説明

セキュリティシステム及び警報発生方法

【課題】
盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を確実に検出し、警報を発生させる。
【解決手段】
電流検出部220がスピーカ130を流れる電流の交流成分を検出する。引き続き、振動判定部230が、スピーカ130を流れる電流の交流成分の量が、異常な外力によるスピーカ130の振動に対応する量となり、車両の盗難や車上荒しの着手という異常事態が発生したと判断できるか否かを判定する。そして、セキュリティモード動作中に、振動判定部230から異常事態が発生したと判断される旨の報告を受けると、警報制御部210が、警報スピーカから警報音声を出力させるとともに、警報表示器による警報表示を行わせる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セキュリティシステム、警報発生方法及び警報発生プログラム、並びに、当該警報発生プログラムが記録された記録媒体である。
【背景技術】
【0002】
車両は非常に高価なものであり、かつ、カーオーディオ装置等の高価な装置を搭載している。また、車両の車室内には、貴重品や現金等が一時的に置かれることもある。このため、車両の盗難や、車上荒らしを防止するためのセキュリティシステムが注目されている。
【0003】
かかるセキュリティシステムの技術として、車載装置に使用されているコイル部品が振動すると発生する逆起電力を利用する技術が提案されている。こうした提案技術としては、CD(Compact Disk)プレーヤのフォーカスコイルやトラッキングコイルを利用する技術(特許文献1参照:以下、「従来例1」と呼ぶ)、及び、音響装置のスピーカに内蔵されているボイスコイルを利用する技術(特許文献2参照:以下、「従来例2」と呼ぶ)がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−274276号公報
【特許文献2】特開2005−262944号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来例1の技術では、一般に、車内における振動の少ない位置に設置されるCDプレーヤ内のフォーカスコイルやトラッキングコイルの振動を検出する。この結果、特許文献2においても指摘されているように、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を良好に検出できない場合がある。
【0006】
また、上述した従来例2の技術では、スピーカを駆動するパワー増幅器に動作電力が供給されている状態においては、ボイスコイルの端子間電圧は制御されているので、逆起電力を検出することができない。この結果、パワー増幅器に動作電力が供給されている状態においては、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を良好に検出できない。
【0007】
このため、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を良好に検出できる技術が望まれている。かかる要請に応えることが、本発明が解決すべき課題の一つとして挙げられる。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を確実に検出し、警報を発生させることができる新たなセキュリティシステム及び警報発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、パワー増幅器により駆動されるスピーカを有する音響装置が設置されている監視対象環境におけるセキュリティ監視を行い、警報出力手段から警報を出力するセキュリティシステムであって、前記スピーカを流れる交流電流を検出する電流検出手段と;前記検出された交流電流が所定量を超えているか否かを判定する電流量判定手段と;電力供給が行われている前記パワー増幅器から前記スピーカに交流電流が供給されることが想定されないセキュリティ監視モード動作中に、前記電流量判定手段による判定の結果が肯定的となった場合に、前記警報出力手段に対して警報出力開始指令を送る警報制御手段と;を備えることを特徴とするセキュリティシステムである。
【0010】
