説明

スローアウェイ式切削工具

【課題】傾斜又は湾曲した刃先稜線をもつスローアウェイチップを工具本体に安定的にかつ強固に固定し切れ刃寿命の低下を防止するスローアウェイ式切削工具を提供する。
【解決手段】本スローアウェイ式切削工具において、スローアウェイチップ1のチップ座20に当接する平坦な着座面5に対向する面をすくい面2とし、このすくい面2の周縁部に形成された切れ刃の刃先稜線の少なくとも一部を着座面5に対して傾斜又は湾曲した傾斜刃先稜線とし、この傾斜刃先稜線から着座面5へ延びる側面をチップ座の底面21から上方へ立ち上がる拘束壁面22、23に当接する際の被拘束面6、7とし、拘束壁面22、23の上端部の稜線22a、23aを前記傾斜刃先稜線と略平行な方向に延びるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スローアウェイチップを着脱可能に装着するスローアウェイ式切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、スローアウェイ式切削工具において、スローアウェイチップを工具本体に設けた切欠き段部からなるチップ座に固定する際、スローアウェイチップの着座面および側面を前記チップ座の底面およびこの底面から上方へ立ち上がる壁面にそれぞれ当接して固定する方法が採られる。ところで、この種のスローアウェイ式切削工具に用いられるスローアウェイチップにおいて、切削性能を高めることを主な目的として、スローアウェイチップの着座面に対向する面に形成されたすくい面の周縁部に形成された切れ刃の刃先稜線を、前記着座面からの距離(高さ)が変化するように、前記着座面に対して傾斜又は湾曲させたものがある。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−269810号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のスローアウェイ式切削工具において、チップ座の壁面の立ち上がり方向における上端部の稜線は、前記チップ座の底面とほぼ平行に延設されるとともに、スローアウェイチップの傾斜又は湾曲した刃先稜線の最低位よりさらに低位に形成される。したがって、前記チップ座の壁面は、スローアウェイチップの側面を、刃先稜線の最高位に対してきわめて低位の位置で支持することになるため、スローアウェイチップを固定するクランプ力や切削時の切削抵抗を受けたときには、安定的にかつ強固に支持拘束できないおそれがあった。さらに、チップ座の壁面の面積が十分に確保できないため、前記クランプ力や切削抵抗により弾性変形や塑性変形を生じてしまうおそれがあった。このような状況においては、切れ刃のチッピングや欠損が生じるため切れ刃寿命が大幅に低下するおそれがあった。
【0004】
本発明は、上記問題を解決するためになされたもので、傾斜又は湾曲した刃先稜線をもつスローアウェイチップを工具本体に安定的にかつ強固に固定し切れ刃寿命の低下を防止するスローアウェイ式切削工具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を有する。
請求項1に係る発明は、工具本体に設けられた切欠き段部からなるチップ座に略多角形板状をなすスローアウェイチップが固定手段により着脱可能に固定されてなるスローアウェイ式切削工具であって、前記スローアウェイチップの前記チップ座に当接する平坦な着座面に対向する面がすくい面とされ、このすくい面の周縁部に形成された切れ刃の刃先稜線の少なくとも一部が前記着座面に対して傾斜又は湾曲した傾斜刃先稜線とされ、前記傾斜刃先稜線から着座面へ延びる側面が前記チップ座の底面から上方へ立ち上がる拘束壁面に当接する際の被拘束面とされ、前記拘束壁面の前記傾斜刃先稜線側に位置する上端部の稜線が前記傾斜刃先稜線と略平行な方向に延びていることを特徴とするスローアウェイ式切削工具である。
【0006】
請求項1に係る発明によれば、チップ座の拘束壁面の立ち上がり方向における上端部の稜線がこの傾斜刃先稜線と略平行な方向に延びるように形成されていることから、前記拘束壁面は、スローアウェイチップの側面を傾斜刃先稜線に近接する位置で支持拘束するとともに、スローアウェイチップの側面に当接する領域の面積を十分に確保する。そのため、クランプ力や切削抵抗によるスローアウェイチップの動き、および拘束壁面の弾性変形および塑性変形を防止することができる。よって、スローアウェイチップをチップ座に安定的にかつ強固に固定することができて、切れ刃のチッピングや欠損が生じることなく長い切れ刃寿命が得られる。
