説明

スーパーターンスタイルアンテナとその施工方法

【課題】 バットウィング素子12を吊り上げ装置で吊り上げなくても、鉄塔1内部からその高所に運搬できるようにする。
【解決手段】 本発明は、中央支柱6の周囲に周方向で所定間隔おきに配置される複数のバットウィング素子12を備えたスーパーターンスタイルアンテナ9に関する。このアンテナ9は、1つのバットウィング素子12を複数部分に分割してなる複数の分割ピースPnと、複数の分割ピースPnを互いに着脱自在に連結して1つのバットウィング素子12に組み立てるための複数の連結部材Jとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スーパーターンスタイルアンテナとその施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
VHF帯(周波数:30〜300MHz、波長:1〜10m)を利用したテレビジョン放送の開始とともに、その広帯域性を確保するため、スーパーターンスタイルアンテナ(Super Turn style Antenna:以下、「STA」或いは「アンテナ」と略記することがある。)がわが国を含む各国で使用されている。
このSTAは、例えば図18に示すように、バットウィング(コウモリの羽)と呼ばれる4つのアンテナ素子(以下、「バットウィング素子」ということがある。)101を有する。
【0003】
上記STAは、バットウィング素子101を平面視で十字状となるように、中央支柱102の周囲に周方向で90度間隔おきに配置して構成され、その各素子102の中央部に位置する給電ポイント103から90度の位相差で給電することにより、水平面においてほぼ無指向性が得られるようになっている(例えば、特許文献1〜3参照)。
バットウィング素子101は、通常、中央支柱102側で鉛直方向に延びる縦材104と、この縦材104から径外側に延びる長さの異なる複数本の水平材105〜108と、この各水平材105〜108の先端同士を繋ぐ外枠材109とを有している。
【0004】
バットウィング素子101を構成する各線材104〜109は、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼或いはアルミ製の丸パイプよりなり、最も長い第1水平材105と外枠材109は、1本の直棒部材をほぼΣ状に屈曲形成することによって構成されている。また、Σ状の枠内に位置する第2〜第4水平材106〜108と縦材104は直棒部材により構成されている。
第1水平材105の基端部(中央支柱102側の端部)は、縦材104の上下端部にそれぞれ溶接されており、これによってΣ状のフレームが形成されている。
【0005】
また、上記Σ状のフレームの枠内に、第2〜第4水平材106〜108が上下方向にほぼ等間隔で配置され、これらの水平材106〜108の基端部と先端部(径外側の端部)は、それぞれ縦材104と外枠材109に溶接されており、これによってバットウィング素子101が構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭46−19150号公報
【特許文献2】特開2002−151946号公報
【特許文献3】特開2006−50080号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】"Antenna Handbook THEORY,APPLICATIONS,AND DESIGN" Edited by Y.T.Lo and S.W.Lee (pp27-33(Fig.25))
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、従来のスーパーターンスタイルアンテナでは、所定形状に屈曲された丸パイプと直棒状の丸パイプとを溶接で固定してバットウィング素子101を製作しているので、当該素子101を設置状態の寸法未満に分解することができず、STAのメンテナンスや交換作業を行う際に、非常に運搬し難いという欠点がある。
すなわち、STAは、通常、鉄塔の最上部に設けられた中央支柱102に取り付けられるが、その最上部の中央支柱102まで嵩張ったバットウィング素子101を運び上げるのが非常に困難であった。
【0009】
例えば、FM(TV1〜3ch)放送用の76〜108MHz帯のSTAでは、バットウィング素子101の水平方向寸法が700mm程度でかつ縦方向寸法が2000mm程度になるが、鉄塔内部の昇降空間は鉄塔の上部になるほど狭くなり、荷物を持った作業員1人が辛うじて昇降可能な程度の幅(例えば、約700mm)しか確保されていなかったり、或いは、足場板の通り抜け部などの局所的に幅が狭くなっている部分(例えば、約500mm)があったりすることがある。
従って、VHF帯で使用するバットウィング素子101を、作業員が中央支柱102まで運び上げるのが寸法上不可能な場合があり、また、仮に寸法上は可能であっても、バットウィング状に嵩張った素子101を、狭い昇降空間に通して運び上げるのが非常に困難であった。
【0010】
一方、クレーン等の吊り上げ装置を使用すれば、バットウィング素子101の寸法や重量に関係なく、高所の中央支柱102まで容易に運び上げることができる。
しかし、鉄塔の中途部には、パネルアンテナやパラボラアンテナ等の他の放送用アンテナが設置されているので、吊り上げ装置でバットウィング素子101を高所の中央支柱102まで吊り上げる場合には、既設のアンテナの前を横切る際に電波障害が生じ、放送サービスが阻害される恐れがある。
【0011】
また、金属製の丸パイプを溶接で固定して製作された従来のバットウィング素子101では、いったん製作したバットウィング形状を変更することができない。このため、STAの設置後に周波数帯域を変更したり調整したりする場合には、バットウィング素子101そのものを中央支柱102から取り外し、新しいものと交換する必要があり、この点で製作コスト及び作業コストが高くなるという欠点もある。
【0012】
本発明は、このような従来の問題点に鑑み、バットウィング素子を吊り上げ装置で吊り上げなくても、鉄塔内部からその高所に運搬することができるスーパーターンスタイルアンテナを提供することを第1の目的とする。
また、本発明は、周波数帯域の調整が可能なスーパーターンスタイルアンテナを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
(1) 本発明のアンテナは、中央支柱の周囲に周方向で所定間隔おきに配置される複数のバットウィング素子を備えたスーパーターンスタイルアンテナであって、1つの前記バットウィング素子を複数部分に分割してなる複数の分割ピースと、複数の前記分割ピースを互いに連結してその分割ピースを1つの前記バットウィング素子に組み立てるための複数の連結部材と、を備えていることを特徴とする。
【0014】