請求項8に記載の発明は、パワー増幅器により駆動されるスピーカを有する音響装置が設置されている監視対象環境におけるセキュリティ監視を行い、警報出力手段から警報を出力するセキュリティシステムで使用される警報発生方法であって、前記スピーカを流れる交流電流を検出する電流検出工程と;前記検出された交流電流が所定量を超えているか否かを判定する電流量判定工程と;電力供給が行われている前記パワー増幅器から前記スピーカに交流電流が供給されることが想定されないセキュリティ監視モード動作中に、前記電流量判定工程における判定の結果が肯定的となった場合に、前記警報出力手段に対して警報出力開始指令を送る警報制御工程と;を備えることを特徴とする警報発生方法である。
【0011】
請求項9に記載の発明は、請求項8に記載の警報発生方法を演算手段により実行させる、ことを特徴とする警報発生プログラムである。
【0012】
請求項10に記載の発明は、請求項9に記載の警報発生プログラムが、演算手段により読取可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係るセキュリティシステムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1のパワー増幅器の出力段の回路構成を説明するための図である。
【図3】図1の電流検出部及び振動判定部の構成を説明するためのブロック図である。
【図4】図1の警告制御部による警告制御処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を、図1〜図4を参照して説明する。なお、以下の説明において、同一又は同等の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0015】
[構成]
図1には、一実施形態に係るセキュリティシステム300の構成がブロック図にて示されている。このセキュリティシステム300は、車両に搭載されるセキュリティシステムであり、音響装置100と、警報装置200とを備えている。
【0016】
上記の音響装置100は、楽曲等の音声コンテンツに対応する音声を車室内へ出力する。かかる音響装置100は、音響信号処理部110と、パワー増幅器120と、スピーカ130とを備えている。
【0017】
上記の音響信号処理部110は、音源部から得られた音声コンテンツ信号に対して処理を施して、音響信号ASGを生成する。生成された音響信号ASGは、パワー増幅器120へ送られる。
【0018】
上記のパワー増幅器120は、音響信号処理部110から送られた音響信号ASGを受ける。そして、パワー増幅器120は、音響信号ASGをパワー増幅し、スピーカを駆動するための信号を生成する。本実施形態では、パワー増幅器120は、3種の信号SD1P,SD1M,SD2を生成するようになっている。このパワー増幅器120の構成については、後述する。
【0019】
パワー増幅器120により生成された信号SD1P,SD1Mは、警報装置200へ送られる。また、パワー増幅器120により生成された信号SD2は、スピーカ130へ送られる。
【0020】
上記のスピーカ130は、警報装置200から送られた信号SD1、及び、パワー増幅器120から送られた信号SD2を受ける。かかる信号SD1,SD2により、スピーカ130を駆動するための差動駆動信号が構成される。スピーカ130は、音響信号ASGを反映した当該差動駆動信号SD1,SD2に従って、音声を再生出力する。
【0021】
上記の警報装置200は、スピーカ130を流れる電流の検出結果に基づいて、警報発生を行う。かかる機能を有する警報装置200は、警報制御手段としての警報制御部210と、電流検出手段としての電流検出部220と、電流量判定手段としての振動判定部230とを備えている。また、警報装置200は、操作入力手段としてのリモート入力部240と、電力供給検出手段としての電力供給モニタ部250とを備えている。さらに、警報装置200は、警報出力手段の一部としての警報スピーカ260と、警報出力手段の一部としての警報表示器270とを備えている。
【0022】
上記の警報制御部210は、警報装置200全体を統括制御する。この警報制御部210については、後述する。
【0023】
上記の電流検出部220は、パワー増幅器120から送られた信号SD1P,SD1Mを受ける。そして、電流検出部220は、スピーカ130を流れる電流を検出する。かかる電流の検出結果は、電流検出結果VDT1,VDT2として、振動判定部230へ送られる。
【0024】
また、電流検出部220は、信号SD1P,SD1Mに基づいて、信号SD1を生成する。生成された信号SD1は、スピーカ130へ送られる。
【0025】
なお、電流検出部220の構成については、後述する。
【0026】
