説明

スローアウェイ工具用収納ケース

【課題】 スローアウェイチップの輸送時や取扱い時の刃部の欠損、収納ケースの損傷および雑音の発生等を防止する。
【解決手段】 スローアウェイ工具2が収納される収納部3を有するスローアウェイ工具用収納ケース1であって、硬質プラスチックからなるケース基体4の中に、プラスチックからなりスローアウェイ工具2の下面に載置される下敷き6と、発泡プラスチックまたは発泡ゴムからなりスローアウェイ工具2の収納部3が型抜きされてスローアウェイ工具2の外周面を覆うように載置される枠部7と、が接着にて一体化された緩衝材8を収納したスローアウェイ工具用収納ケース1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイ工具を収納するスローアウェイ工具用収納ケースに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スローアウェイ工具(以下、工具と称する。)を工具ホルダに取り付けて切削加工するスローアウェイ式工具が汎用されている。かかるスローアウェイ式工具においては、工具の切刃が寿命に達した時点で新しい工具に交換されるため、一般的に工具は複数個単位で販売されている。
【0003】
従来この種の収納ケースとしては、例えば、特許文献1、2のように格子状の中枠で仕切られた10個の矩形状の収納部を有する箱型のプラスチック収納ケースが一般的であり(図5参照)、この矩形状の収納部に工具が1個ずつ収納されていた。
【特許文献1】登録実用新案第3005108号公報
【特許文献2】特開平9−132240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のようなプラスチックケースの矩形状の収納部にチップを収納する方法では、チップを収納したケースを取り扱う際や運搬の際にチップが収納部内で動き回り、収納ケースの中枠や外壁に衝突していた。このために、チップの切刃にチッピングや欠損が生じたり、切刃にプラスチック等の異物が付着する恐れがあった。また、場合によっては、チップの切刃がプラスチックからなる収納ケースの壁面を傷つけてプラスチック壁面にめり込んでしまい工具がケースから取れにくくなることもあった。さらに、チップがプラスチックケースに衝突することによって雑音が発生するという不具合もあった。
【0005】
本発明は上記課題を解消するものであり、その目的は、スローアウェイ工具の切刃を確実に保護できるとともに、雑音の生じないスローアウェイ工具用収納ケースを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、以下の構成からなるスローアウェイ工具用収納ケースとすることにより、上記課題を解消できることを発明した。
【0007】
すなわち、本発明のスローアウェイ工具用収納ケースは、スローアウェイ工具が収納されるスローアウェイ工具用収納ケースであって、硬質プラスチックからなるケース基体の中に、プラスチックからなり前記スローアウェイ工具の下面側に位置する下敷きと、発泡プラスチックまたは発泡ゴムからなり前記スローアウェイ工具の収納部が型抜きされて前記スローアウェイ工具の外周面を覆うように載置される枠部と、が接着一体化された緩衝材が収納されていることを特徴とするものである。
【0008】
ここで、前記枠部の厚みが前記収納されるスローアウェイ工具の厚み以下であることが、収納ケースからスローアウェイ工具を取り出す際に容易に取り出せる点で望ましい。
【0009】
また、前記ケース基体がケース本体と蓋とからなるとともに、前記ケース本体に収納された緩衝材の上面と前記ケース基体の蓋との隙間が、前記スローアウェイ工具の厚みよりも狭いことが、収納ケースを裏返した場合でも工具が収納部内に確実に保持される点で望ましい。
【0010】
さらに、スローアウェイ工具の取り出しの容易さの点で、前記スローアウェイ工具の収納部において、前記スローアウェイ工具を収納した際に隙間が存在することが望ましく、この隙間に指や爪を入れることによって容易に取出しが可能となる。
【0011】
さらには、前記ケース基体が、スライド式の蓋を有する箱体からなるとともに、該箱体の底面に前記スローアウェイ工具用収納ケース同士を積層する時に係止めとなる突起を備えているタイプに対しても好適に適応可能である。
【発明の効果】
【0012】
