説明

ズームレンズ

【課題】ズーム位置が相対的に検出される像ブレ補正機能付ズームレンズにおいて、ズーム位置に応じて像ブレ補正特性を可変する場合、ズーム位置初期化前は、適切な像ブレ補正角に設定することができず、色ずれや収差が大きくなってしまう。
【解決手段】変倍時に光軸方向に移動する変倍群と、変倍群よりも物体側の可動の光学ユニットと、該光学ユニットを動かす制御手段を備え、光学ユニットを移動させて像を変位させるズームレンズにおいて、光学ユニットの可動範囲は望遠端よりも広角端において広く、変倍群の相対位置を検出する位置検出手段と、検出された変倍群の相対位置に基づいて変倍群の位置を演算する位置演算手段を有し、電源投入直後に変倍群を基準位置まで駆動した後、位置演算手段で記憶している変倍群の位置を基準位置に初期化し、変倍群を電源投入時の位置まで駆動し、変倍位置に応じた光学ユニットの可動範囲を設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、像ぶれ補正機能を有するズームレンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、テレビやモニターなどの大画面化および高解像度化がすすみ、映し出される映像に対する高画質化の要求が高まっていた。この高画質化の要求に応えるべく、放送用ズームレンズでは高精度な位置検出が可能である光学式エンコーダを搭載し、レンズ制御は高性能化されている。(特許文献1)
【0003】
またズームレンズの高倍率化・長焦点化が進み、カメラ及びレンズを設置する足場の振動や、風によるレンズの振動等に起因する望遠側における像の動きが問題となっている。そこで、ズームレンズを構成しているレンズ群の一部を駆動して、振動に伴う像の動きを補正する像ぶれ補正機能を搭載したズームレンズが開発された。しかし焦点距離が長く、像ぶれ補正量が大きい場合には、光軸を曲げることにより発生する色収差の影響が大きくなるという問題があった。そこで像ぶれ補正により生じる色収差の影響を低減すべく、焦点距離が長くなるにつれて、像ぶれ補正量を小さくする像ぶれ補正機能付ズームレンズが提案されている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−284042号公報
【特許文献2】特許第3543999号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら従来の像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置は、ズーム部の位置検出に光学式エンコーダなどの相対位置検出器を用いており、電源投入直後はズーム部の位置を正確に把握することができない。そのため、現在の焦点距離に対して適切な像ぶれ補正量を設定できず、色収差を低減することが非常に困難であり、それに対する対策が望まれていた。そこで、本発明の目的は、電源投入直後から像ぶれ補正により生じる色収差を低減することを可能にした像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るズームレンズは、変倍時に光軸方向に移動する変倍群と、前記変倍群よりも物体側に配置された、可動の光学ユニットと、前記光学ユニットを動かす制御手段を備え、前記光学ユニットを動かすことによって像を変位させるズームレンズにおいて、広角端における前記光学ユニットの可動範囲が、望遠端における前記光学ユニットの可動範囲よりも広いことを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係るズームレンズの更なる実施形態においては、前記変倍群の相対位置を検出する位置検出手段と、該検出された該変倍群の相対位置に基づいて該変倍群の位置を演算する位置演算手段を有し、電源投入直後に前記変倍群を基準位置まで駆動した後、該位置演算手段の変倍群の位置を基準位置に初期化し、該変倍群を電源投入時の位置まで駆動し、該変倍群の位置に応じた前記光学ユニットの可動範囲を設定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電源投入直後からズーム部の位置や初期化方法、像ぶれ補正モードに関わらず、像ぶれ補正により生じる色収差を低減できる効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施例の構成図である。
【図2】第1の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図3】焦点距離と像ぶれ補正角との関係図である。
【図4】第2の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】ズーム部位置検出部の詳細構成図である。
【図6】第3の実施例の構成図である。
