説明

スロッシング抑制装置およびスロッシング抑制方法

【課題】液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器において、液体を移動させることなく、スロッシングの発生を抑制することができるスロッシング抑制装置および方法を提供する。
【解決手段】本発明のスロッシング抑制装置は、容器内の側壁20に吸着する吸着部材21、26と、浮屋根22上の縁部に取り付けられ、吸着部材21、26を接続し、吸着部材21、26を側壁20に接触または側壁20から離間させる着脱手段とを含む。また、本発明のスロッシング抑制方法は、地震発生時に、浮屋根22上の縁部に取り付けられ、容器内の側壁20に吸着する吸着部材21、26を側壁20に接触または側壁20から離間させる着脱手段により、吸着部材21、26を側壁20に接触させるステップを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器においてスロッシングの発生を抑制するためのスロッシング抑制装置およびスロッシング抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
石油を備蓄したり、石油から精製されるブタン、ガソリン、ナフサ、軽油、重油等を貯留するために、各種タンクが構築されている。例えば、容器の上部を覆う屋根が固定屋根とされた固定屋根式タンク、液面の変動に伴い屋根が移動する浮屋根式タンク、揮発性が高いブタンやナフサに対しては球形ホルダが構築されている。これらタンクは、揮発性を有する液体の揮発による大気中への放散を抑制するために、上部が覆われている。固定屋根式タンクは、固定屋根が設けられるものの、固定屋根と液面との間に空間があり、その空間に蒸発したガスが溜まり、液ロスを生じる。この液ロスは、備蓄する石油や、貯留するブタン等の量を減少させることとなる。そこで、液面に接して上記空間をなくし、液ロスを低減させることを可能にする浮屋根式タンクが近年多く構築されている。なお、浮屋根式タンクの浮屋根は、液面を覆うデッキ板と、デッキ板の縁部に設けられる箱形構造物のポンツーンとから構成される。
【0003】
浮屋根は、タンク内への石油等の供給による液面上昇とともに上昇し、タンク内の石油等の取り出しによる液面下降とともに下降する。また、地震時の液面の揺動に伴い、揺動する。地震による揺れの周期と、容器の固有周期とが近い場合、共振が発生し、この共振によってタンク内の液面が大きく波立つスロッシングを発生させる。通常時には上部が浮屋根で覆われているものの、地震時にはこのスロッシングによる液面の大きい波立ちにより、液面が開放され、タンクから液が溢れ出る。石油等は可燃性の液体であり、溢れ出た液に静電気等の着火源が存在すると大火災を発生させる。そこで、スロッシングを抑制するための装置の提供が望まれている。
【0004】
例えば、浮屋根の下面に垂下される線条体と、一対の板状体を傾動自在に連結して成る抵抗板とを含み、各板状体が略水平に展開した状態から上方に閉じる方向へのみ傾動し得るよう、抵抗板を線条体に吊り下げ支持したものが提案されている(特許文献1参照)。これは、浮屋根が上方に向かって揺動する際に抵抗板の各板状体が略水平に展開して貯蔵液から抵抗力を受け、浮屋根の揺動を抑制させるものである。これにより、スロッシングが速やかに沈静化される。
【0005】
また、浮屋根が液位の上下方向の変動に追従するように側壁に取り付けられた複数のレールと、浮屋根に取り付けられた複数の拘束部材とを備える液面揺動防止装置が提案されている(特許文献2参照)。この装置は、浮屋根が水平に対してある傾きをもった場合に一つの拘束部材の上端と他の拘束部材の下端がレールに支持されることで、浮屋根の一定以上の傾きを拘束するものである。この文献では、さらに浮屋根の変位に連動して回転する車輪と、浮屋根が液面の非対象揺動により傾こうとする際に、車輪対の回転によって張力が作用し、車輪に制動が効くように掛けられるベルトとを備える装置も提案されている。
【0006】
