR(400MHz,CDCl,δppm)7.80−7.85(m,1H), 7.60−7.80(m,5H), 7.48−7.51(dd,1H),2.75(t,2H), 1.66(m,2H), 1.20−1.40(m,20H),0.88(t,3H)。

【実施例3】
【0039】
ジナフト[2,1−b:2’,1’−f]チエノ[3,2−b]チオフェン0.50gと1,2−ジクロロエタン50mlを100mlのフラスコに仕込み、85℃のオイルバスにて反応液を還流温度まで加熱した。その後、m−クロロ過安息香酸1.10gを1,2−ジクロロエタン20mlに溶解したものを反応液に滴下した。滴下後、85℃で24時間加熱攪拌した。その後、反応液を空冷し、沈殿物を濾集した。得られた沈殿物を1,2−ジクロロメタンに溶解させた後、シリカゲルを用いたカラムクロマトグラフィーにて精製することで赤色の粉体を得た。
得られた化合物のマススペクトルを下図に示す。

【実施例4】
【0040】
図1から図3にそれぞれ、実施例1〜3の化合物を有機溶媒(1,1,2,2−テトラクロロエタン)に溶解させた直後、12時間、24時間の紫外可視吸収スペクトルの経時変化を示した。図4より、ペンタセンは溶液調製直後と24時間後のスペクトルの形状が酸化劣化によって大きく変化している。一方、本発明の化合物の具体例である化合物のスペクトルは、溶液調製直後と、24時間後においてほぼ一致しており、溶液状態で安定であることを示している。
【実施例5】
【0041】
ペンタセンを有機溶媒(1,1,2,2−テトラクロロエタン)に溶解させた直後、12時間、24時間の紫外可視吸収スペクトルの経時変化を図に示した。溶液調製直後と24時間後のスペクトルの形状が酸化劣化によって大きく変化している。一方、本発明の化合物の具体例である化合物のスペクトルは、溶液調製直後と、24時間後においてほぼ一致しており、溶液状態で安定であることを示している。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明によれば、有機溶剤に溶解しても、耐光性、耐酸化性に優れたn型有機半導体を提供することが可能となり、パターニングや重ね塗りが可能となり、優れた電気特性を有するデバイスの製造ができるようになり、需要が大いに期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で示されるようなスルホン構造を特徴とする有機化合物。
【化1】

ここで、置換基R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子および重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホニル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【請求項2】
一般式(1)中のRとR(n+4)が同一の置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。ここで、nは1以上4以下の整数である。
【請求項3】
下記一般式(2)から(7)で示されるいずれかの構造を特徴とする有機化合物。
【化2】

【化3】

【化4】

【化5】

【化6】

【化7】

ここで、置換基R〜R12は、それぞれ独立に、水素原子および重水素原子、ハロゲン原子、アリール基、複素環基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシル基、カルボニル基、エステル基、アミド基、イミノ基、スルフィド基、スルホキシド基、スルホニル基、シリル基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ニトリル基、メルカプト基のうち、少なくとも一つを含んでいる。
【請求項4】
一般式(2)〜(4)中のRとR(n+6)が同一の置換基であることを特徴とする請求項1に記載の有機化合物。ここで、nは1以上6以下の整数である。
【請求項5】
重合機能を有する請求項1〜4のいずれかに記載の有機化合物。
【請求項6】
一般式請求項1〜5に記載の有機化合物の骨格を少なくとも一つ以上有するオリゴマーまたはポリマー。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物からなる有機薄膜。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれかに記載の有機化合物からなる有機デバイス。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−11977(P2011−11977A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−154451(P2009−154451)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(506103636)ウシオケミックス株式会社 (10)
【Fターム(参考)】