上記の振動判定部230は、電流検出部220から送られた電流検出結果VDT1,VDT2を受ける。そして、振動判定部230は、電流検出結果VDT1,VDT2に基づいて、異常な外力によるスピーカ130の振動の発生を判定する。振動判定部230による判定結果は、判定結果VDR1,VDR2として、警報制御部210へ送られる。なお、振動判定部230の構成については、後述する。
【0027】
上記のリモート入力部240は、各種ボタンやキーを有して構成されている。リモート入力部240に対する利用者による入力操作結果は、近距離無線信号により操作入力データIPDとして警報制御部210へ送られる。ここで、リモート入力部240による入力結果は、車外における操作結果も警報制御部210へ到達するようになっている。
【0028】
こうしたリモート入力部240への操作入力により、利用者は様々な動作設定を、警報制御部210に対して行うことができる。こうした動作設定には、セキュリティモード設定及びセキュリティモード解除設定が含まれている。
【0029】
上記の電力供給モニタ部250は、パワー増幅器120への電力供給を監視する。本実施形態では、電力供給モニタ部250は、パワー増幅器120に供給される動作用電源電圧の電圧値が所定値以上であることを監視するようになっている。電力供給モニタ部250による監視の結果は、電力供給モニタ信号PDWとして、警報制御部210へ送られる。
【0030】
上記の警報スピーカ260は、警報制御部210からの警報音信号ALSを受ける。そして、警報スピーカ260は、警報音信号ALSに従って警報音を出力する。
【0031】
上記の警報表示器270は、警報制御部210からの警報表示信号ALDを受ける。そして、警報表示器270は、警報表示信号ALDに従って警報表示を行う。なお、本実施形態では、警報表示器270として、警報用ランプが採用されている。
【0032】
次に、上記のパワー増幅器120について、主に、出力段の回路構成に着目して説明する。このパワー増幅器120は、図2に示されるように、前段回路121と、出力段回路122とを備えている。
【0033】
上記の前段回路121は、音響信号処理部110から送られた音響信号ASGを受ける。そして、前段回路121は、差動信号SS1,SS2を生成する。生成された差動信号SS1,SS2は、出力段回路122へ送られる。
【0034】
上記の出力段回路122は、前段回路121から送られた差動信号SS1,SS2を受ける。そして、出力段回路122は、スピーカ130をバランス型で駆動する。かかる機能を有する出力段回路122は、4つのパワートランジスタTR1〜TR4を備えている。
【0035】
上記のパワートランジスタTR1は、前段回路121から送られた差動信号SS1を受ける。そして、パワートランジスタTR1は、差動信号SS1に従って、電源レベルVCCからスピーカ130への電流を送り出す役割を果たす。このパワートランジスタTR1から流出する電流の信号が上述した信号SD1Pであり、電流検出部220へ送られる。
【0036】
上記のパワートランジスタTR2は、前段回路121から送られた差動信号SS1を受ける。そして、パワートランジスタTR2は、差動信号SS1に従って、スピーカ130から接地レベルへの電流を引き込む役割を果たす。このパワートランジスタTR2に流入する電流の信号が上述した信号SD1Mであり、電流検出部220へ送られる。
【0037】
上記のパワートランジスタTR3は、前段回路121から送られた差動信号SS2を受ける。そして、パワートランジスタTR3は、差動信号SS2に従って、電源レベルVCCからスピーカ130への電流を送り出す役割を果たす。
【0038】
上記のパワートランジスタTR4は、前段回路121から送られた差動信号SS2を受ける。そして、パワートランジスタTR4は、差動信号SS2に従って、スピーカ130から接地レベルへの電流を引き込む役割を果たす。
【0039】
パワートランジスタTR3とパワートランジスタTR4とは直列に接続されている。パワートランジスタTR3から流出する信号、及び、パワートランジスタTR4から流入する信号が、信号SD2であり、スピーカ130へ送られる。
【0040】
出力段回路122では、パワートランジスタTR1,TR4の対、及び、パワートランジスタTR2,TR3の対が、差動信号SS1,SS2に従って交互に動作して、スピーカ130を駆動する。
【0041】
次に、上記の電流検出部220について説明する。この電流検出部220は、図3に示されるように、抵抗素子としての抵抗R1,R2と、増幅器2211,2212と、直流成分除去回路としての直流カット回路2221,2222とを備えている。
【0042】