【0007】
請求項2に係る発明は、前記傾斜刃先稜線全体がその一端部から他端部に向かうにしたがって前記着座面に漸次接近するように形成され、前記傾斜刃先稜線に連なる側面に形成された被拘束面に当接する、前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線が前記傾斜刃先稜線に略平行な方向に延びていることを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイ式切削工具である。
このように傾斜刃先稜線がその一端部から他端部にかけて着座面側のみに傾斜する構成とした場合には、傾斜刃先稜線の最高位と最低位の高低差が特に大きくなるため、前記傾斜刃先稜線の最低位より低位の位置で支持拘束する従来の切削工具では、チップ座に装着したスローアウェイチップが動き易くなるが、請求項2に係る発明によれば、前記傾斜刃先稜線の高低差に関係なく前記傾斜刃先稜線に近接した位置でもってスローアウェイチップの側面を支持拘束することができ、スローアウェイチップの側面に当接する領域の面積を十分に確保できるため、スローアウェイチップをチップ座に安定的にかつ強固に固定することができる。さらに、傾斜刃先稜線の最高位と最低位の高低差が特に大きくなることから、被削材に喰い付く際の切削抵抗の増加が緩和されるともに切りくずの排出性が向上するため切削性が向上するうえに、切れ刃の摩耗増大の緩和又は切れ刃のチッピングが抑制されるため切れ刃寿命の延長効果がさらに高まる。
【0008】
請求項3に係る発明は、前記スローアウェイチップのすくい面と着座面とを貫通する取付け穴が形成され、この取付け穴に挿通されたクランプねじをチップ座の底面に設けためねじ穴に締着することによって、前記スローアウェイチップが、その底面および被拘束面を前記チップ座の底面および拘束壁面にそれぞれ押圧されて、前記チップ座に固定されるようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載のスローアウェイ式切削工具である。
請求項3によれば、クランプねじを用いてスローアウェイチップをチップ座に固定するようにしたことから、部品点数が少なく構造が簡易であるにもかかわらず、スローアウェイチップをチップ座の底面および拘束壁面にそれぞれ押圧する力が十分に得られるため、スローアウェイチップおよび工具本体における設計の自由度が高められる。また、クランプねじによってスローアウェイチップの取付け穴の内壁面を押圧する態様とした場合、スローアウェイチップは、チップ座の拘束壁面にきわめて強く押圧されるが、請求項1又は2に記載の構成を有することによりチップ座の拘束壁面に押圧される力によってチップ座の底面から浮き上がる動きが抑制されて安定的にかつ強固に固定される。
【0009】
請求項4に係る発明は、前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最高位が、前記クランプねじと前記スローアウェイチップの取付け穴の内壁面とが当接する位置より高位にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスローアウェイ式切削工具である。
請求項4に係る発明によれば、チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最高位が、クランプねじとスローアウェイチップの取付け穴の内壁面とが当接する位置より高位にあるので、このスローアウェイチップは、チップ座の底面から浮き上がることが防止されて安定的にかつ強固に固定される。
【0010】
請求項5に係る発明は、前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最低位が、前記クランプねじと前記スローアウェイチップの取付け穴の内壁面とが当接する位置より高位にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスローアウェイ式切削工具である。
