説明

スレート建材の補修・補強処理工法

【課題】アスベスト繊維成分を含有するスレート建材に対する補修・補強処理工法を提供すること。
【解決手段】断熱プレート部材11の一方の面に金属薄板12を貼り、重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段13を備えた複合カバーリング材10を準備し、施工部を湿潤化し、該施工部をへパフィルター付き真空掃除機、水循環式掃除機により清掃し、複合カバーリング材を金属薄板面を外向きにして、重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段24を介在して、スレート屋根等の外面上に設置し、スレートの山部であり梁手段の位置する位置で、切粉等飛散防止手段を介し、取付固定手段17によりスレート外面に固定し、敷設した複合カバーリング材の裏面側に通気路手段25を設け、夏は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、冬は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、アスベスト繊維成分を含有するスレート屋根あるいはスレート外壁に対するスレート建材の補修・補強処理工法に係るものであって、省エネ・リフレッシュ効果、遮熱・断熱効果を高め、該スレートを補強し、劣化防止をさらに高め、場合によっては、アスベスト飛散防止処理を介在してアスベスト飛散を可及的に防止するスレート建材の補修・補強処理工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のように、アスベスト繊維成分を含有するスレート建材は、波形スレート、平形スレート、化粧スレートなどとして、既存建造物(公共施設建造物、会社工場、倉庫、学舎、駅舎、あるいは一般家屋など)の屋根材および外壁材などに多用され、その多くが現存する状況にある。
【0003】
この種のスレート建材は、長年月の間に、酸性雨、二酸化イオウ、大気汚染などによって、経年劣化するものであり、アスベスト繊維成分がスレート表面に露呈してきているため、風雨により周辺に飛散し易い状況になっており、人体におよぼす危険の度合いは、極めて多大である。このような一般建材としても多用されているアスベスト含有スレートに対し、アスベストの飛散を防止し、該スレート建造物を修復し、さらには、高遮熱・高断熱に構造替えを施すことは、「アスベスト災禍」から周辺住民を守るという点において大変意義のあることであるものの、ことアスベスト処理に関しては、充分な知識なくして行うと、かえってアスベストを飛散させてしまうという大きな問題点を有するものである。
【0004】
一例において、26年間使用した屋根用化粧スレートの表面の塗装を塗り替える際、充分な知識なく高圧洗浄を行った場合、その作業中におけるアスベスト気中濃度を測定した結果、作業者の位置で、平均43.4本/リットル、2m離れた位置でも、平均11.6本/リットルのアスベスト成分が測定され、環境省が定める隣地境界線上の基準値である10本/リットルを上まわり、その洗浄水からもアスベスト成分が検出されるというものであった。このように、アスベスト処理に関して、掃除のしかたによっては、かえってアスベストを飛散させてしまう結果を招来してしまうものであった。
【0005】
これらのことから、現在のところ、このアスベスト繊維成分を含有するスレート屋根建材ならびにスレート外壁建材に対するアスベストの飛散を防止しつつ、スレート建材を補修・補強処理する効果的な提案は、ほとんどなされていないのが実情である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明は、上記するアスベスト繊維成分を含有するスレート屋根建材ならびにスレート外壁建材に対し、諸々の要因による劣化により、アスベスト繊維成分が露出し、ひいては飛散してしまうという極めて危険な状況に鑑み、このアスベストの飛散防止に応答するべく、アスベスト含有スレートの補修・補強処理、より好ましくは、このアスベスト飛散防止を極めて効果的になし得るスレート建材用アスベスト飛散防止処理剤を供し、これを用いて、アスベスト飛散防止処理を施した後、当該スレートをカバーリングするアスベスト含有スレートの補修・補強工法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、上記する目的を達成するにあたって、具体的には、概して平行にのびる複数の梁手段に対し、スレート板を取り付けてなるスレート屋根あるいはスレート外壁を含むスレート建材の補修・補強処理工法であって、
高断熱性並びに耐燃焼性を有する断熱プレート部材に対し、その一方の面に金属薄板を貼り合わせ、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材を準備し、
施工中におけるアスベストの飛散を防止するため、施工部分を湿潤化し、その後、該施工部分をへパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃する清掃工程を含み、
前記複合カバーリング材を、前記金属薄板面を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ状にし、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段を介在して、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に設置し、
前記スレートの山部であり、且つ、前記梁手段の位置する位置において、切粉等飛散防止手段を介在して、タッピングボルトなどの取付固定手段により前記複合カバーリング材をスレート外面に固定してなり、