上記の抵抗R1,R2は、抵抗値Rを有している。ここで、抵抗値Rは、スピーカ130のインピーダンスと比べて、十分に小さな値とされている。
【0043】
抵抗R1の一方の端子には、パワー増幅器120から送られた信号SD1Pが供給される。また、抵抗R1の他方の端子は、抵抗R2の一方の端子に接続されている。この接続点から、上述した信号SD1が、スピーカ130へ送られる。また、抵抗R2の他方の端子には、パワー増幅器120から送られた信号SD1Mが供給される。
【0044】
上記の増幅器2211には、抵抗R1の両端子間の生じる電圧信号が入力する。そして、増幅器2211は、入力電圧信号を増幅し、電圧信号VCV1を生成する。生成された電圧信号VCV1は、直流カット回路2221へ送られる。
【0045】
上記の増幅器2212には、抵抗R2の両端子間の生じる電圧信号が入力する。そして、増幅器2212は、入力電圧信号を増幅し、電圧信号VCV2を生成する。生成された電圧信号VCV2は、直流カット回路2222へ送られる。
【0046】
上記の直流カット回路2221は、増幅器2211から送られた電圧信号VCV1を受ける。そして、直流カット回路2221は、電圧信号VCV1に含まれる直流成分を除去して、信号VDT1を生成する。生成された信号VDT1は、振動判定部230へ送られる。
【0047】
上記の直流カット回路2222は、増幅器2212から送られた電圧信号VCV2を受ける。そして、直流カット回路2222は、電圧信号VCV2に含まれる直流成分を除去して、信号VDT2を生成する。生成された信号VDT2は、振動判定部230へ送られる。
【0048】
なお、直流カット回路2221,2222により直流成分をカットするのは、音響装置100により音声再生を行っていない状態において、スピーカ130に外力が特にかかっていないときに、スピーカ130に流れるアイドリング電流分を差し引くためである。このような構成にすることにより、音響装置100により音声再生を行っていない状態において、ボイスコイルを含むスピーカ130の振動に伴う逆起電力を相殺することにともなって当該ボイスコイルを流れる電流を検出することができる。
【0049】
次に、上記の振動判定部230について説明する。この振動判定部230は、図3に示されるように、参照電圧(VREF)発生部231と、比較部2351,2352とを備えている。
【0050】
参照電圧発生部231は、参照電圧VREFを発生する。ここで、参照電圧VREFは、車両の盗難時や車上荒しの際に生じる振動を判定するという観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。参照電圧発生部231が発生した参照電圧VREFは、比較部2351,2352へ送られる。
【0051】
上記の比較部2351は、電流検出部220から送られた信号VDT1を受ける。そして、比較部2351は、信号VDT1の絶対値のピーク電圧値が参照電圧VREFを超えたか否かを判定することにより、車両の盗難や車上荒しの着手という異常事態が発生したか否かを判定する。この判定結果は、信号VDR1として、警報制御部210へ送られる。
【0052】
上記の比較部2352は、電流検出部220から送られた信号VDT2を受ける。そして、比較部2352は、信号VDT2の絶対値のピーク電圧値が参照電圧VREFを超えたか否かを判定することにより、車両の盗難や車上荒しの着手という異常事態が発生したか否かを判定する。この判定結果は、信号VDR2として、警報制御部210へ送られる。
【0053】
次いで、上記の警報制御部210について説明する。この警報制御部210は、リモート入力部240からセキュリティモード設定指令を受けると、セキュリティモード動作を開始する。また、警報制御部210は、リモート入力部240からセキュリティモード解除指令を受けると、セキュリティモード動作を終了する。
【0054】
警報制御部210は、セキュリティモード動作中に、振動判定部230から送られる信号VDR1,VDR2による異常な振動が発生した旨の報告がなされた場合に、警報スピーカ260からの警報音出力、及び、警報表示器270による警報表示を行う。また、警報制御部210は、セキュリティモード動作中に、電力供給モニタ部250から送られる電力供給モニタ信号PDWによるパワー増幅器120への動作電力の供給が途絶えた旨の報告がなされた場合にも、警報スピーカ260からの警報音出力、及び、警報表示器270による警報表示を行う。こうした警報制御部210による警報出力制御処理については、後述する。
【0055】
[動作]