さらに、平面部を有し、この平面部を上記液体の表面あるいは当該液体の表面にフロス(スカムの原因となる物質、すなわち比重1以下の油状物質、放線菌や粘着物質に含まれた気泡)層が形成されるものにあってはこのフロス層の上表面に沿わせて上記槽内に配設されてなる装置が提案されている(特許文献3参照)。この装置は、平面部で外力または内部要因によって昇降しようとする液体を抑制することにより、液体のスロッシングの発生を防止するものである。
【0007】
上記装置はいずれも、スロッシングの発生を抑制することができるものの、装置を設置するために、タンク内の液体を移動させる必要がある。特に、タンク内の液体が満杯である場合、移動させる液体の量が多く、移動コストが高価になるといった問題があった。また、移動させた液体を貯留するための別のタンクが必要であり、さらには装置を設置後、再びそのタンクに戻すために液体を移動させる必要があり、さらにコストおよび手間がかかるといった問題があった。
【特許文献1】特開平9−142575号公報
【特許文献2】特開平9−142582号公報
【特許文献3】特開平9−272593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述の問題を解決するためになされたものであり、液体を移動させることなく、スロッシングの発生を抑制することができるスロッシング抑制装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、液面に浮かぶ浮屋根上の縁部に、固定金具を取り付け、タンクの内壁に吸着するタンク内壁用磁石と、固定金具に吸着する浮屋根用磁石とを用いることにより、液体を移動させることなく設置することができ、また、地震が起こらない通常時においては、浮屋根用磁石を固定金具に吸着させつつ滑動させて、タンクの内壁からタンク内壁用磁石を離間させ、これにより、液面の昇降に伴い、浮屋根を昇降自在にさせ、地震時においては、浮屋根用磁石を固定金具に吸着させつつ滑動させて、タンクの内壁にタンク内壁用磁石を近接させ、タンクの内壁にタンク内壁用磁石が吸着することにより、浮屋根が固定され、これにより、液面の変位を抑制し、スロッシングの発生を抑制することができることを見出すことによりなされたものである。上記課題は、本発明のスロッシング抑制装置および抑制方法を提供することにより達成される。
【0010】
本発明のスロッシング抑制装置は、液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器内で発生するスロッシングを抑制するためのものであり、容器内の側壁に吸着する吸着部材と、浮屋根上の縁部に取り付けられ、吸着部材を接続するとともに吸着部材を側壁に接触または側壁から離間させる着脱手段とを含む。
【0011】
吸着部材は、側壁用磁石であり、着脱手段は、浮屋根上の縁部に取り付けられる固定金具と、固定金具に吸着する浮屋根用磁石と、側壁用磁石と浮屋根用磁石とを接続する接続部材とからなり、固定金具に吸着させつつ浮屋根用磁石を滑動させ、側壁用磁石を側壁に吸着させることにより、浮屋根を側壁に固定することができる。この浮屋根を容器の側壁に固定することで、液面の変位を抑制し、スロッシングの発生を抑制することができる。
【0012】
吸着部材は、電磁石とすることもでき、吸着の際に電流を導通し、離間させる際に電流供給を停止することができる。着脱手段は、(a)吸着部材を接続する接続部と、拡張部と、接続部と拡張部とを連結する連結部とを備える接続部材と、(b)浮屋根上の縁部に取り付けられ、連結部が挿通可能で、浮屋根の中央から側壁に向けて延びる開口と、拡張部と嵌合し、浮屋根の中央から側壁に向けて延びる嵌合溝とを備えるレール部材とから構成することもできる。
【0013】
浮屋根が、容器内の液面の昇降に伴い、容器の側壁に摺動するもの(タンクの内径と浮屋根の径がほぼ同じもの)の場合には、上記吸着部材および着脱手段は1つであっても良いが、揺動しようとする液面に対して充分な抵抗力を付与するためには2つ以上設けることが好ましい。円筒形の容器の場合には、90°ごとに4つ設けることが好ましい。
【0014】