本発明のアンテナによれば、1つのバットウィング素子を複数部分に分割してなる複数の分割ピースと、この複数の分割ピースを互いに連結して1つのバットウィング素子に組み立てるための複数の連結部材を備えているので、連結部材で組み立てる前は、バットウィング素子が設置状態の寸法未満の分割ピースに分解された状態となる。
このため、分割ピースの寸法を適宜設定すれば、鉄塔内部を通して高所に運搬し、運搬した分割ピースを連結部材で連結することにより、バットウィング素子を高所で組み立てることができる。従って、バットウィング素子を吊り上げ装置で吊り上げなくても、鉄塔内部からその高所に運搬することができ、前記第1の目的が達成される。
【0015】
(2) 本発明のアンテナにおいて、前記バットウィング素子は、VHF帯用の放送アンテナとして使用するのに必要な水平方向寸法と縦方向寸法を有することが好ましい。
その理由は、前記した通り、STAはVHF帯(30〜300MH)で常用されるものであり、この帯域で使用するバットウィング素子は、鉄塔内部の作業員の昇降空間を通過できない程度に大型化する場合が少なくないので、複数の分割ピースに分解するのに適しているからである。
【0016】
本発明のアンテナにおいて、具体的には、複数の前記分割ピースは、その最大長さを前記バットウィング素子の水平方向寸法以下に設定すればよい。
その理由は、分割ピースの最大長さをバットウィング素子の水平方向寸法以下に設定すれば、作業員が鉄塔内部の昇降空間を通して、当該分割ピースを高所に運搬できる可能性が高まるからである。
【0017】
(3) 或いは、本発明のアンテナにおいて、複数の前記分割ピースの、その組み立て状態における水平方向寸法又は縦方向寸法若しくはこれらの双方を、鉄塔内部の昇降空間の幅(例えば、約700mm程度)以下に設定するようにすれば、作業員が鉄塔内部の昇降空間を通して、当該分割ピースをより確実に高所に運搬できるようになる。
【0018】
(4) 本発明のアンテナにおいて、バットウィング素子の構成部品となる分割ピースの形状は任意であるが、複数の前記分割ピースの一部又は全部を直線状の棒状部材により構成すれば、鉄塔内を運搬し易い形状に分割ピースを小型化することができる。この棒状部材としては、断面円形の丸棒材や断面矩形の角棒材を採用することができる。
もっとも、STAは鉄塔上部の中央支柱に取り付けられるので、バットウィング素子の自重よりも、風力によって生じる中央支柱に対するモーメント荷重の方が、鉄塔の耐荷重として問題になるので、空気抵抗がより小さい丸棒材を採用することが好ましい。
【0019】
(5) しかし、丸棒材の場合には、これらを交差させた場合に面接触しないので、丸棒材を断面方向に貫通するボルト・ナットで丸棒材同士を互いに締結しても、接触座面が少なくて締結が不安定になる可能性がある。
そこで、棒状部材が断面円形の丸棒材よりなる場合には、前記連結部材は、次の(x)〜(w)のいずれかの丸棒用締結具若しくはその組み合わせよりなることが好ましい。
【0020】
(x) 太い方の丸棒材に貫通させた細い方の丸棒材を、その貫通方向に移動不能に固定可能な締結具
(y) 丸棒材を挿通可能な複数の挿通部を有し、この挿通部に挿通された丸棒材をその軸方向に移動不能に固定可能な締結具
(z) 丸棒材の交差部分を貫通するボルトと、丸棒材の外周面に沿う湾曲面を当該丸棒材に面接触させた状態で前記ボルトに貫通されるスペーサプレートとを含む締結具
【0021】
(w) 丸棒材の外周面と相手方締結具の双方と面接触可能であり、その面接触状態で丸棒材及び相手方締結具に対して固定可能な締結具
これらの締結具を採用すれば、接触座面を有効に確保した状態で丸棒材同士を締結することができ、安定した締結が可能となる。
【0022】
(6) 一方、前記棒状部材が断面矩形の角棒材よりなる場合には、その端部同士を面接触状態で交差させることができるので、前記連結部材としては、前記角棒材の交差部分を直接ボルト締結するボルト・ナットより構成することができる。
この場合、角棒材の交差部分を直接ボルト締結しても接触座面を十分に確保できるので、丸棒用締結具のような特別な形状の部材が不要となる。このため、部品点数が少なくなり製作コストを低減できるという利点がある。
【0023】
(7) 本発明のアンテナにおいて、一部の前記分割ピースの連結位置の変更又は当該分割ピースの交換により、前記バットウィング素子の周波数帯域を調整可能な周波数調整手段を有することが好ましい。
この場合、上記周波数調整手段によってバットウィング素子の周波数帯域を調整可能であるから、その結果、スーパーターンスタイルアンテナの周波数帯域も調整可能となる。従って、前記第2の目的が達成される。
【0024】
(8) 具体的には、前記周波数調整手段は、前記バットウィング素子の水平方向寸法を調節するための水平調節手段より構成することができる。
その理由は、例えば、バットウィング素子の水平方向の最大長は電波波長の約0.23倍に対応しており、最小長は電波波長の約0.085倍に対応していることから、上記水平調節手段によってそれらの水平方向寸法を調節すれば、組み立て後のバットウィング素子の周波数帯域を調節できるからである。
【0025】
(9) より具体的には、前記水平調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である外枠材の、当該素子の構成要素である水平材に対する水平方向の取り付け位置を変更可能な位置変更手段より構成することができる。
(10) また、前記水平調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である複数の水平材と、この水平材とは長さの異なる交換用の水平材とから構成することもできる。
【0026】
(11) 前記周波数調整手段は、前記バットウィング素子の縦方向寸法を調節するための上下調節手段より構成することもできる。
その理由は、バットウィング素子の縦方向寸法は電波波長の約0.65倍に対応していることから、上記上下調節手段によってその寸法を調節すれば、組み立て後のバットウィング素子の周波数帯域を調節できるからである。
【0027】
(12) より具体的には、前記上下調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である最上位及び最下位の水平材の、当該素子の構成要素である縦材に対する取り付け高さを変更可能な高さ変更手段より構成することができる。
【0028】
(13) 本発明の施工方法は、上記スーパーターンスタイルアンテナの施工方法であって、次の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする。
(a) 前記アンテナの指向性を検査する第1工程
(b) 検査済みの前記アンテナの各バットウィング素子を複数の前記分割ピースに分解し、この各分割ピースと前記連結部材とを、鉄塔内部の昇降空間を通して当該鉄塔の上部に位置する前記中央支柱まで運び上げる第2工程