次に、以上のように構成されたセキュリティシステム300の動作について、警報制御部210による警報出力制御処理に主に着目して説明する。なお、当初は、利用者は車室内に滞在しており、セキュリティモードは解除されているものとする。
【0056】
警報出力制御処理に際しては、図4に示されるように、まず、ステップS11において、警報制御部210が、リモート入力部240からセキュリティモード設定指令を受けたか否かを判定する。この判定の結果が否定的であった場合(ステップS11:N)には、ステップS11の処理が繰り返される。
【0057】
利用者が車室から退出し、ドア施錠を行った後、リモート入力部240にセキュリティモード設定指令が入力されると、ステップS11における判定の結果が肯定的となる。ステップS11における判定の結果が肯定的となると(ステップS11:Y)、警報制御部210がセキュリティモード動作を開始し、処理はステップS12へ進む。
【0058】
ステップS12では、警報制御部210が、電力供給モニタ信号PDWを参照して、パワー増幅器120への電力供給が行われているか否かを判定する。この判定の結果が肯定的であった場合(ステップS12:Y)には、処理はステップS13へ進む。
【0059】
ステップS13では、警報制御部210が、スピーカ130の異常な振動が発生したか否かの判定を行う。かかる判定に際して、警報制御部210は、振動判定部230から送られた信号VDR1及び信号VDR2の少なくとも一方により、異常な振動が発生したと判定された旨が報告されたか否かを判定する。
【0060】
ステップS13における判定の結果が否定的であった場合(ステップS13:N)には、処理はステップS14へ進む。このステップS14では、警報制御部210が、リモート入力部240からセキュリティモード解除指令を受けたか否かを判定する。
【0061】
ステップS14における判定の結果が否定的であった場合(ステップS14:N)には、処理はステップS12へ戻る。一方、ステップS14における判定の結果が肯定的であった場合(ステップS14:Y)には、警報制御部210がセキュリティモード動作を終了する。そして、処理はステップS11へ戻る。
【0062】
上記のステップS12における判定の結果が否定的であった場合(ステップS12:N)、又は、ステップS13の判定の結果が肯定的であった場合(ステップS13:Y)には、処理はステップS15へ進む。このステップS15では、警報制御部210が、警報音信号ALSを警報スピーカ260へ送るとともに、警報表示信号ALDを警報表示器270へ送る。この結果、警報スピーカ260からの警報音出力が開始されるとともに、警報表示器270による警報表示が開始される。
【0063】
次に、ステップS16において、警報制御部210が、リモート入力部240からセキュリティモード解除指令を受けたか否かを判定する。ステップS16における判定の結果が否定的であった場合(ステップS16:N)には、処理はステップS17進む。
【0064】
このステップS17では、警報制御部210が、警報出力を開始してから所定時間が経過したか否かを判定する。ここで、「所定時間」は、警報出力の有効性の確保、及び、誤った警報出力による騒音発生時間の制限の観点から、実験、シミュレーション、経験等に基づいて、予め定められる。ステップS17における判定の結果が否定的であった場合(ステップS17:N)には、処理はステップS16へ戻る。
【0065】
上述のステップS16,S17の処理の繰り返し中に、ステップS16又はステップS17の判定の結果が肯定的となると(ステップS16:Y、又は、ステップS17:Y)には、処理はステップS18へ進む。このステップS18では、警報制御部210が、警報出力を中止する。そして、処理はステップS11へ戻る。
【0066】
以後、ステップS11〜S18の処理が繰り返され、警報制御部210により、警報出力の制御が続行される。
【0067】
以上説明したように、本実施形態では、電流検出部220が、スピーカ130の振動に伴う逆起電力を相殺することにともなってスピーカ130を流れる電流の交流成分を検出する。引き続き、振動判定部230が、スピーカ130を流れる電流の交流成分の量が、異常な外力によるスピーカ130の振動に対応する量となり、車両の盗難や車上荒しの着手という異常事態が発生したと判断できるか否かを判定する。そして、セキュリティモード動作中に、振動判定部230から異常事態が発生したと判断される旨の報告を受けると、警報制御部210が、警報スピーカ260から警報音声を出力させるとともに、警報表示器270による警報表示を行わせる。
【0068】