【図7】第3の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図8】第3の実施例の割込み動作を説明するためのフローチャートである。
【図9】第4の実施例の構成図である。
【図10】第4の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】第5の実施例の構成図である。
【図12】第5の実施例の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施例1]
以下に、本発明の実施の形態を添付の図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明を適用できる第1の実施例における像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置の構成図である。
【0011】
像ぶれ補正機能付ズームレンズ100は、は像ぶれ補正機能付ズームレンズ100に加えられた振動を検出するための振動センサ101を有する。ハイパスフィルタ102は、振動センサ101の出力信号に含まれる直流成分を除去し、増幅器103はハイパスフィルタ102の出力を適切なレベルにまで増幅する。増幅器103からのアナログ出力信号はA/D変換器104によってデジタルデータに変換される。
【0012】
バリアングルプリズム105は、ズームレンズ100の光軸を偏心(像面上の被写体像を変位)させる可動の光学ユニットであり、アクチュエータ106によって駆動される。バリアングルプリズム105の位置、すなわち、入射面と出射面の相対的な角度(光軸を含む断面内における頂角)、は位置検出部107によって検出される。ここでは、上記のバリアングルプリズム105を駆動する(入射麺と出射麺の相対的な角度を変化させる)ことによって、光軸と垂直な方向に被写体像を変位させている(撮像素子に対する被写体像の移動量を低減する)。
【0013】
ズーム部(変倍群)108は、変倍時に光軸方向に移動するレンズ群であり、バリアングルプリズム105より像面側に配置される(可変の光学ユニット(バリアングルプリズム)105は変倍群(ズーム部)108の物体側に配置される)。ズーム部108の位置は、ズーム部位置検出部109によって検出される。ズーム部原点位置検出部110は、ズーム部108の駆動中にズーム部が所定の原点位置(基準位置)を通過したことを検出する。
【0014】
不揮発性メモリ111は像ぶれ補正制御データを演算するために必要な係数を記憶する。
【0015】
像ぶれ補正制御部112は、A/D変換器104からの出力データおよびズーム部位置検出部109、ズーム部原点位置検出部110からの出力データ、不揮発性メモリ111に記憶されている係数を用いて像ぶれ補正制御データを演算する。像ぶれ補正制御部112からの出力データは、D/A変換器113によってアナログ信号に変換され、D/A変換器113からの出力信号に基づいて駆動回路114はアクチュエータ106を駆動する。
【0016】
なお、ズーム部位置検出部109は、インクリメンタル型の検出部(センサ)であって、サンプリング周期ごとに現在の検出値の直前の検出値に対する相対的な変化量(相対位置)を検出し、像ぶれ補正制御部112に出力する。像ぶれ補正制御部(位置演算手段)112では、入力された変化量をもとに記憶されているズーム位置に対して加減算し、現在のズーム位置を得る。従って、所定のズーム位置(原点)をズーム部108が通過する際に得られるズーム部原点位置検出部110からの原点検出信号により、ズーム部原点位置検出部110内に記憶されているズーム位置を原点位置に初期化することが、正確にズーム位置を把握するために不可欠となる。
【0017】
図2は、本実施例における像ぶれ補正制御部112の一連の動作を示すフローチャートである。像ぶれ補正機能は、90度異なる二方向を回転軸として回転可能なバリアングルプリズム105を駆動することで実現している。それぞれの方向にバリアングルプリズム105を駆動するためには、振動センサをはじめ、同じ構成要素を2つずつ用いて同じ処理を行っている。よって本実施例では、90度異なる二方向のうちの水平方向のみを説明し、他方の垂直方向の説明を省略する。
【0018】
以下に図2のフローチャートに沿って、像ぶれ補正制御部112の動作を説明する。
不図示のカメラより像ぶれ補正機能付ズームレンズ100に電源が投入されると、像ぶれ補正制御部112はステップS101にすすみ、ズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionを初期値Zoffに仮設定する。
ZoomPosition=Zoff (1)
ただし、この時点では、ズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionは、必ずしもズーム部108の実際の位置を表しているとは限らない状態である。
【0019】