(c) 運び上げた前記各分割ピースを前記連結部材で連結して、前記中央支柱の周囲に前記バットウィング素子を組み付ける第3工程
【0029】
本発明の施工方法によれば、指向性の検査(第1工程)が終わったアンテナの各バットウィング素子を構成する分割ピースと連結部材とを、鉄塔内部の昇降空間を通して当該鉄塔の上部に位置する中央支柱まで運び上げ(第2工程)、運び上げた各分割ピースを連結部材で連結して中央支柱の周囲にバットウィング素子を組み付けるようにしたので(第3工程)、バットウィング素子を吊り上げ装置で吊り上げなくても、鉄塔内部からその高所に運搬することができる。従って、前記第1の目的が達成される。
【発明の効果】
【0030】
以上の通り、本発明によれば、バットウィング素子を吊り上げ装置で吊り上げなくても鉄塔内部からその高所に運搬できるので、他のアンテナに対する電場障害を招来することなく、アンテナのメンテナンスや交換作業を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】スーパーターンスタイルアンテナが搭載された鉄塔の正面図である。
【図2】第1実施形態に係るスーパーターンスタイルアンテナの正面図である。
【図3】第1実施形態に係るバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図4】第2実施形態に係るバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図5】図4のA−A線断面図である。
【図6】丸棒用の内側締結具の変形例を示す平面断面図である。
【図7】(a)はバットウィング素子の変形例を示す正面図であり、(b)はその素子を右側から見た側面図である。
【図8】(a)は図7のA−A線断面図であり、(b)は図7のB−B線断面図であり、(c)は図7のC方向から見た図である。
【図9】丸棒用の外側締結具の他の変形例を示す斜視図及び正面図である。
【図10】第3実施形態に係るバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図11】周波数調整手段の変形例を示すバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図12】周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図13】周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子の上半分の正面図である。
【図14】周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子の上部の正面図である。
【図15】周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子の上部の正面図である。
【図16】第4実施形態に係るバットウィング素子の正面図である。
【図17】分割方法の変形例を示すバットウィング素子の正面図である。
【図18】従来のスーパーターンスタイルアンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
〔鉄塔の構造〕
図1は、スーパーターンスタイルアンテナ9が搭載された鉄塔1の正面図である。
図1に示すように、この鉄塔1は、給電設備を有する建物2の天井部分に立設された鉄骨製のトラス構造物であり、下から順に、第1トラス部3、第2トラス部4、第3トラス部5及び中央支柱6を備えている。
【0033】
第1トラス部3は、鉄塔1の下部を構成するためトラス幅が最も大きく、この第1トラス部3の上端に、トラス幅が2番目に大きい第2トラス部4が立設されている。
また、この第2トラス部4の上端に、トラス幅が最も小さい第3トラス部5が立設されており、この第3トラス部4の上端に、断面円形の中央支柱6が立設されている。従って、図1の鉄塔1では、中央支柱6が当該鉄塔1の最上部に配置されている。
【0034】
図1に示すように、第1トラス部3の側面には、STL(Studio to Transmitter Link)やTTL(Transmitter to Transmitter Link)等の固定通信(マイクロ波回線)用の複数のパラボラアンテナ7が設けられており、第2トラス部4の上部には、デジタル放送用アンテナ8が設けられている。また、中央支柱6には、本発明の実施形態に係るスーパーターンスタイルアンテナ(STA)9が設けられている。
このうち、デジタル放送用アンテナ8は、多数のパネルアンテナ10よりなり、このアンテナ10を第2トラス部4の外側で周方向及び上下方向に配列することにより、第2トラス部4の上部を取り囲む筒体形状に形成されている。
【0035】
STA9は、従来の配置(図18参照)と同様に、4つのバットウィング素子12を平面視で十字状となるように、中央支柱6の周囲に周方向で90度間隔おきに配置することによって構成され、この4つのバットウィング素子12よりなるSTA9は、中央支柱6に対して上下方向で一定間隔おきに複数段(図例では合計6段)設けられている。
また、図1には図示していないが、鉄塔1の各トラス部3〜5の内部には、階段や梯子等よりなる昇降部材が設けられている。
【0036】
この各トラス部3〜5内の昇降部材の幅は、概ね1人の作業員のみが昇降可能であり、2人以上の作業員がすれ違うことはできないか、或いは可能であるとしてもそのすれ違いが困難となっている。
そして、荷物を持った1人の作業員が昇降部材を昇降する際に、荷物を水平方向に移動可能な平面スペース(昇降空間)は、第2トラス部4と第3トラス部5の場合は、トラス幅にそれほど余裕がないため、後述するバットウィング素子12の水平方向の最大長W1よりも小さい幅寸法(例えば、600mm程度)しか確保されていない。
【0037】
〔第1実施形態〕
図2は、第1実施形態に係るスーパーターンスタイルアンテナ9の正面図であり、図3は、そのアンテナ9を構成するバットウィング素子12の上半分の正面図である。
図2に示すように、本実施形態のSTA9は、中央支柱6の周囲に周方向で90度間隔おきに配置された4つのバットウィング素子12を有する。この各バットウィング素子12は、中央支柱6の径外方向に突出する上下一対の取付ブラケット13により、中央支柱6から径方向に一定間隔をおいた状態で当該支柱6に取り付けられている。
【0038】
また、中央支柱6には、建物2内の給電室と繋がった複数の給電部材(図示せず。)が設けられ、この各給電部材は、対応するバットウィング素子12の縦材16に電気的に接続されている。
上記給電部材は、隣り合うバットウィング素子12に対して90度の位相差となるよう送信電力を給電しており、これにより、水平面においてバランスの取れたほぼ無指向のSTA9が構成される。
なお、上記90度の位相差は、例えば4つのバットウィング素子12に対して、上から見て時計回り(或いは反時計回り)に第1〜第4のバットウィングに対し、0°(360°)、90°、180°、270°の位相差で送信電力を給電することにより実現できる。