前記敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段を設け、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とするスレート建材の補修・補強処理工法を構成するものである。
【0008】
さらに、この発明において、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記複合カバーリング材が、平板状の複合カバーリング材と、軒先等の端部敷設用の複合カバーリング材と、棟部を覆う棟覆い用の複合カバーリング材とを含むものからなることを特徴とするとするものである。
【0009】
さらに、この発明において、請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記複合カバーリング材における断熱プレート部材が、高性能フェノールフォーム、押出発泡ポリスチレン、ビーズ系ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォームなどからなることを特徴とするものである。
【0010】
さらに、この発明において、請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記複合カバーリング材における金属薄板が、ガルバニウム鋼板、その他メッキまたは塗装による薄鋼板などからなることを特徴とするものである。
【0011】
さらに、この発明において、請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記複合カバーリング材における重ね継ぎ合わせ手段が、当該複合カバーリング材を縦方向並びに横方向に突き合わせ状に敷設する際、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って、前記金属薄板の突出部分からなる単層の部分により形成されるものからなり、前記単層の部分を隣接する複合カバーリング材の上に被せるようにして敷設することを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明において、請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記防水手段が、前記複合カバーリング材における単層の部分の裏面と、隣接する複合カバーリング材における金属薄板の外面との少なくともいずれか一方に設けた防水性接着剤からなることを特徴とするものである。
【0013】
さらに、この発明において、請求項7に記載の発明は、請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記通気路手段が、複合カバーリング材によりカバーリングされたスレートの波溝により形成される波溝通気路部分と、前記棟覆い用の複合カバーリング材の裏面に設けた棟に沿った通気路部分および枝通気路部分とからなり、前記各通気路部分が連通していて、外気を流通する通気路を形成することにより、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とするものである。
【0014】
さらにまた、この発明において、請求項8に記載の発明は、概して平行にのびる複数の梁手段に対し、アスベスト繊維成分を含有するスレート板を取り付けてなるスレート屋根あるいはスレート外壁を含むスレート建材の補修・補強処理工法であって、
施工中におけるアスベストの飛散を防止するため、施工部分を湿潤化し、その後、該施工部分をへパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃する清掃工程と、
前記スレート建材からのアスベスト成分の飛散を防止するアスベスト処理剤を準備する工程と、
前記清掃後におけるスレート建材の施工部分に、前記アスベスト処理剤を、0.01〜3kg/m塗布する工程と、
高断熱性並びに耐燃焼性を有する断熱プレート部材に対し、その一方の面に金属薄板を貼り合わせ、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材を準備し、
前記複合カバーリング材を、前記金属薄板面を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ状にし、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段を介在して、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に設置し、
前記スレートの山部であり、且つ、前記梁手段の位置する位置において、切粉等飛散防止手段を介在して、タッピングボルトなどの取付固定手段により前記複合カバーリング材をスレート外面に固定してなり、
前記敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段を設け、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とするスレート建材の補修・補強処理工法を構成するものである。
【0015】
さらに、この発明において、請求項9に記載の発明は、請求項8に記載のスレート建材の補修・補強処理工法であって、前記アスベスト処理剤が、合成樹脂エマルジョン水溶液および/または主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、軽量骨材と、水とを混合してなる混合液であることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
以上の構成になるこの発明のスレート建材の補修・補強処理工法によれば、
(1)高断熱性並びに耐燃焼性を有する断熱プレート部材に対し、その一方の面に金属薄板を貼り合わせ、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材を準備し、