ステップS102では、バリアングルプリズム105の角度に相当する位置検出部107のカウンタCountを0に設定する。カウンタCountは、バリアングルプリズム105の角度に比例した値を出力するカウンタであり、インクリメンタルエンコーダの出力パルスをカウントするカウンタ相当のものである。
【0020】
ここで本実施例における焦点距離と像ぶれ補正角との関係を図3に示す。図3に示したように本実施例では、像ぶれ補正時に生じる色収差量を低減するために焦点距離が長くなるにつれて、最大像ぶれ補正角を小さく設定している。すなわち、像ぶれ補正角の可変範囲(可動範囲)は、広角端において最も大きく、広角端から望遠端に向けて変倍するにつれて単調に減少し、望遠端において最も小さくなる。この設定により色収差を低減し、ハイビジョン放送等にも使用可能な、高い映像品質を実現できる。図2の説明に戻る。
【0021】
本実施例においては、ズーム部原点位置検出部110はワイド端に配置されている場合を仮定しているので、像ぶれ補正制御部112は、ズーム部の原点を検出するため、ステップS103においてズーム部108をワイド方向に駆動する。
次にステップS104において、ズーム部原点位置検出部110が原点を検出したか否かを判断し、原点を検出していない場合はステップS103に戻り、原点位置を検出するまでズーム部108をワイド方向に駆動し続ける。またステップS104において、ズーム部原点位置検出部110が原点を検出した場合はステップS105にすすみ、ただちにズーム部108の駆動を停止し、ステップS106にすすむ。ステップS106では、ズーム部原点に対する絶対位置Zoを不揮発性メモリ111から読み込み、(2)式を用いてズーム位置補正値Zcを演算する。
Zc=ZoomPosition−Zo (2)
【0022】
さらにステップS107において、ズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionにズーム部原点における絶対位置Zoを設定し、ステップS108でズーム部108を電源投入時の位置まで駆動する。
【0023】
この時点で、ズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionとズーム部108の実際の位置とが整合することになる。以後はズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionを監視することにより、ズーム部108の正しい位置を把握することができる。引き続き図2の説明を行う。
【0024】
ステップS109にすすんだ像ぶれ補正制御部112は、不揮発性メモリ111からズーム部108の位置に応じた像ぶれ補正角の絶対値の最大値θzを読み込み、像ぶれ補正角リミットθlimitに設定し、ステップS110にすすむ。ステップS110では、振動センサ101の出力をA/D変換器104でデジタル信号に変換して振動角速度データωに設定し、ステップS111に進む。ステップS111では、下記の(3)式を用いて、振動角速度データより振動角度に相当する像ぶれ補正制御データθcを演算し、ステップS112にすすむ。
θc = ∫ωdt (3)
【0025】
ステップS112では、位置検出部107よりバリアングルプリズム105の角度に相当する位置データθfを入力し、ステップS113で像ぶれ補正制御データθcと像ぶれ補正角リミットθlimitを比較する。
【0026】
ステップS113において、像ぶれ補正制御データθcが像ぶれ補正角リミットθlimitより大きい場合は、ステップS114にすすみ、(4)式により像ぶれ補正制御データθcを変更し、ステップS116にすすむ。
θc = θlimit (4)
【0027】
またステップS113において、像ぶれ補正制御データθcが像ぶれ補正角リミット−θlimitより小さい場合は、ステップS115にすすみ、(5)式により像ぶれ補正制御データθcを変更し、ステップS116にジャンプする。
θc = −θlimit (5)
【0028】
一方ステップS113において、像ぶれ補正制御データθcが(6)式の条件を満たす場合は、ステップS116に進む。
−θlimit ≦ θc ≦ θlimit (6)
【0029】
ステップS116において、(7)式を用いて像ぶれ補正制御データθcとバリアングルプリズム105の位置データθfとの差分値Δθを演算し、ステップS117に進む。
Δθ=k×(θc−θf) (7)
【0030】
ステップS117では、演算した差分値ΔθをD/A変換器113に出力し、バリアングルプリズム105の位置がθcとなるようにアクチュエータ106を駆動する。
【0031】
さらに像ぶれ補正制御演算部112は、ステップS118でズーム部108の制御演算を行い、ステップS119では不図示のフォーカス部の制御演算を、ステップS120では不図示のアイリス部の制御演算を行う。
【0032】
以後、像ぶれ補正機能付ズームレンズ100の電源切られるまで像ぶれ補正制御部112はステップS109からステップS120を繰返し実行する。