したがって、本実施形態によれば、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動を確実に検出し、警報を発生させることができる。また、本実施形態によれば、パワー増幅器に動作電力が供給されている状態において、スピーカ130のボイスコイルの端子間電圧が制御されていることにより逆起電力を検出することができない場合であっても、車両の振動を検出し、警報を発生させることができる。
【0069】
また、本実施形態では、電流検出部220の検出結果の前提になるパワー増幅器120への電力供給を電力供給モニタ部250が監視する。そして、セキュリティモード動作中に、電力供給モニタ部250から送られた電力供給が不正に遮断されたと判断される旨の報告を受けた場合にも、警報制御部210が、警報スピーカ260から警報音声を出力させるとともに、警報表示器270による警報表示を行わせる。このため、盗難時や車上荒らしの際における車両の振動をより確実に検出し、警報を発生させることができる。
【0070】
また、本実施形態では、警報出力の開始から所定時間が経過すると、セキュリティモードが解除されなくとも、警報出力を中止する。このため、誤った警報出力による騒音発生の弊害が無制限に継続することを防止することができる。
【0071】
[実施形態の変形]
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。
【0072】
例えば、上記の実施形態では、スピーカ130に流れる電流の検出を、電流経路に小抵抗を介在させ、当該小抵抗の両端に生じる電圧を検出することにより行うようにしたが、ホール素子により、スピーカ130に流れる電流による磁気を検出するようにしてもよい。この場合には、音響装置100におけるスピーカ130の駆動配線を加工することが不要となる。
【0073】
また、上記の実施形態では、スピーカ130に流れる電流量の判定に際して、交流電圧信号VCV1,VCV2の絶対値のピーク値を参照電圧VREFと比較するようにしたが、交流電圧信号VCV1,VCV2の所定期間長における実効値を、参照電圧VREFとは異なる所定電圧と比較するようにしてもよい。
【0074】
また、上記の実施形態では、パワー増幅器120が、差動のバランス型によるスピーカ130の駆動を例示したが、他の駆動方式を採用するようにしてもよい。
【0075】
また、上記の実施形態においては、パワー増幅器120への動作電力の供給の監視を、パワー増幅器120への印加電圧を監視することにより行うようにしたが、電源配線を介してパワー増幅器120へ流入する電流を監視するようにしてもよい。
【0076】
また、上記の実施形態においては、パワー増幅器120への動作電力の供給の遮断が検出された場合にも警報を出力するようにしたが、パワー増幅器120への動作電力の供給の遮断が検出された場合には、上述した従来例2の技術を適用するようにしてもよい。
【0077】
また、上記の実施形態においては、警報装置200が、警報スピーカ260及び警報表示器270を、独自に備えることを想定したが、車両が標準的に装備しているクラクションスピーカ及びハザードランプを利用して、警報出力を行うようにしてもよい。
【0078】
なお、上記の実施形態における警報制御部210を中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、ランダムアクセスメモリ(RAM:Random Access Memory)等を備えた演算手段としてのコンピュータとして構成し、上記の実施形態における処理を、予め用意されたプログラムを当該コンピュータで実行するようにしてもよい。このプログラムはハードディスク、CD−ROM、DVD等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、当該コンピュータによって記録媒体から読み出されて実行される。また、このプログラムは、CD−ROM、DVD等の可搬型記録媒体に記録された形態で取得されるようにしてもよいし、インターネットなどのネットワークを介した配信の形態で取得されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0079】
100 … 音響装置
120 … パワー増幅器
130 … スピーカ
210 … 警報制御部(警報制御手段)
220 … 電流検出部(電流検出手段)
2221,2222 … 直流カット回路(直流成分除去回路)
230 … 振動判定部(電流量判定手段)
240 … リモート入力部(操作入力手段)
250 … 電力供給モニタ部(電力供給検出手段)
300 … セキュリティシステム