(2)複合カバーリング材を、前記金属薄板面を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ状にし、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段を介在して、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に設置し、
(3)スレートの山部であり、且つ、前記梁手段の位置する位置において、切粉等飛散防止手段を介在して、タッピングボルトなどの取付固定手段により前記複合カバーリング材をスレート外面に固定し、
(4)敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段を設けるように構成したものであり、
特に、経年劣化によるスレート建造物に対する補修・補強に際して、断熱プレート部材と金属薄板との貼り合わせでなる複合カバーリング材を用いることで、高断熱・耐燃焼性並びに強度性の向上、さらに、外観ファッション性の向上を図り、
複合カバーリング材を、重ね継ぎ合わせ方向に沿って設けた重ね継ぎ合わせ手段により重ね継ぎ合わせ状に敷設し、それらを防水手段によって接合することにより防水性の高め、タッピングボルトなどの取付固定手段による固定に際して、切粉等飛散防止手段を介在することにより安全性が高く、省エネ・リフレッシュ施工が可能であるという作用効果を奏する。
さらに、敷設した複合カバーリング材の裏面側に通気路手段を設けることにより、遮熱性の高い修復・補強建造物とすることができ、その点においても極めて有効に作用するものといえる。
【0017】
さらに、この発明では、上記補修・補強処理の前に、
(1)施工中におけるアスベストの飛散を防止するため、施工部分を湿潤化し、その後、該施工部分をへパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃する清掃工程、
(2)スレート建材からのアスベスト成分の飛散を防止するとともに、付着力を確保するべく下地調整層として作用する合成樹脂エマルジョン水溶液および/または主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、軽量骨材と、水とを混合してなる混合液でなるアスベスト処理剤を準備する工程、
(3)清掃後におけるスレート建材の施工部分に、前記アスベスト処理剤を、0.01〜3kg/m塗布する工程、
という一連のアスベスト飛散防止処理工程を行うことにより、
特に、処理剤により処理する前に、処理施工部を充分に湿潤化しておき、しかる後、へパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃するという工程を経ることにより、処理すべき処理施工部からのアスベスト飛散を確実に抑えておくことができ、アスベスト飛散防止処理の工期中におけるアスベスト飛散、並びに、当然のことながら処理後のアスベスト飛散を確実に防止することができるという点において極めて有効に作用するものであり、このアスベスト飛散防止処理を行った後に、前述する断熱プレート部材と金属薄板との貼り合わせでなる複合カバーリング材により、当該スレート建材を覆ってしまうことにより、より確実に、且つ、効果的にアスベストの飛散を防止し、アスベスト飛散による重大な危害を防止する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、この発明になるスレート建材の補修・補強処理工法について、図面に示す具体的な実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、この発明になるスレート建材の補修・補強処理を施した状態を一部破断して示す概略的な斜視図であり、図2Aは、波形スレートによる既設建造物に対して本案になる複合カバーリング材を敷設固定した状態を、波形スレートの波に交差する方向で断面にして示す概略的な断面図、図2Bは、図2Aにおける2B−2B線に沿って断面にして示す概略的な断面図、図3は、スレート屋根に対してこの発明になるスレート建材の補修・補強処理工法を適用した例を示すものであって、図3Aは、その概略的な側断面図、図3Bは、棟覆い用複合カバーリング材の好ましい例を示す概略的な斜視図、図4Aは、断熱プレート部材と金属薄板との貼り合わせでなっていて、重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材の一例を示す概略的な斜視図、図4Bは、これを裏面側からみた概略的な斜視図、図4Cは、防水手段を介在して、当該複合カバーリング材を重ね継ぎ合わせた状態を示す側面図である。
【0019】
この発明になるスレート建材の補修・補強処理工法が適用される施工対象は、既設のスレート建材に対するものであり、該スレート建材とは、アスベスト繊維成分を含有する建材であって、波形スレート建材、平形スレート建材並びに化粧スレート建材などとして提供され、屋根建材あるいは外壁建材として多用されている建材を総じていう。
【0020】
スレート建材が適用されている既設の屋根並びに外壁は、通常、図1〜図3に示すように、例えば、波形のスレート板1を、概して平行にのびる複数の梁手段2に対し、複数のフックボルト手段3を介して固定する構造により構築されているものである。通常、波形のスレート板1を屋根材として、例えば、図3に示すような建造物に適用する場合、波形の谷線・山線が、屋根の棟から軒先方向に向けてのびるように配列され、隣接するスレート板1の波形の一部を重ね継ぎ合わせ、且つ、スレート板1の上縁の一部に、その上方に隣接するスレート板1の下縁の一部を重ね継ぎ合わせながら、前記フックボルト手段3により、梁手段2に固定している。