【0039】
この種のスーパーターンスタイルアンテナ9では、送信電波の波長をλとすると、水平方向の最大長W1は約0.23λに設定され、水平方向の最小長W2は約0.085λに設定され、縦方向寸法Hは約0.65λに設定される。
本実施形態のSTA9では、FM(TV1〜3ch)放送に使用される周波数帯域が76〜108MHzのものであり、W1=約700mm、W2=約260mm、H=約2000mmに設定されている。
【0040】
もっとも、STA9は、VHFの周波数帯域(30〜300MHz)の放送アンテナとして使用するのに必要な水平方向寸法W1,W2と縦方向寸法Hを有しておればよく、これらの寸法は、上記数値に限定されるものではない。
各バットウィング素子12は外枠形状がほぼΣ状のバットウィング形状を呈しており、その構成材として、中央支柱6側で鉛直方向に延びる縦材16と、この縦材16から径方向外側に延びる複数本の第1〜第4水平材17〜20と、この各水平材17〜20の先端同士を繋ぐ上下一対の外枠材21,21とを有している。
【0041】
上記各部材16〜21のうち、第1水平材17は、バットウィング素子12の水平方向の最大長W1に対応する部分に配置され、水平方向長さが最も大きい。
以下、第2水平材18は2番目の水平方向長さで、第3水平材19は3番目の水平方向長さとなっており、第4水平材20は、バットウィング素子12の水平方向の最小長W2に対応する部分に配置され、水平方向長さが最も小さい。
【0042】
本実施形態のバットウィング素子12は、1つの当該バットウィング素子12を複数部分に分割してなる複数の分割ピースPn(n=1,2,……)と、複数の分割ピースPnを互いに着脱自在に連結して1つのバットウィング素子12に組み立てるための複数の連結部材Jとを備えている。
なお、各分割ピースPnは、いずれも亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼或いはアルミ合金や真鍮などの銅合金のような金属製の部材より構成されている。
【0043】
図2及び図3に示すように、本実施形態の分割ピースPnは、それぞれ、縦材16、第1〜第4水平材17〜20、外枠材21に対応して6種類のものがある。
このうち、第1〜第3水平材17〜19と外枠材21は、断面矩形でかつ中実の第1角棒材22Aよりなり、縦材16は、第1角棒材22Aより断面寸法が大きい、断面矩形でかつ中空の第2角棒材22Bよりなる。また、第4水平材20は正面視ほぼ矩形の板材23より構成されている。
【0044】
このように、本実施形態のバットウィング素子12は、その構成部分である縦材16、水平材17〜20及び外枠材21がそれぞれ分割ピースP1〜P6となっており、これらの分割ピースP1〜P6が、断面が矩形の角棒材22A,22Bよりなる直線状の棒状部材と、板部材とから構成されている。
なお、第1及び第2角棒材22A,22Bは断面が中空又は中実のいずれでもよいが、本実施形態では、作業員が乗る可能性がある第1〜第3水平材17〜19については、強度を高くして受風面積を小さくするために中実部材を採用し、外径が大きい縦材16については、軽量化するために中空部材を採用している。
【0045】
上記のように、分割ピースP1〜P6を角棒材22A,22Bや板材23より構成すると、これらを交差させた場合に面接触するので、これらを断面方向に貫通するボルト・ナットで互いに直接締結しても、バットウィング素子12の構造強度を確保できる締結力が得られる。
そこで、本実施形態では、分割ピースP1〜P6を連結して1つのバットウィング素子12に組み立てるための連結部材Jとして、ボルト・ナット24が採用されている。
【0046】
すなわち、各分割ピースP1〜P2には、その横断面方向(図3の紙面貫通方向)に貫通するボルト挿通孔(図示せず)が形成され、連結対象となる部材のボルト挿通孔同士を位置合わせしてその挿通孔にボルトを挿通し、このようにして挿通されたボルトの突出端部にナットを螺合させて締め付けることにより、各分割ピースP1〜P6が着脱自在に連結されている。
【0047】
具体的には、太い方の第1角棒材22Bよりなる縦材16(分割ピースP5)の側面に、細い方の第2角棒材22Aよりなる第1〜第3水平材17〜19(分割ピースP1〜P3)と、板材23よりなる第4水平材20(分割ピースP4)の基端部が交差状に当接され、その交差部分が一対のボルト・ナット24で互いにボルト締結されている。
これにより、各水平材17〜20が、それぞれ縦材16から径方向外方に片持ち状に突出した状態に取り付けられている。
【0048】
また、真っ直ぐな第1角棒材22Aよりなる外枠材21(分割ピースP6)は、各水平材17〜20の先端部と交差するように傾斜して配置され、その交差部分を1つのボルト・ナット24で互いにボルト締結することにより、外枠材21が各水平材17〜20の先端部と連結されている。これにより、正面視ほぼΣ状の外枠形状を呈する、バッドウィング型のアンテナ素子12が組み立てられている。
このように、図2及び図3に示す第1実施形態では、バッドウィング素子12が角棒材22A,22B、板部材23及びボルト・ナット24により構成されているので、材料コストが安価になるという利点がある。
【0049】
〔アンテナの施工方法〕
次に、上記STAの施工方法を説明する。
本実施形態のSTA9は、まず、工場等の施工現場以外の場所でいったん図2の状態に組み立てられ、その状態で指向性等のアンテナ性能が検査される。
その後、検査済みのSTA9の各バットウィング素子12を、複数の分割ピースP1〜P6に分解して、この分解状態で鉄塔1のある施工現場まで搬入する。このように、分解状態で施工現場に搬入すれば、梱包や輸送の観点から有利となる。
【0050】
次に、搬入された各分割ピースP1〜P6と、これを組み立てるための連結部材J(ボルト・ナット24)とを、鉄塔1内部の昇降空間を通して、その鉄塔1の上部に位置する中央支柱1まで運び上げる。
この際、本実施形態では、分割ピースP1〜P6が、直線上の棒状部材である角棒材22A,22Bや寸法の小さい板材23よりなるので、前記第2トラス部4や第3トラス部(図1参照)のような狭い昇降空間しか確保されていないトラス部であっても、作業員が分割ピースP1〜P6を中央支柱6まで運び上げることができる。
【0051】
その後、運び上げた各分割ピースP1〜P6のうち、縦材16を構成する分割ピースP5を取付ブラケット13によって中央支柱6に取り付け、その縦材16に他の分割ピースP1〜P4,P6を順に連結部材J(ボルト・ナット24)で連結してバットウィング素子12を組み立てる。
このようにして、各バットウィング素子12を中央支柱6の周囲に組み付けることにより、STA9の施工が完了する。
【0052】
なお、上記の施工方法において、アンテナ工場から鉄塔1までの運搬時には、必ずしも分割ピースP1〜P6に分解されている必要はなく、組み立て状態のバットウィング素子12をアンテナ工場から鉄塔1まで運搬することにしてもよい。