上記本発明のスローアウェイ工具用収納ケースによれば、工具の切刃が発泡ゴムまたは発泡プラスチックからなる緩衝材にて囲まれるように載置されることから、工具とプラスチックケース基体との衝突による切刃の欠損や異物の付着、雑音の発生を防止することができる。また、緩衝材をなす前記下敷きと枠部が接着にて一体化されていることから、さらに確実に工具を保持することができ、かつ枠部が必要以上に変形することを防止して枠部が破損する等の不具合を解消できる。したがって、ケース基体のサイズが従来のサイズと同じものを用いた際に枠部の工具間を隔てる隔壁部分の幅が細くなり、隔壁部分の保形性が悪くなるという問題に対しても、下敷きの厚みを制御しつつ隔壁部分の保形性を高めて従来と同じサイズのケース基体を用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明のスローアウェイ工具用収納ケースについて、その好適例である図1乃至4に基づいて説明する。図1はスローアウェイ工具用収納ケース(以下、単に収納ケースと略す。)の一例を示す概略平面図、図2は図1の収納ケースにスローアウェイ工具を収納した状態を示す概略平面図、図3は図2のA−A断面図、図4は本発明のスローアウェイ工具用収納ケースの他の実施態様を示す概略断面図である。
【0014】
図1のスローアウェイ工具用収納ケース(以下、単に収納ケースと略す。)1は、スローアウェイ工具(以下、単に工具と略す。)2が収納される収納部3を有し、硬質プラスチックからなるケース基体4の中に、プラスチックからなり工具2の下面に載置される下敷き6と、発泡プラスチックまたは発泡ゴムからなり工具2の収納部3が型抜きされて(型抜き部5が形成され)工具2の外周面を覆うように載置される枠部7と、が接着一体化された緩衝材8が収納されている。
【0015】
この構成によって、図2の収納ケース1に工具2を装着した状態に示すように、工具3とケース基体4との衝突による切刃の欠損や異物の付着、雑音の発生を防止することができる。また、緩衝材8をなす下敷き6と枠部7が接着にて一体化されていることから、さらに確実に工具を保持することができ、かつ枠部7のうち工具3,3間を隔てる隔壁部分7aが必要以上に変形することを防止して枠部の隔壁部分7aが破損する等の不具合を解消できる。したがって、ケース基体4のサイズが従来のサイズと同じものを用いた際に枠部の工具間を隔てる隔壁部分の幅が細くなり、隔壁部分の保形性が悪くなるという問題に対しても、隔壁部分7aの保形性を高めて従来と同じサイズのケース基体を用いることができる。
【0016】
ここで、枠部7の厚みtが工具2の厚みt以下であることが、収納ケース1から工具2を取り出す際に容易に取り出せる点で望ましい。
【0017】
この時、収納される工具2の厚み(外周面厚み)が薄い場合には下敷き6の厚みを厚くして枠部7の厚みを薄くする。逆に、収納される工具2の厚み(外周面厚み)が厚い場合には下敷き6の厚みを薄くして枠部7の厚みを厚くする。このような組み合わせによって、ケース基体は同じ形状のものを使用することができ、効率的であるとともにケース基体4を作製するための金型代が節約できて経済的である。
【0018】
また、ケース基体4がケース本体10と蓋11とからなるとともに、ケース本体10に収納された緩衝材8の上面8aとケース基体4の蓋11との隙間tが、収納される工具2の厚みtよりも狭いことが、収納ケース1をひっくり返した場合でも工具2が収納部3内に確実に保持される点で望ましい。
【0019】
ここで、下敷き6の材質はケース基体4のような硬質プラスチックであってもよく、または緩衝材8の枠部7のような発泡プラスチックまたは発泡ゴムであってもよい。例えば、下敷き6の厚みを薄くする必要がある場合には保形性を重視して強度の高い硬質プラスチック、中でも加工性に優れたフィルム状の硬質プラスチックにて形成する。逆に、下敷き6の厚みを厚くする必要がある場合には加工性を重視して強度の低い発泡プラスチックまたは発泡ゴムにて形成する。
【0020】
なお、硬質プラスチックとしては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が収納ケースの強度、軽さ、保形性、コスト、リサイクル性に優れている点を考慮しても好適に使用可能である。また、発泡プラスチックまたは発泡ゴムとしては、ウレタンフォーム、発泡ポリスチレン、発泡スチロール等が衝撃吸収力、軽さ、保形性、コストの点で好適に使用可能である。
【0021】
さらに、工具2の取り出しの容易さの点で、工具2の収納部3において、工具2を収納した際に隙間9が存在することが望ましく、この隙間に指や爪を入れることによって容易に取出しが可能となる。
【0022】
さらには、ケース基体4が、スライド式の蓋11sを有する箱体からなるとともに、該箱体の底面に収納ケース1同士を積層する時に係止めとなる突起12を備えているタイプに対しても好適に適応可能である。
【0023】
なお、図1によれば、ケース基体4はケース本体10と蓋11とからなっており、ケース本体10の内部には長手方向に1本だけ中枠13が設けられている。この中枠13はケース本体10の補強材としても作用する。また、本発明によれば、中枠13は従来の収納ケースのように各工具の収納部を仕切るように格子状に設けられていてもよいが、緩衝材8をはめ込む手間を省くためにはできるだけ隣接する工具間に中枠13を設けない部分が存在する、すなわち1つの枠部7に複数の型抜き部5を形成して複数個の工具2を収納できることが望ましい。