【0021】
図1〜図3に示す例において、前記梁手段2は、Cチャンネル鋼材により構成されており、あるいは、その他の例において、H型鋼材あるいはI型鋼材などにより構成されている。一方、前記フックボルト手段3は、図2Aおよび図2Bに示すように、一端側にフック部4aを備え、他端側にネジ部4bを備えたフックボルト4と、ナット5、大きめなワッシャー6および大きめなパッキン7により構成されている。
【0022】
上記するような構築状況にあるスレート建材1に対して、この発明になるスレート建材の補修・補強処理工法が適用される。
まず、この発明では、図4に示すような複合カバーリング材10、図3Aに示すような軒先等の端部敷設用複合カバーリング材10A、および、図3Bに示すような棟覆い用複合カバーリング材10Bが準備される。この複合カバーリング材10、10Aおよび10Bは、断熱プレート11と、該断熱プレート11の一方の面11aに、適宜接着剤などにより貼り合わされた金属薄板12との複合体によって構成されている。
【0023】
前記複合カバーリング材10、10Aおよび10Bにおける断熱プレート11は、高断熱性並びに耐燃焼性を有する素材、例えば、高性能フェノールフォーム、押出発泡ポリスチレン、ビーズ系ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォームなどを、厚さ寸法15〜30mm程度のプレート状に成形したものである。この複合カバーリング材10における断熱プレート11は、より好ましくは、高性能フェノールフォーム製断熱プレートが適用される。
【0024】
上記する断熱プレート11としての高性能フェノールフォームは、例えば、旭化成建材株式会社のネオマフォーム(登録商標)が好適である。このネオマフォームは、断熱性が高いことはもとより、加工性に優れている点において、この発明の構成材料として有効である。
【0025】
この発明における複合カバーリング材10は、上記する断熱プレート11に対し、その一方の面11aに、金属薄板12を貼り合わせたものからなっている。この発明において、前記金属薄板12は、厚さ寸法、0.5〜1.5mm程度の薄板であって、例えば、ガルバニウム(ガルバリウム)鋼板が好適である。さらに、前記金属薄板12の例としては、耐久性、耐候性に優れたメッキ塗装などによる適宜金属薄板であれば、上記実施例のものに限定されるものではない。
【0026】
この発明において、複合カバーリング材10は、図4に示すように、基本的には、適宜大きさの矩形状をなしていて、直交する重ね継ぎ合わせ方向(タテ方向並びにヨコ方向)にマトリックス状に敷設する構成のものである。この複合カバーリング材10は、前記直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って、重ね継ぎ合わせ手段13を備えている。一例になる、重ね継ぎ合わせ手段13は、第1の辺14、および、この第1の辺14に交差する第2の辺15に沿って、幅寸法w(約3〜10cm程度)だけ断熱プレート11を切り落として、金属薄板12のみによる重ね継ぎ合わせ部分16a、16bにより形成される。
【0027】
この発明において、前記複合カバーリング材10は、図4に示すような平板状のものにのみ限定されるものではなく、現存のスレート建造物の構造に合わせて、例えば、図3に示すような軒先部分を屈曲状にカバーする端部敷設用複合カバーリング材10A、並びに、図3Bに示すような棟覆い用複合カバーリング材10Bなど、形状並びに形態の異なる構成のものが、既存のスレート建造物の構造に合わせて、予め準備されるものである。なお、前記棟覆い用複合カバーリング材10Bは、図3Bに示すように、通気路手段25の一部を構成する棟に沿った通気路27および該通気路27に交差して当該棟覆い用複合カバーリング材10Bの傾斜方向に沿ってのびる枝通気路28が設けられている。
【0028】
この発明になるスレート建材の補修・補強処理工法では、上記する構成のものとして準備された複合カバーリング材10、10Aおよび10Bと、これを固定するための固定用タッピングボルト18などの取付固定手段17とが施工現場に持ち込まれる。
まず、この発明では、
(1)施工部分の湿潤並びに掃除などの前処理だけを行った後に、予め準備した複合カバーリング材によりスレート建材をカバーリングする処理工法と、
(2)施工部分の湿潤並びに掃除工程、アスベスト飛散防止処理剤によるアスベスト飛散防止処理工程、並びに予め準備した複合カバーリング材によりスレート建材をカバーリングするカバーリング工程を含む処理工法とがある。
【0029】
上記(1)の場合は、まず、施工現場において、施工部分を全体的に充分に湿潤化する。この施工部分の湿潤化は、水などを流すことによって行うものであり、圧水の吹き付けなどを避け、アスベスト成分が飛散しないような注意が必要である。施工部分を充分に湿潤化させた後、大きなゴミならびに土砂などを取り除き、HEAPフィルター付き真空掃除機、水循環式掃除機、水還流式掃除機などを用いて、アスベスト成分が飛散しないように充分注意して、当該スレート建材の施工部分を掃除する。この発明において、上記する施工部分の湿潤化並びに掃除は、極めて重要な工程の一つであり、この工程を除くことは決してできない。施工部分の湿潤化は、施工部分の掃除段階におけるアスベスト成分の飛散防止に多大に貢献し、施工部分の掃除は、複合カバーリング材の敷設固定に際して、多大に貢献するものである。
【0030】