また、地震計からの地震発生信号の受信に応答して、着脱手段に、吸着部材を側壁に接触させる指示信号を供給する指示信号供給手段を備えることができる。この場合、着脱手段は、その指示信号を受信し、吸着部材を側壁に向けて移動させ、側壁への接触に応答して、吸着部材の移動を停止させる制御手段を含むことができる。
【0015】
本発明のスロッシング抑制方法は、地震発生時に、浮屋根上の縁部に取り付けられ、容器内の側壁に吸着する吸着部材を側壁に接触または側壁から離間させる着脱手段により、吸着部材を側壁に接触させるステップを含む。これにより、吸着部材を容器内の側壁に吸着させ、浮屋根を容器内の側壁に固定することができる。
【0016】
また、地震計からの地震発生信号の受信に応答して、着脱手段に、吸着部材を側壁に接触させる指示信号を供給するステップをさらに含み、上記接触させるステップは、着脱手段により指示信号を受信するステップと、着脱手段により吸着部材を側壁に向けて移動させるステップと、側壁への接触を検知して、吸着部材の移動を停止させるステップとを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明のスロッシング抑制装置および抑制方法を提供することにより、地震時の浮屋根の揺動を抑制することができる。これにより、火災等の発生を防止することができる。また、浮屋根式タンクの液位が高い状態や、タンクを稼働している状態においても施工可能であるため、補修のための石油等の移動によるコストがかからない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明を、図面を参照して詳細に説明するが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではない。なお、液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器としてはいかなるものであっても良いが、以下、石油等を貯留する容器として一般に採用されている浮屋根式タンクとして説明する。
【0019】
図1は、本発明のスロッシング抑制装置を設置した浮屋根式タンクを示した図である。図1(a)は、平面図を示し、図1(b)は、切断線A−Aで切断した断面図を示す。石油等の液体を貯留するタンクは、底板11と、側板12と、浮屋根13と、スロッシング抑制装置14とから構成される。液体は、底板11と側板12とから構築される容器内に収容され、液面に浮き、液面を覆うように浮屋根13が配置される。側板12には、液体を供給するための供給口と、液体を取り出すための取り出し口15とが設けられている。
【0020】
底板11と側板12とから構築される容器は円筒状とされる。これは、側板12が液体から受ける圧力を均一にするためである。底板11および側板12は、容量が大きい場合、それらにかかる圧力が大きいため、この圧力による破損に耐えうる鋼材が一般に使用される。鋼材の使用により、一定曲率を有する側壁を簡単に形成することができる。
【0021】
浮屋根13は、単なる円形の平板であっても良いが、図1に示すように、鋼材から形成されるデッキ板と、そのデッキ板の周囲に設けられ、液体に浮く箱形構造物であるポンツーンとから構成することができる。
【0022】
図2を参照して本発明のスロッシング抑制装置を詳細に説明する。図2に示すスロッシング抑制装置は、タンク内の側壁20に吸着する吸着部材として用いられる側壁用磁石21と、浮屋根22上の縁部に取り付けられ、側壁用磁石21を、側壁20に接触させ、また、側壁20から離間させる着脱手段とから構成される。図2に示す実施形態では、着脱手段は、浮屋根22上の縁部に取り付けられる固定金具23と、固定金具23に吸着する浮屋根用磁石24と、側壁用磁石21と浮屋根用磁石24とを接続する接続部材25とから構成されている。
【0023】