【0053】
〔バットウィング素子が溶接で製作されてきた理由〕
ところで、前記した通り、スーパーターンスタイルアンテナは、テレビジョン放送の開始(昭和30年頃)とともに古くから使用されてきたが、その時期から今日に至る長期間の間、一貫して棒材の溶接によって製作されてきた。その理由は次の通りである。
まず第1に、設計変更を好まない業界慣行がある。すなわち、STAは、FM及びTV(VHF:1〜12ch)放送用のアンテナとして昭和30年代以降から使用されているが、信頼性の高いサービスを視聴者に継続的に提供するため、特に問題がなければ設計変更しないという実績重視の風潮が放送業界に定着している。このことが、溶接による製作が今日まで継続してきた理由の1つであると考えられる。
【0054】
また、第2に、バットウィング素子の強度確保と製作コストの問題がある。すなわち、STAは鉄塔の高所に配置され、その高所において水平材が作業員の梯子代わりに使われることがあるので、比較的高い構造強度が要求される。
かかるバットウィング素子の構造強度を確保するには、比較的太めの丸パイプ(φ20mm程度)を溶接で固定するのが簡便であるし、STAが大量に整備された年代(昭和30〜40年代)には、金属部品の機械加工よりも人手による溶接の方が、製作コストが安価であった。従って、この点も、溶接による製作が今日まで継続した理由の1つであると考えられる。
【0055】
〔第2実施形態〕
図4は、第2実施形態に係るバットウィング素子12の上半分の正面図である。
本実施形態では、分割ピースP1〜P6が、断面が円形の丸棒材26A,26Bよりなる直線状の棒状部材から構成されている。
すなわち、第1〜第4水平材17〜20と外枠材21は、断面円形でかつ中実の第1丸棒材26Aよりなり、縦材16は、第1丸棒材26Aより断面寸法が大きい、断面円形でかつ中空の第2丸棒材26Bよりなる。
【0056】
なお、第1及び第2丸棒材26A,27Bの場合も、断面が中空又は中実のいずれでもよいが、本実施形態では、作業員が乗る可能性がある第1〜第4水平材17〜20については、強度を高くして受風面積を小さくするために中実部材を採用し、外径が大きい縦材16については、軽量化するために中空部材を採用している。
【0057】
前記した通り、STA9は鉄塔1上部の中央支柱6に取り付けられるので、バットウィング素子12の自重よりも、風力によって生じる中央支柱6に対するモーメント荷重の方が、鉄塔1の耐荷重として問題になる。
このため、中央支柱6への風荷重を低減する観点からは、同じ断面係数の場合を想定すると、空気抵抗がより大きい角棒材22A,22Bよりも、空気抵抗がより小さい丸棒材26A,26Bを採用することが好ましい。
【0058】
もっとも、分割ピースP1〜P6を丸棒材26A,26Bで構成すると、これらを交差させた場合に面接触しないので、角棒材22A,22Bの場合(第1実施形態)とは異なり、交差部分を貫通するボルト・ナットで丸棒材26A,26B同士を互いに直接ボルト締結しても、接触座面が少なくて締結が不安定になる可能性がある。
そこで、本実施形態では、分割ピースP1〜P6の連結部材Jとして、丸棒用の内側締結具27と外側締結具28を採用している。
【0059】
図5は、丸棒用の内側締結具27の断面構造を示す、図4のA−A線断面図である。
図5に示すように、内側締結具27は、細い方の第1丸棒材26Aよりなる第1〜第4水平材17〜20(分割ピースP1〜P4)を、太い方の第2丸棒材26Bよりなる縦材16(分割ピースP5)に貫通させ、その貫通方向に移動不能に固定するものである。
すなわち、内側締結具27は、丸棒材26Aの端部に同軸心状に設けられたボルト部29と、このボルト部29に螺合するナット30とを有しており、ボルト部29は縦材16を直径方向に貫通している。なお、ボルト部29と丸棒材26Aとは一体物でもよい。
【0060】
また、ボルト部29には、その貫通深さを制限する断面半円状の受けプレート31が固定され、この受けプレート31には、縦材16を被覆する筒部を形成するための半円プレート32が接合されている。
そして、受けプレート31が縦材16に当接するまでボルト部29を第2丸棒材26Bに貫通してから両プレート31,32を合体させ、その後、半円プレート32の外側に突出するボルト部29のねじ部にナット30を螺合して締め付けることにより、第1丸棒材26Aよりなる水平材17〜20を、第2丸棒材26Bよりなる縦材16に固定するようになっている。
【0061】
一方、図4に示すように、外側締結具28は、細い方の第1丸棒材26Aよりなる第1〜第4水平材17〜20(分割ピースP1〜P4)を、同じ第1丸棒材26Aよりなる外枠材21(分割ピースP6)に連結する場合に使用される。
本実施形態の外側締結具28は、第1丸棒材26Aを挿通可能な複数の挿通部33,34を有する。この挿通部33,34のうちの一方は、外枠材21を摺動可能に挿通できる円筒体33よりなり、他方は、円筒体33の径外方向に突出するブロック体34よりなりなる。このブロック体34の内部には、雌ねじ部(タップ孔)が形成されている。
【0062】
従って、ブロック体34の雌ねじ部に、水平材17〜20の端部に形成した雄ねじ部を螺合することにより、水平材17〜20の先端部を外側締結具28に対して軸方向に移動不能に固定できるようになっている。
また、外枠材21を円筒体33の内部に挿通し、この円筒体33を径方向に貫通するボルト35で固定することにより、外枠材21を外側締結具28に対して軸方向に移動不能に固定できるようになっている。
【0063】
このように、本実施形態では、丸棒用の内側及び外側締結具27,28を用いて、直線状の丸棒材26A,26Bを互いに連結するようにしたので、丸棒材26A,26Bを強固に締結することができ、組み立て後のバットウィング素子12の構造強度を有効に確保することができる。
【0064】
〔内側締結具の変形例〕
図6は、水平材17〜20を縦材16に取り付けるための丸棒用の内側締結具27の変形例を示す平面断面図である。
前記した図5の内側締結具27では、締結部の強度を補強するために、細い方の第1丸棒材26Aの端部にこれより太いボルト部29を連結していたが、図6(a)の変形例では、そのボルト部29が省略され、第1丸棒材26Aの端部に雄ねじ部29Aが形成されている。
【0065】
上記雄ねじ部29Aは、太い方の第2丸棒材26Bとこの丸棒材26Bの外周面に当接する内外一対の前記半円プレート32,32とを径方向に貫通しており、この半円プレート32,32同士が互いに近づく方向に内外一対のナット30,30を締め付けることにより、第1丸棒材26Aが第2丸棒材26Bに固定されている。
なお、図6(b)の変形例に示すように、一対の半円プレート32,32を省略し、内外一対のナット30,30で第2丸棒材26Bを直接挟み込んだ状態で、ナット30,30を締め付けることにしてもよい。