しかる後、予め準備した複合カバーリング材10を、前記金属薄板面12を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段13を介して重ね継ぎ合わせ状に、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に敷設配置していく。この場合、隣接する複合カバーリング材10における長さ方向にのびる重ね継ぎ合わせ部分16aを重ね継ぎ合わせ、且つ、複合カバーリング材10における幅方向にのびる重ね継ぎ合わせ部分16bを下方に隣接する複合カバーリング材10の上縁部に重ね継ぎ合わせながら敷設する。さらに、この複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ施工の際、防水手段24が介在する。この防水手段24は、前記複合カバーリング材における単層の部分の裏面と、隣接する複合カバーリング材における金属薄板の外面との少なくともいずれか一方に設けた防水性接着剤によって構成される。前記防水手段の具体的な例としては、ブチルなどによる工業用両面接着テープ等である。
【0031】
この発明では、前記複合カバーリング材10を前記スレート板1の上に、上記するように重ね継ぎ合わせて敷設しながら、予め準備した固定用タッピングボルト18などの取付固定手段17により、当該複合カバーリング材10を前記スレート板1上に固定する。前記固定用タッピングボルト18は、一端側にボルトヘッド19を備え、他端側にタッピングドリル20およびこれに連なるネジ部21を備えたものからなっている。前記ボルトヘッド19には、プラスドライバー用のプラス形状溝、マイナスドライバー用のマイナス形状溝、あるいは六角レンチ用の六角形状溝が設けてある。前記固定用タッピングボルト18により前記複合カバーリング材10を固定する際、大きめのワッシャーあるいは大きめのパッキン22が併用される。
【0032】
前記複合カバーリング材10を、固定用タッピングボルト18などの取付固定手段17で固定する手順を示すと次の通りである。まず、吸引式ドリルにより、6mmφ程度の穴をスレートの手前まで開ける。この場合、切粉吸引には、へパフィルター付き真空掃除機を用いる。
【0033】
さらに、この発明では、切粉を室内側に落とさないようにするため、前手順で開けた穴内にウレタン等の粘性材を注入しておく。次いで、C型チャンネル鋼などでなる梁手段2に対して、3mmφ程度の下穴をあける。その後、固定用タッピングボルト18によりタッピングしながら複合カバーリング材を梁手段2に固定する。
【0034】
前記固定用タッピングボルト18をねじ込む位置は、例えば、波形スレートの山線部であり、且つ、前記梁手段2の位置する位置である。作業者は、前記固定用タッピングボルト18およびこれに対応する電動ドライバー(図示せず)を準備し、当該電動ドライバーにより、前記固定用タッピングボルト18をねじ込む。この際、前記固定用タッピングボルト18の先端には、タッピングドリル20が設けられているので、前記複合カバーリング材10、スレート板1、Cチャンネル鋼材でなる梁手段2を貫通し、当該固定用タッピングボルト18のネジ部21がCチャンネル鋼材に螺合して固着される。この場合、切り屑23は、Cチャンネル鋼材内に落下し、外部には飛び散らない。
【0035】
既設建造物におけるスレート板1上に、前記複合カバーリング材10および10Aを敷設固定した後、図3に示すように該建造物における棟部分に棟覆い部材10Bを固定する。このように敷設施工することによって、図3Aに示すように、前記敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段25を形成することができる。
【0036】
この通気路手段25は、複合カバーリング材によりカバーリングされたスレートの波溝空間により形成される波溝通気路部分26と、前記棟覆い用の複合カバーリング材10Bの裏面に設けた棟に沿った通気路部分27および枝通気路部分28とからなり、前記各通気路部分が連通していて、外気を流通する通気路を形成するものからなるっている。前記通気路手段25は、図3Aにおいて矢印25で示すように、スレート屋根を有する建造物に対して、該スレート屋根上に、上記する複合カバーリング材10、10Aおよび10Bを敷設施工した状態において、該複合カバーリング材の裏面側に形成されるものである。このように形成される通気路手段25によれば、温暖期(夏期)には、熱せられた空気を屋根上に逃がして、建造物室内の温度を低く保ち、寒冷期(冬期)には、空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有するものである。このような通気路構造における空気流調節機能は、カバーリング材が、金属板だけにより構成されるものでは、その機能が低く、この発明のように、当該カバーリング材を断熱プレート部材11と金属薄板12とからなる複合カバーリング材としたことによって、遮熱性並びに断熱性を高め、空気流調節機能を高めるものである。
【0037】
後述する遮熱性試験では、このスレート板の波溝による通気路手段25を開放したままの構造でなる試験体による試験(図7B参照)と、スレート板の波溝による通気路手段25をシール材により閉じた構造でなる試験体による試験(図7C参照)とを行った結果、通気路手段25を有する試験体は、通気路手段を有しない試験体に比べて遙かに高い遮熱性を示した。
【0038】
一方、上記段落〔0028〕において、(2)に示すように、施工部分の湿潤並びに掃除工程、アスベスト飛散防止処理剤によるアスベスト飛散防止処理工程を経た後、複合カバーリング材によりスレート板をカバーリングする工程を含む処理工程について説明する。
【0039】
まず、スレート建材用アスベスト飛散防止処理剤の具体的な実施例について説明する。この発明の好ましい実施例において、このスレート建材用アスベスト飛散防止処理剤は、スレート建材における施工すべき部分(通常は、スレート建材の全体)を、湿潤し、清掃した後、当該スレート建材に対して塗布することにより、アスベスト繊維成分の飛散防止を図るものによって構成される。
【0040】