タンクの側壁20は、上記の鋼材から構築されているため、磁石を吸着させることができる。また、固定金具23も、鋼材から形成されるため、磁石を吸着させることができる。側壁用磁石21および浮屋根用磁石24は、図2に示す実施形態では平面を有する平板状とされており、それぞれの平面が側壁20および固定金具23に接触して吸着する。平面を有する構造にすることで、吸着面を大きくすることができ、強い吸着力を付与することができる。また、平面を有する構造にすることで、固定金具23の平面上を、吸着を保持しつつ滑動させることができる。これにより、側壁用磁石21を側壁20に接触させ、また、側壁20から離間させることができる。吸着部材は、磁石のほか、スロッシングの発生を抑制することができるものであればいかなるものであっても良く、例えば、内部の圧力を下げて吸着する吸盤であっても良い。
【0024】
側壁用磁石21および浮屋根用磁石24は、マグネタイト、酸化鉄を主原料とするフェライト磁石、サマリウムおよびコバルトを原料とするサマリウム・コバルト磁石、電磁石等を挙げることができる。浮屋根22が液面の変位に伴って変動しないように固定することができる吸着力を有する磁石とされる。浮屋根用磁石24は、吸着を保持しつつ固定金具23上を滑動させるため、一定の吸着力を有するものが好ましいが、側壁用磁石21は、側壁20に吸着する場合には高い吸着力を有し、側壁20から離間する場合には吸着力が小さいほうが好ましい。このため、吸着力を電流の供給量により制御することができる電磁石が好ましい。
【0025】
図2に示すように、浮屋根22の上面と側壁20とがなす角度は、地震のない通常時は約90°であるため、側壁用磁石21の平面と浮屋根用磁石24の平面とがなす角度は約90°とされる。平板状の側壁用磁石21と平板状の浮屋根用磁石24とを接続する接続部材25は、浮屋根用磁石24の平面に対して約45°に延びて互いを接続している。
【0026】
図2に示す実施形態では、浮屋根22を側壁20により強力に固定するため、浮屋根用磁石24の一端にも、側壁用磁石26が設けられている。接続部材25は、液面から受ける力を、浮屋根22、固定金具23、浮屋根用磁石24を通じて受け取り、側壁用磁石21に伝えるが、浮屋根用磁石24の平面に対して約45°に延びているため、浮屋根用磁石24と接続部材25との間の接合部が破損しやすい。浮屋根用磁石24と接続部材25とを接続する支持部材27を設けることで、上記接合部の破損を防止することができる。
【0027】
固定金具23は、浮屋根22を構成するポンツーン上に取り付けることができる。図2に示す実施形態では、側壁用磁石26を浮屋根用磁石24の一端に設けているため、この側壁用磁石26を側壁20から離間させるスペース28を有するように、固定金具23が取り付けられている。
【0028】
再び図1を参照して、スロッシング抑制装置14を説明すると、円筒状のタンクでは、液面を覆うべく浮屋根13は円形とされる。タンクの内径と浮屋根13の径が、ほぼ同じである場合、浮屋根13を構成するポンツーンに厚さがあるため、1つの側壁用磁石と1つの着脱手段のみの構成とし、1箇所のみを固定すれば、浮屋根13が浮き上がることはない。しかしながら、その1箇所に集中して荷重がかかり、破損してしまう可能性があるため、図1に示すように2箇所以上設けることが好ましい。浮屋根13の径が、タンクの内径に比較して小さい場合、1箇所のみの固定では浮屋根13が浮き上がるため、この場合には2箇所以上設ける必要がある。
【0029】
図1に示す実施形態では、浮屋根13の径が、タンクの内径に比較して小さいため、等間隔で4箇所に設けられている。これにより、浮屋根13の下面の特定箇所に荷重がかかったとしても、適切に液面の変位を抑制することができ、スロッシングの発生を抑制することができる。
【0030】
本発明のスロッシング抑制装置は、液面に浮いた浮屋根13の上面に取り付けられるものであるため、タンクの内容物を取り出し、移動させることなく、施工することができる。
【0031】