請求項5に係る発明によれば、チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最低位が、取付け穴の内壁面がクランプねじによって押圧される位置よりさらに高位にあるので、このスローアウェイチップがチップ座の底面から浮き上がることを防止する効果がきわめて高くなる。したがって、クランプねじによって生じる、スローアウェイチップをチップ座に押圧する力を高めて、高送り切削又は重切削を行う際において、スローアウェイチップをチップ座に安定的にかつ強固に固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスローアウェイ式切削工具によれば、チップ座の拘束壁面の立ち上がり方向における上端部の稜線がこの傾斜刃先稜線と略平行な方向に延びるように形成されていることから、前記拘束壁面は、スローアウェイチップの側面を傾斜刃先稜線に近接する位置で支持拘束するとともに、スローアウェイチップの側面に当接する領域の面積を十分に確保する。そのため、クランプ力や切削抵抗によるスローアウェイチップの動き、および拘束壁面の弾性変形および塑性変形を防止することができる。よって、スローアウェイチップをチップ座に安定的にかつ強固に固定することができて、切れ刃のチッピングや欠損が生じることなく長い切れ刃寿命が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明を適用したスローアウェイ式切削工具の一実施形態であるスローアウェイ式エンドミルについて図面を参照しながら説明する。図1は、本スローアウェイ式エンドミルの分解斜視図である。図2は、図1に示すスローアウェイ式エンドミルの平面図である。図3は、図1に示すスローアウェイ式エンドミルの先端視側面図である。図4は、図1に示すスローアウェイ式エンドミルのチップ座拡大斜視図である。図5は、図2におけるA−A線断面図である。図6〜図8はそれぞれ、図1に示すスローアウェイ式エンドミルに装着するスローアウェイチップの正面図、左側面図および平面図である。
【0013】
図1〜図3に図示するように本スローアウェイ式エンドミルは、丸棒状をなす工具本体10の先端外周部にスローアウェイチップ1がクランプねじ30により着脱可能に装着されてなる。詳細には、工具本体10の先端部外周面には、先端面10bおよび外周面10aに開口する切りくず排出溝11が円周方向に略等間隔に3箇所形成され、各切りくず排出溝11の工具本体の回転方向Kを向く壁面の先端部には、図4に図示するように切欠き段部からなるチップ座20が形成され、各チップ座の底面21にはスローアウェイチップ1の固定手段であるクランプねじ30をねじ込むためのめねじ穴25が形成されている。
【0014】
本スローアウェイ式エンドミルに装着されるスローアウェイチップ1は、図6〜図8に図示するように略多角形板状をなし、平坦な略多角形面で構成される下面が着座面5とされ、この着座面5に対向する面がすくい面2とされ、すくい面2となる略多角形面の周縁部には切れ刃が形成され、切れ刃から着座面5へ延びる側面が逃げ面3とされてなる。そして、本スローアウェイチップ1は、すくい面2となる略多角形面がその中心を基準として180°回転対称形状を呈する、2コーナ使用可能なスローアウェイチップとされている。
【0015】
すくい面2となる略多角形面の対角にある一対のコーナには、平面視で円弧状をなす丸コーナ4aが形成され、この丸コーナ4aの一端から延びる長辺には外周刃4bが形成され、前記丸コーナ4aの他端から延びる短辺には加工面を仕上げる副切れ刃4cを介在させて内周刃4dがそれぞれ形成されている。図6および図7に図示するように丸コーナ4aの刃先稜線は、その稜線に沿う方向で、該刃先稜線の途中に着座面5から最も離間した最高点を有し、この最高点から丸コーナ4aの両端部に向かうにつれ着座面5に漸次接近して、すくい面2上方に向かって凸曲線状をなす傾斜刃先稜線となっている。外周刃4bの刃先稜線は、その稜線に沿う方向で丸コーナ4aに接する一端部から他端部に向かうにつれ着座面5に漸次接近する傾斜刃先稜線となっている。また、内周刃4dの刃先稜線(副切れ刃4cの刃先稜線を含めて)も、丸コーナ4aから離れるにしたがって着座面5に漸次接近する傾斜刃先稜線となっている。
【0016】