一例において、前記アスベスト処理剤は、前記スレート建材からのアスベスト繊維成分の飛散を防止するとともに、付着力を確保するべく下地調整層として作用する合成樹脂エマルジョン水溶液からなる。より具体的には、前記アスベスト処理剤は、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ウレタン樹脂などによるものである。
【0041】
一方、他の例において、前記アスベスト処理剤は、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、軽量骨材と、必要に応じて加えられる繊維材と、水とを混合したものによって構成されている。
【0042】
この発明において、前記アスベスト処理剤は、上記段落〔0040〕で述べる処理剤を単独に用い、あるいは、上記段落〔0041〕で述べる処理剤を単独に用い、さらには、両者を併用することもある。
【0043】
上記段落〔0041〕で述べるアスベスト処理剤は、好ましくは、30〜60重量%の金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、5〜25重量%の天然の糊または樹脂バインダーと、0.5〜10重量%の軽量骨材と、必要に応じて加えられる0〜3重量%の繊維材と、10〜60重量%の水とを混合したものからなっている。
【0044】
この発明に適用されるアスベスト処理剤のより好ましい具体的な実施例によれば、上記段落〔0041〕で述べるアスベスト処理剤としては、45重量%の炭酸カルシウムと、5重量%の石灰と、15重量%のアクリル樹脂と、1重量%の軽量骨材と、1.5重量%の耐アルカリガラス繊維と、32.5重量%の水とを混合したものである。
【0045】
さらに、この発明に適用される上記段落〔0041〕で述べるアスベスト処理剤中には、植物性または動物性の天然の糊が添加される。前記天然の糊としては、澱粉、銀杏、つのまたなどの植物性の糊、または、ゼラチン、コラーゲン、にかわなどの動物性の糊が有効である。前記有機または無機の繊維としては、麻、マニラ麻、セルロースなどの天然繊維、レーヨン、ナイロン、ポリプロピレン、アラミド繊維などの有機繊維、または、ガラス繊維、炭素繊維などの無機繊維が有効である。
【0046】
さらに、この発明においては、上記する構成により得られるアスベスト処理剤に対して、適量の合成樹脂を添加したものであってもよいし、あるいは、さらに、微量の天然ゴムあるいは合成ゴムを添加したものであってもよい。
【0047】
前記合成樹脂としては、例えば、酢酸ビニル、エチレン−酢酸ビニル共重合体などが有効であり、合成ゴムとしては、スチレンブタジエンゴムなどが有効である。
【0048】
前記アスベスト処理剤には軽量骨材が混入される。この軽量骨材としては、例えば、パーライト、シラスバルーン、ビーズ発泡スチロールなどが有効である。
【0049】
次いで、この発明にかかるスレート建材に対するアスベスト飛散防止処理について、その手順にそって詳細に説明する。
この発明では、上記する構成になるアスベスト処理剤が予め準備される。前記アスベスト処理剤は、合成樹脂エマルジョン水溶液、および/または、主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、軽量骨材と、必要に応じて添加される繊維材と、水とを混合してなる処理剤である。
【0050】
この発明では、まず、上記するアスベスト処理剤を準備する。この各アスベスト処理剤を準備した上で、施工現場において、アスベスト飛散防止処理すべきスレート建材に対し、当該施工部分を全体的に充分に湿潤化する。この施工部分の湿潤化は、水などを流すことによって行うものであり、圧水の吹き付けなどを避け、アスベスト成分が飛散しないような注意が必要である。施工部分を充分に湿潤化させた後、大きなゴミならびに土砂などを取り除き、HEAPフィルター付き真空掃除機、水循環式掃除機、水還流式掃除機などを用いて、アスベスト成分が飛散しないように充分注意して、当該スレート建材の施工部分を掃除する。この発明において、上記する施工部分の湿潤化並びに掃除は、極めて重要な工程の一つであり、この工程を除くことは決してできない。施工部分の湿潤化は、施工部分の掃除段階におけるアスベスト成分の飛散防止に多大に貢献し、施工部分の掃除は、次工程におけるアスベスト処理剤の塗布処理を容易化並びに確実化するという点において、多大に貢献する。
【0051】
上記する清掃が終わった後、前記アスベスト処理剤の塗布作業が行われる。このアスベスト処理剤の塗布作業は、予め準備されている上記アスベスト処理剤(無稀釈液)を、刷毛、ローラー、あるいはスプレーガンを用いて、基準として、約0.01〜3kg/m塗布し、施工部分の表面近傍を固め、プライマー層を形成する。
【0052】
上記するアスベスト処理剤の塗布作業の後、必要に応じて、当該アスベスト処理剤が乾燥した段階で、スレート建材に対し、上記段落〔0034〕で述べる別のアスベスト処理剤の塗布作業が行われる。この別のアスベスト処理剤の塗布作業は、圧送式吹き付け機、リシンガンまたはテコなどを用いて、基準約0.1〜10kg/m塗布し、アスベスト含有建材を補修・補強する。
【0053】
その後、上記する第1の実施例において詳細に説明したように、複合カバーリング材10の敷設により、スレート板1を完全にカバーリング処理する。このカバーリング工程については、第1の実施例において述べた通りのものであるので省略する。
【0054】
次いで、この発明になるアスベスト飛散防止処理剤により処理された試験体に対する各種試験を行った結果について説明する。
1.曲げ強度試験
(1)試験方法
厚さ6mmのスレート板から、幅19mm×長さ150mmの板を5枚切り出し、上記する本案処理を施し、1週間風乾後、オートグラフにより、スパン長50mm、載荷速度10mm/分で曲げ試験を行った。
比較のため、全く処理をしていない古いスレート板についても同様の条件で試験を行った。
(2)試験結果