図3は、スロッシング抑制装置の別の実施形態を示した図である。図3(a)は、浮屋根上にスロッシング制御装置を取り付けたところを示し、図3(b)は、着脱手段の接続部材を示し、図3(c)は、レール部材を示す。図3に示す実施形態では、着脱手段が、側壁用磁石30を接続する接続部31と、拡張部32と、接続部31と拡張部32とを連結する連結部33とを備える接続部材34と、浮屋根35上の縁部に取り付けられ、連結部33が挿通可能で、浮屋根35の中央から側壁に向けて延びる開口36と、拡張部32と嵌合し、浮屋根35の中央から側壁に向けて延びる嵌合溝37とを備えるレール部材38とから構成されている。接続部材34を滑動させることにより、側壁用磁石30を側壁に接触させ、また、側壁から離間させることができる。なお、図3(c)では、嵌合溝37の形状を詳細に示すため、側壁から見たところを示している。図3(c)に示す実施形態では、レール部材38の一端には拡張部32が外れないようにストッパが形成されているが、他端には形成されていない。これは、他端側は側壁に近接しており、拡張部32が外れることはないためである。
【0032】
図3に示す接続部材34は、一端に、側壁用磁石30を接合するための接合面を備え、他端に、連結部33に比較して拡張した拡張部32が設けられている。拡張部32は、連結部33に比較して拡張していればいかなる形状であっても良い。レール部材38は、拡張部32の形状に対応し、拡張部32を嵌合する嵌合溝37を備えており、レール部材38の長手方向に嵌合溝37が延びている。また、レール部材38は、連結部33が挿通可能な開口36が設けられており、嵌合溝37に対応して長手方向に延びている。
【0033】
開口36および嵌合溝37が長手方向に延びているため、長手方向に側壁用磁石30を移動させることができ、また、拡張部32に比較して開口36の幅が小さいため、拡張部32がレール部材38から外れることはない。接続部材34およびレール部材38は、磁石を吸着させる必要がないため、鋼材に限られるものではないが、材料強度の点から鋼材が好ましい。
【0034】
本発明では、地震計からの地震発生信号を受信し、その受信に応答して、着脱手段に、側壁用磁石を側壁に接触させる指示信号を供給する指示信号供給手段を備えることができる。この場合、着脱手段は、指示信号を受け取り、その指示信号に応答して、側壁用磁石を側壁に向けて移動させ、側壁への接触に応答して、側壁用磁石の移動を停止させる制御手段を含む構成とされる。側壁用磁石を側壁に向けて移動させる速度は、固定金具に浮屋根用磁石が吸着した状態を保持しつつ、滑動可能な速度とされる。また、側壁用磁石の移動は、例えば、側壁への側壁用磁石の接触圧を検知することにより、停止させることができる。信号の受信および送信には、これまで知られたいかなる通信手段でも用いることができる。
【0035】
本発明のスロッシング抑制方法を、図2を参照して説明する。地震発生時、タンクが揺動する。タンクの揺動に伴い、液面が変位し始める。浮屋根22上の縁部に取り付けられ、容器内の側壁20に吸着する側壁用磁石21、26を、側壁20に接触または側壁20から離間させる着脱手段により、側壁用磁石21、26を側壁20に接触させる。これにより、浮屋根22が側壁20に固定され、浮屋根22によって液面が押さえつけられた状態となり、液面の変位が抑制される。
【0036】
また、本発明の方法では、地震計からの地震発生信号の受信に応答して、着脱手段に、側壁用磁石21、26を側壁20に接触させる指示信号を供給することができる。この指示信号は、指示信号供給手段により供給することができ、着脱手段は、制御手段によって指示信号供給手段からその指示信号を受け取り、側壁用磁石21、26を側壁20に向けて移動させる。また、着脱手段は、制御手段によって側壁用磁石21、26が側壁20に接触する際の接触圧を検知し、側壁用磁石21、26の移動を停止させる。接触圧に所定の閾値を設け、その閾値を超える圧力を検知した場合に、停止させることができる。
【0037】
図面を参照して詳細に説明してきたが、タンク内の液体は、石油等の液体燃料に限らず、飲料水や、化学プラントにおいて生成された反応生成物等とすることができる。上記指示信号供給手段と、制御手段とを用いることにより、遠隔操作で、吸着部材を側壁に接触させ、また、側壁から離間させることができる。貯留する液体には、そのガスを多量に吸引すると人体に影響を及ぼすものもあり、このように遠隔操作を可能にすることで危険を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】浮屋根式タンクを例示した図。