【0024】
また、工具2が中央にねじ孔15を有する形状である場合、図4に示すようにケース本体10または下敷き6と一体化されたピン16を設けて工具2のねじ孔15にピン16が貫通するように収納することも可能である。この方法によれば工具2がより動きにくくなり工具2の切刃の保護効果と雑音防止効果がさらに高まる。しかしながら、工具2を収納ケース1から取り出す際の作業性の観点からは、ピン16を設けない方が、工具2の外周面と変形可能な緩衝材8の内壁面との間隔をより広く確保できるため工具2が容易に取り出せるので望ましい。また工具2を収納ケース1に収納する際の作業性の観点からも、ピン16を設けない方が、ピン16を気にせず容易に収納できるので望ましい。
【0025】
上記構成のチップ収納ケースは、図2に示すようにケース本体10内に緩衝材8を挿入し、次に緩衝材8の各収納部3に工具2を1つずつ載置する。そして、蓋11をスライドさせながら装着することにより収納部3を封じる(図示せず)。さらに、所望により、ケース本体10と蓋11との双方にかかるようにラベルを貼ることによって完成する。
【0026】
なお、図1、2では工具2として主面が多角形状をなす板状の、いわゆるスローアウェイチップについて例示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ドリルやエンドミル、ボーリングバー等の棒状部を有する工具や、略直方体形状の溝入れ工具等に対しても好適に適応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施例を示すスローアウェイ工具用収納ケースの概略平面図である。
【図2】図1のスローアウェイ工具用収納ケースにスローアウェイ工具を収納した状態を示す概略平面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】本発明のスローアウェイ工具用収納ケースの他の実施態様を示す概略断面図である。
【図5】従来のスローアウェイ工具用収納ケースにスローアウェイ工具を収納した状態を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0028】
1 スローアウェイ工具用収納ケース(収納ケース)
2 スローアウェイ工具(工具)
3 収納部
4 ケース基体
6 下敷き
7 枠部
7a 隔壁部分
8 緩衝材
9 隙間
10 ケース本体
11 蓋
11s スライド式の蓋
12 突起
13 中枠
15 ねじ孔
16 ピン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スローアウェイ工具が収納されるスローアウェイ工具用収納ケースであって、硬質プラスチックからなるケース基体の中に、プラスチックからなり前記スローアウェイ工具の下面側に位置する下敷きと、発泡プラスチックまたは発泡ゴムからなり前記スローアウェイ工具の収納部が型抜きされて前記スローアウェイ工具の外周面を覆うように載置される枠部と、が接着にて一体化された緩衝材が収納されているスローアウェイ工具用収納ケース。
【請求項2】
前記枠部の厚みが前記収納されるスローアウェイ工具の厚み以下である請求項1記載のスローアウェイ工具用収納ケース。
【請求項3】
前記ケース基体がケース本体と蓋とからなるとともに、前記ケース本体に収納された緩衝材の上面と前記ケース基体の蓋との隙間が、前記スローアウェイ工具の厚みよりも狭い請求項1または2記載のスローアウェイ工具用収納ケース。
【請求項4】
前記スローアウェイ工具の収納部において、前記スローアウェイ工具を収納した際に該スローアウェイ工具の外周面と前記枠部の型抜きされた内壁面との間に隙間が存在する請求項1乃至3のいずれか記載のスローアウェイ工具用収納ケース。
【請求項5】
前記ケース基体が、ケース本体とスライド式の蓋とを組み合わせた箱体からなるとともに、該箱体の底面に前記スローアウェイ工具用収納ケース同士を積層する時に係止めとなる突起を備えている請求項1乃至4のいずれか記載のスローアウェイ工具用収納ケース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−8225(P2006−8225A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190921(P2004−190921)
【出願日】平成16年6月29日(2004.6.29)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】