丸コーナ4aの刃先稜線から着座面5へ延びる側面は、該丸コーナ4aの刃先稜線に対応して外側へ突出する円錐面又は円筒面で構成された逃げ面3aとされている。一方、直線状をなす外周刃4bおよび内周刃4dの刃先稜線から着座面5へ延びる側面は、平坦面で構成された逃げ面3b、3dとなっている。これら丸コーナ4a、外周刃4bおよび内周刃4dにおける各逃げ面3a、3b、3dは、それぞれの刃先稜線から着座面5に近づくにつれ内方へ引っ込んだポジ逃げ面となっている。さらに、すくい面2の中央には、該スローアウェイチップを固定する固定手段となるクランプねじ30を挿通する取付け穴8が着座面5に貫通して形成されている。このスローアウェイチップ1は、超硬合金、被覆超硬合金、サーメット又はセラミックス等の硬質材料から構成されている。
【0017】
スローアウェイチップ1は、その着座面5をチップ座の底面21に着座するとともにすくい面2を回転方向Kに向けて載置されたとき、チップ座20の壁面に面する外周刃4bおよび内周刃4dに連なる各逃げ面3b、3d(側面)が被拘束面6、7としてチップ座の各拘束壁面22、23に当接し、取付け穴8に挿通したクランプねじ30をチップ座の底面21に設けためねじ穴25に締着することにより、チップ座20に着脱可能に固定されている。チップ座の各拘束壁面22、23は、スローアウェイチップ1の被拘束面6、7に面接触可能に平坦面で構成されるか、もしくは、前記拘束壁面の上端部の稜線22a、23aが前記被拘束面6、7に線接触可能に、前記被拘束面6、7より立ち上がり傾斜角度が若干急な平坦面で構成されている。なお、図4に図示するように丸コーナ4aに連なる逃げ面3aに対面するチップ座の壁面は、前記逃げ面3aとの間に隙間が生じるように、若干奥に引っ込んだぬすみ部24が形成されている。
【0018】
さらに、図5に図示するようにめねじ穴25の軸心がスローアウェイチップの取付け穴8の軸心よりチップ座の拘束壁面22、23側にわずかに(図5における心ずらし量B:0.05〜0.50mm程度)ずらされているので、前記めねじ穴25にねじ込まれたクランプねじ30の頭部31の逆円錐台形状をなす座面31aが、チップ座の拘束壁面22および拘束面23の両方に近づく方向(図2におけるA−A線方向でチップ座の壁面側)に位置するスローアウェイチップの取付け穴の内壁面8aを強く押圧し、スローアウェイチップ1をチップ座の底面21および両拘束壁面22、23に強く押圧してチップ座20に固定する。さらに、皿ねじによってスローアウェイチップ1のすくい面2側から着座面6側に向かって推進する押さえ金40が固定手段として付設され、この押え金40によってスローアウェイチップ1のすくい面2が着座面5側に向かって押圧されてもよい。この押え金40を追加した場合には、スローアウェイチップ1はチップ座20にさらに強固に固定される。
【0019】
チップ座の拘束壁面22、23とスローアウェイチップの被拘束面6、7との関係において、図4に図示するようにチップ座の上端部の稜線22a、23aは、該拘束壁面22、23が当接する被拘束面6、7の上端における傾斜刃先稜線に沿って略平行に形成されている。このような特徴的な構成を採用することによって、前記拘束壁面22、23の面積が十分に確保されて剛性が高められるとともに、該拘束壁面22、23が受ける単位面積当たりの力が小さくなりスローアウェイチップ1を固定するときの力や切削時の切削抵抗によって生じる弾性変形および塑性変形が抑制される。さらに、チップ座の拘束壁面22、23がスローアウェイチップの傾斜刃先稜線に近接した位置で支持拘束するので、スローアウェイチップを固定するクランプ力や切削時の切削抵抗を受けたときでも、安定的にかつ強固に支持拘束することができる。そのため、切れ刃のチッピングや欠損が防止されてより長い切れ刃寿命が得られる。
【0020】
図6に図示するように本スローアウェイチップ1の外周刃4bにおける傾斜刃先稜線全体が丸コーナ4aに接続する一端部から他端部に向かうにしたがって前記着座面5側のみに漸次接近するように形成され、前記傾斜刃先稜線から着座面5へ延びる側面を被拘束面6とする一方で、この被拘束面6と当接するチップ座の拘束壁面の上端部の稜線22aが前記傾斜刃先稜線に沿って略平行に形成されていることが望ましい。
【0021】