【0033】
このように、電源投入直後に最初にズーム部108の位置を初期化することにより、電源投入直後から色収差量の増大を抑制した像ぶれ補正をすることが可能となる。
【0034】
本実施例においては、ズーム部原点位置検出部110をワイド端に配置した場合を例として記載したが、本発明はこれに限定されることはない。ズーム部原点位置検出部をワイド端以外に配置した場合は、その配置に応じてステップS103におけるズーム部108の駆動方向や目標位置などを適切に設定することにより本実施例と同様の効果を得ることが可能である。
【0035】
また本実施例では、ズーム部108を像ぶれ補正部105より像面側に配置した場合を例として記載したが、像ぶれ補正部105をズーム部108より像面側に配置した場合も同様の効果を得ることが可能である。
【0036】
[実施例2]
図4は、本実施例における像ぶれ補正制御部112の一連の動作を示すフローチャートである。本実施例おける構成は、実施例1と同様であるので説明を省略する。以下に図4のフローチャートに沿って、像ぶれ補正制御部112の動作を説明する。
【0037】
不図示のカメラより像ぶれ補正機能付ズームレンズ100に電源が投入されると、像ぶれ補正制御部112はステップS201にすすみ、初期化完了フラグFlagを0に設定する。ステップS202では、バリアングルプリズム105の角度に相当する位置検出部107のカウンタCountを0に設定し、ステップS203に進む。
【0038】
ステップS203では、前回像ぶれ補正機能付ズームレンズ100の電源が切られた際に予め記憶しておいた位置検出部107の状態を不揮発性メモリ111から読み出す。読み出した初期値Zpow-offをズーム部位置検出部109のカウンタZoomPositionに仮設定する。ステップS203においては、次の3つの値を不揮発性メモリ111から読み出す。
Vma:ズームエンコーダA相データ
Vmb:ズームエンコーダB相データ
Zpow-off:ズーム位置データ
【0039】
ここでVma及びVmbについて説明する。図5にズーム部位置検出部109の詳細な構成を示す。図5において、109Aはズーム部108の位置に応じて矩形波および正弦波を出力するエンコーダである。エンコーダ109Aは、矩形波および正弦波それぞれにおいて、90度位相のずれた2つ信号を出力する。A/D変換器109Bはエンコーダ109Aから出力された2つの正弦波をデジタルデータに変換する。カウンタ109Cはエンコーダ109Aから出力された2つの矩形波を逓倍・弁別し、かつA/D変換器109Bからの出力を用いてズーム部108の位置に応じた値をカウントし、像ぶれ補正制御部112にカウンタ値として出力する。またA/D変換器109Bは、正弦波(アナログA相データ、アナログB相データ)をA/D変換して得られたデジタルデータを像ぶれ補正制御部112に出力する。ステップS203において、不揮発性メモリ(位置記憶手段)111から読み出したデータVma及びVmbは、このA/D変換器109Bから像ぶれ補正制御部112に出力されるデジタルデータに相当する。
【0040】
図4の説明に戻る。
ステップS204において、ズーム部位置検出部109(A/D変換器109B)の出力データVaおよびVbを読み込み、ステップS205に進み原点を検出したか否かを判断する。ステップS205において、原点を検出した場合はステップS206に進み、初期化完了フラグFlagを2に設定し、ステップS207に進む。ステップS205において、原点を検出しなかった場合はステップS207に進む。
【0041】
ステップS207において、ズーム位置の初期化完了を表す初期化完了フラグFlagが0の場合はステップS208に移行し、1の場合はステップS110に移行し、2の場合はステップS109に移行する。
【0042】
ステップS208においては、ステップS203およびステップS204で読み出したVmaとVa、及び、VmbとVbを比較する。VmaとVaが等しく、かつ、VmbとVbが等しい場合は、直前に像ぶれ補正機能付ズームレンズ100の電源が切られた際のズーム位置と現在のズーム位置とが等しいと判断できる。その場合、ステップS209に進み、ステップS203において読み出したズーム位置Zpow-offに応じた像ぶれ補正角リミット値θzpow-offを不揮発性メモリから読み込み、バッファθlimitに設定し、ステップS210に進む。
【0043】
ステップS208において、VmaとVa、または、VmbとVbが等しくない場合は、ステップステップS211に進み、全ズーム範囲内での最小の補正角リミット値をバッファθlimitに設定する。この設定は、ズーム位置がどの位置にあるかに関わらず、像ぶれ補正に起因する色収差を抑制することができる。この後、処理はステップS210に進む。
【0044】
ステップS210では、初期化完了フラグFlagを1に設定し、ステップS110に進む。