【0066】
一方、図6(c)の変形例においても、細い方の丸棒材26Aよりなる水平材17〜20が、太い方の丸棒材26Bよりなる縦材16を径方向に貫通しているが、内側締結具27が、水平材17〜20と直交する方向のボルト36からなる点で、第2実施形態(図5)と相違する。
【0067】
このボルト36は、縦材16の周壁を径方向に貫通して、縦材16内部の水平材17〜20の端部に螺合しており、このボルト36を締め付けることによって、水平材17〜20を軸方向移動不能に固定することができる。
この図6の変形例によれば、極めて簡素な構造で水平材17〜20を縦材16に強固に固定することができ、製作コストを低減できる利点がある。
【0068】
〔バッドウィング素子の変形例〕
図7(a)は、バットウィング素子12の変形例を示す正面図であり、図7(b)はその素子を右側から見た側面図である。また、図8(a)は、図7のA−A線断面図であり、図8(b)は、図7のB−B線断面図であり、図8(c)は、図7のC方向から見た図である。
【0069】
この変形例のバットウィング素子12も、第1〜第4水平材17〜20と外枠材21が、断面円形でかつ中実の第1丸棒材26Aよりなり、縦材16が、第1丸棒材26Aより断面寸法が大きい、断面円形でかつ中空の第2丸棒材26Bよりなるが、内側締結具27と外側締結具28の構造が第2実施形態(図4及び図5)の場合と異なる。
【0070】
すなわち、図8(a)及び図8(b)に示すように、この変形例においても、細い方の丸棒材26Aよりなる水平材17〜20が、太い方の丸棒材26Bよりなる縦材16を径方向に貫通させることで両者を交差させているが、この変形例では、内側締結具27が、水平材17〜20と直交する方向に両丸棒材26A,26Bを貫通するボルト50と、このボルト50を締め付けるためのナット51と、2つのスペーサプレート52とから構成されている。
このスペーサプレート52は、表裏の一方面に太い方の第2丸棒材26Bの外周面に沿う曲率の湾曲面52Aが形成され、他方面が平面52Bとなっている。
【0071】
2つのスペーサプレート52のうち、ボルト50頭部側に介在されるプレート52は、第2丸棒材26Bに対しては湾曲面52Aを当接させ、ボルト50頭部に対しては平面52Bを当接させた状態でボルト50に貫通され、ナット51側に介在されるプレート52は、第2丸棒材26Bに対しては湾曲面52Aを当接させ、ナット51に対しては平面52Bを当接させた状態でボルト50に貫通されている。
この場合、各スペーサプレート52の湾曲面52Aによって第2丸棒材26Bに対する接触座面を大きく確保できるので、当該プレート52を介在させない場合に比べて、ボルト・ナット50,51による締結力が安定する。
【0072】
一方、図8(c)に示すように、この変形例の外側締結具28は、互いに交差する第1丸棒材26Aの交差部分を貫通するボルト53と、このボルト53を締め付けるためのナット54と、4つのスペーサプレート55とから構成されている。
このスペーサプレート55は、表裏の一方面に細い方の第1丸棒材26Aの外周面に沿う曲率の湾曲面55Aが形成され、他方面が平面55Bとなっている。
【0073】
4つのスペーサプレート55のうち、ボルト53頭部側に介在されるプレート55は、第1丸棒材26Aに対しては湾曲面55Aを当接させ、ボルト55頭部に対しては平面55Bを当接させた状態でボルト55に貫通され、ナット54側に介在されるプレート55は、第1丸棒材26Aに対しては湾曲面55Aを当接させ、ナット54に対しては平面55Bを当接させた状態でボルト53に貫通されている。
【0074】
また、第1丸棒材26Aの交差部分に介在される2つのプレート55は、第1丸棒材26に対しては湾曲面55Aを当接させ、かつ、互いの平面55B同士を重合させた状態で、ボルト50に貫通されている。
この場合、各スペーサプレート55の湾曲面55Aによって第1丸棒材26Aに対する接触座面が大きく確保できるので、当該プレート55を介在させない場合に比べて、ボルト・ナット53,54による締結力がより安定する。
【0075】
〔外側締結具の変形例〕
図9は、水平材17〜20を外枠材21に取り付けるための外側締結具28の変形例を示す斜視図(図9(a))及び正面図(図9(b))である。
この変形例の外側締結具28は、第1丸棒材26Aの外周面と相手方締結具28の双方と面接触可能であり、その面接触状態で第1丸棒材26A及び相手方締結具28に対して固定可能になっている。
【0076】
具体的には、この外側締結具28は、断面半円形に形成されたほぼ蒲鉾状の接合ブロック38よりなり、この接合ブロック38は平面状の接合面39を有する。この接合面39の軸方向端部側には、第1丸棒材26Aとほぼ同径の断面半円形の収容溝40が形成されている。
また、接合ブロック38には、接合面39を直交して貫通するボルト挿通孔41と、収容溝40の底部に位置するタップ孔42とが形成されている。
【0077】
このため、第1丸棒材26Aの端部を収容溝40に嵌合させ、この状態で、第1丸棒材26Aの端部を貫通するねじ部材(図示せず)をタップ孔42に螺合することにより、第1丸棒材26Aを接合ブロック38に固定することができる。
また、接合面39が互いに重なるようにして一対の接合ブロック38を交差させ、この状態で、ボルト挿通孔41にボルト43を挿通してこれをナット(図示せず)で締め付けることにより、一対の接合ブロック38同士を互いに連結することができる。
【0078】
この接合ブロック38によれば、収容溝40において第1丸棒材26Aと面接触するとともに、接合面39において相手方のブロック38と面接触し、この面接触状態で第1丸棒材27A及び相手方のブロック38に対して固定するようになっているので、第1丸棒材26A同士を直接ボルト締結する場合に比べて、第1丸棒材26Aをより強固に締結することができる。
【0079】
〔第3実施形態〕
図10は、第3実施形態に係るバットウィング素子12の上半分の正面図である。
本実施形態のバットウィング素子12は、分割ピースP1〜P4を交換することにより、当該素子12の周波数帯域を調整可能な周波数調整手段を備えている。
すなわち、このバットウィング素子12は、予め設定された基準長を有する第1〜第4水平材17〜20と、その基準長から所定長だけそれぞれ短い長さを有する交換用水平材17A〜20Aとを備えている。
【0080】
このため、第1〜第4水平材17〜20を用いて組み立てられたバットウィング素子12を、交換用水平材17A〜20Aと交換して当該素子12を組み立て直すことにより、バットウィング素子12の水平方向寸法を調節でき、これによって当該素子12の周波数帯域を調整することができる。
なお、交換用水平材17A〜20Aは、基準長から所定長だけそれぞれ長いものであってもよく、長さが異なる3種類以上のものを用意しておくこともできる。
【0081】