試験結果を図5に示す。図5は、曲げ荷重(kg・f)に対する変位量(mm)のグラフである。この試験の結果、全く処理をしていない古いスレート板が、曲げ荷重140(kg・f)で破断してしまうのに対し、本案処理を施した試験体では、その破断曲げ荷重が約210(kg・f)であり、約50%増加することがわかった。
【0055】
2.遮熱性試験
(1)試験方法
厚さ6mm程のスレート板から、250mm×300mmの板を切り出し、上記する本案処理を施し、1週間風乾後、図6に示す遮熱性試験装置の受熱台(受熱面の大きさ160mm×230mm)にセットした。試験体から250mm離れた位置に200Wの熱源をおき、2時間熱を照射する。試験体の表面と離面(裏面の場合14mm離れた位置)に温度センサーをセットし、温度変化を測定した。
この発明による試験体に対する試験(図7B参照)と比較のため、全く処理をしていない古いスレート板に対する試験(図7A参照)と、この発明の構造の試験体の波溝をシールし、波溝中の空気が動かないようにした試験体の試験(図7C参照)を行った。なお、図7Bは、スレートの波溝が通気溝として空気が動くことのできる構造体における温度変化をあらわすグラフであり、図7Cは、スレートの波溝をシールし、波溝中の空気が動かない構造体における温度変化をあらわすグラフである。
2時間後の裏面温度の比較を行いスレート板との遮熱性の指標とした。
(2)試験結果
図7各図は、上記する各試験体の温度変化をあらわすものであり、それぞれ表面温度の変化と裏面温度の変化とを示す。この試験においては、裏面温度が遮熱性並びに断熱性をあらわしている。
この試験の結果、この発明による試験体の裏面温度(図7B参照)は、無処理のスレート板(図7A参照)に比べて、約25℃ほど低く、波溝をシールして波溝中の空気が動かない試験体(図7C参照)より、約6℃ほど低かった。この結果から、この発明のように、通気路手段25を設け、波溝内の空気を逃がす構造にすることが、遮熱性並びに断熱性を高めるには極めて効果的であるということがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、この発明になるスレート建材の補修・補強処理を施した状態を一部破断して示す概略的な斜視図である。
【図2】図2Aは、波形スレートによる既設建造物に対して本案になる複合カバーリング材を敷設固定した状態を、波形スレートの波に交差する方向で断面にして示す概略的な断面図、図2Bは、図2Aにおける2B−2B線に沿って断面にして示す概略的な断面図である。
【図3】図3Aは、スレート屋根に対してこの発明になるスレート建材の補修・補強処理工法を適用した例を示す概略的な側断面図、図3Bは、棟覆い用複合カバーリング材の好ましい例を示す概略的な斜視図である。
【図4】図4Aは、断熱プレート部材と金属薄板との貼り合わせでなっていて、重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材の一例を示す概略的な斜視図であり、図4Bは、これを裏面側からみた概略的な斜視図であり、図4Cは、防水手段を介在して、当該複合カバーリング材を重ね継ぎ合わせた状態を示す側面図である。
【図5】図5は、この発明になるスレート建材に対するアスベスト飛散防止処理剤により処理されたスレート板に対する曲げ強度試験結果をあらわすグラフである。
【図6】図6は、この発明になるスレート建材に対するアスベスト飛散防止処理剤により処理されたスレート板に対する遮熱性試験を行った際の遮熱性試験装置の例を示す概略的な説明図である。
【図7】図7は、遮熱性試験において、試験体の表面温度および裏面温度の温度変化をあらわすグラフであって、図7Aは、全く処理をしていない古いスレート板の温度変化をあらわすグラフ、図7Bは、この発明になるスレート建材用アスベスト飛散防止処理剤を施した試験体であって、スレートの波溝が通気溝とし作用する構造体における温度変化をあらわすグラフ、図7Cは、この発明になるスレート建材用アスベスト飛散防止処理剤を施した試験体であって、スレートの波溝をシールした構造体における温度変化をあらわすグラフである。
【符号の説明】
【0057】
1 スレート板
2 梁手段
3 フックボルト手段
4 フックボルト
4a フック部
4b ネジ部
5 ナット
6 大きめなワッシャー
7 大きめなパッキン
10 複合カバーリング材
10A 軒先部用複合カバーリング材
10B 棟覆い用複合カバーリング材
11 断熱プレート
11a 断熱プレートの一方の面
12 金属薄板
13 重ね継ぎ合わせ手段
14 第1の辺
15 第2の辺
16a、16b 重ね継ぎ合わせ部分
17 取付固定手段
18 固定用タッピングボルト
19 ボルトヘッド
20 タッピングドリル
21 ネジ部
22 大きめのパッキン
23 切り屑
24 防水手段
25 通気路手段
26 スレート波溝による通気路
27 棟に沿った通気路部分
28 枝通気路部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
概して平行にのびる複数の梁手段に対し、スレート板を取り付けてなるスレート屋根あるいはスレート外壁を含むスレート建材の補修・補強処理工法であって、
高断熱性並びに耐燃焼性を有する断熱プレート部材に対し、その一方の面に金属薄板を貼り合わせ、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材を準備し、
施工中におけるアスベストの飛散を防止するため、施工部分を湿潤化し、その後、該施工部分をへパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃する清掃工程を含み、