ステップS207において、初期化完了フラグFlagが2の場合は、ステップS109に進み、現在のズーム位置に応じた像ぶれ補正角リミット値θzを不揮発性メモリ111から読み込み、バッファθlimitに設定し、ステップS110へ進む。
【0045】
ステップS110からステップS120は実施例1と同じであるので説明を省略する。ステップS120の処理を完了した像ぶれ補正制御部112は、ステップS212にすすみ、ズーム位置データおよび位置検出部107の出力データを不揮発性メモリ111に記憶する。
以後、像ぶれ補正機能付ズームレンズ100の電源が切られるまで像ぶれ補正制御部112はステップS204からステップS120、ステップS212を繰返し実行する。
【0046】
ステップS208の判断条件をVma−α>Va>Vma+αのように値に幅をもった条件としても同様の効果を得ることが可能である。
【0047】
本実施例の方法によると、電源を入れられた時において、ズーム部の位置が直前に電源が切られた時の位置と同じである場合には、そのズーム位置に対応する最大補正角を、また、異なる場合には、全ズーム範囲における最大補正角リミット値の最小値を、全ズーム範囲における最大補正角リミット値と設定し、撮影中に原点が検出されるまで撮影することができる。これにより、厳密な像ぶれ補正及び色収差の低減を要する撮影をすることが最優先されない場合には、色収差を抑制しながらある程度の像ぶれ補正効果を得ることができる撮影を、電源投入直後から迅速に開始することができるという効果を有する。
【0048】
このようにズーム部位置検出部109の出力を監視し、その状態に応じて像ぶれ補正角リミット値を設定することにより、電源投入直後から色収差量を低減することが可能になる。
【0049】
[実施例3]
図6は、本発明を適用できる第3の実施例における像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置の構成図である。本実施例においては、図1に示した第1の実施例における構成要素に加え、電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化するか否かを切換えるための初期化選択手段301と、その初期化が完了しているか否かを表示するための初期化状態表示手段302を有する。
【0050】
図7及び図8は、本実施例における像ぶれ補正制御部112の一連の動作を示すフローチャートである。以下に図7及び図8のフローチャートに沿って、像ぶれ補正制御部112の動作を説明する。
【0051】
不図示のカメラより像ぶれ補正機能付ズームレンズ300に電源が投入されると、像ぶれ補正制御部112はステップS301にすすみ、初期化選択手段301の状態を判断する。ステップS301において、初期化選択手段301が、初期化有り(電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化する処理を実行するよう)に設定されている場合は、ステップS302に進み図2に示した実施例1のフロー1を実行する。またステップS301において、初期化選択手段301が初期化無しに設定されている(電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化するようには設定されていない)場合は、ステップS303にすすみ図4に示した実施例2のフロー2を実行する。フロー1およびフロー2の処理は、実施例1および実施例2と同じであるので詳細な説明は省略する。
【0052】
また、像ぶれ補正制御部112は所定時間毎に発生する割り込み信号に応じて、図8のフローチャートに示した一連の動作を実施する。割り込み信号が発生すると像ぶれ補正制御部112はステップS311において、初期化完了フラグFlagを判断し、初期化完了フラグFlagが2の場合は、ステップS312にすすみ初期化状態表示手段302のLEDを点灯し、割り込み処理を完了する。またステップS311において、初期化完了フラグFlagが2以外の場合は、ステップS313にジャンプし、初期化状態表示手段302のLEDを点滅し、割り込み処理を完了する。この割り込み処理により、現在の像ぶれ補正制御部112内に記憶されているズーム位置が原点位置に初期化されたか否かを操作者が認識することができ、適切な対応をすることを可能とする。例えば、初期化が完了していない場合に、強制的にズーム部を駆動させて像ぶれ補正制御部112を初期化すること、などが可能となる。
【0053】
このように初期化選択手段301の状態を監視し、その状態に応じて像ぶれ補正角リミット値を設定することにより、電源投入直後から色収差量を低減することが可能になる。
【0054】
[実施例4]
図9は、本発明を適用できる第4の実施例における像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置の構成図である。本実施例においては、図6に示した第3の実施例の構成要素に対して、初期化選択手段301に代えて、像ぶれ補正モードを設定するための像ぶれ補正優先設定手段401を有する構成である。