また、基準長の水平材17〜20と交換用の水平材17A〜20Aの長さの変化量は、必ずしも、各水平材17〜20について一定長さにしておく必要はないが、その変化量が一定でない場合には、外枠材21の長さや連結間隔も変化し、外枠材21についても交換用の部材を用意しておく必要がある。
【0082】
〔周波数調整手段の変形例〕
図11は、周波数調整手段の変形例を示すバットウィング素子12の上半分の正面図である。
この変形例では、周波数調整手段がバットウィング素子12の水平方向寸法を調節するための水平調節手段よりなる点で、図9の場合と同様であるが、その調節手段が、水平材17〜20の交換ではなく、外枠材21の水平材17〜20に対する水平方向の取り付け位置を変更可能な位置変更手段よりなる。
【0083】
すなわち、図11に示すように、この場合の外枠材21は、水平方向に幅広のほぼ平行四辺形の板材21Aよりなり、この板材21Aの水平材17〜20との交差部分に、水平方向に延びる長孔よりなるボルト挿通孔21Bが形成されている。
このため、外枠材1を各水平材17〜20と連結するボルトをそれぞれ緩めると、外枠材21の水平材17〜20に対する水平方向の取り付け位置を変更することができる。
【0084】
〔周波数調整手段の他の変形例〕
図12は、周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子12の上半分の正面図である。
この変形例では、水平方向に延びる長孔よりなるボルト挿通孔21Bが、各水平材17〜20に形成されており、この点で図10のバットウィング素子12と異なる。
この図12の変形例においても、外枠材21を各水平材17〜20と連結するボルトをそれぞれ緩めると、外枠材21の水平材17〜20に対する水平方向の取り付け位置を変更することができる。
【0085】
なお、図12(a)は、外枠材21の取り付け位置を最も内側(中央支柱6側)にセットした場合を示し、図12(b)は、その取り付け位置を最も外側にセットした場合を示している。
【0086】
〔周波数調整手段の他の変形例〕
図13は、周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子12の上半分の正面図である。
この変形例では、周波数調整手段が、バットウィング素子12の縦方向寸法を調節するための上下調節手段より構成されている。また、この上下調節手段は、バットウィング素子12の最上位又は最下位にある第1水平材17の、縦材16に対する取り付け高さを変更可能な高さ変更手段より構成されている。
【0087】
具体的には、縦材16と外枠材21の鉛直部分に、ボルト挿通孔が上下方向で所定間隔おきに複数段形成されており、いずれかの段のボルト挿通孔を用いて第1水平材17の両端部を縦材16と外枠材21にボルト締結することにより、第1水平材17の取り付け高さを変更できるようになっている。
【0088】
〔周波数調整手段の他の変形例〕
図14は、周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子12の上部の正面図である。
この変形例では、第1水平材17の形状が直線状の部材ではなく、正面視ほぼコの字状に形成されており、鉛直方向に延びるボルト締結部分を両端部に有する点で、図12の場合と異なる。
【0089】
この図14の変形例では、第1水平材17の両端部に、鉛直方向に延びるボルト締結部分が設けられているので、第1水平材17が直棒材よりなる図13の場合に比べて、バットウィング素子12の縦方向寸法Hの最大値をより大きくできるという利点がある。
なお、図14(a)は、第1水平材17の取り付け位置を最も下側にセットした場合を示し、図14(b)は、その取り付け位置を最も上側にセットした場合を示している。
【0090】
図15は、周波数調整手段の他の変形例を示すバットウィング素子12の上部の正面図である。
図15(a)の変形例では、第1水平材17が、上下方向に幅広のほぼ長方形状の板材17Aよりなり、この板材17Aの縦材16及び外枠材21に対する交差部分に、上下方向に延びる長孔よりなるボルト挿通孔17Bが形成されている。
このため、第1水平材17を縦材16及び外枠材21と連結するボルトをそれぞれ緩めると、第1水平材17の各部材16,21に対する上下方向の取り付け位置を変更することができる。
【0091】
図15(b)の変形例では、上下方向に延びる長孔よりなるボルト挿通孔17Bが、縦材16と外枠材21とに形成されており、この点で図15(b)のバットウィング素子12と異なる。
この図15(b)の変形例においても、第1水平材17を縦材16及び外枠材21と連結するボルトをそれぞれ緩めると、第1水平材17の各部材16,21に対する上下方向の取り付け位置を変更することができる。
【0092】
〔第4実施形態〕
図16は、第4実施形態に係るバットウィング素子12の正面図である。
本実施形態のバットウィング素子12では、従来の素子12を水平方向及び上下方向で複数個に分割してなる分割ピースP1〜P6より構成されている点で、上記各実施形態の場合と相違している。
すなわち、この場合の分割ピースP1〜P6は、外枠材21と水平材17〜20の左側部分を一体に有するピースP1〜P3と、縦材16と水平材17〜20の右側部分を一体に有するピースP4〜P6とから構成されている。
【0093】
また、各分割ピースP1〜P6の接続端縁には、取付フランジ46よりなる連結部材Jが溶接等によって一体に設けられている。
従って、各分割ピースP1〜P6の取付フランジ46を互いに接合させ、フランジ厚さ方向に貫通するボルトで両取付フランジ46を固定することにより、分割ピースP1〜P6を1つのバットウィング素子12に組み立てることができる。
【0094】
本実施形態のバットウィング素子12においても、取付フランジ(連結部材)46で組み立てる前は、バットウィング素子12が設置状態の寸法未満の分割ピースP1〜P6に分解された状態となるので、分割ピースP1〜P6の寸法を適宜設定することにより、鉄塔1内部を通して高所に運搬できるようになる。
例えば、本実施形態では、各分割ピースP1〜P6の組み立て状態における水平方向寸法又は縦方向寸法のうちの少なくともいずれか一方が、鉄塔1内部の昇降空間の幅以下に設定されている。このため、作業員は鉄塔1内部の昇降空間を通して、分割ピースP1〜P6を高所に運搬することができる。
【0095】
〔分割方法の変形例〕
図17は、分割方法の変形例を示すバットウィング素子12の正面図である。
この変形例が図16の場合と異なる点は、バットウィング素子12を上下方向のみで分割している点にあり、図例では、従来の素子12を上下方向に7分割してなる、7つの分割ピースP1〜P7よりなる。
【0096】
このようにバットウィング素子12を上下方向のみで分割しても、取付フランジ(連結部材)46で組み立てる前は、バットウィング素子12が設置状態の寸法未満の分割ピースP1〜P7に分解された状態となるので、分割ピースP1〜P7の寸法を適宜設定することにより、鉄塔1内部を通して高所に運搬できるようになる。