【図2】スロッシング抑制装置の第1実施形態を示した図。
【図3】スロッシング抑制装置の第2実施形態を示した図。
【符号の説明】
【0039】
11…底板
12…側板
13…浮屋根
14…スロッシング抑制装置
15…取り出し口
20…側壁
21…側壁用磁石
22…浮屋根
23…固定金具
24…浮屋根用磁石
25…接続部材
26…側壁用磁石
27…支持部材
28…スペース
30…側壁用磁石
31…接続部
32…拡張部
33…連結部
34…接続部材
35…浮屋根
36…開口
37…嵌合溝
38…レール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器においてスロッシングの発生を抑制するための装置であって、
前記容器内の側壁に吸着する吸着部材と、
前記浮屋根上の縁部に取り付けられ、前記吸着部材を接続するとともに該吸着部材を前記側壁に接触または前記側壁から離間させる着脱手段とを含む、スロッシング抑制装置。
【請求項2】
前記吸着部材は、側壁用磁石であり、前記着脱手段は、前記浮屋根上の縁部に取り付けられる固定金具と、前記固定金具に吸着する浮屋根用磁石と、前記側壁用磁石と前記浮屋根用磁石とを接続する接続部材とを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記吸着部材は、電磁石であり、前記着脱手段によって前記側壁に接触する場合に電流を供給し、前記側壁から離間させる場合に電流の供給を停止する、請求項1または2に記載の装置。
【請求項4】
前記着脱手段は、
前記吸着部材を接続する接続部と、拡張部と、前記接続部と前記拡張部とを連結する連結部とを備える接続部材と、
前記浮屋根上の縁部に取り付けられ、前記連結部が挿通可能で、前記浮屋根の中央から前記側壁に向けて延びる開口と、前記拡張部と嵌合し、前記浮屋根の中央から前記側壁に向けて延びる嵌合溝とを備えるレール部材とから構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記装置は、2つ以上の前記吸着部材および前記着脱手段を含み、前記吸着部材および前記着脱手段が等間隔に配置される、請求項1〜4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記装置は、さらに、地震計からの地震発生信号の受信に応答して、前記着脱手段に、前記吸着部材を前記側壁に接触させる指示信号を供給する指示信号供給手段を含み、前記着脱手段は、前記指示信号を受信し、前記吸着部材を前記側壁に向けて移動させ、前記側壁への接触に応答して、前記吸着部材の移動を停止させる制御手段を含む、請求項1〜5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
液体を収容し、液面に浮くとともに該液面を覆う浮屋根を備える容器においてスロッシングの発生を抑制する方法であって、
地震発生時に、前記浮屋根上の縁部に取り付けられ、前記容器内の側壁に吸着する吸着部材を該側壁に接触または該側壁から離間させる着脱手段により、前記吸着部材を前記側壁に接触させるステップを含む、スロッシング抑制方法。
【請求項8】
地震計からの地震発生信号の受信に応答して、着脱手段に、吸着部材を側壁に接触させる指示信号を供給するステップをさらに含み、前記接触させるステップは、前記着脱手段により前記指示信号を受信するステップと、前記着脱手段により前記吸着部材を前記側壁に向けて移動させるステップと、前記側壁への接触を検知して、前記吸着部材の移動を停止させるステップとを含む、請求項7に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−161325(P2007−161325A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362584(P2005−362584)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000195971)西松建設株式会社 (329)
【Fターム(参考)】