【0055】
図10は、本実施例における像ぶれ補正制御部112の一連の動作を示すフローチャートである。以下に図10のフローチャートに沿って、像ぶれ補正制御部112の動作を説明する。
【0056】
不図示のカメラより像ぶれ補正機能付ズームレンズ400に電源が投入されると、像ぶれ補正制御部112はステップS401にすすみ、像ぶれ補正優先設定手段401の状態を判断する。ステップS401において、像ぶれ補正優先設定手段401が像ぶれ補正優先モードに設定されている場合は、ステップS402にすすみ図2に示したフロー1を実行する。またステップS401において、像ぶれ補正優先設定手段401が通常モードに設定されている場合は、ステップS403にすすみ図4に示したフロー2を実行する。フロー1およびフロー2の処理は、実施例1および実施例2と同じであるので詳細な説明は省略する。また初期化状態表示手段302に関する処理は、実施例3において説明した図8と同じであるので説明を省略する。
【0057】
本実施例の処理フロー4を実施することにより、像ぶれ補正優先モードが設定されている場合には、電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化する処理が実行され、撮影に移行することができるため、全ズーム範囲で、ズーム位置に対応する最大の像ぶれ補正制御量で像ぶれ補正することができる。また、像ぶれ補正優先モードが設定されていない場合には、電源投入後、像ぶれ補正制御部112を初期化する処理を実行することなく、撮影動作に迅速に移行することが可能となり、撮影中にズーム部原点位置検出部110が原点位置を検出することにより、ステップS208及びS211によって適宜初期化される。
【0058】
このように像ぶれ補正優先設定手段401の状態を監視し、その状態に応じて像ぶれ補正角リミット値を設定することにより、電源投入直後から色収差量を低減することが可能になる。
【0059】
[実施例5]
図11は、本発明を適用できる第5の実施例における像ぶれ補正機能付ズームレンズ装置の構成図である。本実施例においては、図6に示した第3の実施例の構成要素に加え、像ぶれ補正モードを設定するための像ぶれ補正優先設定手段401をさらに有する構成である。
【0060】
図12は、本実施例における像ぶれ補正制御部112の一連の動作を示すフローチャートである。以下に図12のフローチャートに沿って、像ぶれ補正制御部112の動作を説明する。
【0061】
不図示のカメラより像ぶれ補正機能付ズームレンズ500に電源が投入されると、像ぶれ補正制御部112はステップS501に進み、初期化選択手段301の状態を判断する。ステップS501において、初期化選択手段301が初期化有り(電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化する処理を実行するよう)に設定されている場合は、ステップS502に進み図2に示したフロー1を実行する。またステップS501において、初期化選択手段301が初期化無しに設定されている(電源投入直後、像ぶれ補正制御部112内で記憶されているズーム位置を原点位置に初期化するようには設定されていない)場合は、ステップS503に進み像ぶれ補正優先設定手段401の状態を判断する。ステップS503において、像ぶれ補正優先設定手段401が像ぶれ補正優先モードに設定されている場合は、ステップS502に進み、図2に示したフロー1を実行する。またステップS503において、像ぶれ補正優先設定手段401が通常モードに設定されている場合は、ステップS504に進み図4に示したフロー2を実行する。フロー1およびフロー2の処理は、実施例1および実施例2と同じであるので詳細な説明は省略する。また初期化状態表示手段302に関する処理は、実施例3において説明した図8と同じであるので説明を省略する。
【0062】
このように初期化選択手段301と像ぶれ補正優先設定手段401の状態を監視し、これらの状態に応じて像ぶれ補正角リミット値を設定することにより、電源投入直後から色収差量を低減することが可能になる。
【0063】
上記した実施例においては、像面上の被写体像を変位させる、棒ぶれ補正のための可動の光学ユニットとして、プリズム体であるバリアングルプリズム105を例示したが、本発明はこれに限定されることはなく、光軸と垂直な方向に可動である光学素子を使用しても、本発明の効果が得られることに留意されたい。この場合には、像ぶれ補正制御部112は、該光学素子の光軸と垂直な面内での可動範囲は、望遠端よりも広角端の方が広くなるように該光学素子を制御する。
【0064】