1,R2 … 抵抗(抵抗素子)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パワー増幅器により駆動されるスピーカを有する音響装置が設置されている監視対象環境におけるセキュリティ監視を行い、警報出力手段から警報を出力するセキュリティシステムであって、
前記スピーカを流れる交流電流を検出する電流検出手段と;
前記検出された交流電流が所定量を超えているか否かを判定する電流量判定手段と;
電力供給が行われている前記パワー増幅器から前記スピーカに交流電流が供給されることが想定されないセキュリティ監視モード動作中に、前記電流量判定手段による判定の結果が肯定的となった場合に、前記警報出力手段に対して警報出力開始指令を送る警報制御手段と;
を備えることを特徴とするセキュリティシステム。
【請求項2】
前記電流検出手段は、前記スピーカに加わる外力に応じて発生し、前記スピーカを流れる電流を検出する、ことを特徴とする請求項1に記載のセキュリティシステム。
【請求項3】
前記電流検出手段は、
前記スピーカを流れる電流の経路に配置された抵抗素子と;
前記抵抗素子の両端間に発生する電圧信号に含まれる直流成分を除去する直流成分除去回路と;
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のセキュリティシステム。
【請求項4】
前記電流検出手段は、
前記スピーカを流れる電流により発生する磁気に応じた電圧を出力するホール素子と;
前記ホール素子から出力された電圧信号に含まれる直流成分を除去する直流成分除去回路と;
を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のセキュリティシステム。
【請求項5】
操作入力が行われる操作入力手段を更に備え、
前記警報制御手段は、
前記操作入力手段からセキュリティ監視開始指令が入力された旨が報告された場合に、前記セキュリティ監視モード動作を開始し、
前記操作入力手段からセキュリティ監視終了指令が入力された旨が報告された場合に、前記セキュリティ監視モード動作を終了する、
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のセキュリティシステム。
【請求項6】
前記警報制御手段は、前記警報出力開始指令から所定時間にわたって警報出力が継続すると、前記警報出力手段に対して警報出力終了指令を送る、ことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のセキュリティシステム。
【請求項7】
前記パワー増幅器への電力供給の有無を検出する電力供給検出手段を更に備え、
前記警報制御手段は、前記セキュリティ監視モード動作中において、前記電力供給検出手段により前記パワー増幅器への電力供給がされていないことが検出された場合に、前記警報出力手段に対して前記警報出力開始指令を送る、
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のセキュリティシステム。
【請求項8】
パワー増幅器により駆動されるスピーカを有する音響装置が設置されている監視対象環境におけるセキュリティ監視を行い、警報出力手段から警報を出力するセキュリティシステムで使用される警報発生方法であって、
前記スピーカを流れる交流電流を検出する電流検出工程と;
前記検出された交流電流が所定量を超えているか否かを判定する電流量判定工程と;
電力供給が行われている前記パワー増幅器から前記スピーカに交流電流が供給されることが想定されないセキュリティ監視モード動作中に、前記電流量判定工程における判定の結果が肯定的となった場合に、前記警報出力手段に対して警報出力開始指令を送る警報制御工程と;
を備えることを特徴とする警報発生方法。
【請求項9】
請求項8に記載の警報発生方法を演算手段により実行させる、ことを特徴とする警報発生プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の警報発生プログラムが、演算手段により読取可能に記録されている、ことを特徴とする記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−203772(P2011−203772A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67631(P2010−67631)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】