このように傾斜刃先稜線を一端部から他端部にかけて着座面側のみに傾斜させ、傾斜刃先稜線の最高位と最低位との高低差を特に大きくした構成とした場合には、該傾斜刃先稜線が被削材に喰い付く際の切削抵抗の増加を緩やかにしたり切りくずを一定方向に向けて排出したりするため切削性が大幅に向上する。しかも、チップ座の拘束壁面の上端部の稜線22aが前記傾斜刃先稜線に沿って略平行に形成されることによって、前記拘束壁面22の面積を十分に確保し剛性を高める作用および弾性変形を抑制する作用がさらに有効となるとともに、チップ座の拘束壁面22が該スローアウェイチップの傾斜刃先稜線に近接した位置で支持拘束するので、スローアウェイチップを固定するクランプ力や切削時の切削抵抗を受けたときにも安定的にかつ強固に支持拘束する効果が顕著となる。
【0022】
本スローアウェイチップ1のように、取付け穴8に挿通されたクランプねじ30をチップ座の底面21に設けためねじ穴25に締着することによって、該スローアウェイチップ1が、その着座面5および被拘束面6、7を前記チップ座の底面21および拘束壁面22、23にそれぞれ押圧されてチップ座20に固定される態様を採用した場合、押え金や楔部材を採用する場合にくらべ部品点数が少なく構造が簡易であるにもかかわらず、スローアウェイチップ1をチップ座の底面21および拘束壁面22、23にそれぞれ押圧する力が十分に得られるので、スローアウェイチップ1および工具本体10における設計の自由度が高められるとともにスローアウェイチップ1をチップ座20に強固に固定することが可能となる。
【0023】
従来の切削工具においては、チップ座の拘束壁面の上端部の稜線22a、23aがスローアウェイチップの傾斜刃先稜線の最低位となる位置より低位かつ該チップ座の底面に平行に延びるように形成される。そのため、クランプねじの頭部の座面31aがスローアウェイチップの取付け穴の内壁面8aを押圧する固定手段を採用した場合、前記稜線22a、23aが前記押圧する位置より低位となってしまうので、スローアウェイチップは、チップ座の底面21から浮き上がるような挙動を示す。これに対して、本実施形態では、前記稜線22a、23aの最高位が前記押圧する位置Cより高位となるので、スローアウェイチップ1は、チップ座の底面21から浮き上がる挙動を示さず、安定的にかつ強固にチップ座20に固定される。
【0024】
本実施形態において、チップ座の拘束壁面の上端部の稜線22a、23aの最低位が、クランプねじの頭部の座面31aがスローアウェイチップの取付け穴の内壁面8aを押圧する位置Cより高位に設けられた場合には、該スローアウェイチップ1がチップ座の底面21から浮き上がる挙動を防止する効果がきわめて高くなるので好ましい。特に高送り切削又は重切削といった高能率切削に用いられる切削工具にチップ1を固定する場合において、スローアウェイチップ1がチップ座の底面21から浮き上がることなく安定して固定されるので、きわめて優れた切れ刃寿命が得られる。
【0025】
切削工具に装着されるスローアウェイチップは、外周刃4bおよび副切れ刃4cがその一端から他端にいくにしたがって一方向(着座面側のみに向かって)に傾斜する傾斜刃先稜線で構成されたものに限定されず、傾斜方向が変化する屈曲部又は変曲部を有する傾斜刃先稜線で構成されるものであってもよい。図9は、外周刃4bが屈曲部を有する傾斜刃先稜線で構成されたスローアウェイチップ1を装着する切削工具のチップ座20の模式図であり、チップ座20を拘束壁面22に対向する方向からみた部分拡大図である。拘束壁面の上端部の稜線22aは、2点鎖線で示したスローアウェイチップ1の傾斜刃先稜線に沿って忠実に平行に形成されるのが望ましいが、加工上困難な場合がある。そのような場合、図9の(a)および(b)に例示したように前記稜線22aは、前記傾斜刃先稜線に忠実な平行線の近似曲線で形成されてもよい。また、図9の(c)の2点鎖線で示したように外周刃4bの傾斜刃先稜線の両端の高低差が非常に大きく、かつ該傾斜刃先稜線が複数の屈曲部を有する波形状をなす場合、同図に例示したようにチップ座の拘束壁面の上端部の稜線22aは、該傾斜刃先稜線の両端部を結ぶ直線に平行な直線状に形成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明を適用したスローアウェイ式エンドミルの分解斜視図である。