また、上記の実施例において、ズーム部(変倍群)108は、像ぶれ補正のための可動光学ユニット(バリアングルプリズム105)より像面側に配置されることについて記載したが、像ぶれ補正のための可動光学ユニット(バリアングルプリズム105)の被写体側に他のレンズ群が配置された場合においても、本発明と同様の効果が得られることに留意されたい。
【符号の説明】
【0065】
100 像ぶれ補正機能付ズームレンズ
106 アクチュエータ
108 ズーム部
112 像ぶれ補正制御部
114 駆動回路
300 像ぶれ補正機能付ズームレンズ
400 像ぶれ補正機能付ズームレンズ
500 像ぶれ補正機能付ズームレンズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変倍時に光軸方向に移動する変倍群と、
前記変倍群よりも物体側に配置された、可動の光学ユニットと、
前記光学ユニットを動かす制御手段と、
を備え、
前記光学ユニットを動かすことによって像を変位させるズームレンズにおいて、
広角端における前記光学ユニットの可動範囲は、望遠端における前記光学ユニットの可動範囲よりも広いことを特徴とするズームレンズ。
【請求項2】
前記光学ユニットは、入射面と出射面との相対的な角度が可変な光学素子であり、
前記光学ユニットの可動範囲が、前記入射面と前記出射面との相対的な角度の可変範囲であり、
前記制御手段は、広角端における前記可変範囲が、望遠端における前記可変範囲よりも広くなるように、前記光学素子を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
【請求項3】
前記光学素子は、光軸を含む断面内において頂角を変化させることが可能なプリズム体であることを特徴とする請求項2記載のズームレンズ。
【請求項4】
前記光学ユニットは、光軸と垂直な方向に可動な光学素子であり、
前記光学ユニットの可動範囲は、該光学素子の光軸と垂直な面内での可動範囲であり、
前記制御手段は、広角端における該可動範囲が、望遠端における該可動範囲よりも広くなるように、該光学素子を制御する、
ことを特徴とする請求項1記載のズームレンズ。
【請求項5】
前記可動範囲は、広角端から望遠端に変倍するに従って、単調に小さくなることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項6】
前記ズームレンズは、前記光学ユニットよりも物体側に配置されたレンズ群を備えることを特徴とする請求項1乃至4いずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項7】
前記変倍群の相対位置を検出する位置検出手段と、該検出された該変倍群の相対位置に基づいて該変倍群の位置を演算する位置演算手段を有し、
電源投入直後に前記変倍群を基準位置まで駆動した後、該位置演算手段の変倍群の位置を基準位置に初期化し、該変倍群を電源投入時の位置まで駆動し、該変倍群の位置に応じた前記光学ユニットの可動範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5いずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項8】
電源が切られる際の前記変倍群の位置を記憶する位置記憶手段を有し、
前記位置演算手段の変倍群の位置が初期化されていない場合、該位置記憶手段の状態に応じて前記光学ユニットの可動範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項6に記載のズームレンズ。
【請求項9】
前記変倍群の相対位置を検出する位置検出手段と、検出された該変倍群の相対位置に基づいて該変倍群の位置を演算する位置演算手段と、該位置演算手段が記憶している該変倍群の位置を初期化する方法を選択する初期化選択手段と、前記ズームレンズの電源が切られた際の該変倍群の位置を記憶する位置記憶手段、を有し、
該初期化選択手段が初期化有りに設定された場合、電源投入直後に該変倍群を基準位置まで駆動した後、該位置演算手段の変倍群の位置を基準位置に初期化し、該変倍群を電源投入時の位置まで駆動し、該変倍群の位置に応じた前記光学ユニットの可動範囲を設定し、
該初期化選択手段が初期化無しに設定された場合、該位置記憶手段の状態に応じて前記光学ユニットの可動範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載のズームレンズ。
【請求項10】
補正優先設定手段を有し、
前記補正優先設定手段が像ぶれ補正優先モードに設定された場合、電源投入直後に前記変倍群を基準位置まで駆動した後、該変倍群を電源投入時の位置まで駆動し、該変倍群の位置に応じた前記光学ユニットの可動範囲を設定する、
ことを特徴とする請求項6に記載のズームレンズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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