なお、図16と図17に示す第3実施形態において、バットウィング素子12の分割数は図例の場合に限定されるものではなく、それ以上の数で分割してもよい。
【0097】
〔その他の変形例〕
上記実施形態は本発明の例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は、上記実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲及びその構成と均等な全ての変更が含まれる。
例えば、上記実施形態のSTA9において、バットウィング素子12の構成部材を交換したり周波数調整したりする場合には、実質的に無指向性が阻害されない程度であれば、必ずしも、4つのバットウィング素子12のすべてについて同じで交換又は周波数調整を行う必要はない。
【符号の説明】
【0098】
1 鉄塔
6 中央支柱
9 スーパーターンスタイルアンテナ(STA)
12 バットウィング素子
16 縦材
17 第1水平材
18 第2水平材
19 第3水平材
20 第4水平材
21 外枠材
22A 第1角棒材
22B 第2角棒材
24 ボルト・ナット
26A 第1丸棒材
26B 第2丸棒材
27 内側締結具
28 外側締結具
38 接合ブロック
46 取付フランジ
Pn 分割ピース
J 連結部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央支柱の周囲に周方向で所定間隔おきに配置される複数のバットウィング素子を備えたスーパーターンスタイルアンテナであって、
1つの前記バットウィング素子を複数部分に分割してなる複数の分割ピースと、
複数の前記分割ピースを互いに着脱自在に連結して1つの前記バットウィング素子に組み立てるための複数の連結部材と、
を備えていることを特徴とするスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項2】
前記バットウィング素子は、VHF帯用の放送アンテナとして使用するのに必要な水平方向寸法と縦方向寸法を有しており、
複数の前記分割ピースは、その最大長さが前記バットウィング素子の水平方向寸法以下に設定されている請求項1に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項3】
複数の前記分割ピースは、その組み立て状態における水平方向寸法及び縦方向寸法若しくはこれらの双方が、鉄塔内部の昇降空間の幅以下に設定されている請求項1又は2に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項4】
複数の前記分割ピースが直線状の棒状部材を含んでいる請求項1〜3のいずれか1項に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項5】
前記棒状部材は、断面円形の丸棒材よりなり、
前記連結部材は、次の(x)〜(w)のいずれかの丸棒用締結具若しくはその組み合わせよりなる請求項4に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
(x) 太い方の丸棒材に貫通させた細い方の丸棒材を、その貫通方向に移動不能に固定可能な締結具
(y) 丸棒材を挿通可能な複数の挿通部を有し、この挿通部に挿通された丸棒材をその軸方向に移動不能に固定可能な締結具
(z) 丸棒材の交差部分を貫通するボルトと、丸棒材の外周面に沿う湾曲面を当該丸棒材に面接触させた状態で前記ボルトに貫通されるスペーサプレートとを含む締結具
(w) 丸棒材の外周面と相手方締結具の双方と面接触可能であり、その面接触状態で丸棒材及び相手方締結具に対して固定可能な締結具
【請求項6】
前記棒状部材は、断面矩形の角棒材よりなり
前記連結部材は、前記角棒材の交差部分をボルト締結するボルト・ナットよりなる請求項4に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項7】
一部の前記分割ピースの連結位置の変更又は当該分割ピースの交換により、前記バットウィング素子の周波数帯域を調整可能な周波数調整手段を有する請求項1〜6のいずれか1項に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項8】
前記周波数調整手段は、前記バットウィング素子の水平方向寸法を調節するための水平調節手段よりなる請求項7に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項9】
前記水平調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である外枠材の、当該素子の構成要素である水平材に対する水平方向の取り付け位置を変更可能な位置変更手段よりなる請求項8に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項10】
前記水平調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である複数の水平材と、この水平材とは長さの異なる交換用の水平材とからなる請求項8に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項11】
前記周波数調整手段は、前記バットウィング素子の縦方向寸法を調節するための上下調節手段よりなる請求項7に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項12】
前記上下調節手段は、前記バットウィング素子の構成要素である最上位及び最下位の水平材の、当該素子の構成要素である縦材に対する取り付け高さを変更可能な高さ変更手段よりなる請求項11に記載のスーパーターンスタイルアンテナ。
【請求項13】
次の工程(a)〜(c)を含むことを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載のスーパーターンスタイルアンテナの施工方法。
(a) 前記アンテナの指向性を検査する第1工程
(b) 検査済みの前記アンテナの各バットウィング素子を複数の前記分割ピースに分解し、この各分割ピースと前記連結部材とを、鉄塔内部の昇降空間を通して当該鉄塔の上部に位置する前記中央支柱まで運び上げる第2工程
(c) 運び上げた前記各分割ピースを前記連結部材で連結して、前記中央支柱の周囲に前記バットウィング素子を組み付ける第3工程

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−166200(P2011−166200A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−23038(P2010−23038)
【出願日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】