【図2】図1に示すスローアウェイ式エンドミルの平面図である。
【図3】図1に示すスローアウェイ式エンドミルの先端視側面図である。
【図4】図1に示すスローアウェイ式エンドミルのチップ座拡大斜視図である。
【図5】図2におけるA−A線断面図である。
【図6】図1に示すスローアウェイ式エンドミルに装着するスローアウェイチップの正面図である。
【図7】図1に示すスローアウェイ式エンドミルに装着するスローアウェイチップの左側面図である。
【図8】図1に示すスローアウェイ式エンドミルに装着するスローアウェイチップの平面図である。
【図9】外周刃が屈曲部を有する傾斜刃先稜線で構成されたスローアウェイチップが装着される切削工具のチップ座の模式図である。
【符号の説明】
【0027】
1 スローアウェイチップ
2 すくい面
3 逃げ面
4a 丸コーナ
4b 外周刃
4d 内周刃
5 着座面
6、7 被拘束面
8 取付け穴
8a 取付け穴の内壁面
10 工具本体
20 チップ座
21 チップ座の底面
22、23 チップ座の拘束壁面
22a、23a 拘束壁面の上端部の稜線
30 クランプねじ
31 クランプねじの頭部
31a クランプねじの頭部の座面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
工具本体に設けられた切欠き段部からなるチップ座に略多角形板状をなすスローアウェイチップが固定手段により着脱可能に固定されてなるスローアウェイ式切削工具であって、
前記スローアウェイチップの前記チップ座に当接する平坦な着座面に対向する面がすくい面とされ、
このすくい面の周縁部に形成された切れ刃の刃先稜線の少なくとも一部が前記着座面に対して傾斜又は湾曲した傾斜刃先稜線とされ、
前記傾斜刃先稜線から着座面へ延びる側面が前記チップ座の底面から上方へ立ち上がる拘束壁面に当接する際の被拘束面とされ、
前記拘束壁面の前記傾斜刃先稜線側に位置する上端部の稜線が前記傾斜刃先稜線と略平行な方向に延びている
ことを特徴とするスローアウェイ式切削工具。
【請求項2】
前記傾斜刃先稜線全体がその一端部から他端部に向かうにしたがって前記着座面に漸次接近するように形成され、
前記傾斜刃先稜線に連なる側面に形成された被拘束面に当接する、前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線が前記傾斜刃先稜線に略平行な方向に延びている
ことを特徴とする請求項1に記載のスローアウェイ式切削工具。
【請求項3】
前記スローアウェイチップのすくい面と着座面とを貫通する取付け穴が形成され、
この取付け穴に挿通されたクランプねじをチップ座の底面に設けためねじ穴に締着することによって、前記スローアウェイチップがその底面および被拘束面を前記チップ座の底面および拘束壁面にそれぞれ押圧されて、前記チップ座に固定されるようにした
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のスローアウェイ式切削工具。
【請求項4】
前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最高位が、前記クランプねじと前記スローアウェイチップの取付け穴の内壁面とが当接する位置より高位にある
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスローアウェイ式切削工具。
【請求項5】
前記チップ座の拘束壁面の上端部の稜線の最低位が、前記クランプねじと前記スローアウェイチップの取付け穴の内壁面とが当接する位置より高位にある
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のスローアウェイ式切削工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−95918(P2009−95918A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−268578(P2007−268578)
【出願日】平成19年10月16日(2007.10.16)
【出願人】(000221144)株式会社タンガロイ (185)
【出願人】(000103367)オーエスジー株式会社 (180)
【Fターム(参考)】