前記複合カバーリング材を、前記金属薄板面を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ状にし、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段を介在して、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に設置し、
前記スレートの山部であり、且つ、前記梁手段の位置する位置において、切粉等飛散防止手段を介在して、タッピングボルトなどの取付固定手段により前記複合カバーリング材をスレート外面に固定してなり、
前記敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段を設け、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とするスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項2】
前記複合カバーリング材が、平板状の複合カバーリング材と、軒先等の端部敷設用の複合カバーリング材と、棟部を覆う棟覆い用の複合カバーリング材とを含むものからなることを特徴とする請求項1に記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項3】
前記複合カバーリング材における断熱プレート部材が、高性能フェノールフォーム、押出発泡ポリスチレン、ビーズ系ポリスチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリプロピレンフォーム、ポリエチレンフォームなどからなることを特徴とする請求項1あるいは請求項2に記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項4】
前記複合カバーリング材における金属薄板が、ガルバニウム鋼板、その他メッキまたは塗装による薄鋼板などからなることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項5】
前記複合カバーリング材における重ね継ぎ合わせ手段が、当該複合カバーリング材を縦方向並びに横方向に突き合わせ状に敷設する際、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って、前記金属薄板の突出部分からなる単層の部分により形成されるものからなり、前記単層の部分を隣接する複合カバーリング材の上に被せるようにして敷設することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項6】
前記防水手段が、前記複合カバーリング材における単層の部分の裏面と、隣接する複合カバーリング材における金属薄板の外面との少なくともいずれか一方に設けた防水性接着剤からなることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項7】
前記通気路手段が、複合カバーリング材によりカバーリングされたスレートの波溝により形成される波溝通気路部分と、前記棟覆い用の複合カバーリング材の裏面に設けた棟に沿った通気路部分および枝通気路部分とからなり、前記各通気路部分が連通していて、外気を流通する通気路を形成することにより、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれかに記載のスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項8】
概して平行にのびる複数の梁手段に対し、アスベスト繊維成分を含有するスレート板を取り付けてなるスレート屋根あるいはスレート外壁を含むスレート建材の補修・補強処理工法であって、
施工中におけるアスベストの飛散を防止するため、施工部分を湿潤化し、その後、該施工部分をへパフィルター付き真空掃除機あるいは水循環式掃除機などにより清掃する清掃工程と、
前記スレート建材からのアスベスト成分の飛散を防止するアスベスト処理剤を準備する工程と、
前記清掃後におけるスレート建材の施工部分に、前記アスベスト処理剤を、0.01〜3kg/m塗布する工程と、
高断熱性並びに耐燃焼性を有する断熱プレート部材に対し、その一方の面に金属薄板を貼り合わせ、直交する重ね継ぎ合わせ方向に沿って重ね継ぎ合わせ手段を備えた複合カバーリング材を準備し、
前記複合カバーリング材を、前記金属薄板面を外向きにして、前記重ね継ぎ合わせ手段を介して重ね継ぎ合わせ状にし、各複合カバーリング材の重ね継ぎ合わせ部に防水手段を介在して、前記スレート屋根あるいはスレート外壁の外面上に設置し、
前記スレートの山部であり、且つ、前記梁手段の位置する位置において、切粉等飛散防止手段を介在して、タッピングボルトなどの取付固定手段により前記複合カバーリング材をスレート外面に固定してなり、
前記敷設した複合カバーリング材の裏面側に前記スレートの波溝を一部に含む通気路手段を設け、温暖期(夏期)は熱せられた空気を屋根上に逃がして冷気を保ち、寒冷期(冬期)は空気の流れを抑えて暖気を保つ空気流調節機能を保有してなることを特徴とするスレート建材の補修・補強処理工法。
【請求項9】
前記アスベスト処理剤が、合成樹脂エマルジョン水溶液および/または主として、金属の水酸化物および/または強塩基と弱酸の金属塩と、天然の糊または樹脂バインダーと、軽量骨材と、水とを混合してなる混合液であることを特徴とする請求項8に記載のスレート建材の補修・補強処理工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−59730(P2010−59730A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−228218(P2008−228218)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(591102822)富士工業株式会社 (20)
【Fターム(参考)】